2401. スローターハウス5
《ネタバレ》 時系列をいじくるという演出は最近では珍しくなくなっていますが、この映画ほど詩情あふれるタイムスリップものは他にないのではと思います。というか、戦時中の場面は単なる回想と言えなくもないですが。この主人公(ヴォネガットの分身)はドレスデン空襲に遭遇して心に深い傷を負い、時空を超えてさまよいながら「死」の意味を求めるのですが、その傷を癒してくれたのは結局トラルファマドール星だったのでしょう。映像化するのが難しいと言われたヴォネガット作品ですが、さすが名匠ジョージ・ロイ・ヒル、心に沁み入る名作に仕上げています。 [DVD(字幕)] 8点(2009-05-27 21:29:58) |
2402. ディパーテッド
《ネタバレ》 オリジナルは未見ですが、スコセッシの豪快な演出で楽しめました。「本当はこの映画は撮りたくなかったんだ」なんてオスカー受賞式でスコセッシは言っていたそうですが、いろいろ複雑な事情がありそうですね。しかし、ジャック・ニコルソンはすごい役者ですねえ。レオとマットは完全に喰われていましたから。後半になるとちょっと展開に疑問符がつく部分もありまして、そこが残念なところでした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-05-23 14:02:56) |
2403. 黄色いロールスロイス
《ネタバレ》 いかにもイギリス映画らしくて洒落ていました。やはり自分は2話目のエピソードが好きです。マフィアの親分にするか、いかにもすけこましのイタリア男についてゆくかってのはある意味究極の選択ですが、シャーリー・マクレーンの選択はあれで良かったのですよ。あと、1話目のジャンヌ・モローの浮気を知った後のさびしそうなレックス・ハリスンが哀愁を漂わせていて良かったです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-05-23 14:00:33) |
2404. 愛欲の十字路
《ネタバレ》 なんともすさまじい邦題ですが、実は旧約聖書のダビデとバテシバの物語をモチーフにした作品です。イスラエル王ダビデは部下のウリヤの妻バテシバを見染めて不倫の恋に落ちます。王は妻を何人も持てますが、人妻とはさすがに結婚できません。バテシバが身ごもったことを知ったダビデはウリヤを戦場で死地に赴くように命令し、ウリヤは戦死してしまいます。未亡人となったバテシバを晴れて妻の一人に迎えたダビデでしたが、神の怒りがイスラエルに降りかかり旱魃に凶作、そしてバテシバが生んだ王子までもが病死してしまいます。西欧人にはポピュラーな旧約聖書の物語を、メロドラマチックにグレゴリー・ペックとスーザン・ヘイワードが演じています。旧約聖書の記述には忠実なのでしょうが、不倫劇がメインなのでスペクタル的見せ場はありません。回想場面で有名なダビデとゴリアテの対決場面はありますが、手抜きもいいとこでまるでモンティ・パイソンのコメディみたいでした。そもそもグレゴリー・ペックがダビデを演じることに無理があり、ただの真面目なおじさんという感じでちっとも英雄っぽくないのです。劇中、後年インディ・ジョーンズ教授が追い求めるアーク(約櫃という字幕でした)が登場し、最後に神の許しをダビデに与えてくれます。 [ビデオ(字幕)] 5点(2009-05-20 23:57:07) |
2405. ピアニスト
《ネタバレ》 なるほど、手紙を渡してからのエリカ先生の変態行動は妄想だという見方もできるわけですね。観ているときは全く意識してなかったので、目から鱗が落ちました。ハネケには知性的な面を感じていましたが、女性をここまで赤裸々に描くのはどういう意図があるのでしょうか。ここまで痛いヒロインは初めて観ました。後味の悪さは私には「ファニー・ゲーム」以上でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-05-18 00:16:30) |
2406. 日曜はダメよ
これはもう光輝くメリナ・メルクーリと、有名な主題歌を楽しむための映画です。他のギリシャ人(?)俳優も活き活きしていて気持ちが良いです。ジュールス・ダッシン自身が演じる主人公ホーマーだけはミス・キャストですね。彼の演技はなんかわざとらしくて浮いていると思いました。この役をコメディセンスがある俳優がやったらもっと面白くなったんじゃないかな。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-05-16 10:05:50) |
2407. ドリームガールズ(2006)
《ネタバレ》 予備知識なく観はじめたので、30分ぐらいたつまでスープリームスとダイアナ・ロスがモデルのお話とは気づきませんでした。なんだかサウンドがあまりモータウンっぽくなかったからでしょうか。とは言え、ミュージカルとしては十分楽しめる出来でした。特にエディー・マーフィーの熱演は迫力ありましたね。彼の歌は吹き替えじゃないんですか?本人が歌っているとしたら、オスカー獲れなかったのは本当に惜しい!ジェニファー・ハドソンよりもずっと良かったと思いますがね。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-09 00:19:30) |
2408. 長距離ランナーの孤独
《ネタバレ》 この物語のエンディングはあまりにも有名で、その後の映画や演劇に多大な影響を与えています。改めて鑑賞してみて、これは青春映画の傑作だと思いました。なんか主人公の心情が痛いほど伝わってくる映画なのです。50年近く前に制作されたとは思えない、21世紀の現代に時代設定を変えても十分通用する普遍性をこの作品は持っているのです。トニー・リチャードソンは、あえて押さえた演技と、早回しを使ったコミカルな演出を使っていて、それが主人公コリンの心象をうまく表現しています。院長は長距離競走に出場する選手たちにまるで競走馬を調教するように接していますが、彼は同世代であるコリンたちの親たちを象徴したカリカチュアなのでしょう。閉塞感に苛まされているのは若者たちだけではなく、社会全体の問題なのだということなのです。本当に良い映画でした。 [ビデオ(字幕)] 8点(2009-05-09 00:16:22) |
2409. 愛する時と死する時
《ネタバレ》 メロドラマの名手ダグラス・サークが撮った唯一の戦争映画で、原作は「西部戦線異状なし」のエーリッヒ・レマルクです。レマルクは主人公エルンストの恩師役で出演していて、結構達者な演技を見せてくれます。ロシア戦線に出征していた主人公が休暇で故郷へ帰り、空襲で破壊された街で行方不明の両親を捜すうちに幼なじみの女性と再会して恋におち結婚しますが、休暇が終って前線に復帰すると命を助けたパルチザン青年に撃たれて戦死してしまうというのがストーリーで、戦争映画といっても戦時下のドイツの市民生活や恋愛模様の描写がメインです。映像はサークらしく非常にきれいで、空襲シーンは結構迫力がありました。いかんせん、レマルクの原作小説自体が凡作なのであまり印象が残らない映画の出来になってしまいました。ラスト、妻から来た子供ができたと知らせる手紙に手を伸ばしたところで息絶えるのは、「西部戦線異状なし」のまるっきり二番煎じでした。サークはナチス迫害を逃れてアメリカに亡命したオーストリア人ですが、俳優の息子はドイツに残りロシア戦線で戦死しています。きっとサークは亡き息子のことを偲びこの映画を撮ったのではないでしょうか。 [DVD(字幕)] 6点(2009-05-06 08:58:25) |
2410. 寒い国から帰ったスパイ
《ネタバレ》 原作はジョン・ル・カレのスパイ小説の金字塔です。東西冷戦時代、東独の保安司令官ムントによってエージェントを次々に抹殺された英国情報部員リーマスはロンドンに召喚されます。そこで彼は憎きムントを失脚させるべく計画された「ローリング・ストーン作戦」が計画されていることを聞かされ、情報部をクビにされた様に装いムントを陥れるために東独(寒い国)に潜入する指令を受けます。早速東独工作員が接触してきて首尾よく東独国内に連れていかれますが、そこでは思わぬ展開が待ち受けていました。とにかく、名優リチャード・バートンの重厚で陰鬱な力演に圧倒されます。スパイ活動と言っても派手な見せ場は皆無で、敵をそして味方をいかに騙していくかというプロセスがリアルに描かれています。人間が将棋の駒のように使われる世界を、静かで陰影が濃い映像で見せてくれる映画です。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-05-05 22:34:13)(良:1票) |
2411. 哀愁の花びら
《ネタバレ》 この映画はジャクリーヌ・スーザンの小説「人形の谷」を映画化したものです。ストーリーは、ブロードウェイのショウビジネス界で生きる三人の女性が成功して転落する生きざまを描いたメロドラマです。巷ではマンソン事件で殺害されたシャロン・テートのこの映画での大根演技が伝説となっていますが、ちょっとそれは可哀そうです。はっきり言わせていただくと、あとの二人(バーバラ・パーキンス、パティ・デューク)もひどい演技で、シャロン・テートばかりが話題になるのは不公平でしょう。アメリカではこの映画は「史上もっとも陳腐な映画」という称号が与えられているそうですが、確かにお昼のメロドラマで半年かけて放送する様な波乱万丈のストーリーを2時間余りで見せようとしていますから、ほとんど大映テレビものを観ているような感覚です。ただこれでもかこれでもかと続くキッチュな展開は、観ているうちに麻痺してきて快感を覚えるほどです。スーザン・ヘイワードが大御所ミュージカルスター役で出ていますが、彼女の公演シーンの舞台装置のショボイのには口あんぐりでした。まあディオンヌ・ワーウィックが歌う主題歌が良かったので、プラス2点としておきます。 [DVD(字幕)] 3点(2009-05-05 00:45:05)(良:1票) |
2412. セブン・ビューティーズ
《ネタバレ》 パスカリーノ役のジャンカルロ・ジャンニーニの色男ぶりがすごかったです。イタリア映画らしく顔のアップ映像が多用されているので、余計に印象が強かったのかもしれませんが。パスカリーノの家族や女収容所長など、やたら太い女性ばかり出てきた印象がありましたが、なるほどこの監督はフェリーニ映画の脚本家だったのですね。女性監督ながら女性の描き方にフェリーニ的なタッチだったような気がしました。確かにこの主人公は生き残るためにとことん卑劣になりますが、人間の生への執着本能として肯定する描き方がされていて、それは自分としては納得できると思いました。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-05-02 18:57:09) |
2413. デス・プルーフ in グラインドハウス
《ネタバレ》 一言で言うと、緻密に計算して撮ったおバカ映画でした。あのタランティーノらしさが爆発の、女たちの下品な無駄話についてこられるかがこの映画を楽しめるかどうかのハードルでしょう。後半のカーチェイスは、1970年代映画でよく観たプロットを21世紀の感性で再現した興奮ものです。ラストは本当に爆笑ですが、あそこら辺は完全にラス・メイヤー映画のオマージュになっていますね。予告編が流れる前のチープな音楽と静止画面は、30年前の洋物ポルノ映画館で観たものを思いださせてくれて懐かしかったです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-05-02 09:38:06) |
2414. G.I.ジョー(1945)
《ネタバレ》 第二次世界大戦のアメリカ人従軍記者で、ピュリッツアー賞を受賞したアーニー・パイルが主人公です。彼は北アフリカ戦線でロバート・ミッチャムが率いる部隊に配属され、その後彼は部隊とともに転戦し、イタリアのモンテ・カッシノ戦でロバート・ミッチャムが戦死するまでを描いています。一応アーニー・パイルが主人公なのですが、映画はアーニー・パイルの眼に映った兵士たちの群像劇になっています。派手な戦闘シーンはほとんどなく、陣地や塹壕での兵士の描写がメインで、一般の兵士の不安・怒り・喜び・悲しみが伝わってきます。ロバート・ミッチャムが押さえた演技で好演しています。アーニー・パイルはその後沖縄戦取材中に伊江島で戦死します。映画が公開された1945年にはすでに亡くなっていたのですが、作品中でそのことに触れていないのがちょっと奇異に感じました。GHQは戦後接収した東京宝塚劇場を「アーニー・パイル劇場」と名づけて彼を偲びました。 [DVD(字幕)] 5点(2009-05-01 21:39:45) |
2415. タロットカード殺人事件
ウッディ・アレンとスカーレット・ヨハンセンの漫才コンビは意外といけますねえ。アレンのマジシャンぶりがまた良く似合っています。NYが舞台だとマスコミ業界人を演じることが多いですが、ウッディ・アレンは売れない芸人役が似合っていると思いませんか。相変わらずヒッチコックとかの過去の名画へのオマージュがちりばめられていて、楽しませていただきました。この映画を見てふと思ったこと…日銀総裁とウッデイ・アレンは顔面相似形だ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-04-30 22:54:15) |
2416. 殴り込み戦闘機隊
《ネタバレ》 両足義足のハンディキャップをものともせず、第二次世界大戦での英空軍エースパイロットになったダグラス・バーダーの伝記映画です。第二次世界大戦のエースパイロット(撃墜王)の伝記・自伝で映画化されたのは他に「撃墜王アフリカの星(ハンス・ヨアヒム・マルセイユ、独)」「大空のサムライ(坂井三郎・日)」があります。三人の中ではダグラス・バーダーが最も出世していますが、その分エピソードとしては地味で、映画でも戦前に墜落した彼が、苦労して義足で空軍に復帰して再び戦闘機乗りになるまでのストーリーに重点が置かれています。上映時間の半分強がこのエピソードなので、戦争映画というよりも難病もの映画という雰囲気でした。戦時中のエピソードも時代考証が甘く、これといった見せ場もなく終ってしまいます。伝記映画を本人が存命中に作ると、やはりいろいろ配慮があるのでつまらない代物になってしまいます。ちょっとマニアックですが、誰かアドルフ・ガーランドの伝記映画を撮ってくれないかなあ。 [ビデオ(字幕)] 4点(2009-04-30 21:50:46) |
2417. 黒猫・白猫
《ネタバレ》 クストリッツァワールド炸裂で、観終わったあと頭の中にもジプシーブラスが鳴り響いていました。ほんと、癖になります、クストリッツァの映画は。ダダンも良かったけど、個人的にはあの尻で釘を抜く芸をするサングラスの歌手がツボでした。結構素人を使っているみたいだけど、こういうテンションの映画にしてしまうとあまり違和感ないですね。ちなみに、ゴッド・ファーザー役はただの靴屋さんだそうです。そしてラストにはクストリッツァ映画には欠かせないミキ・マノイロヴィッチが出てきて嬉しかったです。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-04-27 19:06:36) |
2418. 非情の罠
《ネタバレ》 キューブリックの実質的デビュー作で原作も彼のアイデアですが、結構ストーリー展開に粗さが目立ちますね。でもそこはキューブリック、あのマネキン大乱闘を筆頭に随意にキューブリックらしい構図と伏線があって興味深い作品です。ただあの女の描き方だけは訳わからんし、とってつけたようなラストにも納得がいきません。そこら辺は、キューブリックも若かったということでしょうか。 [DVD(字幕)] 6点(2009-04-27 00:08:38) |
2419. 何という行き方!
《ネタバレ》 他愛のないストーリーなのですが、ほとんどジョークと言えるほど豪華な男優陣キャストで見せるシャーリー・マクレーンのコスプレ映画です。マクレーンが結婚する4人の旦那が始めは貧乏だが(3人目のロバート・ミッチャムを除く)、成功して金持ちになるが不運に見舞われて死んでしまう。未亡人になるたびにマクレーンに遺産が転がり込みますが、亡き夫の苗字をミドルネームにするので、マクレーンの名前がどんどん長くなってゆくのが傑作です。見どころは、イーディス・ヘッドが手がけたマクレーンの衣装で、特にロバート・ミッチャムと結婚しているときのドレスのとっかえひっかえはすごいです。ポール・ニューマンの珍しいおバカ演技も見ものです。こんな楽しい作品があるので、1960年代の映画は目が離せません。 [DVD(字幕)] 7点(2009-04-24 22:58:30)(良:1票) |
2420. コールド マウンテン
《ネタバレ》 骨太のラブストーリーで、ゲスト・スターが豪華でした。アメリカの美しい風景を見事に映したカメラが素晴らしく、ストーリーよりもはるかにこの作品の価値を高めていると思います。南部訛りで演技しているらしいですが、レニー・ゼルウィガーの口調が私にはわざとらしすぎるように感じて鼻につきました。全体として、この作品は男が悲惨な扱いを受け過ぎではないでしょうか。ジュード・ロウはなんだかニコール・キッドマンに種付けするためだけに650キロも悲惨な目にあって旅したようなものですよね。かわいそうすぎます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-04-24 22:57:17) |