2441. 史上最大の作戦
《ネタバレ》 この映画は、第二次世界大戦の一つの作戦をテーマに作られた初めての映画で、実はこの映画以前のハリウッド戦争映画は、意外と製作費をかけた大作がないのです。制作後40年以上たち、その後同じノルマンディー上陸作戦がテーマの「プライベート・ライアン」が作られたりして影が薄くなっていますが、戦争映画の金字塔であることは間違いないでしょう。監督が国別パートで3人(実際にはプロデューサーのザナックもメガホンをとっているので4人)いるのでタッチが異なるところはありますが、各シークエンスがそれぞれ一つの映画にできるほど素晴らしい映像です。街中に降下してしまって全滅する空挺部隊を、教会の屋根に宙づりになったレッド・バトンズの視点で描く「サンメールエグリーズの虐殺」は、この映画でも屈指の名場面です。出演者が多くて各自の登場時間が少ないのですが、かえって大きな歴史事件を目撃しているようで良いのではないでしょうか。当り前のようですが、ドイツ語・フランス語で演技していることは評価できます。 [DVD(字幕)] 8点(2009-03-29 13:27:02) |
2442. 女と男の名誉
《ネタバレ》 マフィアのお話ですが、語り口が絶妙ですね。シリアスでないけれど、コメディでもないというヒューストン流のストーリーテリングは好みが分かれるところでしょうが、私は好きです。ジャック・ニコルソンが押さえた演技をしているのは珍しいですね。また、アンジェリカ・ヒューストンがドンフェルドの衣裳が素晴らしいこともあり、ゴージャスです。ちょっと不満なのは、アンジェリカ・ヒューストンが中盤からストーリーに絡まなくなって、ラストシーンまで画面に表れなくなってしまうことです。キャスリーン・ターナーともっと絡ませてやると、お話がもっと面白くなったと思うんですけど。そう言えば、この映画の中でアンジェリカ・ヒューストンとキャスリーン・ターナーが一緒のシーンがひとつもなかったような気がします。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-03-25 00:24:38) |
2443. いつか晴れた日に
《ネタバレ》 アン・リーがオースチン原作物を監督したことは意外でしたが、作品の出来は上々でした。この種の題材はジェームス・アイボリーが手がけていますが、人物像の掘り下げ方が鮮明でアン・リーの方が手腕は優れていると思います。エマ・トンプソンは目の演技がいいですねえ。ケイト・ウィンスレットを捨てて持参金つきの女と結婚するウィロビーにも最後に暖かい視線を向けているところが良いですね。アラン・リックマンがまた渋くてカッコ良い。彼のベスト・アクトではないでしょうか。食事のシーンにこだわることで知られるアン・リーですが、さすがに英国料理では見せ場が作れなかったみたいで可笑しかったです。 [DVD(字幕)] 8点(2009-03-24 23:16:58) |
2444. 戦艦バウンティ
1789年に起こった史上名高いバウンティ号反乱事件の3度目の映画化です。バウンティ号反乱事件は1933年に「In the Wake of the Bounty」(日本未公開)、1935年「南海征服」、1984年「バウンティ/愛と反乱の航海」と4回も映画化されています。英国庶民にはこの事件は人気があるそうで、日本人の「忠臣蔵」好きと共通するものがあるそうです。監督は「西部戦線異状なし」のルイス・マイルストンで、この作品が彼の最後の監督作です。大作だけあって、史実に基づき建造されたバウンティ号とかタヒチでロケとか見るべきものがあります。ドラマはブライ艦長とクリスチャンの葛藤が軸になって展開するのですが、キザな伊達男という設定のクリスチャンが艦長の暴虐に怒りをおぼえ、性格がかわったように反乱の指揮をとるようになるのが面白いです。二人の関係は、吉良上野介と浅野内匠頭と言えば分りやすいですね。リチャード・ハリスが水夫ミルズを好演して盛り上げています。この作品撮影時のマーロン・ブランドはわがまま放題で、監督・プロデューサーの苦労は伝説になっています。そしてすっかりメジャーから嫌われて、この後マーロン・ブランドは「ゴッド・ファーザー」まで大作には声がかからなくなりました。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-03-19 11:35:07) |
2445. シューティング・フィッシュ
ファンタジックな青春詐欺師物語ですが、残念なことに脚本の出来がいまいちでした。音楽はセンスが良いのですが、ダニー・ボイルやマイケル・リッチーに比べてこの監督は曲の活かし方が下手で、浮いてしまっています。でも、ケイト・ベッキンセールがいいので+1点。この映画の彼女は実にチャーミングで必見の価値ありです。 [ビデオ(字幕)] 5点(2009-03-15 12:24:31) |
2446. ラン・ローラ・ラン
《ネタバレ》 久しぶりに「アイデアで勝負!」という映画に出会いました。ジャーマン・テクノに乗って走りまわるローラの姿は実に爽快!バギーパンツ姿で走るローラは下半身がどっしり(安産型)しているから走るフォームに説得力があります。しかし、恋人のマニの情けなさはツボにはまります。こいつが自転車に乗った浮浪者を追いかけるときの走りっぷりは、ローラと対照的でおかしかったです。監督の意図が?だったのは冒頭ローラが走り出す前の部屋でテレビがドミノ倒しの番組を放送していますが、テレビの音声が日本語なんです。これはなんなのでしょうか。 [DVD(字幕)] 7点(2009-03-15 12:21:37)(良:1票) |
2447. アウト・オブ・サイト
《ネタバレ》 時系列をいじくったり、シーンによってはブルーを強調した画面にしたりとソダーバーグの遊びが目立つ作品でした。この遊びは人によっては好みが分かれるところでしょうが、私にはイマイチでした。観ていてタランティーノだったらもっとキレた映画にするだろうなあと思いました。笑ったのが1シーンだけ登場のマイケル・キートンです。FBI捜査官レイ・二コレットって「ジャッキー・ブラウン」にも出てたじゃん、FBIとでかいロゴ入れたTシャツ着たFBI捜査官がいるかい!というところです。 [DVD(字幕)] 6点(2009-03-10 00:28:19) |
2448. ハワーズ・エンド
エマ・トンプソンが魅力的だったのと、アンソニー・ホプキンスが英国中流階級のスノッブを演じて相変わらず上手いなあという感想しか正直言って残りませんでした。ストーリー展開が作劇風なので役者の演技を見せる素材としてはこの原作は良いのでしょうが、もう少し工夫して演出をドラマチックにして盛り上げても良かったのではと思います。それぞれのエピソードがみな唐突過ぎる感じがするのが最大の難です。 [DVD(字幕)] 5点(2009-03-10 00:08:48) |
2449. 未知への飛行
《ネタバレ》 2時間近く上映時間があるのに、全く音楽を使わずに創られた映画というのは珍しいでしょう。それは徹底していて、ほとんど全編が会話と会議の場面ということもあって、効果音としてすら音楽がないのです。そして水爆の爆発を表現した「キーン」という電話回線が熔ける音は、映画史上に残る効果音です。とにかく緊張感が半端じゃない。ヘンリー・フォンダのアメリカ大統領演技は、鳥肌がたつほど素晴らしかったです。私が今まで観た中で一番怖い映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2009-03-07 20:18:21)(良:2票) |
2450. 偶然の旅行者
《ネタバレ》 何回も観れば味が出てくる映画のようですが、私にはイマイチでした。確かにウィリアム・ハートは優柔不断ですが、キャスリーン・ターナーが演じる別居中の妻が自分勝手すぎるように思えます。そんな妻なのに、よりを戻そうと言われてウィリアム・ハートがぐらつくところが、彼の優柔不断さを際立たせる演出なのかもしれませんが。観てておかしかったのは、ウィリアム・ハートの兄弟たちの変人ぶりで、ジーナ・デイビスよりよっぽど変ってると思いましたよ。 [DVD(字幕)] 6点(2009-03-03 21:54:11)(笑:1票) |
2451. シャロウ・グレイブ
《ネタバレ》 ダニー・ボイルのデビュー作ですが、全編に彼の才気が感じられる佳作です。トレスポの前に撮った作品が、トレスポと違ってスコットランドのヤッピー達を主人公にしているというのがおかしい。三人のヤッピーをとことんいやらしく描いて観客に好感を持たせない演出が上手い。本当にダニー・ボイルは音楽の活かし方が巧みですね。エンディングに懐かしのアンディ・ウィリアムスを使うセンスには脱帽です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-03-03 21:52:17) |
2452. シューテム・アップ
《ネタバレ》 超痛快、B級テイスト満載のノン・ストップムービーでした。次はどんな手で撃ち合いをみせてくれるのか、と目が点になっているうちにエンドまで一直線です。屋上のネオンでメッセージのシーンは笑いました。この映画は、良質のコメディだと思って観るのが正しい観方です。ポール・ジアマッティの悪役が最高! [DVD(字幕)] 7点(2009-02-27 23:31:29) |
2453. マイケル・コリンズ
《ネタバレ》 我々には馴染みが薄いアイルランドの独立の歴史を、マイケル・コリンズという人物を軸にして描いています。つい最近まで続いていた北アイルランド紛争はカトリックとプロテスタントの対立という日本人には理解しがたい構図ですが、ニール・ジョーダンは外国人にも解りやすい英国からの独立闘争をストレートに描いています。「革命は分裂する」の格言通り英国との条約締結を巡ってアイルランドは内戦状態になるのですが、コリンズと対立するデ・ヴァレラを演じるアラン・リックマンの演技が光ります。アイルランドでは内戦のことを語るのは今でもタブーとされているそうですが、ニール・ジョーダンは独自の解釈を交えて骨太にこの作品を一つの叙事詩として撮っています。 [DVD(字幕)] 7点(2009-02-26 22:20:15) |
2454. ジャッカルの日
《ネタバレ》 サスペンス映画の最高傑作です。よくこの物語はジャッカルとルベル警視の一騎打ちのように語られることがありますが、本質はOSSとフランス政府の死闘を描いているのであり、二人は組織の代表として対決します(もっとも圧倒的にジャッカルの方が自由裁量権は多いのですが)。フレッド・ジンネマンは、ルベル警視が司令塔となってフランス官僚機構がジャッカルを追い詰めてゆく過程を、ドキュメンタリーのような冷徹な映像で描写しています。ジャッカルの情事が無駄なシーンという意見もありますが、この行動が後にパリに侵入する際に警察を撹乱する伏線になっていると思います。最大の疑問は、こんな大傑作がアカデミー賞でどの部門にもノミネートすらされなかったことでしょう。 [映画館(字幕)] 10点(2009-02-20 01:41:54) |
2455. 独立愚連隊
《ネタバレ》 登場人物がみなキャラがたっていて、またセリフも切れがよくてものすごくテンポが快調。三船敏郎の大隊長は、彼のキャリアで他に見ない役柄ですね。ラストの八路軍との戦闘シーンは、日本映画史上に残るものですが、言いすぎかもしれませんがワイルドバンチを彷彿させます。この勢いが、大傑作「独立愚連隊西へ」と続くのですね。 [DVD(邦画)] 7点(2009-02-18 20:07:55) |
2456. 今日も僕は殺される
《ネタバレ》 設定が秀逸なので期待して観はじめましたが、中盤から展開がどんどんおかしくなっていくのでがっかりでした。戦いのシーンも他の映画のイメージをつなげたようなもので、新鮮味は感じられません。特殊効果も、この展開では見せ場は少ないしパッとしませんでした。 [DVD(字幕)] 4点(2009-02-18 19:36:22) |
2457. ザ・ビーチ(2000)
《ネタバレ》 この結末はないですよ。ディカプリオは発狂するは、地元民にバックパッカーは射殺されるし、中盤までの展開は結構緊迫していたのに。ビーチでやりたいだけやって、最後は皆別れて元の生活に戻りましたって落ちを、正直私は予想できませんでした。ビーチの風景は確かに良く見つけたなと思うほどきれいですが、鮫に襲われて瀕死の仲間をほっといてビーチバレーして遊ぶシーンは嫌悪感がわきました。自分もですがこのコミュニティが「楽園」だと思えない人には、この作品は否定されます。「楽園」かどうかは、自然や風景ではなく人間の営みが決めることでしょうから。 [DVD(字幕)] 4点(2009-02-17 23:28:58) |
2458. 蜘蛛女のキス
《ネタバレ》 前半は刑務所内での舞台劇を観るような二人の囚人の対話が続きます。途中で明らかになりますが、刑務所長からモリーナは政治犯バレンティンをスパイする役目を負わされています。モリーナがバレンティンに語る空想の映画のストーリーは、バレンティンを裏切ることを命じられている自分の姿を投影しています。空想の中でしか生きられないホモの男と、現実を変革することに命をかける政治犯という全く対照的な二人が理解しあえるようになっていくのが素晴らしい。モリーナはバレンティンから獄外の同志への連絡を頼まれ苦悩の末引き受けますが、当局には密告せずおとりとして釈放されて前半とは打って変わって激動のラストへ突き進んでいきます。私はゲイの映画は苦手ですが、ウィリアム・ハートが演じる身を呈して真実の愛を貫こうとするモリーナの悲劇には圧倒されました。映画史上もっとも切ないオカマの演技です。 [ビデオ(字幕)] 9点(2009-02-17 23:19:29)(良:1票) |
2459. 砂漠の流れ者
《ネタバレ》 ペキンパーが撮った唯一のラブストーリーです。流れ者が定着して事業を起こすというアメリカンドリームみたいなお話ですが、ペキンパーは寓話として観て欲しかったのでしょう。ラスト、自動車に立ちふさがって轢かれて死んでゆくケーブル・ホーグに、消えてゆく西部劇が象徴されています。とにかくステラ・スティーブンスがいい。それに尽きます。この人、こんなにいい女優だったんですね。 [DVD(字幕)] 8点(2009-02-13 12:55:06) |
2460. フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ
《ネタバレ》 私が初めて封切時に映画館で観た東宝特撮映画で、いまだに軽いトラウマが残っています。ゴジラシリーズ以外の東宝特撮怪獣映画は、ハードな物語設定で怪獣の恐怖を追及する作品が多いのですが、本作はその中で最高傑作と言えるでしょう。東宝特撮怪獣映画があえて避けてきた「捕食者」としての怪獣をテーマにしたことが観る者の本能的な恐怖心を刺激します。前作で地底怪獣バラゴンに「捕食者」的なキャラクターを持たせていますが、直接描写は見られませんでした。ところが本作では、人間型怪獣フランケンシュタインがヒトを貪り食うというカニバリズム的な映像を見せてくれるわけで、これはガイラの造形と相まって実に怖いです。特筆すべきは自衛隊の対怪獣戦で、軍事作戦としてリアルな演出で見せてくれます。メーサー殺獣光線車が逃げるガイラを追って光線を放射すると、ガイラの前方の木が光線に当たってと激しく吹き飛ぶシーンは、現在の眼で観ても興奮させられます。 [DVD(邦画)] 7点(2009-02-07 11:51:54)(良:1票) |