2541. サンライズ
《ネタバレ》 こんなに古いサイレント作品であることも知らなかった予備知識が皆無の作品です。教会に辿り着くまでの世も末かという重苦しさ、教会を出てからのユーモアをちりばめたみずみずしい喜びに溢れる楽しさ、帰路の悲劇とハッピーエンドの結末。ありきたりで分かりやすいストーリーですが、最後まで見入ってしまったのは、主役2人の演技力ときめ細かい演出によるものなのでしょう。私も教会の神父さんの言葉にホロリとさせられました。悪女がもう少し絡んでくれればよかったのですが、美しく清純で可憐な奥さんと対決させるなどというのは罰当たりな事であって当時では考えられなかったのでしょう。 [映画館(字幕)] 8点(2009-05-01 01:05:39) |
2542. 死刑執行人もまた死す
《ネタバレ》 冒頭、「死刑執行人」ハイドリッヒのゲスの権化ぶりに、どのようにして亡き者にされるのか期待した途端、銃撃され程なく逝ってしまいました。犯人探索におけるゲシュタポと地下組織及びプラハ市民の対決は、テンポのよいスリリングな展開を経て思いもよらぬ結末に至る上質なサスペンスと戦時下における多様な人間模様に、瞬時も目が離せませんでした。ごく普通の庶民のごく普通の肉親への情を持つマーシャが、八百屋の老婆の最期、父の遺言に触れて芽生えた民族の誇り。戦時中の当時に監督が訴えたかったのでしょう。売国奴チャカの末路に同情は出来ませんが、「自由を勝ち取るための戦い」の名の下に人が人を陥れる陰惨さを感じました。 [映画館(字幕)] 7点(2009-04-30 00:24:17) |
2543. 刑事コロンボ/白鳥の歌<TVM>
シリーズのセールスポイントである、状況証拠を1つ1つ積み重ねて犯人を追い詰めていく「じわりじわり感」を堪能できます。今回、警部の寄り倒されそうになりながら、勝ちを収めたうっちゃりは鮮やかでした。余談ですが、葬儀屋さんのセールストークの絶妙さにうなってしまいました。 [DVD(字幕)] 6点(2009-04-26 17:31:31) |
2544. 刑事コロンボ/愛情の計算<TVM>
シンクタンクの装備には隔世の感がありますが、子供に対する盲愛は時代を超えた普遍的なものがあるようです。今回の警部の詰めの一手はダーティですが、勝つために一番の泣き所を突くのは止む無しです。チェス盤をひっくり返すMM7に、父とはさみ将棋をして負けると盤をひっくり返して泣いていた幼い時の事を思い出しました。 [DVD(字幕)] 5点(2009-04-26 16:57:40) |
2545. 犬神家の一族(1976)
《ネタバレ》 本作で記憶にあるのは、金田一が石坂浩二、音楽、逆立ち死体、喋る偽スケキヨ、お琴の師匠の5点。30年を経ての鑑賞となりました。インパクトのある猟奇の演出は表面上の恐ろしさであり真の恐ろしさは肉親との愛憎から人は鬼になれる事を見せ付けた松子です。演ずる高峰美枝子に圧倒され胃にズシリと堪えました。金田一探偵の飄々さは胃薬のようで縋ってしまう私がいました。余韻の残る去り方は作品全体の味わいを深めるもので見事さに唸らされました。 [DVD(邦画)] 8点(2009-04-26 03:19:30) |
2546. ナチョ・リブレ/覆面の神様
小学生の頃からのプロレスファンです。マスカラス対デストロイヤーの一戦を記憶しています。多少の期待があったのですが、しょっぱい作品でした。脚本と俳優と映像から漂う薄汚さとヘタレ感、笑えぬギャグ、見所のない試合模様。早送りしたいのを堪えながらの鑑賞でした。上映時間の短さに免じて1点です。 [DVD(字幕)] 1点(2009-04-24 22:21:34) |
2547. リスボン特急
小学生の頃に観たいと思ってからウン十年、念願の初鑑賞となりました。犯行時に犯人達は一言も語らず非常ベルや列車の音のみが響いています。丹念な描写とあいまって見入ってしまいました。 そして全編を通じて登場人物全てが必要最小限しか語りません。しかし、その胸の内の溢れ出そうな想いは分かるのです。犯人一味のリストラされた重役とその妻、頬を黒い涙が伝っているゲイの情報屋、スコッチを空けるコールマン、シモン、カティのスリーショット等々。監督の力量と言えるのでしょう。 「刑事が人間に抱く感情は疑いと嘲りだ」と言い放つのとは裏腹さで現実を受け入れているラストシーンのコールマン。「因果な商売だが、これが私の仕事」との胸の内が想像されました。子供時分に抱いた憧れは薄れていますが、本作のドロンは素敵でした。 [DVD(字幕)] 7点(2009-04-19 15:07:50)(良:1票) |
2548. 刑事コロンボ/美食の報酬<TVM>
うわべは上品かつ知的でありながら腹のうちはとてつもなく狡猾。私好みの見応えのある犯人ですが、墓穴を掘ってしまった最後には拍子抜けしました。全編に亘ってカロリーの高そうな料理を食している警部に「肥えるよ」という思いと、被害者の友人達の心意気も味わっているのかもしれないという思いが浮かびました。 [DVD(字幕)] 6点(2009-04-15 15:35:59) |
2549. 刑事コロンボ/死者のメッセージ<TVM>
《ネタバレ》 記憶に残っていない作品でした。高名な推理作家との対決で、情の部分では警部のスピーチ等見るべき点はあるものの、知恵比べの部分では釈然としない点が幾つかあり、また、彼女の犯行だと感づいていた秘書と弁護士も中途半端な存在で終わり、盛り上がりに欠ける作品でした。 [DVD(字幕)] 6点(2009-04-15 13:24:42) |
2550. 007/慰めの報酬
前作の終了直後の設定と言う事なので、駆け出しのままの007です。私怨を抱くなとのMの言葉が耳に入らないのは当然なのでしょう。派手なアクションは洗練されていない粗野な感じが良く出ていましたが、大掛かりな陰謀の幾つかで意味不明な点があり、今ひとつ面白さに欠けました。風貌からポランスキー監督が思い浮かんだグリーンは、今後の作品を考え、敢えて線が細い悪党としたような気がしました。 [映画館(字幕)] 6点(2009-02-01 22:49:33) |
2551. マンマ・ミーア!
予備知識はアバのみ。中学・高校時代アバに夢中でしたので、全編に亘る楽曲の数々に歌い出してしまいそうになるのを何とか堪えました。もう、ストーリーは二の次、三の次です。期待以上だったのが、メリル・ストリープ、コリン・ファース、ピアーズ・ブロスナン、ステラン・スカルスガルドが歌って踊っていた事で心底驚きました。弾けている皆さんに「眉間に皺寄せてばかりでなく、元気出して、明るく暮らそうや」と励まして戴きました。 ♪♪So I say thank you for the music ♪♪ [映画館(字幕)] 8点(2009-02-01 22:11:25)(良:1票) |
2552. 最高の人生の見つけ方(2007)
旅から戻った後の二人の食事風景が私には本作が言わんとしているところに思えました。白けた思いで眺めていた旅の模様でしたが、途方も無いほどの豪勢さであるからこそ、このシーンが生きてくるのだと感じました。また、伴侶を一生愛し抜ける事について考えさせられた作品です。両優は流石の好演で良作ですが、邦題がいただけません。人生に最高も最低もないと思いますし、見つけ方とはどう解釈してよいのか 考えても分からないです。 [DVD(字幕)] 7点(2009-01-23 23:41:51) |
2553. 赤い殺意(1964)
《ネタバレ》 初めて観ました。貞子、その亭主、貞子にまとわりつく男、亭主の愛人、それぞれ個性が際立った4人が織り成す人間模様の生々しさは、手に汗が滲むものでじわりじわりと画面に引きずり込まれてゆきました。従順で愚鈍な貞子は哀れみを誘いますが、なかなかどうして、打たれ強く生きる女性だったのです。依存するだけの男と中途半端に利口な愛人が共に自滅してしまったのとは対照的です。写真を見せられてもシラを切り通す貞子の姿は圧巻でした。誰が誰を手にかけるのか?と数多の想像が空振りしてしまった結末は、妻を露骨に使用人扱いする嫌らしい亭主の立場が将来は逆転するであろう事が想像されるもので、私の考えは浅いと思わされるものでした。 [映画館(邦画)] 8点(2008-11-02 20:26:20) |
2554. 白い馬(1952)
《ネタバレ》 躍動感、臨場感、ほのぼのさが溢れる映像です。心穏やかな少年の内に秘めた芯の強さ、白馬の誇り高さには驚かされます。絆の強さ故の戻る事を全く考えぬラストシーンに呆然とさせられました。白馬と少年が穏やかに過ごせる場所がこの世にはないのでしょうか。世間の常識、倫理観とやらいうものから外れた友情や愛情がこの世から除外されなければならないのでしょうか。そうであったとしても絆を互いに切る事をしない「意志」に感じ入った作品です。 [映画館(字幕)] 8点(2008-07-28 01:15:53)(良:1票) |
2555. 赤い風船
《ネタバレ》 映画の旧称が活動写真である事を思い起こさせる、動く写真の魔力を実感させられました。ラストは切ないです。少年と風船が穏やかな日々を過ごせる場所は空の彼方しかなかったのでしょうか。 [映画館(字幕)] 8点(2008-07-28 00:58:52)(良:2票) |
2556. 幸せのちから
成功に到るまでの過程で丹念に描かれていた極貧生活は、理不尽さによるものではなく、払うべきものを払わぬ当然の報いによるもので誰の身にも起こり得る事です。子供に愚痴を一言も洩らさぬ姿勢に頭が下がります。かつ、貧しても鈍することなく、上司やビジネス相手に引き立ててもらえる資質に、気位が高いばかりだけでは成功できない事を気付かされます。父の頬を一筋の涙が伝う2つのシーンは押さえ切れぬ感情が胸に迫ってくる名場面です。ただ、観終わって今一つ物足りなさを感じました。それは成功の秘訣「数字と人に強いこと」の数字に強い部分の描写の物足りなさによるものでした。 [DVD(字幕)] 7点(2008-07-26 22:45:55) |
2557. 社葬
劇場で2度鑑賞した稀有な作品です。細かな部分は忘れていますが、大奥の女たちも裸足で逃げ出すであろう、男たちの群れを作って裏切り裏切られの権力争いのリアルさとコミカルさが印象深いです。佐藤浩市演ずる社長の息子に「あなたは父親のパンツでも洗いそうですね」と揶揄された緒形拳が「いけませんか、家族のためならパンツだってサルマタだって洗いますよ」と憤然とするシーンは忘れ難く「こんな人と結婚できればいいな」と思ったものでした・・・・・・。 [映画館(邦画)] 7点(2008-07-14 02:10:46) |
2558. インファナル・アフェア
《ネタバレ》 ディパーテッドを鑑賞して本作の存在を知ったクチです。結末に到るまで展開は同じでしたので、常に「次」が分かるのですが、リメイク作の不要で醜悪な演出が皆無のため、全編に亘りヒリヒリする緊張感が漂う良作でした。唯一違いがあった結末もリメイク作とは雲泥の差で、公僕・納税者のあるべき姿について考えさせられます。職務に命を張れるのは、この国を自分たちの手で良くしたいという一念からでしょう。保身しか感じられないラウが、無念の最期を遂げた二人の墓に敬礼する姿はこれ以上ないうそ寒い光景でした。 [DVD(字幕)] 7点(2008-07-02 19:37:17) |
2559. 告白(1981)
重い題材です。デ・ニーロとデュバルの抑えた演技に作り手の主張に奇を衒わない姿勢を感じます。追い落とされた真っ当な司祭が「砂漠が好きなんだよ」と言う毅然とした姿と彼の砂漠の墓標に、人の心のよりどころである信仰の世界においてさえ、このような不誠実が存在するのかと、ビリー・ジョエルのHonesty is such a lonely wordが身に沁みる作品でした。 [DVD(字幕)] 6点(2008-06-15 04:19:35) |
2560. 愛の流刑地
《ネタバレ》 信頼し愛する者の手にかかって息絶えたいという望みを愛しているから叶えてあげるという理屈。肌を合わせる事においてはパートナーの身体の安全に対する考え方に男性の真価が問われるものと考えます。よって痴情に溺れたただの殺人者が選ばれた殺人者だと悦に入っている姿は噴飯ものです。欲情のおもむくまま互いを貪り尽くした不倫の男女の行き着く果てが見えますが、臨場感のない脚本、演出、演技でした。例外であった冬香の母に3点、裁判長に1点を進呈します。特筆すべきはお水のおねえさんの如き検事とその上司で、本作の価値を決定的に貶める意味不明の駄キャラでした。 [DVD(邦画)] 4点(2008-06-15 03:49:21) |