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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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261.  おくりびと 《ネタバレ》 
最近の邦画にありがちなこと、①何でもセリフで説明し、表現の工夫を怠ってしまう、②結末ありきで物語が進行し、現実的にありえない極端な展開へのフォローもない、③とりあえず泣きに走れば何とかなると思っている。。。うれしいことに、本作はこのような邦画病に陥ることなく、映画らしい映画になっていました。「死」という重いテーマを丁寧に扱っているし、かと言って重苦しくなりすぎないよう笑いの要素も適度なバランスで入れてきており、監督や脚本家が映画人としての仕事をきっちりやってるなぁと感心しました。話の落とし所は予想通りでしたが、極端な泣きに走ることなく、説明過多でもなく、客を信用して作っていることが心地よかったです。象徴的なのが大悟と父親のエピソードで、普通の映画であれば、ラストのあのシーンでは父親の手紙か何かを登場させるでしょ。そして私を含め、観客は涙を絞り取られるわけです。しかし本作は、峰岸徹という役者と石ころという小道具のみで、それをやってしまった。安易に言葉には頼らなかったのです。こうした作り手の姿勢は大いに評価できます。さらに、アイドル演技の抜けない広末涼子を除いて役者も全員良かったし、本作は間違いなく「良作」の部類に入る作品だと思います。。。ここで、私の評価はあくまで「良作」止まりであり、「傑作」と呼ぶにはちょっと足りないかなという感じです。私達の死生観にも影響を与えるような鋭い視点がなかったし、結末も予定調和で、観客が思う以上のものがありませんでした。本作は映画として精巧に作られているためマイナス要素をほとんど持っていませんが、かと言って目立った加点要素も少ないかなぁという印象です。世界的な評価の高さはちょっと身の丈に合っていないような気がするのですが、外人さんにとっては、彼らが見たい美しい日本の風景が山ほど出てきたし、宗教色の薄い日本人独特の死生観を垣間見たことが面白かったのではないでしょうか。
[地上波(邦画)] 6点(2010-06-05 17:35:53)(良:1票)
262.  マンダレイ 《ネタバレ》 
素晴らしい作品でした。セットらしいセットがなく、役者も必要最低限の人数に絞り込まれ、物語と人間以外の要素をすべて削ぎ落とした体裁を取りつつも、アメリカという国家や人間社会の普遍的な真理という大きな題材を面白く、かつわかりやすく表現しています。本作の(表面上の)テーマは人種問題なのですが、「黒人はかわいそうでした」と結論付けるだけの短絡的な物語ではありません。支配のシステムを受け入れることで支配される側も救われていたのではないか?そして、虐げられてかわいそうに見える人間が、必ずしも善人とは限らないという真理を突いています。この題材において、マンダレイがアメリカの人種問題を象徴する集落であると同時に、主人公グレースもまた、薄っぺらな善意と強大な力を持つ国アメリカを象徴しています。黒人奴隷達を見たグレースは、自身が差別の当事者ではないにも関わらず「申し訳ないことをしました」と奴隷達に謝罪しますが、この謝罪の薄っぺらなこと。自身を「反省できる人間」という高みに置いてマンダレイを眺め、自分は差別を忌み嫌う善人であるとアピールしているだけにしか見えません。そんな彼女は、薄っぺらな正義感と無知から、マンダレイという社会を成り立たせていた秩序を勝手に破壊し始めますが、これは現在アメリカ合衆国がイラクやアフガンで行っていることです。フセインは軍事独裁政権であるという理由で、タリバンはテロ支援国家にして女性差別の権化として断罪され、排除されましたが、イラク社会やアフガン社会は、彼らの存在によって成り立っていました。これらの国々は、最終的には自由と民主主義を勝ち取らねばならないにしても、現時点では「早すぎた」のです。グレースが「授業」と称して黒人奴隷達に民主主義を押し付けるも根付かず苛立つ様は、まさに私達が見ているアメリカそのものでした。。。そしてこの映画の凄いのはラストで、底意地の悪いオチをビシっと決めてきます。グレースはアフリカの王族出身という黒人ティモシーに恋心を抱きますが、実は王族どころか賤しい身分の出身であったことを知るや、「裏切られた」という怒りから彼に制裁を加えます。結局、彼女も黒人を差別していた人間と大差ないことが証明されてしまうのです。また、時計の時間までを民主的に多数決で決めてしまったことから、彼女は元の生活に戻る術を失ってしまいます。この構成の巧さには驚きました。
[DVD(吹替)] 9点(2010-06-01 16:24:10)(良:1票)
263.  インビジブル(2000)
透明人間になったらエロに走るって、のび太くんと同じ発想なわけです。1億ドルバジェットの大作でこの内容、なんとも素っ頓狂な映画だなぁと思ったのですが、よくよく考えてみれば理に適っています。ただ人間が透明になっただけですからね。社会に影響を与えるような壮大な陰謀なんて実行できるわけもなく、覗きぐらいしかその能力を発揮できる場はないのです。透明人間という設定を徹底的に煮詰めると、必然的に本作の内容になったのだと思います。。。この企画にバーホーベン監督という人事はまさに適材適所で、エロとバイオレンスの描写は実に手慣れたものでした。本作はエロの場面が比較的少ないのですが、そんな数少ないエロ場面でも強烈な印象を残してみせるのはさすがバーホーベン。また、VFXを操らせるとハリウッドで一番の仕事をしてみせる男バーホーベン、ここでも相変わらずの腕前を見せつけます。透明になった科学者と透明になってない科学者が地下の研究施設で戦うだけというなんとも地味な内容の本作において、最大の見せ場と言えば透明化プロセスなのですが、ここでのビジュアルのインパクトはかなり強烈です。VFXの操り方や見せ方を完璧に心得ている監督でなければ、このインパクトは出せませんでした。本作において、バーホーベンはかなり良い仕事をしていると思います。。。問題だったのは脚本で、「Hollow Man(空っぽの男)」のタイトルに負けず劣らず中身がない。透明人間というネタでド派手な物語を作るのは難しいとは言え、ここまで面白みのない脚本はちょっと問題だと思います。登場人物は一様に魅力に欠き、「次はどうなるんだ?」という盛り上がりもない。バーホーベンが監督を引き受けていなければ、目も当てられない作品になったと思います。
[映画館(字幕)] 5点(2010-05-30 20:46:31)
264.  シャフト(2000)
サミュエルがかっこよすぎます。これまたかっこいい音楽に続いてのシャフト登場の時点で「このリメイクは成功したな」と思いました。しかし、肝心の話があまりにつまらなくて倒れそうになりました。。。オリジナルと同じ空気を出すために大作化を意図的に避けていることはわかるのですが、サミュエルの敵がアホぼんと街のチンピラでは、戦う前に勝負がついてるようなもの。クリスチャン・ベール演じるアホぼんも、ジェフリー・ライト演じるチンピラも単独では良いキャラだし、俳優もよく頑張っているのですが、シャフトの敵とするとどちらも役不足。シャフトは大した苦労もせず敵を追い詰め、あっさりと勝ってしまいます。このお手軽さ・無敵さは、もはやセガール映画の域に達しています。アクション映画なら、もうちょっと激しい攻防があるべきでしょう。せっかくシャフトが良かったのに、本作の失敗で続編が製作されなかったことは残念です。
[DVD(吹替)] 4点(2010-05-30 17:19:24)
265.  容疑者Xの献身
「HERO」は酷評し、「踊る大捜査線THE MOVIE」はレビューする気にもなれないほど大嫌いで、フジテレビ製作の映画には不信感しか持っていないのですが、本作の出来の良さには完全にやられました。謎の提示やネタばらしのタイミングが絶妙でサスペンス映画としてレベルの高い脚本だし、淡々としながらも激情を孕んだドラマには心を千切られるような思いがします。この映画の脚本は、日本映画界にありがちな、ただ原作を映画版に手直しただけの代物とは訳が違います。「映画として成立させるにはどうすればいいのか?」という工夫が見て取れるのです。原作は石神の心理描写が克明であり、それがサスペンスやドラマを大いに盛り上げていたのですが、一方映画版では無口な石神の感情をどう表現するかが大きな問題でした。ブツブツと独り言を言わせるのはヘンだし、かと言ってすべてナレーションで説明してしまうわけにもいかない。そこで映画版は、ガリレオこと湯川との対比によって石神が抱える人生への深い絶望と「献身」の重みを表現し、さらに石神と同類である湯川に彼の感情を代弁させることで、この問題を乗り切りました。ここでポイントだったのが堤真一というキャスティングで、原作ではハゲで小太りの醜男だった石神をいわゆるイケメンの部類に入る堤に演じさせたことは大きな改変でした。しかし、原作者が佐野史郎をイメージしていた湯川を福山雅治が演じたことでその人物像が変化したことに合わせ、石神も原作に準拠するのではなく、映像版「ガリレオ」に合わせた形に変更する必要がありました。湯川が石神の代弁者となるためには彼と紙一重の人物像であることが重要であり、人を惹き付ける魅力が偶然備わっていた湯川は幸福な人生を送り、根は同じであっても魅力に欠けた石神は日陰の人生を歩んでいる(冒頭、福山雅治が「愛など下らん」とキザに言う場面は、実はかなり重要)、そのためには堤である必要があったのです。さらに、蛇足と言われている雪山の場面にも意味が感じられます。二人が顔を合わせてホンネを語りあう特殊なシチュエーションとして雪山という舞台は必然性があるし、石神は真相に気付いている湯川を殺すつもりで雪山に誘い出したにも関わらず彼の命を助け、湯川は自分が殺されるかもしれないことを知りながらこの誘いに乗った。性根でつながっている二人の特殊な関係性を描くために、この場面は必要だったと思います。
[地上波(邦画)] 9点(2010-05-28 21:38:43)
266.  マイアミ・バイス
テレビシリーズは未見なのですが、この映画版は刑事アクションのひとつの究極形とも言える仕上がりとなっています。フェラーリを乗り回し、「ちょっと飲みに行く」と言って自前の高速艇でキューバのバーまで行き、プロのパイロット以上の腕前で飛行機を操縦するというありえない刑事達が、海外にまで出張して大活躍という無茶苦茶な話なのですが、これを徹底的にカッコよく、バカっぽくなく作ってみせています。「バッド・ボーイズ」や「リーサル・ウェポン」の下地を持ちながら、これを「ヒート」や「コラテラル」のような印象の作品に変えてしまっており、荒唐無稽な刑事アクションを極限まで煮詰めた結果が本作だと言えます。プロの男達を描かせればいつもながらのマイケル・マン節全開で、少ない言葉で状況を理解し、グダグダ悩まず即座に物事を決断するカッコいい男達で溢れています。主演のコリン・ファレル、ジェイミー・フォックスはもちろんのこと(コリンはやたら太っている場面がいくつかあったのが気になりましたが)、敵キャラも状況判断に優れていて、生きるか死ぬかの世界で勝ち抜いてきた男達にきちんと見えています。さらには、コリンとジェイミーの上司にあたる小林亜星みたいな太ったおっさんまでがカッコいいのですから、相変わらずマイケル・マンはプロの男を描かせると最高の仕事をします。銃火器へのこだわり、銃撃シーンでのリアリティの追求も相変わらずで、麻薬取引の現場では後方にスナイパーを待機させておき、いざ撃ち合いになった場合には圧倒的優位をとるという犯罪組織側の戦略はなかなか合理的。さらに、スナイパーがバカでかい口径の銃を撃ち込むと、弾が当たった人間はバラバラに砕け散るという現実的な描写もあり、過去の作品以上に銃の描写にはこだわりが見られます。おまけに俳優達は全員銃の構え方が様になっていて、わかってる監督が撮るとアクションはここまで引き締まるものかと感心します。脚本の練り込み方も良く、テレビシリーズと同様の構成にするためかアクションをラストの銃撃戦のみに絞っていて映画としては見せ場に欠けるのですが、見せ場を分散させなかったおかげで物語がラストの銃撃戦に向けて一直線に進んでおり、チームメンバーが誘拐されたところから一気に話のテンションが上がっていく辺りの高揚感はなかなかのものでした。ラストに至る物語もよく作り込んであって退屈させません。
[DVD(吹替)] 8点(2010-03-12 20:37:12)
267.  ダ・ヴィンチ・コード
2時間半、ひたすら退屈でした。原作の要約に終始するだけで話がまったく面白くなく、映画ならではの工夫や見せ場を入れているわけでもなく、わざわざ大金かけて映画化する必要があったのだろうかという印象です。せっかく映画というメディアを使いながら、謎のほとんどをイアン・マッケランに喋らせて終わりでは芸がなさすぎます。また、銃で撃たれた館長がその場で素っ裸になり、大の字に寝転んで息絶えるというダイイングメッセージの残し方は、映像化すると驚くほどマヌケです。このような文章と映像のギャップを埋める作業が脚本や監督に求められる機能のひとつなのですが、本作ではそれがほとんど機能していません。ロン・ハワードは仕事をしていたんでしょうか?ハワードは常に堅実な仕事をする人だけに、ここまで雑な仕事には驚きました。。。そもそも長大な原作を一本の映画にまとめることが不可能だったとも言えます。駆け足のダイジェストになってしまった結果、原作未読者にとっては情報量が多すぎて話を追い切れないし、既読者にとっては映画版ならではの見せ場に欠けた、ただのおさらいにしかなっていない。結局誰も喜ばない中途半端な出来になっています。「ダ・ヴィンチ・コード」の映像化に手を挙げたのは映画界のみならず、「24」の原案にするという意見もあったそうなのですが、2時間半にムリに詰め込むよりも、「24」にしてしまった方が良かったと思います。主人公がラングドン教授からジャック・バウアーに代わった「ダ・ヴィンチ・コード」って、それはそれで面白そうだし。
[DVD(吹替)] 2点(2010-02-08 00:14:52)(良:1票)
268.  プルーフ・オブ・ライフ
映画の展開そのままに、撮影現場でラッセル・クロウとメグ・ライアンが本当に不倫をしてしまい、ゴシップの種にはなったものの映画としてまともに鑑賞されなかった気の毒な作品ですが、実はかなりよく出来ています。トニー・ギルロイの脚本は相変わらずキレがよく、プロの男を描かせるとこの人は最高の仕事をします。要件をビシっと述べるソーンの話し方は本当にかっこよく、現場を知り尽くしたプロという設定に負けないキャラクターがちゃんと構築されています。このソーン役にクロウを配置できたことは幸運で、スーツを着て粘り強く交渉する知的な姿も、迷彩服を着て敵地に乗り込む元特殊部隊としての姿も両方完璧にハマっており、「この人に任せておけば安心だ」という安心感も漂わせています。筋肉隆々でありながら知性を感じさせ、おまけにラブシーンをやれる色気を持った役者はハリウッドでもかなり希少であり、クロウでなければ演じられなかったキャラクターだったと思います。彼に対するメグ・ライアンもなかなかのものでした。本作以降は急激に衰えるものの、少なくとも2000年当時はハリウッドのトップにいた女優さんだけあって、華があるし演技も悪くありません。「♪恋する女はキレイさ~」とヒロミ郷も歌ってましたが、全出演作中もっとも美しく撮られているのが本作でもあります。なぜか常にノーブラでしたが、あれには何か理由でもあったんでしょうか?胸の垂れ具合は正直さみしかったです。。。作品の評価に戻りますが、監督も良い仕事をしています。ヘタに見せ場を入れず交渉の緊迫感だけで上映時間の大部分を引っ張っているのは監督の手腕によるところが大きいし、なんといってもラストのアクションがあまりに見事で驚いてしまいました。この監督さんはアクションを撮るイメージがなかったのですが、正直そこいらのアクション監督よりも腕前は遥かに上です。連絡を常にとりながら機動的に動く特殊部隊のアクションのかっこいいこと!ミッション物のアクションでは、本作のラストを超える映画を見たことがありません。ここでもクロウは大活躍で、銃を持った姿が本当に様になっています。彼が銃を撃つ映画は本作以外では「クィック&デッド」と「アメリカン・ギャングスター」くらいしかありませんが、銃がかなり似合う俳優さんなので、もっとアクションをやればいいのにと思います。
[DVD(吹替)] 8点(2010-02-07 21:04:12)
269.  ジャスティス(2002・ブルース・ウィリス主演) 《ネタバレ》 
法廷もの、人種問題、人格者の悪役、お坊ちゃんの成長物語、兵士のプライド、脱走計画、これだけの要素を一本の映画にまとめてみせた脚本の出来はなかなかのものです。すべての要素がきちんと関連し合っていて、ラストに向けてすべてが収斂するように物語が計算されており、これだけの要素を放り込みながら闇鍋状態になっていない辺りは見事なものです。娯楽性を保ちながら硬派な題材を扱うことに長けるテリー・ジョージ、本作でも良い仕事をしています。しかし監督がこの題材を扱いきれず、散漫で何が言いたいのかよくわからない凡作になり下がっているのが残念です。収容所に到着するまでの前半部分は、よく出来た見せ場もあってなかなか面白いのですが、本筋がはじまると途端につまらなくなってしまいます。収容所に入ると「脚本通りに撮ってるだけ」という状態になってしまうのです。さらに、地味な本作を興行面で支えるために配置されたブルース・ウィリスが、マクナマラ大佐にまったく合っていないという問題もあります。脚本レベルではもっと深みと威厳があり、知性も感じさせる人物だったと推測されるのですが、彼が演じたためにそれらが失われてしまっています。同時期の「ティアーズ・オブ・ザ・サン」におけるような現場部隊の指揮官役には抜群にハマるものの、指令系統の頂点という役柄にはあまり馴染まないようです。さらに悪いことに、本作で彼に対することとなるドイツ軍のビッサー大佐がよく出来ているために、ウィリスがより浮いて感じられます。
[DVD(吹替)] 5点(2010-02-01 21:15:19)
270.  ウインドトーカーズ
ジョン・ウーがついに戦争映画を撮る!2002年は戦争映画が多数製作されましたが、製作段階において特に注目度の高かったのが本作でした。しかし、蓋を開けると戦争映画としては史上最低クラスの出来。世間一般からは一瞬にして忘れ去られ、ウーファンにとっては触れてはならない過去となったのでした。超人的な主人公が華麗にアクションを決めるジョン・ウーのスタイルは、大人数が泥にまみれながら命をかける戦争映画とは水と油。前半はニコラス刑事が棒立ちでマシンガンを乱射してるだけで見せ場として全然面白くないし、ジョン・ウーがガマンできなくなったのか、とうとうマシンガンをピストルに持ちかえてしまった後半は、もはや戦争映画のルックスではなくなっています。ジョン・ウーの映画なのに、戦争映画なのに、見せ場がつまらないという致命的な欠点を本作は抱えているのです。また、「プラトーン」以降の戦争映画には、史実に基づいてリアルに作るという条件が課せられるようになりましたが、本作は時代錯誤なまでに適当。サイパン島と言えば年平均気温が27度という高温多湿の熱帯気候なのに、まったくそのような風土に見えないという圧巻のロケーションには驚きました。妙に乾燥している地域があったり、日本の秋口のような風情ある風景があったり、そもそも俳優達が暑さの演技をしていなかったり、こだわって作っていないことが丸出しになっています。また、日本人住民の集団自決のあった悲劇の島でもありますが、本作に登場する住民達は実にのどかなもので、アメリカ兵にいとも簡単に懐いてしまいます。ニコラス刑事の常備薬を一錠飲ませてもらったり、チョコレートをひとかけ食べただけでアメリカさん大好きになってしまうという激安野郎ばかりで、本当に何も調べずに撮ったんだなぁと呆れてしまいました。これに追い打ちをかけるのがニコラス刑事の妙な熱演で、この人が演技を頑張れば頑張るほど映画がおかしくなっていきます。酔っぱらった演技などは加藤茶のレベルに達しており、「リービング・ラスベガス」のアル中演技でオスカーをもらったのと同一人物とは思えません。ハゲヅラのお巡りさんと若ハゲのケイジさんが共演すれば面白いのではないでしょうか。また、「ホリョダ!」「ド~シタノ?」「ベイコクキライ!ニホンダイジ!(ダイスキの間違い?)」等を、恐ろしく気合いの入った顔でやられても困ってしまいます。
[DVD(字幕)] 2点(2010-01-24 08:09:30)(笑:1票) (良:1票)
271.  地獄の黙示録 特別完全版
本作がとっ散らかっていることは、この「特別完全版」を見ればよくわかります。映画の完全版といえば、見たことのない場面がいくつか加わる程度のものが大半なのですが、本作における復活シーンはかなりしっかりとした内容です。脚本上はそれなりの重要性があり、かつ手の込んだ撮影がされていたにも関わらずこれらの場面はオリジナルからは丸々削られていたわけで、このことから、撮影時にコッポラの中で映画の全体像が出来上がっていなかったことが推測されます。B級映画の帝王ロジャー・コーマンの下で修業したコッポラに無駄な場面(復活したフッテージはまるで本編に必要がなく、これらを切ったオリジナルの判断は正解でした)を山ほど撮らせることはなかなかの異常事態なのですが、その原因はマーロン・ブランドにありました。カーツ大佐は、神経症とジャングル生活で痩せ細ってはいるが眼光鋭く、得体の知れないカリスマ性に満ちた人物という設定であり、押し寄せる北ベトナム正規軍とカーツの軍隊の繰り広げる死闘が本来のクライマックスだったのですが、ブランドは契約違反とも言えるほどぶくぶくに太って現場に現れ、クライマックスの大アクションを撮れなくなってしまいました。オチが白紙になった状態で撮影を進めざるをえなくなったことで本作は方向性を見失い、その場のアドリブと編集で辻褄を合わせるという無茶なやり方によりなんとか完成。映画の製作過程そのものが、ウィラードの旅と同じく「混沌」に支配されていたのでした。普通なら企画が倒れるか、駄作が生まれるかのどちらかなのですが、コッポラの才能や優秀な現場スタッフの貢献、そして一周して映画のテーマと合致するという奇跡によって、本作は「映画として成立していないが、訳のわからん迫力に満ちた他に類を見ない作品」となったのでした。シナリオ通りのラストであれば映画としては面白くなったはずですが、傑作としての歴史的地位は得られなかったでしょう。禅問答で煙に巻くラストによって何か奥深いことを言っている雰囲気を作り、観客に映画を読み解く作業を与えたことも、結果的に正解でした。。。私?私は失敗作だと思います。ひとつひとつのエピソードは面白くても全体としては統一感に欠けるし、ラストもオチから逃げただけにしか見えません。しかし、失敗作ではあるが駄作と切って捨てられない魅力があるのもまた事実なのです。
[DVD(吹替)] 5点(2010-01-24 07:50:56)(良:2票)
272.  ワンス・アンド・フォーエバー
「これはアメリカ人が認めようとしない事実である」とのナレーションに続き、インドシナ戦争からはじまる冒頭には大変に期待しました。ベトナム戦争の歴史的経緯を踏まえた、硬派で鋭利なドラマ作品になるのだろうかと。しかし、蓋を開けるといつもの戦争映画でした。冒頭のインドシナ戦争などは後の話にまったく絡んで来ず、あれを入れることで一体何を言いたかったのかがサッパリわかりません。本作はすべてがこの調子で、感動しそうな要素や思慮深い要素をとりあえず挿入してはいるものの、そのどれもが中途半端。「ベトナムさんも大変でした」という場面も本当に申し訳程度で、文句言われないように表面上はいろんな配慮をしているものの、本質的にはいつものアメリカ映画です。娘から「どうして戦争は起こるの?」と聞かれたメル中佐が、「ある国の人達がよその国の人達を殺そうとする時に、パパ達軍人がそれを止めにいくんだよ」と説明する場面にはガックリ。私はアメリカ万歳映画というものをジャンルとして認めているので、そのような作品でアメリカ万歳発言が飛び出しても特に気にはならないのですが、本作のように一応は中立的な立場を装っている映画でこのような発言が堂々と出て来ることには驚きです。アメリカさんというのは相変わらずなんだなぁと。軍人の家族の視点を設けたことも面白い試みでしたが、こちらも付け足し程度で特に感動はありません。奥さん達の場面は丸々いらないのではないかと、老けてマイケル・ジャクソンみたいな顔になったマデリーン・ストウのどアップを見る度に思いました。一方で戦闘シーンはド迫力でなかなか見ごたえがあり、メル・ギブソンも生まれながらのリーダー、生まれながらの軍人という感じでバシっと決まっています(銃弾飛び交う戦場で立ち話は男らしすぎますが)。後にキルゴア中佐が率いる部隊だけあって「ブロークン・アロー!」には血が燃えたし、気がつけばベトナム兵が鼻先まで迫って来ている場面も印象的でした。要らん配慮で作品のバランスを崩すくらいなら、戦闘に特化した方がよかったように思います。。。鑑賞後、冒頭のインドシナ戦争の意味について考えてみたのですが、インドシナ戦争でフランスを倒すという成功体験を積んだことで、ベトナムはアメリカと闘う腹を決めたとでも言いたかったのでしょうか?
[DVD(吹替)] 5点(2010-01-21 20:50:29)
273.  K-19 《ネタバレ》 
見る前には、どうせハリウッド風に料理されてるんだろうと高を括っていたのですが、これが1億ドルバジェットの大作とは思えないほどマジメに作られていて驚きました。見せ場らしい見せ場はないし、男だらけで息苦しいことこの上なし。暗くて救いのない話がひたすら繰り広げられるのですが、「面白い場面を入れたい」という誘惑も多い大作において、よくぞここまで娯楽性を排除できたものだと感心しました。被曝したクルーの描写などは大作がやってもいいレベルを超える凄惨さで、作る側がまったく妥協せず、真摯な姿勢でこの企画を扱っていることがよくわかります。これだけの大作ともなれば、製作費回収のために様々なプレッシャーがかかってきて骨を抜かれることも多いのですが、本作はハリソン・フォードがプロデュースに加わることで企画を守りきったのでしょう。また、いつも同じ表情で「省エネ演技」と言われるフォードが珍しく演技に力を入れていて、彼が中心となって話を引っ張っています。一方で難しい部分は芸達者なリーアム・ニーソンに任せており、この辺りのサジ加減、役柄の配分は絶妙でした。俳優がプロデューサーに回るとおいしい部分を全部自分でやりたがる傾向がありますが(例:ケビン・コスナー)、この人は自分の力量を適切に理解しており、できないことは人に任せるという客観的な判断が下せているのです。ニーソンは温かみのあるイメージに合致したかなりおいしい役でしたが、彼が演じたことでポレーニン副長は観客全員から愛されるキャラクターとなり、映画にひとつの視点を与えています。ポレーニンが賛成しないことは間違ったことだろうし、ポレーニンが納得することは正しいことなのだろうという価値判断の基準を観客に与えていて、彼の存在で映画は相当わかりやすく、また面白くなっています。残念だったのは後半の展開で、艦長から指揮権を奪った政治将校をポレーニンが叱責する場面から、映画は急激に失速します。政治将校の下した判断の内容(適正な判断力のない艦長の解任)及び手段(職権に基づいた行為であってクーデターを起こしたわけではない)は多くの観客にとって妥当なものであり、ポレーニンがこれを否定したことで、作品の支柱が一気に不安定なものとなってしまったのです。艦長の良い面を強調しようとする以後の展開も不自然であり、この部分の処理はもっと丁寧にやるべきだったと思います。
[映画館(字幕)] 7点(2010-01-09 21:51:41)
274.  スパイダーマン3
好きな女子と両想いになって、プライベートもヒーロー業も順調なピーターが調子に乗ってる前半からイラっときます。ブラックスパイダーマンになって「調子に乗ってる」が「完全な勘違い」に進化すると、恥ずかしくて見ていられません。そんなピーターに復讐しようとするハリーの手口は、婚約者との三角関係を装ってピーターを精神的に追い込むという、遠回りかつチャチな計画。これが父親の仇に対する復讐計画なんだろうかと驚きました。ハリーが都合良く記憶喪失になり、そして都合良く記憶喪失が治るという安直さにも唖然とします。これは大映ドラマかと。狙っておかしくしている部分もあるのでしょうが、意図してないのに妙なことになっている部分も多くあります。これはスタジオの戦略ミスでしょう。女性客を開拓するためにメロドラマを入れさせたものの、ライミがそれに対応できなかったという。本シリーズはドラマ部分の充実が特徴でしたが、それは「オタクの童貞君が誠実に頑張る物語」においてライミの才能とマグワイアのパブリックイメージが巧く噛み合ったからこその成果でした。大人のメロドラマなど撮ったことのないライミと(中年学者を主人公にした「ダークマン」すら童貞臭が漂っていました)、オタクっぽい風貌のマグワイアでは、こんな話など成立するはずがないのです。ハリーが都合良く記憶喪失になる展開については、しかめっ面ばかりだったジェームズ・フランコの輝く笑顔を見せたくて無理矢理挿入したとしか思えません(うちの嫁は「ハリーがかわいかった」と言ってたので、こちらは成功したとも言えますが)。。。また、新キャラが多すぎる点についてもスタジオの戦略ミスです。ヴェノムは人気キャラなのに登場場面が少なすぎてもったいないし、ピーターと因縁の関係にあるサンドマンの人物描写も不足しているため、「罪を犯す側にも事情がある。許すことも大事である」という本作のテーマが立っていません。サム・ライミは別のキャラを登場させたかったものの、スタジオに押し切られてこの布陣になったとか。シリーズ最終作なので大盤振る舞いしたかったんでしょうね。。。なお、本作があまりにヒットしたので3部作構想から6部作構想に変更されたようで、今後は「マリッジブルー編」とか「子煩悩編」とかも作られるのでしょうが、このシリーズはピーターの青春時代が終わった「2」のラストで終了していると思います
[映画館(字幕)] 4点(2010-01-03 18:14:40)(良:1票)
275.  スパイダーマン(2002)
当初はキャメロン監督&ディカプリオ主演とアナウンスされ、映画版スパイダーマンは凄まじい超大作になると期待されていました。しかし90年代当時のマーヴルコミック社は借金まみれでスパイダーマン映画化権の所在が不明確となっており、法的な処理が進まない中でキャメロン組は断念。その後名前の挙がったサム・ライミ&トビー・マグワイア組には、世界中で落胆の声があがりました。サム・ライミ…低予算ホラーの監督に大作が務まるの?トビー・マグワイア…誰?。。。しかしフタを開けると、この二人が良かった。X-MENシリーズ、旧バットマン、新バットマン、成功するアメコミ映画は、監督のカラーがはっきり出ているものです。その点、本作はサム・ライミのカラーが発揮されており、しかもその個性がスパイダーマンという作品にしっくりきています。この人は低予算ホラー出身であるためか、いくら予算を積んでもなぜか大作感が出ないという特徴があります。本作は200億円を超える史上最大規模で製作された作品なのですが、そんなに金のかかった映画に見えません。アメコミ大作に慣れた現在の目で見るから安っぽく感じるというわけではなく、公開当時にも「映像がプレステ並み」という批判があがっていたほどで、映画全体に妙なチープ感が漂っているのです。これは通常の大作であれば致命的な欠点なのですが、スパイダーマンにはこの空気感がマッチしています。本作は大いなる力をたまたま手に入れた平凡な青年の物語であり、大袈裟な超大作であってはならない作品。たまにドジもする人間臭いヒーローには、この空気感でなければならないのです。またスプラッタホラーでコメディをやってみせたライミだけあって、スリルと笑いのバランスの取り方は慣れたものです。この味は、例えばブライアン・シンガーやクリストファー・ノーランには絶対に出せないもので、キャメロンでもここまでうまくは出来なかったと思います。マグワイアのハマり具合も抜群です。ディカプリオがやっていればピーター・パーカーが特別な人間になってしまったところですが、マグワイアが演じたことでイケてない普通の高校生となりました。キルスティン・ダンストは確かにブサイクでしたが、下町感溢れる本作にはあの程度が調度良かったんじゃないですかね。あそこでナタリー・ポートマンみたいのが出てきたら、ひとりだけ浮いてたでしょう。顔の分はおっぱいで取り戻してたし。
[映画館(字幕)] 7点(2010-01-02 19:56:14)(良:3票)
276.  マイノリティ・リポート
見せ場のキレはさすがスピルバーグで、犯罪予知局の活躍が描かれる冒頭から最高でした。本作には印象に残るアクションが多く、しかもただ勢いで押すだけの代物ではなくアイデアとテクニックに溢れたもので、この人は現代における最高の映画監督であることを再認識させられます。緊迫した逃走劇の間にはドリフみたいなギャグまで入っていて、どういう目的でこんなギャグを入れてきたのかはサッパリわからないものの、意味不明なギャグを入れてもなお見せ場の緊張感を維持しているスピルバーグはやはりタダモノではないなと、おかしなところでも納得してしまうわけです。他の近未来SFとはかなり雰囲気の違う未来社会の描写も面白く、細かいところにまでかなりこだわって作られています。トム・クルーズ、コリン・ファレル、マックス・フォン・シドーはそれぞれよくハマっており、特にコリン・ファレルは初の大作にも関わらずトム・クルーズ以上の存在感を放ち、役者の使い方もバッチリです。。。問題を感じたのは脚本で、二転三転どころか五転も六転もする展開はさすがにクドすぎです。読む分には面白い脚本だったのでしょうが、映像化するにはちょっと捻りすぎかなと。SFアクションの横軸としては複雑すぎるプロットで、アンダートンの目指すべき方向がもっと分かりやすい話にした方がよかったと思います。また、これだけ複雑な陰謀論をバックにしてしまうと、首謀者側にとってかなりのご都合主義になってしまうのが宿命。デ・パルマ作品をも超えるようなウルトラC級の犯罪計画は説得力に欠いています。アンダートンを殺人犯にでっち上げ、それをプリコグに予知させるという計画なんて、一体どうやって仕組んだんだよと。。。サスペンスを映画の核にはせず、まだ犯していない罪で人を罰することが正しいのかという倫理的な問題を掘り下げる話にした方がよかったんじゃないですかね。ここでスピルバーグの不思議なところは、「ジュラシック・パーク」の時もそうでしたが、科学と倫理というテーマからはなぜか逃げようとするんですね。この人は映画で哲学を語ることに懐疑的なのか?それともテクノロジーを批判する話が嫌いなのか?科学と倫理なんてテーマは陳腐だから、今更そんなことを取り上げたくないのか?前述のギャグもそうでしたが、時折意味の分からない行動をとる巨匠なのです。
[映画館(字幕)] 5点(2009-12-31 16:31:59)(良:2票)
277.  ジュラシック・パークIII
世評に逆らってひねくれた点数をつけているわけではないのですが、シリーズで一番面白かったと思います。「1」は理屈っぽい部分の掘り下げが中途半端だったし、「2」における安直な動物愛護精神は意味不明でした。だったら大仰な主張は潔く切り捨ててしまい、ついでに登場人物の数も絞り込んでコンパクトに仕上げた本作が、映画として一番まとまりが良いのです。コンパクトと言っても勢いだけで押し切る短絡的な作品というわけではなく、キャラクターや見せ場は作り込んであります。典型的な大作を得意とするデビッド・コープからドラマ畑のアレクサンダー・ペインに脚本家を変更し、情けない中年おやじ達の成長物語を横軸に持ってきたことで、前作、前々作よりもすんなりと登場人物に感情移入ができるようになっています。グラント博士の登場シーンからしてよく出来ており、エリーと幸せな家庭を築いたと思わせておいて、実は別の旦那と結婚していたサトラー家に遊びに来ていただけという導入部分は最高でした。エリーの子供からは恐竜おじちゃんと呼ばれる始末で、好きなことだけやって歳を重ねるとこうなってしまうという哀愁が漂っています。「1」の時は気鋭の古生物学者だったグラント博士も現在は冴えない中堅の学者で、研究資金も底をついているという切ない状態。そんな彼を再びサバイバルに引き込むのがウィリアム・H・メイシーですが、情けない中年をやらせると右に出る者のいないメイシーは、やっぱり本作でもハマっています。温厚なグラント博士に殴られ、妻からはギャンギャン怒鳴られ、何か言っても誰にも聞いてもらえないダメ親父ぶりをいかんなく発揮。そんな枯れかけの二人が、若かった頃のような自信とバイタリティを取り戻す物語は、定番だけどやっぱりグッとくるものがあります。。。見せ場にも工夫が見られます。「1」「2」とT-REXとラプターを見せ場の中心にしてきましたが、さすがに三度目はないと今回はスピノサウルスとプテラノドンを中心に持ってきた判断は正解でした。知名度の低いスピノサウルスには鮮烈な登場場面を準備し、他の恐竜に比べて攻撃力の弱いプテラノドンには霧に包まれた鳥かごを生かした見せ場を作ることで、T-REX、ラプターに負けない悪役ぶりを披露させています。また、笑いとスリルも絶妙なバランスで調和させており、この監督はなかなか巧いなと感心しました。
[映画館(字幕)] 8点(2009-12-31 01:58:03)
278.  キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
実話映画の強みとは、物語に論理的な説明を求められない点にあります。どんなに無茶な展開があっても、”based on true story”という一行のテロップで逃げ切れてしまうのです。本作はその利点を目一杯活用していて、どこまでが事実でどこからが脚色なのかは分かりませんが、ともかく「事実がこうだったんだから仕方ないだろ」と言わんばかりに話をビュンビュン飛ばしていきます。医者を騙って病院に潜り込んだり、偽の経歴のまま婚約者の家族に会ったり、口から出まかせではどうにもならないシチュエーションも多いのですが、本作は「実話」を盾にしてかなり強引に話を進めていくのです。ここでの強引さとは良い意味での強引さで、細かい説明や論理的な整合性にとらわれずストーリーテリングにのみ集中することで、特に前半は怒涛のテンポを作り上げています。フランクの嘘がポンポンと決まっていく様は小気味良く、見ていて本当に楽しかったです。そんな痛快さの一方で、痛みの部分もきっちりと、しかも重くなり過ぎない程度に描けているというバランス感覚も絶妙でした。周囲の人々にウソをつき続けねばならない詐欺師にとって友達や恋人がいてもそれは本当の知り合いではなく、真の自分を知っているのは皮肉なことに自分を追いかける捜査官のみ、本当の自分をぶつけられる相手もまた捜査官しかいない。追う者と追われる者の間に絆が生まれる展開はありがちと言えばありがちなのですが、そこにスピルバーグの小慣れた演出があり、トム・ハンクスという安定した俳優を配置したことで、ドラマパートも見ごたえがあります。良い親父でありダメ親父でもあるクリストファー・ウォーケンも素晴らしい。いかにしてフランクJrの人格が形成されたかが、彼の姿を見るだけで分かってしまいます。。。と、前半はかなり充実していたのですが、対して後半になるとテンポが落ち着いてしまい、前半との対比でかなり長く感じられてしまったのが残念。また脚色上の取捨選択も私の関心とは必ずしも一致していませんでした。フランクはすでに一生遊べるほどの大金を持っていたにも関わらず、金への執着に歯止めが利かなくなって小切手の偽造がさらに過激になっていくのですが、全体が冗長になりすぎないよう、映画では国際的な詐欺行為をはじめるまでの経緯が丸々削られています。しかしこの辺りは詳細に描かないまでも、ある程度の説明は必要だったように思います。
[DVD(吹替)] 7点(2009-12-29 12:11:29)
279.  ラッキーナンバー7 《ネタバレ》 
【超ネタバレしています】巻き込まれていたと思っていた主人公が実は首謀者だったというオチの付け方は面白いのですが、設定があまりに強引なので「騙された!」という感覚よりも「これだけ無茶な設定なら何でもありだよな」という印象の方が強く残りました。ちょっとズルイかなと。他の映画では見たことのない長い長いネタバラシもイマイチ。脚本レベルでは面白かったのでしょうが(だからこそ豪華キャストが集まったのかも)、映像にするとさすがに間延びしすぎです。一言二言のヒントを与えられることで脳内に引っ掛かっていた情報がピタっと重なる瞬間がドンデン映画の醍醐味だと思うのですが、これだけダラダラ説明されるとスッキリ感も何もありません。。。人格者のイメージが強く、過去に一家惨殺をやった人間には見えないモーガン・フリーマンとベン・キングスレイをヤクザの親分に配置するというキャスティング段階でのミスディレクションも、それほど効果を発揮していません。20年で彼らの人格がどう変わったかの説明が不足しているため、凶暴なチンピラと威厳ある親分の像が最後まで一致しないのです。復讐相手のキャラクターが不安定では復讐劇は盛り上がりません。一方いかにも殺し屋なブルース・ウィリスと、巻き込まれ役が板についたジョシュ・ハートネットは良かったし、ルーシー・リュウが出演作中唯一魅力的に見えており、悪いところばかりではありません。ねじれた笑いも決まっており、監督はこういう映画に向いた感覚を持つ人だと思います。あともう少し突っ込んでいれば面白い映画になったのかもしれません。
[DVD(吹替)] 4点(2009-12-28 02:14:20)(良:2票)
280.  アポカリプト
冒頭から驚きました。独特のメイクにケツ丸出しファッション、女性方はおっぱい丸出し(エキストラのみならず、ジャガーパウの奥さんのような重要な役柄に至るまで)、NHKスペシャルで見るようなジャングルの村がまんま再現されているではありませんか。これを演じているのはプロの役者さんなのですが、ジャングルで生活している人たちにしか見えません。映画であるからにはある程度綺麗に撮ろうとするものですよ、普通。おっぱいぐらいは隠すだろうし、少なくとも主人公にはかっこいいメイクをさせるものです。しかし本作はそのような映画的な修正を可能な限り排除し、徹底的にリアルに作り込んでいます。ここまで再現してくるとは思いませんでした。マヤの都市の作り込みも凄まじいものがあります。実物大セットとCGを見事に組み合わせた(実写とCGの継ぎ目がまったく分からないという完璧な完成度)都市の再現力は、私が見てきた時代劇の中でもトップクラスです。そこに生きる人々の描写も丁寧で、エキストラひとりひとりに至るまで衣装やメイクに手抜きがなく、画面に映る全員に対してきちんと演出が施されています。これ見よがしに巨大建造物を映し出す時代劇は多くありますが、そこに生活する人々を含め、都市の全体像を提示する映画はほとんど見たことがありません。しかも本作の舞台はマヤ文明。古代エジプトやローマのようにしばしば映画の題材になるような時代ならともかく、満足に映像化されたのは恐らく本作がはじめてです。そんな、参照すべき過去の作品もロクにない状態で、ここまでの完成度で過去の文明を描写してみせたことは驚異的と言えます。メル・ギブソンの監督としての才能と、優秀なスタッフを山ほど動員してきたプロデューサーとしての能力、どちらも大いに評価すべきでしょう。こうしてマヤの世界にどっぷり馴染んだところでいよいよ猛烈なアクションがスタートしますが、ここからはメル・ギブソンの才能がフルスロットル。ジャガーパウがゼロウルフの息子を殺した瞬間、「マジかよ」と場の空気が一瞬止まり、一呼吸置いてから追跡部隊が猛スピードで走り出すところからして燃えます。槍を持ってジャングルを走り回るだけのアクションをここまで面白く撮れるものかと、燃えっぱなし、驚きっぱなしでした。追跡者の動きを俯瞰で見せるカメラワーク等、ここでも優秀なスタッフに支えられていることがわかります。
[映画館(字幕)] 8点(2009-12-26 18:51:52)(良:2票)
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