Menu
 > レビュワー
 > ザ・チャンバラ さん
ザ・チャンバラさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(評価分)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425
>> カレンダー表示
>> 通常表示
281.  ラブ & ドラッグ 《ネタバレ》 
アン・ハサウェイのキャリアコントロールの巧さには、つくづく驚かされます。『プリティ・プリンセス』のヒットで名を売ったものの、強力なライバルがひしめくラブコメの世界ではすぐに行き詰まり、早々にキャリアは低迷しました。しかし、『ブロークバック・マウンテン』でスパっと脱いだことで再度注目を集め、ラブコメにとどまらないフィールドを獲得するに至りました。そして、『ブロークバック~』以後の安定軌道から更なる高みを目指して出演したのが本作なのですが、ここでも予想以上の脱ぎっぷりの良さで高い評価を獲得し、後の『ダークナイト・ライジング』や『レ・ミゼラブル』につなげています。普段はセクシーを売りにしていないものの、裸が高く売れるタイミングでは躊躇せずこれを武器として使うという判断力の的確さと思い切りの良さ。長期のキャリア形成に失敗したかつてのスター達(ジュリア・ロバーツ、メグ・ライアンetc…)にとっては、羨ましくて仕方がない資質だと言えます。。。 本作は難病ものであることを徹底的に隠し、エッチなラブコメという先入観を持つ観客に対して、後半パートでショックを与えるという方向での宣伝戦略をとっていました。そのため、原作としてクレジットされているノンフィクションも隠れ蓑に過ぎず(原作にマギーは登場しない)、営業マンのサクセスストーリーを期待して観ると、少なからずガッカリさせられます。では、難病ものとしてはどうかというと、こちらでも微妙でした。本作が提示するテーマには、実に深いものがあります。「いま現在愛しているとはいえ、以後何十年にも渡って苦しい介護をせねばならない相手に対して、自分の人生を捧げるという決断ができますか?」という難題を観客に対して問いかけているのです。主人公・ジェイミーとマギーの間には、愛だけでは乗り越えられない大きな壁がいくつも立ちはだかっています。ジェイミーはその壁の前で立ちすくみ、一度は負けてしまうのですが、それでも最終的にはマギーを抱え込むという決断を下します。その物語は美しいのですが、果たしてこの映画は、介護の苦しさについてきちんと描いているだろうかという点で、私は違和感を覚えました。この映画の作り手は「綺麗事ではない」と何度も何度も繰り返しながらも、結局のところ、汚い部分・苦しい部分を観客に見せていないのです。これでは、底の浅い感動作止まりではありませんか。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-11-17 02:43:17)(良:2票)
282.  欲望のバージニア 《ネタバレ》 
実話であることを売りにしている本作ですが、ハリウッドにおける”based on true story”は非常に範囲が広く、本作についてもフィクションとして見るのが無難のようです。と言うのも、原作を書いたのは主人公・ジャック・ボンデュラントの孫にあたるマット・ボンデュラントであり、幼少期におじいさんから聞かされていた自慢話を小説化したものだとか。年寄りの昔話ほど信用できないものは他にないわけで、実際、ありえない程イカれた捜査官に、ありえない程生命力の強い次男と、実話と言うにはムリのある展開のオンパレード。話半分どころか、話3分の1か4分の1くらいのつもりで鑑賞なさってください。。。 内容は、ハリウッドで頻繁に製作されるアウトローものであり、特段に変わった試み等はなされておらず、一から十まで王道に徹しています。際立った傑作・秀作の類ではないが、この手の映画の黄金率に当てはめて堅実に作られてはいるので、深く失望させられることもありません。監督は、ひたすらに陰鬱な終末SF『ザ・ロード』で世界中の観客の心を粉々に砕いたジョン・ヒルコートですが、『ザ・ロード』に続き、本作でも湿っぽい演出を披露しています。物語は一家の三男・ジャックの成長譚であり、中盤にはジャックのちょっとしたサクセスストーリーも織り込まれているのですが、この監督の個性の賜物か、まったく爽快感を味わえないという点は、唯一、本作で独特に感じた点でした。展開はチンタラしており、インパクトある見せ場もないのですが、この湿っぽさのおかげで、物語には一定の緊張感が維持されています。どこまで意図されたものなのかは分かりませんが、なかなか面白い塩梅の映画だなと思いました。。。 この手の映画は若手俳優の豪華共演を売りにする場合が多いのですが、例に漏れず、本作もなかなかのメンツが顔を揃えています。登場場面の多さは役者の知名度と完全に比例しており、ジェイソン・クラーク演じる長男がいてもいなくても変わらない程の薄い存在感だったことはお気の毒でしたが、一方で、トム・ハーディ演じる次男のかっこよさは頭一つ抜けていました。いざとなればメリケンサックを取り出して相手をボコボコに殴りつけるバイオレンス野郎にして、惚れた女に背を向けて死地へと向かう任侠野郎、最高ではないですか。シャイア・ラブーフなんてどうでもいいから、もっとこいつを見せて欲しいと切に願いましたとも。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-11-13 00:36:13)(良:2票)
283.  オズ/はじまりの戦い
3D版ブルーレイを鑑賞。 『死霊のはらわた』の監督がディズニーでファンタジー大作を撮る日が来るとは、一体誰が想像したでしょうか。しかも、題材は『オズの魔法使い』。MGMが1939年に制作した実写版は現在に至るまでアメリカの国民映画の一つとして位置づけられており、本作は、そんな超名作の姉妹編にあたるという、アメリカ人にとっては只事ではない立ち位置にある作品なのです(日本でいえば、『七人の侍』の続編を撮るようなものでしょうか)。さらには、1954年に『オズの魔法使い』の続編の映画化権を取得して以降、ディズニーは60年近くに渡ってこの企画を温めてきており、まさに社を挙げての大プロジェクトであるという側面も持っています。そんな映画をホラーの巨匠・サム・ライミに任せるとは、ディズニーもなかなか思い切った人事をやるもんだと感心したもので、ライミとディズニーがどんなコラボレーションを披露するのか、大変楽しみな映画でした。。。 そんな期待とは裏腹に、ライミは完全に個性を消してディズニーの望む映画を撮ることに全力を注いでいます。人が死ぬことはないし、直接的な暴力描写もない。主人公は勇気とエンターテイメント精神で悪い魔女を追い出すことに成功します。悪い魔女だって、観客の前で悪さはしません。「私は悪い人です」という話し方をするだけです。1939年ならともかく、現在の観客がこんな映画で手に汗握ることはできませんね。悪い魔女に負けた場合、どれほど恐ろしいことが起こるのかという煽りがなければ冒険は盛り上がらないし、痛みが描かれなければ戦いに感情移入はできません。『ナルニア国物語』でやったのと同じ失敗をディズニーは繰り返しているのです。人畜無害な娯楽などアニメの世界でしか通用しない、実写にはある程度の毒が必要だということに、早く気付いてもらいたいものです。。。 お話の方も、長年に渡って温めてきた割には特徴のない平凡なものでした。サム・ライミが1993年に撮った『死霊のはらわたⅢ/キャプテン・スーパーマーケット』とまったく同じ話で、ディズニーほどの大スタジオが練りに練り上げたお話にはどうやっても見えないのです。これだけの大きな企画なのに、何のサプライズもない脚本がよく通ったなと、変なところで感心してしまいました。本国では大ヒットしたため続編も製作されると思いますが、私はこれ一本で十分です。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2013-11-12 01:32:39)
284.  キャビン 《ネタバレ》 
個人的に、ホラー映画の進化は『悪魔のいけにえ』で終わっていて、以降はシチュエーションを変えながら同じパターンを繰り返しているのみだと感じています。ホラーの作り手達も同様のことを考えているのか、『スクリーム』を皮切りに、『スリザー』や『フィースト』といった、ホラー映画あるあるを柱としたホラー映画は少なからず製作されています。本作もそんな作品のひとつなのですが、世界最強のオタク・ジョス・ウェドンが脚本を書き、それを『クローバーフィールド』のドリュー・ゴダードが監督したとなれば、ただの映画ではないだろうとの期待をさせられます。。。 が、しかし、内容は驚く程グダグダでした。被害者と仕掛人を交互に映し出すためスリルが持続しないし、さらには過去のホラー映画を上回るほどのインパクトある殺戮場面も作り出せておらず、正直言って眠かったです。「これはホラーのパロディですから」と言って作り手側が真剣勝負から逃げているような雰囲気さえ感じて、少々不快でもありました。「これでいいのか、ウェドンさんよぉ」と、心の中で何度も何度も叫びましたよ。。。 が、しかし、舞台が地下の実験施設に移り、話の核心部分に触れた辺りから、映画は異常な勢いで疾走をはじめます。『モンスターズ・インク』実写グログロ版、本当に最高でした。中盤をグダグダにしていたのも、このクライマックスを盛り上げるためだったのねと非常に納得。「疑ってすまんかった、ウェドンさん」と、心の中で何度も何度も謝罪しましたよ。モンスターパニックでお腹いっぱいになった後に、ダメ押しのシガニー・ウィーバー投入。この畳み掛け方は非常に素晴らしいと感じました。さすがはジョス・ウェドン、オタク心のくすぐり方をよくご存知で。 
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-11-12 01:31:20)(良:2票)
285.  ザ・マスター
貫禄を見せるフィリップ・シーモア・ホフマンと、彼に全力でぶつかっていくホアキン・フェニックス。そして、影の実力者らしき静かな存在感を見せつけるエイミー・アダムス。確かに、彼らの演技合戦は素晴らしいレベルに達しており、見て損のない映画に仕上がっています。その一方で、この映画が一体何を言いたかったのかという点については腑に落ちない点が多く、アカデミー賞で演技部門には複数ノミネートされたものの、作品内容に係る部門でのノミネートがなかったという評価には、非常に納得がいきました。。。 本作はサイエントロジーの設立から拡大までを描いた作品だということで、本国では大きな論争を生みましたが、実際には、宗教や信仰というものはそれほど大きく扱われていません。教祖様の教えは科学と宗教を折衷したインチキ臭いものだが、アル中の主人公・フレディは、そのデタラメな教えによって人生を救われてしまう。この点を深く掘り下げれば、「信仰とは何か?」という哲学的な映画になったはずなのですが、勿体無いことに、本作はその点を見事にスルーしているのです。では本作で何が描かれているのかというと、インチキ教祖と信者の間に生まれた謎の友情。暴力に訴えてでも教団と教祖様を守ろうとするフレディは完全にイカれており、教祖様の周囲でも、「あの人はヤバいから切ってしまおう」という声が根強いものの、なぜか教祖様はフレディに対して特別な思い入れを持ち、決して切りません。フレディもフレディで、教祖様の巻き添えを食って留置所に入れられた時には、「なんだよ、この教え。インチキじゃないか!」と信仰をはっきりと否定するものの、その後も教祖様と行動を共にするという意味不明さ。本作は信仰の物語ではなく、異常者同士の歪んだ友情を描いた物語なのです。。。 しかし、二人の間の友情がどうにも消化不良。監督が言わんとすることは頭で理解できるものの、ドラマチックではないので心に響いてこないのです。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の仮想的な親子関係や、『マグノリア』の憎んでも憎みきれない肉親への愛情物語などと比較すると、PTAの演出は随分落ちたなと落胆させられました。撮影技術や役者への演技指導といった表層的なスキルについては熟成を感じさせられるものの、主題の煮詰め方については、寧ろ退化しているように感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-11-10 02:41:42)
286.  クロユリ団地
さすがはJホラーを代表する監督・中田秀夫による作品だけあって、伏線の張り方や落とし方は非常にしっかりとしています。Jホラー特有の陰惨な空気も見事に醸成されており、丁寧に作りこまれた良作だと言えます。主演の前田敦子も、小慣れてはいないものの演技を全力でやりきっており、役作りのために自分を相当追い込んだことが伺えます。最初は、アイドル映画だと思って舐めた目で見ていたのですが、実際にはかなり本格的なホラー映画だったことは嬉しい誤算でした。。。 以上、褒めるべき点の多い作品ではあるのですが、ひとつひとつの場面が妙に長いために、全体としてチンタラした映画だという印象を受けたこともまた事実。静かな場面の積み重ねからいきなりショックシーンで観客を驚かせることはホラー映画の常套手段なのですが、観客の眠気を誘うほど静かな本編では、ショックシーンの勢いも削がれてしまいます。
[ブルーレイ(邦画)] 6点(2013-11-06 01:11:45)
287.  バレット(2012)
シュワルツェネッガーの『ラスト・スタンド』と併せて見たので余計にそう感じるのですが、60代後半でここまでの体力を維持し続けているスタローンの役者魂には心底恐れ入ります。シュワ氏が完全におじいちゃんとなり、小走りすらキツそうだった『ラスト・スタンド』と比較すると、上半身裸での格闘や、ジェイソン・モモアとのタイマンを余裕でこなす本作のスタローンは、本当に輝いて見えます。その一方で、歳をとって年季の入ったスタ氏の顔は、若々しさとは別方向での迫力を見せており、老いと若さが絶妙にブレンドされた現在のスタローンは、映画史上でも非常に稀なポジションにいると言えます。。。 ウォルター・ヒルの演出は、良くも悪くも昔ながらのものでした。勢いや迫力よりも風情を重視した演出により、殺し屋稼業というものをじっくりと映し出そうとしているのです。老いた殺し屋と若き刑事との掛け合いなど、それなりに見るべきものはあるのですが、その一方で、21世紀のアクション映画としては残念すぎるほど展開がチンタラしているという欠点も気になります。陰謀の正体も大したものではなかったし、こんなどうでもいい謎解きに観客を付き合わせることなどせず、もっとストレートに情念をぶつける内容にした方がよかったのではないかと思います。ジェイソン・モモア演じる殺し屋が非常に良かっただけに、黒幕ではなく彼をフィーチャーした殺し屋バトルにでもすれば、より盛り上がったのではないかと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-11-06 01:10:45)(良:1票)
288.  ラストスタンド
合理性よりもエモーションを重視したアクションを得意とするという点において、キム・ジウンはジョン・ウーの流れを汲む監督だと個人的には考えているのですが、本企画はそんなキム・ジウンのハリウッドデビュー作としては妥当なものだったと思います。物語は意図して大雑把に作られており、いかにかっこよく、いかに面白くするかという点に最大の関心が払われています。登場人物は全員非現実的なのですが、作り手側がそれを面白がって作っているので、演出にきちんと余裕があるのです。適度に笑わせ、適度に興奮させる。アクションの迫力も水準以上であり、監督として必要な仕事はきちんとこなせていると思います。。。 問題はシュワ氏でした。『ターミネーター3』以来10年ぶりの主演作ではあるものの、『エクスペンダブルズ』シリーズで観客に対する顔見世が終わっているため、レア感は失せてしまっています。さらには、不遇の時期にも細々と俳優業を続けてきたスタローンとは違い、シュワ氏は別業種で時間を費やし過ぎたために、アクションのキレも、主演俳優としてのカリスマ性もなくなっており、そもそも演技が上手くない人が、余計下手になって帰ってきただけの映画に終わっています。主演がこれでは厳しいですね。ラストの殴り合いなんて、あまりの迫力のなさに驚いてしまいました。本作を見ると、体力と威圧感を維持し続けているスタローンがいかに凄い役者であるかがよくわかります。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-11-06 01:09:38)(良:1票)
289.  愛、アムール
老老介護という平凡なテーマに、『アムール』という直球勝負のタイトルですが、そこはミヒャエル・ハネケ作品だけあって、一筋縄ではいきません。この映画、ラスト近くのワンシーンを除いては極めて単調。映画全体の密度が非常に薄く、かなりの眠気に襲われます。もちろんこれは監督の意図したところであり、テーマを煮詰めれば当然にこの構成に行き着くわけですが、この意図された退屈さをどう感じるかが、本作の評価の分かれ目だと思います。私は、この単調さに音を上げてしまったクチなので、本作への評価は低めになってしまいましたが、少なくとも一度は見る価値のある映画だと思います。テーマの掘り下げ方は素晴らしいし、俳優達の鬼気迫る演技や、ダリウス・コンジによる撮影など、見るべきものは非常に多いので。
[DVD(字幕)] 5点(2013-10-18 00:33:56)
290.  ゴーストライダー2
怪力でヘリを振り回したり、バイクが壁を垂直に登ったりといったバカバカしい見せ場のオンパレードにはグっとくるものがあって個人的に『1』は嫌いではないものの、一方であまりの世評の悪さに続編は諦めていた『ゴーストライダー』ですが、世界が『アベンジャーズ』や『ダークナイト・ライジング』に夢中になった2012年にしれっと復活。物語を無難にまとめる力はあるが、前作をそれ以上のものにはできなかったマーク・スティーブン・ジョンソンは降板し、代わって『アドレナリン』シリーズのバカコンビが監督に就任。さらには、アメコミ番長デヴィッド・S・ゴイヤーがメインライターを務めるなど、個人的にはなかなか熱いメンツで固められていて、「ひょっとしたら『ブレイド』以来の突き抜けたB級アクションが出来上がるのでは?」という密かな期待もあった本作ですが、出来はまぁまぁといったところでした。。。 007を思わせるオープニングから、アニメーションを用いたタイトルバック、ゴーストライダー再登場までの流れは完璧。優秀なクリエイター陣の手腕は序盤で一気に披露されるのですが、良かったのはここまで。本筋に入ると映画は一気につまらなくなります。世界の存亡を握る子供がいて、その子を追う巨悪がいて、悪と同等の力を持つ者が子供のボディガードになる。『ターミネーター2』以来、何度見たか分からないほど陳腐な物語が何の捻りもなく提示されるので、少なからずガッカリさせられます。さらには、子供が悪の手に渡ればどんなに恐ろしいことが起こるのかという煽りが不足しているし、追っかけに絡んでくるキリスト教勢力の背景の説明も不十分(耳なし芳一状態で出てきたクリストファー・ランバートの無意味ぶり)。敵が異常に弱くて、勝つか負けるかのスリルが味わえないという前作の欠点は本作においてもまるで改善されておらず、『ダークナイト』や『マン・オブ・スティール』の脚本家の作品とは思えないほどに話は隙だらけです。。。 コンビ監督はスリルとユーモアのバランスを整え、それなりに面白い見せ場を作っているものの、予算制約もあって前作のようなド派手な見せ場は見当たりません。インタビューではさんざん前作の悪口を言っていましたが、前作と比較して見違えるほど良くなった部分はなかったように思います。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2013-10-17 00:35:38)
291.  ジャッキー・コーガン 《ネタバレ》 
私も、宣伝に騙されてブラピ主演のギャング映画だと思って見たクチです。劇中、大統領演説がやたら繰り返されることから「どうやらこれは政治経済を扱った映画のようだ」ということに気付き、そこから頭を切り替えて何とか大枠は把握したのですが、それでも細部までは理解できないまま映画が終わってしまいました。日本の配給会社が本作の売り出し方に困り果てたことは容易に想像がつくのですが、それにしても、もう少し誠実な売り方はできなかったのでしょうか。。。 賭場=サブプライムローン、賭場の主人=サブプライムローンを扱っていた金融機関、賭場の客=なけなしの金を巻き上げられた米国の一般市民、強盗=サブプライムローンの証券化というインチキ商売で米国国民の富を奪っていたウォール街の住民達、マフィアの幹部=事態の収拾にあたった米国政府、私が読み取れたのは以上の情報のみ。強盗の一人が犬を飼っていたことや、ジェームズ・ガンドルフィーニ演じる高給取りの殺し屋が口先だけで無能だったことなど、意味があるのかないのかよくわからない小ネタも多く、何とも釈然としない内容でした。。。 日本の配給会社の手落ちは置いとくとして、それでも本作は間口が狭すぎる映画だと思いました。サブプライム問題の原因と影響、さらには米国政府の対応についての細かな知識がなければ何を言っているのかが分からない内容であり、ほとんどの観客は置いてけぼりにされてしまうのです。史上最大の金融危機をマフィアの抗争に置き換えるという切り口は面白いものの、作り手の方向性が完全に間違っています。本来、この映画は「金融って何?サブプライムって何?」という人がサブプライム問題の概要を理解できるように例え話を用いるべきだったのに、いろいろと作り込み過ぎた結果、高度な知識がなければ映画の内容を理解できないという本末転倒な事態となってしまっているのです。。。 さらには、監督の力量不足も感じました。本作は会話劇で、動いている場面がほとんどないのですが、この会話がちっとも面白くないのです。タランティーノがいかに優れた監督であるかが、本作を見ればよくわかります。さらには見せ場も少なく、本作で見るべきものと言えば、強面レイ・リオッタのヘタレ演技と、凝りに凝ったレイ・リオッタの死にっぷりのみ。要は、レイ・リオッタ以外に見るべきものがないのです。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2013-10-16 21:40:14)
292.  世界にひとつのプレイブック
当初はシドニー・ポラックが監督に指名されていたものの、「俺じゃ無理だ」と言ってデヴィッド・O・ラッセルに手渡されたという本作。完成した作品においてはシリアスとユーモアが複雑に絡み合った絶妙な塩梅が実現しており、ラッセルの手腕が光りまくっています。予定通りにポラックが監督していればシリアスに振れすぎてしまい、ここまで楽しい映画にはならなかったでしょう。。。 ラッセルには本作の主人公と同じく双極性障害を患うご子息がいるようで、そうしたプライベートでの経験が映画にも活かされています。精神障害の患者を抱える家族のドラマと言われれば、それこそ『普通の人々』のような地獄の葛藤を想像しがちですが、ラッセルは必ずしも負の面ばかりではないという切り口でこれを描いています。子育てに失敗した父親が、もう一度これをやり直す機会として息子の精神障害が機能しているのです。本作はラブストーリーである同時に、家族の温かみが描かれたドラマでもあります。息子は過去に他人を半殺しにし、現在も頻繁に警察のお世話になっているが、家族は彼を決して厄介者とは扱わないし、腫れ物に触るようなよそよそしい態度もとらない。家族にしか出せない温かみが主人公を包んでいる。本作はその描写に成功しているのです。最近は手抜きが目立つデ・ニーロも、本作では久しぶりに高いパフォーマンスを披露。軽さと重さを絶妙に使い分けた演技には舌を巻きました。。。 他方、ジェニファー・ローレンスのオスカー受賞については疑問符が付きます。撮影当時21歳にして16歳年上のブラッドリー・クーパーの相手役を務め、デ・ニーロやクリス・タッカーをも圧倒した高いパフォーマンスには敬意を表するにしても、やはり、この役柄を演じるには年齢が若すぎたように思います。ティファニーはセックスをちらつかせることで男を操るメンヘラ女で、この役柄のイタさを伝えるには20代後半から30代前半の女優が必要だったのですが(当初はズーイー・デシャネルやアン・ハサウェイがキャスティングされていた)、これを若いローレンスが演じてしまったのでは少々ヤンチャなおねえちゃんになってしまうのです。監督も、彼女についてはねじ込まれたキャスティングであったことを匂わせる発言をしており、ローレンスのオスカー受賞については『恋におちたシェイクスピア』のグウィネス・パルトローのような胡散臭さを感じました。
[DVD(字幕)] 7点(2013-10-16 01:47:58)
293.  エリジウム
長編デビュー作がいきなり興行成績1億ドル突破&アカデミー作品賞ノミネートという、輝かしくも重い経歴を背負ってしまったニール・ブロムカンプの長編第2作。特大ホームランの後に何を撮るのかということは何とも悩ましい問題ですが、ブロムカンプは「前作と似たような映画を撮る」という王道を選択しました。果たしてその出来は?と言うと、得意分野で勝負したおかげで大きな失敗を犯すことはなく、また製作費が大幅に増加したことによる効果を画面にきっちり反映できており、期待される水準には十分に達していると言えます。。。 「死にたければヨハネスブルグを歩けばいい」とまで言われる犯罪タウンで育った監督は、未来のLAをヨハネスブルグ化。ボロボロになった高層ビル群に、地平線まで続く無数のバラック小屋の映像的インパクトは絶大だし、そこに生きる人々の絶望までをきっちりと画面に刻みつけてみせた手腕には目を見張るものがありました。ディストピアSFを扱った作品は他にも多くありますが、本作ほどの表現レベルに達したものは非常に稀だと言えます。また、主人公がエリジウムへカチ込むに至るまでの感情の流れも非常によく計算されており、荒唐無稽な物語でありながらも、観客は主人公への同情心を持ち続けることができます。昨年製作された『トータル・リコール』と比較すれば、本作がいかによくできているかが分かります。やっぱり、この監督さんは映画作りがうまいのです。。。 対する敵も良く作られています。最新鋭の兵器を意のままに操りながらも、ここぞという場面では日本刀をブンブン振り回すキ○ガイなのですが、彼を「ただただ狂っていて、傭兵でもやらなければ他に生きる道がない男」という純粋悪としたおかげで、アクション映画に不可欠な恐怖の対象となりえています。次に何をしでかすか分からないというその異常者ぶりが、映画を引き締めているのです。彼に負けず劣らず狂った部下2人のインパクトも上々であり、クズのサンバルカンは見ていて飽きがきません。。。 ただし、問題もあります。監督の得意分野であるスラムの描写と比較すると、エリジウムの描写は驚くほど薄っぺら。既視感溢れる理想郷ぶりで、あまりに魅力に欠けるのです。また、敵・味方合わせて10名程度が暴れただけで破壊されてしまうエリジウムの社会システムにも疑問符が付きます。クーデターの間、ロボコップたちは何をしてたんでしょうか?
[映画館(字幕)] 7点(2013-10-12 02:26:42)
294.  PARKER/パーカー
『悪党パーカー』シリーズは過去に何度も映画化されているものの、私が観たのは『ペイバック』のみ。そんなわけで、本作については必然的に『ペイバック』との比較となってしまうのですが、今回の映画化企画にはハードボイルドな空気が足りていないという印象を受けました。。。 この企画の骨子は「毒をもって毒を制す」という点にあり、仁義を守らない小ズルい悪党を、本物の悪党パーカーが度胸や腕っ節を武器に容赦なく追い詰めるところに面白さがあると思います。実際、『ペイバック』ではたったひとりでヤクザの事務所に乗り込み、大親分と対峙しても一歩も引かない主人公の姿が痛快だったのですが、一方で本作の主人公は身分を偽って隠密行動をとり、素行も控えめなので、犯罪者を主人公にしたことの意義が薄くなっています。探偵や元刑事を主人公にしても似たような映画が撮れてしまうのです。また、敵となる悪党たちの悪ぶりが足りていないし、彼らの後ろ盾となっているヤクザがいかにヤバい連中であるかも伝わってこないので、この内容に求められるスリルやカタルシスも不足しています。。。 さらには、主人公達の行動原理が不可解なので、彼らへの感情移入も困難です。南部の成金だと思っていたパーカーが、実は犯罪者であることを知った不動産営業のレスリー。普通ならマッハで警察に駆け込むところですが、彼女はパーカーの前に再度姿を現し、「土地勘のある私が仲間になるから、分け前をちょうだい」と言い出します。いくら金に困ってても、素人はそんなことしないって。そして、そんな怪しい提案を受け入れ、「よし、明日連絡する」と言ってアッサリと仲間にしてしまうパーカー。序盤では、周到な計画の下に動くプロの犯罪者というキャラ付けがなされていたはずなのですが、これでは考えの足らないバカです。そもそも、素人が数分調べただけでバレるような偽装をやってる時点で一流の犯罪者とは言えないわけで、この脚本は設定を煮詰めきれていません。。。 本作で褒められる点は、役者がしっかりとしていたことでしょうか。ステイサムはさすがのB級番長ぶりですが、意外だったのは、アラフォー・バツイチ女を演じるジェニロペのハマり具合です。10年前は女王様だったジェニロペが、ヒロインにすらしてもらえない世にもあんまりな中年女役を熱演。執拗に繰り返される尻ネタも悲しい笑いを誘っています。本作のジェニロペは必見です。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2013-10-04 01:23:42)
295.  もうひとりのシェイクスピア
ローランド・エメリッヒが『2012』と『ホワイトハウス・ダウン』の間に撮った時代劇と言われれば、どんなバカ映画が飛び出すことかと思うところですが、これが至極真っ当な出来だったので感心しました。撮影は繊細で美しく、役者の演技も上々。デジタルで蘇った17世紀ロンドンの完成度も非常に高く、さらにはリドリー・スコットあたりに任せれば1億ドル近くかけたであろう作品をわずか3,000万ドルの予算で作り上げたことも驚きであり(ハリウッドでエメリッヒが重宝される理由のひとつとして、比較的少ない予算で超大作を完成させるという点が挙げられます)、そのルックスは事前の予想をはるかに超えていました。。。 以上、映画の見てくれは非常に良いのですが、肝心の中身については少なからずガッカリさせられました。本作の脚本は90年代の時点ですでに完成していたものの、『恋におちたシェイクスピア』とのバッティングを避けるために製作を延期されて以来、10年もの間、ハリウッドを彷徨っていました。その間に脚本は肥大化していったようであり、シェイクスピア別人説を核として、天才作家との力量の差に圧倒される平凡な作家の物語や、宮廷内での人間ドラマ、王位継承を巡る陰謀劇に、老いた女王の苦悩など、構成要素がパンパンに詰め込まれた複雑極まりないドラマとなっていました。熟練監督が3時間超えの上映時間をもってしてようやく収まるかどうかというボリュームの脚本を、ドラマ演出の経験の浅いエメリッヒが2時間強でやっつけてしまったために、映画は終始駆け足で感動もへったくれもありません。ロクな紹介もなく登場人物がどんどんブチ込まれてくる不親切な序盤に始まり、3つの時代を行き来して何をやっているのかがイマイチ掴みづらい中盤を経て、計画の全貌がよく分からないままクライマックスへと突入。観客に何を感じて欲しいのかを考えずに各場面を撮っているために、ドラマもサスペンスもまるで盛り上がらないのです。脚本自体はよく出来ているだけに、もっとじっくりと仕上げて欲しいところでした。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2013-10-02 01:15:18)
296.  ジャンゴ 繋がれざる者
『ジャッキー・ブラウン』までは緻密な構成力とオタクらしいおふざけのバランスが素晴らしかったものの、『キル・ビル』辺りからB級マニアを意識しすぎた映画作りが鼻につくようになり、『グラインドハウス』でとうとう自家中毒に陥ってしまったタランティーノですが、その後の2作(『イングロリアス・バスターズ』と本作)ではオタク趣味を控えめにし、純粋に面白い映画を作ろうという姿勢にシフトしたように感じます。どちらの映画も時代劇であり、得意の音楽談義や映画談義ができない舞台を設けることで自身に制約を課したようなのですが、それでいて、従前からの選曲センスで観客の意表を突いてくるという遊びは面白く、タラの個性が非常に良い形で出た娯楽作として仕上がっています。。。 本作で感じたのは、私たちが思っている以上に、タランティーノは引き出しの多い監督さんだということです。かつて、タランティーノと言えば捻れた構成が第一の特徴として挙げられていましたが、一方本作は驚く程シンプルです。ジャンゴという男の物語が一直線に進むのみであり、時間軸の解体等のテクニックで観客の目を誤魔化したりはしていません。また、演出についても笑いに逃げている部分が少なく、正統派のウエスタンをやってやろうという気概に溢れています。90年代にはオフビート専門でオンビートの映画を撮れない監督だと思われていたタランティーノが、ここまで真っ当な娯楽を追求したことは意外であり、本作はこれまでの彼の作風の正反対をいく企画だと言えるのですが、これをほぼ完璧に作ってきたことには驚かされました。ジャンゴのかっこよさ、生理的嫌悪感を抱かせる敵、そしてガンファイトの迫力、そのどれもが非常に高いレベルで仕上がっています。長い上映時間がまったく苦にならないほど展開はスピーディであり、さらには農場での食事の場面など、アクション以外の部分にも只ならぬ緊張感が漂っています。これだけやってくれれば大満足です。。。 さらに、黒人奴隷の物語でありながら、人種問題を過度に扱い過ぎていない点でも好感を持ちました。ジャンゴのパートナーは白人だし、敵方にも黒人のブレーンがいる。余計な政治的要素を排除したおかげで、純粋に楽しめる娯楽作となっています。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2013-09-30 01:03:54)(良:1票)
297.  逃走車
低予算でもそれなりの映画が作れるということもあって、ワンシチュエーションでのサスペンスアクションはここ数年多く製作されていますが、たいていは盛りの過ぎたスターが出演するVシネマです。そこに来て、現役のスターであるポール・ウォーカーが製作までを兼任し、さらには自身の出世作を連想させるカーアクションを中央に据えた映画とくれば、ジャンルの中でも頭一つ抜けた出来を予感させるところですが、これが完全に期待はずれの駄作でした。。。 本作の脚本はネタの詰め込みがとにかく甘く、エンドロールを含めて85分というコンパクトな上映時間でありながら、中弛みをするというどうしようもない事態を引き起こしています。劇中に起こるイベントの数が少なすぎるのです。また、巻き込まれた主人公の動機付けが弱いために、ダメ男が正義に目覚めるというドラマとしての感動も薄くなっています。さらには、社内の様子しか映さないという監督の試みも完全に裏目に出ており、視点が固定されてしまったためにカーチェイスの迫力は半減しているし、俯瞰ショットを使えないために、主人公がどれほどの包囲網の中にいるのかもよく伝わってきません。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2013-09-30 01:03:04)
298.  藁の楯 《ネタバレ》 
ハリウッドでたまに製作される護送ものの日本版ですが、移送する者とされる者の心の交流を描く作品が主流という当ジャンルにおいて(『ガントレット』『ミッドナイト・ラン』『3時10分、決断のとき』etc…)、同情の余地ゼロの凶悪犯を護送する羽目になった公安の葛藤を描くというコロンブスの卵的な着想は素晴らしいと感じました。さらには、護送を妨害する行為に多額の報奨金がかけられ、一般大衆が敵に回るというアイデアは2003年に製作された『S.W.A.T.』からの拝借だと思われますが、細部のツメを怠ったために荒唐無稽なアクション映画に終わってしまったネタ元の反省を活かし、この設定を観客に受け入れさせるべく細かな描写が理詰めで考えられている点にも感心しました。観客に過不足なく情報を与えると同時に、絶妙なタイミングで見せ場が挿入されるという本作前半部分の完成度は特に素晴らしく、職人監督・三池崇史の手腕が炸裂しまくっています。仮にこのテンションが2時間続けば、日本映画史上に残る傑作になるだろうと思いました。。。 しかし、パーティが新幹線に乗り込んだ辺りから映画は急激に失速をはじめます。理詰めで作られていた序盤と比較すると考えの足りない展開が目立つようになり、観ている側は映画に集中できなくなってしまうのです。「そんなアホな」の連続には苦笑の連続なのでした。構成上のそもそものミスとして、エリート揃いのSPの世界でもNo.1とNo.2の実力を誇り、日本最強のコンビと言っても過言ではない銘苅と白岩が高い戦闘スキルを披露する場面がまったくなく、それどころか凶悪犯から目を離すという脇の甘さを度々見せてしまうお間抜けさんぶりにはガッカリさせられました。。。 また、己の命を張って人間のクズを守ることとなったSP達の葛藤も、あまりに表面的すぎて訴求力に乏しいと感じました。何人もの死人を出しながら必死に守った犯人が、数ヵ月後にはアッサリ死刑にされてしまうというラストにしても、もっともっとやるせない空気が漂って欲しかったし、総じて主題部分へのツッコミが甘いと感じました。
[ブルーレイ(邦画)] 4点(2013-09-26 10:30:23)
299.  ジャックと天空の巨人 《ネタバレ》 
”怖い、気持ち悪い、容赦がない”の3拍子揃った巨人たちのインパクトが災いしてか、日本ではまったく話題にならなかった本作ですが、これが壮絶な面白さでビックリこきました。おとぎ話をベースにした前半の冒険活劇では、ほのぼのとした古典の空気に現代的なスリルや笑いが加えられており、21世紀仕様の『ジャックと豆の木』が見事に仕上がっています。悪い婚約者に、かっこいい騎士に、怖い巨人にと定番の要素を寄せ集めつつも、見事なバランス感覚でまとめられた脚本が絶妙だったし、ひとつひとつの場面を丁寧に作り上げるブライアン・シンガーによる演出も、予定調和の世界を飽きのこないものにしています。古典の新解釈としては、ほぼ完璧ではないでしょうか。。。 以上の前半パートだけでも充分に満足のいく映画だったのですが、本作の真の見せ場は後半パートでやってきます。『進撃の巨人』を思わせる大チェイスを皮切りに人類vs巨人の大決戦が始まるのですが、延々と続く合戦のテンションの高さには圧倒されました。城の防御が細かく考えられていたり、アイテムを登場させるタイミングが絶妙だったりと、脚本・演出も絶好調。さらには、物語の世界と観客の世界を繋いでみせたエピローグにおける含みの持たせ方も面白く、頭から尻尾の先まで完璧にまとめられた満足度の高い娯楽作に仕上がっています。これは必見です。。。 最後に、何かと批判の多いタレント吹替ですが、本作の吹替はなかなかよくできていました。ウェンツ瑛二とガレッジセール・ゴリはさすがの芸達者ぶりで主役キャラを無難にこなしているし(特にゴリはプロの声優並みの巧さ)、平愛梨もお姫様らしい上品な雰囲気を出せています。常にこのレベルを維持できるのであれば、タレント吹替も歓迎できるんですけどね。なあ、『プロメテウス』。
[ブルーレイ(吹替)] 9点(2013-09-25 01:21:33)(良:2票)
300.  マン・オブ・スティール 《ネタバレ》 
IMAX3Dにて鑑賞。 「スーパーマンは難しい」。その圧倒的な強さ故に強敵を作ることが困難だし、設定が非現実的過ぎて実写でやるとお笑いになってしまう。前作『リターンズ』の製作に10年以上かかってしまったことからも、これは魅力的でありながらも実現困難なコンテンツであることが充分に伺えます。そこに来て、バットマンを理詰めで実写化したクリストファー・ノーランがスーパーマンをどう料理するのかに関心があったのですが、ノーランはこの歴史あるコンテンツを驚くほど自分色に染めていて、その大胆さには心底恐れ入りました。。。 ヒーロー映画としての面白さを徹底的に追求した『リターンズ』と比較すると、本作には驚くほどカタルシスがありません。ノーランはアクション映画を多く手がけながらも、基本的に暴力は忌むべきものと考えているようであり、本作においてもスーパーマンの力を否定的に描いているのです。クリプトン人としての能力は特権ではなく呪縛として機能しており、それは幼少期よりクラークを苦しめます。また、暴力の帰結としての人の死からも逃げておらず、ゾッド将軍を殺した後のスーパーマンは苦悶の叫びをあげます。さらに、スーパーマンが戦った街では大勢の一般市民が巻き添えとなって死んでいることが容易に想像できる描写が続き、全体を通してかなり後味が悪いのです。はっきり言うと、スーパーマンの企画でやってはいけないことを並べ立てた内容としています。そのポストモダンな作風ゆえに原作ファンは納得しないだろうと思うのですが、ドラマ性が高まったことで映画としては抜群に面白くなっています。自分にとって邪魔でしかない個性とどう向き合うのかという、非常に普遍的なドラマとなったのですから。また、ケビン・コスナーから意外な熱演を引き出したという点でも、本作の脚本は評価できます。。。 以上、ひたすら暗く地味な脚本なのですが、ビジュアルの鬼・ザック・スナイダーが監督に就任したことで見せ場のテコ入れが図られ、ドラマの暗さをアクションの面白さで打ち消すという絶妙なバランスが実現しています。見せ場の迫力や面白さは群を抜いており、本作と比較すると『アベンジャーズ』すら二流のヒーロー映画に見えてしまいます。スーパーマンの強さや速さの描写は非常に的確だし、スピーディながらも見辛くなる一歩手前のところで踏みとどまっている監督のサジ加減にも驚かされます。
[映画館(字幕)] 9点(2013-09-02 01:44:26)(良:3票)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS