301. となりのトトロ
メッセージ性はなく、大した事件が起きるわけでもない。懐かしの原風景と巨大生物との交流だけで、30年経っても色褪せない世界を創造したことに宮崎駿の凄さを再確認できる逸品。おとぎ話に振りすぎず、あるがままの自然を受け入れるようなバランス感覚が絶妙。 [地上波(邦画)] 8点(2020-08-14 21:55:10) |
302. 打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?(2017)
企画自体は『君の名は』以前からあったとは言え、セカイ系を言い訳にして全体的に描き込み不足で、タイムリープものとしても新機軸を打ち立てられないところが致命的。ヒロインの不必要な性的表現が世界観の密着をさらに遠ざける。『君の名は』好きのカップル層と萌えアニメ好きのオタク層の両方を取り入れようとした結果、どっちつかずのまま中途半端に終わった感じだった。明らかな宣伝ミスだとしてもまるで救えていない。 [地上波(邦画)] 3点(2020-08-14 21:13:47) |
303. KUBO/クボ 二本の弦の秘密
《ネタバレ》 CG全盛の時代に敢えてストップモーション撮影した姿勢と労力に敬意を表する。同時に日本の伝統文化を徹底的に研究し、美意識と心情を余すことなく汲み取っている(時代考証に詰めの甘さがあるが、ファンタジーとして目を瞑ろう)。世界観の作り込みでは完成度が高いが、全体のストーリーが弱く、序盤で村が滅ぼされる割に村人全員が生きていたり、仲間のサルとクワガタの正体も途中で予想できたり、(上映時間的に仕方ないが)伝説の武具も簡単に見つかってしまったりと、枚挙に暇がない。"物語"に対する考察と家族に関する個々のエピソードがすこぶる良かっただけにそこが気になってしまった。 [地上波(字幕)] 6点(2020-08-14 12:16:58) |
304. 最強のふたり
ドリスの言動が危なっかしくて、笑いと同時にハラハラさせられる。障害者だからと言って同情せず、対等に扱ってくれる彼に、フィリップは本音で語り合える友を見つけたことだろう。実話という免罪符はあるもののそれに臆せず、日本人にも分かりやすいギャグをふんだんに散りばめながらも、下手に重すぎず軽すぎずのバランスが絶妙。ドリス役のオマール・シーの存在が大きく、エディ・マーフィーやウーピー・ゴールドバーグとは違う、天真爛漫さの奥にある翳りが見えてきて、ハリウッドには出せない味。ラストはしんみりさせず、オープニングみたいなテンションで終わってほしかった。 [地上波(字幕)] 7点(2020-08-14 11:46:24) |
305. レディ・プレイヤー1
'80年代のフィルモグラフィーを彷彿とさせる少年少女の王道アドベンチャーを、70歳を迎えたスピルバーグが今でも撮れるということを証明しただけでも価値がある。オンラインゲーム、SNS、VRと現代的な要素を取り入れながらも、かつてのレトロゲームやアニメのオタクカルチャーへの愛着が感じられる。突っ込みどころや粗は少なくないが、かつてのスピルバーグらしい愛嬌があって悪くない。彼のような重鎮でなければ、数多くの権利問題をクリアできず、ここまで無茶苦茶(誉め言葉)な映画はできなかったかもしれない。 [地上波(字幕)] 7点(2020-07-08 23:08:18) |
306. シャイニング(1980)
かつて143分版を見たことがあるが、テレビで再視聴。バッサリカットされているが、冗長的な部分が抑えられて却って見やすい。ホラーと謳われながら、思ったほど恐くは感じられなかったが、一方で演出と映像に狂気とも言える拘りを見せており、芸術的な領域にまで高めているのが名作と言われる要因か。随所に挟み込まれるペンデレツキの楽曲が効果的。たとえ親しい家族だとしても、人間何事も距離を置くのが肝心だ。 [地上波(字幕)] 6点(2020-07-08 22:37:31) |
307. 殺さない彼と死なない彼女
《ネタバレ》 原作漫画を読みたくなった。主題歌から惹かれて映画を見る形になったため、終盤の流れは予想できたものの、長回しで綴られる登場人物の渇望と繊細な世界観は青春映画に留まらない普遍性がある。「殺す」「死ね」の暴言のオンパレードが象徴する容赦ない態度と、根底にある、ありのままの存在を認めてくれる本当の優しさ。ただ、若手俳優の演技力が作品についていっていないし、説明不足な展開に三者三様の物語をもう少し描き込んでほしかった。長回しは部分的に留めて、もっと圧縮して描き込めば良かったのではないか。失って初めて気付く何気ない日々。喪失を経て、誰かの優しさから少しずつ影響されて新たな想いが次の物語に引き継がれていく、切なくも前向きなラストがじんわりと余韻を残す。 [DVD(邦画)] 7点(2020-07-02 22:00:46) |
308. バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3
ほとんど西部劇とロマンスで展開するため、タイムトラベルものとしてのワクワク感は半減する。意外と間延びしているシーンが多いというか。ただ、Part2と続けて鑑賞すると、その伏線回収とマーティの成長ぶりに感慨を覚える。ドクのあの台詞にシリーズの全てが集約された粋の良い幕引きで点数上げても良いと思ってしまった。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2020-06-27 01:01:11) |
309. バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2
《ネタバレ》 元々続編を作るはずでなかったらしいが、それでも面白さをほとんど落とさずに完結させたのは凄い。2015年の未来がそこまで再現されていないものが多い中で、ビフのモデルであるドナルド・トランプが大統領になっているあたりに皮肉を感じてしまう。劇中の悪夢はあの現状そのもの。とは言え、Part1を別の視点で再現したところが斬新で、前回したことを邪魔せずに未来を元に戻さないといけない困難が積み重なる。上手くいくのは分かっていてもハラハラさせるところに、ゼメキスのエンターティナーとしての神髄が光る。Part3への布石が見事です。 [ブルーレイ(字幕)] 9点(2020-06-27 00:34:15) |
310. バック・トゥ・ザ・フューチャー
圧倒的な投稿数で平均点9点を叩き出しているのが素直に凄いし、実際に見てみると納得できる面白さ。テレビ放送なのでカットされているシーンも少なくないが、トラブルに次ぐトラブル、如何にして危機を乗り切るかのハラハラとワクワクが半端ない。古き良き'80年代現在と、タイムトラベル先の古き良き'50年代を活写したのも大きく、こういう明るい映画は二度と撮れないだろう。アカデミー賞を取った重く深い映画も良いが、単純に楽しめるだけでなく、人生をちょっぴり変えさせてくれる元気な映画も素敵だと改めて実感する。 [地上波(字幕)] 9点(2020-06-13 11:06:58)(良:1票) |
311. 名探偵ピカチュウ
ポケモンを知らなくても映画としての水準は保っているため気軽に楽しめるが、キャラ映画として振っている要素が強いため、ポケモンに思い入れがあるか否かで評価が変わってくる。ただ、製作スタッフのポケモンに対する愛情が本物であるということは伝わるし(特にエンドクレジット)、元の造形を崩さずに現実世界に上手く溶け込んでいる辺り、それが見て取れる。ポケモンから離れて堅実に生きていた主人公が、かつてポケモンに触れていた当時の子供たちと重ねている部分からして目配せしている。ストーリーに対する練り込み不足はあるが、童心に帰れるという意味ではよく出来た作品だったと思う。 [地上波(吹替)] 6点(2020-05-28 13:44:37) |
312. ある過去の行方
《ネタバレ》 二番目の夫が始末をつけるために元妻のいるフランスに到着する冒頭からの演出、 お互いに何を喋っているのか、その空白が不穏な空気と意識のズレを作り出す。 根幹となるのは三番目の夫となる男の前妻が何故自殺未遂を図ったのか。 その過去を調べれば調べるほど、全員が不幸になっていくスパイラルに陥るのは、他のファルハディ映画と同じ。 過去と未練に縛られて誰もが面倒臭くて被害者意識が強い。 酔っているとさえ思えてくる、演出上の作為が透けて見えてしまうのは欠点か。 フランスが舞台なのだから、もっと自由に撮れば良いのに。監督は本当に生真面目なのだろう。 [DVD(字幕)] 6点(2020-05-19 01:04:09) |
313. セールスマン
《ネタバレ》 性暴力を描いた作品。だが、アスガー・ファルハディ監督だけあって、そういう描写は一切描かず、悲惨な状況に滅入る暇もなく、病院のシーンに切り替える。直接的な表現も用いらず、常に台詞が遠回し。確かに力量は高いと言えるが、正しくは"描きたくても描けない"のだ。一見、西洋化が進んでいるようで、イスラム教国家イランならではのしがらみが全編を支配する。恥の観念が強く、被害を公にされることを恐れる女性の立場の低さや貧困が表面では浮かばないように描いているし、劇中劇でも検閲が入る。常に息苦しく緩慢な展開が続く。終盤で犯人が見つかったときから物語は急変する。夫は加害者の老人の家庭を破壊するような方法で復讐をしようとするが、病気持ちの老人の容態が急変したタイミングで家族が駆けつけてくる。幸福な家庭を持つ老人と泣き叫ぶ家族により、完遂しようにもできない宙ぶらりん状態。皮肉にも復讐を望まぬ妻との関係に亀裂が広がっていく。何て後味が悪いのか。あのとき~していればの後悔が、劇中劇の『セールスマンの死』とリンクする。この作品も非情な資本主義に呑まれていく男の悲劇を描いていた。そのアメリカ的資本主義にイラン社会がついていけていない不安と苛立ちが付きまとう。 [インターネット(字幕)] 6点(2020-05-19 00:36:41) |
314. 37セカンズ
《ネタバレ》 傑作。邦画特有のバタ臭さがなく、全編瑞々しいまでの鮮烈な映像の数々と、序盤のアニメーションを駆使した新鮮な演出で引き込ませておいて後半のロードムービーへの跳躍が見事。障害者を扱っている以上、重苦しい内容になりそうだが、あえてファンタジーを用いながらも、地に足がついたドキュメンタリーとしての側面も見せる。カラッとしていて暗くなりすぎないのだ。主役が実際の脳性麻痺の方で、そんな彼女とシンクロするように世界が広がっていくこの物語は冒険だったはずだ。自分を今まで縛り付けていた存在を振り切り、再び母親と向かい合うシーンが白眉。障害の度合いは違うにせよ、実体験で息苦しさを感じている自分からして共感できるものばかりだった。同じ境遇の人の背中を押してくれるくらい凄いパワー。HIKARI監督の今後に活躍に期待したい。既存の邦画業界に潰されない場所で飛躍して欲しい。 [インターネット(邦画)] 9点(2020-05-19 00:09:22)(良:1票) |
315. 天使にラブ・ソングを・・・
30年近い前の映画なのに古臭さを全く感じないのが凄い。それはウーピー・ゴールドバーグの強烈なキャラクターに尽きる。俗世にまみれながらも陽気でたくましい。殺伐とした序盤でもコメディタッチで突き抜ける潔さ。そんな彼女が匿われ先の閉塞的な修道院を歌で変えていくわけだが、(たとえ安直でも)歌がどれだけ観客の心を動かすかを教えてくれる。だから、どれだけご都合主義で大団円だろうが許してしまうパワーがあった。細かい部分は気にせず、誰もが楽しめる大衆映画という意味では名作の域ではないか。 [地上波(字幕)] 8点(2020-05-17 12:17:56) |
316. リプリー
遠い昔に鑑賞。当時、『太陽がいっぱい』は見ていなかったので、比較することなく普通にサスペンス映画としては及第点。己を偽り、財産や恋人を手に入れても、嘘で塗り固めた幸福でしかなく幸せには感じられなかった。当然、秘密が綻び、愛の歪みによって悲劇が起こる。美形には見えない、マッチョになる前の貧相なマット・デイモンだからこそ説得力がある。 [ビデオ(吹替)] 5点(2020-04-28 19:02:13) |
317. 太陽がいっぱい
先にリメイク視聴済。緊迫感あふれるサスペンスより、犯罪青春映画という側面が強い。台詞が少ない分、アラン・ドロンの抱えている灼けるような野心と月夜のような深い闇が際立つ。陽を浴びる側になった青年に訪れる、まさかの呆気ない幕切れが鮮烈。 [DVD(字幕)] 6点(2020-04-28 18:27:14) |
318. コンテイジョン
《ネタバレ》 新型コロナウィルスが猛威を振るわなければ、ずっと見ることがなかっただろう。淡々と山場も情緒的なシーンも排除され、次々と増えていく感染者と死者、その恐怖に暴力と混沌が拡散していく。描かれていることはまるで現代を予言しているような不気味さ。主役級のスター俳優もあっさり殺し、リアリティに寄与している。今日、ツイッターを始めとするSNSを俯瞰すれば、怒りと鬱屈で無知な人々を扇動し、世論誘導させようとする目論見もあれば、だからといって政府の対応に不満だらけの日々を過ごしているのも事実。映画は一旦終息して、感染源の遠因は他でもない人間という因果応報な終わり方だが、現実はもっと酷く無関心だ。いつの時代も、パンデミック→大恐慌→戦争がセットである以上、歴史の転換点を体験しているわけであり、コロナ終息で本作をひとときの流行で終わらせるものではない。そこに都合よく作られた人間の業が垣間見える。 [インターネット(字幕)] 6点(2020-04-27 23:31:57)(良:1票) |
319. ガールズ&パンツァー 最終章 第2話
《ネタバレ》 前作のBC自由学園戦からの切り上げから一年以上待たされた本作だが、綿密に作られた分、期待は裏切らない。相変わらず個性的な登場人物が短いながらも存在感を発揮し、後半では劇場版で協力して戦っていた知波単学園が敵として対決することになる。マンネリに陥らないように湿地帯での戦闘はバリエーションに富んでいて、息抜き的なシーンも重要な場面で活かされる面白さ。突撃ばかりで自滅する弱小校の知波単学園の成長ぶりにファン増加は間違いなしだろう。まだまだ面白くできるので、これからも視聴を続けていきたい。 [DVD(邦画)] 7点(2020-04-27 23:14:41) |
320. シンデレラ(2015)
《ネタバレ》 誰もが知っている童話そのままに、最高の特殊効果と美術でどこまで限界に近づけるかを再現。短編で終わらせることもできる内容なだけに、原作破壊を最低限に留めた上で世界観の補強を行い、一人一人の行動に説得力を持たせている。憎まれ役のケイト・ブランシェットの奥に秘めた嫉妬と悲しみが映画に奥行きを持たせており、謀略が立ち去った王国でシンデレラはいつまでも幸せに暮らしましたになるとは限らない。それでも待ち受ける試練に心が凍りつくことなく乗り越えられるかもしれない強さをリリー・ジェームズが体現してみせる。 [地上波(字幕)] 7点(2020-04-25 11:15:24) |