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プロフィール
コメント数 3430
性別 男性
自己紹介 監督別鑑賞作品数

成瀨巳喜男 69
溝口健二 34
川島雄三 42
小津安二郎 37
豊田四郎 19
石井岳龍 18
矢崎仁司 12
西川美和 8
山下敦弘 18
今泉力哉 24
フェデリコ・フェリーニ 24
ミケランジェロ・アントニオーニ 16
ピエル・パオロ・パゾリーニ 16
ルキノ・ヴィスコンティ 18
ロベルト・ロッセリーニ 15
ジャン=リュック・ゴダール 38
フランソワ・トリュフォー 24
ルイ・マル 17
ジャン・ルノワール 19
ジャック・ベッケル 14
ジャン=ピエール・メルヴィル 11
ロベール・ブレッソン 12
イングマール・ベルイマン 28
アルフレッド・ヒッチコック 56
ジム・ジャームッシュ 16
ホウ・シャオシェン 19
ウォン・カーウァイ 14
ジャ・ジャンクー 9

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3361.  アンナ・マデリーナ
大好きなケリー・チャンと金城武の二人が共演する、香港を舞台にしたラブストーリー。  二人が共演している作品は、本作を含めて3作品のみ。 そのうち、『世界の涯てに』と『ラベンダー』は既に鑑賞済だったので、まだ観ぬ二人の共演作は、本作で最後となってしまった。  『世界の涯てに』『ラベンダー』共々、どちからと言えば主演二人の魅力を引き出すことをメインに作られていた感があり、作品としてみるといまひとつの感が否めなかった。  だけど、二人のファンである私にとっては、それで十分楽しむことができた。   ケリー・チャンはいつの時代の作品を観ても、そんなに極端には変わらない(全然歳を取らない!現在も尚美しい!)が、金城武は歳を重ねるに従い、雰囲気がかなり変わってきたように思う。  本作では、まだかなりの若々しさが残っており、まだヒゲもそんなに青くはない。   本作での二人は、『世界の涯てに』や『ラベンダー』と比べると、それほど綺麗に、又はかっこよくは撮られていないように感じた。  その代わり、作品自体の出来は、『世界の涯てに』や『ラベンダー』より良かった。 何より、普通に楽しめたのが良かった。  ただ、細かい面を言えば、少し作りが雑かなぁ、と思えるシーンも多く、洗練度という点ではイマイチかもしれない。  後半で、金城武演ずる主人公の書いた“小説”の再現シーンが流れるのだが、これが作品全体のバランスとリズムを崩すくらい冗長だった。  でも、そういった荒削りな面はあるにせよ、最後は最後でなかなか感動させてくれるし、観た後の気分もなかなか良い。  これで『世界の涯てに』や『ラベンダー』の様に、二人の魅力がうまく撮られていれば完璧だったのだが・・・   2000年以降、ケリー・チャンと金城武の共演作は一つも撮られていない。  ケリー・チャンはまだまだ大丈夫そうだが、金城武が“おじさん”っぽくならないうちに、もう一作品くらい共演作を観てみたい。 二人のファンである私は、それを強く望んでいる。   ちなみに同じく大好きな俳優であるレスリー・チャン(故人)も本作ではチョイ役ながら出演している。  そういう意味でも、本作はかなりのお気に入り作品となった。
[ビデオ(字幕)] 7点(2007-09-01 21:41:11)
3362.  アンダルシアの犬 《ネタバレ》 
1928年製作の古典的な作品を鑑賞。  フランス人監督ルイス・ブニュエルに画家のサルヴァドール・ダリが絡むことにより生まれた、映画史上に残る作品、とされている。  しかし上映時間は17分。 いくらなんでも短すぎる。  世間的な批評では、その短い時間の中に凝縮されたシュール・レアリズムが刻み込まれている、みたいな表現により、その内容の素晴らしさを表現した批評文を多く見受ける。  しかし、世間でとり立たされるこの作品について“名シーン”といえば、“眼球を剃刀で真二つにされる女”とか、“ピアノの上に横たわる気味の悪い動物”とかが大体のところだが、これ以外のシーンについては、意外と落ち着いた感じのシーンがほとんどであったりする。  つまり、全体が17分と極端に短いであるにも関わらず、全編に渡って緊張感がみなぎっているわけではなく、世間でとり立たされる問題のシーン以外は、大したインパクトを持っていないのだ。  もちろん、1920年代製作の作品であるからして、その時代を鑑みれば、これだけでも十分な内容なのかもしれないが、あくまで“現代も色褪せないそのインパクト”と呼ばれるには、少し不満な内容であった。   ただ、その中でもお気に入りのシーンが一つある。  それは、“少年が街のど真ん中で、チョン切れた腕を箱から出して、それを衆人環視の中で突付く”シーンである。  個人的には、その突付く“箇所”が妙に気になってしまった。  チョン切れた腕を普通に突付くのではなく、チョン切れた腕の、その切れ目の辺りのグチャッとした部分を突付くのだ。  これがまた微妙にだけど、気持ち悪い。  おそらく、このぐちゃぐちゃした箇所をつつくという部分において、監督の特別なこだわりも無いであろうし(多分)、大した意味もないだろうけども・・・  ま、こんな観点でこの作品を評している人はまずいないであろう。  しかし、この作品の有名なもろもろのシーンより、個人的には、このシーンが妙に気になったりしたのであった。
[DVD(字幕)] 4点(2007-09-01 21:38:24)
3363.  ニライカナイからの手紙
綺麗な映像の数々ではあるが、そもそも実際の“竹富島”という島の光景自体がとても綺麗なものなので、これは“そのまま美しく撮れている程度”にすぎない。  つまりは、映画作品として考えるならば、もっと美しく撮れていなければ不足なのではないだろうか。  語弊はあるかもしれないが、“現実の美しさを過大に表現した映像”を期待していたのだ。  そういう観点からすると、“映像”に関して言えば、いまひとつというところだろうか。   しかし、もっと問題だったのは、映像以外の演出レベルに関してだ。  現地の人を採用し、リアリティを出したであろうことは容易に推測がつく。 しかし、もう少し演技指導をつめて欲しかった。  それに、あまりにも子役の演技がひどすぎるのも難点。 子役といえど、最低の演技レベルはクリアーしていて欲しかった。   そして、何と言っても一番問題なのは、“竹富島”を舞台にするシーンが前半の40分で終わってしまうことだ。  2時間近くある上映時間の中で、“竹富島”を舞台に繰り広げられる時間帯は、最初の40分だけなのだ。 その後は、主人公が東京に渡ってしまう為、主な舞台は東京になってしまう。  これは、普通の作品ならば、別に何も問題とするところでないであろう。  しかし、この作品を観ようと思った人達は、きっと“ジャケット”やその“タイトル”から、“美しい竹富島でのおはなし”を期待し、この作品を選んだに違いない。  なのに、この時間配分は一体・・・   出来栄え的には難点の多い本作ではあるが、“竹富島の美しさ”と“そこに住まう人々の素朴”さ、そして“その独特なる文化”を伝える作品であるという点において、非常に評価できる作品であると感じたからだ。   “竹富島”が好きな方、“竹富島”に行ってみたいと思っている方には、是非オススメしたい邦画である。  そして、主演を演じた“蒼井優”であるが、特別に美人であるとか、演技が上手というわけではないが、独特の魅力を持った女優さんだと思った。 今後の彼女の活躍に期待したい。→映画『フラガール』でブレイクしたようですね!おめでとうございます!
[DVD(邦画)] 6点(2007-09-01 21:36:56)
3364.  残菊物語(1939)
池袋の新文芸坐にて鑑賞。  本作は、1939年公開の溝口健二監督作品である。   146分という長尺も合点のいく、まさに力作であった。  特に、全編を通して貫かれている、“1シーン1カット”という撮影方法により生まれる、“長回し”シーンの数々に圧倒される。  長回しといっても、それは実験的な長回しであったり、観客を驚かせる為の遊び的な長回しという感じではない。  監督とカメラワークと演じる俳優とが力を結束し、又、それぞれがプロであるからこそなせるものであった。  全編を通して貫かれる、その一貫した撮影スタイルに、溝口監督の強いこだわりと執念を感じた。
[映画館(邦画)] 9点(2007-09-01 21:34:52)
3365.  ブロークン・フラワーズ
「カンヌ映画祭グランプリ」という部分からみれば少し物足りなかったかも。  冒頭の、“ジャン・ユスターシュに捧ぐ”という文字が出た瞬間が、自分のテンションとしては最高潮であった。  この文字が出た瞬間に深い感銘を受けたのは、あれだけ観客がいる中で何人いただろうか。  映画内容より、そのことの方が気になる私であった。
[映画館(字幕)] 7点(2007-09-01 21:33:09)
3366.  ぼくの小さな恋人たち
なんともいえない余韻を残す、ユスターシュの美しき遺作。  あまり観ている人は多くないであろうユスターシュの作品。 フランス映画っぽいけど、他のフランス映画とはどこかが違う。 何が違うのかよく分からないけど、何故か観ていて飽きない。  フランス映画って、雰囲気は良くても、観ていて飽きてしまう作品が少なくない。 その中にあって、ユスターシュ作品は観ていても時間を感じさせないのだ。 でも、その理由は全く分からない。 摩訶不思議だ。 この不可思議さが、この監督の最大の謎であり魅力でもある。  さて、本作はそのオープニングからして心を奪われた。 淡いピンク色の文字に、背景にはフランスの美しい村の映像。 そしてバックに流れるシャンソンな歌。  映像に関しては、ヴィスコンティ作品の様な豪奢感のあるTechnicolorでもないし、現代のDVD映像の様なシャープさがあるわけでもない。 だけど、それらにも劣らない美しさが本作にはある。 全く飾り気ないのに、それでいて美しいのだ。 センスがいい人が、ストレートに画を撮るとこうなるのかな。 とにかく観ていて心地のいい映像の数々。  そして、出演者がみな美しい。 男女に限らずだ。 来ている服もさり気なく美しいし、センスも抜群。 ココ・シャネルがどうのとか、モードファッションがどうのとか、そういう類いの“衣装”の美しさでは決してない。 あくまで出演者の着ている“服”が、自然でいてセンスがよく、ユスターシュが描く本作の世界観にマッチしているのだ。 特筆すべきは、主演の幼い男女二人。 とても画になる二人。 こういうのを観てると、自分が日本人に生まれたのを恨めしく思うね。  思春期特有、特に男子に特有の「歯がゆさ」というか「やりきれなさ」みたいなものがうまく表現されている。 それは痛々しいほど繊細に描かれていて、観ているこっちも辛くなるほどだ。 これはユスターシュの自伝的作品であるとも言われており、彼の思春期の頃の想いを垣間見ることができる。 若くして自殺したユスターシュ。 あぁ、もっと彼の作品が観たかった。
[ビデオ(字幕)] 9点(2007-09-01 21:31:49)(良:1票)
3367.  憂鬱な楽園
ホウ・シャオシェン監督としては珍しい「現代」を舞台にした作品。  彼の作品といえば、「過去」や「想い出」を映像化したものがほとんである。 「現代を舞台にした作品を撮るのは苦手」と、ホウ監督自身もインタビューの中で語っている。  実際、彼の作品の中で広く一般的に評価を受けている作品は、「過去のある時代」が舞台となったものばかりだ。  逆に現代を扱った『珈琲時光』などは、高い評価を受けているとは言い難い。 (もっとも、私が一番好きなホウ監督の作品は『珈琲時光』だが。)  「現代の東京」を描いた作品が『珈琲時光』ならば、「現代の台湾(台北)」を描いたのが本作だ。  私としては期待しないわけがない。   本作の撮影担当は『夏至』のリー・ピンビン。  クリストファー・ドイルの映像も個性的で大好きだが、リー・ピンビンの映像もそれに勝るとも劣らないくらい素晴らしい。  リー・ピンビンの撮る映像はドイルと比べれば控えめな印象はあるものの、透明感があって瑞々しさに溢れており、とても美しい。  “熱帯の緑鮮やかな台湾をリー・ピンビンが撮っている”というだけで観る価値のある作品である。  そして音楽。  メニュー画面にも流れている、この作品の「テーマ曲」がある。 その他、車で郊外へ飛ばすシーンや、バイクで山をぐんぐん登るシーンなどで使われている。  テクノ調の曲なのだが、本作を見終えた後もかなり耳に残っていた。 元々、テクノ調な曲が好きってのもあるけど、テーマ曲に関してもかなり気に入った。  映像と音楽が自分の感性とぴったり合っていて、観ていてとても心地良かった。  途中、「置時計」がかなり長い時間をかけて撮られているシーンが出てくる。 ストーリーとは全く関係のないワンシーンなのだが、とても透明感があって美しかった。 それも印象的だ。  しかし、ストーリーはなんてことはない。 だらだらと台湾のチンピラの生活が描かれているだけだ。  でもそんなことはどうだっていい。 ホウ監督の映画でストーリーを追ったっていいことはない。  台北の夜景、熱帯の緑鮮やかな風景、美しい置時計に、美しい女性歌手、そして強引に挿入されるテクノ音楽。  そしてそれらとコラボするリー・ピンビンの創り出す映像世界。  そういったものを楽しむべき作品である。
[DVD(字幕)] 7点(2007-09-01 21:30:25)
3368.  サヨナラ COLOR 《ネタバレ》 
新文芸坐の「気になる日本映画達〈アイツラ〉2005」に本作が含まれていたので行ってみた。  竹中直人の監督5作品目にあたるラブストーリー。 ヒロインは、竹中直人がプライベートでも憧れていたという原田知世。  竹中作品は、今まで『無能の人(1991)』『119(1994)』『東京日和(1997)』の3作品を観てきた。  その中でも、本作『サヨナラCOLOR』は、自分的に一番のお気に入り作品となった。  世評では、“竹中直人の独りよがり的な映画”という厳しい意見も聞かれたが、私はむしろその点が気に入ったのだ。   癌におかされた未知子(原田知世)は、かつてのクラスメートだった正平(竹中直人)の病院に入院してくる。 そこで彼女の主治医となったのが正平だった。  だけど彼女は彼のことを憶えていないと言う。 学生時代からずっと想いを寄せていた正平はそれを聞いてショックを受けるが、学生時代には相手にもされなかったクラスのマドンナと、こうしていつでも話しができるのが嬉しくてたまらなかった。  そして日ごと打ち解け、手術前には逆に彼女からのプロポーズを受けたのだった・・  しかし実は正平も癌だった。 そして彼女を熱心に診たがために、命を落とすことになる。  悲しさに涙を流す未知子。 かくして、未知子にとって正平は永遠の存在となったのだ。  これはまさに男にとっての理想の死に方である。 自分がずっと憧れてきた女性に最後はプロポーズされ、そして死んだ後も彼女の心の中にずっと存在し続ける。  だけど、残された女性の立場からすればたまったもんじゃない。 せっかく好きになったと思ったら、先立たれてしまうのだから。 ずっとこれから彼の面影を背負っていかなければならないわけだし。   この日、同時上映された作品が『トニー滝谷』という作品だった。  この作品は本作とは全く逆で、“愛する女性を失い、その面影をずっと追い続ける男”の話だ。  女性の方に勧められて観たのだが、辛いだけであまりいい印象は残らなかった。 女性にとってはいい映画にうつるかもしれないけど、男の私からしたらあまりに切なすぎて後味が悪すぎるのだ。  『サヨナラCOLOR』と『トニー滝谷』という、男女の立場が全く正反対な作品を同時上映。 このスケジュールが意図的に組まれたのだとしたら、“新文芸坐恐るべし”だ。
[映画館(邦画)] 7点(2007-09-01 21:28:39)
3369.  ママと娼婦 《ネタバレ》 
ええ?!ジャン・ユスターシュの傑作に今までレビューゼロですか?! それがまず残念です・・・ さて気を取り直して、単独レビューを開始致します。  “ゴダールが認めた最後のヌーヴェル・ヴァーグ作家”と言われるジャン・ユスターシュの大長編力作。  主演はヌーヴェル・ヴァーグの常連俳優であるジャン=ピエール・レオ。  彼は印象的な作品にばかり出ている俳優さんだ。 その中にあっても、本作における彼の演技はずば抜けて印象的だった。   この作品における彼の役どころは、いわゆる“ヒモ”。 仕事もせずに年上の女性と同棲している。 もちろんそこは彼女の家だ。  ところが、彼には本命の女性がいる。 その女性に求婚するも、断られてしまう。  そこでナンパを決行する。 ナンパした相手は看護婦だった。  その看護婦と深い仲になった彼は、平気で同棲相手の家にその看護婦を連れ込んだりしている。  同棲している年上の女性はそれが我慢ならないが、年上の弱味だろうか、何となく許してしまうのだった・・・  とまあ、こんな感じで“淡々”と話は進んでいくのだ。   しかし、それにしてもあまりに長い。 何と上映時間は怒涛の“220分”。  170分くらいまでなら何とかなるが、どんな内容でもさすがに200分越えはしんどい。  しかししかし、何でだろう、しんどいと思いながら最後までスルスルと観れてしまったのだ・・・  これがジャン・ユスターシュという監督の魅力なのだろうか。 摩訶不思議な映画だ。  男女の日常が延々と描かれるだけの内容。 でも、最後までグイグイとひっぱられてしまうのだ。  “長い長いと思っていたら、いつの間にか220分経っていて、長いんだか長くないんだがさっぱり分からずじまいの映画”  と言ったら分かりやすいかもしれない。  それとこの作品、とにかくセリフが多い。 主演のジャン=ピエール・レオなんか、ずっとしゃべりっぱなしだ。  こんだけ尺の長い作品なのに、これだけのセリフの多さ。 さぞかし、この作品の撮影は疲れたであろう。  ジャン=ピエール・レオの、その“プロ根性”に心から敬意を表したい。
[DVD(字幕)] 8点(2007-09-01 21:27:09)
3370.  ゴダールの決別 《ネタバレ》 
DVD裏面の解説には、「ゴダール映画史上、最難解作品!」と書いてある。 その為、“ゴダールと決別するのに相応しい作品”と心の中に決めていた。  この作品を観てとことんゴダールを嫌いになり、きっぱりさっぱりゴダールを忘れてやろう!という寸法だ。  そうは言っても、かなりの数のゴダール作品を観てきた私である。 難解な晩年のゴダール映画には慣れてきたつもりだ。  「どんだけ難解なんだろう」と、逆に期待をしながら、いざDVDの再生ボタンを押したのだった・・・   さて始まった。  いつもの“晩年のゴダール作品調”全開だった。 具体的には、  ・唐突に挿入される画面いっぱいの文字(黒地に白い文字)。 ・いきなり流れるクラシックなBGM。 ・登場人物とは無関係に挿入される、気色の悪い音声(ガラガラ声)。 ・やたらに綺麗な森の風景。 ・海の風景。 ・意味なく乱暴な動きや振る舞いをする登場人物。 ・いきなり裸になる女性達。 ・哲学的な言葉のむやみな引用。  などなどだ。 (ただし、今回は「鳥の鳴き声」みたいなのは無かった。)  しかし本作には、今までとは明らかに“違う”ことがあった。 それは、“あまりの難解さ”加減だ。  いやいや、これはいよいよ全くもって訳が分からんぞ。 さすがに焦ったね。  その他の晩年のゴダール作品は、難解な部分やセリフ回しがあっても、全体の中の一部分でしかなかった。 それがこの作品においては、全てがそんな感じなのである。  よくもまあ、こんだけ訳の分からんシーンを84分も“数珠つなぎ”にできたもんだ。 呆れるを通りこして、感心するばかりである。   ただし、この作品、ただ難解なだけではない。 とにかく映像が美しいのだ。  他のゴダール作品と比べても、圧倒的に素晴らしい。 ゴダール作品の中で“最も美しい作品”だと私は感じた。  映画レビューサイトでも誰かが書いていたが、「字幕なし」で観たら最高だろう。 まあ、かと言って、それを実践するほどの魅力を感じた訳ではないが。   さて、かくして私は、この作品にて“ゴダールとの決別”を果たしましたとさ。  だって、84分という短い尺なのに、観るのに「映画3本分のエネルギー」を使ったからね。  もういいよ、ゴダールは。 さようなら、愛すべきゴダール。
[DVD(字幕)] 4点(2007-09-01 21:24:37)
3371.  アッカトーネ 《ネタバレ》 
イタリアの名匠、ピエル・パオロ・パゾリーニの監督デビュー作。 主演は、パゾリーニ映画の“常連”であるフランコ・チッティ。 この人の顔は何度も見たことがあったけど、顔と名前をしっかり憶えたのは今回が初めて。 他の作品でもかなりの個性を発揮していた彼だが、本作においては主役ということもあって、存在感ありまくりだ。  舞台はローマのスラム街。 主人公であるアッカトーネは職にも就かず、プラプラと日々暮している。 彼の経済的根拠は“ヒモ”。 要するに、自分は毎日遊び呆け、女性に食わせてもらっているのだ。 なんという羨ましい暮らしぶりだろう。 「仕事なんて堕落した人間のすることだ。」 と、彼は劇中でのたまう。 なかなか哲学的なプータローだ。 自分も多分にプータロー気質な部分があるからして、こういった「怠け者の若者」を題材にした作品は、それだけで自分のツボにハマってしまう。  袖まくりをしながら、ガタイのいい(体格のいい)彼は街をブラブラとしている。 ロクに働いてもいないのに、無意味に体格がよろしい。 とあるきっかけで肉体労働を一日だけすることになるが、すぐにバテテしまう。 あのガタイは一体、何の意味が! 見かけ倒しかよ、おい! そんなとこも自分に似てて楽しかったりする。  そんな彼もついには奥さんに見捨てられ、家を追い出されてしまう。 それでも彼は働かない。 ガタイを活かさない。 しかしながら、さすがにそんな彼でも飯なしでは生きていけない。 「お腹が空くのは、食べることが習慣になってしまった証拠だ。」 と、またしても哲学的なことをのたまうが、要するに腹ペコな彼。 ついには、子供をあやすフリをして、子供の首にかかったネックレスを盗んでしまう。 そうして堕落の道をひたすら突き進んでいくのだが・・・  後期の彼の作品群に比べると、過激な描写はほとんど無い本作。 それだけに、パゾリーニの描き出す独特の映像世界にどっぷりと浸ることができた。 パゾリーニ映画のモノクロ世界は、見ていてとても心地良くなる。 彼の作品群の中で、それを最も強く感じさせたのは、この『アッカトーネ』という作品だった。  巷のレビューサイト等で、非常に評判が良かった為、見ることを決めた本作。 どうやらその「口コミ評判」に間違いはなかった様だ。
[ビデオ(字幕)] 8点(2007-09-01 21:17:59)
3372.  フェリーニ 大いなる嘘つき
まず、始まりの音楽と映像が素晴らしかった。 海の映像と、そこに流れるゆったりとしたクラシック音楽。  それらにぼぉ~っとしていると、突然、“おじいさんフェリーニ”が登場。  “働き盛り”のフェリーニとは全く違った雰囲気でびっくり。 全く、若かりし頃の面影がない。 これにはちょっとショックだったかも。  70歳ちょいで亡くなったことを考えると、かなり健康も害していた時期だろうから、この不健全な雰囲気は仕方ないんだろうけど・・・  それにしても「理屈っぽい」。 ひたすら、“オレ流の映画論”や“フェリーニ流人生論”をしゃべり続ける。  フェリーニ作品の全てを観た後に、これらのドキュメンタリーを観れた点は良かったと思う。  しかも、ここ1,2年でその全ての作品を観たので、ドキュメンタリーを観ていても、すぐにそのシーンが頭に思い浮かんできた。  「あぁ~、この俳優さん、こんなになっちまったのか・・・」 とか、 「このシーンはこんな風に苦労して作られたのか・・・」 とかみたいに。  本作『大いなる嘘つき』には、フェリーニに縁(ゆかり)のある俳優さんが何人か出てくる。  その中でも特に印象的だったのは、ドナルド・サザーランド。  『カサノバ (1976)』について彼が振り返り、その最後のついた“ためいき”が、とてもリアリティがあった。  「即興で彼(フェリーニ)は脚本を変えてしまう。ある時、彼は3ページに及ぶ独白を私に5分で憶えろと言ってきた。その後、5分後に本当に撮影が始まった。彼は悪魔だ。」  といった様な内容だったと思う。 その最後に、深い“ためいき”が出たのだ。 それはそれは深くて真実味のある“ためいき”だった。  私もこのブログで記事に書いているが、私にとって『カサノバ』という作品は、フェリーニ作品群の中で、最も体力を奪われた作品だ。  この作品は、言ってみれば“フェリーニ映画の集大成”的な作品。 晩年の“フェリーニ・ワールド”が最高潮に達した、非常に濃い作品だ。  そんなに面白いとは思わなかったが、そのあまりの“フェリーニ色満載”さに圧倒されたのおぼえている。
[DVD(字幕)] 6点(2007-09-01 21:15:31)
3373.  ダウン・バイ・ロー
ジャームッシュ作品としては、『ナイト・オン・ザ・プラネット』以降、どうも自分のツボにはまる作品に出会えてなかった。 その不満を見事に解消してくれたのが、この作品。 評判がいい作品なので、期待はしていた。 でも、こんなにいい作品だったとは・・・ 特に、最後のシーンは大好きだ。 ああいうシーンは、なんかジーンとくる。 最後のシーンだけでなく、全体的にも素晴らしい作品だ。 基本的には「ロード・ムービー」路線なのだが、退屈感がまったく無く、最後まで気持ちよく観れた。 久しぶりに2時間という時間を感じさせない映画だった。 これぞまさに、ジム・ジャームッシュの魅力だ。 全編、ぼぉーっとした感じのまま引っ張られていく感が最高に心地良い。 モノクロ画像の効果なのか?! ジム・ジャームッシュ作品の中では、『ナイト・オン・ザ・プラネット』に次いで好きな作品となった。
[DVD(字幕)] 9点(2007-09-01 21:01:24)
3374.  気狂いピエロ
1965年といえば、今から40年も前の作品である。 しかし、映像的にちっとも古臭くない。 いかに前衛的な作風とはいえ、これはすごいことである。 フランス映画、それもゴダール作品ということで、ハナから「難解な映画」だと決め付けてから観たわけだが、その期待を裏切らない「難しさ」だった。 期待していた通りに、あまりに難解だったので、逆に気分がいいくらいだった。 しかし、事前情報を知らずに、「ちょっとオシャレなフランス映画」みたいなノリで観てしまった人は、さぞかし腹を立てるであろう。 それだけ解釈の難しい映画だと思う。 最後のシーンは少しだけビックリできたので、まずまず満足。 しかし、もう一回観たいとは思えないが・・・
[ビデオ(字幕)] 5点(2007-09-01 20:59:35)
3375.  DISTANCE/ディスタンス
是枝裕和作品としては、今まで『誰も知らない』『幻の光』を観たことがある。 是枝裕和作品ということで、相変わらずの冗長な感じの作品だった。 さすがに後半は少々、飽きがきたが、前半から中盤にかけては映画にのめりこむことができた。  地下鉄サリン事件をモチーフに、テロ実行犯の遺族と、その後の交わりを描いた作品。 新興宗教にのめりこんで行く過程などが描かれていて、興味津々に観れた。  だけど、もうこれで是枝裕和作品はお腹いっぱいという感じだった。
[ビデオ(邦画)] 5点(2007-09-01 20:51:16)
3376.  御法度
“衆道”というものを題材に撮られた異色の時代劇。 前知識無しでいきなり観て、単なる時代劇だと思っていたところで、このテーマだった為、正直驚いた。 そして、この作品を観て、初めて『ヤオイ』という言葉を正確に理解した。(それまで聞いたことはあったが。)  さて、主人公は松田龍平。 あの松田優作の長男だ。 しかし、どうもこの役者が苦手だ。 大体、新撰組の野郎どもに狙われるほど、魅力があるとも思えない。 その辺のリアリティが欠けてるので、いきなり入り込めなかった。 “ヤオイ”モノを観るのは初めてだったが、そんなに抵抗感はなかった。 それよりこの役者のミスマッチぶりの方に抵抗を感じた。
[DVD(邦画)] 4点(2007-09-01 20:49:38)
3377.  アイデン&ティティ
この作品、浅野忠信はいわゆる“カメオ出演”だ。 つまりは、チョイ役。 その作品が自分に合った作品ならば、別にチョイ役でも全然構わない。 純粋にその作品を楽しめばいいからだ。 だけど、チョイ役であるにも関わらず、その作品が自分に合わなかった時は、ちとキビシイ。  最後まで観るのが苦痛になる。 この作品はと言えば、“微妙”なところ。 やや、ハズレかもしれない。  かなり昔に、『イカ天』という深夜番組があった。 “バンドブームの火付け役”と言われた深夜番組だ。 この作品は、その“バンドブーム”を題材に扱っている。  私は年代的に『イカ天』はもちろん知っているし、深夜番組を当時見まくっていたので、この番組も見ていた。(ちなみに、その後にやってた『エビ天』の方が好きだった。) しかし、個人的に音楽をテーマに扱った映画というのが苦手なので、いまいちハマれなかった。 あと、みうらじゅんとか好きじゃないし。 よく知らないけど、主人公の男も好きになれなかった。(目つきが特に)
[DVD(邦画)] 2点(2007-09-01 20:48:04)
3378.  ボッカチオ'70
デ・シーカ、ヴィスコンティ、フェリーニという豪華な監督陣によるオムニバス映画。 なんと、上映時間はあわせて“204分”という超豪華版。 しかも長いだけでなく、個々の監督の個性が十二分に発揮されており、かなり「濃い」内容となっている。 私はビデオをレンタルしたのだが、上巻・下巻を二日に分けてやっと観終えることができた。  この4作品の中で、巷で一番評判がいいのが、第1話のモニチェリによる作品だ。 私も“面白さ”という基準だけで選べば、この作品が一番。 主人公夫婦の働く工場での「人、人、人」の混雑ぶりも圧巻だし、新婚夫婦の奮闘ぶりや、貧乏だけどひたむきな暮らしぶりなどは共感が持てるし、観ていて楽しい。 この作品だけでも観る価値はおおいにあるだろう。 しかし、このオムニバス作品の凄いところは、そこに更に巨匠3人の作品が加わることである。 1話目のモニチェリのライトな良作を楽しんだ後、二話目にはフェリーニの渾身の一撃を食らうことになる。 フェリーニのは55分なのだが、彼のその他の長編と比較しても勝るとも劣らない、凄まじいエネルギーを放っている。 はっきり言って見終えた後は、“グッタリ”だ。 開始早々から「フェリーニ節」全開で、飛ばしまくる。 そしてアニータ・エクバーグの不気味なボディと笑い声。 そんでもって、相変わらずの“乱痴気騒ぎ”。 たった55分でも、ものの見事に観てる者を「フェリーニ・ワールド」へと誘ってくれる。  そして、その後の3話目にくるのが、ヴィスコンティの短編。 これもまた容赦はしてくれない。 短編なのに、相変わらず“豪華絢爛”だ。 そして「貴族的退廃ムード」も全開である。 フェリーニ作品みたいに疲労はしないが、これはこれでお腹いっぱいにさせてくれる。  最後の4話目は、デ・シーカの短編。 フェリーニやヴィスコンティに比べれば、まだ“薄い”ものの、そこは巨匠。 ラストに到るまで、ぬかりは無し。  フェリーニやヴィスコンティの作品を既に何個も観たことがあり、それぞれの監督の個性とアクを知っている人にオススメしたいオムニバス映画だ。 そういった人ならば、この作品のボリュームと豪華さに、必ずや大満足できるであろう。
[ビデオ(字幕)] 6点(2007-09-01 20:46:47)
3379.  太陽に灼かれて
ロシア人監督、ニキータ・ミハルコフによる1994年の作品。  主要人物“コトフ大佐”を監督自らが演じ、その娘役も監督の実の娘が演じた。 最初はその事実を知らないで観たので、父娘の自然で爽やかな演技に驚いたが、実の父娘なら確かにうなずける。  これがもし赤の他人同士だったら、この娘役を演じた天才子役にさぞ驚いたであろう。 しかし、それを考慮に入れたとしても、この子役の演技は素晴らしかった。  自分の中では、『ミツバチのささやき(1973)』や『都会のアリス(1973)』の子役に並ぶ、“ベスト オブ 天才子役”となった。  ストーリーが仮にどうであったとしても、この子役と父とのやりとりを観ているだけで、感動したに違いない。   尺についてだが、136分と少し長め。 しかも前半部分は、後半の悲劇との対象性を強調するが為に、村の穏やかで平和な日常をかなり時間をかけて描いている。  その為、観ていて少し退屈になってしまった。 ただ中盤からは、どんどん話に吸い込まれいった。  後半の悲劇性を体現する上で、前半の演出は必要だったのかもしれないが、後半が良かっただけに少しもったいないと私は感じた。  全体的にもう少しコンパクトなら、みんなに堂々と勧められる名作だったのだが、全体の長さがかなり観る者を選んでしまうだろう。  ゆっくりとした展開と130分を超える尺が気にならない「戦争悲劇・ヒューマン・ラブストーリー好き」の方に向いている作品だ。   それにしても、「平和な雰囲気」の前半部分と、「戦争の残酷さとシビアさを描いた」後半部分とのコントラストが衝撃的だった。  娘の知らない大人(戦争)の世界では、恨み辛みの中で悲劇が交錯する。 しかし、娘の目にはそこに登場する人々は悪人の様には映らないし、その裏で渦巻く悲劇など知る由もない。  その“陰と陽”、“裏と表”をうまく描ききった監督の手腕には驚きだ。
[ビデオ(字幕)] 7点(2007-09-01 20:43:33)(良:1票)
3380.  カンタベリー物語(1972) 《ネタバレ》 
パゾリーニだが、この『カンタベリー物語』を観るまでは、イマイチ好きになれなかった。  この作品もいわば「義務的」にやっつけるつもりだったのだ。 しか~し、これが何とも面白い作品で、見事にハマってしまった。  この作品は『デカメロン』『アラビアンナイト』と並ぶ、P.P.パゾリーニ“艶笑三部作”の一つでもある。  何個もの挿話から成り立っており、オムニバス作品の様な形式で話が進んでいく。  つまらない挿話もあるにはあったが、これがなかなかの粒揃い。 基本的に映画で笑わない(笑えない)この私が、思わず吹出してしまう挿話が何個もあった。  その中でも笑いまくってしまったのが、ニネット・ダヴォリがちゃらんぽらんな主人公を演じた三番目の挿話である。  ニネット・ダヴォリは、P.P.パゾリーニの作品では常連の俳優だ。 いつも訳のわからん役ばかりだが。  でも、今回の作品における彼の演じる青年は、殊のほかオカシイ。 なんだか分からないけど、常に“ニヤニヤ”しているのだ。  あげくの果てに、そのちゃらんぽらんさが災いして、“ギロチンの刑”に処されることとなるのだが、首を板にはめ込まれた後でも“ニヤニヤ”である。  この終始馬鹿にした様な彼の振る舞いに、見事に引き込まれてしまった。  処刑されるわけだから、かなりシビアなストーリーであるはずだ。 だのに、それだのに・・・ それを微塵も感じさせない彼の“ニヤニヤ”は、もはや神がかり的でさえある。  この挿話によって、ニネット・ダヴォリ、そしてP.P.パゾリーニにハマってしまいそうだ・・・   そして、この作品が、ベルリン映画祭の最高賞(金熊賞)を獲っているのだから凄い。 何たることだ。
[ビデオ(字幕)] 7点(2007-09-01 20:42:11)
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