321. 薄桜記
《ネタバレ》 雷蔵と勝新が共演する忠臣蔵の番外編的映画。大映オールスターキャストの「忠臣蔵」をひと月半ほど前に見ていたので勢いで本作も見た。あまり期待はしていなかったのだが、当時既に人気スターだった雷蔵とまだ売り出し中の頃だった勝新がほぼ同格の扱いで共演しているのが最大のみどころ。物語は赤穂浪士の討ち入りを背景に、丹下左膳がモチーフと思われる雷蔵演じる丹下典膳と、勝新演じる赤穂浪士の一人である中山(堀部)安兵衛を中心に展開していくが、重くシリアスでドラマとしてはまずまずといったところでそんなに悪くないし、思ったよりは楽しめた。中でもクライマックスの片手片足の丹下が寝たまま複数の敵と斬り合うというシーンは今まで見たことのないような立ち回りシーンで、インパクトはあるし、印象にも残る。しかし、美術セットが大映にしてはなんだかしょぼく、比べてはいけないが「忠臣蔵」とは差がありすぎるし、回想形式で主要人物三人のモノローグが多く、一部ダイジェスト的に感じる部分があるのは話の性質上、仕方ないが、ちょっと残念に感じた。森一生監督の作品で、その手堅い演出自体には不満はないのだが、脚本を書いた伊藤大輔監督の演出でも見てみたかった気がする。 [DVD(邦画)] 6点(2016-04-09 19:16:33) |
322. 生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言
《ネタバレ》 森崎東監督がのちに「ニワトリはハダシだ」でも組む倍賞美津子と原田芳雄を主演に手掛けた社会派喜劇で、スタッフも「ニワトリはハダシだ」と似通っている。冒頭からカバーをかけたまま走り出す車という森崎監督らしい勢いのある描写ではじまり、つかみはOKというところなのだが、同じく社会的テーマを扱った喜劇である「ニワトリはハダシだ」と比べるとシリアスな部分が多くてちょっと戸惑うし、登場人物たちのノリは確かに軽めではあるが、ストーリーも暗めで純粋に喜劇映画として見た場合にはやや物足りなく感じる。でも、原発ジプシーというテーマ自体は東日本大震災後である今見るととても考えさせられるものがあり、これだけでも決して一概に見て損したという気にはならない。クライマックスでマシンガンをぶっ放す倍賞美津子はかっこよく、またこの人がこういうのを演じるのはなんか新鮮に感じる。 [DVD(邦画)] 6点(2016-04-02 21:34:24) |
323. 愛犬とごちそう
《ネタバレ》 飼い犬と一緒にジャンクフードばかり食べている男に健康志向の彼女が出来て・・・というストーリーを男の飼い犬の視点から描いている。セリフがほとんどないが、躍動感があり、アニメであることをフルに生かした作風。また犬の視点で描いていながら恋人同士である男女の空気感がこちらに伝わってくるようで、この二人のドラマとしての流れをじゅうぶんに感じることができるのが見事で、物語としてもしっかりとしたものになっている。とくにあにやんさんも書かれているが、ラストでの数年間の時間の流れを二人の仲直りから一気に見せきるのをああいうふうに演出したのは見事だった。冒頭から男が飼い犬にジャンクフードを与える描写が繰り返されるが、汚らしく描写されていて、深く考えれば動物虐待や飽食社会への批判をこめていると思えなくもないが、本作の言いたいことはもっと単純で、自分と違う他者を受け入れることの大切さなのだと思う。主人公である犬がとても可愛らしいのだが、飼っていた犬(15歳)を先月亡くしたばかりなので余計にそう思うのかもしれない。ちなみにもちろんうちの犬にはジャンクフードはやっていない。 [地上波(字幕)] 7点(2016-03-29 23:51:22) |
324. アナと雪の女王/エルサのサプライズ
社会現象的に大ヒットした「アナと雪の女王」のその後を描いた短編。実は本編見ていない状態でいきなりこれを見たので、見る前は大丈夫かいなという気持ちもあったが、それでもそこそこ楽しめたし、松たか子や神田沙也加の吹き替えも違和感は特に感じなかった。いつか本編見てみようかな。 [地上波(吹替)] 6点(2016-03-29 00:58:05) |
325. 紙ひこうき
《ネタバレ》 ディズニーの短編アニメ。全編モノクロ・サイレントという渋いつくりであり、ストーリーもファミリー向けというよりはほぼ完全に大人向けという感じ。でもこの短い時間で深みのあるドラマをきちんと紡ぎ出していて、たとえ短くてもドラマは描けるというお手本のような映画で、素直に見て良かったと思える映画だった。主人公の男性が一目ぼれした女性に思いを伝えようと、隣のビルにいる彼女に向かって仕事の書類で作った紙飛行機を飛ばし続けるのが切なく、これだけでもう普通に恋愛ドラマとして見入ってしまう。もちろん、あきらめかけた男性を励ます紙飛行機たちの描写など、アニメならではの映像表現も素晴らしい。ハッピーエンドだとは思っていたが、それでもラストシーンは好きだ。とても小さな物語だが、じゅうぶんに傑作だと思う。ディズニーの同時上映短編は単なるおまけ・前座という意識があったが、これを見るとそうも言えなくなるなあ。 [地上波(字幕)] 8点(2016-03-29 00:48:57) |
326. TRICK トリック 劇場版
《ネタバレ》 このシリーズ、テレビの連ドラ版はBSの再放送で今回初めて見ているが、同じく堤幸彦監督がメイン演出を手掛けた同系統の「ケイゾク」や「SPEC」と比べるとそこまで大風呂敷を広げることもなく、そのおかげかかなり見やすくて、山田(仲間由紀恵)と上田(阿部寛)のコミカルな掛け合いがくだらないけど楽しい。本作は連ドラシリーズ版パート2終了後に公開された劇場版シリーズ第1作だが、劇場版だからと特別なことはせず、本当にテレビシリーズと同じノリで作られているのはシリーズこの時点までをずっと見てきた者としては安心して見ていられるし、「ケイゾク」、「SPEC」の劇場版のようにテレビシリーズのネタ(黒門島とか)を引っ張っていないので純粋に一話完結のエピソードとして見られるのも良かった。ただ、出来としてはやはりテレビシリーズのほうが面白く、テレビシリーズは1エピソード2話完結が基本なので、この劇場版はそれよりも実質30分ほど長いだけなのだが、その分だけ間延びしていて、とくに中盤の自称神三人(竹中直人、ベンガル、石橋蓮司)との対決シーンは見ていて少し飽きてくる。それに先ほどテレビシリーズと同じノリで安心と書いたが、あまりにもいつもと同じという感じで、それもちょっとどうかと思った。テレビシリーズでは山田の子供時代を演じていた成海璃子が別の役で登場し、山田を演じる仲間由紀恵と共演しているのは面白いが、やはり若干の違和感がある。 [DVD(邦画)] 5点(2016-03-25 00:18:10) |
327. 龍三と七人の子分たち
《ネタバレ》 「アウトレイジ」シリーズとは一転して引退した元ヤクザの老人たちを描いているが、「アウトレイジ」と違い、かなりソフトな娯楽作という印象で、コメディー映画として肩の力を抜いて最後まで楽しく見られた。殺された仲間の一人であるはばかりのモキチ(中尾彬)の仇討ちに京浜連合に殴り込みをかける後半の展開は東映の任侠映画そのままなのだが、モキチの遺体も殴り込みに参加させるというギャグはいかにもたけしらしいブラックユーモアだし、キャバクラのママ(萬田久子)のマンションから龍三(藤竜也)が女装姿で逃げるシーンもバカバカしくて笑える。主演の藤竜也をはじめ、近藤正臣や小野寺昭といったベテラン俳優たちが楽しそうに演じているのも印象に残る。こちらとしては「座頭市」で飲み屋のオヤジを演じていた樋浦勉が座頭市を思わせる仕込みステッキを持った老人を演じているのが小ネタ的配役で楽しかった。ただ、面白かったのは事実だけど、最初に書いたようにかなりソフトな作風で、「アウトレイジ」や初期の監督作にはあった緊張感や危うさといったものがなく、それがたけしのヤクザ映画として考えた場合は若干の物足りなさを感じなくはないのも確かではある。 (まあ、比べたらいけないかもしれないが。)たけし自身は主役ではなく、脇の刑事役で出演していて、初期の「3-4X10月」を見たときも感じたことだが、やっぱりたけしが自身の監督作で一歩引いたような脇役を演じているのは新鮮に感じられた。 [DVD(邦画)] 6点(2016-03-19 18:38:37) |
328. レックスはお風呂の王様
「トイ・ストーリー」シリーズの短編第3作。今回はみんなに疎まれているレックスがボニーと一緒に入ったお風呂でそこのおもちゃたちを取り仕切るという話で、お風呂の中でおもちゃたちがワイワイやっているだけなのだが、ノリがよく、時間も短いので飽きることなく楽しめた。でも、短編3本の中では同時上映のメインの長編の前座という感じがいちばんしたのも確か。その同時上映のメイン長編作品は「ファインディング・ニモ」の3Dリバイバル上映だったのね。 [CS・衛星(吹替)] 5点(2016-03-13 10:20:47) |
329. ニセものバズがやって来た
《ネタバレ》 「トイ・ストーリー」シリーズの短編第2作。今回はボニーと一緒に外出していたバズがファーストフード店の展示用のミニバズと入れ替わってしまうストーリーで、「トイ・ストーリー2」のウッディを思い出すが、捨てられたり遊んでもらえないおもちゃの心情が描かれているのも2と同じで、短編とはいえ、そこが丁寧に描きこまれているのはこのシリーズらしい。惜しむらくはこのストーリーならやっぱり短編ではなく、長編で見たかった気もする。でも、面白かった。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2016-03-13 09:47:37) |
330. ハワイアン・バケーション
《ネタバレ》 「トイ・ストーリー3」のその後を描いた短編。まずは持ち主が変わっても以前と変わらぬ雰囲気のウッディたちに安心感を覚える。持ち主であるボニーが一家でハワイ旅行に行くことになるが、一緒に行こうとしていたケンとバービーのためにほかの仲間たちが部屋の中でハワイ旅行を実現させてあげるというストーリーで、相変わらず彼らの優しさも感じられるのがいい。さすがに長編だった3までと比べると物足りない部分もあるが、5分ほどの短編としてはまとまりもちょうどよくて楽しめた。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2016-03-13 09:17:24) |
331. 昭和残侠伝 死んで貰います
《ネタバレ》 シリーズ第7作で、マキノ雅弘監督が手がけたこのシリーズとしては最後の作品となる。今回の花田秀次郎(高倉健)はヤクザ稼業から足を洗い、身分を隠して実家の料亭で働くという設定なのが今まで見たこのシリーズではちょっと異色な気がするのだが、任侠映画でありながらホームドラマの様相もあり、それがけっこう斬新に感じるし、これが本作の中で利いている。マキノ監督のこのシリーズの監督回はこれですべて見たことになるのだが、前の二本とも雰囲気の違う作品になっている印象を受けるのはこのせいだけではないかも知れない。冒頭の初めて会う秀次郎と幾江(藤純子)の木の下でのやりとりから既にマキノ監督の演出は冴えており、とくにこのシーンで降っている雨はこのあともこの二人の重要な場面で降っており、なにか暗示的で、二人が言葉に出せない何かを代弁しているようで効果的で、本作はこの二人の数年間にわたる恋物語としてもよく出来ている。風間重吉(池部良)も今回は舞台となる料亭で働いている堅気の設定であるが、幾江に手を出したヤクザの客に殴り掛かった秀次郎を止めるために図らずも秀次郎を殴ってしまうシーンはやるせなさがあり、また、重吉がそれを詫びると秀次郎がさらに詫びるというシーンはただカッコイイというだけでなく、「男」とはなにかということを考えさせられる名シーンで本作の中で最も印象に残る。荒木道子演じる盲目の料亭の女将も泣かせるし、彼女の抑えた演技も良かった。作品全体としては堅気に戻ったヤクザがさまざまなしがらみから結局元の道へ戻ってしまう哀しみがシンプルかつ丁寧に描かれていて、任侠映画としてだけでなく、人間ドラマとしてもちゃんと見ごたえがあり、まだこのシリーズ見るの4本目だけど本作がシリーズ最高傑作と言われているのに異論はない。コメディーリリーフの長門裕之も物語がシリアスになりすぎないようなスパイスとして重要な役割をはたしているなど、全体的なバランスもいい。それともう少し言わせてもらえればカメオ出演的な津川雅彦もマキノ監督の微笑ましいお遊びで楽しかった。秀次郎にだし巻き卵をもらう坊ちゃんを演じる子役時代の真田広之(最初、面影がなさすぎて気がつかなかった。)も可愛らしい。 [DVD(邦画)] 9点(2016-03-12 16:10:41)(良:1票) |
332. 彼のオートバイ、彼女の島
原田貴和子のデビュー作で、妹である原田知世の映画デビュー作である「時をかける少女」と同じ大林宣彦監督が手がけている。確かに主人公の青年とヒロインが出会う冒頭のシーンから文芸作品のような雰囲気で、ナレーション(石上三登志)の語りもそれっぽく、本当に名作文学が原作の映画のような錯覚を覚える。久しぶりに見た大林監督の映画だったのだが、白黒とカラーを交錯させた映像表現は大林監督らしく実験的で、この監督の独特の世界に久しぶりに浸れた気がした。しかし、つまらなくはないが、物語としては特に惹かれるものがなく終わった感じで可もなく不可もなくというところか。主人公の青年を演じるのがこれがデビュー作の竹内力なのだが、後年のいかつい顔のVシネ俳優というイメージは微塵もなく、さわやかに好演しているのが印象的。思えば初めて見た彼の出演作はこの次の大林監督の作品である「野ゆき山ゆき海べゆき」の小学校教師役で、その時の印象もさわやか系イケメンという感じだったのだが、これがのちにああいう風になるとは本当に信じられない。 [DVD(邦画)] 5点(2016-03-05 16:38:04) |
333. 武士の献立
《ネタバレ》 「武士の一分」、「武士の家計簿」に続く松竹「武士の〇〇」シリーズ第3作。(勝手に命名。)「武士の家計簿」と同じく加賀藩が舞台で、「そろばん侍」に対して「包丁侍」を描くというところは「武士の家計簿」の二番煎じかと思うものの、分かりやすくまとまった映画になっていて思ったより良かった。脚本に山田洋次監督が関わらない朝原雄三監督の映画としては初めての映画になり、朝原監督の手がけた「釣りバカ日誌」シリーズがあまり面白くない作品が多かった(最後の二本は未見。)ために期待してなかった面もあったのだが、演出も丁寧でとくに文句はない。ただ、加賀騒動が起こってからの後半の展開はよく分からない部分やもう少し掘り下げたほうがよかったのではと思う部分も多かったのは残念。それでもあくまでホームドラマとしての体裁を崩さずに、主人公夫婦の人生を描いていて、ラストシーンも晴れ晴れとしているので個人的にはあまり気にならない。あえて気になることを言えばエンドロールに流れる主題歌が本作のような人情時代劇にはあまりにも現代的すぎてまったく合っておらず、ものすごく浮いているのはなんとかしてほしかった。ところで、こういう料理を題材にした作品で鹿賀丈史を見ると「料理の鉄人」を思い出してしまう。 [DVD(邦画)] 6点(2016-02-24 18:14:33)(良:1票) |
334. 日本侠客伝 関東篇
《ネタバレ》 シリーズ第3作。このシリーズ見るのもかなり久しぶりなのだが、いかにもマキノ雅弘監督らしいお祭り的な明るい作風で、とにかく楽しい映画だった。この前まで同じ高倉健主演の「昭和残侠伝」シリーズを見ていたのだが、それとはまた違った面白さがある。高倉健演じる主人公も多弁で陽気なキャラクターで、こういう健さんもいいし、冒頭の長門裕之との喧嘩のやりとりなど微笑ましく、後年の出演作では見ることのできない健さんの魅力というものが感じられる。健さんだけでなく、やはりほかの登場人物たちが賑やかなのもマキノ監督印で、みんなイキイキとしている。前回見たマキノ作品である「昭和残侠伝 唐獅子仁義」が暗めな作風だっただけにこれは嬉しい。ラスト、虐げられていた魚河岸の人々が団結して悪玉と乱闘を繰り広げるという展開は今まで見た東映任侠映画ではなかったもので、新鮮だし、このクライマックスのガヤガヤした雰囲気もマキノ監督らしいところ。主題歌も担当している若き北島三郎演じる寿司屋のアンちゃんがいい味を出している。ラスト、悪の親玉にとどめを刺すのが健さんではなく、鶴田浩二であるのも意外だった。健さんとともに逮捕されていく鶴田浩二が言う言葉が重みがあって印象に残る。しかし、このラストは健さん主演作にも関わらず、鶴田浩二がいいところを全部持って行ってしまったような気もするのがちょっとと思うところもある。でも、まあいいか。 [DVD(邦画)] 8点(2016-02-20 14:03:23) |
335. 忠臣蔵(1958)
《ネタバレ》 大映オールスターによる忠臣蔵映画。これで忠臣蔵映画見るの三本目だけど、大映だけあって出演者はもちろん、セットも豪華で凝っていてこれぞ大映!という感じの映画になっていて数ある忠臣蔵映画の中でも特に名作とされているのもうなずける。次から次に出てくる豪華な俳優陣の中でもやはりのちにNHK大河ドラマ「赤穂浪士」でも同じ役を演じる長谷川一夫の大石と滝沢修の吉良が見事なはまりぶり。それに群像劇のようにエピソードてんこ盛りで描いているが、166分間、決してだれることなく見せきっているのはうまい。そのエピソード群は泣かせるものが多いが、とくに時間を割かれている鶴田浩二演じる岡野と若尾文子演じる大工の娘との恋のエピソードがやっぱり印象に残り、吉良邸の絵図面を手に入れるために最初から自分に近づいたのかと問う若尾文子に対し、鶴田浩二が本気で惚れていると告げるシーンは良いし、ふたりの別れのシーンも良かった。川崎敬三と志村喬のエピソードも泣ける。すべてのエピソードが史実とは限らないのだが、忠臣蔵はこのように浪士ひとりひとりの物語として見ても面白いものなのだとあらためて気づかされたし、これがこの物語の人気の理由のひとつなんだなと思う。男優陣だけではなく、先ほど書いた若尾文子をはじめ、京マチ子や山本富士子など女優陣も魅力的に描かれていてその点でも満足できた。冒頭に登場する浅野役の雷蔵もうまく、むしろこういう出番の少ない役なのは勿体ない気がするが、それもオールスター映画の贅沢なところ。それにもし、雷蔵がもっと長生きしていれば彼の大石役が見られたかもとつい思った。勝新演じる赤垣源蔵の別れのエピソードもいいのだが、やはり勝新はもっと後年のほうが好きだな。なにはともあれ、大映時代劇自体をかなり久しぶりに見た気がするのだが、じゅうぶんに大映らしさを堪能できる娯楽大作で、最後まで楽しめた。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2016-02-18 00:21:01)(良:1票) |
336. 思い出のマーニー
《ネタバレ》 「風立ちぬ」と「かぐや姫の物語」のあと、ジブリがもう一度子供のための作品をということで制作された作品。まったく期待してなかったが、そこまで悪くはなく、米林宏昌監督の前作「借りぐらしのアリエッティ」よりは良い感じ。暗く内向的で病弱な主人公やミステリー仕立ての展開などはジブリらしくないが、宮崎駿監督や高畑勲監督の時代とは違うものを目指そうというスタッフの意気込みが感じられ、ジブリとしてもいろいろ模索しているのだろう。しかし、決して万人請けする内容ではなく、本作公開時になぜあまり話題にならなかったのかも分かる気がする。アンナとマーニー二人のヒロインの友情を描いているが、セリフなどから二人の関係が同性愛的に見えてしまうのはジブリというブランド力のある会社の作品としてはちょっとまずいのではないかと思うし、悪役的存在のばあやも中途半端な感じだ。(「借りぐらしのアリエッティ」でも少し思ったことだが、無理にこういう悪役キャラ作らなくても・・・。)後半に登場するメガネっこがいい味を出していて印象的で、彼女の登場後、物語の雰囲気が少し変わったのは良かった。それにしても、本作のあと、ジブリは製作部門の休止を発表し、米林監督も退社した。ジブリは今後どこへ向かうのだろうか?。 [地上波(邦画)] 6点(2016-02-13 16:26:01)(良:1票) |
337. 昭和残侠伝 唐獅子仁義
《ネタバレ》 シリーズ第5作。この間見た山下耕作監督の「人斬り唐獅子」と比べるといかにも娯楽作といった感じなのがマキノ雅弘監督らしいところなのだが、話自体はけっこう暗く、同じくマキノ監督が担当した「血染の唐獅子」(このシリーズ、はじめて見た作品。)に比べると快活さが足らないような気がしたし、最後の殴り込みシーンで助太刀に入る待田京介もなんか浮いてしまってる印象だった。それでも面白くないということはけっしてなく、楽しめるし、藤純子がヒロインを演じているのも見ていて安心感がある。今回、志村喬が親分役で出演している。東映任侠映画で志村喬のこういう役柄を見るのは意外な気もするが、新鮮だったし、さすがに重厚な存在感のある演技で映画を引き締めていて、あっけなく殺されるシーンも無情感があって印象に残る。 [DVD(邦画)] 7点(2016-02-11 16:48:33) |
338. 春を背負って
木村大作監督の前作「剱岳 点の記」よりも万人請けしやすい感じで見やすいのだが、山や自然の美しさだけが印象に残り、木村監督は本当に山が好きというのはよく伝わってくる。しかし、人間ドラマとしてのみどころが薄く、ありきたりな感じで深みも感じられず山好きが作った山の映画という、それ以上でもそれ以下でもない感じなのは前作と同じ印象でハッキリ言って凡作。ただ前作で感じた木村監督以下本作の関係者たちの自己満足感は感じなかったのでそこは良かったかなと。 [DVD(邦画)] 5点(2016-01-28 17:54:42) |
339. 昭和残侠伝 人斬り唐獅子
《ネタバレ》 山下耕作監督が手掛けた「昭和残侠伝」シリーズの一本。このシリーズ自体を見るのがまだ二本目で、しかもかなり久しぶりだったのだが、見ごたえがあり面白かった。山下監督ならではの美しさや障子の影なども丁寧にしっかりと作り込まれていて、監督の代名詞ともいえる花もここぞというシーンで印象的に使われていて、重厚さを感じさせる作風も山下監督らしい。主演のふたり、高倉健演じる花田秀次郎と池部良演じる風間重吉もカッコよく、義理と人情の葛藤がうまく描かれているが、中でも風間の葛藤が印象深く描かれている。山下監督の「戦後最大の賭場」で主人公の妻を演じていた小山明子がヒロインを演じているのもやっぱり新鮮な感じがする。それに千恵蔵演じる親分も存在感があり、いい味を出していてよく、とくに殺されるシーンの静かな演技が印象に残る。そのほかの脇役たちもそれぞれイキイキとしている。そんな脇役たちの演出がしっかりとしているからこそ主演のふたりがひきたつのだ。クライマックス近くで風間が組を抜け、秀次郎とともに殴り込みをかけるシーンも美しさがあり、たまらないし、「死ぬときは一緒だ。」という秀次郎のセリフに秀次郎の風間に対する深い思いを感じられるし、殴り込みで負傷した風間に「死ぬときは一緒だっていったじゃねえか。」と声をかけ、風間に肩を貸し、二人去っていくシーンも美しさやぐっとくるものがあり、感動的だった。 [DVD(邦画)] 8点(2016-01-23 14:39:21) |
340. 拳銃は俺のパスポート
《ネタバレ》 カルト映画と呼ばれる宍戸錠主演のハードボイルドガンアクション映画。モノクロの画面が渋い独特の雰囲気を醸し出していて、やはりこういう映画にはモノクロの映像がよく似合うとあらためて感じる。冒頭の組長暗殺シーンも緊張感にあふれていて、見せ方も手を抜かずリアルでこれだけでもう見てよかったと思える。暗殺の標的になるこの組長をこういう雰囲気の映画にはあまり似つかわしくないようなアラカンが演じているのが意外に感じるが、同時にそこがツボだった。(一言もセリフがないというのがまた良い。)そのあとは主人公たちの逃避行とそれを追うヤクザたちの攻防が描かれているが、それも見ていてハラハラドキドキさせられる展開で飽きさせない脚本が良い。途中で出会うヒロインを演じる小林千登勢も可愛らしく魅力的だ。冒頭のタイトル部分から西部劇のような音楽が流れているのもカッコいいが、クライマックスの決闘シーンは本当に西部劇を思わせる演出で、なるほどと思った。それにリアルタイムで見る宍戸錠というのは西部劇にかぶれた人という印象があるのだが、それも妙に納得。ラストこの主人公は殺されるのではと思わせておいての大逆転劇も(確かに敵が少し油断しすぎのようにも見えるのだが。)見事。これがデビュー作となる共同脚本の永原秀一はこの後、加山雄三や松田優作主演のハードボイルド映画を手がけることになるのだが、その片鱗はじゅうぶんに感じられる作品になっている。少し甘めなのだが8点を。 [DVD(邦画)] 8点(2016-01-15 23:30:05)(良:1票) |