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プロフィール
コメント数 574
性別 男性
年齢 50歳
自己紹介 管理人さま、レビュアーのみなさま、いつもお世話になっております。

タケノコと申します。

みなさまのレビューをとても楽しみにしています。
( まるで映画のように、感動し、笑い、ときに泣きます )


よろしくお願いいたします。

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321.  息子(1991) 《ネタバレ》 
仕事にありつくため都会に移り住む息子たち。やがて離散していく田舎の家族。都会では土地も住まいも高値であり、ただ暮らすだけで精一杯。その都会に暮らす息子たちを転々と尋ね歩き、やがて一人田舎に帰っていく照男の姿が寂しい。(このくだりは小津監督の「東京物語」を彷彿させます) あくまで主軸は父と息子をテーマにした物語。しかし、この国がかかえる慢性的な社会問題や、過疎地の高齢化問題にも言及しているように、社会派の一面も色濃い。厳しい暮らしの中にも、ささやかな幸せを探してさまよう哲夫。子どもと思っていた哲夫の結婚に目を見張り、照れ隠しするように喜び歌う照男。山田洋次監督の視線はどこまでもやさしい。経済状況の苦しい息子夫婦の住まいに居座るよりは、息子たちの人生を思って、故郷の孤独を選んだ父の姿。その覚悟は若者にはできない芸当だろう。本作は息子のいない自分にとって、息子から見た「父」の物語でした。いつか自分が父になったとき、また改めて観直したい。自分が息子のために何を思い、何をしてやれるのか。その時まで、三國連太郎が演じた父の姿を一つ一つ、心に強く焼き付けておきます。
[DVD(邦画)] 8点(2017-10-25 15:38:06)(良:1票)
322.  ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン! 《ネタバレ》 
コメディと思って観始めました。でもオープニング、スーパーポリスのヒーローものか、と思いきや。不穏な村の展開はサスペンス映画? いきなり首が二つごろん、実はスプラッター映画か! でも銃やカーチェイスありのアクション映画? ついには二丁拳銃のおばちゃん&袖から拳銃の神父さんがご登場、そうきたか~と(笑) やっぱり結局コメディかい! このように全く先の読めない、映画のジャンル自体が目まぐるしく二転三転する展開は面白い。映画パロディネタにもニヤリ。そして「チャイナタウン」のネタばれネタには苦笑。(この会話ブラックすぎるぞ!) で、結局のところ観たあとに残るものはあまりなかったです(笑)
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2017-10-17 22:18:23)
323.  劔岳 点の記 《ネタバレ》 
遥か高い山頂を目指して、測量という仕事を寡黙に全うする男たち。地図の歴史に隠された壮大なドラマは、心に残る男たちの物語でした。役者たちの顔(面構え)も圧倒的によかった。木村大作監督は名カメラマンとして名高い。四季折々の山々の風景。雄大な景観。岩肌の険しさ。野生動物。大雨、大雪。そのありとあらゆる大自然の映像は迫力があり、とても見応えがありました。ただし鳴らしすぎの音楽は大きくマイナス点。これは日本百名山の案内ビデオではないのだから、風の音や動物の鳴き声、人間の息遣いなど、音楽よりは映画らしい山の臨場感を十分に感じたいところ。クラシックについても、この男たちのテーマ曲としては相応しくない気がしました。陸軍陸地測量部と日本山岳会。山に挑む目的から初めは敵対し、長い曲折を経て認め合い、山頂で讃えあう姿はまさに「ノーサイド」。実に気持ちのいい男たちだ。なお今回は彼らを撮影したクルーたちに惜しみない感謝を。何日も悪天候と戦いながら、あの難所に重たい撮影機材を運ぶその苦労には頭が下がる思いです。
[DVD(邦画)] 6点(2017-10-16 22:33:27)
324.  パターソン 《ネタバレ》 
アダム・ドライバーがパターソンの街でバス・ドライバーのパターソンって (笑) 遊び心がすぎるぞ、J・ジャームッシュ。 かつての彼の映画は、ビリビリとした個性を放っていて近寄りがたい空気があったものだが・・。今作はずっと優しく温かくて、監督ご自身が丸みを増したかのような印象を受けました。 家と通勤路、バスからの風景、BAR、滝を望む公園。陽光、行き交う人たち、色づく街路樹。さりげない日常の反復のようでいて、毎日違う顔を魅せる、いつもの風景。大きなドラマはないが、一画一画がとても洗練されていて、まるで写真集のページをめくっていくような味わい深い映画でした。 一つ、インパクトのある台詞があります。「詩の翻訳はレインコートを着てシャワーを浴びるようなもの」 これは、音や韻が持つ響きも含めて "オリジナル" を愛せよ、と解釈したい。 そして本当の個性とは、個性的なことではなく変わらないこと。 一見すると変化しているように見えて、変わらないその本質は、J・ジャームッシュのスタイルそのものです。
[映画館(字幕)] 7点(2017-10-10 00:20:37)(良:1票)
325.  冒険者たち(1967) 《ネタバレ》 
鉄クズの山は積み重ねる空虚な日々。旋回を続ける飛行機は持て余す若さ。海に沈んだ財宝は人生のロマン。果てしなく青い海は、永遠に続くように思える若さのきらめき。その海に沈んだレティシアは青春の藻屑。冒険の先にそびえ立つ、夢の残骸のような要塞島。ストーリーが全編にわたって象徴的に意味を持っていて、それはまぶしいほどの映像美とともに、観る者たちを冒険の世界に誘い、そして残酷なほどにあっけなく突き返され、現実に連れ戻されます。レティシア亡き後に二人が彼女の故郷を辿る旅から、彼女が歩んできた人生の孤独を感じとり、マヌーが戻った都会の冷え切った描写からは、彼も結局は孤独であることを強く実感します。孤独からの現実逃避、でもそこは思い描いた理想郷ではなくて、また現実に戻ってやがて孤独を受け入れる。この映画自体が、若者が大人になるまでの通過儀礼を象徴的に描いた物語とも言えるでしょう。長い曲折を経てマヌーが凶弾に倒れた時、二人が交わした会話が心を打ちます。そして私はいつもこの場面で在りし日のレティシアの姿が浮かび、涙を禁じ得ない。ここまでたどり着いて今さらながら気が付くことになる。三人が探し求めていたのは金銀財宝ではなくて、ただ人間らしく生きていくための愛や友情だったことに。若さゆえに遠回りして探し求めて、あとわずかでつかみ損ねたその見果てぬ想いを、私はこの先も忘れることはないでしょう。
[DVD(字幕)] 10点(2017-10-08 20:35:56)(良:1票)
326.  ザ・ワイルド 《ネタバレ》 
大自然のサバイバル映画としては、かなり上質のものかと。また、人食い熊による動物パニックものとしても、他のB級「グリズリー」映画よりはよほど観応えがあります。 とは言え、結局のところ本作は人間 (の描き方) に魅力があるからこそ、面白い。墜落、巨大迷宮のようなアラスカの大森林、襲いかかる人食い熊、、あらゆる困難に動じることなく、知恵と勇気をもって挑む大富豪チャールズ (A・ホプキンス) の姿は神々しさすら感じます。そして、彼とロバート (A・ボールドウィン) との関係性は本作最大の肝と言えるでしょう。映画全体に漂う、隙あらばチャールズを殺ってやろう、という彼の殺意。遭難した後も生き残るために協力しながらも、彼の奥底には潜んでいます。この殺意がとても張りつめた緊張感を生んでいて、本作を単なるサバイバル映画でない、より一層重厚なドラマにしているように思えます。 結末はロバートにすれば因果応報としか言いようがなく、チャールズはそんな彼にもまさに山のように大きな心で接しました。大自然の風景も美しくて、人としても色々と学ぶことの多い映画でした、、 ってケチのつけどころがなく意外と名作かも?
[DVD(字幕)] 7点(2017-10-04 22:31:33)(良:1票)
327.  ドリーム 《ネタバレ》 
冒頭における三人の愉快なやり取りから察するように、黒人差別をテーマにしながらも、そこまでの重苦しさはなく軽快なタッチで描かれています。(さじ加減は数年前の「ヘルプ 心がつなぐストーリー」に近い感じ) 三人の職場における差別や苦境はしっかりと描きつつ、でも私生活では三人揃って明るく笑い飛ばすという、映画全体のバランス(明暗の緩急)に長けていたように思います。なお私は数学音痴なので、ロケット軌道計算や着水地点解析の難易度がどれほどかは想像もつきませんが、キャサリンが数学の地球代表であるすごさは伝わってきました(笑) 脇役も総じてよかったですが、特にK・コスナーは絶品でした。90年頃の全盛期からキャリア低迷もありましたが、その苦労と経験がいい感じでにじみ出ていて、むしろ昔よりいい役者になったように思います。(今の彼で主演映画が観てみたい、と心から思いました) 有人宇宙飛行「マーキュリー計画」という大きな歴史。その歴史の主役はロケットでもコンピュータでもなく、"人間たち"であり、男も女も白人も黒人も(ポジションも)関係なく、担った全員が主役であったことを実感します。同じ題材を取り扱った「ライトスタッフ」と比べても面白いかもしれません。興味深いのは題材は同じでも全く別の映画になっていて、人間を軸にその姿を変える映画の無限の可能性を感じました。誠実に丁寧に作られた、本当に胸のすく映画でした。しばらくはいい夢が見れそうです。
[映画館(字幕)] 8点(2017-10-01 18:51:37)
328.  犬神家の一族(1976) 《ネタバレ》 
原作でもある横溝正史氏の金田一探偵シリーズは、学生時代に本作を含めて数冊読んだことがあります。思い出せば、怪奇・陰惨・情念といったイメージがすぐに浮かぶのですが、映画版は少し違いました。物語は原作そのままですが、キャラの描き方はまるで喜劇調のように軽妙にアレンジされていて、驚くほどに爽やかな終わり方となっています。石坂浩二さんの金田一はシリーズの枠を越えて、邦画史に残るキャラクターだと思うし、加藤武 (よーしわかった!笑)・坂口良子 (可愛らしい!) といった脇役たちも愛すべき人物ばかり。でも実は悪役たちにこそ、市川崑監督の "人間愛" が行き届いています。戦争・財産・情念は人間を狂わすもの。彼らはその境遇が生んだ悲しき犯罪者であり、その描き方には「罪を憎んで人を憎まず」の心がありました。名曲「愛のバラード」。スケキヨマスクのビジュアルインパクト。金色の屏風や屋内の光と影を変幻自在に映し出す映像美。その他どこを切っても、まさに名作と呼ぶに相応しい。余談ですが、昨年の「角川映画祭」で幸運にも映画館で観る機会に恵まれました。念願の大スクリーンで彼らに再会できたことは、まさに映画ファン冥利に尽きるよろこびでした。
[映画館(邦画)] 9点(2017-09-29 21:16:45)(良:2票)
329.  エクソシスト 《ネタバレ》 
ホラー映画の金字塔といった大きな期待と先入観を持って観ると、時代も古いので少々物足りないかもしれない。だからジャンルとしては、オカルトという題材をモチーフにした、人間ドラマ(ヒューマンドラマ)と考えた方がいいだろう。そうこれは、悪魔に取り憑かれた少女と稀有な悲劇に遭遇したその母親の物語。そして何より、その命を懸けて悪魔と対峙した、崇高な二人の神父たちの物語。これは悪魔と遭遇し、立ち向かうことを余儀なくされた、人間たちの至高のドラマなのである。本作はE・バースティンとメリン神父を演じた名優M・フォン・シドーの名演はもちろんだが、こんな"紙一重"のお話が傑作に化けたのは、W・フリードキン監督の演出力による貢献がとても大きい。映画のイメージでもある、メリン神父が長い旅路の果てに屋敷にたどり着き、悪魔の住む家を見上げたあの場面。これはわずか一瞬だが、ホラー映画史を象徴する絵として記憶に残る名場面と思う。余談だが、本作の公開から40年以上、M・フォン・シドーはまだ存命で今もほとんど変わらぬ風貌である。この現実の方がある意味で最も怖い。 (悪魔に憑かれたのは実はこの人だったか?)
[DVD(字幕)] 9点(2017-09-26 22:21:51)(笑:1票)
330.  ぼくの伯父さん
お父さんとおじさんの違いったら、その子どもに対する責任感の軽さ、なんです。会いたいときだけ会って、おもちゃ買ってあげて、いつもニコニコしていればいい、この軽さ加減は素晴らしい。まるで擬似の子育て体験、それはおじさんだけに許された、世にも楽しい"特権"なのである。ついでに仕事も人生も、こんな感じで肩の力を抜いて楽しくいきたいものだ。さぼりすぎはいけませんが、文明の進化もこのへんでもう十分でしょ?(これ60年前ですが笑) 軽妙で洒脱、とてもフランスらしさに溢れた、ジャック・タチの愛すべき一品でした。
[DVD(字幕)] 7点(2017-09-24 21:19:11)
331.  この森で、天使はバスを降りた
うん、なかなかいい映画でした。A・エリオットの透明感と大自然の映像美に癒される一作でした。でも邦題はよくない。このおかしな邦題が観た人たちの神経を逆撫でしてる。もっと原題に忠実な、例えば無難に「スピットファイア・グリル~森に導かれし者たち」あたりがよかった気がします。邦題はね、出しゃばってはいけないんです。(基本、直訳がベストと思ってます)
[DVD(字幕)] 8点(2017-09-24 19:47:34)
332.  夜の大捜査線 《ネタバレ》 
バージルは刑事としては疑いようのない凄腕。でもこの時代、白人たちから黒人の存在は軽視されていて、例え能力があってもそれは妬みや警戒の対象でした。その信頼を勝ち取るまでには、そもそものスタート地点が大きなマイナス点からというハンディキャップがあるのです。それでも彼は不屈の精神で立ち向かい、やがて真の力で事件を解決に導いた。S・ポワチエという名優が演じた、バージルという男のしなやかな佇まいと瞳の強さに僕は圧倒されて、最後は彼とR・スタイガー(警察署長)の友情に胸が熱くなりました。本作の"夜"とは、黒人にとって混沌とした暗黒の時代という、もう一つの意味合いも含んでいると思います。だから事件の解決とともに迎えた夜明け、それは長かった暗黒の時代の夜明けでもあると思うのです。負の歴史を鑑みれば、本作一作を以て手打ちにしようというには都合がよすぎますが、これはあくまでそれにつながる第一歩。これからの明るい未来、そして人種を越えた力が手を取りあう大きな可能性を予感しました。
[DVD(字幕)] 8点(2017-09-23 21:37:57)
333.  不思議惑星キン・ザ・ザ
スターウォーズにダニエル・クレイグそっくりさんを出演させて、クーー~!!っと「ハ」の字でゆる~くブレンドした感じ?(なんのこっちゃ) はっきり言って意味不明な映画ですが、一度観たら絶対に忘れない強烈なインパクトがあることは確か。(個人的には旧ソ連云々はどうでもよい) もっと良質なのに記憶から消え去る映画が多い中で、映画の勝ち組と思う。改めて映画って"個性"が重要と感じました、はい。最後、観ている最中に足がつったことも備忘録として付け加えておく。
[DVD(字幕)] 6点(2017-09-23 16:06:27)
334.  アヒルと鴨のコインロッカー 《ネタバレ》 
伊坂幸太郎氏の原作を先に読みました。氏の作品の中では特にお気に入りの一冊です。映画化にあたり、本ならではの叙述トリックをどう料理するのか?と楽しみ反面、少々不安でしたが、これはうまいです。素晴らしいとしか言いようがない。基本、映画においては時系列で物語が進むべきで、回想シーンの多用はNGと思っています。でも本作の大半は実は回想ではなく、"ドルジ" を "河崎" と思い込まされた、椎名の解釈 (想像) なんですよね。山形人の存在により彼が事実を知った時、ペット店や動物園等々、彼の解釈はだまし絵に姿を変えドルジの回想 (真実) によって上書きされます。「椎名」の存在を最大限に活かした、映像による叙述トリック。監督の手腕に唸らされました。思えば彼はこの切ない物語の唯一の部外者 (巻き込まれ役) です。映画が初見の方は真実を何一つ知らず、いつの間にか彼と一緒に物語に巻き込まれ、そして一緒に騙される。すなわちこれは視聴者参加型の映画なのだと思う。映画が発信する言葉については言うまでもありません。"風に吹かれて" は、音楽という言葉の壁を越えて理解する普遍的な感動。アヒルと鴨は、見た目や肌の色ほど変わらないその本質。そして河崎とドルジと琴美の関係。そのどれもが、愛や友情に国境はない、といった大きなメッセージだと思います。
[DVD(邦画)] 8点(2017-09-21 12:02:55)(良:2票)
335.  ラブ・アゲイン 《ネタバレ》 
いや~笑った、笑った。S・カレルとR・ゴズリングの掛け合いが本当に面白いです。会うなりダサい靴をはぎ取って投げ捨てたシーンなんか、腹を抱えて笑ってしまった。K・ベーコンやM・トメイといった大ベテランがこんなん役(笑)で出演しているのも映画ファンには嬉しいし、関係者全員集合!するお庭の場面などはうまい脚本だな~と唸らされました。そう言えば、R・ゴズリングとE・ストーンは最近の「ラ・ラ・ランド」でも共演していましたね。「ラ・ラ・ランド」鑑賞後に本作を観ると、二人の幸せそうな姿を観るだけで切なくなってきます。本作のあっと驚く人間関係のマジックしかり、時に映画同士も不思議な関係を魅せて、映画ファンを楽しませてくれます。
[DVD(字幕)] 7点(2017-09-17 19:00:33)(良:1票)
336.  散歩する侵略者 《ネタバレ》 
返り血を浴びた侵略者が、車が飛び交う道路のど真ん中を悠々と"散歩"する。次々と激突して横転する車を後に、女は一瞬冷たく微笑んだ・・。この強烈なオープニングにまずやられました。黒沢清監督の映画としては大胆なSFであり、同時に今回はコメディ色が濃いのも特徴。特に、賢いのか間抜けなのか、最後までつかめない長谷川博己の"宇宙人"キャラが秀逸で、桜井と天野少年の絡みは可笑しくて仕方がなかった。(監督の映画でこんなに笑ったのは記憶にありません) なぜか、「CURE」の役所広司と萩原聖人の全くかみ合わない会話を思い出しました。概念を吸い取られた人間の変わりようも笑いを以て描いているが、実はこれこそ最もたるホラーでしょう。突然ぐにゃっとなってしまって、姿はそのままだがもうすでに心は抜き取られてる・・。怖い怖い。真治が愛の概念を吸い取ろうとして、脳内変換オーバーフローによって失敗し、鳴海は(その時点では)無事だった。これは素直に、愛は計り知れない、という解釈をしたい。まあ、それほど深淵なその言葉の概念を、牧師さんはまるで安全標語のスローガンのように棒読みしたわけですが・・(笑) 夫婦、岸辺、不安げな空の色、戦慄の中にも懐かしさ漂う音楽。監督ご自身が強いこだわりのあるモチーフを踏襲しつつ、(同時にファンが期待しているもの、と言える) 見たことがない世界をまた魅せてくれた。毎回思うのですが、監督の思考回路は一体どうなっているのか。その頭の中にある、「映画」という概念を覗いてみたいところです。
[映画館(邦画)] 8点(2017-09-12 00:36:12)(良:1票)
337.  おとなのけんか 《ネタバレ》 
結局、映画にとっても4人にとっても、こどものけんかは口実なんでしょう。全員、議題(こどものけんか)よりは、初めから自分たちのメンツや虚栄心が重要であることが丸出し。こんなおとなたち、本当見ていて恥ずかしいわ、、と思ったら監督の思惑通り。なぜならこれは、人の振り見て我が振り直せの映画なのだから。個人的には、議題には全く無関心だったアランが、マイケルの秘蔵"ウィスキー"には突然関心を示す、といったところは最も笑えました。(酒をみた時のC.ヴァルツの表情だけでプラス1点笑) その後はおとなたちが酒に飲まれる怒涛の展開。おそらく酒で痛い目にあったことがある人は、ひきつった顔をして笑っていることでしょう。やがて映画は、着地点を見失った"大きなこどものけんか"へ。ラストはけんかの真っ最中に、場面が突然公園に変わるちょっとスッキリしない終わり方。仲直りしたこどもたちが部屋に入ってきて、「けんかはやめようよ」と言ったら拍手でしたが。
[DVD(字幕)] 7点(2017-09-10 11:38:22)
338.  新感染 ファイナル・エクスプレス 《ネタバレ》 
疾走する新幹線、疾走するゾンビの群れ、そして暴走する人間が約1名!スピード感抜群の新感染ならぬ新感覚ゾンビ映画!電車の窓ガラス一杯に所狭しと溢れるゾンビたちの姿、この圧巻だけでゾンビ党は大満足したのでは?走る新幹線といった状況を生かした設定の数々、特にトンネルや荷物用の網棚の使い方などは面白いと思った。少女の歌の伏線の張り方と回収など、脚本もよくできていたように思う。でも野球部員たちはちょっと気の毒。何しろゾンビ撃退用の武器が不自然なくあることが必要なので、要するに単なるバットやボールを用意するための役どころですから。結局、感染源は何?(媒体はあのシカなんでしょうが)といった不満もありそうですが、そこは難しいこと考えずに頭カラッポにしてどーぞ。
[映画館(字幕)] 6点(2017-09-04 21:30:31)
339.  幼な子われらに生まれ 《ネタバレ》 
浅野忠信と言えば、「私の男」「岸辺の旅」「淵に立つ」といった、不気味な役どころが最近はすっかり定着していましたが、今回は一転してマイホームパパという (笑) でも久しぶりに、普通の人を演じる浅野忠信を堪能できました。 本作の映像、それは古びた8ミリカメラで撮影したようなくすんだ色合いで、その空気はどこか懐かしい感じがしました。音楽をじゃんじゃん鳴らすこともなく、静かで抑制のきいた演出も私好みでした。 物語を通して、根っからの悪人は登場しません。唯一、クドカンは小悪党のようでしたが、最終的には意外と愛すべき魅力的なキャラになっていて、人物の描き方にはとても好感が持てました。彼は最後、既にプレゼントの「ぬいぐるみ」を買っておりました。それはつまり、娘さんが来ないことを承知の上で待合せ場所に来た、ということ。本当に娘と会うつもりであったなら、二人で一緒に買いに行こうとするはずですから。彼も、元父親として最低限の義理を果たそうとする真人間であった、ということです。 話変わって、本作は信と妻の元夫、信と元妻の夫、この関係に注目したい。信の結婚が一度失敗したことにより、奇しくもつながった人間関係です。でも彼らの間には、一度は同じ家族の父親であった連帯感が芽生えたのか、デパートの屋上や病室の場面では不思議な「絆」が感じられて、少なからず心が熱くなりました。 "家族を守る使命" という襷 (タスキ) を、ある親が転んで落としそうになった。その親はもう疲れていて、起き上がって走ることはできない。でも誰かがその襷を受け取って走り、やがて本当の親になり、いつしかその家族の絆はもう少し大きく広がった。これはそういったお話。 はっきり言って、彼らと彼らを支えた妻たちの姿を前にして、離婚とか生みの親とか育ての親とか、どうでもよくなりました。"われら" とは、決して血のつながりだけではないはず。だから新しい命に、「生まれてくる君よ、大家族へようこそ」と声を大にして言いたい・・!!
[映画館(邦画)] 8点(2017-08-28 22:32:35)(良:1票)
340.  二十四の瞳(1954) 《ネタバレ》 
小豆島という懐かしい日本の風景。素朴な子どもたち。仰げば尊し。高峰秀子や笠智衆といった、日本映画の良心のような役者たち。その全てが、画面から溢れんばかりの優しさで、僕の涙腺を刺激します。本作の舞台は小豆島。実は少し前に一度訪れたことがあります。島にある「二十四の瞳映画村」には、撮影で使用された学校が今も残っていて、そこには確かに大石先生が教鞭をふるった教室があり、窓からは今も変わらず海のにおいを感じます。すっくと教壇に立つと、あの時先生が見据えた12人の生徒たち、その純粋無垢な瞳が心に蘇るのです。思えば、本作はまるで12人の生徒全員が主役であるように、その表情(瞳)のクローズアップがとても印象的でした。原作の"瀬戸内海べりの村"という曖昧な舞台を、木下監督があえて"小豆島"という小さな島に選んだのは、さて一体なぜだろう?と考えました。きっと監督の思いでは、この国の子供たち全員が日本の宝であり、全員が本作の主役なのでしょう。でも数万の瞳を描くことが無理ならば、それができないならばせめて、せめて二十四の瞳で。監督の心には、小豆島という舞台は、"日本という島国の縮図"として存在したように思えてなりません。最近の"この世界の片隅に"でも強く感じたことなのだが、日本人は戦争を題材にしながらも、どうもアメリカを悪く描かない。それどころか、戦争という怪物ですら、もう起きてしまったことだからと誰のせいにするでもなく受け止めて、ただただ未来に向けてひたむきに生きようとしています。これは語り継がれるべき反戦映画、でも伝えようとする人たちなくしては、それは到底伝えていくことはできません。二十四の瞳の奥に、何を感じたのか。終戦後、もう70年以上が経ちます。8月のこの時期を迎えるたびに、今という時代があることを、あの時代の人たちに感謝します。そしてこの平和がいつまでも続くことを心から願います。
[DVD(邦画)] 10点(2017-08-15 00:05:33)(良:1票)
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