321. 美女と野獣(1991)
遠い昔に見ていただけで、ストーリーラインを除くとあまり記憶に残っていない。なので新鮮な気持ちで見ることができた。世界観を補強した実写版も良かったけれど大人の事情もあるだけに、上映時間が短くこういうあっさりな感じも悪くない。 [地上波(字幕)] 7点(2020-04-25 11:14:02) |
322. 名探偵コナン 紺青の拳
もうこの手の推しキャラ路線に質がどうとか言うのは野暮だろうな。メインのミステリーとサスペンスはそっちのけで、いつも通りドッカンドッカンな平常運転だったかと。別人として同行しているのに最後までコナンに気付けない蘭を始めとする、思い入れのあるレギュラーもなく、映画ゲストキャラにも魅力が感じられず、淡々と見終えた印象です。ファンムービーと割り切って、ヒットし続けるならそれで構わないが、純粋に映画として見るなら"粋じゃない"。定番アニメに頼らざるを得ない邦画の脆弱さに眩暈がする。 [地上波(邦画)] 4点(2020-04-17 23:53:27) |
323. トレイン・ミッション
期待しなければそれなりの暇潰しにはなるだろう。ただ、ほぼ電車で展開される、その縛りに拘りたいのであれば、揉み消し側の穴だらけのプランや無茶苦茶なアクションはどうにかして欲しかった。それだとかなり地味になるし、派手な見せ場がないと集客できないのは分かるが、描きたいことを詰め込みすぎて、アイデア一本勝負が薄れてしまっては勿体ない。 [地上波(字幕)] 4点(2020-04-16 23:30:23) |
324. 羅生門(1950)
《ネタバレ》 女は犯され、男は死んだ。それだけが事実。だが誰の視点で詳細が語られようが、自分の有利なように繰り広げられる"物語"がそこにあった。真相が醜悪で泥臭いものだとしても、受け取る側は好みの情報を事実として広めていく。まさに現代社会のマウンティングとファクトチェックそのものだ。最低限のセットだけで中世と感じさせる黒澤明の力量は言うまでもない。京マチ子の多重人格にも似た怪演が、男の所有物として踏み躙られてきた女という生き物が、如何に時代をしたたかに生きてきたことを印象付ける。人間の愚かさに直面しながらもそれでも世は捨てたものではないと思わせる重厚なヒューマニズムが、モノクロ画面に鮮やかに焼き付けるラストが心に残る。たとえその意見が個人から見た美談だとしても・・・ [地上波(邦画)] 7点(2020-04-16 00:45:47) |
325. ある天文学者の恋文
《ネタバレ》 トルナトーレは『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』くらいしか見ていなかった。父娘ほどの年の差遠距離恋愛ものかと思いきや、まさかの教授死亡。その後、彼女の行動を見透かすかのようにビデオレターが次々と封筒で送られてくる・・・。どういうどんでん返しがあるのか引っ張られるわけだが、良く言えば恋人を失った若い女性の自立物語、悪く言えば回りくどいオッサンの妄想垂れ流しである。しかも不倫で秘密裏に彼女の過去を探っていたのだから尚更。彼女を立ち直らせたいのであれば、聖域に立ち入らず、弁護士に遺品等を預けて潔く身を引くべきなのに、これでは映画にはならないから、結局気持ち悪い展開をダラダラ続けていくことになる。女はそこに疑問すら感じない都合の良い人形のよう。監督の"素敵な恋愛"、昔ならともかくいくらなんでも時代遅れとしか言いようがない。温故知新というものを失い、自分自身に酔っているようだった。 [地上波(字幕)] 4点(2020-04-16 00:06:12) |
326. インデペンデンス・デイ: リサージェンス
確かに前作も問題だったが、当時としては規格外のスケールで、特撮技術の限界に挑戦したという意味では価値はあった。だが、CG全盛の時代に何の捻りもなく同じ展開を繰り返すことに意味を見出せなかった。前作のキャストがほとんど続投する必然性もないくらい、目まぐるしく場面展開し、誰かに肩入れする気持ちも削がれて、勝手にやってくれと思ったくらいだ。また、中国市場に念頭を置いたキャスティングと宣伝が目立ち、日本がどれだけ国際社会から置いて行かれているか痛感させられる。今後も反トランプで、ますますハリウッドの中国依存は加速していくことだろう。時代の流れかな・・・ [地上波(吹替)] 3点(2020-03-26 23:44:29) |
327. ゾンビランド:ダブルタップ
《ネタバレ》 10年ぶりに監督も脚本も主演4人も続投で、さらにスケールアップ! と思いきや、そこまで肩肘を張らず、いつも通りゆる~いサバイバルライフを可笑しみたっぷりに描き出す。『リトル・ミス・サンシャイン』の頃から体型に片鱗のあったアビゲイル・プレスリンの変貌ぶりをよそに、10年前から全く変わっていないジェシー・アイゼンバーグの対比が面白い。ゾンビは出てもあくまで背景に過ぎず、ファミリー崩壊の危機も最後は大団円に終わる安心感。一見、変化していないように見えるが、その面白さを維持させるのが難しいからこそ、如何にマンネリに陥らせないか。途中からキャラの被る二人組が登場したり、死んだと思ったアホの子がなんと生きていたり、誕生日プレゼントの使い方もそうで、あらゆる小ネタも演出もスマートに決めていく。キャリアを重ねた彼らが成せる業だろう。難しいと思うが、10年後に3作目は如何ですか? [DVD(字幕)] 6点(2020-03-26 23:05:42) |
328. ブラックパンサー
《ネタバレ》 アメコミ映画初の作品賞候補とのことだが、アフリカ系主体、フェミニズムといった反トランプ的要素が考慮された結果だろう。多様性を意識しすぎるというよりゴリ押し感があり、映画にあまりのめり込めなかった。地上波ではかなり削られていたようだが、どれもこれもどこかで見た展開ばかりで、奇抜な設定以外、目新しいストーリーも捻りも存在しない。舞台衣装とセットだけは良かった。MCUに興味がなければ苦行のような映画だろう。同監督なら『フルートベール駅で』のような作家性の発揮できる映画が自分には合う。エンタメ性と多様性が水と油のように混ざらないのは、一部を除き、最近のディズニーの持病みたいになっているね。 [地上波(吹替)] 4点(2020-03-21 00:50:58) |
329. ベニスに死す
《ネタバレ》 テレビ放送のため、かなり削っていると思うが何てこともない。枯れたオッサンが有望な美少年に恋心を抱くだけの話。互いを意識しているのか、一方的なだけなのかニアミスしたまま映画は終わる。正に憧れで終わるあたりに、凡庸な芸術家のまま人生を終わっていく醜い中年と、手の届かない世界に漂う少年の美の対比が際立つ。上流社会の退廃的美学を被せて、これぞ芸術と名作らしく見せているようで底が浅く見えるのは、学の足りない自分がその境地に至っていないからか。ここまで徹底して、何も手に入れられなかった老いぼれが醜く描かれると長生きしたくない。 [地上波(字幕)] 4点(2020-03-21 00:30:15) |
330. 翔んで埼玉
原作漫画未読。ローカルネタ満載のギャグ作品なのは分かってはいたけど、本当に見るに堪えない。如何にもテレビ局が作ったような下品さに満ち溢れていて、突き抜けて敬意を感じるかと言えば否。テレビ特番で十分すぎる。フィクションが現実とどうリンクするかなんて大したことなく、バラエティの内輪話を延々と聞かされているようで早く終わってほしいと何度も思った。本当に優れた娯楽映画ならローカルネタばかりにゴリ押しせず、興味のない人でも楽しめるように実力で勝負するはず。黒澤明から真似事と評された日本アカデミー賞で最多候補、他方、本家では韓国映画が主要部門を席巻。本当にこれで良いのか? どうしても絶賛しなければいけない空気に疑問を抱かざるを得ない。 [地上波(邦画)] 2点(2020-02-17 23:50:18) |
331. 1917 命をかけた伝令
アカデミー賞大本命と謳われながら期待しなかった。案の定、ワンカット風撮影が売りで、それ以上の驚きは感じられなかった。確かに綿密に計算され尽くしたワンカット風の演出に、制作陣の執念深さ、圧倒的な力量と労力は伝わってきた。だが、その凄さが面白さや感動に繋がるかは別の話。技巧を優先させすぎて、登場人物に血が通っていないように感じられるのは何故だろう? どこかビデオゲームを見せられているようで中途半端にドラマを挿入するから違和感がある。オスカーに受けそうなベタベタな戦争ものなら尚更。一応、最後まで見ることができたので悪くない映画だと思うが、作品賞を取れない理由が分かる気がした。「新鮮味がなさすぎる」。 [映画館(字幕)] 6点(2020-02-17 19:34:29)(良:1票) |
332. アトランティックス
《ネタバレ》 アフリカ系女性監督ならではの感性と独特の作家性が発揮された、常に浮遊感に漂うゴースト・ラブストーリー。時折、ブードゥー教を思わせる呪詛的なホラーの片鱗を見せつつも、むしろ描かれるのは昔の慣習(強制結婚、処女検査等)に囚われた女性がモノとして扱われる社会、そして給料未払いに代表される格差社会に対する抵抗である。欧州へ不法移民を試み海に呑み込まれた男性労働者が、女性たちに憑依し、かつての雇い主を恐怖に陥れる描写を見ても、権力と男性優位社会からの女性の自立を表明する。青い画面に揺らめく緑のネオンに代表される、時折挟み込まれる詩的なイメージに、バリー・ジェンキンスの作風は意識しているだろう。本作はカンヌ映画祭で次点のグランプリを獲得しているが、アフリカ映画という馴染みの低さによるNetflix配信であるため、独立映画の立ち位置の危うさがくっきり浮かび上がった。映画界も分断が進んでいくのだろうか? [インターネット(字幕)] 5点(2020-02-02 18:56:10) |
333. 失くした体
《ネタバレ》 切断された右手の冒険と持ち主の青年の半生が陰鬱に綴られる。独創的でグロテスクで美しい、フランスらしい芸術性の高いアニメーション。設定と作風故に序盤は拒否反応はあったものの、徐々に切断されたあの時に向かって集束していく展開に見入ってしまう。彼の人生は恋とかいった希望を求めては全部裏目に出てしまう過去ばかりであった。ああいうことをしなければ良かったという後悔と共に。その彷徨う右手はどこか希望への執着(=持ち主との接合)、未練みたいなものを感じているように見えた。右手と共にあった人生から切り離されれば、普通は絶望してしまうだろう。生きるも死ぬもどうでもいいとヤケだったに違いない。だが、彼は生きるという賭けに勝った。右手という希望を捨てて、現実に向き合って生きていくことを選んだ。その先は厳しく辛いことばかりかもしれないが、「人生は達観するもの」という真理を突いていると言える。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-01-13 23:40:10) |
334. パラサイト 半地下の家族
《ネタバレ》 "臭いの視覚化"。 これが上流と下流の分断を象徴する。 いくら賢くて努力をして、金持ち一家に取り入ったとしても、永遠に彼らとの距離が縮まることがない。 身なりを整えても洗い落せない臭いが、存在しない"地下の住人"が加わって浮上し、寄生一家の計画は破綻していく。 地上と半地下、そして中盤からの地下を含め、3つの家族が3つの階層で構成されるが、 高台の家族からしたら、下の存在には無関心も同然。 悪意はないにしろ、レトルトのジャージャー麺でさえ作らせるくせに 高台から下へ流れていくスラムの大雨被害なんてどうでも良いのだ。 災害も被災者もいなかったことにされるパーティーで貶められた者たちによるサイコホラーさながらの惨劇。 計画を成功させるには役に徹し切るしかないが、生きていくことで手一杯な寄生一家の父親には、 理想だったはずの世界における妬みに思考が耐えられなかったのだろう。 自ら地下に堕ちた彼を、息子は救い出す計画を立てる。 希望であり、明るい未来として挑む正攻法ではどう足掻いても打ち砕かれる余裕のなさと諦観が雪と共に埋もれていく。 こうならないためにさらに高い壁を築いてAIでも雇って排除するのか。 もはや自分達が良ければそれでいい、見返りのない面倒臭いことをする意味の無さが、 無意識に蔓延していく恐怖をポン・ジュノは警告する。 【6/12追記】モノクロ版鑑賞。 白黒の鮮明なコントラストで、持つ者と持たざる者の格差を際立たせ、醒めない悪夢をより強調させていた。 色彩による情報が排され物語への没入感が深くなり、カラー版に比べてスッキリ見易くなった印象。 なのに色が見えてくるのだから不思議。 同じ映画なのに、別の映画を見ているような貴重な体験だった。 [映画館(字幕)] 9点(2020-01-13 21:17:05)(良:1票) |
335. 2人のローマ教皇
《ネタバレ》 バチカンを舞台にした、新旧ローマ教皇の小品な会話劇。これだけ見ると堅苦しい題材であるが、ジョナサン・プライスとアンソニー・ホプキンスのベテラン二人による自然体あふれる好演と、ユーモラスな台詞の応酬が心地良い。保守派と改革派の対立する二人に及ぼした背景と、犯した重い罪による苦悩、そして再生までを丁寧に描く。お互いに影響を受けながらも氷解した関係になり、ファンタ片手にピザを食べたり、W杯中継に興じるシーンが微笑ましく、彼らもまた完璧ではないどこにでもいる人間なのだと親近感が湧く。軍事政権下のアルゼンチンの混沌とスラムの貧困描写は監督らしい。来日した現教皇のスピーチに違和感を持った人は少なくないと思うが、会社もトップも変化の意思がなければ社会も人も変えられないし、誰もが自分の世界に引き籠っている"無関心のグローバル化"への警鐘は、本作を見て説得力はあったと言える。 [インターネット(字幕)] 7点(2020-01-05 10:09:28) |
336. マリッジ・ストーリー
《ネタバレ》 お互いに良い部分は知っている。尊敬し合ってもいる。でも所詮は赤の他人。自分の真に求めているもの欲しさに、男女の価値観からくる歪みの中で最善策を模索していく元夫婦。表面的に言いたいことが分かっても、元を含む夫婦でないとなかなか共感し難い内容になっている。罵詈雑言で対立しながらもどこか心の底では嫌いになれない夫婦を余所に、勝つためなら手段を選ばない傲慢弁護士による闘争がなんて滑稽なことか。親の身勝手に振り回される子供が可哀想とも言える。しかし結婚という形だけが全てではなく、矛盾しながらも前に歩んでいこうとする二人に、形に囚われない絆が、愛情が感じられる。それは、離婚も少なくないが決して道筋が一つではないアメリカの多様性、成熟ぶりが物語っている。主演二人の演技合戦に白眉。 [インターネット(字幕)] 7点(2020-01-01 01:16:27)(良:1票) |
337. アイリッシュマン
《ネタバレ》 なんて寂しいのだろう。裏社会を暗躍した男たちは次々に消され、或いは全てを失い、老いに向かって死を迎える。無法の限りを尽くした者には例外はあれど大方報いがやってくる。生き残るため、家族を守るために板挟みにあっていたアイルランド系のシ―ランもそうだろう。ブファリーノとジミー・ホッファのどちらかを選ぶように、両者に出会わなければ運命は違ったものになっていたに違いない。偶然が重なって、殺し屋として生きていかざるを得なかった男の悲哀が滲み出ており、3時間半の時間を使ってでも、CGで若返りさせてでもやりたかったことがここにある。大作でありながら会話劇主体の内省的な内容であるため、メジャーな製作会社から渋られたのも分かる気がする。それは居場所を失っていく古き良き映画を作り続けるスコセッシと重なる部分があり、テーマパーク的な単純明快さを求めるマーベル好きの若者には到底理解できないことだ。いつかは彼らに取って代わられるだろう。衰えた身体に鞭を打って棺桶と墓場を選び、牧師に懺悔をして部屋に一人残されるシ―ラン。家族や友人といった大切なものを失い、自分たちのしてきたことは一体何だったのか、と分断で混迷する現代社会に問いかける。 [インターネット(字幕)] 7点(2019-12-28 12:23:11)(良:1票) |
338. スター・ウォーズ/最後のジェダイ
《ネタバレ》 「視覚効果が凄い」と驚かれる時代でもなく、多様性という新しい風を取り入れた新3部作だが、2作目にして裏目に出てしまった。一見端役のアジア系女性整備士にスポットライトを当てたところにその意図が伺えるが、カジノのコード破りの男を見つけて、敵の艦隊に潜入するくだりはカットしても成立するし、脈絡もなく登場した臨時艦長といった新キャラの存在意義が見出せない。ハン・ソロに続いてルークも退場することになるが、あんな顛末を見せられても何の感慨もない。結果論でしかないが、「アンタら何してたの?」というくらい、三者三様グダグダしたまま無駄に死人が増えただけだった。ルーカスから主導権を奪い、新しさを履き違えた本シリーズそのものとも言える。 [地上波(吹替)] 4点(2019-12-24 21:26:24) |
339. 三度目の殺人
《ネタバレ》 是枝監督らしからぬ法廷ミステリで且つ、オリジナル脚本で勝負しているのは評価できるし、完成度は決して低くない。明確な答えのないモヤモヤ感のまま、日本の司法制度に問題提議を掲げているという意味では理にかなっているとも言える。だがやはり、複数のキーワードの表面を触れただけで終わり、登場人物が深く掘り下げられていない気がする。被害者の社長による実娘への性的虐待を見かねた前科者が再度殺人を犯し、それが公になることを恐れ、彼女を守るために自ら死刑になることを選んだというのが一般の解釈だ。メディアでは一方的に悪のレッテルを貼り、世間はそれに追従する。しかし、真実なんて掴みどころがなくて、たとえ偏ったものでも提示された情報でしか判断できないところに、人間の脆さとリンクする。殺人犯の真意など100%誰も分からない。それは理解している。ショッキングな描写や過剰演出に頼らない作風の限界かもしれないが、もっと深みを描けなければ「それで?」で終わってしまうのだ。 [地上波(邦画)] 6点(2019-11-14 07:51:42) |
340. 牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件(236分版)
《ネタバレ》 傑作と呼ばれる本作では、視聴者に含蓄されたインテリジェンスと人生経験が求められる。4時間に及ぶ淡々とした物語の中、見分けのつかない大量の登場人物と複雑な相関図が提示され、一度見ただけでは分からない不親切な作り。蒋介石率いる国民党が台湾に逃げ込んだ不穏な情勢が多感な少年少女に大きな影を落とす。その閉塞感にもがき苦しみ、徒党で脆さを隠そうとする不良少年の一人が如何してに殺人を犯したのか。小明は小四にとって心の拠り所だったかもしれない。だが、小明にとって小四もハニ―も他の男たちも恋人以上の関係を望んでおらず、現実逃避で"淡く付き合いたいだけ"である。救いのベクトルが違いすぎる。人が人に優しくするのはどこかで見返りを求めているからで、小明はそれを見透かしていたからでないか。相手の考えを変えさせそうとする男特有の傲慢さと小四の純粋さ、悪い偶然が重なって深い失望を、悲劇を生んでしまった。一見牧歌的で懐かしい'60年代が歴史の動乱に呑みこまれるように果てしなく冷徹。掴みどころのない深い闇にのめり込む。良い作品とは分かりやすく楽しいのも事実だが、本作みたいに心の中にどこか引っ掛かる意味では忘れられない作品になりそうだ。 [DVD(字幕)] 7点(2019-10-28 20:20:09) |