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 > ザ・チャンバラ さん
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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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341.  ガンズ&ゴールド 《ネタバレ》 
華のある役者が出ているし、テンポは良いし、見せ場は面白いし、さらっと見られる娯楽作としては仕上がっているものの、鑑賞後には何も残らない薄味映画でした。 本作の主題は信頼関係であり、主人公は親分と慕うベテラン犯罪者からは「女を信用するな。犯罪者はたいてい女で失敗する」と言われ、他方で彼女からは「あなたの親分はあなたを利用するだけして、必要なくなれば捨てられるわよ」と言われます。主人公がどちらを信じるべきなのかという葛藤を描けば面白いドラマになったと思うし、両者に対して疑心暗鬼に陥ればサスペンスとしての一山も作れたと思うのですが、そのどちらにも振り切れていないために主題がほぼ死んでいます。さらには、「愛こそ正義」という甘々なオチの付け方も犯罪映画には似つかわしくなくて、もうひと捻り欲しいところでした。 芸達者なユアン・マクレガーは今まであまりやってこなかった役を無難にこなしているものの、実年齢の割に若々しさの残るマクレガーには終身刑を食らうほどのベテラン犯罪者に必要な凄みや、内に秘めた凶暴性が不足しており、もし主人公が彼を裏切れば何をされるか分からないという怖さが表現できていません。ブレイク直前のアリシア・ヴィキャンデルはかわいくて綺麗でおっぱいまで出してくれるので最高なのですが、こちらも裏社会に生きる女特有の手強さを表現できていません。若い観客向けのライトな犯罪映画を目指していることはわかるのですが、怖い人が一人も配置されていないのでは雰囲気が出ません。
[インターネット(字幕)] 5点(2016-10-27 23:10:16)(良:1票)
342.  スター・トレック/BEYOND 《ネタバレ》 
IMAX 3Dにて鑑賞。前作『イントゥ・ダークネス』に続いて3D効果を実感しやすい見せ場が多く、3D料金を払うだけの価値はありました。 ただし、内容の方は難ありです。JJエイブラムスが『スター・ウォーズ』の引き抜きに遭って監督選びが難航した新シリーズ第3弾ですが、娯楽作の経験豊かなジャスティン・リン(ここんとこの大作の監督候補にはとりあえず彼の名前が挙がる)という人選が本作では裏目に出ていました。彼の演出は常にせわしなく、じっくり見せて欲しい画を全然見せてくれないのでSF向きではないのです。例えば宇宙基地ヨークタウンなんて実に素晴らしいデザインだったのに、その全体像が見られるのは登場場面のほんの10秒程度。もったいない限りです。戦闘に入るとさらに画面は忙しくなり、もはや誰が何をやっているのかがサッパリわかりません。危険区域にいるのは誰で、その人はどっちを目指さなければならないのかという基本的な情報すら伝わってこないため、スリルも何もあったもんじゃないのです。 お話の方もイマイチです。無軌道な生き方をしていたカークが宇宙での仕事に生き甲斐を見出した前々作、大失敗の後にリーダーとしての本分を見出した前作と、本シリーズはカークの成長物語でもあったのですが、本作ではその要素が弱いために作品を貫く主軸を失っています。一応は、長い航海に飽きが来て転属を希望してたけど、いろいろあってまた仕事の楽しさが分かりましたって話はあるものの、大事なエンタープライズを破壊され、多くのクルーを殺害され、しかも敵は自分自身の将来像かもしれないという鬱展開の多かった今回の冒険でどんな楽しみややりがいを見出したんだよと思ってしまいました。これだけの災難を経験すれば、普通は艦長辞めたくなるでしょ。話の内容とドラマの方向性が一致していないため、こちらでも感じるものが少なくなっています。 また、今回は敵も微妙。「実はジャミラでした」というクラールの正体が明かされた瞬間だけはちょっと面白かったものの、連邦が生み出したテロリストという設定は前作のカーンと重複しているためにその存在意義は薄くなっています。また、終盤まで彼の正体を隠していたために、劇中のほとんどの時間においてその行動原理が不明であったことも作品のテンションを落とすことに繋がっており、監督や脚本家の意図が悪い方向に出てしまっているように感じました。細かい点をつっこむと、中盤にてカーク達が拠点として使用していたUSSフランクリンは敵に場所を知られていないということになっていたものの、そもそもクラールがフランクリンの艦長だったのならその場所を知らないはずがなく、なぜ彼はフランクリンを攻撃しに行かなかったのかと不思議に思いました。 「スタートレックは偶数回が当たり回、奇数回が外れ」と言われていますが、その伝統通り、今回はハズレ回でした。ただし、次回は傑作になるはずなので、新作が出ればまた見に行きます。 それはそうと、前作で意気揚々とエンタープライズクルーになったアリス・イヴは一体どこへ消えたんでしょうか。
[映画館(字幕)] 5点(2016-10-21 22:59:02)(良:4票)
343.  ジェイソン・ボーン 《ネタバレ》 
IMAXにて鑑賞。 『アルティメイタム』で綺麗に終わった話をどうやって再開するのかという点が鑑賞前の不安だったのですが、案の定、完成した作品は語るべき物語を見失って迷走していました。ジェイソン・ボーンのアイデンティティを探る話はまだまだ続くのですが、シリーズ継続のために捻り出された後付けの設定があまりにご都合主義的なので醒めてしまいます。『24』もそうでしたが、エージェントもので実は父親も陰謀に関わっていたという話を出し始めると、いよいよお終いですね。 国家が作り出した殺し屋というものを見たことがある人はほとんどいないため果たしてそれがリアルなのかどうかは分からないが、少なくとも「殺し屋とは、きっとこんな感じなんだろう」と思わせるような説得力ある描写こそがボーン3部作の魅力でした。地下鉄を脱線させろとか、大爆発を起こせとか言ってくるスタジオと喧嘩しながら堅実な作風を守ったダグ・リーマンが本シリーズの基本路線を作り、ポール・グリーングラスがそのスタイルを継承発展させることでボーン3部作は本物志向のアクション映画の太祖となったのですが、一転して本作は『ボーン・アイデンティティ』が登場する前の単純な爆破アクションに先祖返りしています。観客を楽しませたいというサービス精神は理解できるものの、ド派手になりすぎた見せ場にはもはや生身の人間が闘っているという感覚が残っておらず、見せ場が派手になればなるほど手に汗握らなくなるというアクション映画の典型的な衰退サイクルに入っています。クライマックスのカーチェイスなどは『ワイルド・スピード』の新作のような有様であり、本シリーズのファンが求める見せ場からはかけ離れています。そういえば、『ボーン・レガシー』続編の監督にジャスティン・リンが起用されたという話が一時期ありましたが、結果的にボツとなったその企画で考えられていたカーチェイスがそのまんま本作に流用されたのではないか。そんな邪推を生むほど、クライマックスのカーチェイスはシリーズ全体の雰囲気から浮いていました。 見せ場のインフレとともにジェイソン・ボーンはさらに超人化。パンチ一発で格闘家を気絶させるほどの格闘スキルに、プロのレーサーをも超える反射神経とドライビングテクニック、スリのような小手先の技に、電気配線に細工をする技術と、もはや何屋さんなのか分からないほどの多才ぶりを披露します。殺し屋みたいな潰しの利かない職業なんかにはつかず、何かひとつでも特技を極めていればその道で食えていたんじゃないかと思うほどの器用さであり、その多才ぶりゆえに殺し屋というそもそもの設定が没却してしまっています。これもやりすぎでした。 また、敵エージェントとの関係も変質しています。悪いのはラングレーのオフィスにいる上層部であり、現場のエージェントはただその指示に従っているのみ。命を狙われてもボーンは敵エージェントを恨んでいないし、殺し合いを演じつつも互いに敬意を払い合うエージェント同士の武士道のような関係性こそが本シリーズの熱さに繋がっていました。また、そうしたエージェント達の姿がエンディング曲”Extreme Ways”の歌詞と見事にシンクロしていたのですが、一方本作のエージェントは私怨剥き出しでボーンに襲いかかってくるため、戦いの意味合いがかなり変わっています。私としては、従前のエージェント達のプロフェッショナル道が好きだったため、この変更を良いとは思いませんでした。 国家によるSNSの監視や諜報機関OBによる機密情報漏洩などの時事ネタを出してきているものの、こちらもジェイソン・ボーンの物語とはうまく絡んでいなくて不発に終わっています。アクション映画としては及第点ではあるものの、待ち望まれた『ボーン・アルティメイタム』の続編としては期待外れな出来だったと言えます。
[映画館(字幕)] 5点(2016-10-08 03:16:24)(良:2票)
344.  コン・ティキ
ノルウェー映画史上最高額の製作費をかけ、本物の海で撮影することに拘ったというだけあって、映像の説得力が違います。また、要所要所ではVFXも使用されているのですが、こちらについても実際の風景との境目がまったくわからないという凄まじいレベルに達しており、よくぞここまでの映画を作ったものだと感心させられました。ビジュアルに関しては完璧であり、本作の監督達が同じく海洋映画である『パイレーツ・オブ・カリビアン』新作の監督に抜擢されたことにも納得がいきます。 ただし、残念ながら内容の方はビジュアルに追いついていません。コンティキ号漂流記を知った人の最大の関心事は、いつ死んでもおかしくない状況下で100日間も大海原を漂流するという大変なストレスをクルー達はどう乗り切ったのかという点だろうし、オスカーを受賞した1951年のドキュメンタリーも存在する中であえてドラマ作品として映画化することの意義は、クルー達の内面描写を充実させることにあったと思います。しかし、本映画化企画はクルー達のドラマをあっさりと流してしまうため、どうにもピント外れな内容となっているのです。このままではイカダが分解して全員死ぬから金属製のワイヤーで船体を固定させてくれと言うエンジニアに対して、航海技術に係る知識のないヘイエルダールが「説立証のためには古代になかった素材は一切使えない」と狂気に近い主張をしてワイヤーを海に投げ捨てるくだりなどは、掘り下げればかなり面白くなったと思うのですが。このあっさり感については、死去するまではヘイエルダール自身も映画化プロジェクトに関わっていたことから実在の登場人物達を悪く描けなかったという制約条件が働いたためだと推測されますが、保守的な描写を選択したために映画化企画そのものの意義が没却したのでは元も子もありません。 クルーは冷蔵庫のセールスマンに無線技士にドキュメンタリーのカメラマンと海の素人揃いで、当のヘイエルダールに至っては幼い頃の事故のトラウマから水恐怖症で泳げないというポンコツチーム。結果から振り返ると、専門家なら絶対にやらないような無謀な航海に無知ゆえの大胆さで挑戦してみたらたまたま成功したという話であり、ならば本作はクルー達の準備不足や不見識を見せることで観客の緊張感を煽るという方向性を志向してもよかったと思うのですが、この航海の困難性の煽りなどが不足しているため、気が付けば目的地に到着しておりましたという感じで冒険映画としても大きな山を作り損ねています。さらには、起こる危機が鮫関係ばかりという点も作品の単調さを助長しており、総じてイベントの詰め込み方が甘いように感じます。
[インターネット(字幕)] 5点(2016-10-07 15:41:31)
345.  ラスト・ナイツ
中世ヨーロッパと思われる国が舞台ではあるものの、アフリカ系、東洋系、中東系、果てはマオリ人までが入り乱れるという多国籍ぶりであり、リアリティとは一線を画した世界観で繰り広げられる時代劇。ただし、監督が日本で製作した2作品のような荒唐無稽な映像表現はなりを潜め、リドリー・スコット作品のような重厚な時代劇として仕上げられており、少なくともルックス面は完璧です。この監督さんは意外と引き出しの多い人なのだと感心しました。 問題は、キャラクターへの感情移入が難しいこと。モーガン・フリーマン演じるバルトーク卿は年齢の割には向こう見ずな性格で、ロクな策もなしに権力者に盾ついて家族も家来も不幸にするのだから、愚かにしか見えません。憎まれ役たるギザ・モットは分かりやすい悪役に徹しているものの、その人物造形にまるで深みがないために、なぜこいつが皇帝から一定の信頼を得て重職を担わされているのかがわかりません。両者には、もっと頭を使わせた方がよかったように思います。 また、日本人にとっては当たり前すぎて気にしたことのなかった忠臣蔵という物語の欠点も、設定と舞台を変えたことから露わになってしまいます。領主を失ったライデン隊長以下騎士団の面々は1年以上をかけて復讐の段取りを整えるわけですが、なぜそんなことに労力を費やしているのかが途中から分からなくなるのです。特にライデンは、残された主君の家族や部下達を不幸にしないよう新生活の構築に全力を挙げるべきなのに、復讐という後ろ向きな目的に突き進むものだから、次第にこちらも愚かに見えてくるのです。 序盤にて、主君と騎士との精神的な繋がりをもっと克明に描いておくべきだったし、騎士という立場を失えば彼らは生きる意欲までを失い、社会にとって有害な野良騎士になるおそれがあったことからライデンは彼らに復讐という目標を与え続けた等の合理的な背景も欲しいところでした。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2016-08-10 13:26:46)
346.  白鯨との闘い 《ネタバレ》 
原作、メルヴィルの『白鯨』ともに未読です。 職業映画を撮らせるとピカイチのロン・ハワードが監督しただけあって、19世紀初頭の捕鯨船の様子が描かれる前半部分はかなり面白くできています。また、エリート家系出身ではあるが経験のなさゆえに見栄を張りたがる船長と、身分は低いものの叩き上げで船員達からの信頼も厚い一等航海士との対立などは月並みながらもよくできており、見せ場、ドラマ、ともに充実しています。 ただし、海難事故を経て漂流が始まる後半になると、作品のテンションは一気に落ちます。職人的な航海士達が知恵を出し合って難局を乗り切るのではなくただ潮に流されているだけなので、ロン・ハワードが得意とする職業映画という領域から外れてしまうのです。飢えの中で人肉に手を出すという展開も作り手が意図するほど衝撃的ではなく、これだけ何もなければ仲間の肉を食うしかないでしょとしか感じませんでした。もっと容赦のない描写ができる監督が撮っていれば後半パートの訴求力はより強いものになったと思うのですが、ロン・ハワードでは無難にまとまり過ぎたように感じます。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2016-08-10 00:43:48)(良:1票)
347.  レッド・ライト 《ネタバレ》 
アメリカの大槻教授みたいなシガニー・ウィーバー演じるマーガレット・マシスンが自称霊能力者・超能力者達のウソをばっさばっさと切って回る前半は非常に面白いのですが、中盤で彼女が謎の死を遂げ、主人公がキリアン・マーフィー演じるトム・バックリーに切り替わった辺りから、映画は急激に失速します。後半より科学者が超常現象としか考えられない現象に巻き込まれ始め、「科学vs超能力者」という前半の図式が崩れるのですが、この転換が意図したほど観客の興味を引きつけられなかったという点に監督の誤算があったと思います。 よくよく考えてみれば本作の脚本はよくできています。観客に主題を誤認させることでラストのどんでん返しを鮮やかに決めてくるのですが、見事に伏線が張られているため「ズルい!」とは思わせません。また、ヒールであるサイモン・シルバーについても劇中では合理的な説明がなされています。「超常現象を訴える人間には二つのタイプがある。神が宿っていると本気で信じ込んでいるタイプと、騙してもバレやしないだろうと高を括っているタイプだ」というセリフが、まさにシルバーの本質を説明しているのです。シルバーはニセモノなのですが、劇中ではトムが起こす本物の超常現象に何度か巻き込まれており、本来であればここで矛盾が生じてしまいます。本物の超常現象を体験した時点で、ニセモノは退場しなければならないのです。しかし、先のセリフに当てはめればシルバーは自分を本物だと信じ込んでいるタイプであり(ペテンの部分は、素人目にも分かりやすくするための演出とでも割り切っているのでしょう)、巻き込まれた超常現象は自分の力によるものであると彼の中では処理されたのです。だから彼は退場しなかったし、それどころかより自信を深めて科学者による研究への協力も買って出るようになった。この辺りのロジックの組み方は、本当に見事なものだと思いました。 さらに、超能力・霊能力に対する作品全体のスタンスも非常に良心的であり、前半部分ではインチキを暴いて回りながらも、「本当にそのような能力があれば人を幸せにできるのに」というポジティブな見解も後に示しており、ワンサイドに立って頭ごなしに否定しない点が作品に深みを与えています。マーガレットもトムもホンモノを探し求めているのだが、ホンモノを見極める過程がニセモノを追い詰める結果に繋がっている。こうした点で、作品の主題と人物設定を見事に融合させているのです。本当によくできた脚本だと思います。 問題は、超常現象に巻き込まれ始めたトムを通して「超常現象は実在するのかも」と観客に思わせることができなかったという演出力の弱さでしょうか。その原因はふたつあって、ひとつはトムの内面描写が不十分だったため、観客が彼のドラマに乗り切れていなかったこと。もうひとつはシルバーが終始ペテン師にしか見えなかったため、一連の超常現象は彼が引き起こしたものであるという推測を観客の頭の中で生み出せなかったことにあります。 また、基本的にはよく考えられた脚本であるものの、不思議なことに細部を詰め切れていないため、おかしな点が余計に目立っています。超能力研究機関の責任者らしきシャクルトン博士は、マジシャンがやるような簡単なトリックも見抜けないほどのバカだし、長年超能力を専門に研究していればうんざりするほどニセモノを見てきているはずなのに、なぜか超能力に対して肯定的な立場を崩さず、彼の思考についていけないのです。シルバーの真贋を確認する実験においても、彼が盲目ではないという最大のトリックを信じ込んでいるし(真っ先に疑うべき点でしょうが)、私物の腕時計を着用させたまま実験してまんまと騙されており、科学者としてあまりに無能で参ってしまうのです。ペテンであることを暴かれそうになったシルバーがトムを殺そうとするくだりについても、まさに自身の公演真っ最中の会場のトイレで、武器も使わず素手で殴り殺そうとするとか、もうバカかと。作品では明確にされないものの、オチから遡れば30年前にジャーナリストを殺害したのも、マーガレットを殺害したのもシルバーであると考えられるのですが、過去2件の殺人が他殺とも判断されないほど周到だったことに対して、トム暗殺がなぜここまで杜撰なんだと不思議になります。 あと、エンドクレジット後の映像がサッパリ意味不明。この手の暗示は、効果的にやれば解釈の幅を生んで観客に考える楽しみを与えてくれるのですが、正常な読解力をもってしても何だか分からんというレベルでこれをやられると、作品全体に対する印象を悪くしてしまいます。
[インターネット(字幕)] 5点(2016-07-26 20:30:15)(良:1票)
348.  マイ・ブラザー 哀しみの銃弾 《ネタバレ》 
ウォンビンのドラマに、トビー・マグワイアが戦場でおかしくなる話と、『マイ・ブラザー』と邦題の付けられた作品は複数あって非常にややこしく、安直な邦題をつけたがる日本の配給会社には文句を言いたくなります。原題は血縁を意味し、お互いにとって不都合な存在ではあるが、血縁がある以上は逃げることもできない兄弟の愛憎関係が本作の主題となっているのですが、温かみのあるドラマを連想させる邦題はその趣旨からも外れているように感じます。 兄・クリスはかなりのクズ野郎です。ほっとけば社会復帰は絶望的な兄のためにと、弟・フランクが社会的なリスクを冒しながらも住まいと仕事を手配してくれたのに、感謝の気持ちはまったくなし。それどころか、地道に働かねばならない堅気の仕事にはすぐに嫌気がさして辞めてしまい、大した葛藤もなく犯罪者の道に戻っていきます。さらには、警官として一定の社会的信用を持つフランクを自身のアリバイ作りに利用し、無自覚な弟に犯罪計画の片棒を担がせて警官を辞めざるをえない状況にまで追い込んでしまいます。 本作の問題点は、クリス役をクライヴ・オーウェンが演じているためマイケル・マンの映画にでも出てきそうな職人的な犯罪者に見えてしまい、設定ほどのクズ野郎とは感じられないことです。クズ野郎のクリスが、最後の最後で弟のために服役覚悟の人殺しをすることが作品の山場だったと思うのですが、クライヴ・オーウェンがかっこよくてクズ野郎に見えなかったために、この点がアッサリと流れてしまいます。 フランス映画のリメイクであるためかヨーロッパ風にまったりやりすぎて、観客を引っ張るだけの大きな流れを作り出せていない点も不満でした。感情の大きな起伏があるわけでもなく、視覚を楽しませる見せ場があるわけでもなしで、2時間が淡々と進んでいきます。さらには、完成作品を見る限りではミラ・クニスやジェームズ・カーン絡みのエピソードが大幅に切られている様子であり、一部のドラマがうまく流れていないことも問題でした。
[インターネット(字幕)] 5点(2016-07-04 11:49:59)
349.  ラストミッション
ベタな中規模アクション映画に意外性あるキャスティングで特色を出すヨーロッパコープによる作品ですが、今回はケビン・コスナーに手を出しました。90年代後半からの長い低迷期を経て『マン・オブ・スティール』や『エージェント・ライアン』等の大作映画に助演し、全盛期とは違った魅力で再起を果たしたコスナーを主演に迎えての作品ですが、本作でコスナーは抜群の渋さとかっこよさを披露しています。美貌がピークに達していた20代後半のアンバー・ハードと並んでもまったく見劣りしないほどの色気を発し、見せ場での身のこなしは華麗。さらには軽妙なコメディもこなしており、かつてハリウッドのトップにいたコスナーは、歳をとってもなお輝きを保っています。映像派のマックGはそんなコスナーの魅力を十二分に引き出すことに成功しており、スター映画としてはほぼ満点の仕上がりではないかと思います。 問題は、映画としてまったく面白くないということ。コメディを志向した作品であるにも関わらず笑える場面は少なく、スパイ映画としてのスリルは皆無。冒頭をピークに見せ場のテンションは下がる一方であり、印象的な見せ場が皆無というアクション映画としては何とも寂しい状況となっています。 また、設定と物語が整合していない点も気になりました。主人公イーサンがパリでのミッションを命じられたのは、正体不明の大物テロリスト・ウルフの顔を見た可能性があるという理由からでしたが、物語ではウルフの方から勝手にパリへやってきて騒動を起こしてくれるため、そもそもイーサンがこの暗殺ミッションに就いた理由が没却しています。また、イーサンをリクルートしたヴィヴィは病身のイーサンにミッションを任せっきりであり、本当にウルフを殺す気があるのか疑わしくなってしまいます。テロリスト側の殺し屋がイーサンの娘の写真を持っていたことから家族を人質にでもとられるのかなと思いきやそんな展開はないし、ウォッカを飲むことで薬の副作用が軽減されるという特異な設定も本筋にはまったく絡んでおらず、脚本は行き当たりばったり、支離滅裂で安定していません。 家族のドラマとしても月並みであり、特に感動的なものはありません。ヘイリー・スタインフェルドとコニー・ニールセンという贅沢なキャストを揃えながらも定番の域を出ないやりとりに終始するため、こちらでも拍子抜けしました。
[インターネット(字幕)] 5点(2016-06-27 17:39:42)
350.  レヴェナント 蘇えりし者
IMAXにて鑑賞。 序盤のインディアン(表現が不適切でしょうか)襲撃シーンは素晴らしい迫力であり、大傑作の予感がしました。実際、本編はエマニュエル・ルベツキによる美しい撮影や、つい「もう一回見せて」と言いたくなるような驚きの見せ場があって、これは何か賞を与えねばと思わせるだけの風格が備わっています。 ただし、イニャリトゥ監督作品でお馴染みの、わかりきったことをやたらチンタラ描くという悪癖は今回も健在であり、どれだけ素晴らしい撮影があるにしても、観客の生理を考えずにダラダラと見せられるのではこれにもだんだんと飽きてきます。 ディカプリオは本作で悲願のオスカーを受賞しましたが、これについても厳しい撮影をよくやりきったという努力賞的な印象が強く、観客を圧倒するほどの鬼気迫る演技というレベルには達していませんでした。 本作は全体的に「賞好みの映画」という印象であり、一般の観客を喜ばせるタイプの映画ではないように感じます。
[映画館(字幕)] 5点(2016-04-23 10:33:22)
351.  ザ・ブリザード
IMAX3Dにて鑑賞。 『ラースと、その彼女』のクレイグ・ギレスピー監督ということでドラマ寄りの作品かと思っていたのですが、ドラマパートが薄味で特に感動も興奮もなくてガッカリさせられました。  “based on true story”が裏目に出た作品であり、米国沿岸警備隊においては半ば神格化された事件だけあって脚色の余地がほとんどなく、さらには登場人物全員を良い人として描く必要があったためか、ドラマに起伏が生まれていません。主人公・バーニーの引っ込み思案な性格についても、1年前の失敗によるトラウマが原因なのか、本質的な気質なのかがはっきりとしないため(恐らくその両方なのでしょうが)、彼の成長譚として微妙な出来映えとなっています。もう一方の主人公シーバートについても、どうやら彼は他のクルーとの間で確執を抱えているようなのですが、そういった従来の人間関係が明確に描写されていないために、事故後に彼が生き残ったクルーをまとめ上げる際の苦労が伝わってきません。 本作はリーダーシップ論を描いた作品でもありますが、自分がリーダーになるしかないと腹を決める瞬間や、リーダーとして苦渋の決断を下す場面など、このテーマでの定番の盛り上がりどころをことごとく外しているため、なんだかボヤっとした印象となっています。 他方、見せ場の迫力はなかなかのものでした。VFXの凄さも然ることながら、大海原に投げ出されることの恐怖や、真冬の海の寒さをきちんと表現できており、海難事故を扱うにあたって必要な描写を外していないのです。ディズニー製作なので痛々しい描写や明確な人の死の描写が控え目であることは不満だったのですが、生存者たちがどれほど大変な目に遭ったかという点を掘り下げることで観客の感性にはきちんと訴えられています。 ただし3D効果は微妙であり、それどころか夜の場面が多いため3Dメガネをかけていると画面が暗くて見づらく、これだったら2D版を選択すればよかったと後悔しました。
[映画館(字幕)] 5点(2016-02-27 13:48:33)
352.  リピーテッド
『メメント』と同様に前向性健忘(新しいことを覚えられなくなる記憶障害)を扱った作品なのですが、本作ではさらに設定が追加され、主人公は40歳であるが意識は20歳の状態で、間の20年間の記憶がないというお話となっています。新しいことを覚えられない上に、過去の記憶も大幅に失われている。これはなかなか怖い設定で、例えば私は30代なのですが、朝目覚めた時には自分は中学生だと当然に思い込んでるわけですよ。でも鏡を見ると、確かに自分なんだけど異常に老けた顔があると。そして隣で寝ていた知らない人から「君はもう30過ぎなんだよ。で、うちらは夫婦なんだよ」と言われる。さらに、いかにも怪しい医者から電話がかかってきて、「僕らは秘密の治療をやってるから、今日も迎えに行くね」と言われる。何を信じていいのか分からないが、疑っていても物事が進まないから、とりあえず言われるがままに動く。しかし、自分は良いように操られているだけではないのかという不安は常に付きまとう。自分のバックグラウンドを解明しようとしても、記憶は一日しかもたないから情報の積み上げができない。本作冒頭は、この「何が何だかわからん」という空気感や主人公の抱く不安が見事に描写されており、なかなかの滑り出しとなっています。 ただし本編に入ると、短い上映時間の割には退屈さを感じさせられる内容となっており、サスペンス映画特有の緊張感も作り出せていません。序盤の素晴らしい空気感は維持されているし、メインキャスト3名の演技も素晴らしいので作品は破綻していないものの、大きな山場を作り出せておらず、すべてが淡々と進んでいくのです。 本作の問題点のひとつとしては、寝ると記憶がリセットされる主人公に焦りがないという点が挙げられます。寝たら終わりというサスペンスは、過去にキッドマンが主演した『インベージョン』と同様のものなのですが、生物にとって避けられない睡眠というイベントからどうやって逃げるのかにフォーカスしてなかなかの緊張感を生み出していた『インベージョン』と比較すると、本作の主人公は睡眠を普通に受け入れているため、ひとつの山場を逃しているのです。 また、上記の通り記憶の積み上げができない以上は、一日で真相まで辿りつかねばならないというタイムリミットサスペンスの要素も持った作品でもあるのですが、そんなおいしい部分も素通りしてしまっています。過去20年間の主人公の歴史を辿る物語に重きを置いてしまったために、前方性健忘というもうひとつのコンセプトが希薄化したという印象を受けました。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2016-01-15 12:03:37)
353.  パージ 《ネタバレ》 
1年に一度、12時間だけあらゆる犯罪が罪に問われないという着想は独創的で素晴らしかったし、年一度のガス抜きにより残り364日の治安が飛躍的に向上するという社会的な利点や、自己防衛手段を持たない弱者の間引き手段でもあるという裏の機能までがきちんと考えられており、突飛な基本設定でありながら、あの世界では受け入れられた法律であるということを観客に納得させるに至っている点でも感心しました。 ただし、良かったのは設定がテンポよく説明される冒頭15分のみであり、よくできた設定とは裏腹に本編の方はユルユルでガッカリさせられました。バカな奴がバカなことをしでかして事態が悪化していくという、この手の映画で一番やって欲しくない方法で物語が進んでいくため、いちいちストレスが溜まります。娘の恋人が突如親父に発砲してきた。さらには正体不明の人間が家に紛れ込んでどこに潜んでいるか分からないという状況で、娘が一家からはぐれてしまった。こんな逼迫した局面でありながら、残された一家はチンタラと会話をしたり、バラバラに行動して隙を作りまくったりで、見ていてイライラさせられっぱなしなのです。一刻も早く娘を回収して防御態勢を築くべき状況にありながら、一向にそれを実行に移さないというのはどういうことなのかと。 そもそも、一家の息子がホームレスを匿ったために惨劇が始まるのですが、あの子が見ず知らずの人を助けようとした背景がまったく描かれないため、「なぜそんなことを」と誰しもが思ってしまいます。本作では人命の扱い方がメインテーマとなっているにも関わらず、主要登場人物が元来それをどのように捉え、そして極限状態でどう変わっていったのかが明確に描かれていないためそこにドラマが発生しておらず、納得できなかったり、突飛に感じたりする展開が多くなっています。もっとも不自然に感じたのは主人公たる親父の心変わりで、このままではパージャーの群れに襲われてホームレスも一家も皆殺しにされるという状況下にあって、いったんはホームレスを突き出そうという意思決定を下すものの、直後にそれを覆します。この判断がどう考えても不合理であり、ショットガンや自動小銃で武装した十数人の若者を相手にした戦いに嫁・子供を巻き込んでまでホームレスを守ろうとした理由がサッパリわからないため、本編中もっともドラマチックであるべき箇所で疑問符の嵐となってしまいます。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2015-12-31 01:10:26)(良:1票)
354.  バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
まず感じたのが、えらく間口の狭い映画だなということです。再起をかける主人公の姿を通して多くの中高年男性が共感できる作品にでもしているのかと思いきや、あくまで芸能人の内幕ものに徹していて、一般人ではほとんど感じるもののない作品となっています。また、スターの実名を挙げてのハリウッドあるあるネタが多いのですが、果たしてこれが10年後20年後の観客に伝わるのかは疑問だし、そもそもこの映画全体が、マイケル・キートンのキャリアを知らなければ楽しめない内容となっています。そう考えると、本作を楽しめる客層は極めて限定されているのです。 一般人の視点を排除して業界人向けを徹底した結果、内輪での評判は上々でオスカーまで受賞した作品ですが、その賞味期限は極めて短いと思います。面白かったのは、エドワード・ノートンのネジの飛んだ暴れっぷりくらいで、目玉であった全編ワンカット(に見せる技術)すら、主題に貢献しているとは言い難い状況。『21グラム』『バベル』でも感じたのですが、この監督の作品には高尚な雰囲気こそあるものの、作り手が意図したほどのドラマ性は感じられず、この監督の作品とはことごとく相性が悪いようです。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2015-09-25 18:40:26)
355.  ベルリンファイル
銃火器の扱いが明らかに小慣れている、格闘がダンスにならず、ちゃんとクリティカルヒットを狙う動きをしている、表情や仕草が一般人のものではない。韓国のアクション映画は、こうしたディティールがよくできているため説得力が違います。本作においても、ある面では香港やハリウッドをも凌駕する見せ場が連続し、目を楽しませます。 問題は、ムダにややこしい話に魅力を感じなかったことです。多くの登場人物が絡む前半部分は非常に分かりづらかったのですが、一方で作品の骨格は至ってシンプルなものであり、本筋とは関係のないサブプロットや、存在価値のない登場人物が多すぎます。また、凄腕のようでいて全然役に立たないハン・ソッキュなど、主要登場人物の動かし方にも違和感を覚えました。ひとつひとつの展開に意味を持たせる、個々のキャラクターにちゃんと見せ場を作る。それができないのであれば、その展開、そのキャラクターには存在価値がないのだと判断するという、シナリオレベルでの練り込みが不足しているように感じました。 肝心の本筋部分についても、ベルリンという舞台をまったく活かせていません。南北朝鮮のスパイ組織を中心に、モサド、CIA、ロシアの武器商人、アラブ人テロリストまでが絡んでくる国際色豊かな設定をとりながら、結局は南北朝鮮の対立といういつもの展開に収まってしまう尻すぼみ感。ドイツ人は全然出てこないし、これなら舞台をソウルにしても成り立ってしまいます。 見せ場の出来や作品全体の雰囲気はいいだけに、話の内容の弱さが残念でした。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2015-08-03 18:06:06)(良:1票)
356.  ジャッジ 裁かれる判事 《ネタバレ》 
当て書きだったこともあってダウニーJrはハンク役に完璧にハマっているのですが、少年の心を持つ不良中年、芯の通ったひねくれ者といういつものダウニーJrなので、特に目新しいものはありません。娯楽作で活躍する彼が、プロデューサーも兼ねて小規模予算のドラマ作品に出演したからには、俳優として何かしらのチャレンジがあるのだろうと期待したのですが、そういうものは見られなかったので少々ガッカリしました。他方、ジョセフ役のロバート・デュバルは御年83才にして体を張っており、こちらの演技には目を見張るものがありました。磯野波平を10倍濃縮したような頑固オヤジぶりと、年齢に勝てず弱っていく老人ぶりを同時に見せるという器用な演技を披露しており、演技の幅の少ないダウニーJrをうまくフォローしています。 父と子の対立と和解が作品の主たるテーマであり、ソリの合わない父親を田舎に残している私としては、他人事とは思えないお話だったのですが、これがビックリするほど心に刺さりませんでした。この手のシナリオのテンプレートに当てはめて作ったようなお話で、あまりに無個性なのです。長めの上映時間も有効には活用されておらず、似たり寄ったりの話を何度も繰り返すのみなので、途中で飽きてしまいました。とどめはエンドロールに流れる音楽で、ご丁寧に本作のテーマをすべて歌詞にして歌ってくれます。「大丈夫、もうわかったから」と言いたくなりました。 法廷劇としても中途半端。いかにも出来るげに登場したビリー・ボブが主人公達を苦しめる強敵となるのかと思いきや、こいつがほとんど活躍しません。ハンクを阻む最大の敵は、容疑者であるジョセフその人。ハンクは、ジョセフがしらばっくれることで故殺の疑いからは逃れられるような導線を作るのですが、肝心のジョセフがこの作戦に乗ってこないのです。これにはさすがにイライラさせられました。ハンクは勝つために何でもやる弁護士であることは当初から分かっていたのだから、そのやり方に従えないのであれば、そもそもハンクを雇わず、心根の優しい田舎弁護士にでも頼んでいれば良かったのです。一度はハンクに弁護を任せながら、その作戦にうだうだと文句をつけてくるジョセフがめんどくさくて仕方ありませんでした。そして、容疑者自身に勝とうという目的意識のない裁判では、さすがに手に汗握れません。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2015-07-12 01:23:22)
357.  ワイルド・スピード/SKY MISSION
設定やキャストの大幅な一新もなく7作目まで製作され、しかも興行成績が右肩上がりに伸び続けているアクションシリーズというのは映画史上前例がなく、本シリーズはアクション映画界の老舗タイトルの一つになったと言えるのですが、内容はもういっぱいいっぱい。見せ場のインフレ状態で、目の前で起きていることは確かに凄いんだけど、凄いことが当たり前になりすぎて手に汗握らないという、娯楽アクションの典型的な衰退サイクルに入っています。フリーザ編の後にもダラダラと続いた『ドラゴンボール』を見ていた時と同じ感覚を味わいました。 第一作では遊ぶ金欲しさに長距離トラックを襲って家電を盗むケチな強盗団として登場した主人公達も、本作ではアメリカ政府の仕事を引き受ける闇の外注先に超絶ランクアップ。カート・ラッセル長官の指示の下、007かトリプルXかという勢いで世界を飛び回るのですが、そもそもラッセル長官がこのグループにテロリスト退治を依頼した理由がよくわからないので、お話はスタート時点から行き詰まっています。討伐作戦においては絶対に必要なのだが、そこいらの捜査官や軍人には備わっていない適性がこのグループにはあった等の理由付けは欲しいところでした。また、見せ場はやりすぎの遥か上を行っており、もはや生身の人間が戦っているという感覚は残っていません。『SKY MISSION』という邦題は言い当て妙で、本作において車は飛ぶものとして扱われています。パラシュートをつけて飛行機からダイブするだけではなく、いろんなものを踏切台にしてピョンピョンと飛び回るのです。そのありえない様から戦いの緊張感を味わうことなどできず、ただ画面で起こっている光景を唖然として眺めるのみでした。 こうした見せ場のインフレを見ると、007やミッション・インポッシブルといった長い歴史を持つアクションシリーズが、いかにうまく作られているかがわかります。「原点回帰」と称して地味な作品を入れたり、作風をガラリと変えたりで、やりすぎになる一歩手前でシリーズ全体の流れをうまくコントロールしているのですから。本作の大ヒットから、ユニバーサルはまだまだシリーズを継続する意思を持っているようなのですが、だとしたら、そろそろ見せ場のインフレを収める方向での調整をかける必要があると思います。
[映画館(字幕)] 5点(2015-05-17 00:37:57)(良:2票)
358.  リディック:ギャラクシー・バトル
『ピッチブラック』がSFファンの間で話題になった後、ユニバーサルのお偉方は「これはいけるコンテンツだ」と判断し、なにをトチ狂ったかその年の最大予算を投じて『リディック』を製作。しかし、そもそも前作がマイナーだったために一般客からは相手にされず、それどころか、前作とはまったく別の映画になってしまったことから『ピッチブラック』のファンからもソッポを向かれ、興行成績は惨憺たるものでした。さらなる続編を匂わせるクライマックスも今となっては虚しいもので、『リディック』は、その製作に関わったすべての人々にとっての黒歴史となったのでした。。。 あれから10年、まさかの続編製作には驚かされました。ネクロモンガーとの一件については「気の迷いでした」という、リディックと監督双方からの言い訳が冒頭でなされた後は、『ピッチブラック』の路線に戻されます。宇宙的な犯罪者とバウンティハンターとの戦いがあって、そこに強力な土着生物が絡んでくるという物語なのですが、今回登場するバウンティハンターは2組であり、それぞれに異なった目的と特徴を持っていることが、一作目との差別化ポイントとなっています。リディック捕獲という共通の目的のために協力関係を結びつつも、実際には反目しあっているこの2組の微妙な関係であったり、意外な人物に悪の本性があったりするというサスペンスフルな要素が本作の特徴となっているのですが、残念ながら、これが本筋であるSFアクションの面白さには繋がっていません。こいつらが内輪揉めをすればするほど、これだけ結束の緩い隙だらけの連中を追い込みきれないリディックの弱さが目立ってしまうし、上映時間の多くをバウンティハンターの描写に充ててしまった結果、土着生物・マッドデーモン(ジェイソン・ボーンじゃないよ)の出番が少なくなってしまい、辺境の惑星でのサバイバルという作品の核心部分がアッサリ流されてしまうという、本末転倒な構成となってしまっています。。。 このシリーズのそもそもの欠点として、リディックが悪人に見えないという点が挙げられます。決して善人ではないが、倫理的に許されないことには手を出さず、観客の側は好感を持ってリディックを見れてしまう。これでは、「毒をもって毒を制す」というシリーズの基本コンセプトが死んでいるのではと感じます。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2014-08-14 23:52:18)
359.  ランナウェイ/逃亡者
ロクな予備知識もなく観たので、平凡な主婦がFBIに包囲される冒頭には心底驚かされました。また、レッドフォードの人脈の為せる業か、セリフがある役には須らく有名人が起用されているというキャスティングも豪華であり、見るべきものの多い作品だと感じました。。。 ただし、レッドフォードの悪い癖で映画が冗長になりすぎているし、イデオロギー色の強い社会派ドラマと謎解きサスペンス、家族を巡る人間ドラマの間で絶えず彷徨う脚本も散漫に感じられました。あと、レッドフォードが若さ自慢をしたいのか、やたらと走るシーンが多かったことも不自然でした。桂歌丸や楳図かずおと同い年のレッドフォードがこれだけ走れていること自体は素晴らしいのですが、本筋とあまり関係ないところでも走る姿を披露しているので、その若さ自慢には笑ってしまいました。 
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2014-04-08 00:12:15)
360.  終戦のエンペラー 《ネタバレ》 
アメリカ映画でありながら、トップシーンに原爆投下を持って来た勇気。本編中で何度も空襲による日本側の被害に言及した勇気には感銘を受けました。さらには、中村雅俊演じる近衛文麿に、「確かに日本は侵略行為を行ったが、では、同じことをしたイギリスやアメリカが裁かれたことはあるのか?」とまで言わせ、東京裁判の正当性に対する疑義を投げかけたという点でも、本作の製作意義はあったと思います。終戦前夜に日本国陸軍によるクーデターがあったという話はさすがにエスカレートしすぎでしたが、それでも、全体としては非常に丁寧に作られた作品だと感じました。いよいよ天皇が登場する場面の、こちらの背筋まで伸びてしまいそうな荘厳さと緊張感の再現も見事なものであり、よくぞここまで日本人の感性に寄り添った映画を作れたものだと感心しました。それと同時に、『硫黄島からの手紙』同様、本来は日本人の手で作られるべき映画を外国人に作らせてしまったという点が、何とも歯がゆくもありました。まだまだ、日本には言論の自由がないのだなと。。。 以上、本作の骨格部分は素晴らしいと感じたのですが、それが映画としての面白さにつながっていないというのが残念なところ。主人公に与えられた時間はわずか10日間であり、しかも、天皇ヒロヒトを処刑せよという本国からのプレッシャーや、そうした本国の動きに同調した同僚による横槍も入ってくる。そうした一連のシチュエーションが準備されていたのだから、それらを活かした激しい攻防戦でもあれば盛り上がったと思うのですが、実際には、主人公が気の向くままに人と会い、見聞きした内容をレポーティングすると上司のマッカーサーが納得して万事解決という、何とも平板な展開にとどまっています。また、主人公と日本人女性とのロマンスや、通訳男性との友情という一連のサブプロットも有効には機能しておらず、尺のかさ増し程度にしかなっていません。焼け野原となった終戦直後の東京の再現は素晴らしいのですが、そんなビジュアルの一方で話にはスケール感が伴っておらず、NHKのスペシャルドラマでも見ているかのような印象を受けたという点もマイナス。プロジェクト自体の志の高さに対して、監督や脚本家の能力が追い付いていないという点が、映画を物足りないものにしています。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2014-03-03 00:01:47)
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