3841. 黄昏に燃えて
《ネタバレ》 実はたった2日間の出来事のお話だったんですね。派手な展開というものはほとんどなく、カメラはじっと息をひそめるように二人の主人公を追い続けます。特に、ニコルソンが元の家に戻ったときに、いきなり感情が湧き上がるのではなく、ごく普通に迎え入れられるのが良い。主演の2人は気合入りまくりで、140分の時間をきっちり見せてくれます。ラストシーンの後で、ニコルソンははたして何を選んだのか?ということを考えるのも楽しいですね。ただ、亡霊云々の部分は邪魔なだけで、カットした方がよかったんじゃないかな・・・。 [DVD(字幕)] 7点(2009-02-09 01:11:04) |
3842. あなたに降る夢
《ネタバレ》 実話ベースといいながら途中からはほとんど創作っぽいとか、登場人物の造形がステレオタイプだとかいうところが前は気に入らなかったのですが、これって50年くらい前の映画の作風を下敷きにしていたんですね。ただし、その単純な世界観の中で演出は変に現代風にしっかりしているので、ロージー・ペレスの役柄が凄くきつく見えてしまいます。しかし、すべてを帳消しにするのはブリジット・フォンダの清楚で可憐な魅力であり、ウェイトレスとして働くシーンもダンスのシーンもぞくぞくしてしまいます。さりげなくいろんなファッションが楽しめるのもポイント。 [DVD(字幕)] 7点(2009-02-08 02:41:57) |
3843. ロザンナのために
《ネタバレ》 問題提起の部分がしっかりと固定されておらず、いきなり主人公が行動に走ってしまうので、出発の時点で設定のための設定という印象を受けてしまいます。肝心なシーンが割とさらっと流れてしまうのももったいない(ロザンナとカペストロの対峙のシーンとか)。筋立てはなかなか興味をそそるだけに、もう少し何とかしてほしかったです。あと、人の死をそのまんまネタにしている部分が頻発するのは、やはりどうしてもマイナス。 [DVD(字幕)] 4点(2009-02-03 02:18:47)(良:1票) |
3844. レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで
何とも消化不良気味の作品。この夫婦は、当初はハッピーだったもののどこからかすれ違いが生じてそれが亀裂につながるというのが問題の所在なのだが、肝心の日常生活のディテールの描写を省略しているため、そもそも2人が何をそんなに悩んでいるのかが実感できない。むしろ、勝手に先回りして悩んでそれによって紛争を拡げているだけに見えてしまう。また、このような未熟さこそが本質である夫婦の役柄に、レオやウィンスレットは合いません。もっと若手の人にさせるべきだったんでは? [映画館(字幕)] 5点(2009-02-02 01:59:46) |
3845. ブラウン・バニー
《ネタバレ》 アイディアだけでは「映画」にはなりません。それを具現化する様々な表現が伴ってこそのこと。思いつきの段階で止まってしまった上に、ラスト10分に(だけ)変なこだわりを見せてしまったものだから、要はあれが撮りたかっただけなんじゃないか?と受け取られてもやむをえない。 [DVD(字幕)] 3点(2009-01-30 02:24:45) |
3846. ハモンハモン
《ネタバレ》 想像したほどエロくないじゃん。ただし、各登場人物の、前後のことも考えてなければ空気も読んでいない適当すぎる直情型思考回路はまことによろしい。人間はこんな行動様式でも十分生きていけるんだという変な勇気が湧いてきます。大の男が骨付き肉で真剣に殴り合うというシュールな構図を堂々と撮ってしまう図太い神経にも好感。 [DVD(字幕)] 6点(2009-01-30 00:22:12) |
3847. ビフォア・サンセット
《ネタバレ》 まず、9年後の2人という設定で本当に9年後に作ってしまうという発想が素晴らしい。会話の内容は前作以上に緻密で、しかもそれを積み重ねていく内に、残り時間の一分一秒を愛おしく感じている2人の心情が明確に浮かび上がっている。前作の作品世界を大切にしつつ、それでいて登場人物の成長や変化を的確に作り込んでいるという点において圧倒的に優れた作品。ジェシーの子の名がヘンリーであることから、別の文脈でもその単語を口にできないセリーヌが何とも可愛らしい。ただ、カメラについては、長回しにここまでこだわる必要はなかったと思う。 [映画館(字幕)] 9点(2009-01-22 02:51:20) |
3848. エターナル・サンシャイン
《ネタバレ》 ハッピーエンドなはずなのに、全体がすべて切なさともの悲しさに満ちているという不思議な作品。ただそれは、一度は関係が破綻して相手の記憶の抹消までを望んでいながら、それでも心の奥底では互いに相手を求め続けているという人間の大いなる矛盾と非論理性を、あるがままの状態で誠実に描写した制作者の真摯な姿勢によるものであろう。脳内探求の部分では、過去と現在、回想と現実を容赦なく同時に進行させ、人の記憶の不規則性・不連続性を的確に映像化しているため(これは凄いことだと思う)、見る側にとっても、本当に主人公とともに脳内を歩んでいるような緊張感を強いられる。そして、このような難しい世界で存分に持てる能力を発揮したジム・キャリーとウィンスレットの底力は、実に素晴らしかったと思う。 [映画館(字幕)] 9点(2009-01-22 02:42:22)(良:1票) |
3849. 太陽のない街
労働争議を正面から取り扱ったという点ではとても貴重な作品。ただし、内容自体は、全体がそんなに切迫感や緊張感が溢れているというものではなく、むしろそれら組合構成員の日々の出来事を淡々と積み重ねているような感じ。もう少し神経を研ぎ澄ませるような使用者とのやりとりがいろいろあるのかと思っていました。しかし、表現テーマの価値は半世紀以上経った今日でも十分普遍的価値を有していると思うので、この点数。 [DVD(邦画)] 6点(2009-01-22 02:32:26) |
3850. エブリデイ・イズ・バレンタイン
レオン・ライとセシリア・チャンまで投入していながら、呆れるほどレベルの低い作品。会話の一つ一つがいちいち学芸会レベルというか、素人レベルというか、手の入れようがないほどどうしようもないです。大体、主人公2人の名前がO.K.とワンダフルだなんて、その時点で制作者のやる気のなさを感じさせますね。セシリア・チャンに3点。 [DVD(字幕)] 3点(2009-01-22 02:23:05) |
3851. オーロラの彼方へ
《ネタバレ》 前半は何となくモタモタ気味、後半は一本筋が通って迫力がありますが、結局はサスペンスとその解決によりかかっただけという気がしなくもない。つまり、主題が微妙にずれちゃってるのです。タイムトラベルものはどうやっても時の差が埋まらない切なさこそが命と考える私にとっては、何事もなかったかのように平穏無事に締めてしまうラストも拍子抜け。 [DVD(字幕)] 6点(2009-01-21 03:45:19) |
3852. 時をかける少女(1983)
当時、映画を見ていない人でも、「実験室のラベンダーの香りで気を失う」というネタはなぜかみんなが知っていましたね。内容的には何もありませんが、好奇心と懐かしさは満たされたので目的は達しました。エンディングがあまりにも笑えたので+1点。各シーンを撮り終えた後に、あれだけのためにもう1回カメラを回したのかと思うと・・・。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2009-01-21 02:28:49) |
3853. 五線譜のラブレター/De-Lovely
各シーンは何かを表現するという段階に至る以前でブツ切りになり、次々に楽曲がかぶさってくる。結局、楽曲ありきで作られ、ストーリーや人格表現はそれにつじつまを合わせているようにしか見えません。あくまでも映画なんですから、きちんと俳優に演技をさせて下さい。年老いた主人公が画面に出てきて回想するという手法も、必然性があるわけではなく、成功しているとはいえません。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-01-19 01:04:00) |
3854. あなただけ今晩は
《ネタバレ》 河に荷物を投げて殺人事件と勘違いされるところまでは面白く見ましたが、そこから後は収拾つかなすぎでしょ。元の設定だけでコメディとして成立する素地は十分あるのですから、普通にめでたく着地して問題なかったはず。せっかくのセンス溢れる邦題も霞んでいます。なお、今度誰かが作るときは、警官と娼婦という立場を維持させたまま、完全片想い純愛バージョン(立場上正体を明かすことができない)でリメイクしてほしいものです。 [DVD(字幕)] 5点(2009-01-17 21:53:05) |
3855. 失われた週末
《ネタバレ》 このネタ一発だけで作品を一本作ってやろうという初期衝動性が凄い。ただし、過剰な演出に走ることなく、主人公のちょっとした行動や台詞、ちょっとだけ出てくる幻覚などで、作品に現実性を持たせ、地に足のついた恐怖を見る側に与える手法は、現在でも参考になります。ただ、ラストは今の作品だったら主人公が拳銃自殺してエンドなんだろうし、そっちの方がインパクトがあったと思う。 [DVD(字幕)] 5点(2009-01-16 12:44:02) |
3856. ビヨンド the シー/夢見るように歌えば
ケビン・スペイシーの気合の入り方は十分伝わってきますが、肝心の内容が、未整理の断片を順々につなげただけという感じで、どこで何を伝えたいのかがはっきりしていないのです。楽曲の数々がもったいないです。センスのかけらもない邦題も、何とかならなかったのだろうか。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-01-15 02:42:41) |
3857. 地上より永遠に(1953)
《ネタバレ》 特にひねった工夫があるわけではないのですが、殴り合いのシーンにしろシゴキのシーンにしろ女性絡みのシーンにしろ、対象を単純に忠実に写し撮っているのが良い。それによって、各俳優のキャラクターが生きています。陰湿な上官に対してもどこかで盛大に復讐、と思いきや、ごく淡々と組織的対処によって処分がなされるというのも、逆に目新しい。 [DVD(字幕)] 5点(2009-01-15 02:36:59) |
3858. ミツバチのささやき
どうにも難解というか中途半端で、私にはよく分かりませんでした。死の世界の概念をダイレクトに受け止めてしまった少女心理というものを表現したいのであれば、もっと純度の高い、したがって常識を突き抜けるような、大人から見たら到底受け容れがたいかもしれないような描写が必要なのではないでしょうか。作品の構成そのものは大人視点なので、その辺が分かりにくいです。 [映画館(字幕)] 5点(2009-01-11 23:23:41) |
3859. 羅生門(1950)
それぞれがもっと大きく異なる話をして、全体が覆るような逆転の連続を期待していたので、意外に大筋においては違いのない内容の語りの繰り返しに拍子抜けしました。ただし、余計な要素を極力削って端的にまとめた作り込みの手法は、現在でも参考になります。 [映画館(邦画)] 5点(2009-01-11 23:10:57) |
3860. エル・スール
《ネタバレ》 冒頭、少女が目覚め、枕の下から振り子を取り出してじっと見つめるが、そのシーンが象徴するとおりに、じっくり、ゆったりと時間が流れ、静謐で神々しい空気すら感じさせる作品である。肝心の父親の内面の描写はそれほど深いとはいえず、観念的に流れる部分もないではないのだが、聖体拝受式の日の主人公の超絶的な可愛らしさに免じて+1点。 [映画館(字幕)] 6点(2009-01-11 12:55:03) |