21. マグダレンの祈り
「ショーシャンクの空に」よりも、救いの無い現実を描いている。あちらは「希望を捨てずに生きること」がテーマだったが、この作品は救いがない中で生き抜くことを描き出そうとした作品だ。これが事実に基づいた話なのを考えると、怒りと悲しみに満ちた作品である。映画本編よりも、特典映像として実際のマグダレンの女性たちが延々と証言している。この映画が告発映画であることを思わせる。では、いったい誰に向けて告発したのだろうか? 7点(2004-08-10 21:07:11) |
22. 友引忌
《ネタバレ》 冒頭のシーンが、ポスターなどに使われていた目を糸で縫うという場面で、その怨念のすざまじさを感じて背筋が怖くなった。が、そこから先のおどろおどろしい怨念劇を期待していたが、背中がぞわぞわっとするような怖さのある場面が無くて、ありがちな展開で、ものすごく肩すかしだった。ある場所に居合わせた学生時代の友達が、何の脈絡もなく一人ずつ呪いを受けて消えていく話なのだったらものすごく怖いのだが、過去の事件に関わる怨念なのはすぐ分かるし、そうするとこういう展開だなと言うのが見えてしまう。思った通り、本当は生身の人間が犯人でした、という展開だったので、呆れた。「霊より生身の人間のほうが怖い」というテーマは日本のホラーにおいても定番だが、その生身の人間の怖さがイマイチ伝わってこないので、つじつまの合わない強引なストーリー展開にしか思えない。美少女ギョンアが呪われた子だというサイドストーリーも不可解で、そのあたりの暗さもあまり伝わらない。彼女のような過去を持っていて、日本より過酷だとされる韓国の受験戦争を勝ち抜けられるのだろうか? 過去のいきさつからして、ひたすらごめんなさいと思っていただけではないはずの主人公は、ギョンアに対して本当はどう思っていたのかもよく分からないし・・・・・・。わからないことだらけだ。韓国の大学生たちの日常を垣間見ることができるけれども、芸能界入りしたい女子大生とかいて、日本とそんなに変わらない気もする。数年前の作品だが、主人公のメイクに時代を感じるのが悲しい。 2点(2004-07-21 21:50:11) |
23. サイン
《ネタバレ》 最初、映画館で観たときには、あまりの肩すかしな内容に脱力したのだが、今から考えると面白い映画だったような気がする。まあ、無理矢理「すべてがサインだったのだ」というオチというのは、やっぱり変だけど、超常現象への一つの答えというか、そういうモノは感じた。つまり、人の能力も悲しみもすべては誰かを救うためにあるというか。シャマラン監督の一連の超常現象モノを並べて観てみるのも面白いかもしれない。でも、ホアキンの銀紙の帽子姿がどうしても脳裏に焼き付いて離れないのが困りもの。 6点(2004-07-13 22:48:41)(笑:1票) |
24. S.W.A.T.
《ネタバレ》 かなり期待してみた分、裏切られた・・・・・・。メンバーが集まって訓練が終わるまでに、ほとんどの時間が使われちゃって、悪人との対決はオマケって、映画としてはどうよっ! いや、訓練シーンなんかも見所なのかもしれないけど。マヌケな麻薬王と、マヌケな悪人ども。アホな上司。バカなキャラがいっぱいで、くだらなかった。サミュエル・L・ジャクソンが出ていても駄作ってあるんだなと、実感。 3点(2004-07-13 22:39:02) |
25. ギフト(2000)
ケイト・ブランシェットが大好きな私だが、これはかなりビミョーな作品だった。断片的な霊視ビジョンを頼りに謎を解いていく物語ならば、日本の漫画のほうが多彩な作品を生み出している。だから霊能力者モノとしてはインパクトが弱すぎるし、この映画のストーリー展開・キャラ設定は、全体的に子供だましだ。ただ、決して万能ではない霊視能力をカウンセリングに使いながら細々と生計を立てる主人公に、そこそこリアリティがあるので、なんとなく鑑賞してしまう。あの、どことなく疲れきった感じも切ないが、映画制作当時は流行だった少女趣味的な薄もののキャミソールドレスを着こなしてしまっているケイト・ブランシェットの薄い体も切ない。若くもなく年寄りでもなく、現実に子育てしながら生きる無力な占い師の日常が、ミョーにリアルなのは、やっぱりケイト・ブランシェットの存在感が一番大きいと思う。自分の能力を「ギフト」と受け入れていくことの悲しみや、周囲から浮きまくってもいる感じが、なんだか「スパイダーマン」とも共通してもの悲しい。相手役として、リビシは思いがけなく良かった。そして、リビシを引き立てるかのごとく出演しているキアヌ・リーブスには、ちょっと驚いた。決して演技が上手いとは言えないキアヌが、髭面になってあの甘いマスクを隠すことで、なかなかイイ味出してしまっている。やはりラストシーンは、夜中に見ると怖い。 5点(2004-07-13 22:31:39)(良:1票) |
26. スパイダーマン2
《ネタバレ》 この2作目のほうが最初よりも、出来がよい。ストーリーの組み立て、テンポが非常に見やすい。ヒーローをやってるから、いつも遅刻して、金もなくて、お疲れモードの主人公。うーん、金持ちのバットマンとはえらい違いだなぁ~と苦笑して観ていたが、このスパイダーマンの造形がやっぱり良い。冒頭で描かれたオクタビアス博士との会話が、ストーリーの骨格を担い、ラストの伏線になっていくあたり、展開の手法としてはベタなんだけれども、非常に上手い。ただ、ポスターで観たときに、敵があんなに肥満体型だとは思ってなかったので、画面でたるんだお腹を観て、ちょっとビックリした。オクトパスの最期も、うわぁ~なんてベタな展開~、と思うんだけれども「モンスターのままでは死なない」というセリフに、ちょっと泣いた。敵役が良いと主人公も引き立つっていう意味でも、前作よりも格段に内容が良くなっている。オクトパスがブレながらも目的に向かって暴走していることによって、ブレたあげくにその能力を失っていたスパイダーマンが、自分の覚悟を取り戻す。ヒーローに戻るということが、絶望的で悲壮なものだという描写と、ヒーローの素顔を見た町の人々の「まだ子供じゃないか」という素直なつぶやきが、とても強く印象に残った。ついでにハリーやMJにあっさり正体を知られたのだし、第3部が楽しみだ。相変わらず、三白眼のせいで美形なのに愛らしさに欠けるキルスティン・ダンスト。フランス人形みたいなドレスは似合うんだけどね・・・・・・。彼女の婚約者は最初マット・デイモンに見えた・・・・・・。それにしても、結婚式から逃げるのは、ちょっとやりすぎ。 8点(2004-07-12 10:55:53)(良:2票) |
27. アバウト・ア・ボーイ
とてもクールで、軽やかな映画だが、なかなか素敵な作品だった。ヒュー・グラントは決して演技がうまいというわけではないけれど、独自の路線を突っ走っている。彼の独特のキャラクターを使いたいと思っている脚本家は多いのかもしれない。この映画の彼も、ホントに情けなくてかっこわるくて、笑えて面白くて、ほんの少ししんみりさせてくれる。テレビばっかり観てる生活をしていながら、崩れの無い容姿を持つ男。そこに見える几帳面さ。シングルマザーたちも級友たちも、いろいろ裏を読もうとすると面白い。最後のパーティーシーンは、なかなか心が温まった。ありきたりのハッピーエンドにならなくて良かった。大人も子供も、カッコイイ。 7点(2004-07-05 20:30:16) |
28. アマデウス ディレクターズカット
《ネタバレ》 天才モーツァルトと凡人サリエリというあざやかな対比が、忘れられない強烈さで迫ってくる映画である。音楽家・宮廷・18世紀。どこをとっても、我々の世界とは全然、別世界のストーリーであるにもかかわらず、観ているうちにサリエリの心の闇へ入り込んでしまう。真実のモーツァルトやサリエリやコンスタンツェがどうだったかという以前に、これは人間を描きあげた見事な作品だ。お菓子が好きで、女も好きで、皇帝をも内心でバカにしているようなサリエリの俗っぽさが、観客に親近感を持たせるし、時には嫌悪感も感じさせる。他の人間にはモーツァルトの真の偉大さが分からず、自分には分かるという倒錯したサリエリの自負心。ある意味、サリエリは自分がただ凡人だとは最後まで認めたくないのだ。サリエリの負の感情の出発点が、自分がバカにされたことよりも、自分は欲望を抑えて神に気に入られようと身を正してきたのに、あの天才は努力しないで楽しんでるなんて許せん(ホントはオレだって遊びてぇ~)という部分だというのが、面白い。音楽の価値を解さない商人の家に生まれ、父の死を「神の啓示」「幸運」ととらえるほど音楽の環境に恵まれなかった少年が、血のにじむような努力をして、階段を駆け上がり、ウィーンの宮廷へ入り込んだのだ。それはそれで非凡なことなのだ。でも、天才にはなれない。だから神を恨み憎む。もっとも、サリエリはそのどす黒い感情を神へ向けたと思いこむことで、ただの嫉妬・屈辱への恨みであることを認めないようにしてるのかもしれない。けれどサリエリは根本的に音楽が好きだから「君の作品を見逃すものか」とか言っちゃうし、死の淵にあるモーツァルトの仕事を手伝いながらどこか嬉しそうだったりする。こういう屈折した感情の描写が、すごくうまい。それにしても、天才児モーツェルトとは、まさに猿回しの猿だったのかもしれない。父を亡くせばすべてを無くし、まともな埋葬もされないまま生涯を終える。父親の支配から逃れられない。乱痴気騒ぎをする息子をにらみつけ、コンスタンツェを怒鳴りつけ、だが、結局のところあの父親は息子を頼り、息子の才能を食いつぶすことしか考えていない。無邪気で浅薄で下品なモーツァルトを形成したのも、突き詰めて考えれば、あの父親なのではないか。それにしても、最後まで脳裏をエコーするモーツァルトのバカ笑いが、なんとも強烈。 10点(2004-07-05 20:16:59) |
29. ヘヴン
《ネタバレ》 イタリアの大地の美しい映像が印象的。間違って無関係の人間を殺してしまった女性の、大きな絶望と、怒りと執念と、生きることへの執着。悪を裁いてくれると思っていた憲兵隊が悪とつながっていたことへの怒りで、彼女は逃亡を続けて生きることを選んだように思う。部外者が、彼女に罪を償えというのは簡単だし、周囲の人間に迷惑がかかることが分かっていて巻き込んでいいのか?というのも簡単だ。だが、人は本能的に生きようとするものだし、ケイト・ブランシェットが演じているのは、黙って一人で自殺するような女性ではない。ヒーローもの映画のように、一人で巨悪と戦うなんてことは、現実には出来るはずがない。だが、生き抜くことは出来る。ケイト・ブランシェットの硬質な雰囲気が生かされた作品だったが、彼女に寄り添い見つめるリビシの表情が印象的で良かった。元憲兵隊本部長を父に持って、何も知らずに誇りを持って憲兵隊へ入った若者の、誇りを汚物に変えられた怒り。二人は、愛し合っていると言うより、汚い現実への怒りを共有した同士だ。髪を剃って双子のようになった姿は、そういう意味を込めていると思った。ただ、「私は終わりを待っているの」という主人公に、いったいどんな終わりを用意するのかと思ったが、肩すかしを食ったラストだった。ラストの映像は良くも悪くも印象的。 6点(2004-07-04 22:44:09) |
30. ルール
《ネタバレ》 いやぁ、ありがちな展開にありがちなオチだったとは言え、それなりに怖かった。バカ者共が殺されていく話になってるので、あんまり同情できないなぁ~。都市伝説って、訳語だったのか~と、トリビア50へぇだね! 用務員さんが怖かった。実は犯人だとずっと思ってた。それにしても、いつまでも死なない犯人がかなり怖い。 5点(2004-07-04 15:20:26) |
31. デイ・アフター・トゥモロー
《ネタバレ》 環境週間のポスターに、この映画が使われているというのが、まず笑える。特撮&SF映画としては上出来といえるほど、面白かった。こういう温度では、こうなるんだーとか、こういう観測しているんだーとかいうような、単純な驚きが随所にあって、サイエンス・フィクションとしてきちんと楽しませてくれる作品だった。SF作品にこれ以上の現実的なツッコミをするのは野暮である。映像は迫力があったし、大まじめに環境問題をテーマにもってきて、こういうストーリーを練り上げるのも古き良きSFという感じでもある。主人公(子)と共に図書館にこもるメンバーの人選とか、大統領と副大統領の使い方とか、国境の場面とか、案外にかなり気を遣って話を構成しているような気がする。ラストが「インデペンデンスデイ」のごときアメリカ万歳なものにならなかったのも、時代を反映していると言うべきなのか・・・・・・。日本のシーンは確かに違和感があったが、その後の日本のが描かれることがなかったので、むしろ、冒頭に出したんだから最後もフォローしてくれよと思った。それにしても、この映画の隠れたテーマは理系VS文系なんじゃないだろうか・・・・・・? 日本は「理系離れ」と言われているが、理系離れしてたら、国家が滅ぶかも?! 8点(2004-06-18 13:49:31) |
32. 素顔のままで
脱ぎたかったの? 見せたかったの? 何をしたかったの? ひとかけらの面白さも無く、素敵なキャラもいないこの映画は、結局、デミ・ムーアが脱いでますってところぐらいしか見所はない。デミ・ムーアって人気や知名度の割に、変な映画にばっかり出ているし、スタンスのよく分からない女優だ。それにしても、チャーリーズ・エンジェルの水着姿と、この映画のヌード姿を比べると、時の経過は残酷だなぁと思う。 2点(2004-06-18 13:19:29) |
33. 第七の予言
黙示録をネタにした作品というので、ちょっと興味をもって観たのですけど、面白くなかったですね。聖ヴェロニカがヒロインの前世だっていう設定なの? マジでこの人がキリストって設定なの? そんな理由で黙示録が始まっちゃうわけ? 第7の封印なのは分かったけど、御使いとか出てこないの??? 疑問だらけの話で、あっけなく意味のない終わり方でした。日本の漫画のほうがよっぽど、黙示録ネタで面白い作品を生んでます。まあ、デミ・ムーアがまだまだ可憐で愛らしいので、それだけは、おぉ!と感動しました。でも、あのお腹、ホンモノなんだ~。びっくり。 3点(2004-06-18 13:11:12) |
34. トゥー・ウィークス・ノーティス
大事件が起きるわけでも、素晴らしい映像技術が駆使されてるわけでもない。ヒュー・グランドとサンドラ・ブロックのために書かれたとしか思えない小粋な脚本だけがある。柔らかいカメラワークと、さりげないおかしさを散りばめて、楽しませてくれる映画だった。大作映画も良いけれど、こんな映画を見ると心がリラックスできる。 5点(2004-06-17 15:18:53) |
35. クリムゾン・リバー
とにかく暗い画面。ジャン・レノとヴァンサン・カセルという、個性的すぎるキャラが相乗効果を生むと思いきや、どうも二人とも失速状態なのが惜しかった。吹き替え版で見たのが悪いのかもしれないが、ほんと残念。カッコいいヒロインが、登場したときはなかなか魅力的に思えたけど、これもだんだん失速。つまり、伏線を張ることに夢中で、キャラが全然生かされてない。たとえば主人公の犬嫌いも、単にとってつけたような設定としか思えない。じゃあ、その伏線がうまくいっているかといえば、これも疑問。ストーリーが、テレビドラマの予算程度で制作されても大丈夫な程度で、結末も唐突で安易。大学の人間たちの異常さも、演技が悪いのか監督が悪いのか、非常に安っぽい。フランスの古い村の伝統ある大学というのが、日本人にとってなじみがない存在だからよけいになのかもしれないけれども、ストーリーの根幹を支えるべき「伝統ゆえの禍々しさ」が、画面から伝わってこなかった。画面を暗くしても、話が見えなくなってるだけ。第2作にヴァンサン・カセルが出演する気にならなかったのも、分かる気がする。 4点(2004-06-17 15:11:07)(良:1票) |
36. マリー・アントワネットの首飾り
主人公の生き方には同情も共感も覚えないから、話がつまらないんですね。だいたい、ヒラリー・スワンクは「フランスの古い王家の血を引く女性」には全然、見えないので、話に入っていけないです。ラストまで、「おまえ我が儘すぎ!」と蹴り飛ばしたくなるような主人公。だんなと恋人は、キャラとして興味深い人たちで、役者もなかなか頑張ってました。とくにエイドリアン・ブロディは、退廃的で不道徳的な雰囲気をただよわせた女たらしが、似合いすぎです。ロアン大司教とマリー・アントワネットの憎らしくなるような存在感は、思ったより良かったかな・・・・・・。ちらっとでもマリー・アントワネットの横に、美形なフェルゼン伯爵が映らないかな~と期待していた私は、一応「ベルばら」ファンでした。 2点(2004-06-14 10:38:53) |
37. ラスト・アクション・ヒーロー
とりあえず、楽しかった。こういう映画に、理屈を言い出すのは、ヤボってもんでしょ。私もチケット欲しい。 5点(2004-05-31 16:03:53) |
38. トロイ(2004)
《ネタバレ》 お金をかけて撮った大作らしい大作で、見応えは十分。ただ、盛り上がりが散漫で、見栄えのする素敵な役者を集めて並べただけ、という印象もまたぬぐえない。CGによる戦闘シーンも最近は食傷気味。とは言え、アキレスを演じたブラット・ピットはさすが。輝かしい不死身の英雄ではなく、あくまで動物的な勇者という感じがして面白い。鍛えた肉体もすごかったし、武術的に完成された動きも上手い演出だ。アキレスと正反対の、国のため家族のために戦う英雄ヘクトル王子も上手い。エリック・バナの地味で寡黙な雰囲気が、悲壮感を盛り上げて迫力がある。妻に何度も、逃げ道は覚えたかと尋ねる場面は、なかなか泣ける。そして何より感動したのが、ピーター・オトゥールのトロイ王プリアモス。なんというか、威厳と慈愛を持ってはいるが輝きと強さを失っている、まさに「滅びるべき運命を迎えた国の王」そのものなのだ。プリアモスがヘクトルの遺体を帰してくれるようアキレスに頼む場面は、まさに名場面である。すべての元凶となったパリス王子の軽率さ・幼稚さや臆病ぶりがまたすごい。けれども物語の中でほんの少しだけ成長をする。そこがいい。かの三部作で美しく完全無欠なキャラを演じたオーランド・ブルームが、同じ弓矢をつがえながら、ここまで情けないキャラに扮してくれるというのも、なかなかツボだった。配役をした人に拍手したい。配役といえばショーン・ビーンのオデュッセウスも素晴らしい。大国の強引な侵略戦争に、小国の王として心ならずも従わなくてはならないが、従うとなったら策謀を巡らせ友を引き込むことを厭わない。仕方ないんだよと言いながら、これ見よがしな苦悩を見せるわけでもない。ずる賢そうな顔をして、しかし、その両肩になにがしか重みを背負ってるようには見える。物語の中で、一人冷めたオデュッセウスを演じたショーン・ビーンは面白い役者だ。彼の語りに始まって終わる演出は、なかなか良かったと思う。トロイ戦争とはむろん「愛のための戦い」ではなく、侵略戦争である。そこには、オデュッセウスも語るように「名を残す」ことへの渇望と、本能的に戦争・戦闘を嗜好する男たちの欲望がある。女たちの人生は眼中にない。だから、戦いを嗜んだアガメムノンとメネラオス、そしてアキレスが死に、戦いに背を向けたパリスとヘレンが逃げ延びるというのは、満足すべき結果なのかもしれない。 8点(2004-05-23 23:00:50)(良:3票) |
39. ザ・メキシカン
《ネタバレ》 中身のない映画だった。救いようのない「バカップル」を、すでにいい年齢したブラット・ピットとジュリア・ロバーツが演じてるあたりで、すでにコケている。これは若い俳優がやるべき役だろう。コメディにもギャグにも徹しきれず、かといってシリアスでもミステリーでもなく、単なる「おバカ」な展開で転がっていく。大物俳優を使ったせいなのか、そもそもの企画が悪いのか知らないが、全然楽しめない映画だった。偽リロイとか、車に乗ってる犬とか、工夫を凝らしてるつもりなのかなぁ・・・・・・? ものすごく殺人シーンが多い映画だったので気分が悪い。せっかく出てきたジーン・ハックマンも陳腐なセリフを吐いてただけで、ショボかった。もったいない。ハリウッド界のトップクラスのギャラを支払って、こんな映画を作ってどうするんだよ、と言いたい。ただ、今までもブラッド・ピットに「知的」とか「洗練」とかいう言葉は無縁だと思っていたが、何かっていうと「今に見てろよー」と拳を天に突き上げる馬鹿キャラを、ここまで上手に演じられてしまうと、何だかブラット・ピットが可哀想になった。案外にドジで馬鹿でちょっぴり庇護欲をそそるようなキャラが、三十路を過ぎたブラピに十分ハマっていたのが、唯一の見所だったのかもしれない。一方、ジュリア・ロバーツがヒステリー女を演じると、かなり痛い。 3点(2004-05-23 21:47:58) |
40. ジェニファー8(エイト)
不気味な霧と闇につつまれた田舎。盲目のヒロインを演じるユマ・サーマンの静謐さ。アンディ・ガルシアの不穏な雰囲気。途中で登場していきなり奇怪な存在感を全開にして、一気に盛り上げまくるジョン・マルコビッチ。緊張感がとぎれず、役者もみんな上手い。全然分からなかった犯人と、ラストの急降下なオチに、ビックリした。ものすごく低予算で撮ってる映画だなぁと思いながらも結局、最後までハラハラしながら観ていた。 6点(2004-05-12 20:49:38) |