21. ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔
《ネタバレ》 たった一つの指輪をめぐっての大戦争。「これほどの悪行をののしる言葉は、エルフ語にもエント語にも人間の言葉にもない。」 この地に再び平和が戻ってくることはあるのだろうか。というくらい凄まじい戦闘風景。指輪の仲間が、死んだと思ったら生きていた~のパターンを繰り返し奮闘します。諦めないということがいかに難しく、だからこそその先にあるものは屈強で自信に満ち溢れています。彼らのタフでカッコ良く戦う姿を素直に応援しながら鑑賞しました。命を懸けてでも守るべきものがあるということ、それを戦争の理由として正当化しちゃあいけないけど、これはあくまでファンタジーの中のお話。しかしローハンでの悪化する戦況に、意図的のように挟まれる女子供たちの怯えた表情が、やはり戦争は恐ろしく、平和の逆を行く行為であるとのメッセージ(現実世界に向けての言い訳)を、かろうじて含ませているのでしょう。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-10-11 15:22:27) |
22. The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ
《ネタバレ》 南北戦争下において、南部にある森の中の女学園。そこは園長をリーダーとして統率が取られていた。そこに若い男が迷い込んだら。その時自然界で生態系が崩れるかのような現象が起こった。それまで敬虔な集団として行動していた女たちが、それぞれに男に興味を抱き、色めき立ち、欲情を押さえきれなくなる。次に嫉妬やマウント、承認欲求など、女の悪い癖が目立ってくる。7人の女は大人から子供まで、小奇麗な身なりで上品な立ち居振る舞いをしているのだが、女の強い業やずる賢さ、意地汚さのようなものが内側から現れている。女優たちの演技と巧みなカメラワーク、暗い部屋にろうそくの炎などの演出がそれを表現している。 ある事が切っ掛けで狂暴化した男を前に、再び女たちは統率を取り男を排除する。外来種を排除し、自然界が元どおりに浄化されるように。 学園を取り囲む深い森は、外部からの侵入を許さない隔離された聖域のように、神秘的で美しかった。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-09-26 16:09:55) |
23. ウィリーズ・ワンダーランド
《ネタバレ》 無口な男が恐怖のテーマパークに迷い込んでしまったのは偶然と思いきや、実は男は過去の犠牲者の身内で、その復讐の為に体を鍛え、お掃除ノウハウを叩きこみ、不気味な動物ロボを倒すためだけの入念なバトルプランを練って、この地に舞い降りた戦士だった・・・のかと思ったら、思いっきり外した。私の要らぬ邪推は本当に無意味なものでして、シンプルにホラーコメディでした。予想は大体外れますので、どんなものを見せられても大抵楽しむことが出来ます。 律儀に休憩をはさみながら黙々とお掃除をして、何やら怪しい敵が出てきても顔色一つ変えず戦う。綺麗になった場内はその返り血ならぬ返り機械油と、若者たちのおびただしい流血で再び汚れ、それをまた黙々と掃除して休憩をとる。見事敵を倒し、パークが綺麗になった時の達成感と言ったら!この男は一体何者なんだ?ってそんな事考えちゃいけません。邪推です。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-09-05 17:37:15) |
24. せかいのおきく
「せかい」という言葉を知ってるか?「あっちの方に向かってゆけば必ず、こっちの方から戻って来る。そうゆうものです。」真木蔵人が演じる和尚はこう説明する。「世」は現在過去未来、時間を表し、「界」は東西南北上下、空間を表す言葉なんだそう。うん、和尚の言葉も何となく分かるような気がする。でっかいどんぶりの中に微生物のように生息する生物(人間)は、今も昔も生きるために活きている。物騒なことがあったり、小さい怒りや些細な悩みは毎日際限なく生まれ、人を好きになり、仲間とくだらない話をして、飯を喰うため仕事をする。何でもない毎日を送る主人公は「青春だなあ」と嬉しそうに繰り返し言う。他人の糞尿を運ぶ彼らの世界をモノクロで表した青春映画は、色と引き換えに、見えない「臭い」を画面から終始匂わせ、同じく見えない「青春=未来への希望」をふんだんに表現しようとしている。なかなか攻めた作品だったように思う。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2024-09-03 10:44:27) |
25. アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
《ネタバレ》 前作に引き続き、その世界観は遥か彼方の惑星で実在するかのような説得力を持ち、没入することが出来た。ストーリーはスターウォーズのような政治色は持たず、あくまでも古代人(原始人)と未来人(侵略者)との闘い。そこにはもちろん自然破壊への警鐘が含まれる。傍若無人なスカイピープルと、ただ復讐に燃えるだけのクオリッチ大佐の憎らしさと言ったら、どんなに今回のマ・ジェイクが中途半端だとしても応援したくなるのは必至。想像力も創造力も人間を超えるトゥルクンの髄液は500ml程度で8000万ドル、金持ちどもの老化を止める薬になるなんて、何だか本当にありそうな話だ。金だけが生きる目的みたいな人間に対しナヴィや自然生物の尊さは、古(いにしえ)より不偏のものだから。助けちゃったアイツを、次回作はどう活かすか、楽しみにしています。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-08-26 12:53:19) |
26. バッド・ジーニアス 危険な天才たち
《ネタバレ》 面白い。想像していたものと違っていたが、良かったと思う。世の中舐め腐ったお子ちゃまたちが、悪知恵だけを駆使して難関受験を集団で乗り切る、みたいなのかと勝手に思っていた。タイ映画というのも観たことないし、あまり期待していなかったんだけど、これも想像を反して洗練された作品でした。 悪知恵といってもカンニングペーパー持ち込むとかそんな小賢しい作戦ではなく、主人公の勉強頭脳に全て掛かっている、というもの。ピアノコードにバーコード、スタイリッシュなカンニング大作戦は、そうやすやすとは行きません。涼しげな顔した天才少女が、冷や汗を滲ませ、鉛筆で嘔吐と、なかなかヒリヒリさせられる。しかしカンニングだけに終わらず、協力者の男子も紆余曲折あったりでストーリーを盛り上げる。バカップルや他の生徒も善良ではないが憎めなかったりするので、なぜかハラハラしながらもこの犯罪を応援している自分。たかが高校生のカンニングが、ここまで立派なクライムサスペンスに仕上がるとは想像以上でした。お父さんが最初から最後まで間違ってなかったのも、本作の良心として光っていた。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-08-21 14:48:47)(良:1票) |
27. ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!
《ネタバレ》 高校生の頃の自分が人生のピークで、当時のダチを無理やり集めて、5人で昔やり残した伝説の「パブ巡り」完走を目指す。主人公ゲイリーだけが昔のまんまのテンションで、でもそんな彼がなぜそこまでパブ完走にこだわるのか。仲間たちを我が子のように可愛がっていた母が死んだことが引き金?と思ったら、死んだというのは嘘だった。別の奴からのいじめがトラウマのピーターに「過去の心の傷を治さないと、後々良くない」とか意味深な言葉をかけたりする。何?何か隠している?余命が短い?友人たちの目に自分の存在を残して去ろうと?それとも過去の自分と決別して友人たちとの関係を再構築しようとか? そんなヒューマニズムな展開を予想した私がバカでした。冒頭に出たまま、ただのアル中だった。そして完全にSFコメディだった。エドガー・ライト監督を知らなかったもので。勉強して出直します。 いきなりのトイレでバトルは凄い。ガシャーンて、陶器?首や肩関節の接続部分も単純な凹凸。青いし。面白いじゃないか。WTFってビジネス用語じゃないので要注意。青いロボットと、ロボットに支配されてる非ロボットの代名詞を考えようとか、メタボのアンディが強すぎるところも面白かった。戦いながらどうしてもビールを飲みたいゲイリーもかっこよかった。そのくらいです。ラストは全然良くない。結局何がしたかったんだか。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-08-20 15:21:20) |
28. KUBO/クボ 二本の弦の秘密
《ネタバレ》 ストップモーションアニメであることを忘れてしまうくらい、CGアニメと見分けがつかないくらい高いクオリティですね。それでいて3Dでいいじゃんと思わせない味のある画面。その技術で日本の文化を不自然でなく上手に紹介し、「日本の夏」が持つ独特の哀愁までも表現している所に感嘆します。それが自然過ぎるんで観てる最中はこれといって感じられないほど、堂に入っちゃってる。そういうところがいろいろもったいない作品なんだと思う。 お話はよくある少年の冒険譚です。特殊能力を持って、重たい運命を背負わされ、果たすべき使命を与えられます。出自は謎が多く、悪に魂を売った身内が敵として少年を阻みます。ラスボスは、ハリーポッターの「あの人」レイフファインズ。そんなありがちなアドベンチャーをやっといて、落としどころは日本の夏、つまり「お盆文化」。不死の体を求めて怪物になることより、人間のまま死んでいく。死者は子孫たちから物語として語られることによって、永遠の命を与えられる。 メキシコの死者の祭り、欧米のイースター、日本のお盆。亡くなった人を思い出してひと時を過ごすという考えは共通している。つまり、思い出す人がいる限り、人の命は永遠という考え方。人々の温かい心が全てを救うというラストも良かった。 余談。なんでクワガタ?てなるけど、ほら彼らは日本の夏のヒーローでしょ。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-08-15 13:07:00)(良:1票) |
29. 世界にひとつのプレイブック
《ネタバレ》 共に心を病んだ男女が出会い、繰り広げる会話では互いに傷つけ合いながらも、その会話が知らず知らずのうちにセラピーの役割みたいになっているという。発病スイッチがいずれも結婚相手の喪失だったので、何だかんだあっても分かり合えたのは自然の流れでしょう。都合よく自分を安全な位置に置こうとするのも人間の本質としては、有りなのだから。 まともじゃない主人公の二人を囲む周りの「まとも」なはずの人たちが、実はそれぞれがみんなクレイジー。そしてラストは全員のそれぞれの思惑を強引に一まとめにしての、ダンス大会本番。目標点ジャストゲットで大歓喜は、出来過ぎてるけど素直に感動しました。ベタでいいです。結果が大切。 ジェニファーローレンスはいろんな役が出来る素晴らしい俳優だと思う。このまま真面目に映画演技を続けて行けばメリルストリープみたいな大女優になる素質がありましょう。オッパイ女優ではない(NGワードか?)。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-08-07 10:49:49) |
30. アリー/スター誕生
《ネタバレ》 シンガーソングライターの若きボスキャラアイコン、キャラの塊レディガガが、冒頭ではそのオーラを極力OFFして、普通の女の子に見えてるのが凄い。その対比に「大物スター」ブラッドリークーパー。まあ良しとしよう。「古い生き方は葬ろう」カッコいいじゃないか。この時点で二人とも絶妙に役に合っている。キャスティングは間違ってない。ガガはどんどんガガになっていく。ブラッドリーは本当にアル中のヤク中みたいだ。芸能界においての逆転は痛くて、授賞式は無様で、嫉妬し八つ当たりし、心の距離は離れたり縮まったり。それは全て夫ジャックの病気のせいなのだが、父や兄との関係なども語られ、とても気の毒な男だという事が分かる。夫婦の物語であり、一人の男の生涯の物語であり、夢を叶えたがその代償に最も大切なものを失った女の物語。ガガの力強い歌唱がぐいぐい入り込んでくる。素晴らしい歌声にホロリ。自分、音楽劇には弱いのです。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-08-02 14:22:13) |
31. めぐり逢えたら
《ネタバレ》 ラブストーリーではなく、ファンタジー。子供は宇宙の力を持ってるから、前世で結ばれる運命だった二人がわかるそうです。ん?本当のママは?ま、そこは置いときます。で、その二人が出逢うと。それだけなんだけど、子供がちょっと生意気で甘えん坊な所が可愛らしく、若いトムハンクスパパとの掛け合いが楽しい。季節はクリスマスからのバレンタイン。冬のアメリカ大陸を西から東へ横断して、ロマンチックな出会いを演出します。最後、会えないのか?と思ったら、警備員のおじちゃんの粋な計らいと、置き忘れたバックで、奇跡的に会えた二人、いや三人。会えたってだけでハッピーって、なんかいい。ほっとした。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-07-30 10:53:25) |
32. デッドプール&ウルヴァリン
《ネタバレ》 「LOGAN」でノースダコタの地に静かに眠ったウルヴァリンを、デッドプールがあんなことして…。そのシーンがデップーらしくブラックでキレキレで面白かった。そこら辺までは最高でしたが、やっぱり時間変異取締局出ちゃった。あれ出ちゃうとちょっと乗れない自分がいました。このウルヴァリンがマルチバースの人なので、キャラがちょっとアレなんです。そこが残念。 X-MENとMCUのキャラクターについて、知ってれば知ってるほど楽しめるのは分かる。チャールズやドクターストレンジなど有名どころのキャラの知識はみんな持ってるとしても、ロキだったか。見てない人も多いと思うので、虚無の世界の事もう少し説明が必要だったのでは。アライオスとか。ロキ見てても、ちょっと??だったのは私の理解が追い付かなかっただけかもしれませんが。 デップーのセリフ「マルチバースとかもういいよ」みたいなセリフ、あれは良かった。思わず映画館の暗闇の中で小さなガッツポーズをしてしまいました。でもまあ、ウルヴァリンとデッドプールの夢の競演に、MCUへの殴り込みという企画が実現したことは凄いことだという事です。 [映画館(字幕)] 6点(2024-07-25 12:52:48) |
33. LOGAN ローガン
《ネタバレ》 旧三部作やファーストジェネレーションまでがこのシリーズのピークで、かっこいいX-MENを観たいだけなら、この作品はやめといたほうがいいです。しかし過酷な運命を背負わされた孤高の人、ジェームス・ハウレット通称ウルヴァリンの末路を見届けない訳にはいかないのです。見るには相当の覚悟がいるのです。 この時間軸では、またもや辛い役回りの彼は、最後のジェダイならぬ最後のミュータントみたいな存在で、不老不死と思われていた彼でもやっぱり老いて、追われています。一緒に暮らすプロフェッサーはアルツハイマーで、地球上で最も危険な脳を自分で制御できないありさま。ミュータントあるあるみたいで、リアリティを感じます。子供にそんな事さすなよという目を覆いたくなるシーンが辛いけど、映画でほとんど描かれなかった少年期を間接的に見ているようにも思えます。不死身で生き続けることに疲れいつかは自ら命を絶とうとしていたウルヴァリンは、自分のクローンによって殺される。常に孤独と戦ってきて、その最期に初めて、親子の愛情という普通の人間が抱くごく当たり前の感情を知ることになる。「ああ、こういう感じか」と。温かいけどものすごく悲しい、ウルヴァリンの生きざまそのもののような作品になってました。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-07-23 17:39:44) |
34. X-MEN:フューチャー&パスト
《ネタバレ》 タイムリープ、からの二つ目の時間軸発生。マルチバースをX-MENシリーズに取り入れた記念すべき分岐点の作品。X-MENZEROにてウルヴァリンが200年ぐらい同じ外見であることが発表され、その能力を利用して精神タイムリープをさせて最悪の現在を正す、なんて巧いこと考えるもんです。その時代ではエグゼビアがたまたまクソ野郎になってたようで、未来の自分に説教されるところとか面白いし、時間は不変で何やっても変わらない、という説も、その説教のお陰で急に前向きなプロフェッサーになる。SFにご都合主義は必須です。いいんです。ピエトロ・ピーター・マキシモス、ここに出てたか。実は一番強いんじゃない? [インターネット(字幕)] 7点(2024-07-22 16:09:45) |
35. デッドプール2
《ネタバレ》 前作でX-MEN入会を拒否ってたのに、あっさり「見習い」として加入。え? と思ったら勝手に私製チームの面接をして、ポンコツチームXフォースを結成。おバカ多めだけど、きっちり目的を達成し、すっかりファミリー。ヴァネッサと再会するシーンは感動。これ以上何を求めましょう。あとは「X-MEN ZERO」「フューチャー&パスト」「LOGAN」を復習すればいいのかな。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-07-19 11:19:30) |
36. デッドプール
《ネタバレ》 X‐MENシリーズ好きなのにまだ観てなかったので、近日公開の&ウルヴァリンを観るために鑑賞。いやー、意外にツボりました。面白かった。 主人公のウェインは元々普通の人間で、ミュータントでもなければヒーローでもない。自分より悪い奴を懲らしめて金をもらってるだけの人間。そう、人間だけど、金のためとは言え彼によって救われた者は、彼の事を「ヒーロー」と言う。そんな男がミュータントに改造され、戦う。それは世のためでもなければ金のためでもない。自分の顔を取り戻すため、恋人のため。そして最終的には復讐と復縁。全然ヒーローじゃない。ミュータントは能力を生かしてチームに入ればヒーロー。入らなければ、ただの変わり者。2観なきゃ、まだ何も語れないな。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-07-15 11:45:50) |
37. トイ・ストーリー
《ネタバレ》 ああ、こんなおもちゃあったなぁ、と思えるような定番おもちゃが、それぞれの個性を生かして奮闘する、というのが作り手のとっかかりでしょう。彼らは「おもちゃ」という共通点を持ってるけど、みんな違う種類で、助け合って共存しているという設定です。シドの家のおもちゃは、自分用にカスタマイズしてるから更に個性的になっちゃってる。アンディとシドは違うタイプの「子ども」だけど、毎日お気に入りが変わったり、残虐性を持っていたり、どちらも典型的な子供です。子供とおもちゃの関係は、本当にみんな違う。毎日違う遊び方をする。勝手なキャラ設定をし、毎回違ったシチュエーションでおもちゃを駆使する。バズとの遊び方ひとつ取っても、女の子はヘルメットの上にお花のついた帽子を乗せ「ミセス・ネズビット」と呼んでお茶会を開く。男の子は背中に爆発物を括り付けて、着火して飛ばそうとする。それでもおもちゃは子供たちのそばにいる。毎日遊んでもらえなくても、自分たちは持ち主のそばにいてあげることが大切なんだと自覚して「おもちゃ」をやってる。なんて健気なんだろう。もちろん作り物のお話の世界だけど、でもおもちゃって本当にそういう立場なんだ。そしてその不偏的なキャラたちが、個性的に、とても狭い世界で、壮大なスケールの大冒険を繰り広げる。その面白さに着眼したのが凄い。大成功。 [インターネット(字幕)] 10点(2024-07-11 14:48:54) |
38. プロミシング・ヤング・ウーマン
《ネタバレ》 ポップでカラフルな宣伝用画像と、色欲男どもに復讐という紹介文から、もっとドギツく爽快な世直しモノを期待しました。そうすると前半などは物足りなく、主人公がもうちょっと可愛いといいなとか、復讐場面はソフト過ぎるなとか。多くの方がおっしゃてるとおり、見る前のイメージが完全に間違っていた作品。ラストは痛快どころか後味悪いし。自分の命を懸けてまでやることか?というのは、当事者にしかわからない事ですが、「みんなのために前へ進んで」という言葉が一番正しいと思う。ゴッドファーザーのマイケルコルレオーネが言ってた。「敵を憎むな。判断が鈍る。」結局これなんでしょうか。憎まず、冷静に、策を練って、敵を不幸のどん底に陥れてやれれば、それで済んだのに。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-07-07 15:34:15) |
39. 君の名は。(2016)
《ネタバレ》 いわゆるボーイミーツガールものです。このボーイとガールは互いが中身と外身という状態で出会っていて、外身と外身はなかなか会うことが出来ない。どこの誰かも分からない。お前は誰だ?不思議な出会いに興味がそそられない訳がない。 スマホが頻繫に出てくるのに使うのはメモアプリだけで通話はしないとかね、ツッコミどころも挙がりますが、そもそも人と人が入れ替わるって現象が有り得ん話なんだから、細かいところは目をつむりましょう。 寝てるときに観る「夢」って、ほんとこれ自分の想像力でこんな複雑な物語が!?て思うことがある。登場人物は第一人称の「自分」が自分とは似ても似つかない人間で、何か警告めいたストーリーの時もある。そして目覚めてから数分、いや数十秒で記憶から抜け落ちてゆく。その感覚がこの作品の根底にあるとすれば、序盤はあくまで夢の中だけで交流し合う二人という設定でも十分だとも思うが、週に2~3回のペースで実際に入れ替わっている。その方がエモーショナルだけより刺激的で面白いっちゃ面白い。 で、単なるボーイミーツガールの恋物語かと思いきや、このガールは神社の巫女の血筋で、たぶん何百年も前から変えられない彗星落下災害から町民を救うべく、代々備わった能力を駆使してきたという壮大なスケールのお話だったというわけです。私が寝てる間に無意識にひねり出しているストーリーとは訳が違う(当たり前)。脱帽です。ラストもいい。 [インターネット(邦画)] 8点(2024-07-01 13:46:29) |
40. 人魚の眠る家
《ネタバレ》 原作読後の鑑賞です。映画では母とマッドサイエンティストの狂気が悪目立ちしてる。もちろん原作の方もそのように読者をリードしている部分もあるが、考えるべきは家族が(特に子供などが突然に)脳死という状態に陥った時の事。事故で突然動けなくなった我が子が死んだか死んでないのか、それは脳死判定を行えばほぼ確定される状況なのに、その「判定テスト」は、臓器提供を表明しないと実行されないというルール。逆説でしか「死」を受け入れない日本の法律がおかしいのではないかという問題提起を、本作は前提レベルでスルーし、家族の話と狂気の部分をクローズアップして描いている。まあそれはそれでよい。そのレベルでのストーリーテリングで描こうというのならそれでもまあ良い。少しでも脳死を考える材料にはなっているから。 動かない幼子を中心に、登場人物はそれぞれの立場でものを言う。「あの子は生きている。まだ死んでなんかない」「自分の体を使って生活した方が生きる喜びを感じる」「延命措置は虚しい行為なのではないか」「技術の進歩にも超えてはならない一線がある」どれも間違ってない。個人の意見だ。 でもこんなに難しい問題を、個人が選ぶ権利として当事者に丸投げしている法律がやっぱり一番の問題。そしてこんな曖昧な法律の下、今後技術の進歩と倫理観はどう折り合いを付けていくのか。法律、政治、医学や技術開発が調和を取って、例えば政治では止められない人口減少の問題なども考えなくてはならない時代なのだろうと、原作を読んだときはそんな事まで考えてしまった。映画の方は、役者の演技はそれぞれとても良く、だからこそ単に悲しく切ない物語に留まってしまったように思う。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-06-28 14:04:20) |