21. ドッグヴィル
う~ん正直、一見の価値はあるけどもう一回観る必要は感じないだろうな~。この映画のテーマはそれほど新奇なものでは無いし、表現方法も特段独創的では無い気がする。“ドッグヴィル”は人間世界を象徴的にミニチュアライズしたもので、そこを外界から訪れるグレースとギャングのパパは超然とした存在のメタファーだと思う。グレースを“天使(善)”と言ってもいいし、パパを“サタン(悪)”と言ってもいいが、映画の中で親子として描かれるようにそれは表裏一体なのだ。そして村の中で唯一、神(あるいは悪魔)と村人(人間)の間を取り持とうと画策するトムは、人間でありながら自分は人間を超越していると考え、人々をコントロールしたがるタイプの人間(権力者、 聖職者、学者、映画監督 etc.)のメタファーの様に見える。これは寓話としては使い古されたネタだ。これを今やるなら、もっと現代的な舞台(例えば映画撮影現場やNGOとか)でやったほうが芸術としての意味もあると思うのだけど。 [地上波(字幕)] 5点(2006-01-14 16:47:33) |
22. ドッグヴィルの告白
この平凡で中途半端なメイキングを観て思ったのは、まさにこの撮影現場が“ドッグヴィル”そのものの様だということ。誰からも好かれない嫌われ者(トリアー)がその世界の最高権力者だという事実の前で、ある者は子供じみた反抗心で自らを慰め、ある者は偽善的な寛容さで権力者の心に取り入ろうとする。この映画製作の現場を舞台に同じテーマを撮ったら“ドッグヴィル”よりも面白くなったのでは?と思った。しかしその度量がこの監督にあるとは到底思えない。 [地上波(字幕)] 0点(2006-01-14 16:11:42)(良:1票) |
23. キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
オープニングが秀逸。 [地上波(字幕)] 6点(2005-12-30 18:35:31) |
24. スターゲイト
竜頭蛇尾とはまさにこのこと。ことわざを一つ自分のモノにするにはオススメの映画。 [映画館(字幕)] 3点(2005-12-30 18:27:41) |
25. 友よ、風に抱かれて
ベトナム戦争をアメリカ側のみの視点で、しかもかなり限られたコミュニティを通して表現した小品。当時を経験した米国人にはグッとくる所もあるかも知れないが、それ以外の人にはあまり訴えてくる物は無いように思った。つまらない、というほどでもないが面白くは無い。ベトナム戦争映画好きにはフィッシュバーンの出演や、プラトーンと共通するセリフ、フルメタル・ジャケットとの比較など多少は見るべき物もある。 [地上波(字幕)] 3点(2005-12-30 18:20:48) |
26. ベニスで恋して
現実とファンタジーが曖昧に交錯する小品。そこそこ面白い。ただ、誰でも何時でも楽しめるかは微妙なところ。その人の好みや観たときの気分に大きく左右されそう。逆にそういう万人受けを狙わない姿勢がよかったのかも。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2005-10-24 12:09:40) |
27. ワンス・アンド・フォーエバー
ベトナム戦争を『プライベート・ライアン』のスタイルで撮っただけの“二匹目のどじょう”狙いの駄作。申し訳程度にベトナム側の描写を入れてはいるが、結局はベトナム戦争をポジティブに再評価したいというアメリカ人の潜在的願望がそこかしこに出てしまっている不純な映画。そもそもイアドラン渓谷の戦いはベトナム戦争の中で例外的な大部隊が衝突した戦闘であり、その意味では第二次世界大戦映画のような“ヒロイズム”表現するには格好の題材といえる。しかしそれ故にベトナム戦争の独特な歴史的意味合いを全く無視した、ただの古典的戦争映画になってしまっている。というよりもこれが制作者側の狙いなのだろう。勿論その目論見は映画のクオリティ同様失敗している。 [地上波(吹替)] 0点(2005-10-04 19:08:41) |
28. ディアボロス/悪魔の扉
アル・パチーノを本物の悪魔にするよりも、限りなく悪魔的な人間にしといて、フツーの法廷物で通したほうが面白かったかも。いろいろ細かい破綻はあるが、パチーノのゴリ押し演技と女優二人の裸に誤魔化された気がする。 [地上波(字幕)] 5点(2005-07-26 19:04:27) |
29. フルメタル・ジャケット
キューブリックの意図はどうあれ、曲がりなりにも“ベトナム戦争”を題材に取ったなら、そこに表現上のリアリティが無ければ、テーマも真実味を持ち得ないんじゃないだろうか。そう思うくらいこの“戦場”は“ベトナム”に見えないし、いかにも作り物くさい。ダナンの海兵隊基地はどうにもちゃちだし、フエ市街の建物も妙に天井が高かったりしてヨーロッパの戦場のようだ。おまけに“ベトナム戦争”の主役であるヘリコプターも一種類しか登場せず、しかもあまり見ないタイプのものだ。予算をケチったとしか思えない。また戦闘シーンもかなりユルい。テト攻勢の際のベトコンの倒れ方も、最後の戦闘で米兵が被弾した際の血糊も嘘くさい。“神は細部に宿る”と言うが、この時期のキューブリクには既に神を呼ぶ祭司としての力を失っていたようだ。 [DVD(字幕)] 4点(2005-07-26 18:44:28) |
30. タクシードライバー(1976)
デ・ニーロのこぼれるような笑顔に尽きる。こんな無垢で愛らしい、まるで天使のような、それでいて底なしの寂しさと虚無を抱えた笑顔があるだろうか?果たしてこれは演技なんだろうか?演技だということを忘れさせてくれるのが良い役者だとするなら、デ・ニーロは間違いなく名優だ。そして『タクシー・ドライバー』は彼の代表作だ。それが僕のこの映画に対する評価の全てかも知れない。 [映画館(字幕)] 8点(2005-04-26 18:19:29) |
31. エターナル・サンシャイン
《ネタバレ》 破局を迎えたジョエルとクレメンタインは話し合った結果、二人でラクーナ社の記憶消去手術を受けることに合意した。しかしそれは以前からクレメンタインを狙っていたラクーナ社の社員で友人のパトリックの策略でもあった。並んだベッドで記憶消去される二人だが、ジョエルは彼女との記憶を遡る過程で破局の原因がすれ違いによる誤解であることに気づき、仲直りの方策を思いつく。しかし手術は止まらず、隣の彼女にも伝えられない。ジョエルは激しく後悔し、記憶の中の彼女と共に“誤解を解く鍵”と“ラクーナ社に残したテープへ辿り着く鍵”を他の記憶の中に巧妙に隠すことにする。手術後全くの他人になって日常生活を送る二人だが、ジョエルはあるときふと記憶の中に隠された鍵の存在に気づき、ラクーナ社のテープへと辿り着く。盗んだテープで事実を知ったジョエルはクレメンタインを探すが、なんと彼女はジョエルの記憶を盗んだパトリックと幸せに暮らしていた。クレメンタインは記憶を完全に失っているので、しかたなくジョエルは挽回する機会が来るまでラクーナ社で働くことにする。記憶を消したと思って安心しているパトリックはジョエルを同僚として迎え入れる。その内彼女とパトリックは以前のジョエルたちのようにすれ違いはじめ、結局は彼等二人もまた記憶消去を受ける。施術したジョエルはパトリックの記憶図から間接的に過去の自分のクレメンタインとの歴史を知り、記憶の中に隠していた仲直りの鍵の使い方を思い出す。そしてジョエルはクレメンタインの前に再び他人として姿を現す。当然のように惹かれ合う二人は以前と同じように付き合うようになり、同じようにケンカもしてしまう。またしても二人の仲は破局しそうになるが、思い出した“鍵”のおかげで乗り越える。そして二人の関係はようやく晴れて新しい局面へと進む。 ・・・と、こういう感じの脚本だったらカタルシスが増して万人受けするんじゃないかな~って思うんだけど、余計なお世話?でも映像表現がとても素敵なのにストーリーやテーマの掘り下げが不十分だったのが実に惜しい!なのでつい自分で改訂版のストーリーを考えてしまいました(笑) [映画館(字幕)] 7点(2005-03-31 12:16:13) |
32. ゼロ・エフェクト
不思議な映画だ。始まり方やキャスティングなどを見るとコメディかと思わせるが、実はサスペンスのシリアス感の方が全体を覆っている。これが味なのか?いや多分中途半端なだけだろう。しかし何故かその中途半端加減も悪くない。キャラが立っているのも捨てがたい。映画館で観たいとは思わないが、TVでシリーズ化してもらいたい作品だ。犯人役の女優が綺麗だ。 5点(2005-03-21 03:57:22) |
33. モンティ・パイソン/人生狂騒曲
モンティ・パイソンが嫌いな人の気持ちも何となく解る。インテリ臭さは拭えないし(彼等は拭いたいとは思ってないだろうが)、観念的になりすぎて笑えないことも多々ある。この『人生狂騒曲』で言えば、発電所での訳の分からないシュール・スケッチや虎のぬいぐるみを着た二人との問答などは正直つまらなくて死にそうだ。でも何回も繰り返し観てしまうのはひとえに彼等の持つ生まれながらの反骨精神に惹かれるからだと思う。権威を笑い飛ばし、自分は正しいと信じている“良識的な人々”を軽蔑する。その痛快さと笑いのアイデアの秀逸さは他に類を見ない。モンティ・パイソンより面白いコメディがあったら教えて欲しい。ほんとに。特に「全ての精子は神聖なり」と「生体臓器移植」のスケッチが最高。キャラは“ガストン”が一番好き。 7点(2005-03-12 09:31:08) |
34. グッドフェローズ
少しでも犯罪者心理を知る者なら、殺伐とした世界に生きる犯罪者が本当に求めるのは“ロマン”や“男気”ではなく“ユーモア”だと言うことが解るはずだ。そういう意味ではロマンチシズムに傾きすぎた『ゴッドファーザー』よりも、この『グッドフェローズ』のユーモアに満ちた淡々とした描写の方がリアルなギャングの姿だと言えるだろう。そもそもギャングとは「自分以外を信用しない」連中であり、そんな連中がやれ「兄弟愛」だの「仁義」だのと言うのは、単に自分が身を置く世界の緊張感に耐えられないから生み出す“虚構”に過ぎない。彼等はそんな自分たちの不幸を直視しようとはしないし、“幻想”だと解らずに“ギャングの美学”に陶酔してしまう愚か者さえいる。だが結局彼等の大半が行き着くのはこの映画でも描かれるように、かつて自分が軽蔑していた“普通の生活”よりも悲惨な場所なのだ。レイ・リオッタ演じる主人公が麻薬に溺れてにっちもさっちも行かなくなる姿はユーモラスで素晴らしくリアルな犯罪者の実像だ。 [映画館(字幕)] 9点(2005-03-11 16:05:11)(良:1票) |
35. カラーズ/天使の消えた街
今観るとかなり安っぽい感じがするが、当時は結構新鮮だった。西海岸ギャングものが流行る前だったから、そのへんの社会状況の描写がまず興味深かった。黒人とヒスパニックと白人の関係や、刑務所とシャバとの繋がり、警察の捜査方法などデティールが割としっかりしており、その辺に興味がある人にはなかなかの佳作だと思う。また主演の二人もそれぞれハマリ役で、特にショーン・ペンはこれが一番輝いてると思う。彼ほどバカっぽい白人警官が似合う俳優はいない気もする。この作品が気に入ったら「ブラッド・イン、ブラッド・アウト」や「ボーイズ’ン・ザ・フッド」もオススメ。 8点(2005-02-20 02:32:57) |
36. コンタクト
昔のSFにはこういう上品さがあったよな・・。斬新で驚異的な想像力と純粋な知的好奇心にあふれたこの映画は、スター・ウォーズ以降に失われてしまった「真のSF映画」を思い出させてくれた。SFは絵空事や子供のための娯楽でなく、大人の血をたぎらせる壮大な夢だったよね。 [映画館(字幕)] 8点(2005-01-29 03:59:13)(良:2票) |
37. 薔薇の名前
中世ヨーロッパ好きにはたまらないだろうな。でもこのショーン・コネリーってハマッてる?なんか彼だけ非常に現代的な雰囲気を醸し出していて、映画全体の統一感を損なっている気がするんだけど。DVDの特典映像で驚いたのは、この修道院がセットだったということ。内部のシーンでは実在の修道院で撮影したらしいが、本当にローマ近郊の寒そうな丘の上に修道院をまるまる建ててしまったのはスゴイ。セットに関しては「ロード・オブ・ザ・リング」並の凝りようで好きだ。 [DVD(字幕)] 6点(2005-01-29 03:48:30) |
38. ミスティック・リバー
最初、観終わった後「あれ?何か大事な伏線を見落としたかな?」とまず思った。その位このラスト・シーンは映画の約束事(観客に何らかの結末、結論、ある種の満足感を与えること)を破っているからだ。自分が見落としただけで、本当はジミーの妻がケイティー殺しの真犯人なのでは?と思ったくらいだ。しかしその視点で再度見直しても、そうではないようだ。通報電話の不自然さを見逃していたショーンにデイヴへの殺意があったと思える描写も無い。とするとこの不可解なラスト・シーンで監督は一体何が言いたかったのだろうか。唯一考えられるのは、現実の世界はこの様に不条理がまかり通り、繊細で弱い者はどこまでも被害者であり続け、冷酷で、自己保身に長けた者が真実を忘却の彼方に追いやるのもまた彼等の弱さなのだ、という全く映画的でない「現実」を表現したかったということだろうか。しかしいくら屁理屈をこねたところで、1800円と引き替えに誰もが薄々知っているこの世の不条理を観客に見せつけただけのイーストウッドを支持することなど到底出来ない。この映画を観た後に一体どういった種類の感動や、感慨を得ろというのだろうか。ハッキリ言って私はこの映画は名優の演技力でコーティングされたタチの悪いクズ映画だと思う。 0点(2004-11-22 00:40:34)(良:4票) |
39. フィフス・エレメント
私もこの映画が“良く出来ている”なんて全く思わない。ストーリーは稚拙、世界観も「ブレードランナー」のマネだし、ヒロインの演技に至っては犯罪的なレベル。しかしながらこの映画の意義は別の所にあると思う。それは“ヨーロッパの監督がハリウッド資本で作ったヨーロピアン・テイストのSF超大作”というところ。キャラクター達はブルース・ウィリスとクリス・タッカーを除いていかにもヨーロピアンな風貌の者が多いし、ゴルティエのファッションもゲイ・テイストが強すぎてアメリカでは受けないだろう。オペラハウスでのアリアのシーンなどは映画史上、ヨーロッパ的美学がSFの舞台で炸裂した数少ないシーンの一つだ。この映画がアメリカの狭量な観客達に受けなかったのは、ある意味痛快だ。あとこの映画は絶対字幕で観るべき。クリス・タッカーの才能を理解するためにも、ミラの大根ぶりを再確認するためにも。 6点(2004-11-07 19:15:29) |
40. 地獄の黙示録
この映画は決して安易なカタルシスを与えてくれはしない。それ故にハリウッド映画の与える安易なカタルシスに慣れきってしまった人には到底受け容れられない映画だろう。しかし、私にとってはそれこそがこの映画を何度も繰り替えし見てしまう理由だ。他人に押しつけられる最大公約数的な結論(エンディング)なんてまっぴらだ。結論は自分の頭で考え出し、それに対して責任を持つものだ。だからこの映画がエンディングを放棄してしまっているのは制作者の誠意の表明なのだ。私はそれを支持したい。あと、この映画を傑作たらしめているのは各カットの構図の完璧さだ。しっかりとした絵になっている。いかにスタッフが時間と金と頭を使ったかの証拠だと思う。特にベトコン村を急襲するシーンの構図は神憑かり的な完璧さだ。この映画はあくまでベトナム戦争を題材にした、抽象的戦争映画なので、ベトナム戦争に関する表現上のリアリティの無さはあまり問題じゃ無いと思う。 10点(2004-11-04 16:47:03)(良:2票) |