21. 街のあかり
《ネタバレ》 恋も、仕事も、すべてを失った男が、最後に見つけるもの。 洗練の果てに結晶化した、カウリスマキ節の極北という感じがします。 カウリスマキ監督自身 「主人公にとって幸いだったのは、この映画の監督が心優しい老人であったということです。ラストシーンは希望で光り輝いています」 と書いているラストシーンの完璧さには、打ちのめされます。 いくつか散りばめられているユーモアも、とても笑えます。 [DVD(字幕)] 9点(2008-08-30 22:26:32) |
22. 去年マリエンバートで
《ネタバレ》 デルフィーヌ・セイリグがひたすら美しい。カメラも全篇彼女の美しさに陶酔しているようです。フランス語の響きの気持ちよさも堪能できます。 [ビデオ(字幕)] 10点(2006-08-01 12:02:44) |
23. 審判(1963)
《ネタバレ》 巨大な迷宮のような、ひたすら不安をかきたてられる展開と、淀川長治さん風に言うところの「目で感じる」鋭い映像感覚が見事にかみ合って、2時間ずっと画面に釘づけでした。流れるような長廻しにもゾクゾクします(演劇畑出身の人はやっぱり長廻しを好むひとが多いですよね)。銀行や裁判所における没個性的な、虫みたいな群集の描写はフリッツ・ラングの『メトロポリス』なんかを思い出したりしました。 [DVD(字幕)] 10点(2006-07-24 19:39:59) |
24. アカルイミライ
《ネタバレ》 この作品は日本映画史上最高の青春映画のひとつではないでしょうか。50歳を越えた監督がこれだけ自然に若者の感覚を描けるということにまず驚きました。序盤、おしぼり工場社長宅での食事シーンの気まずさや、社長がテレビのスポーツ中継を見て「ニッポン、チャチャチャ!」とひとり盛り上がる様子をドッチラケの表情で見ているふたり、などの描写がとても繊細で感心しました。ちょっとヴィンセント・ギャロの『バッファロー'66』を彷彿とさせるようなひりひりした感覚です。あの社長、徹底的に醜悪に描かれていて、そりゃ殺されるわな、という感じの描き方でしたね。それに対して藤竜也さんはものわかりの良い理想的な旧世代として描かれていて、私のような若い世代の人間から見ると「こんな理想的な人、いねえよ」という感じもなきにしもあらずでしたが、彼がオダギリジョーさんを「私は君を許す」と言って抱きしめる場面はとても感動的でした。猛毒のクラゲが川にあふれる場面はとても爽快でした。ラストもタイトル通り爽やかで後味が良かったと思います。作品全体的には、黒を強調した絵が見やすくて、テンポもよく、非常にポップな映画に仕上がっていました。 [DVD(邦画)] 9点(2006-05-23 11:02:16) |
25. サンライズ
《ネタバレ》 ストーリーはシンプルそのもの、人間の弱さと愛についての寓話です。ですが、役者の繊細な演技も、表現主義的な映像美も、数少ない台詞字幕のタイミングも、完璧に素晴らしかったと思います。夫が改心する教会の場面、そして圧倒的なラスト、2度涙が出ました。ラストでは隣で見ていた友人も号泣していました。この感動はサイレント映画ならではのものだと思います。完全に打ちのめされました。 [ビデオ(字幕)] 10点(2006-04-09 08:13:10)(良:1票) |
26. 蜘蛛巣城
完璧だと思いました。「息を飲む」とはこういう作品のためにある言葉なのではないでしょうか。鬼気迫る美しさでした。見終わったあと、しばらく胸がざわついて、ぽかんとしてしまいました。 [DVD(字幕)] 10点(2006-02-12 03:51:22) |
27. 隠し砦の三悪人
《ネタバレ》 自分の生まれるはるか前にこんな映画が作られていたなんて・・・・・・ 冒頭近くの暴動場面から圧倒されました。まさにツカミはオッケーという感じですね。あとは全篇、次から次へと困難と冒険の連続で、非常に楽しめました。散りばめられたユーモアも笑えます。「おいっ!・・・・・・山は冷えるなあ」でめちゃ笑いました。リチャード・ギアが「ほんとうは隠し砦の三悪人みたいな作品に出たかった」と言ってたらしいですが、気持ちわかります。ロードムービー的な要素もあり、見終わったあと長い旅をしたような、そういう達成感がありました。娯楽映画のひとつの究極形だと思いました。スターウォーズよりもはるかに面白かった・・・・・・ [DVD(字幕)] 10点(2006-02-12 03:44:45) |
28. 野良犬(1949)
《ネタバレ》 三船敏郎さんが手がかりを求めて延々とずっと闇市をさまよい歩くシークエンスが素晴らしい。台詞なしで、映像と音だけで、こんなに吸引力のある場面を作り上げられるなんて、なんて映画的な、素晴らしいセンスだろうと感激しました。音楽の対位法的な使い方(緊迫感のある場面にノーテンキな音楽が聞こえてくるとか)も冴え渡っていて、ラストの犯人との対決の場面とか、非常に効果的だったと思います。 [DVD(字幕)] 9点(2006-02-12 03:27:58) |
29. 生きる
《ネタバレ》 志村喬さんがやるべきことを見つけた瞬間に、背後で行われている誕生パーティーで“ハッピーバースデー~♪”と歌われているのがとても象徴的だなあと思いました。主人公はそれまでは生ける屍で、やるべきことを見つけた瞬間に真の意味で生まれたのですね。美しい場面、忘れ難い絵がたくさんある名作だと思います。公園で水を飲む志村さんの横顔が目に焼きついて離れません。 [DVD(字幕)] 10点(2006-02-12 03:24:06)(良:1票) |
30. 静かなる決闘
《ネタバレ》 千石規子さん超当たり役です。ダラけたようなナメたような喋り方が味わい深い。三船敏郎さんはクライマックスの怒涛の長廻しのモノローグが感動的。あの場面の撮影のときは黒澤監督もカメラマンももらい泣きして涙を流しながら撮影したのだそうです。そんなエピソードも頷ける感動的な場面でした。 [DVD(字幕)] 10点(2006-02-12 03:20:22)(笑:1票) (良:1票) |
31. 酔いどれ天使
《ネタバレ》 若い三船敏郎さんの格好よさ、美しさに見惚れました。作品の随所に出てくるもの悲しいギターの音色がとても効果的です。敵役のひとの登場場面は「よ、待ってました!」的な格好よさで、娯楽映画のツボをおさえているなあと感心しました。三船さんがペンキで真っ白に染まって死んでいく場面の凄絶さは、映画史上に残る美しさだと思います。 [DVD(字幕)] 10点(2006-02-11 14:02:50) |
32. 七人の侍
活劇映画としてこれ以上の面白さはありえないという水準に達していると思いました。これ以上はありえません。永遠にありえません。それは間違いありません。 [DVD(字幕)] 10点(2006-02-11 13:58:24) |
33. ブラウン・バニー
全篇、凄絶に美しかった。終盤やや説明過多な気もしたのですが、本質的な問題ではないでしょう。途方もない傑作だと思います。この容赦のない美しさ。音楽もとてもとてもいいです。 10点(2005-01-11 21:49:03)(良:1票) |
34. 読書する女
《ネタバレ》 私は小説を先に読んだのですが、映画の方も色彩豊かな画面が印象的な、とても洒落た感じの作品で好感を持ちました。場面の中に赤とか青とか、常に鮮やかな色のモノが配置されていて、監督の強烈なこだわりを感じました。皆さん書いておられるように全体的に描写が官能的でどきどきしますし、ところどころ散りばめられたユーモアも楽しいです。私がもっとも印象的だったのは車椅子の少年に朗読を聞かせる場面です。少年は朗読を聞きながらずっとマリーの脚を注視している、マリーも脚を見られていることを意識して徐々に服の裾を上げて脚を露わにしていく・・・・・・見ている/見られているという緊張感がエロティックで印象的でした。原作でもこの場面は非常に官能的に描かれています。あと、マリーの服装や佇まいが素敵にお洒落なのもいいですね。 8点(2004-11-12 19:44:48) |
35. 自転車泥棒
つげ義春さんが「これ以上の傑作は絶対にない」と書いていました。父が捕らえられたときの息子の表情はいまだに忘れられません。 10点(2004-01-31 15:18:57)(良:1票) |
36. アダムス・ファミリー(1991)
コメディとしてはかなり秀逸な部類に入るんじゃないでしょうか。基本的に最近のハリウッド言語で創られている映画はあまり趣味ではありませんが、この作品はネタがブラックだったりする分観やすかった気がします。アンジェリカ・ヒューストンの色気にやられました。 8点(2004-01-31 15:03:18) |
37. 欲望という名の電車(1951)
ビビアン・リーの迫真の演技、ブランチのキャラクターが痛々しかったです。「そんなに必死に取り繕わなくてもいいよ、そんなに喋らなくてもいいよ」と言いたくなるような感じで、観ていて苦しくなりそうでした。ブランチ的な虚飾というのは、我々の中にも確実にあるもので、その嘘を容赦なく暴いていくスタンレーのケモノ的な強さが恐ろしかった。マーロン・ブランドは登場シーンから圧倒的な存在感で、翻弄されるブランチの様子が痛々しくてはらはらしました。傑作です。でも心が疲れる。 9点(2004-01-31 14:52:12)(良:1票) |
38. エド・ウッド
作品全体に映画への愛情が溢れていて好印象でした。才人なのかただの変人なのかよくわからないエドのキャラクターも味わい深かった。俳優ではジョニー・デップがやはり良いですね。魔女っぽい女優さんもよかった。ああいう系統の色気とても好きです。 8点(2004-01-31 14:41:48) |
39. アタック・オブ・ザ・キラートマト
冒頭のテーマ曲、最高です。全体的にアホらしすぎてなんというか腰砕けになりそうです。制作者たちはさぞかし大笑いしながら創ったんでしょうね。万人に受け入れられる作品とは言い難いでしょうが、こういう映画を作ってしまった人々の心意気は大好きですねえ。くだらないことを一生懸命やるってステキです。 8点(2004-01-31 14:31:58) |
40. 或る夜の出来事
ヒッチハイクの場面は誰もが物真似したくなるんじゃないでしょうか。笑いました。ちりばめられたジョークも楽しいし、テンポもいいし、これでもかと畳み掛ける展開もいいです。 9点(2004-01-30 12:07:34) |