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プロフィール
コメント数 56
性別 女性
年齢 55歳

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21.  生きるべきか死ぬべきか 《ネタバレ》 
最高に面白かったです。が、これは単純にギャグの笑いを求めると、絶対に!裏切られますよ。そういう次元の笑いじゃないんです。おバカなギャグの笑いとは対極の、映画より劇に近いシェイクスピアの次元の笑いです。って、例え出したら劇中劇で本当にシェイクスピア演ってるんですよね・・・。これストラクチャーがメチャクチャ凝ってます。考えなくてすむようなギャグなんて「ジャンプ!」(笑)以外は何も無いですが、そのかわり観れば観るほど面白さがが分かるスルメのような映画です。少なくともこの映画を抱腹絶倒と言える人は相当の通です。以上の点をわきまえた上でご鑑賞下さい。それにしてもクラーク・ゲイブルの奥様って綺麗だなあ。
[ビデオ(字幕)] 10点(2006-05-31 23:14:53)
22.  シェルブールの雨傘 《ネタバレ》 
いや綺麗ですねえ。カトリーヌ・ドヌーブってカラフルな衣装や傘が似合うなあ。ウエディング・ドレス姿まで見せてさり気なくサービス精神も感じるし、寂れた港町や終始美しいメロディラインに乗って独特の雰囲気を醸してました。でも髪型だけはなんとなく黒柳徹子を連想してしまいました・・・・。それはそうと究極の選択、果たしてお腹に子供がいる事情を全て受け入れてプロポーズする人格出来すぎの金持ちより生死不明の恋人を選べるか?この場合の敵は長期間の生活力の有無なんですよね。誰も悪くない。2人が子供につけた名前が証明しています。雨が雪に変わって真っ白な世界での再会、別れが本当に綺麗なフランス映画でした。
[ビデオ(字幕)] 8点(2006-05-31 22:39:25)
23.  死刑台のエレベーター(1958)
キャーッ!「禁じられた遊び」のミシェル少年が馬鹿チンピラになってしまったあー!(泣) しかし、ジャンヌ・モローは若いうちから凄い貫禄ですな。
[DVD(字幕)] 7点(2006-05-27 05:20:27)
24.  男と女(1966) 《ネタバレ》 
シンプルなストーリーをセンスだけで詩や絵画の域にしてしまえるのはフランス人の特権なんでしょうか。宮崎アニメやハリウッドがこれを作ったら超駄作になることは間違いないでしょう。モノクロもカラーも綺麗だし、アヌーク・エーメが綺麗ですね。バービードールみたいなハリウッド女優には絶対出せない人生経験を得た女性の色気。そして電報を受け取った後、段取りを考えてながら泥だらけのレース・カーを飛ばしてきたジャン・ルイは可愛くて健気。それにしてもスタントマンの亭主を一風変わった男ってレーサーのあなたが言うか・・・。あと大詰め、ジャン・ルイは乗換えと聞いた時、駅まで先回りすることを決めてたんでしょうか?何にせよ、直行便じゃなくて良かったね。
[DVD(字幕)] 8点(2006-05-21 04:01:14)
25.  刑事コロンボ/指輪の爪あと<TVM> 《ネタバレ》 
そっか、手の甲で裏ビンタしなければよかったんですね(笑)。カッとなって、とっさに裏ビンタが出るかどうかはともかく、この殺人は計画的じゃなかったので、多少、犯人の手が甘いのは仕方ないでしょう。でも、しれっと捜査に加わったり、ヤバいとなると、コロンボを探偵社に引き込もうとするのは悪くない手なんですが、逆に警部に探偵社の内情や、事件の担当社員を調べ回られてる始末です。大詰めの罠もコンタクトにジャガイモと、お得意のハッタリ含めて二重に用意して、「ホシにこのこと教えてやりたい。」とか、発言も終始余裕、最初の手相確認から最後の修理工場まで、完全にコロンボペースでした。なんか少し物足りないです。しかし、警部はホントに逮捕のためなら何でもしますね。墓を掘り起こすのは、火葬の国の一国民から見て、かなり怖かったです。ここで、レイ・ミランドが反対していたら、面白かったと思いますが、物分りがよすぎて、ちょっと残念でした。あとラストの彼、立ち直り早すぎ・・・でも、排気管を覗きたくなった気持ちはよく分かります。ところで警部は、あの後ちゃんと遅れずに免許更新出来たんでしょうか?
[DVD(吹替)] 6点(2006-05-15 19:05:12)
26.  羅生門(1950)
昔の作品は良かった。と懐古趣味に走りたくはないんですが、モノクロ時代の方が上質だった。と、どうしても感じてしまう監督の筆頭が黒澤監督ですね。映像綺麗、京マチ子綺麗、したたかに生き残ろうとする男女の念がここまで画面に映し出された作品もなかなかないです。森雅之も名優なんですがどうしても三船さんと京さんに比べると落ちますね。初めて観た時はどうしてここまでみんな大嘘つくのか?と思ったものですが、今の世の中、金さえありゃ犯罪者が大きな顔して大嘘ついて当たり前ですから、思い切り通じますね。やな世の中になったもんだ。それはそうと小説では「藪の中」も「羅生門」も両方あって、しかも別の作品なものですから、最初あれあれ?と混乱してしまったのを覚えてます。で、紛らわしいなあ全く。とちょっとだけ腹立ちました。・・・もっとも最初からオープニングの原作「藪の中」と出てたのをちゃんと見てればよかっただけなんですけどね・・・。
[DVD(吹替)] 8点(2006-05-10 19:33:34)
27.  大いなる幻影(1937) 《ネタバレ》 
将校相手とはいえ、現在の私達が持っているイメージからすれば、考えられないこの映画の捕虜収容所。結構みんな好き勝手やっていて楽しそうだし、敵のドイツ軍は紳士的で親しみさえ感じます。実際、第一次大戦の空軍はそれまでの戦争が持っていた、紳士的なルールや騎士道精神を相当重んじていたそうです。そして、それらは数ヶ国の帝国、皇帝や貴族と一緒に消えていきました。第一次大戦は、楔の役割があった特権階級が滅び、世界が混乱に突入する不吉な戦争でもあったんです。そんな中、貴族や平民、ユダヤ人、フランス人たちが階級や人種を超えて、協力し合うのも、大詰め、2人だけを脱走させるために、全員で笛を吹いて協力するのも、すごいヒューマニズムだと思いました。ドイツ人の農婦エルザも、敵のフランス兵2人を無償で匿います。脱走アクションものでも、リアルな戦争ものでもないこの映画。エルザと出会ってからは追われている緊迫感すらありません。善人ばかりが出てくる、この映画のどこからどこまでが幻影なのか?観ているうちに解らなくなってしまったのが悲しいです。 それにしても、この映画での怪優シュトロハイム演じるラウフェンシュタインの存在感は凄いです。脊椎をやられて、のけぞりながらお酒を飲む姿がたまりません。部下に上着を脱がせるところなどもコミカルで楽しいです。地味ながらピエール・フレネーも好演だし、お茶目なカレットら脇役陣が素晴らしいです。ジャン・ギャバンは他の俳優たちに食われた感がありますが、ローゼンタールとのコンビが素晴らしく、映画に華を添えています。強いていえば、音楽の使い方にだけ、ちょっと不満が残りますが、そんなのは些末なこと、後年の映画にやたらパクられまくる、名作の古典映画です。最後に蛇足ですが、女装の男に目が釘付けになってしまう状況はなかなか怖いと思いました。かなり笑えましたけど。
[DVD(字幕)] 9点(2006-03-06 08:17:02)(良:1票)
28.  西部戦線異状なし(1930) 《ネタバレ》 
ハリウッドがアメリカのアの字も出さずに、完全にドイツの立場から撮っている珍しい映画です。登場人物はドイツ人なのに英語をしゃべるし、名前を調べでもしておかないと、見分けがすごくつきづらく、マイナスポイントがかなり目立ちます(すぐ分かるのはポール、カット、ジャーデン、ウェスタスくらい)。なのに、それを差し引いても素晴らしい出来の戦争映画です。第一次大戦前までは、馬に乗る騎兵で敵陣に突入し、本当に英雄になる可能性もあったそうですが、この戦争では機関銃等、兵器が進化し、戦闘機や終盤では戦車が発明されてしまった上、何ヶ国も介入した結果、そもそもどこの戦争か分からないくらいメチャクチャな世界戦争になってしまいました(元々はセルビアとオーストリア)。中盤、ポールたちが束の間の休息を味わっている時に交わされる「なぜ国が攻撃する?ドイツの山がフランスの原を怒ってるのか?」と論争する場面は、現在とまったく変わらない状況が痛いです。 それにしても、エキストラの数、爆薬の量、塹壕のセット、砲撃、すべてが半端じゃなくリアルです。実際に本当に大ケガした人がいるんじゃないでしょうか。戦争体験者が制作側にいて、こういう映画を作らずにはいられない、やり場のない怒りを感じていたような気さえします。あと、この映画は窓や入り口が画面の中央になることが多く、構図的にも話としてもポイントになっていますが、塹壕の入口が砲撃で埋まりかけるところは、観ているこっちまで閉塞感を感じてしまいました。それと、カットやジャーデンたち古参兵は優しいいい人ばかりで、いじめがないのが意外でよかったです。そして、最後の蝶の場面。故郷を拒否し、友人たちを亡くし、生きる希望が見えなくなったポールが、魂の象徴の蝶に導かれるように手を伸ばす。それまでバックミュージックが全然ないのに、この場面は寂しげなハーモニカの音色が聞こえてきます。この演出は原作になく、誰のアイディアかは分かりませんが、映画史上に残る名場面でした。それにしても、つくづく戦争は映画だけにしてほしいです。
[DVD(字幕)] 9点(2006-01-22 00:37:21)(良:2票)
29.  オーケストラの少女 《ネタバレ》 
虚仮の一念で、がむしゃらに突き進み、結果オーライになるアメリカン・ドリームのひな型みたいな映画です。ちょっと上手くいきすぎじゃない?感を和らげるのは、この映画の場合は、ディアナ・ダービンの歌声と、ちょっとボサボサ頭のストコフスキー先生の指揮、そしてフィラデルフィア管の皆さまの演奏ですね。先生に号外が出るほどの経済効果があるかどうかは知りませんが、演技(地かも。)はなかなか達者でした。先生はグレタ・ガルボに求愛してフラれたそうですが、そのときも、あんな少ーし高飛車な態度だったんでしょうかね?あと、個人的には先生の指揮よりバッハのピアノ演奏の方が印象的でした。途中で止まって残念。 ダービン演じるパッツィのいいところ(?)は、周りの大人が足を引っ張りまくろうが、迷惑がられまくろうが、お構い無しに目的地へ突き進むところです。単純なストーリーがスピード感を増幅して、十分、今に通じます・・・つーか、失業楽団員ネタなら話は全然違いますが、最近アカデミー映画にありましたね(笑)。一般人の立場から観て、昔のアメリカンセレブはあんなだったのかな。と、少し苦笑しつつ、結局、パッツィの都合のいいように転がっていく展開が、爽快で楽しかったです。あと、フロスト氏のしょうもないイタズラが結構面白かったし、小粋なタクシーの運ちゃんが、とてもいい味でした。そして圧巻は、やっぱり最後のストコフスキー先生宅での交渉ですね。これは選曲が正解です。このせち辛い世の中だけど、8ドル40セントくらいなら、あんな粋な投資ができるかな。なんて、ちょっと元気をもらえるカンフル剤のような映画でした。それはそうとパッツィ、あなた学校は休暇中ですか?
[DVD(字幕)] 6点(2005-12-29 15:37:11)
30.  真昼の決闘 《ネタバレ》 
これは村の駐在さんがチンピラヤクザに狙われ村の衆に助けを求める話です。ジョン・ウェインのような骨太西部劇の無敵ヒーロー像や強い悪役、派手な銃撃戦に大アクションを期待する方が間違ってます。それにどんなへっぴり腰でも私から見れば銃を持っただけで人は怖いし、腕っ節よりも権力や人望があり、町の人が味方しない状況を見越している悪役の方が更に怖いです。もっとも駐在さんが年取っても格好いいゲイリー・クーパーだし、田舎町には掃き溜めに鶴のグレース・ケリーがヒロインじゃ勘違いもするわな。脇役みんな名優だし。それにしても現在の世の中は万能ではないにしろ、ある程度法律とかが守ってくれてるからいいんであって、そういうものがない何の保障もない世界での人間って脆いですね。ケーンが守ろうとしてたのは最初は自分と友人達で作った町だったかもしれないけど、彼らに見捨てられていく中、それでも守ろうとしたのは何だったのか。逃げても誰もケーンを責めないだろう状況下で彼が採った選択は人から見れば馬鹿かもしれないし、下らないかもしれない。でも多分ここで逃げたら、彼の中の何かが壊れて生きる屍になってしまう、そして一生自分に言い訳をし続けるんでしょう。最後は逆にケーンが町を見捨てました。文句も嫌味も何1つ言わずにただバッジを地面に落として。うーん、渋い、格好いい、立派な大人だ。彼らの代償は「あの時はああするしかなかったんだ。」「じゃあどうすればよかったんだ?」と言い訳と責任転嫁に終始するような見下げ果てた町になってしまったこと。間違ってはいないでしょう。でも何かが壊れました。ミラーのようなならず者はいくらでもいるし、町にはそういう奴らを望んでいる者もたくさんいる。もし再び同じような目に遭ったとしたら、この町の為に命を懸けられる人間はいるのか。ケーンは町の良い部分しか見ていなかったのかもしれないけど、信じていた世界に手の平を返され、たったの90分で崩壊して行く様を目の当たりにしてしまいました。素晴らしいけどとても残酷な映画です。
[DVD(字幕)] 10点(2005-12-22 03:50:09)(良:1票)
31.  手錠のまゝの脱獄 《ネタバレ》 
この邦題、完全に間違ってます。脱獄ものを期待した人が観たら、がっかりすることうけあいです。しかも、映画の主題まで脱走じゃないし。この映画は日常的に、さらっと人種差別を映していて怖いです。あの変な母親に至っては、当たり前のように白人のジョーカーにだけご飯を出して、カレンの分も持ってこいと言われると、いかにも渋々と用意します。カレンを囮にして、「なんでニグロのことで怒るの?」と、突っかかる場面も怖いです。そして、この母親と息子はなんか不気味です。囚人のように泥土の生活から出られず、夫にも逃げられ、病んでしまったと思われます。あと、「死体でも懸賞金はもらえるさ」と言ったリンチの町も怖いし、偏見丸出しの捜索隊が、最初から処刑するつもりでドーベルマンを連れているところも怖い・・・アメリカは根強い差別の国でもあるんだなと実感した次第です。そんな中、2人を庇った、手首に縛られた痕のあるビッグ・サムと、最後まで2人を無傷で捕らえようとしたマックス保安官が格好よかったです。 あと、この映画はラジオの音楽とポワチエの歌以外に音楽がないんですが、ポワチエの歌はお世辞にも上手じゃないです。せいぜい鐘2つ(笑)。なのに最後、保安官が来るのを見ながら歌う、あのやけっぱちのミシンの歌が素敵で上手に聞こえる不思議。保安官が銃をしまって少し笑うところ、スパッと幕を切ったようなエンディング。重いテーマなのに分かりやすく、説教臭くもなく、むしろ清々しい気分にさせられました。とても上手い映画です。あと、いつでも綺麗なまま、何本もポッケから出てくる煙草には笑えました。
[DVD(字幕)] 8点(2005-12-06 03:42:50)
32.  或る夜の出来事 《ネタバレ》 
エヴァンゲリオンのアスカはこの映画知ってたのかなぁ?と、しょうもないことを考えつつ観ましたが、初めて観た気がしないほど、後の映画に真似され続ける映画です。台詞が粋で、テンポも軽快、見せ場もたっぷり。クローデット・コルベール演じるエリーは、気が強くて、わがままで、美人じゃないけど、とてもエレガントでチャーミングです。途中からピーターをじっと見つめる姿が増えてきて、だんだん綺麗に見えてきます。バスを降りてから、川を渡って野宿する辺りは、背景までがきらめくように綺麗です。そして、文句言い放題だった彼女が人参をかじるシーンが秀逸でした。ゲーブル演じるピーターは機知に富んで、ユーモアがあって、紳士的です。正体を知る前から、なんとなく気にかけ、とんだ女に引っかかったと文句言いながら、エリーの世話を焼く姿が本当に上手いです。モーテルでのお芝居夫婦喧嘩(←上手かった)でブラウスのボタンを外したり留めたりしていたところで、実はもう深みにはまってたって感じがしますし、歯に挟まったワラを取ってあげてたところは、もうすでに実質的夫婦でしたね。エリーを迎えに車でモーテルへ向かいながら、浮かれて歌う姿が最高でした。ヒッチハイク等、有名すぎるシーンの数々は言うに及ばずですが、実は2人の間にキスシーン1つすらないのに(未遂あり)、ここまでロマンティックなコメディを作り上げたキャプラ監督もすごいです。実はとても粋でいい人だった(笑)編集長とエリーパパも良かったし、2人の姿を登場させずにハッピー・エンドを演出したのも憎い演出です。ジェリコの壁の上品でエロティックなオチには、思わずみんなにんまりしちゃうんじゃないでしょうか。最後にピーターに一言、♪曲芸の飛行機乗り♪に勝って、おめでとうございます♪あと、ドーナツの食べ方は私も実践してます。
[DVD(字幕)] 9点(2005-12-06 01:54:41)(良:2票)
33.  刑事コロンボ/構想の死角<TVM> 《ネタバレ》 
メルヴィル夫人の肖像画ってなんか怖いです。よく見ると、あのオフィスも肖像画の他にドクロとか、結構不気味な物がたくさん置いてあって怖いし、犯人と脅迫者がお酒飲んで話してるシーンも妙に室内が暗くて、影が多くて怖いです。そして、その脅迫者のラ・サンカさんがホラー映画のように不気味で怖いです。コロンボ警部が保険屋を脅迫するシーンはさり気に怖い・・・(いつもやってるね、絶対)。あと、あのホット・ドッグ屋は外装がなかなかです。おごるって言ってて領収書切らせるところが警部だなあ。あと、警部のチーズオムレツ、焼いてるところと出来上がりを見たかった。・・・え、ミステリー部分?借りた本が返す時、倍近くになってたところですか?・・・しーん・・・いや、えーと、なかなか周到で上手く出来てるんですけどね。今回、犯人が周到じゃないようで、確かにメルヴィル夫人がお冠になりそうです。口座の金の出し入れもあからさますぎるし、せめてサイン本とシャンパンの栓を回収するくらいの用心深さじゃないと、コロンボの敵ではありません。それはそうと警部、カミさんいるんだから保険くらいは入りましょうよ。
[DVD(吹替)] 6点(2005-11-18 01:09:41)(笑:1票)
34.  赤い風船 《ネタバレ》 
まるで上質の絵本のような作品です。まず「ここなんて町?」と知りたくなります。パリのモンマルトルと分かるとただ下町の雰囲気や匂いを満喫するのみ。安っぽいアニメーションで作れそうだけど、やめて下さいね。それにしてもなんて可愛くてお茶目な風船なんだ。出会いのシーン、あれは男の子が風船を助けたんじゃなくて、絶対風船が男の子を待ってたんですよ。その後も男の子の気を引こうとすれすれのところで身をかわしたり、隠れてみたり、教室や教会に入り込んで追い出されたり、あの女の子の青い風船とのシーンは40秒しかないのに映画史上屈指の名場面になってます。あんな友達と一緒なら憂鬱な雨降りが楽しくて、思わず雨上がりの町を一緒に駆けていきたくなりますね。大詰めなんて悪ガキ達が極悪人に見えたほど(苦笑)。男の子は手を離したのに風船は彼を心配して遠くへ行けない、その結果当たったパチンコが致命傷でゆっくり地面に落ちていく。子供の世界じゃこんな大変なことが起こっているのに大人から見ればただ風船をめぐって子供が無邪気に遊んでいるようにしか見えないんですね、特に常識ある立派な学校の先生は。そんな先生に対し、風船は仕返しするわけでなし、軽~く頭を小突くだけというところが素敵です。こんな風船はけしからんと捕まえようとする先生から痛快に身をかわし、今度は見ないフリしますが風船は見透かしたように彼の後をついていきます。「こりゃ一体なんだい?」「いや、なんでもないんだ。ではまた。」そんな会話が聞こえてきそうで生真面目先生すら微笑ましく映ってます。風船を殺した悪ガキたちに対しても同じ、仕返しなどしないで、風船の死を悼む男の子の元にだけ大勢で集まり、一体感に包まれながら空へ浮かび上がる。この映画に理屈も台詞も必要ないし、映画に特にラストにどんな解釈をするかは各人の自由です。少なくとも妙に懲りすぎる最近のアニメやファンタジーが持たない素晴らしさがあります。本当に風船に演技させた作家のラモリス監督の手腕と人情味豊かな古き良きモンマルトルが見事に融合していて、子供のうちは勿論、大人になっても手元に置きたいと思わせる絵本です。
[ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-15 03:41:56)(良:1票)
35.  エデンの東(1955) 《ネタバレ》 
これはジェームズ・ディーンの存在感につきる映画です。丸めた背中、すねた上目遣いの目、複雑で繊細な甘えたような感じ。好き嫌いは分かれると思いますが、彼には1度観たら忘れられない独自の空気があります。他のキャストも地味にいい感じですが、肝心の双子の兄役のリチャード・ダヴァロスがいまひとつ。完全にジェームズ・ディーンに食われていたのが残念です。 レイモンド・マッセイ演じる父親は確かに正しい人ですが、人の弱さや世渡りの上手さも悪として直そうとする偏狭的な考えの持ち主で、兄のアロンも以下同文。彼が弟を見る目は、こいつずるい、嫌い。と軽蔑しているのが丸見えで、弟をちまちまいじめる機会を逃しません。アブラは恋人のアロンに父親の指輪を川に捨てた話をしたかったと思います。でも、どうしても出来ない。こういうところにアブラの心変わりの原因があるんですが、彼は気付きもせず、全部弟のせいにしてしまいます。それに対する弟の仕返しが凄いです。兄はそれまでの勢いはどこへやら、借りてきた猫みたいに大人しく連れて行かれ、母親と対峙し、180度反転してしまいます。優等生のコケ方は大きいですね。最後のガラスを割ったシーンは秀逸です。父も兄も致命傷を負いました。最初、観た時はアロンが無事に帰ってくれればいいなと思いましたが、2度目に観た時、割れたガラスから首を出したまま行ってしまうシーンが、まるで断頭台の処刑に見えてしまい、ああ、彼はもう帰ってこないんじゃないかと思いました。結果として、弟は兄を追放して死に追いやり、父も追いつめたことになります。母親もおそらく、致命傷を負ったんじゃないでしょうか。確かにキャルは父を看取った後はこの町を出て、何らかの形で償うべきなのでしょう。そしてアブラも自分が原因の一端だと罪悪感を持って生きるのだと思います。ただ彼女は、この刺し違えた家族の、最後の崩壊を防ぐクッション役になり、少しだけ救われた感じです。でも、最後に場を収めたのが、あのしようもない看護婦だったということが1番面白かったです。
[DVD(字幕)] 8点(2005-11-09 01:01:16)(良:2票)
36.  シェーン 《ネタバレ》 
水と緑が綺麗なロッキー山脈のふもとが舞台の珍しい西部劇です。中身も監督がジョージ・スティーブンスだけあって、ホームドラマ重視に仕上がっています。ていうか、これはアメリカ版股旅物だ、任侠物ですね。それに子供の視点から見ていて分かりやすく出来ています。ケンカのオーバーアクションや、やたら大きい効果音も、ジョーイ少年の視点。俳優は父親のヴァン・ヘフリンからライカー役のエミール・メイヤー、コーヒーを飲む殺し屋ジャック・パランス、そして2匹の犬に至るまで名優ぞろい。そして、本名を名乗らない主役のシェーンの存在が大きかったです。 ところで、小さい男の子が成長過程でヒーロー像を求めるのは自然のことなんですが、ジョーイ少年のシェーンへの期待は凄かったです。瞬きもせずにシェーンを見詰め続け、「シェーンは強いよね。」「痛みなんてへっちゃらだよね。」「臆病じゃないよね。」「逃げたりしないよね。」「勝つと思っていたよ。」と、雨嵐のように期待をぶつけます。彼は唐突に知らない子供に、不死身で無敵の特撮ヒーロー像を求められてしまいました。時代が変わったことを受け入れ、殻を破ろうとして果たせなかったシェーンは、せめてジョーイの期待に応えようと努力したのでしょう。かくして、彼は2階から撃たれたときに怪我したと思われるのに、たいしたことないとやせ我慢をし、「正直で強い男になれよ。」と、少年を励まして去るのでした。しかも最後までジョーイ少年は「本気だったら撃たれなかったよね。」「あいつ、抜く暇もなかったよね。」と、懸命に自分のヒーロー像をキープしようとしていたのでした。・・・気の毒に・・・私にはある意味、ライカーや殺し屋ウィルソンよりもジョーイ少年の方が怖かったですよ。あの後、シェーンが無事に別の町に行けたことを祈ります。
[ビデオ(字幕)] 8点(2005-10-14 22:01:35)
37.  旅情(1955) 《ネタバレ》 
ベニスは綺麗だなあ。ヘップバーンは演技上手いなあ。イタリア男はミもフタもない言い方の口説きするなあ。と、感心して観ていました。浮気や不倫をあそこまで堂々と健康的に演説されたら、反論するエネルギーが勿体なく感じてしまう。息子も父は貴女に夢中なんて、さらっと言うし、マウロも将来有望そうだし、ベニスという町がそうさせるのか、大方のイタリア男性がそうなのか知りませんけど、ともかくこの映画のおかげでゴンドラとラビオリのイメージが180℃変わりました(苦笑)。 ところで、日本ではヘップバーンといったらオードリーですが、アメリカじゃキャサリンだそうです。確かに美人じゃないけど、日本人の私にも解るほどの流暢な英語の発音、寂しい時の演技、足の組み方やブラッツィと踊っているときの指先や表情、この時ヘップバーン48歳だったそうですが、彼女が可愛く見えてしまったほど、べらぼうに上手いです。一方のロッサノ・ブラッツィは39歳、ヘップバーンの脚線美を見る目がいやらしくて(すみません。)、はまり役でした。手に出来なかったクチナシや1つだけのゴブレットに象徴される、実を結ばない恋に共感するか、一歩引いてしまうかは観る人次第ですけど、スパッとした別れの言葉のタイミングの見事さと潔さには、引き込まれてしまうと思います。そして、ベニスの美しい映像とありきたりのメロドラマがこれだけマッチして、名画になった例はまずありません。ただ、やっぱりこの映画は、ちょっと年を経て、年代の差を実感するような年齢になったらお薦めします。ああ、この映画の味をわかる年になったんだなあ。と寂しさが混じった感慨の心ひとしおになれます。まあ、無理にとは言いませんが(笑)。
[DVD(字幕)] 9点(2005-10-02 11:45:53)(良:1票)
38.  刑事コロンボ/死者の身代金<TVM> 《ネタバレ》 
コロンボシリーズ第2話、今回の犯人はおそらく、どん底から法曹界を這い上ってきた女弁護士レスリー。前回と同様、中々の強者です。しかし、この犯人が憎らしいのは、眉一つ動かさずに夫を撃った最初だけです。やがて留学先から、夫の連れ子マーガレットが敵意むき出しで帰ってきた時点で分かる気がしてしまいました。いつものように話をはぐらかすコロンボに対して、レスリーは犯人+大人の対応、マーガレットは「私は真面目なんですよ!」・・・アメリカ人でもジョークが通じないタイプはいるんだなあと感心してしまいましたが、こんな2人が合うわけがない。なんにせよ、女同士のバトルはコロンボと違ってドロドロで直情的、なかなか見応えがありました・・・ていうか、怖い!子供(発育はいいですが)とはいえ、よくもまあ娘を殺す気にならなかったものです。しかし、このバトルを裏から糸引いて、漁夫の利とばかりに犯人を掠め取った警部が1番怖いです。それでいて、ビリヤードが上手いなあと思っていたら、手玉まで落とすあのとぼけた味がたまりません。ルートビア(吹き替えだとグレープジュース)や3ドル50セントのオチもよかったし。それにしても、空港のゲートを楽しそうに通ったマーガレットはレスリー逮捕の知らせを嬉々として受け取ったんでしょうね。どうか、あまりコチコチの嫌~な大人にならないでね。
[DVD(吹替)] 6点(2005-09-21 00:07:32)
39.  キートンの大列車追跡 《ネタバレ》 
「蒸気機関車は石炭を食べ水を飲む。人間に近いから好きだ。」とあるSLファンがTVで言ってたのを思い出しました。この映画では石炭よりも前の焚き木の時代です。つまり遅いです。レールもチャチです。でもだからこそ、のんびりした追走劇と走りだすと忍者の如きキートンの名人芸を堪能できます。逃げる側はその辺のものを落としたり壊したり、貨車を切り離したりして障害物を作る。追う側は列車からその都度降りてブツを退かし、ポイントを切り替える。線路脇には所々、焚き木が積んであるし、手動の給水槽がある。走り出した列車を足や自転車で走って追いかけて、おいこれで追いつくのかと思ってたら、追いつくし(笑)。薪割りに夢中になって敵地に入ったことに気付かなかったり、ホントのんびり。毒もあります。人死ななくていいなあ。と思ってたらラスト近くの10分間で結構死ぬし、それをギャグにしているし。この映画は公開当時、悪趣味だと酷評されたそうですがこの辺が原因かな?でも無理に戦争を美化しないところにキートンの戦争に対する見解があると思います。ラストは軍人になれてハッピー・エンドだけど、南軍は戦争に負けるという事を知っていて、主役の設定を北軍にしなかったところがキートンらしいです。個人的にはキートンがフラれたり、みんなが行っちゃった後にポツンと佇んでいる姿が好きです。逆に1人で走ってたらいつの間にか沢山いた、ってのも好きですが。ここでは軍隊に入れず恋人に絶交された後、キートンが機関車の主連棒(というのかな?)に座ってたら動き出すところがなんかいいです。SLに乗るならあの棒に座ってみたいなあ。あ、もちろん車庫入れ速度で。
[DVD(字幕)] 9点(2005-09-20 01:04:07)
40.  禁じられた遊び(1952) 《ネタバレ》 
これはなかなかすごい恋愛映画ですね。パリジェンヌ、ポレットに憧れる田舎の貧しい少年ミシェル。彼女に十字架を貢ぎまくる彼の姿は一途過ぎて悲しいです。教会で2人が見つめ合うシーンがありますけど、相手は子供なのに(子供だから?)とても綺麗で思わずドキッとした人は多いと思います。 この映画でポレットは死んだ母親の頬を不思議そうに撫でた後、痙攣を起こした犬だけを抱いて、歩き出してしまいます。母親と同じ柄のお揃いの服を着ていることからも、仲のいい親子だったことは明白で、ここからポレットは現実を受け入れられず、非現実の世界に入ったと思われます。グリム童話のように森を彷徨い、ミシェルと出会ってドレ一家に置いてもらった夜、彼女はうなされ、悲鳴を上げて目を覚まします。翌日からポレットは「村長」のいる水車小屋でミシェルと墓を作り、十字架をかけ、祈りを捧げる作業に没頭します。その後、彼女はうなされません。子供なりに犬の墓作りから彼女が必死に喪の儀式に取り組んでいることが分かります。でも肉親の死は犬の葬儀だけで収まるわけもなく、エスカレートしていきます。最後に優しかったドレ一家に見放され、ミシェルと引き離された駅の雑踏の中で、ポレットは唐突に非現実の世界から現実に引き戻されます。両親の死後、初めて「ママ・・・」と涙ぐむのです。こうなると、ああ、やっぱりこれは反戦映画なんだと思います。ミシェルはポレットのネックレスと秘密を100年預かってくれと梟に渡しました。墓穴に落ちても喧嘩をやめない、隣人同士の滑稽で醜い争い。あっさりとミシェルとの約束を破った大人たちの狡さや、子供たちの無邪気で残酷な処世術。そして、いまだに止まない戦争。叡智の象徴の梟の目に、これらはどう映るのか。梟はただ静かに黙って見ているだけです。きっと今も。
[DVD(字幕)] 9点(2005-09-12 23:56:31)(良:2票)
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