21. フラガール
《ネタバレ》 テーマ自体が非常に興味深いのですが、脚本がそれに見合っていないという印象でした。・・・・・典型的なのは、駅のホームで松雪を呼び止めようとするダンスのシーン。ゆったりとした美しい踊りです。前半の方で松雪に仕草の意味を解説させています。見る方は、それを曖昧ではあっても覚えている筈で、その空間と映像を楽しもうとしていると、車中の松雪に仕草の意味を語らせてしまう。するとその空間と映像は言葉によって破壊されてしまう。・・・・・・最大の問題は、リズム感のある踊りとゆったりとした踊りとのバランスが配慮されていないことかもしれません。だから全編を通じて、フラダンスが魅力的なものに感じ取れない。後半で富司純子が見る蒼井の踊りも、「花とアリス」での踊りと較べると美しくもなんともない・・・・・また、色々な要素、サービスを入れ込みすぎで、全体としての調和、統一に欠けている印象も強いです。・・・富司純子は浮いちゃっていますね。どうしてストーブを集め始めるのかもわかりにくい。また会場の木陰に隠れてステージを見るシーンは漫画です。・・・・それに寺島進の役どころもなんだかわかりにくい。後半の橋の上のシーンもどういう意図なのでしょう。・・・・・・・・興味深いテーマなのに、奥深さのない映画でした。 [DVD(邦画)] 7点(2007-12-04 12:19:10) |
22. 300 <スリーハンドレッド>
これを映画といって良いのだろうか。・・・・なんていったら、映画の概念を覆す革命的な作品だといって褒めることらになってしまうかもしれません。・・・・おじさんになると、こういうのを楽しむ精力はもはやありません。・・・・・・重装歩兵の戦いぶりを見せてくれるかと思ったら、最初だけだったし、、、カルタゴの軍隊のように象が出てきたり、蒙古軍のように火薬を使ったり、イスラームのような装束だったり、、、評議会の風情はローマそのものだし、あげくは能面をかぶった二刀流の忍者が出てきたり、、、、、ラストの倒れたレオニダスは十字架のキリストのイメージだし、、、、、音楽はどっかで聴いたたことがあるような定番で、、、、、自由だの、家族だの、自己犠牲だのアメリカ的な価値を叫びまくり、、、、、血しぶきだとかは大昔の黒澤流なだけで、、、、、間道を教えて裏切るキャラはロードオブザリングそのままだし、、、、、アメリカ映画に想像力が殆ど枯渇している現状を象徴しているような作品でした。 [DVD(字幕)] 2点(2007-12-02 03:43:40)(良:1票) |
23. カポーティ
《ネタバレ》 絵は綺麗です。音楽も静かなピアノが絵とマッチして素敵です。主演男優賞の演技も見事です。・・・・・ただ、『冷血』についてのある程度の予備情報がないと、特に最初の部分の断片的な展開など、理解に苦しむと思われます。・・・・・更に、この映画は、何について表現したかったのだろうか、と見終えて、思いました。カポーティが事件に接したアンヴィバレントな態度なのだろうか。(→犯人に示した共鳴敵部分と、作品完成のために犯人の処刑を待つような部分との矛盾など)・・・・例えば「アラバマ物語」に対してカポーティが示す無関心は、彼がヒューマニストで無いことをアピールしています。・・・・だけど、猟奇的な事件だから取材を開始した最初から、そんなこと自明なことではないだろうか。・・・・・僕は、カポーティは、事件と深く関わるうちに、想像から仮設されるフィクションよりも、現実の出来事の方が圧倒的に劇的であることに心を奪われていったのではないかと思う。そして作品を完成させた後、これよりも劇的な作品をどうやって創作できるかに腐心し、もがいていったのではないかと思う。だとすると、処刑直前の犯人と面接するカポーティはああいう乱れ方にはならないんじゃないの、と思うし、処刑に立ち会ったカポーティは、そのある種の劇的さにエクスタシーを感じたに違いないと思う。・・・・・処刑直前の犯人たちの演技が、表情とか平板でした。 [DVD(字幕)] 8点(2007-10-14 10:11:26) |
24. 西部戦線異状なし(1930)
塹壕戦の様子、病院の状況、銃後の老人たちの好戦的な態度、一時の青年たちの熱狂、などなど第一次大戦の様子を実に目配り良く描き出しています。そして自宅で蝶の標本を伏線として使い、最後のシーンを説得力あるものにしています。反戦の映画としては金字塔といえるものと思いました。・・・・・・・・ただ、ドイツでは徴兵制が敷かれていた筈で、大量動員には予備役を使うだけであり、青年たちが熱狂的に徴募に応じるというのはイギリスの話しではないかと思いましたし、ドイツの軍隊では士官の大半は貴族であり、軍隊全体に身分制の雰囲気が浸透していたはずですから、郵便屋の話しも少し変だなぁと思いました。 [DVD(字幕)] 10点(2007-09-23 11:28:22) |
25. ソドムの市(1975)
《ネタバレ》 ・・・・・・なんていうか、これは凄いです。おしっこは飲むは、うんこ食べるは、舌をちょん切るは、目の玉えぐり出すは・・・・・・正視に耐えない映像です。畜人ヤプーの世界そのものです。・・・・よくこんな映画が存在する、という驚きの念がまずわきます。21世紀の現代だと、法に触れずにこんな映画を作ることはできないでしょう。・・・・・いやほんと、役者さん達も、よくこんな映画に出演したものです。本当にご苦労さんです。・・・・・・・とはいえ、これほどまでに強い「告発」の映画は他にはないかもしれません。・・・・・それはファシズムに対する告発というのではありません。(ファシズムはたんなる表面的な題材にすぎないでしょう)・・・人間の欲望に対する告発です。・・・・人間の性欲を冷徹に描き告発する、パゾリーニ自身の中にある性癖を告発する、この映画を楽しく見る人を、あんたも結局同じだと告発する、・・・・そして最後には、神まで告発されています。・・・・ファシズムの暴虐に対して神は何も救いの手をさしのべなかった。それどころか遠くで神はそれを楽しんで見ていたのではないか、という告発です。・・・・・・・自分自身にまで向けた、こんな激しい告発の映画を作ったら、作者はもはや生きていけないでしょう。・・・・最後の方でピアノ弾きが投身自殺をしますが、あれはパゾリーニ自身ではないかと思えました。 [DVD(字幕)] 10点(2007-07-14 10:22:55)(良:1票) |
26. 硫黄島からの手紙
《ネタバレ》 イーストウッドの映画が面白いと思えるかどうかは、結局、そのテーマについての価値判断を彼と共有できるかどうかで極端に変わってしまうようです。・・・・私は、「ミスティック~」も「ミリオンダラー~」も嫌いでした。家族や人生などについての彼のカウボーイ的考えに共感できなかったため、イーストウッド流のドラマトゥルギーで悲劇仕立てに語られてしまうと、嫌悪感が刺激されてしまうからです。・・・・・・硫黄島二作品では、国家や戦争についての、彼の、西部カウボーイ的反国家主義に基づく考え方に共感できる部分があります。そうなると、彼の悲劇的ドラマトゥルギーは、非常に素晴らしいものに感じられます。・・・・だんだんと洞窟の中の兵士達にシンパサイズし始め、戦争の息苦しさ、恐怖が実感できるようです。・・・・獅童(=悪)を、生き残らせるのは、善なるもの(二宮)だけが生き残るのでは、不合理なこの世の姿とかけ離れてしまうからでしょう。・・・・・渡辺謙が、サムライとして死ぬ特権も剥奪される最後も劇的ですね。・・・・ただ謙さんの演技は最近どうも平板に感じられてしまいます。本当に理知的な軍人だったら、最後に万歳アタックなんかせず、部下には投降を促すのではないかなぁ。栗林さんの駄目な部分も、ジョニクロ飲んでるだけじゃなくて、表情、雰囲気で出して貰わないと、と思うのでした。・・・・・とはいえ、この二作品が戦争映画の不朽の名作になるだろうことは疑いを得ないと思いました。 [DVD(邦画)] 10点(2007-06-16 11:50:57) |
27. CASSHERN
唐沢俊一氏がどこかで、キャシャーンは、映画ファンからは総スカンを食らったが、アニメファン(→原作アニメという意味ではなく、アニメオタクという意味)からは絶賛されている、といっていました。そこで、自分がアニメオタクの感性は持っていないことを確かめるために、どれどれ、と思って見ました。・・・・・・出だしから、ナチズムの安易なイメージ化のようであり、やっぱり、と思っていたのですが、・・・やがて、これは少なくとも「ハウルの動く城」よりはましだ、と思い始め、・・・・ついには、なかなか面白いではないか、と感じるようになってしまいました。・・・・アニメではなく、普通の映画でもなく、むしろ芝居の延長にあるような作品でした。そして劇的と感じられる部分が幾つかありました。・・・・・ただ、冗長ですね。愛だの憎しみだのと、同じことを叫び続けると、言葉の持つインパクトがだんだん弱くなって、かえって逆効果でしょう。・・・・・・ということで私の感性は、アニメオタクの感性に近いのかもしれない。ショック。 [DVD(邦画)] 9点(2007-06-10 22:42:50) |
28. 機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編
《ネタバレ》 貧乏でテレビがなかったので、テレビは未見-----(嘘)-----とはいえ、Ⅲの後半は、硬直して画面に見入ってしまいました。----Ⅰ、Ⅱはそれ自体としてはいまいちでしたが、Ⅰ、ⅡがないとⅢが生きてこないのも確かでしょう----ガンダムの一つの特徴は、ランバ・ラル、マチルダ、スレッガー、ウッディーなど、味のある登場人物が、次々と戦死してしまうところかもしれません。そして最後には、ホワイトベース、ガンダムまで破壊されてしまう。----(破壊され横たわっているガンダムの姿を上から見下ろすところとか、言葉には表現できない感情がわき上がります)-----そして、最後にアムロは、仲間を受け入れることで、仲間からも承認され、融和し、涙する。----宇宙空間に浮きつつ、ジワッと溢れてくる涙は、確かに、アニメでしか描くことができないものだと思いました。 [DVD(邦画)] 10点(2007-04-22 14:13:31) |
29. ハウルの動く城
久しぶりに見直しましたが、やっぱり酷い。途中からは、我集院さん(=カルシファー=千尋のカエル)の声だけが楽しみでした。・・・・・それと強いて良かったところといえば、城の立体感と、何度か出てくる、上空から立体的に丘を動きながら構成するところが技術的に見事だというくらいでしょうか。・・・・・・まあ、誰でも全作品で成功するとは限らないわけですから、仕方ないのでしょう。・・・・とはいえ、こういう酷い作品を見せられてしまうと、結局、宮崎っていう人は、ただの優れたアニメーター(技術屋)にすぎなかったのかもしれない、という寂しい疑いがわき上がってしまいました。・・・・・老人の視点云々といいつつ、年を積み重ねたことに積極的な意味は全く与えられず、若いのが美しくていいという視点が一貫してしまっているし、、、、、、、ここでの反戦には、何の思想性もなく、これまでの宮崎の反戦的なポーズはただの見せかけだったのではないかと思わせてしまうし、、、。そして全編を通じて、美しいと思えるシーンが全くない。・・・・・・これは本当に宮崎の作品だったのでしょうか????? [DVD(邦画)] 3点(2007-04-20 23:41:13) |
30. さらば、わが愛/覇王別姫
《ネタバレ》 劇中劇と現実が渾然一体となり、ほんとうに項羽と虞姫が2000年の時を越えて現れたかのような錯覚を覚えさせる、、、、というのが映画全体としての狙いではないかと受け取れました。というのも、蝶衣が一番最後に自刃することや、最初と最後に観客のない、幻想性のあるシーンを設定してあることなどは、そうでないと説明できないように思うからです。・・・・そして、全体として、中国版の『旅芸人の記録』だとも受け取れました。・・映像も美しい。蝶衣は本当に綺麗だ。中国の激動の歴史もよく伝わる。・・・・では、その狙いは成功しているのか、と問われたら、わたしは、あまり成功していない、と答えたいです。・・・どうしてかというと、項羽と虞姫の史実よりも、蝶衣と小樓が生きてきた、波濤の中国現代史の方が、遙かに重く感じられてしまうから。・・・・特に、文化大革命の時に、お互いを罵りあい、かつ菊仙が縊死するという、あまりに重たい現実。これを華やかな京劇に包み込んで、項羽と虞姫の史実と一体化させようとしても、その現実の方が、あまりに大きくて重い。・・・・・結果として、この文革の現実を乗り越えて、蝶衣がどうして愛を継続させることができたのか、というところがわからない。また、虞姫は蝶衣に十分に重なるとしても、小樓は項羽とは重なりにくいし、また小樓の蝶衣に対しての愛情が十分に伝わってこず、蝶衣の片思いの話しでは、項羽と虞姫には重ならない。・・・・・・まとめてしまえば、この映画は、最初と最後のシーンのアイデアから出発したのではないかと疑わせますが、製作の過程で、中身が、最初のアイデアを遙かに凌駕してしまったのではないか、そのために全体としてのまとまりに今ひとつ欠けてしまったと思いました。蝶衣の自刃がないと話しにけりがつかないけど、余計だ、と思うのです。 [DVD(字幕)] 9点(2007-04-03 13:21:09)(良:2票) |
31. 裁かるゝジャンヌ
原題はジャンヌのpassion、つまり受難ということですから、ジャンヌの話に、キリストの受難を重ね合わせて見てくれ、というのでしょう。音楽も受難曲風にそうした効果を一層高めているように思いました。・・・・・・そうすると、キリストが人間の罪を背負って処刑されたように、ジャンヌの焚刑はフランスの栄光と引き替えであったことになるのでしょう。・・・・また作成は1928年です。これを当時、見たヨーロッパの人達は、身近に、第一次世界大戦で国家のために命を落とした人がいた筈で、そういう命を落とした人とジャンヌを重ね合わせて見たのではないでしょうか。・・・・・ジャンヌが勇ましい英雄ではなく、涙を流す、どこにでもいる普通の女性として描かれることで、戦争の犠牲者とジャンヌは、一層、重ね合わせやすくなっています。キリスト、15世紀のジャンヌ、20世紀の戦争という時間の重層性により支えられている、この映像の空間の奥行きはなんと深いことでしょう。・・・・・・しかし、グローバル化が進む現在、国家のために命を賭けるということは、即座に美しいこととは感じられなくなつています。そうした点からは、ジャンヌの物語は、過去のものになりつつあるのでしょう。・・・・・また表情のアップなどの映像、目をむいたジャンヌなどは、当時にあっては斬新なのでしょうが、現代のものとしてはかなりくどい。・・・・・・・ということで、全てにおいて歴史的な作品、古典的作品ということだと思います。面白く見られるかどうかは、想像力を発揮して、1928年という状況に身をおけるかどうかによって決まると思います。・・・・・(その時代を実際に生きてきた淀川さんと、そうではない僕たちとでは、違った見え方がして当然ではないだろうか) [DVD(字幕)] 8点(2007-03-25 10:07:01) |
32. いつか読書する日
《ネタバレ》 あるラジオ番組で絶賛している人がいたのと、2005年キネマ旬報ベストテン第三位の作品ということで、かなり期待して見ました。・・しかし、面白いとは全く思えませんでした。その理由は以下の通りです。・・・1. 岸部が牛乳を一口飲んで捨てるというシーン。→人が苦労して配達した牛乳を殆どそのまま捨てるという光景自体が、醜い。そしてそれは岸部が、田中のことを好んでいないということを明白に伝えている。・・・通勤のシーンなどで、岸部が田中を意識しているというようにも思われるが、岸部が妻の手を握って寝たりすることを考えれば、岸部が田中のことをずっと思っていたなどということはあり得ない。・・2. 唐突な展開の多さ。→1)深夜放送のシーン。どうして容子が一人ベッドで深夜放送を聴くことになるのか、また田中と同じ放送をどうして聴いているのか、またそれが田中とどうしてわかるのか。2)最後の岸部の死のシーン。どうして田中は、人が溺れたと聞いてそれが岸部ではないかと思うのか。そもそも保護された子どもがどうして川辺にいて水にはまるのか。・・・3. 田中が30年間、岸部を思うというのも、考えてみれば悲惨な話。そういうのを美しいと思うのは、男の父権的、貞節イデオロギーに根ざしているのではないだろうか。4. 容子の死が間近になったとき、岸部が、容子に、そろそろ休暇をとろう、という。これは夫婦で、死について十分に話し合ってきた結果として出てくるはずであり、それだけ夫婦の絆の強さを思わせるが、岸部はどうして息子の絵を売って、夫婦としての歴史を清算しようとするのか。5.その場の思いつきのセリフが多いこと・・・1)疲れて何も考えずに寝る、といいながら、しっかり読書している。・2) 50歳から85歳が長いか、という発言をさせておいて、岸部をあっさり死なせている・・ 5. 「いつか読書する日」という題名が意味不明。・・・この「いつか」というのは過去経験の事柄に対して用いているのか、それとも未来に対して用いているのか。過去ならば、「いつか」ではなく、せめて「いつしか」くらいにしないと、過去の経験とは思えない。また仮にそうだとしたら、実際の社会とのコミュニケーションを欠いた、読書空間を評価するのは、現実逃避を評価するようなもの。・・・・・・・・とにかく、全体として、どういうことを表現したかったのかが全く理解できませんでした。 [DVD(邦画)] 3点(2007-03-17 14:40:57)(笑:1票) |
33. イブラヒムおじさんとコーランの花たち
ただひたすら、老いたオマー・シャリフを見るための映画でしかない、と思いました。・・・・・・それ以外は、パリの裏通りやトルコやらの、色々な風景がそれなりに綺麗なだけで、ストーリーも展開も、とてもつまらない。・・・・・でも、老いたオマー・シャリフは見るに値する。・・・・・・・ロレンスやジバゴのオマー・シャリフです。・・・・ドクトルジバゴの最後のシーンで、老いたジバゴは、路面電車からラーラの姿を見たかと思って老いかけ、倒れます。あの老いたジバゴと、この映画のオマーシャリフは、違う。・・・・もちろん、老いたジバゴは、若いオマーシャリフのメークからなっているけど、実際の老いたオマーシャリフよりも、もっと、もっと孤独で、心がすさんでいるいるように見えた。・・・・・・実際の老いたオマーシャリフは、なんと心広く、豊かに年をとったことだろう。ヨーロッパの現状である文化差別、貧富の差などを全部つつみこんで、なおにこやかにしてしている、そういう広さと深さが、この映画のオマー・シャリフから伝わってくるようでした。・・・・・・・(もしオマーシャリフ以外の配役だったら、2点とか3点をつけてもいい映画かもしれません) [DVD(字幕)] 8点(2007-03-14 14:30:22) |
34. DEATH NOTE デスノート(2006)
《ネタバレ》 原作未読。見てて思いました。原作の漫画なら、納得できるだろうし、もっと、もっと面白いんだろうなぁと。・・・・・どうして実写にしたんでしょう??? ・・・ぷんすかぷんと思うのは、製作者が、全く、実写と漫画の違いを考えていないように思われる点です。・・・・・漫画なら、一人の人間が、色々と想像力を働かせて、表現していいんです。しかし、色々な人が力を合わせ、しかも、リアリティに漫画よりは近い実写の映画というのは、違うんじゃないだろうか。・・・・・・結局、これ、映画にしたら、儲かるぞ、みたいな根性しか見えてきません。しかも、そこそこ低予算で、儲けよう、という根性まるだしです。・・・・・・・・夜神の家は、リビングも月の部屋も全く生活感はないし、南空さんは、頭を撃って自殺しても血が全く流れ出てこないし、全てが子どもっぽいというか、(そりゃ、美術館でロケすりゃ、血をどろどろ流せませんが、こだわって実写にするなら、美術館以外の設定だっていいし、美術館でも工夫のしようはあるかもしれないし、とにかく安易なんですっ。)・・・・・BSで携帯デカシリーズを見ているのと殆ど変わらないというか、漫画のコナンを見ている方がしっくり来るというか、、、。それに、月くん、現役の学生で司法試験に受かったにしては字が拙いというか、あんな感じで書いていたのでは、論文試験は通りません。 [DVD(邦画)] 2点(2007-03-07 19:41:58)(良:1票) |
35. ダ・ヴィンチ・コード
原作未読につきわけがわかりませんでした。・・・・・・キリスト教の教義ではイエスは神であり、同時に人間です。だから子どもがいたって、別にいいんです。神ですから、性交渉しなくたって子どもくらいできるんです。人が殺し合うような問題ではありません。・・・・・・・血統うんぬんというのはゲルマン的伝統であり、キリスト教本来の感性とは無縁です。だから仮にイエスの子孫がいても、どうということはありません。・・・・・・もう2000年もたっているのです、仮にイエスに子孫がいたら、私たちの中にだって、超ほんの少しだけ、それが混じっているなんていうことだって、あるある大事典です。・・・・・・・・・・音楽が凡庸ですね。教会の内部の映像とかは綺麗ですね。・・・・・・そもそもイエスの子孫を守ってきたのは、イエスは人間だった派なんでしょうから、水の上を歩けるなんて思っていないわけで、最後にあの女の子に水の上は歩けないといわれちゃうと、おまえ実は何にもわかってないんじゃないの、とつっこみたくなるわけです。・・・・・ことほどさように、全編、ばらばらのイメージの連続で、一貫しているものは、げへへへへへへ・儲けてやるっちゃ、という浅ましい欲得だけだと感じられてしまいます。 [DVD(字幕)] 3点(2007-01-31 11:41:33)(良:1票) |
36. 花とアリス〈劇場版〉
《ネタバレ》 最初の30分ほどは、これまでの岩井作品イメージの延長でみていたこともあって、めちゃくちゃ気持ち悪い映画でした。・・・・・カメラのなめるような視線に、率直に言って、なんだぁ、このエロじじいぃ、と思いました。・・・・・過去の思い出をねつ造してゆくという、中盤から、そこそこ平静にみられるようになります。・・・・・・海辺でのハートのエースの話しのあたりから、なかなかよくなります。自分の大事なものを、認めてもらいたい人に長い間見つけてもらえない、という気持ちが、映像と音楽でより新鮮に感じられたからです。・・・・・そしてなんといっても蒼井優のバレエシーンです。これまでバレエをみても美しいと思ったことは正直ありませんでしたが、これは美しい。ほんとに素晴らしい。・・・・それは、アリスがどんな暮らしをしてきたか、どんな家族環境にあるのか、オーディションでどれだけ落とされてきたか、というのを見せられているからでしょう。・・・・・・・だから、どんな子でも美しく輝ける時があるのだ、という思いが、蒼井優のバレエを見ていて圧倒的に伝わってくるのです。・・・・・・リリイシュシュとこの映画との比較は非常に興味深い事柄です。おそらくリリィシュシュの方が、詰まっているものは多いし、個々の現実をよく反映しているのでしょう。しかし、花とアリスの方が、個人的には遙かに深く心を打つのではないだろうか、と思います。なぜだろう。 [DVD(邦画)] 10点(2007-01-28 11:05:28) |
37. 嫌われ松子の一生
《ネタバレ》 いやぁ、テンポは良いし、よくできた映画でした。それに、中谷美紀は頑張りましたねぇ。・・・・・・だけど、毒だらけの映画というか、アンチ三丁目の映画というか、positiveなところは何もない映画というか、根底に怒りと諦めを抱えた映画というか、、、、、、、。「何を与えられるかでなく、何を与えるかが大事」という、ケネディの有名な演説のパロディが出てきたあたりで、この映画の私なりの解釈というか、見方が定まりました。・・・・要するに、最初から最後まで、この松子ってやつは馬鹿なやつだ、ゲハハハハハ、全く主体性もなく、いつも受け身で、それでいていつも正直で、真面目で、要するに、死ななきゃ治らんぜ、どはははは、という感じで、見なきゃいけないわけです。感動したり、同感できるシーンは皆無です。・・・・馬鹿だね、酷いね、と見なきゃいけないわけです。・・・・・・・何か具体的に、ポジティブにいいたいことがあるわけでなく、「人生なんかに意味はないのさ」と、徹底して相対化したとき、見る人、それぞれに何か、思うところが残ればいいじゃないか、というのが監督の立場ではないかと思いました。・・・・・・・そうやってみるとき、例えば、片平なぎさを笑いながら、彼女がアイドルだった頃を思い出し、人間綺麗には生きられないさ、ということに気付きつつ、それでもしっかりと彼女のように生きていくことに、何ともいえないポジティブなものを感じるようになるのです。・・・・テンポよく楽しく見ることができますが、難しい映画でした。・・・・こういうのは0点か10点かどちらしかない、とも思いましたが、片平なぎさのように大人になって、9点。 [DVD(邦画)] 9点(2007-01-15 14:09:36) |
38. 梟の城
とにかく色彩が豊かでした。それと神社仏閣や瓦屋根やら茶室やら、美しく画面に広がっていました。それだけの映画でしたが、それだけでも酒を飲みつつ、ぼぉーと見ているには良い映画でした。・・・・・・・・・・・・中井貴一という俳優は、真面目すぎてというか、自意識が強すぎて、他の役者との調和を壊してしまいますね。その配役に没入するのはいいけど、そのナルシズムのおかげで、一人浮いてしまい、映画が壊れてしまいます。「壬生義士伝」もそうでしたし、この映画もそうだと思います。・・・・鶴田真由さんは綺麗ですね。こんなに綺麗な役者さんだとは知りませんでした。・・・・岩下志麻とかあえて出す必要なんてないのに。・・・・・・・・この映画を象徴していたのが、終盤の秀吉の寝室でのシーンでしょうか。中井貴一の過剰な演技、マコちゃんの木訥として素人調の演技、ばらばらで全く見るに堪えませんでした。結果として、秀吉というのは個人が作り出すものではなく、全体の状況が作りあげてゆくものだ、という重要な発言が完全に霞んでしまいました。・・・・・・・最後の20分ほどは酷いですね。五右衛門の話なんて別にいらないのに。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2006-11-28 09:12:11) |
39. 白痴(1951)
《ネタバレ》 亡くなった武満徹が、黒澤作品の中で何が一番好きかと尋ねられ、この「白痴」だと答えたといいます。・・・・・・どうしてそうなのか、ずっと考えて見ていましたが、最後までよくわかりませんでした。・・・・・作品に一貫していると感じられたのは、絶対への渇望です。よこしまな心を一切持ってはならない、完全に純粋な生き方がある、というような、、、、、。完全に純粋な亀田を鏡として自分を見てみると、みんな汚れて不純になってしまうわけです。・・・・・武満徹はそうしたタイプの絶対性を、自分の音楽の中にも追求しようとしていた、ということなのだろうか???・・・・・・そして黒澤という人も絶対をいつも追求しようとしていたのかもしれない。・・・・・だけど、僕は、そういう絶対というのを追求する態度は嫌いだ。・・・・汚れていてけっこう、不純でけっこう、打算尽くでけっこう、人間は、みんなそんなものではないか。そんな条件で、なんとかうまく折り合っていけばいいじゃないか。神様は、もしかしたら存在するかもしれないけど、神様のことを知る能力を僕たちは持ち合わせていないのだ。・・・・・黒澤は、自分以外の神はたぶん信じていなさそうだから、こういう作品を作ってはいけない。ロシアの物語だから、北海道を舞台にするなんてあまりに安易ではないか。せりふ回しも殆どチエホフか何かの新劇の舞台みたいだし。・・・監督、作品には0点をつけてもいいですが、原節子、三船、久我美子の演技にこの点数をつけます。原節子ってけっこう上手な役者だったんだ、と思いました。・・・・最後にふと思うのだけど、武満徹は実は久我美子のファンだっただけだったりして??? [DVD(邦画)] 8点(2006-09-25 16:58:18) |
40. チャドルと生きる
確かに、イランのイスラーム社会で女性たちが抑圧されている、という雰囲気は伝わってきます。また女性たちをリレー式に繋いでいくという描き方も、この主題にはマッチしているようにも思いました。・・・・・・だけど、イスラームの社会でも、国家がどのようにイスラム道徳の維持に権力を用いるのかは、国家によっても異なっています。こういう描かれ方をすると、イスラーム社会では、どこでも女性が抑圧されているという偏見を生んでしまうような気もします。また彼女たち自身はイスラームの教えをどのように受け止めているのかという描写が一切ありません。なんだか、ヨーロッパ的な価値意識に依拠して、イランのイスラム権力を批判するためだけの作品になっている感じもしました。・・・・・・現状のイラン社会でいいじゃない、と感じてる女性もいるでしょう。また男は男で、ひとたびアメリカと戦争になればアメリカのハイテク兵器の前に虫けらのように殺されてしまうわけで、イスラームの社会が抱えている問題は、色々と多様なように思います。・・・・・・・・ところで、女性たちの多くが吸っているたばこは何を象徴していたのだろう。男性が享受している自由??・・・・・たばこを吸うことは健康に悪い、たばこを吸っている人は知性がない、というアメリカ的な価値意識が徐々に浸透している昨今では、よくわかりませんでした。 [DVD(字幕)] 8点(2006-09-18 00:00:07) |