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 > ザ・チャンバラ さん
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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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21.  スプリット 《ネタバレ》 
興行成績が絶好調だった『サイン』までの初期3作品だけでなく、ラジー賞ノミネートの『レディ・イン・ザ・ウォーター』、超低予算の『ヴィジット』までを評価しており、シャマランに優しい観客を自認している私なのですが、本作は楽しめませんでした。 まず、密室スリラーとしてまったく洗練されていません。被害者3人に対して加害者側は男性とはいえたった一人。しかも線の細いジェームズ・マカヴォイなので、本気で立ち向かえば何とかなるんじゃないかというシチュエーションに見えてしまっています。3人がかりで加害者に襲い掛かるが、思いもよらぬ反撃を受けて被害者にも観客にも「こりゃ完全にダメだ」と思わせるような展開を序盤に入れておく必要があったのではないでしょうか。また、密室内の被害者の様子と、家の外での加害者の様子を順番に見せるという構成のために、緊張感が持続していません。 オチの付け方も微妙。幼少期に性的虐待を受けたという被害者側の回想シーン(本筋とはほぼ無関係)の挿入は、観客に脳内オチを連想させるというミスディレクションの目的だったと思うのですが、あまりにしつこ過ぎてその意図がバレバレになっているし、そこまでして隠してきたオチが狼人間というのもサプライズになっていません。驚くよりも「ここまで引っ張って、それ?」という落胆の方が大きかったです。 良かったのはラスト、世界中が忘れかけていたアンブレイカブルさんの登場のみでした。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2018-01-27 02:32:48)
22.  グリーンルーム 《ネタバレ》 
前作『ブルーリベンジ』の批評面での大成功により、売れない映像作家から気鋭の若手監督に超絶ランクアップしたジェレミー・ソルニエの現時点での最新作。そのランクアップの成果はキャスト面に如実に現れており、アントン・イェルチンvsパトリック・スチュワートという新旧スタートレック対決をしれっと実現しています。実際に二人が直接顔を合わせる場面は少ないのですが、ちゃんと対決しているように見える辺りに、この監督の演出力の高さが垣間見えます。 あらすじだけを聞くとヒャッハーなネオナチがバンドメンバーたちをなぶり殺しにするような激しい内容を連想させられるのですが、実際には加害者側も被害者側も極めて冷静に行動をしています。これは感情を伴わない復讐劇だった『ブルーリベンジ』と共通する傾向であり、高い計算の上にえげつないバイオレンスを成り立たせるという微妙な匙加減こそが、この監督の作風であるようです。 もげかけの手首やカッターナイフで切り裂かれた腹部など、一連のゴア描写は見る者が痛みを疑似体験できるレベルに絶妙にチューニングされていてセンス良いなと思う一方で、籠城劇としてはあまり洗練されておらず、初期段階で主人公側が入手した銃をアッサリ手放してしまうなど、首を傾げるような展開があった点が残念でした。また、ネオナチ側の人数が無駄に多くて彼らの組織構造が分かりづらかったり、籠城者側に居た金髪パッツンの娘の立ち位置の説明がなかったりと、余計な疑問を抱かせる構図としたためにスリラーとしての没入感にも欠けていました。 あと、反ナチの歌を演奏したバンドメンバーがネオナチの怒りを買う話かと勝手に期待していたので、偶然殺人現場を目撃したという、もはやバンドやネオナチを主人公にする必要のないお話だったという点でも落胆させられました。監督の演出は相変わらず良いんだけど、ちょっとボタンの掛け違いが残念だったという、そんな映画でした。
[DVD(吹替)] 5点(2018-01-27 02:31:12)
23.  闇金ウシジマくん ザ・ファイナル 《ネタバレ》 
債務者中心エピソードとウシジマ中心エピソードを交互に出してくる実写化シリーズですが、本作はウシジマ中心エピソードでした。度を越した貧困ビジネスやヤクザ者同士の抗争といったテーマはもはや一般人とは無縁の世界であり、『闇金ウシジマ君』というコンテンツそのものの魅力とは一線を画す内容で、多少のガッカリ感がありました。 また、本作はウシジマのルーツを描くという触れ込みであり、確かに中学時代のウシジマのエピソードは描かれるのですが、中学生の時点で現在に繋がるウシジマの人格はすでに完成した状態にあり、結局、ウシジマを作り上げたものとは何だったのかが分からないという点でもガッカリでした。両親との別離や転校など、要所要所にウシジマ少年の人格に影響を与えたと思われるキーワードは登場するものの、それらは回想の時点ですでに過去の話であり、具体的に描かれることはありませんでした。 今回の敵となる鰐戸三兄弟のキャラ造形も雑。策士タイプの長男と狂犬タイプの三男に挟まれた二男がほぼ存在意義を失っているし、完全にキレた人間として描かれる三男はともかく、頭が良く大局的な視点を持っている長男までもがウシジマに対して中学時代からのパラノイア的な逆恨みを引きずっているという点も、設定間で内部矛盾を起こしているように感じました。 また、これは6年間続いた長期シリーズならではの問題なのですが、キャラクター達の設定年齢と演じる役者の実年齢に乖離が生じており、一部に違和感がありました。テレビシリーズ第一弾から見ており、例えば劇中頻繁に登場する携帯電話がシリーズの進行とともに新しくなっている様からも、現実の時間経過と同じだけ登場人物達は歳をとっているものと思い込んできた私としては、ウシジマや江崎が依然として24歳であり(本作公開時点で山田孝之は33歳、やべきょうすけは43歳)、しかも高橋メアリージュン(本作公開時点で29歳)演じる犀原茜と同世代という点は、さすがに無理ありすぎでした。そこは設定年齢を山田の実年齢に合わせ、実写版オリジナルキャラである犀原は彼らよりも下の年代であるということにしてもよかったと思います。  上記の通り不満点を書いてきましたが、良かった点もあります。力なき善意で他人を救おうとする竹本と、お金という必要な手段は与えるが、部外者である自分が関与するのは元本と利息が返済されるかどうかのみであり、そこから這い上がるか落ちぶれていくかは当人次第との姿勢を貫くウシジマ。この対比が面白いのです。 困っている人を無償で助けてやれば確かに当人は喜ぶだろうが、対症療法的な解決には問題の本質を覆い隠すという副作用があり、その人はまた同じことで躓く。転んだ都度助ければそのうち依存体質が身に付き、自力で立ち上がれない人間になってしまう。しかし救済者側の体力にも限界があって無限に人助けなどできないのだから、いつか共倒れになる日がやってくる。竹本の善意や自己犠牲の精神は本物ではあるものの、「救済者側の体力」と「救われる側の自立」がまるで考慮されていないため、本当の意味で人を救える力にはなりえていません。 他方、ウシジマは徹底的にドライ。貸した金さえ返ってくれば正しい使い道かどうかは関係なく、どんな債務者にも公平に接するのですが、同情すべき背景のある債務者ほどウシジマを非情であると非難します。彼らの主張を要約すると「自分を特別扱いしろ」なのですが、ウシジマも非営利ではやっていない以上、どこかで債権を回収しなければならないし、同情すべき背景のある債務者を免責して取りっぱぐれた分は自業自得の債務者の利息に上乗せするなんてことになれば、問題は余計にややこしくなります。債務者は公平に扱い、その私情には一切立ち入らない。それこそが闇金家業を営むウシジマなりの倫理観なのです。 竹本とウシジマは対立した後、力なき竹本が倒れて終わりとなります。ここでウシジマは親友である竹本にも一切の手加減なく死亡するまでの肉体労働を課すのですが、これもまた他の債務者との公平性を図るウシジマならではの倫理観だったと言えます。ただし、車を一瞬止めさせ、竹本を特別扱いして連れ帰るかどうかの葛藤を垣間見せる辺りの演出がうまく、ここで竹本の主張がウシジマにも届いていたことが分かるため、見ている私の心も揺さぶられました。
[インターネット(邦画)] 5点(2018-01-16 23:20:47)(良:2票)
24.  闇金ウシジマくん Part3 《ネタバレ》 
原作においてウシジマは狂言回し的な立ち位置にあり、実質的な主人公は各エピソードの債務者達なのですが、実写化シリーズ全体を通して見るとウシジマを立たせるか、債務者を立たせるかで製作者が常に試行錯誤していることが伺えます。傾向としては、週刊誌と似た放送ペースのテレビ版では原作準拠で債務者中心の構成、起承転結を2時間でまとめる必要のある映画版では分かりやすくウシジマ中心の構成となることが多いように感じます。 この点、私個人の嗜好としては、一般人がちょっとした心の弱さから多重債務状態に陥る様こそが『闇金ウシジマ君』の本質であると考えており、テレビシリーズこそが原作の要素を引き継いでいると思っています。他方、映画版ではウシジマがヤクザや反グレと抗争を繰り広げるというバトル要素が強くなっており、これでは別物になっているように感じます。なので、映画版『PART1』『PART2』への評価は低めです。そこにきてこの『PART3』ですが、映画版としては例外的に債務者中心の構成となっており、これはかなり好意的に見ることが出来ました。 主人公の一人は、不倫や水商売に入れ込んで借金まみれになっているものの、一流企業勤務なのでいざとなれば返済能力はあるという自信を持っており、多重債務状態に危機感を抱いていない加茂。他の債務者達とは違って加茂は借入を深刻なこととは捉えておらず、以前に闇金からの借金を踏み倒したことすら覚えていないという感覚の軽さもいいスパイスになっています。ここまでひどくはないものの、キャバクラ通いやパチンコ中毒で消費者金融から頻繁な借入をしている大手企業勤務の友人が何人かいることから、このエピソードには大変なリアリティを感じながら見ることができました。実際、彼らも借入をさほど深刻には捉えていません。また、バラエティ番組で見るとたまに不快感を覚えることのあるオリラジ藤森の軽さやイヤらしさが加茂というキャラクターに見事ハマっており、いい感じでイラつかせてもらいました。 もう一人の主人公は「ビッグになりたいという願望こそあるが、自分には何もない」という心の弱みを突かれ、ネットビジネスに入れ込む沢村。このエピソードでは、実力以上の成功に憧れて一発逆転の夢を見るという多くの人が抱く心理が簡潔に描かれているし、一時期マスコミで「ネオヒルズ族」などと持て囃された与沢翼のビジネスの実態が理解できたという点で、社会問題の勉強にもなりました。沢村は表面的な成功を掴むものの、金が回らなくなれば終わりというギリギリの状態でいつ破局が訪れるか分からないというサスペンス要素も見事に機能しており、なかなか緊張感を持って見ることが出来ました。
[インターネット(邦画)] 7点(2018-01-16 23:20:04)(良:1票)
25.  バーニング・オーシャン 《ネタバレ》 
オスカーノミネートの視覚効果は確かに素晴らしいし、従前より音響へのこだわりの強いピーター・バーグ作品だけあって音の迫力も充分であり、映像体験という点では充実した作品だったと思うのですが、肝心のお話の方がイマイチでした。 利益優先で安全対策を怠った元請けが悪、元請けからの圧力を受けながらも現場でギリギリ頑張る下請けを善とした単純すぎる色分けがかえって問題を軽くしているし、かといって感情移入可能な登場人物も少なく、ドラマはほぼ失敗しています。多額の資金が投じられたプロジェクトにおいて遅延したスケジュールを取り戻さねばならない元請け側の苦悩も描けば社会派ドラマとしても群像劇としても厚みが出ただろうと思うのですが、ほぼ連続で製作された『パトリオット・デイ』と並んで、脚色過程での単純化が失敗した例だと思います。 また、『パトリオット・デイ』もそうだったのですが、ピーター・バーグは現実の事故の被害者全員のドラマを盛り込もうとするものの、その構成力が追い付いておらず、画面上にたまに登場はするが観客の側で情報の整理が出来ていないキャラクターが何人かいるという事態が発生しています。こんなことならば主人公と直接かかわり合いを持つキャラクターのみに登場人物を絞るべきだと思います。 さらには、見せ場におけるスリルの醸成にも失敗しています。事故前、パイプで異常値が出ていることを示すためにいくつかのゲージが大写しにされ、その目盛が上がったり下がったりするのですが、それらが何を示しており、数字がどのレベルに達すると危険なのかという情報が観客に対して分かりやすく提示されていないため、目盛を見ながら観客もドキドキするというこの手の映画でお決まりの展開が全然決まっていません。さらには舞台となる採掘基地内部の位置関係が分かりづらく、誰がどこにいるのか、そしてどの方向を目指さなければならないのかが判然としないため事故発生後のサバイバルアクションも締まっていません。「とにかく上を目指すのだ」という明快な構図を置いた『ポセイドン・アドベンチャー』がいかに優秀な作品であったかが、本作のような出来損ないのパニック映画を見ると非常によく分かります。 真面目な風体ではあるものの、その実態は同監督作の『バトルシップ』と並ぶゆるゆる映画だったように思います。ただし『バトルシップ』は笑いながら見てあげられる映画ではありましたが、本作にはそうした可愛げもない分、評価は厳しめになってしまいます。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2018-01-16 23:19:06)
26.  わたしは生きていける 《ネタバレ》 
ルックスも演技力も存在感もあって同世代のスターのトップになってもおかしくない逸材なのに、なぜか作品に恵まれないシアーシャ・ローナンの、何作目かの残念作品でした。 原作は世界的ベストセラーになったヤングアダルト小説なのですが、同様の出自を持つ『ハンガー・ゲーム』や『ダイバージェント』と同様に、本作の監督や脚本家は思いっきり手を抜いています。雇われ仕事感全開というか、原作に書いてある事をとりあえず実写化しとけばいいんだろという姿勢が透けて見えてくるのです。 よくある少年少女の恋愛物語によくある終末SFをミックスしただけの内容であり、そのどちらの構成要素も突き抜けていません。観客が予想した通りにロマンスは進行していき、感情表現も紋切り型で特に感動を呼びません。世界観の描写の甘さは致命的なレベルに達しており、どうやら世界大戦の危機にあるようだが、その脅威の正体は外国の軍隊なのか、大規模テロなのか、国内の反乱分子なのかすら判然としません。世界観の説明に時間を割くべきタイプの作品でないし、むしろ何が起こっているのか分からないというシチュエーションこそが思春期の混乱を投影していることは分かるのですが、それでも主人公の危機を観客に伝えるためには、目の前の脅威を見分けるための最低限の情報は必要だったと思います。
[インターネット(字幕)] 4点(2018-01-16 23:17:07)
27.  怒り 《ネタバレ》 
日本を代表する俳優陣がズラっと顔を揃えた作品だけあって、演技面では本当に充実した作品でした。渡辺謙は抜群の安定感だし、謎の人物に翻弄される宮崎あおいや妻夫木聡も従来とはかなり異なる役回りながらも、これを見事に演じています。そして私が何より素晴らしいと感じたのが謎の男を演じた松山ケンイチと綾野剛であり、多くを語らないながらも観客から受け入れられるだけの魅力を持たねばならないという、かなり匙加減の難しい役を見事モノにしています。 他方で問題に感じたのが突飛な展開が多いことで、前述の通りの見事な俳優陣に支えられているおかげでそれほど目立ってはいませんが、よくよく考えてみればトンデモ映画の域に達しています。突如現れる難病設定で死ぬ綾野剛とか、それまで気の良い兄ちゃんだった森山未來の本性がほぼ別人でそれまでのドラマの流れと完全に断絶していたりとか。 特に沖縄パートは杜撰だったと思います。主人公・知念の父親が反基地運動に参加した序盤からイヤな予感はしていたのですが、本筋にもバッチリ基地問題を絡めてくるものだから、視点が散漫になっています。善悪で割り切れない複雑な問題である沖縄の基地問題を記号のように扱うことの違和感。また前述の通り森山未來の豹変ぶりもおかしいのですが、正体に気付いた知念の前だけでその異常性を見せるのならまだしも、泊まり込みのバイト先で深夜に厨房を破壊するという、警察に通報されてもおかしくない行為を突然始めることの違和感。長期間に渡って潜伏生活を送ってきた知能犯が、こんなバカなことをするものでしょうか。 また、犯人の動機もわけわからんものでした。同情されたことで自尊心が傷付いて人を殺すってどういうことなんでしょうか。脚色を担当した李監督自身もその動機をうまく消化できていないのか、森山未來演じる田中が抱えているはずのそうした歪んだ自尊心を全然表現できておらず、突如現れた彼の元同僚に口頭で説明させるという、何とも荒っぽい処理で終わらせています。そういえば、あの元同僚の存在もよく分かりませんでしたね。あれだけ詳細に殺人事件の内容を聞かされていて、なぜ今の今まで警察に通報もせず黙っていたのか。さらには、それだけ秘密にしてきた話を、なぜ今になって頼まれてもいないのにベラベラと話し始めたのか。彼の存在も本筋からはかなり浮いていました。
[インターネット(邦画)] 5点(2018-01-08 01:44:29)(良:1票)
28.  パトリオット・デイ 《ネタバレ》 
爆破の瞬間やその後の惨状、犯人逮捕の際の銃撃戦などスポットでは目を引くような見せ場があった一方で、全体としては緊張感を維持できていなかったように思います。 その理由としては、群像劇として作られているものの、本筋とほぼ関係ないような人物の日常にまで触れてしまったことから、ドラマが散漫になっているという点が挙げられます。犯人に射殺されるMITの警備警官やカージャックに遭う中国人青年などは被害者A・被害者Bくらいに済ませても問題なかったし、犯人との銃撃戦を演じるウォータータウン署のドラマも不要だったと思います。そもそも、実在しないトミー・サンダースなる人物を作り上げて主人公にしたのは複数の警官をひとつにまとめるための方策だったのだから、そのトミー以外の警官のドラマを挿入することは重複でしかないと思うのですが。 一方で描写が足りていないのが犯人側であり、動機などがまるで整理されていません。兄と弟で足並みが揃っていない様からも、観客は二人の間のコミュニケーションへの関心をかなり掻き立てられるのですが、これに対するアンサーがないのだから余計なストレスになっています。さらには、兄・タメルランの妻・キャサリンなどは、白人であるにも関わらず全身イスラムの装束を身にまとい、捜査当局からの取調べにもたった一人で抵抗するほどの気骨を見せており、この人で映画一本撮った方がよほど面白いのではないかと思ったのですが、彼女への深彫りもなし。こんなことならば犯人側の描写をバッサリと切り捨て、捜査線上に上がってくるまでは観客に対しても謎の人物・団体としておく方が良かったのではないでしょうか。 また、全体として感傷的すぎるという点も、かえってドラマのテンションを下げる方向に作用しています。卑劣なテロリストに勇気を持って立ち向かうボストンという主張が本編中何度も何度もなされるものだから、正直途中から「はいはい、ボストンは素晴らしい街だね。アメリカは素晴らしい国だね」と投げやりな感情が芽生えてしまいました。頭から尻尾の先まで被害者感情で満たされていることから第三者の感情移入を受け付けづらい映画となっていますが、もっと客観的な姿勢に寄っていればより多くの観客を取り込める作品になっただろうと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2018-01-05 20:17:34)(良:1票)
29.  ハクソー・リッジ 《ネタバレ》 
映画人として完全に終わったと思われていたメル・ギブソンが、彼を毛嫌いするハリウッドの住民たちをも納得させてオスカー大量ノミネートと2部門受賞という栄誉を勝ち取った作品こそが本作なのですが、なるほど、本作を観ればメル・ギブソンは映画を撮るという才能に溢れた人物であることがよく分かります。 主人公・デズモンドの人格を形成したものは何だったのか、また軍隊や社会は彼の主張にどう反応したのかが描かれる前半部分は簡潔ながら非常によくまとまっています。メル・ギブソンは実生活では信仰心の厚すぎる人物なのですが、本作では宗教という要素をバッサリと切り落とし、父と子の物語として再構築した辺りの見切りの良さも光っています。ヒューゴ・ウィーヴィング演じる父親は頑固で酒飲みで女房子供に暴力を振るう最低野郎なのですが、その一方で息子が軍刑務所に入れられて窮地に陥っていると知るや、自分のコネを使って何とか息子を助け出そうとする優しさも見せており、善悪では割り切れない複雑な人間性というものがきちんと表現できています。また、当初はデズモンドの信仰を理解できず、彼に対して辛く当たっていた戦友達が徐々に変化していく様も自然に表現されており、人間ドラマとして非常によくできています。 戦場はまさに地獄。そこら中に手足や内臓が散乱し、それらの周囲には血の海ができているという表現は、これまで見たどの映画よりも実際の戦場写真に近いものであり、まさにリアリティの塊となっているのですが、本作が特殊だと思うのが、このリアリティの極限の中に娯楽的な誇張を紛れ込ませているという点です。散乱する死体を左手で引っ掴んで盾のように構え、右手でマシンガンを乱射するという突飛な見せ場や、投げられた手りゅう弾を蹴り返す場面、また文字通り血の雨が降る場面などが登場するのですが、これがリアリティある戦場描写にちゃんと馴染んでいるのです。そもそも全体の構成自体も、史実では一定期間でなされた行為を本作では一夜の出来事として見せており、かなり無理のあるまとめ方をしてはいるのですが、これに違和感を覚えさせられない辺りが脚色や演出の妙なのでしょう。『ブレイブ・ハート』でも感じたのですが、メル・ギブソンはリアリティと虚構を混ぜるのが本当に巧い監督だと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2018-01-05 20:15:17)(良:1票)
30.  ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス 《ネタバレ》 
アウトローを主人公としているにも関わらず「毒を以て毒を制す」というそもそものコンセプトは前作以上に希薄化しているし、仲間だの家族だのと主張しすぎることもかなりめんどくさかったです。そういったキーワードをわざわざ台詞で言わなくても、見ている側にはちゃんと絆が伝わるように見せることこそが、演出の妙なのではないでしょうか。 また、殴り合いで戦ってきた主人公がラストで突然覚醒し、それまでとはレベルの違い過ぎる技を何の訓練もなくいきなり繰り出すという展開が私は大嫌いなのですが、本作はまさにそれをやっちゃってる点もマイナスでした。 さらには、スターロードが突出した能力を手にするとチーム内の持ちつ持たれつの関係が成立しなくなり、一人で事に当たればいいんじゃないのとなってしまうし、彼を神の子とした展開は完全に誤りだったと思います。なお、原作においてはエゴとスターロードの間に血縁があるという設定はなく(原作では宇宙帝国の皇子がスターロードの父親だった)、この神の子設定は映画オリジナルだったようです。 吹き替えで見ると、ゲスト出演のスタローンとハッセルホフの声優がともにささきいさおさんだった。この点だけが面白かったです。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に向けて重要なピースである以外の存在価値を感じない作品でした。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2018-01-05 20:13:05)(良:2票)
31.  メッセージ 《ネタバレ》 
めちゃくちゃに綺麗な映像と、説明台詞のほとんどない静かな展開というドゥニ・ヴィルヌーヴ節全開の作品であり、もはや環境映像と化していることからやたらと眠気を誘われました。また、チマチマと作業をする数人の科学者と、宇宙人への即時攻撃を主張し始める軍部という構図はこの手の映画ではありがちなのですが、人類との間の科学力の差が圧倒的であり、どの程度の反撃を仕掛けてくるのかの予想も立てられない宇宙人相手に最初の一撃を繰り出すなんてことを主張する軍人がいるとは思えず、この辺りでもテンションが下がってしまいました。 ただし、ラストでネタばらしをされると、なんちゅー素晴らしい映画なんだろうかと評価が反転しました。未来と過去が同居し、因果関係が失われた人物の主観が見事に表現されているし、冒頭から挿入されてきた主人公のドラマの断片がここで見事に整合することの気持ち良さも相当なものでした。また、多くを語らないヴィルヌーヴの作風が本作には欠かせなかったこともネタばらしの後で判明し、映画を最後まで見ることって大事だなと思い知らされました。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2018-01-05 20:09:17)
32.  マギー
90年代、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』に影響を与えた『地球最後の男』のリメイク企画がシュワルツェネッガー主演×リドリー・スコット監督で企画されており、当時高校生だった私は、シュワがゾンビを豪快に蹴散らす様がリドリー・スコットの美意識で描かれるこの企画に心躍ったものです。しかし、当時はシュワの興行成績に陰りが出始めた時期だったし、スコットもヒットから遠ざかっており、さらには『タイタニック』の製作費高騰に歯止めが利かなかったという経験がハリウッドの各スタジオに大作自粛ムードを作っており(『タイタニック』は結果オーライだっただけで、歴史的ヒット作がそう簡単に出るはずがない)、とんでもない製作費が計上されていたこの企画はボツにされたのでした。 その後、20年を経てついにシュワとゾンビのコラボレーションが実現したのが本作なのですが、「この企画になぜシュワが」という違和感が終始漂う90分でした。シュワがゾンビをなぎ倒すことはなく、終始無言で悩んでいるのみ。これってシュワに期待されている役柄ではないし、この役をもっとうまくやれる役者はいくらでもいます。 シュワは親友・スタローンのように枯れへの移行を目指しているのでしょうが、キャリアに低迷期はあってもブランク期はなかったスタと、俳優として完全に活動していない時期のあったシュワとでは経験に差があるし、ロッキーやランボーといったほぼ分身と言えるキャラを通して枯れへと移行したスタと比較すると、単発企画でイメージチェンジを果たさねばならないシュワは、やはりハードルが高かったと言えます。 とはいえ、2011年のブラックリストにも載った実績があるだけに、脚本自体は良かったと思います。難病もののドラマ構成をゾンビのいる世界に置き換えたアイデアは光っているし、世界観の細かな作り込みにも目を見張るものがいくつかありました。ゾンビ化という現象が特段珍しいものではなく、「あの家のお子さんもゾンビ化しちゃったのね。かわいそうに」くらいのテンションで語られるという世界観はかつてなく、ゾンビ化の過程にある人々もある程度社会的な暮らしを営んでいるという設定は面白いと感じました。主人公の娘・マギーもまたゾンビ化を隠すことなくパーティーに出るし、迎える側も「噛むようにならない内は、まだまだ友達」という付き合い方をしています。 マギーを演じるアビゲイル・ブレスリンは相変わらずの芸達者で、この珍しい世界観をほぼ一人で体現しています。ただし、その上手さによって余計にシュワが下手に見えるという別次元の問題を引き起こしてはいますが。
[インターネット(吹替)] 4点(2017-12-28 14:58:10)(良:1票)
33.  スター・ウォーズ/最後のジェダイ 《ネタバレ》 
IMAXにて鑑賞。 『フォースの覚醒』はレイがルークの元に辿り着くまでの物語でしたが、ようやく出会えたルークは『帝国の逆襲』のヨーダ以上の偏屈じじぃになっており、「もう弟子はとらん」といけ好かない態度をとるのみ。前作の冒険を見てきた我々からすれば、はるばる来てくれたレイの話に耳を貸し、その要望は聞けないにしても、じっくり説明くらいはしてやればいいのにと思うところなのですが、とにかく頑なに心を閉じている様にはイライラさせられました。ルークと旧知の仲であるチューイやR2もレイのために口添えしてやればいいものを、いるのかいないのか分からないほどの存在感だったし。 レイはレイでカイロ・レンと感応しておかしくなり、さらにはすぐ隣にジェダイマスターがいるという恵まれた環境にいるにも関わらず今の自分の精神状況を素直に相談しないので、こちらにもイライラさせられました。二人とも、ちゃんとコミュニケーションとりましょうね。 この前半部分の退屈さはシリーズ屈指のレベルに達しており、「こりゃ、『ファントム・メナス』をも下回るシリーズ最低作来たかな」と覚悟を決めました。そういえば、『ファントム・メナス』って邦題は何とかならんもんですかね。『ジェダイの復讐』を『ジェダイの帰還』に変更したのだから、『ファントム・メナス』も『見えざる脅威』に変更すべきではないかと思うんですが。って、本作とは全然関係ない話をしちゃいましたね。そんなことが気になるくらい、本作の前半は面白くなかったってことです。 しかし、後半になると作品は一気に息を吹き返します。レイとカイロ・レンの共闘、フィンとファズマによる元上司・部下対決、ダメ上司かと思われたホルド司令官が見せた男気(性別は女性ですが)などなど、燃える見せ場の連続で頭の毛が抜けそうになるくらい興奮させられました。ファンが愛着を覚えているメカの登場のさせ方、ピンチの際の救援のタイミングなど演出はもうキレッキレで、ディズニーはルーカス以上に『スターウォーズ』の撮り方を掴んできているように感じました。 とはいえ、次回作へは期待よりも不安の方が大きくなりましたが。本作ではキャラの整理が進みすぎており、どう見てもリーダーとしての才覚のないカイロ・レンが率いることになったファースト・オーダーと、ファルコン号に収納しきれる程度の人数しか生き残っていない反乱軍は今後どうやって戦うことになるんでしょうか。
[映画館(字幕)] 8点(2017-12-16 15:26:46)(笑:1票)
34.  サバイバー(2015) 《ネタバレ》 
スターといっても過去の人達が顔を揃えたVシネなので大して期待はしていなかったのですが、その下がりまくったハードルも越えられないほどの無残な出来でした。 主人公が極端な行動をとらざるをえなくなる理由づけが物凄く弱いので、序盤から躓いています。例えば1993年の『逃亡者』では、「俺は無実だ」の主張に対して「知ったことか」と返すジェラード捜査官の一言により、これは逃げる他ないということが主人公と観客との間の共通認識として成立していました。他方、本作はあのような端的なやりとりがないまま本編を始めてしまうので、頭には疑問符しか浮かびませんでした。 そもそも、世界最高クラスの殺し屋に命を狙われており、しかも目の前で同僚や上司を殺され「敵は本気だ」ということが明白な状況で、自力で事に当たる奴なんています?第一容疑者に上がっており自分にとっては不利なシチュエーションかもしれないが、それでも殺されるくらいだったら警察に駆け込み、少なくとも口封じはされない環境下で身の潔白を証明するという行動がもっとも合理的だと思うのですが。 その後、度重なる殺し屋の追撃を交わし、国際指名手配犯であるにも関わらず国際線で移動してついに母国まで帰ってくる主人公。あまりに無茶な展開が多いので、実はCIAという設定でもあるのだろうかと思っていたのですが、ただの事務系職員のまま通すので悪い意味で驚かされました。さすがに無理ありすぎでしょ。 NYに着いたら着いたで、さっさと捜査機関に駆け込んでテロの警告をすればいいものを、またしても一人で事に当たろうとする主人公。もはやバカにしか見えませんでした。プロフェッショナルであり、しかも複数人である敵側が、そんな主人公相手に敗退するという展開にも何らカタルシスが宿っておらず、短い上映時間をごまかせるほどの内容もない作品でした。
[インターネット(吹替)] 3点(2017-11-30 18:13:44)(良:1票)
35.  ジャスティス・リーグ(2017) 《ネタバレ》 
IMAX 3Dにて鑑賞。3D効果はまぁそれなりで損した気分にはなりませんでしたが、2Dで見ても情報量はほぼ変わらないと思います。 一定水準の作品を量産する体制を整えたマーベル勢とは対照的に、DC勢はいまだ彼らなりの成功方程式を生み出せておらず、本作についても敵の目的が不明確で恐怖の対象になりえていなかったり、リーグの作戦や勝敗ラインがわかりづらくて盛り上がりを逃していたりと、完璧な娯楽作にはなりえていませんでした。 ただし、それでも私が本作を支持できるのは、キャラクター劇として極めてよく出来ているためです。 ・パラノイア的に暴れまわったBVSを経て真にヒーローとしての自覚を持ったが、同時に生身の自分には限界があることを悟ってバトルでは裏方に徹しているバットマン。 ・能力も実戦経験もチーム随一で、必要な場面ではチームの支柱となるワンダーウーマン。 ・粗暴だがその奥にある気の良さが伝わってくるアクアマン。 ・同類に出会えた喜びを隠しきれないフラッシュ。 ・勝手にアップグレードされていく己の体への恐怖から引きこもりのひねくれ者になっていたが、訳ありメンバーと関わって自分の体の使い方を覚えていくことで徐々に精神が安定していくサイボーグ。 どいつもこいつも良いキャラをしているし、キャラクター間でちゃんと化学反応が起こっています。ジョス・ウェドンはザック・スナイダーが編集したバージョンから1時間も短縮して完成版を作ったようなのですが、この短い上映時間でよくこれだけキャラクターを描けたものだと感心しました。 さらに、スーパーマンが他のヒーロー達とはパワーも存在感も違う、桁外れのヒーローであるという描写になっていた点にも納得できました。そんなスーパーマンの参戦には、ドラゴンボールZのフリーザ編でようやく悟空が戦線復帰した時のような興奮がありました。これぞマンガ映画の醍醐味です。 また、ハンス・ジマーが降板し、その跡を継いだジャンキーXLも降板し、最終的にダニー・エルフマンが音楽を担当することとなったのですが、エルフマンの登板によって全体の曲調が明るくなり、特にバットマンのテーマはエルフマン自身が作曲した1989年版に戻されたので、『バットマン/ビギンズ』以来12年間続いたジマーのドンドコ節に辟易としていた私のような人間は、久しぶりにヒーローらしいテーマ曲を聞けてホッとしました。 その他、ロード・オブ・ザ・リング風の合戦からヒーローバトル、さらには多様なマシーンの登場と見せ場のバリエーションはやたら多いのですが、ヴィジュアルの巨人・ザック・スナイダーはこれらを闇鍋状態にせず、ひとつひとつの見せ場の独自性と全体の調和を見事に両立させています。こちらでも満足感がありました。 決して器用な出来ではないものの、これから始まる各キャラクターの単独主演作への期待を高めるには十分の作品だったと思います。さらには、一通りの単独主演作が終わった後にはジャスティス・リーグPART2が予定されていますが、成長したヒーローたちの再集結も今から楽しみです。
[映画館(字幕)] 8点(2017-11-25 03:21:56)(良:1票)
36.  インサイダーズ/内部者たち 《ネタバレ》 
憎くて強大な敵を持たざる者達が倒すという物語なのですが、主人公達が決して社会正義の代弁者というわけではなく、あくまで私怨に端を発した戦いであるという点に好感が持てました。片や、虎の尾を踏んで地位と片腕を失った元組長による復讐劇、片や、優秀なのに出世の道が開けない検事による支配階層への下剋上。この構図の時点で燃えました。 また、彼らと対峙する悪のゲスっぷりがとにかく最高です。「権力者はとんでもなく下品な宴会をやってるんじゃないか」という庶民が漠然と抱くイメージがほぼ完璧に映像化されており、金と権力の頂点にいる者達が夜な夜な繰り広げるバカ殿みたいな宴会は本作最大の見せ場と言っても過言ではありません。 原作のマンガが未完のまま打ち切られたということで終盤は映画版の独自展開に入っていくのですが、護送車からの脱走とイ・ガンヒのオフィスへの侵入がうまくいって、しかもこちらが期待する通りの言葉をイから引き出せて、さらには裏切りを疑われずにウ・ジャンフンが黒幕3人の懐に入るということがすべて達成できなければ崩壊するという、よくよく考えれば不確定要素が多すぎて運任せすぎる作戦ではあるのですが、この辺りになるとロジックよりもエモーションの方が勝っているため、さほどの違和感なく受け入れることができました。やっぱり韓国映画には勢いがあります。 「モヒート行ってモルディブ飲もうぜ!」というロビンソンのスピッツ的なギャグは当初何が面白いのか分かりませんでしたが、何度か繰り返されるうちにこちらもほのぼのとしてきました。私怨にまみれた物語の中で、こうしたほのぼの系のやりとりを入れてくるというバランスもよく考えられています。
[インターネット(吹替)] 8点(2017-11-17 18:50:21)
37.  エージェント・ウルトラ 《ネタバレ》 
本サイトでの平均点は最悪に近い上に、IMDBスコアも6.1と世界的に評判の悪い作品のようなのですが、私はなかなか楽しめました。映画とは自分の目で見るまで分からないものです。 風変わりな主人公が実は殺人マシーンで、徐々に記憶を取り戻しながら追っ手と戦うというお話はメル・ギブソン主演の『陰謀のセオリー』とまったく同じであり、さらにはブラックコメディという味付けも共通しており、MKウルトラ計画を扱った作品には特有のテンプレートでもあるのかと思ったのですが、アクションができるというイメージがまったくないジェシー・アイゼンバーグに殺人マシーン役をやらせた点が本作の新機軸であり、それまでなよなよしていた主人公にスイッチが入ると敵が瞬殺されるという描写にはなかなかのカタルシスがありました。 また、敵が同情の余地のまったくないアホであるという点でも主人公を応援したくなったし、このアホが田舎町を封鎖した上で十数人の殺人マシーンを投入して町全体を戦場に変えるという舞台設定にも燃えるものがあり、90分程度の中規模アクションとしては合格点だったと思います。 ただし、殺人スキルでは主人公が他を圧倒しており、彼と互角の勝負ができる敵がいなかったという点が、バトルアクションとしてはちょっと残念でした。ハントに最初に投入され、噛ませ犬的な役回りかと思われたラファがラスボスだったという展開には脱力させられたし、覚醒後の主人公がミッションを遂行するエンディングがまさかのアニメーション処理だった点でも、「え、見せてくれないの…」とガッカリでした。
[インターネット(吹替)] 7点(2017-11-17 18:49:28)(良:1票)
38.  スパイ・レジェンド 《ネタバレ》 
ロジャー・ドナルドソンは『スピーシーズ』や『ハングリー・ラビット』のようなどうしようもない映画を撮る一方で、たまに『追いつめられて』や『バンクジョブ』のような異常な切れ味の娯楽作を作ってしまう人物であり、有能なんだか無能なんだかよく分からない監督なので、とりあえずこの人の作品は自分の目で確かめるしかないなと思っているのですが、今回のドナルドソンはハズレの方のドナルドソンでした。 元はダニエル・クレイグ主演の予定がキャンセルされ、ドナルドソンが『ダンテズ・ピーク』で仕事をしたことがあり、かつ、クレイグの”前任者”であるブロスナンに白羽の矢が立てられたというプロダクションの経緯があるのですが、これがそもそもブロスナンのために準備されていた映画ではないかと思うほどよくハマっており、ブロスナンはとにかく最高でした。主人公は格闘でも銃撃でも無双状態の強さを誇り、情報収集能力にも長けて、美女からも惚れられる。こんな浮世離れしたスパイをこの時代に演じられる俳優はブロスナンくらいのものであり、常に必死さが付きまとうクレイグでは、こうはいかなかったと思います。 ただし、二転三転する物語の割には、大半の観客が最初に怪しいと感じた人物がやはり悪の元締めだったという展開に意外性がなかったり、これまた大半の観客が「何かあるな」と思っていたヒロインにやはり過去がありましたという展開にも面白みがなく、謎の隠し方が総じてうまくありません。さらには、ブロスナンの個性があまりに強すぎて、彼と張り合うこととなる元教え子(本来の主人公は彼なのでは?)や、ロシア側の女殺し屋の個性がほぼ埋没しており、これならばブロスナンの活躍を見せることに専念して物語を極力シンプルにした方が良かったのではないかと思います。
[インターネット(吹替)] 5点(2017-11-15 23:58:30)
39.  SCOOP! 《ネタバレ》 
はみ出し者のベテランと真面目な若手という構図はかなり類型的ながらも、主演二人の華できちんと持ち堪えています。 問題はお話が面白くないことで、テンポ良く小ネタが繰り出される前半パートは楽しめなくもないのですが、連続殺人鬼の表情を捉えようと奮闘する中盤と、リリー・フランキー演じるチャラ源が暴走する終盤がまるで面白くないため、映画全体の印象は良くありません。 特に終盤の悲劇の取って付けた感には凄まじいものがあり、「俺一人で行くわ」と思いっきり死亡フラグがぶっ刺さった状態で現場にむかい、式次第通りに死亡する都城の姿を見て衝撃を受けた観客が一体どれほどいたのだろうかと、実に心配になってしまいました。 どうやらチャラ源と都城との間には深い深い因縁があり、周囲に止められても都城はチャラ源との付き合いを止めないという辺りに男の友情臭があったのですが、その二人の関係の根源とは何なのかがバッサリと割愛されており、「その辺はお察しください」という雑な描かれ方となっているためさほどの感情移入ができず、終盤は劇中のキャラクター達だけが勝手に盛り上がっている状態となります。都城が死んだ後のエピローグは異常なまでに長く、こちら大して感動も衝撃も受けていないのに余韻に浸らせまくられたため、大変しんどかったです。 また、後半パートでは「ジャーナリズムとは何か」という真面目な切り口を持ち出してくるのですが、彼らの奮闘が社会正義に繋がっているようには見えず、見ている側としては覗き見趣味を出ていない状態で真面目な話をされても困ってしまいます。同種の題材を扱った作品としてジェイク・ギレンホール主演の『ナイトクローラー』がありますが、そちらは「パパラッチは人間の屑である」ということを大前提としたピカレスクロマンとして作られており、ゲス野郎の活躍を冷めた視点で鑑賞するという実に安定した作風となっていました。対して本作は、前半と後半でまるで正反対の主張がなされるために、特に後半が綺麗事にしか見えませんでした。 あと、福山雅治と二階堂ふみの中途半端なベッドシーンは本当に不要でした。人間の下劣な覗き見趣味をテーマのひとつとしている作品なのに、ベッドシーンをやたら美しく撮ってどうすんの。この題材で下着を決して外さないってどういうことよ。俳優のパブリックイメージへの配慮や芸能事務所からのダメ出しが激しく垣間見えてしまい、ここで一気に冷めてしまいました。
[インターネット(邦画)] 4点(2017-11-15 23:57:51)(良:1票)
40.  砂上の法廷 《ネタバレ》 
映画における裁判では「宣誓下にあるのだから、証言台に立たされた人間は真実のみを語っている」という暗黙の大前提が置かれているのですが、その大前提をひっくり返して「証人は、自分に都合の悪い話は捻じ曲げて証言する」ということを追及した点が、本作の新規性であると言えます。名作『羅生門』にも通じるアプローチですが、私はこれをリアリティの一種であると感じたし、二転三転する物語は物凄く楽しめました。 本作で描かれるウソの種類は2つあって、事件の核心部分の理解を意図的に操作しようとしてつくウソと、事件の真相とは直接関係ないが自分自身の触れて欲しくない部分をごまかすためにつくウソとがあります。後者については合理性のあるウソであるため、その人物の背景を紐解く中で不整合が自ずと露わになってくるのですが、難しいのが前者であり、その周辺にある些細なウソを切り崩していきながら「より確からしい理解とは何か」を探ることになっていきます。 作品は証言と回想を行き来しながら進むのですが、回想パートにウソはなく、少なくとも作り手が観客に対してインチキはしていないという点にも感心させられました。また、一見すると荒唐無稽に感じられるオチについても、ある思惑が想定外の形で別の思惑と結びつきながら結果的にこの歪みまくった構図が出来上がったという説明付けがなされており、決して「サプライズのためのオチ」とは感じませんでした。全体として矛盾がなく、おかしいと思われる部分にもよくよく考えればちゃんと説明が付けられており、実によく考えられたお話となっています。 キアヌの弱点である能面フェイスは、本作では観客に表情を読ませないという点で良い方向に作用しているし、疲れきってはいるが男を魅了する色気はギリギリ残っている人妻役に、こちらもくたびれきったレニー・ゼルウィガーが見事にハマっています。また、女性で見た目が良くて有色人種だから陪審員から正義の側に見られやすいという理由で主人公が傍らに置いているインターンの弁護士の堅物ぶり、この場にいるのは自分の実力を評価されているからだという勘違いぶりも面白く、キャスト面でもなかなか充実した作品だと感じました。
[インターネット(吹替)] 7点(2017-11-10 18:41:58)(良:1票)
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