21. 愛人/ラマン
《ネタバレ》 1929年の仏領インドシナ。家から寄宿舎に向かうため、15歳半の少女が貨物船に乗っていた。彼女は母親と二人の兄の四人で暮らしている。長兄が乱暴で素行が悪く、家族の悩みの種となっており、家庭内の雰囲気も良くない。 自らが選んだ男物の帽子をかぶり、物憂げな表情でデッキに立つ少女のそばに黒いリムジンが停まっている。その中から少女を見つめる男がいた。車から出た男は、少女にタバコを勧める。華僑の金持ちの息子と名乗るその手は震えていて、落ち着かない様子だ。「寄宿舎まで車で送る」という男の申し出を少女は受ける。道中では、男は少しずつ少女の手に触れ、握る。少女もそれに応えるように握り返す。 次の日、少女が寄宿舎から学校へ行こうと門を出ると、昨日の黒いリムジンが停まっていた。中の男を見た少女は、閉まっている後部座席の窓にキスをする。 学校の帰り、待っていた男の車に乗り込む少女。車はチョロン地区と呼ばれる中華街へ。外の喧騒が聞こえる広い部屋に通された少女。男はここを愛人と会う部屋と説明するが、「私は怖い」とも言う。少女は「ただ抱いてほしい」。二人はそっと、やがて激しく交わるのだった…。 本作で感心するのは、少女の心理を巧みに描き出しているところだ。 男の愛人となった少女。彼女はセックスを反乱とする。まるで、阿片に溺れて家庭内を殺伐とさせる長兄を大事にする母親や、長兄自身に対するあてつけのように、自らの体を傷つけながら肉体的な快楽をむさぼり、金銭を得る。セックスに対するこういった感情は女性特有のものであると思われる。実際、世の中にも同じように考えて行動する女性も少なくなさそうだ。 愛人生活の中、いや、もしかしたらそれより前、初めて男と出会った時からの、男に対する少女の不安定で揺れ動くような恋心や愛情があちこちのシーンから感じられるところも本作に深みを与えている。 彼女がフランスに帰ることになり、男と別れる段階になってからようやく男への複雑な愛と、それが成就しない悲しみを自覚し始めるところも若干ドラマ的ではあるが、決して悪くない。 一方、男の描写は、少女のそれに比べるとソフトな――あえて強く言えば浮世離れした――描かれ方がされているように感じる。 緊張しながらも少女と愛人関係を結んだ男。頻繁にセックスする二人だが、そのプレイはどこか緩慢に見える。 父親の決めた相手との結婚をすることになった後、自らの欲望や気持ちを優先せず、少女の気持ちを考えるようになってしまうと、「僕を愛していない君は抱けない」と心を閉ざしていき、やがて性欲も消える。 少女の長兄が阿片でかかえた借金と渡航費を負担する。盛大な結婚式が終わり、少女が乗ったフランス行きの客船を黒いリムジンの中から(少女が見つけてくれるとは限らないのに)見送る。 こういった男の描写は、女性が好む、女性向きの描写のように思えてしまう。 原作が、フランスの女性作家による自伝的小説であることも大きく関係しているのであろう。本作のターゲットは女性なのではないか。 僕の結論。本作は女性向けである。男性側から考えると、女性の心理を知ることができる映画であり、女性と観ると盛り上がれる映画であるかもしれない。だが、心から楽しめる映画とは言えない。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2020-06-12 16:58:19) |
22. 越前竹人形
《ネタバレ》 昭和初期の越前の山奥。雪がそぼ降る冬のある日、亡くなった父親の跡を継いで竹細工で生計を立てていた喜助の元に、美しい女性が訪ねてきた。芦原から来た女性は玉枝と名乗り、父親の墓参りに来たと言う。敬虔に墓参りをする玉枝に惹かれた喜助は、その後、芦原に玉枝を訪ねる。玉枝は遊女だった。喜助の父親が玉枝の馴染み客だったので墓参りに行ったと言う。玉枝のいる遊郭に何度か訪ねるなか、身請けがあるかもしれないと聞いた喜助は、150円もの大金を玉枝に渡し「結婚してほしい」と言う。喜助の願いは叶い、ある日、嫁入り道具とともに喜助のところに来た玉枝。二人の新婚生活が始まるが、喜助は仕事に打ち込むばかりで、玉枝と同衾しようとしなかった…。 本作の魅力は、二人の繊細な気持ちのすれ違いと、それが生む悲劇を見事に描き出したところだ。 喜助が玉枝と同衾しようとしない理由は、彼の父親がかつて玉枝と同衾したと思うことからの複雑な感情だった。精神的には心から玉枝が好きでも、肉体的に愛することに抵抗があったのだ(劇中で、なぜ一緒に寝ないのかと聞く玉枝に「(玉枝が)母親に似てるから」と答えるところからマザーコンプレックスとする解説もあるが、僕はこの説を採らない)。 結婚後しばらくして、ひとり留守番していた玉枝のもとに、喜助の作った竹人形の取引のため、京都の人形店の番頭・忠平が訪ねる。忠平は玉枝の昔の馴染み客だった。酒をふるまわれていた忠平は、とつぜん玉枝に迫る。かつての馴染み客だったからか、取引先という弱みか、あるいは喜助に抱かれず体がうずいていたのか、玉枝は忠平に抱かれてしまう。 そんなことはつゆ知らず、玉枝への複雑な気持ちから精神的に荒れていく喜助だったが、かつての玉枝の遊郭で同僚だったお光から「父親は玉枝と一度も寝ていない」と聞く。憑き物が落ちたように晴れ晴れとした表情で玉枝に迎えられた喜助。ようやく玉枝を抱こうと思ったが、玉枝が突然吐き気を催す。玉枝は忠平の子を宿していたのだった。 最終的に玉枝が亡くなるところまで、ただただ幸せに生きたかった二人に訪れる運命のいたずらに、観ているこちらの心は痛みながらも、緻密に描かれた本作の構成に感心するのである。 華のあるキャスティングも本作の魅力だ。玉枝を演じる若尾文子の、親しみやすさのなかにある妖艶さはもちろんだが、忠平役の西村晃の、男の嫌らしさを体現した姿、お光役の中村玉緒の人の良い親しみやすさ、さらに、ラスト近くで登場する船頭役の二代目中村鴈治郎の、年配の男が持つぶっきらぼうな優しさとその存在感(ちなみに玉緒と鴈治郎は親子共演だ)。 そして、彼らを映し出す映像の美しさ。特に冒頭の墓参りの雪景色は絶品だ。宮川一夫の撮影の力だろう。 決して超大作ではないが、郷愁を誘う美しい風景のもとで描かれる悲劇。喜助の葛藤に同意出来かねる者もいると思われるが、ドラマを効果的に描くために必要な装置だったと僕は思いたい。 [DVD(邦画)] 8点(2020-06-11 16:57:16) |
23. 祭りの準備
《ネタバレ》 昭和30年代初め、主人公・楯男が住む高知の田舎町は、人々が肩を寄せ合うように生きる、極めて濃厚な人間関係が充満する町だった。治安も性的モラルも高いとは言えず、シナリオライターを夢見る楯男にとっては何もない町に見える。 父親・清馬は近所の恋人の家に入り浸り帰ってこない。そんな父親との関係をあきらめた寂しさからか、その寂しさの代償行為としてか、母親・ときよの愛情は楯男に向かっていく。その愛情は、楯男には少しずつ重荷になっていく。 信用金庫の仕事には生きがいを見いだせず、木曜会と呼ばれるうたごえ運動で出会う涼子(竹下景子)に心を寄せても受け入れてもらえない。楯男は、まるで吹き溜まりのような町から、また、現状から逃げ出したいと考えている。 そんな中、大阪のキャバレーで働いていた近所の幼なじみ・タマミが戻ってきた。ヒロポンの打ち過ぎでタマミは頭がおかしくなっていた。性に奔放なタマミは、夜の浜で毎晩、楯男の知り合いも含めた若い男と寝ていた。楯男もある夜、タマミのところを訪れるのだが…。 今回の再観で驚いたのは、48歳の僕が、二十歳そこそこの主人公・楯男に感情移入していたことだ。 まずは仕事という観点から考えてみよう。シナリオライターを仕事にするには、当時ならば上京する道しかなかっただろう。映画会社の近郊に住みながら、そして、映画関係者と連携を取りながら勉強を重ねていくことが必要だったと思われるからだ。 次は環境面から考えてみたい。これはあらすじから容易に導き出せる。どちらかと言えばおとなしいタイプの楯男は、町の若者からは浮いた存在だ。政治への関心は薄いようなので、木曜会メンバーと気が合うわけでもなさそうだ。涼子とも深い仲になれそうもない。それどころか、涼子は、都会から来たオルグの青年に惹かれてしまったようだ。家庭も居心地がいいとは言えない。結局、楯男は孤独なのだ。地元を離れることへの抵抗は少なかっただろう。 楯男の場合は、将来の夢と現状から逃避したい気持ちが一致して、上京という行動を起こさせたのだろう。こうやって考えてみると、上京したいという楯男の気持ちは、環境と感情に裏打ちされたものといえる。これなら世代に関係なく感情移入できるかもしれない。 ところで、今回は楯男だけでなく、楯男の祖父・茂義にも感情移入してしまった。これは僕の年齢とも関係が深いように思われる。 頭がおかしくなったタマミはどんな男も受け入れる。関係を持った多くの男の中、茂義は心からタマミに惚れ、愛して可愛がる。周りは「いい齢をして」と眉を顰めるが、誰の子を孕んだか分からないタマミの面倒を、新たな生きがいを発見したかのように見るのだ。女としてのプリミティブな魅力を持つ、若いタマミが明るく振る舞えば、年配の男はいちころであろう。中年となった僕には、その気持ちがよく分かってしまうのだ、ちょっぴり悲しいけれど。 一人で映画『南国土佐を後にして』を観た後(分かりやすい象徴的なタイトルだ)、楯男は涼子に声をかけられる。ダンスホールへ行った後、二人は宿泊する。オルグの青年と寝たと告白する涼子は、その傷を埋めるように楯男を求める。据え膳を食う形となった楯男だが、以前のような、涼子に対する情熱はない。宿直先にも夜這いに来る涼子。清純で聡明なはずの彼女も、欲と本能に流される人間だったのだ。宿直室が火事になってしまい、涼子が来ていたことが信用金庫の上司に知られてしまい、叱責される。これで楯男は、涼子への気持ちを無くしてしまったのだった。上京の動機へのダメ押しが成されたのだ。 ある朝、普段通りに家を出る楯男。飼っていたメジロを逃がし、あらかじめ隠しておいた荷物を持ってそのまま東京を目指すため駅へ向かう。駅にはタマミの兄・利広(原田芳雄)がいた。強盗殺人を犯し逃亡中だったのだ。利広は楯男に金をせびるが、楯男がこれから上京すると知り金を返す。利広に駅のホームで見送られ、楯男は上京への一歩を踏み出す。「バンザーイ」と見送った利広だけが、結局、楯男の上京を祝福してくれたのだった。 書いていて、目頭が熱くなってしまった。利広は、素行が乱暴で兄嫁にも手を付ける、どうしようもない男だが、最後に、本作を観ているこちら側は、彼を憎めない奴、いい奴だと感じてしまうのだ。この人物観の逆転もこの作品の魅力なのだろう。 最後に、ここまでの感想からこぼれ落ちてしまった本作の印象を書いておきたい。本作は男の世界だ。下品で猥雑、そして田舎の共同体の濃密な空気が充満した雰囲気。苦手な人もいるかもしれないが、僕はそこが大好きだし、何とも言えない心地良さも感じる。もしかしたら観る人を選ぶ作品かもしれないが、普遍的な青春を描いた傑作映画だと僕は思う。 [DVD(邦画)] 10点(2020-06-09 13:01:37)(良:2票) |
24. 切腹
《ネタバレ》 およそ25年ぶりに再観。と言っても内容は全く覚えておらず、当時から知っていた本作の高い評価に半ば引きずられたように「面白かった」「いいものを観た」という感想のみが残った。 いつか再び観たいと思いながら長い時間が経ってしまった。観た当時はまだ大学生で、社会に背を向けて生きる、極めて未熟な人間だった。あの頃と今で、いだく感想は変わるのだろうか、少しは深みのあるものになるのだろうか。そう思いながらじっくりと観た。 武家屋敷を訪ね、生活の苦しさから庭先を借りて切腹したいと申し出る浪人が多数現れた天下泰平の徳川将軍時代、江戸時代。こういった浪人たちは、その覚悟に感心した武家に召し抱えられること、あるいはそこまででなくとも、彼らにわずらわしさを感じた武士から金を与えられて帰されることを狙っていた。要するに一種のたかりをしていたのだった。そんな折、津雲半四郎と名乗る、やや齢を重ねた浪人が井伊家の江戸屋敷を訪ねてきた。庭先で切腹をしたいと言う半四郎に、井伊家の家老である斎藤勘解由は、先日、同じ用件で訪ねてきた千々岩求女という若い浪人の話を始めるのだった…。 ゆっくりしたカメラワークと、やや引き気味の優美なアングルによって、冒頭シーンから緊張感がみなぎる。それは、井伊家の屋敷の広さと豪華さ、そこに流れる厳粛な空気も見事に伝えてくれる。 仲代達矢の堂々とした迫力。三國連太郎の気弱で神経質、時には虚勢も感じられる言動。丹波哲郎の意地の悪さと強さ、若干感じられる狂気。出番は少ないが、小林昭二や井川比佐志なども含めた豪華キャストのもたらす存在感と重厚な演技。彼らの「静」からにじみ出る雰囲気も、画面に緊張感と迫力を生み出す。 持っていた竹光で切腹せざるを得なくなった求女。なかなか腹が切れないその切腹シーンは求女側から見れば哀れそのものだが、勘解由たち井伊家の武士側から、あるいは我々映画を観ている側から見ると、厳粛さの中に残酷さ、そして何とも言えない美学のようなものさえ感じられ、片時も目が離せない。まるで一種のショーを見るがごときシーンに仕上がっており、二重構造で作品を見せられているような、奇妙な気持ちにさせられる。 本作の上映は1962年。戦後からはそれなりの時間が経っているが、今よりも死が身近にあった時代だったのでは、そうも考えた。 岩下志麻も素晴らしい。登場当初の存在感は薄めだったが、求女との結婚後のお歯黒(!)、そして求女の亡骸と対面した時のわずかな戸惑いと激しい涕泣。僕も目頭が熱くなってしまった。 困窮した浪人はひたすらみじめだ。金を失い、物を失い、家族を失った半四郎を見ていると、もしも僕自身が経済的弱者になったらどうなるだろうと考えてしまい、胸が痛む。 剣劇シーンの静かな迫力も印象に残る。特に切り合う前のポーズが美しい。ただ、刀と刀を合わせるシーンは堂々としておらず、むしろ若干の怯えのようなものが見えたが、これはリアル感を狙ったのだろうか。 浪人の困窮を告発した半四郎は勘解由に一矢報いるが、最後は大立ち回りの末、惨めに死んでいくのであった。 脚本はさすがだ。それぞれの登場人物の言動が簡潔に、武士のイメージ通りに描かれていて、心情の吐露が多くないのに、各々の心のありようがうっすらと伝わってくるのだ。この「うっすらと」が人間らしさを表現しているように思える。武家屋敷内に横溢する大人の世界独特の嫌らしさも、脚本の力が見せてくれているのだろう。 ところで、観終えた今は、25年前と比べると作品との向かい方も観方も、人生を重ねただけ深くなったと思う。大げさな言い方を承知で言えば、生きているうちに観て良かった。同時に、この作品は年配者にも観てほしいと思った。もしも時代劇を○○○○のような予定調和的作品ばかりだと思っているとしたら勿体無い。それはそれで悪くないかもしれないが、かつてはこんな時代劇もあったのだと知ってほしい。 最後に一言。冒頭1分ほど観た時点で声が若干聞き取りにくく、難しい言葉があったので、字幕再生に切り換えて全編を観た。「照覧」「赤備え」「骨柄」など、その後も聞き慣れない言葉が頻出、字面を見たことでそれなりに意味がとらえられたはずだ。字幕が表示できるディスクで観て良かったと心から思った。 [ブルーレイ(字幕)] 10点(2020-06-06 04:04:58) |
25. 未来のミライ
《ネタバレ》 本作公開の頃、その評判は良いとは言えなかった。主人公くんちゃんの可愛げのなさと、今後の細田作品における脚本家の必要性が幾人もの批評者から指摘されていたと思う。そしてアニメーションから心が離れ始めていた自分自身の事情と、上記の評価のため食指が動かず、結局、劇場へは足を運ばなかった。 今回ようやく視聴したのは、昨年TV放送されたものの録画だ。 大まかに言えば、本作は、意外な来訪者――女子高生(?)に成長した、未来の未来ちゃん――などの関与によって、4歳の主人公”くんちゃん”がそれまでの小さくてどこかぎこちない日常から、大きな世界を見ることで、自身が成長する物語なのだろう。 中盤で、くんちゃんが若かりし頃のひいじいじとバイクで疾走するシーンは、戦後当時を彷彿とさせる映像的解放感が出ていて良かった。また、終盤、成長した未来ちゃんとくんちゃんが空を軽やかに飛翔しながら、様々な時代や別世界を観望するシーンには映像的快感があった。クライマックスとしての盛り上がりは確かに感じた。 こういったいいシーンもあるのだが、残念ながら、本作には大きな欠点がある。こういったヤマ場へ行くまでの段取りが非常に悪いことだ。ヤマ場にたどり着くまでの精神的苦痛が大きすぎるのである。それはキャラクターへの嫌悪感と不自然感によるものだ。 主人公くんちゃんは4歳ということで、それらしいわがままさが描かれているのだが、その描写がエキセントリック過ぎるのだ。 まずは、生後、新しく家に来た妹の赤ちゃん、未来ちゃんに嫉妬してちょっかいをかけるのは分からないではないが、嫉妬が強すぎておもちゃを投げようとするのはやり過ぎだ。いくらアニメとはいえ、赤ちゃんというデリケートな存在を壊そうとする、観ているこちらの心の奥底をドキッとさせる描写はいかがなものだろうか。 未来ちゃんの方を大事にし、自分を中心に見てくれない両親に「嫌い!」「嫌い!」と、やたらネガティブな言葉をぶつけるのもリアルかもしれない。だが、それも必要以上に繰り返されると、観ているこちらはイライラしてくる。気分が悪くなってくるのだ。顔を赤くして大声で泣きわめく描写も不快だ。 監督は子供をわがままなものと捉えているのだろうし、わがままな部分以外の、日常での子供の存在そのものを可愛さとして感じているのかもしれない。それでも、僕にとっては描写が辛口過ぎた。僕はもう少し甘めのさじ加減が好きだ。本作でも自転車の練習をするくんちゃんにアドバイスしたり、自転車に乗れるようになったくんちゃんに遊ぼうと言ってくれた子供がいたが、あれくらいの(リアルではないかもしれない)優しさがくんちゃんにも欲しかったし、自分ではいかがなものかと思いながらも、ここが本作で最も心が和むシーンとなった。 くんちゃんの不自然感も気になった。まずは声。先ほど書いた自転車のシーンの子供の声の方がよっぽどリアルで心地良かったし、キャスティングに何かしらの裏事情まで感じてしまった。それから「さびしかったよ~」などの、自身の気持ちを端的に分かりやすく発した言葉の数々。いずれも大人びていて、とても4歳には思えない。子供の感情って、一言では言い表せない、もっとモヤモヤしたものなのではないだろうか。 両親の描写も好きになれない。やたら自己主張が強い母親と、気弱で芯の通っていない父親。恋愛結婚のようだし、結婚して数年経っているはずだが、それにしてはよそよそしいし会話にトゲがある。育児が大変だから母親がツンツンしているとこちらに感じてほしいのかもしれないが、そういった描写の少なさからとてもそうは思えない。二人の精神的距離が離れているように感じられる。 終盤に描かれる両親の成長も、日常生活の一つと捉えればリアルかもしれないが、本作が映像作品ということから考えると、くんちゃんの体験や成長とリンクしていないのは不満だ。 ところで考えてみると、くんちゃんのわがままで大人びた描写というのは、中学生くらいの視聴者にとっては憧れなのではないだろうか。言いたいことが言えるし、それに自覚的でいられる快感が伴うのだ。 今や世界的に注目される細田監督作品としては寂しいが、本作のメインターゲットは中学生くらいまでなのかもしれない。 もう少しターゲットを広く、そして上に引き上げる作品作りをした方がいいのではないか。それには、物語を紡げると同時に、作品を客観視できる脚本家の存在は必須であろう。 アニメーション映像作家としての細田監督のセンスと実力に敬意を表しながらも、今回は、その素晴らしさゆえに甘めの評価をした前作『バケモノの子』よりは辛口の点数とする。 [地上波(邦画)] 4点(2020-05-17 16:58:20)(良:1票) |
26. 君の名は。(2016)
ロジカルで現代的な舞台設定を根っこにしながら、SF、ファンタジー、ラブコメ、さらにはアニメーション独自のダイナミズムやデフォルメがごった煮になった、不思議な手触りの作品だ。前半は複雑な情報が錯綜して分かりにくいが、中盤以降の展開や視点は観客の心をグッとつかむ方向にきちんとコントロールされており、観た後は観客に余韻が残る作りになっている。「面白かった」「感動した」と一言で言えない手触りや感想を、観たそれぞれの人たちが感じられる、多様性のある作品に仕上がっているのではないだろうか。 10分ほどで一気にここまで書き上げてみたが、まるで新聞記事のように客観的で血の通わない文章に自分で驚いている。観た後の、熱くて切ない気持ちがある一方で、大ヒットした現状に、どこかで冷めた気持ちも働いてしまうのだ。自分だけの作品、あるいはマイナーな作品であってほしかったと考えてしまう想いに何とも言えない寂しさも感じてしまうのだ。これがマイナーな世界で生きてきたオタク――と勝手にひとくくりにしてしまっていいのか分からないが――の一方的で病理的でもある、不思議な感覚なんだろうなぁ。 [地上波(邦画)] 8点(2018-01-04 04:42:37) |
27. HERO(2015)
僕にとっては東映オールスターキャスト映画のような作品(観たことないけど)。お馴染みのメンバーには安定感があるし、見せ場もある。ストーリーもシリーズを逸脱せず、収まるべきところに収まっている。一言さんお断りで安心感重視の作りなので、映画として、また映画館で観るべき作品ではないのかもしれない。だが今回のテレビ放送は、僕のようにテレビシリーズを全話観てきた者にとっては、スペシャル番組として充分に楽しめた。 [地上波(邦画)] 7点(2016-12-20 10:31:40) |
28. 生きものの記録
いわゆる超大作ではないだろうし、黒澤映画の中では時間が短い方だから、と気楽な気持ちで観始めた。だが、内容やテーマが想像以上に多重的で重く、観終えたあとの気持ちはとても重苦しい。この作品にある、原水爆への恐怖心から家族総出でブラジルへの移住を進めようとする主人公の立ち振る舞いのようなことは、たとえここまで大きな問題でなくとも、我々の生活のどこかにあるのではないか、と思う。僕自身の経験で言えば、こんなことがあった。10年ほど前に、仕事関係の会の有志で、軽く山登りをしようと計画したときのことだ。そういった試みは初めてのことで、ピクニックのようなコースを歩くことになったのだが、保険や安全装備などを必要以上に心配して、そういったフォローをとことんまでしようとする、一人のメンバーに辟易したことがあった。当時は、僕がそのリーダーに担ぎ出されていて、その行為に対して、そこまで心配しなくていいのでは、と消極的反対をしたのだが、そういった心配は正論と言えば正論だと、ほかのメンバーは誰も表立っての反対ができず、結果、リーダーとして、そのフォローに大変な負担を強いられたことがあった。それ以後、僕は山登りを計画しなかったし、とっくに交代した歴代のリーダーも、山登りを一度も行おうとしていない。そしてもちろん、そのメンバーは今も会に在籍している。僕自身のこういった経験からも、過剰な善意による、結果的な迷惑行為を止めるのは大変難しい、と強く思うし、それゆえに、この作品での、そういった問題を正面から描いたことによる重さに、すっかり参ってしまったのだ。しかし、この映画の重いところはそれだけにとどまらない。そういった迷惑行為がエスカレートすることによって、結果的に家族の生活基盤までもが崩壊してしまう。その崩壊に至るまでにも、主人公の、妾を含めた複雑な家族構成や、そこから見え隠れする人間の醜さがじっくりと描き出されていくのだ。確かに、それによって、この映画のドラマ性はさらに深みを増し、映画の完成度はさらに上がっている。だが、皮肉なことに、それが、観ている僕の心をますます重くしてしまうのである。上映当時の興行成績は良くなかったそうだが、それは、エンターテインメント性に欠けた、この映画の重さのためなのではないだろうか。徹底的に救いのない内容であるため、何度も観たい映画ではないが、ドラマ性のある作品を観たいという人にはお薦めしたい、非常に良く練り込まれた作品だと思う。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2016-05-05 16:25:43) |
29. 蜘蛛巣城
この作品のために作られた城のオープンセットをはじめとして、多くの馬や役者などからは、時間や手間、お金をかけているのが伝わってくる。こういった点は、黒澤作品ならではのゴージャス感として高く評価している。また、ラストでの、矢で串刺しになる主人公、鷲津武時の死にざまは、壮絶で美しく、そして迫力満点で、強く印象に残るものだ。しかし、その他の面においては、多くの不満が残る作品だったのも事実だ。まず、ストーリーに関して、理解はできるのだが、物の怪の妖婆の登場で見方が分からなくなってしまった。おとぎ話として観ればいいのか、実際にあったことのようにリアルな視点で見ればいいのか、それが僕の中で定まらないまま、作品が終わってしまった。つぎに、映像面に関しては、重厚ではあるのだが、シーンによってはバッサリ切れるだろうと思われるカットがあったり、明らかに間延びしているカットがあったりして、映像の流れと気持ちがシンクロ出来ず、気分が高揚しなかった。この原因としては、ゴージャスに作りすぎたために、編集段階で切り詰めることができなかったのかな、と勝手に想像している。それから、能などの伝統芸能を演出に取り入れていることに関しても、それが映像作品としての完成度を上げているかと考えると、疑問が残る。上記の、不要と思われるシーンやカットと同様に、その演出が、作品と僕の心のシンクロを阻んでしまったからだ。もっとも、これに関しては、伝統芸能に対する僕の素養が足りないのかもしれないし、この作品の公開当時と現在とでは、いわゆる一般大衆の、伝統芸能に対する経験値が違うのかもしれない。あと、人物描写で言えば、主人公の妻の浅茅には、最後まで強いままでいて欲しかった。主人公に主君の殺害を吹き込む前半と、殺害時に付着した手の血の幻を洗い流そうとする後半で、その描写が、明らかに齟齬をきたしてしまっている。最後に、音響面に関して述べてみたい。作品鑑賞の前にこのページを読んだところ、セリフが聞こえにくいとあったので、最初から字幕をつけて観ることにした。字幕によって、画面全体は観にくくなったが、ストーリーが追いやすくなったのは良かったと思う。それにしても、一番聞き取りにくかったのが三船敏郎の声というのは、意外と言えば意外だったかな。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2016-05-05 00:55:31) |
30. 天国と地獄
数年前に購入したクライテリオンのディスクチェックをするだけのつもりだったのに、作品の迫力に引き込まれて、結局、そのまま全部観てしまった。この映画を観るのは4回目くらいだと思う。初めて観たのは20年以上前の学生時代で、その時もとても面白いと思った。だが、当時はその迫力くらいしか理解できていなかったように思う。あれから20年以上生きてきて、あの頃よりはわずかではあるが、社会や人間、そして映像を理解できるようになった今の方が、この作品の偉大さがよく分かる。主人公の権藤邸をほとんど出ることがない前半の、カメラアングルを含めた舞台劇のような作りは、作り込み感が強くて僕好みではないものの、そのカッチリとした美しい構図は見事だ。中盤の、身代金受け渡しから誘拐された子供を迎えるシーンの臨場感とスピード感には、ここぞとばかりに盛大に使われた音楽の効果も相まって、涙が出そうになるほど心が震えた。犯人の捜索から特定、逮捕に至る後半は、極めて丁寧に作り込まれていて隙がない。最終シーンの、権藤と犯人である竹内の対決も見事で、竹内の虚勢を張りたいという気持ちと、そこからはみ出してしまった弱さは、人間的に未成熟な若者の姿を見事に表現している。さらに言えば、作品全体をシャープにしながら、同時に緊張感を持たせている大きな要素は、説明セリフを舞台や設定のために必要最小限に抑えながら、それぞれのシーンにおける人物の気持ちに関して、セリフではなく、その動きやカメラアングル、そして音で表現しきったというところだろう。使い古された表現だと思うが、こう思わずにはいられない。黒澤映画とは、映画が映像であるということを再認識させてくれる作品群である、と。 [ブルーレイ(邦画)] 10点(2016-05-04 15:32:00)(良:1票) |
31. バケモノの子
《ネタバレ》 細田流アクションホームムービーの傑作。息子と育ての父親、素直なコミュニケーションをとれないもの同士が憎まれ口を叩きあいながらも最終的に支えあう道を選ぶ。そこへ至るまでの構成や綿密な伏線の回収が見事。特に終盤、館内で鼻水をすする音が響いていたのもその証明になるはずだ。ただ唯一残念なのは冒頭の九太。母親が亡くなって父親が出て行ったあととはいえ、9歳の子供が家を飛び出すほどに父親や葬儀を済ませた親戚を嫌う理由が理解できなかった。そのために、映画開始から修行の旅まで物語にのめりこめなかったのは残念だ。 [映画館(邦画)] 9点(2015-07-11 23:39:23) |
32. 緋牡丹博徒 お竜参上
《ネタバレ》 「大アンケートによる日本映画ベスト150」で名作とあったので観ることに▼いわゆる東映任侠映画を観るのはほとんど初めて。しかもこのシリーズ第六作は第三作の続編だったらしく、客演的な登場人物――特に若山富三郎――、分からない展開、そしてリアリティよりもストーリー進行優先で見せる場面には少々疎外感が。▼だが一方、「任侠映画の傑作」と言われることには心から納得▼固定カメラ、特にアップで映される藤純子は美しく、そのまま一枚のポスターにしていいくらいアングルが決まっている。加藤泰監督の特徴とされるローアングルも、その構図が作品に重厚感と安定感を与えている▼そして巧みな脚本。始めは小悪党にしか見えなかった敵役の一家はどんどん罪を重ね、最後の大立ち回りで滅んでいく。それは僕ら観客のカタルシスを見事に盛り上げてくれる。様々な魅力を持ったこの映画は、結果的に「観て良かった」と思える仕上がりになっている▼特にリアルタイムで観た人には堪らない映画のはず。一方、僕のように後追いで観るには、ストーリーや映画自体の時代背景など、予備知識が必要だし、知識があればさらに楽しめる映画だと思う▼「なぜ「趣味は映画鑑賞」と聞くと、高尚な趣味だと思うのか? それは、たとえ娯楽映画であろうと、趣味として幅広く観るにはそれなりの知識を必要とするからである」。この映画と直接関係ない、そんなことを考えた。 [DVD(邦画)] 9点(2015-04-15 11:27:03) |
33. 二十四の瞳(1954)
《ネタバレ》 「大アンケートによる日本映画ベスト150」で名作と知り、ビデオレンタルで初めて観たのは大学4回生の時。画像が良くなくて台詞が聞き取りにくいというのが第一印象で、正直、内容や良さはよく分からなかった。それでも格調の高さは感じられたので、一応ダビングして保存▼二年前、そのビデオを当時小学3年の息子に観せたが、半ばでギブアップされる。曰く「面白くない」▼その頃にブルーレイが発売され、何となく購入。そして昨晩ようやく1人で鑑賞。この年になってようやく分かる。「確かにこれは名作だ」▼程良い広さと美しいロケーションを持つ小豆島。島の風景と、そこで描かれる村民の生活が素晴らしい。まずは風景を観るだけでも心が和む▼顔やしゃべりかた、立ち振る舞いで、それぞれの個性がよく出ている島の子供。その表情を丁寧にとらえたカメラワークも素晴らしく、容易に見分けられるそれぞれの子供に感情移入が出来、後に描かれる貧困や戦争による悲劇が一層胸にしみる▼その子供を誠実に受けとめる大石先生。高峰秀子の年齢に応じた演じ分けは本当に見事▼ただこの作品、何の予備知識も無いまま観ても面白くないのも確かだろう。映画内で語られる、ほんの90年ほど前に当たり前だった生活環境――例えば産後のひだちで母親が亡くなり、間も無く赤ん坊も母乳をもらえないまま亡くなる状況――は今ではほとんど見られない。こんな状況は、僕でさえ咄嗟には信じられない。ましてや今の子供が観たら想像さえ出来ないはずだ ▼ある程度の人生経験と予備知識が無いと感動を味わえなくなってしまった名作。そして、それが時代を誠実に反映して撮られたゆえのこの現状。歴史とは皮肉なものだ。 [ブルーレイ(邦画)] 10点(2015-04-05 00:35:24)(良:2票) |
34. 復讐するは我にあり
《ネタバレ》 昨晩見始めたきっかけは、「発泡酒を飲む間のつなぎ」だった。にもかかわらず最後まで観てしまい、350mLの発泡酒は半分ほどコップに残ったまま。それほど気持ちが入った状態での鑑賞となった▼この映画のDVDを買ったのは数年以上前だったと思う。これまで奥にしまいこんでいたディスクを、大掃除をきっかけに目のつきやすい本棚に移動。今回の視聴となった▼今、僕は43歳。この歳で、この映画を観られて本当に良かった。数年前ではここまで巌の行動を理解出来なかったはずだ▼自分勝手で攻撃的、ときに冷静で紳士的で理知的。これら、男が少しずつ持ち合わせている様々な性質。主人公の榎津巌はこれら性質を、本能のおもむくままあるいは意図的に駆使。結果、破滅へ向かっていく▼そこに理屈は感じられない。やりたいように、そしてやれるようにやる。映画内で巌の心の説明はされない。だがそれらの行為は充分に理解出来るものだし、それゆえ感情移入しながら観られた。この類型的でない主人公を見事に演じきった緒形拳は素晴らしい▼他のキャストでは、複雑な立場を細やかに演じた倍賞美津子、その迫力で緒形拳と互角に渡り合った清川虹子を評価したい。 [DVD(邦画)] 9点(2015-03-31 11:54:29) |
35. 座頭市物語
《ネタバレ》 20年ぶりに再観。いやあ、面白い。感心するのは、全編に渡ってプロットやドラマツルギーがとてもしっかりしていること。それが為に、座頭市と平手造酒の対決シーンの盛り上がりとやるせなさという、相反する感情がこみ上げてきて、強く胸を打った。俳優を見れば、まずは勝新太郎の、独特のちょっとした仕草や間からくる存在感が素晴らしく、逆にここぞという時の溢れ出す感情がカタルシスを呼ぶ。さらに言えば、天知茂のやつれの中に持つ人間性、柳永二郎の小悪党ぶりや、万里昌代の芯の強さと情熱もいい。 あとは、今なら決して使えない、あの手の言葉をバンバン使っているのも、登場人物の素性を考えれば極めて妥当でリアルに聞こえる。色々な意味で、今では絶対に作れない映画。一度は観る価値あり。 [ブルーレイ(邦画)] 9点(2013-12-16 00:44:33) |
36. かぐや姫の物語
《ネタバレ》 昔話は主人公の「個」よりも、シチュエーションを重視する。そしてこの映画は、テロップに脚本の名前はあるものの、昔話の竹取物語を忠実に劇場アニメにした印象がある。それゆえ、現代の映画を観る時の視点、つまりかぐや姫の心の移り変わりという視点から観ると、ついていけない場面が多々あり、観ているこちらの心が置き去りにされている感があった。観ている最中に思い出したのは、「太陽の王子 ホルスの大冒険」のヒロイン、ヒルダだ。その心から入れ込めないヒロインと、今回のかぐや姫は正しく一致。高畑監督の嗜好と竹取物語が一致したのだな、と興味深く思った。その一方、作画は全般に渡って見事。特に宴会の最中、月夜の中をひたすら山へ走り抜けるかぐや姫の作画は本当に見事だった。結論としては、純粋なエンターテインメントになりきっていない所を考えると、万人にお薦め出来るあ作品ではないかな。 [映画館(邦画)] 7点(2013-12-08 01:41:35)(良:1票) |
37. 悪い奴ほどよく眠る
冗長過ぎるきらいがあるし、首をかしげる所も無いでもないが、ラストの衝撃で全て吹き飛んだ。想像ほどのスケールは無かったが、重厚な出演陣の熱演もあり、なかなかいい映画だった。観て損無し、お勧め。 [ブルーレイ(邦画)] 8点(2013-01-06 23:45:29) |
38. 借りぐらしのアリエッティ
《ネタバレ》 水の描写や音響、音楽は見事。ですがラストの、引越しをせざるを得なくなったアリエッティ達と、翔との別れのシーンには引っかかりを感じ、スッキリ出来ませんでした。そのシーンだけを抜き出せば、それなりに感動的なのですが、それまで様々な原因をつくったお互いが、とってつけたように涙でお別れをされてもねえ…。全体的なストーリーの構成に問題があるのではと思います。 [映画館(邦画)] 6点(2010-07-17 23:43:52) |
39. スカイ・クロラ The Sky Crawlers
《ネタバレ》 原作未読、予備知識全く無しでの鑑賞ゆえか、展開に一部分かり難い点があったものの、押井監督ならではのテーマと作品のメッセージ、そして時代性が見事に一致した傑作。序盤は(作画やデザインも含めて)のっぺりした印象を持ってしまったキャラクターが、酒を呑み、タバコを喫むなどの細かな描写によって、充分な存在感を持つに至ったのにまずは好印象。そしてその存在感が、鑑賞後のやり切れなさをさらに強くしていることに感心。また、効果音や音楽も素晴らしく、音響設備の整った劇場で観るに値する素晴らしい作品に仕上がった。尚、これから劇場で観る方々へ。エンドロールが終わっても、絶対に席を立ってはならない。その後のエピローグが、さらにやり切れなさを強くしてくれるはずだから。 [映画館(邦画)] 9点(2008-08-03 01:08:37) |
40. 崖の上のポニョ
「面白い」ではなく、「凄い!」の一言に尽きます。ストーリーはあって無いようなものですが、その一方で子供の視点から見た世界観を、手描きアニメーションの技術を駆使して見事に、そしてゴージャスに描ききっています。映画の隅々まで気を配った作りでない分、大人の視線で視る人達からは非難されそうですが、子供の心で観れば、充分に楽しめることは間違いありません。宮崎監督がまだこれほどの力技を持っていたことには、本当に驚かされます。また、耳に残る主題歌アレンジやオーケストラ、そして久石氏のおなじみなメロディーも聴ける音楽も素晴らしく良かったです。うちの子供はまだ小さいので映画館には連れて行けませんでしたが、DVD発売の折には是非親子で楽しみたいと思っています。 [映画館(邦画)] 8点(2008-07-20 00:32:14)(良:1票) |