21. さらば、わが愛/覇王別姫
《ネタバレ》 はるか昔に録画したテレビ放送のビデオで鑑賞。 最初に見たときはそれほど感動しなかった。レスリー・チャンの美しさが嘘っぽく見えて、それで物語に入っていけなかった。 でも、二度目は、何故か違和感なく引き込まれた。同性愛的愛情を抱いていることや現実世界で逃げ場がないことで、舞台の上という虚構の世界でしか幸せを見出せない男が、現実の過酷な動乱の中にいやおうなく巻き込まれる悲劇。ひたすら美しいレスリーの舞台姿が逆に嘘くさくていいのだ。うその世界の中にしか幸せがないのだから。二度目で気がつきました。 コン・リーが派手に登場して、そういう破天荒な振る舞いをするキャラクターなのかと思ったら、結婚してからは意外と常識的な女になってしまったのが、不満といえば不満。でも、コン・リーも、苦労してやつれた姿ですら美しかったから、まあ、いいか。 [地上波(邦画)] 8点(2007-09-09 20:40:51) |
22. あした来る人
《ネタバレ》 「風船」と同じく、はるか昔に録画したビデオ。昔は民放でも深夜枠ではこういう映画をやってくれてました。すれ違いばかりの内実の伴わない夫婦生活っていうのは、どこか成瀬を連想させます。成瀬のような男と女の内面をえぐり出すような鋭さを期待するのは、この時期の川島雄三には酷なのかもしれませんが、それでもそこそこ面白かったです。三橋達也は、ホント、川島雄三作品では好感が持てない男ばかり演じていて、それが、今となっては新鮮で、むしろ好感が持てます(どういう文じゃ)。 [地上波(邦画)] 7点(2007-09-09 20:31:35) |
23. 風船
《ネタバレ》 もう15年位前にビデオでとったものを鑑賞。三橋達也はホント川島映画ではダメ男ばかりですね。北原三枝はもちろん、キレイ。でも、他の皆さんが認めてらっしゃるとおり、この映画はもう芦川いづみですよ。彼女の純真さが全てを救ってる。下にも書いておられる方がいましたが、私も最後の盆踊りのいづみ嬢の姿には、ガツンとやられてしまいました。森雅之も、私の知る限り、圧倒的にどうしようもない嫌な親父の役が多いのに、ここではかなりまともな知性の持ち主だったのが、新鮮でした。 [地上波(邦画)] 8点(2007-09-09 20:26:47)(良:2票) |
24. 生活の設計
念願のルビッチ初投稿。この軽さ。このスピード。すばらしいです。これぞルビッチ。 [DVD(邦画)] 8点(2007-09-07 05:53:00) |
25. 洲崎パラダイス 赤信号
《ネタバレ》 客観的に観れば、新珠三千代よりも芦川いづみを取るべきだ(いや、あくまで映画の中の話)。だけどそうならないのが男と女の常。恋愛って理屈じゃないって言う典型的なストーリー。意外なことに(失礼!)、川島雄三って、こういうネオリアリズモっぽいものもいけたんだ! [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-09-07 05:51:14)(良:1票) |
26. 青空娘
《ネタバレ》 日本映画専門チャンネルで鑑賞。若尾文子自身のインタビューが始まる前にあって、そこで「この映画はシンデレラなの」って語っていた。見始めて、なんとも甘ったるく手ぬるそうな展開に、「いや、これ、ハズレかな?」などと思っていた矢先、いきなりギアが入って一気に引き込まれてしまった。確かにシンデレラストーリー。でも若尾文子の文字通り若々しい魅力の前に、こんなシンデレラもありかな、などと思ってしまう。若尾文子主演でこんなに明るくすがすがしい映画があろうとは。確かに若尾文子ファン必見とうい【青観】さんのご意見に大賛成! [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-09-07 05:47:57) |
27. オープニング・ナイト
《ネタバレ》 これは、もう一つの『黄金の馬車』だ! 役者って、確かに、芸術作品の素材としては、もうこれ以上なく不安定で計算の立たない存在なんだよね。絵画が絵の具を材料として、小説家がペンと紙を材料にして作品を制作するのとはわけが違う。何より生の人間なんだもの。生の人間が素材となって、生の人間の生活を再現する、それが演技。それが演劇。その役者の「もろさ」「危うさ」をとことんまで突き詰めた作品。この息苦しさが演劇。この緊張感が舞台。2時間半、一切無駄がない、大傑作 [CS・衛星(字幕)] 9点(2007-09-02 15:16:29) |
28. 旅芸人の記録
《ネタバレ》 こんな長尺なのに、なぜか、これまでの生涯で四度も見ている…しかも毎回発見がある。もうすばらしいとしか言いようのない映画です。 下の方も書かれていますが、ギリシア神話、あるいはギリシア悲劇のアトレウス家の物語を知っていないと、理解が十分出来ません。 そういう、鑑賞者の知識を試すような映画は、原則的にはあまり好きではありません。でも、これはありです。私が最初に見たのは大学生のころで、そのころ、まったく背景的な知識を持っていなかったのですが、ただひたすら圧倒され、もっとこの映画を理解したい、と思ったものでした。その後、ギリシア神話の知識を身につけ、偶然この映画と再会し、そのときのあらためての感動ときたらありませんでした。たぶん、そういう映画です。 まだまだ十分な理解が出来ているとは思いません。きっと何年かしたら、またこの映画を見るのでしょう。 それでいいのではないかと思ってます。 [ビデオ(字幕)] 9点(2007-09-02 15:09:48)(良:1票) |
29. 黄金の馬車
《ネタバレ》 この映画、日本初公開以来(といっても、確か90年くらいのこと)、何度見たことだろう。それくらい好きな映画。この夏、また見直してしまった…そして、また、感動。 「舞台と人生はなぜ違うの? 舞台ではうまくいくのに人生では愛を壊してしまう。真実はどこにあるの? どこまでが芝居でどこからが人生なの?」ああ、こんなせりふを聞いてしまっては、もう、震えるしかない。 実人生で自分の居所を見出せなかったカミッラ、彼女が帰るのは舞台の上のみ。舞台の上でしかカミッラは存在し得ないのだ。「さびしいかい?」と問われて、「少し」と答える、ラストのカミッラ(=マニャーニ)の、絶品の表情。 至福! [DVD(字幕)] 10点(2007-08-31 22:12:23) |
30. 乳母車
《ネタバレ》 設定的にもキャスティング的にも(これに北原三枝が加われば)スタッフ的にも(原作&監督)、この後に来る大作『陽の当たる坂道』を予見しているのにびっくり。ていうか、ほとんどリメイクでな?と思わせるかぶり方だよ。キャラクターの魅力っていう意味では『陽の当たる』に負けますが、こちらもなかなか。この映画で宇野重吉の役どころは、あちらでは千田是也。ともに新劇の重鎮なのは、何かの偶然? どちらの映画でも変わらず魅力的なのは芦川いづみ。どちらの映画でも、不幸な役どころが不幸に見えない、稀有な魅力を存分発揮してます! [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-08-31 22:02:27)(良:1票) |
31. 泥だらけの純情(1963)
《ネタバレ》 浜田光夫って、こういう危ない、どーしょーもない男のほうが似合うよ。いい子ちゃんの演技は、ちょっと違和感を感じていただけに、つくづくそう思った。 この手の身分違いの男女の恋って、古今東西、繰り返されてきたけど、やっぱり圧倒的に幸せには終われないのだなあ。 ただ、ヌーベルバーグの生みの親みたいに語られる中平康だけど、この映画の時点では、ヌーベルバーグに追い抜かれてしまっているかな。ゴダールもトリュフォーも撮りそうな話だけど(いや、実際撮ってるか)、彼らのような覚めた視点が、もう少しあったらなあ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-08-07 22:56:32) |
32. 草を刈る娘
《ネタバレ》 かつての日本にこういう世界が展開していたことに、まず驚いた。夏の間にひたすら草を刈って、秋になったら去っていくって、モンゴル映画とかチベット映画とか、そういう世界だけのことじゃないんだね。 また、下の方も書いておられるような、糞だとかしょんべんだとか、そういう言葉が吉永小百合自身の口から、あるいは、その周りで口にされるということが、とにかく驚いた。いやあ、昔はアイドルにもこんな演技をさせて平気だったんだねえ。この手の文字通りの泥にまみれた演技を経て、今の吉永小百合はいるんだねえ。それがわかったことが最大の収穫かな。 破綻だらけの映画だとは思うけど、こういう驚きがあると評価が甘くなってしまうのです。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-08-07 22:43:48) |
33. 風と樹と空と
《ネタバレ》 別の映画のところで書いたけど、吉永小百合ってあんまり好きじゃない。特にいわゆる代表作の、完璧にサユリストの偶像になっているような演技は、ちょっと入っていけない。しかし、この映画は知らない吉永小百合が見られて、映画の展開としてはどうかと思うところもあるけど、全体的ににんまりしながら見ることができた。何しろ酔っ払ったり、やきもち焼いたり、いろいろな表情が見られて、ああ、吉永小百合ってこんな演技も昔はしたんだ、っていう意外性があったですよ。 東北からの集団就職から始まって、あれ?何だこのデジャブ?って思ったら、『Always』を先に見てしまったが故の、逆転現象。でも、この小百合のズーズー弁は堀北真希よりもよかった。 あともうひとつ、浜田光夫とハッピーエンドに終わらないってところ、展開としてはどうかとも思うけど、意外性という点ではよかったかな。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-08-07 22:35:29) |
34. 座頭市鉄火旅
《ネタバレ》 座頭市というと、たいていは三隅研次監督で語られることが多いけど、実は一番多く監督しているのがこの安田公義だ。その意味では、シリーズを支えているのはこの人といっていい。安田の堅実な仕事ぶりが堪能できる。東野英治郎の刀鍛冶がいい味出してるね。これこそ『折れた杖』ってタイトルを充てたいところ。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-07-17 23:22:19) |
35. 座頭市血煙り街道
娯楽路線の座頭市としては、一番面白い作品がこれだね。みんないい仕事している。 座頭市は、子供が出てくると、ホント面白い。同じ三隅で『血笑旅』とかもよかった。勝新の89年のリメイクや、シリーズの最後から二番目の『折れた杖』のようなえぐさが勝ってる作品においてすら、子供が出てくると座頭市の表情が緩むところがたまらない。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-07-17 23:16:52) |
36. 助太刀屋助六
賛否が極端に分かれてますね。でも、90分の小品としては、十分楽しめたかな。製作に当たっている映像京都は、大映が倒産したあとに残ったスタッフや監督たちが立ち上げた、プログラムピクチャーを支えた職人集団。市川版の映画版『帰ってきた木枯し紋次郎』や、最近の山田洋次監督の時代劇も支えている。今回もかつての大映映画を思い起こさせる職人芸が光ってる。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-07-17 21:28:33) |
37. 独立愚連隊
勝新の兵隊やくざシリーズと同じ世界観。こちらもなかなか面白い。しかし、三船、あの出番の少なさとあのキャラはないだろう。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-07-17 21:21:01) |
38. ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団
《ネタバレ》 脇の達者な役者たちがしっかりとした芝居をして画面に緊張感を与えているのは、毎度のことだけど、今回は特にそれが際立っていた。まあ、子供に付き合って吹き替えで見てしまうと、その味わいも半減なんだけどさ。ヘレナ・ボナム・カーター、近頃ますますキワモノ女優になってきた。好きな女優さんなんだけどなあ。でも楽しそう。 [映画館(吹替)] 7点(2007-07-17 21:19:39) |
39. 若き日の次郎長 東海の顔役
何度目の次郎長だ、マキノさん?! といっても私のフォローしたのは、かの東宝版『次郎長三国志』九部作だけだけど。このエピソード1、『三国志』と全然違う。でも、それが面白い! まさに痛快時代劇。続編が見たい! [ビデオ(邦画)] 8点(2007-07-11 22:44:05) |
40. 鴛鴦歌合戦
ああこの幸せな感覚。こんな映画が戦時中に作られていたなんて。 ものみな歌で終わる。千恵蔵も歌う。志村喬も歌う。志村喬の歌なんて、『生きる』のあの暗い歌しか知らない自分には何とも新鮮だったよ。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-07-11 22:41:29)(良:2票) |