21. ブロークバック・マウンテン
人目を忍んで恋をする切なさや,どう声高に主張しようとも世間に認められない哀しさが全編から伝わってきました。同じような状況は古くから身分違いの恋といった形で映画でもよく描かれてきたテーマでしたが,それが一転同性愛という形で描かれていたのはやはり新鮮で,すっかり見入ってしまいました。グスターボ・サンタオラヤによるオリジナルスコアの数々も素晴らしかったですが,やはり劇中で流れた"He was a friend of mine"という曲が素晴らしかったです(ボブ・ディランの曲なのかな?)。大自然をバックにした映像もよかったです。私自身未だに同性愛者への偏見を拭えない一人ですが,こうした映画によって考える時間を与えられたことは一つの機会かもしれないとも感じました。この映画の二人の切なさを思うと,テレビで同性愛者的なキャラクターをネタにしている有名人に唾でも吐いてやりたくなります。 [DVD(字幕)] 7点(2007-07-17 05:32:18) |
22. 逃亡者(1993)
面白いですね。意外と死刑囚の割にはフットワークの軽いこと,トントン拍子で逆転まで繋がることは映画ということで目を瞑って,単純にその過程を楽しむべき映画だと思うのでよしでしょう。最近は日本のTVCFで見慣れてしまったトミー・リー・ジョーンズがハリウッド俳優として生き生きとしていることには少々驚きました。キンブルほど頭の良くない私には,やはり冤罪というのは怖いものだなと思わされる作品です。 [地上波(吹替)] 7点(2007-07-09 11:09:50) |
23. 七年目の浮気
どうも主人公の妄想癖に頼り過ぎな感が全編通してつきまとっていました。普段なら気の利いたセリフやお洒落な展開で魅せてくれるはずのビリー・ワイルダーにしては,あまり心に残らない作品ということで心に残っています。有名な邦題,さらにマリリンの名場面の収録された映画ということで期待していただけに見てみて残念でした。 [DVD(字幕)] 5点(2007-07-08 00:11:31) |
24. 激突!<TVM>
単純に面白いです。ただの追いかけっこだけでここまで引っ張れるとは…監督の手腕に驚嘆しました。喫茶店のシーンが長いのは気になりましたが,徐々に危機感を募らせるドライバーと殺気を増していくトラックが終盤まで盛り上げていると思います。現実にも起こりそうな非現実を恐怖という形でうまく昇華させた作品ではないでしょうか。お見事。 [DVD(字幕)] 8点(2007-07-07 23:57:58) |
25. 俺たちに明日はない
《ネタバレ》 銀行強盗を始めた頃は世界を征服したような気分になったり,「仕事は銀行強盗」と自慢げに名乗ったりしていたものの,母に拒絶(というのはちょっと言い過ぎかもしれませんが)されたり警察に追われたりする日々の果てに,自分たちが世界を征服したわけでも何でもなく,徐々に居場所がこの世界からなくなっていっていることに気づくボニーが素晴らしかったです。二人がどんなに悪事を犯そうと結局は無力な存在であることが,終盤の映画全体から伝わる虚無感,そして呆気ないラストが哀しいほど象徴しているような気がしました。ラストが少々読めてしまったこと,ウォレン・ビーティのルックスが個人的には受け付けなかったのが残念でしたが。 [ビデオ(字幕)] 10点(2007-07-01 23:09:05)(良:1票) |
26. ターミネーター3
《ネタバレ》 僕らはこんな映画が見たかったわけじゃない,という映画の続編の典型ですね。私もターミネーターファンの端くれなので,こんな映画をターミネーターとは呼んでほしくないです。お前誰よ?と言いたくなるような違和感剥き出しのジョン・コナー,機能的には2から近年の携帯電話レベルのマイナーチェンジしかしていない敵役のターミネーター,また昔は好きだったクレア・デーンズが久しぶりに見たらすっかり老けてしまっていたこともショックでした。敵を前回より強くするのはわかりますが,ここまでくると逆に強くなっていないシュワちゃんが頼りなく見えてくるのも残念です。しかもT-Xの最期は,あんなんだったらT-1000なら復活したのでは?みたいなやられ方なのも消化不良。昼間のシーンが中心で緊迫感が全く引き出せていない点や,途中のジョークにもセンスがない点,監督はこんな作品で前2作に勝てるとでも思ったのでしょうか?お話になりません。序盤のアクションシーンに3点。 [地上波(吹替)] 3点(2007-07-01 22:40:29) |
27. ゾディアック(2007)
《ネタバレ》 とにかく長いですね。ゾディアックの影が見え隠れする序盤から中盤までは割と楽しく観賞していたのですが,ある時期を境に急にゾディアックが鳴りを潜めてからはテンポの悪い展開になり,すっかり眠くなってしまいました。実話ベースなので仕方ないとも思いましたが,それにしてもゾディアックが登場している場面としていない場面の緊迫感の差がありすぎです。しかしこういった猟奇性を闇だけでなく,昼間の場面でも湖の畔のちょっとした無機質な感じから演出したり,籠の中のリスが暴れる場面などもなるほどと思わされた気がしました。また,あまり劇中では描かれていませんが,ロバート・グレイスミスがあそこまでゾディアックにハマってしまった気持ちも何となくですがわかる気がします。補足かつ蛇足ですが,ゾディアックが意外とよく喋ることには驚きました。 [映画館(字幕)] 5点(2007-06-21 00:48:31) |
28. アミスタッド
映像に割と力がある(あくまで「割と」)こと以外は,スピルバーグ監督とは思えないほど不出来な作品でした。どうも描こうとしたものをうまく料理できず,結果としてテーマの大きさにこの映画が負けてしまった感が強いです。こういった社会派の作品がとても好きなので期待した分,残念でした。「シンドラーのリスト」も「ミュンヘン」も好きなのでスピルバーグ監督には挫けずに頑張ってほしいです(挫けたかどうかは知らないが)。 [ビデオ(字幕)] 2点(2007-06-05 02:24:35) |
29. チャーリーとチョコレート工場
《ネタバレ》 前半はさすがティム・バートンの世界といった感じでなかなか入り込めたのですが,工場の中に入ってからは新鮮味が足りず少し見飽きてしまいました。原色で作り出したせっかくの世界が,ヘタなCGにバランスを崩され台無しになっているのも見るに耐えませんでした。教育色を強く出した感じはさておき,最後のウォンカ親子のエピソードは完全に蛇足な気がします。子供に対しては「あまりわがままはいけません」,子を持つ大人に対しては「子供を甘やかしすぎてはいけません」,某世界的歌手に対しては「子供を夢の国へ引き込んでいたずらしてはいけません」この映画のメッセージはこんなとこでしょうか。「ビッグ・フィッシュ」でも同じような家を見ましたが,個人的にはチャーリーの家の傾いた感じが好きです。 [DVD(字幕)] 4点(2007-06-05 02:01:25) |
30. 千と千尋の神隠し
数ヶ月前にテレビで観ました。無駄な時間を過ごしてしまったという印象です。メッセージ性を込めたシーンを連発する割には一つひとつに力がなく,説得力に乏しい。見る側の力量を選ぶ作品だけに私に非があることも認めますが,娯楽作品として売り出している以上,やはり作り手にもこの映画を捌き切る力量がなかったように思います。宮崎監督はこの映画を「2001年宇宙の旅」的な,不思議な世界を舞台に含蓄ありげなメッセージを放ち,観る者それぞれに考えさせるような作品にしたかったのでしょうか?残念ですが全く比較になりません。 [地上波(邦画)] 0点(2007-05-15 14:37:54)(良:3票) |
31. サンセット大通り
《ネタバレ》 ビリー・ワイルダーとして見たら…あれ?という感じを受けました。意外と平易なストーリー展開や,ラストの銃殺される直前,プールの照明を点けたあたりは若干流れが不自然な気がしたのも残念でした。ただグロリア・スワンソンの真に迫る演技や,随所に現れる小洒落た台詞など,一見の価値はあるかと思います。 [DVD(字幕)] 5点(2007-05-15 13:47:31) |
32. ターミネーター2
《ネタバレ》 何度見ても改めてすごい作品ですね。とりわけ陳腐なアクション映画を見た後だと尚更です。無駄にCGを濫用している映画とは違い,CGにしかできないことを効果的に為して作られた印象があります。読みが浅はかな私は液体窒素づけでバラバラになったシーンでこれで終わりか?と思ってしまいましたが,その辺はさすがもうひと山用意しているところが憎いです。そういえば「1」を見たときもラストの方でまだ続くのかと驚かされたことを思い出しました。「エイリアン2」もそうですが,続編を当てることのできる監督は珍しいのではないでしょうか。 [ビデオ(字幕)] 9点(2007-05-15 04:13:06) |
33. ショーシャンクの空に
映画を趣味とする者ならば必ずや見るべき作品ですね。ティム・ロビンスとモーガン・フリーマンの二人の交流やラストシーンも素晴らしいのはもちろんのことですが,刑務所を舞台に次々と移り変わる人間模様や,狭い塀の中にいる間に変わってしまう外の世界への郷愁・情緒といったものが全編に漂っていてまた素敵でした。人が老いていくこと,罪を償うという意味,本当の善と悪…などなど,一つひとつ懇切に語りかけてくれるような作品だと思います。 [DVD(字幕)] 9点(2007-05-15 03:33:12) |
34. 天使のくれた時間
最近初めて見ました。てっきりよくある安易なラブコメかと思いきや、期待を遥かに超えた良作でした。名誉や地位、あるいは財産といったものを自らの才覚で勝ち得たとしても、それらを掴んだ手と逆の手は知らないうちに別の大事なものを手放していたりするもんなんですね。もちろん、愛や安穏と引き替えに栄光を失うこともあるとは思いますが、自分にとってはどちらが大事なのか、この映画を見て考えるのもいいと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2007-05-11 13:54:08) |
35. 太陽がいっぱい
《ネタバレ》 まさに「才人リプレー」ですね。しかしこの映画に「太陽がいっぱい」というタイトルをつけたところがまた妙のあるところだと思います。フィリップがちょっと典型的な嫌味な金持ちという感じがしたのはちょっとフィクションくさかったところですが、嫉妬から動機が生まれ殺人へと走ってしまう様子、またそれ以降冷静を装おうとするリプレイの様子がやけに緊迫感を生んでいます。嘘に嘘を上塗りするように、殺人が新たな殺人を呼んでしまう点や、正直ラストはこのままうまく行ってしまうのか?と一瞬思いましたがそうはいきませんね。どんなに完璧を繕おうとしても綻びが生じてしまう点もやけにリアルでした。ラストの海辺で「太陽がいっぱいだ」と呟くアラン・ドロンが忘れられません。 [DVD(字幕)] 6点(2007-04-21 18:58:06) |
36. タクシードライバー(1976)
夜の街を中心にした映像が非常にかっこよかったですが、主人公の行動には全く理解できる部分がありませんでした。狂気に駆られる経緯もしっかり描かれてはいましたが、このくらいのことで社会に対する厭世観に呑まれていてはこれからの時代は生きていけないでしょう。ただその狂気もフィクションの人物のものと割り切れば、どこか世界を変えたくて、それでも変えられないでいるような、この世界に生きている誰もが一度は感じたことのあるもどかしさを、見事に描き切ってくれた映画であることは間違いありません。 [地上波(吹替)] 4点(2007-04-21 01:53:12) |
37. サイダーハウス・ルール
《ネタバレ》 公開当時映画館で見ました。以降もDVDで再見したことがありますが、やはりいい作品ですね。趣のある片田舎を舞台にした、情緒溢れる物語にはラッセ・ハルストレムがぴったりです。全編を通し叙情的というか、感情を簡単には台詞にせずに表情や背景の描写、音楽などスクリーン全体で観る者に伝えようとしたような作りがとても好きです。最初にホーマーが孤児院を出て行く動機が微妙に弱いような気がしたり、途中少しだれる感がありますが、孤児院で育ったホーマーの生まれて初めて(のはずの)恋であったり、束の間の青春を過ごすホーマーの瑞々しさがとても印象的でした。個人的にはもう少し親の温もりを知ることなく人知れず死んでいく孤児にもスポットを当てて欲しかったところです。 [映画館(字幕)] 7点(2007-04-21 01:43:36) |
38. ある愛の詩(1970)
個人的には全く好きじゃないですね。。まずジェニー役の女優さんが全く美しくないこと。まぁそれは映画の本筋とは別にして、何だかベタベタな恋愛劇を真っ向勝負で見せつけらた感じで正直受け付けませんでした。ともあれここから現代の「オータム・イン・ニューヨーク」や「ウォーク・トゥ・リメンバー」といった映画へと続く布石的な作品になったのだとすればやはり映画としての価値は認めるべきでしょう。原題がまた「Love Story」という平易さにも驚きです。 [DVD(字幕)] 2点(2007-04-21 01:29:17) |
39. バリー・リンドン
《ネタバレ》 個人的に自然物の映像美は下手な映画監督の手にかかると安易になりがちなので、人工物による手作りな感じの映像美の方が好みなのですが、さすがはキューブリック、この映画のフィルムは美しいですね。大自然と対比させ、レドモンドが所詮世界の中ではただの一人の人間でしかないことを再三印象づけた後の、最後のダメ押しのようなあの一言はさすが心に響きました。模範的でない人物が登りつめ、結局は失墜してしまうストーリーを決して道徳的だったり説教じみた演出ではなく、人生の無常観をして鮮烈に観る者に与えてくれる作品です。長さを感じさせない演出も見事ですが、最初にレドモンドが恋した従姉が、ある時期を境に一度として風の噂にもならなかった辺りがレドモンドの変わっていった現実さを象徴している気もしました。まぁ終盤でまた例の従姉が登場したら随分と陳腐な映画になってしまっていたでしょうが。 [DVD(字幕)] 7点(2007-04-10 01:40:47) |
40. 2001年宇宙の旅
宇宙を移動している間の冗長な映像はさておき、未来を予言したかのような21世紀の描写はひとつの芸術品と言っていいでしょう。細部まで練られたインテリア、無重力空間の視覚効果、窓から見える宇宙空間の幻想的な脈動…それら一つひとつが息を呑むほどの力を持っています。観る者全てをまさに宇宙の旅へといざなう、歴史的作品ではないでしょうか。キューブリックは音楽を巧みに使うのは勿論ですが、この映画ではHALの叛乱というサスペンス要素を静かに際立たせる上で、沈黙を随所に挟むことによって誰もいない宇宙空間での人間と人工知能との闘争を、見応えたっぷりに魅せることに成功していると思います。 [DVD(字幕)] 8点(2007-04-10 01:20:54) |