21. バベル
《ネタバレ》 四つの話が、密接に繋がってないところがミソで、そうなるとどこか作って「お話」的になってしまう。ほんの少し掠る程度で、繋がっていることで、四つの話を一つの話に入れる契機としているだけ。この監督は、「不可避的、運命的出来事に押しつぶされる人間とそこからの再生の可能性」を歌っている。テーマを一般化するために、四つの話を並べているだけである。「バベル」というタイトルを付けたのも、言語は違うけど、人間同じなんだ、という人間の性を一般化したい監督の意図が伺える。最後のうまさは、見ている人は、「女の子」死ぬんだと思わせて(彼女は死に場所死に方を探していたのでしょう。その前に、アレを、ってことですね、最後に分かります)、実は、「救いの手」を差し伸べた点、ある意味、どんでん返し。監督の人間性を信じる姿を感じる。メキシコのおばさんが救われないのもワザとらしくなくていい。むしろ、ラストのどんでん返しの布石になっている。刑事さんの手紙は、きっと「私、死ぬのを辞めます」だったはずだ。 [DVD(字幕)] 8点(2011-01-02 19:58:59)(良:1票) |
22. 運動靴と赤い金魚
《ネタバレ》 金魚こそ、祝福の、激励の、そして、今度来る新しい靴の象徴。足にキスするのは、良き未来があることを述べ、痛む足をケアし「よくやった」と伝え、靴くるからね、と足をつついている。悲しみの象徴で終わる映画は山ほどあるが、幸福の象徴で終わるのはそうない。子供の時って、本当に純真で、どうでもいいことで、津波が来る位の心配をして、言いたいことも言えず、悔しいけどがまんしたりして……この感覚を持ったことがない人、おそらく裕福な家でお育ちの方でしょうが、この映画は何にも分からないでしょうね。主演の二人の子供がかわいいという意見が多いですが、なんてことはない、そこには自分の小さな頃の顔が鏡のように映っていただけですよ。 [DVD(字幕)] 9点(2010-12-27 21:38:52) |
23. 瞳の奥の秘密
《ネタバレ》 画面が黄色みがかっている。古写真を見るような感じで、古めかしい。でも、それもわざとでしょ。時々、スタイリッシュ。冒頭の横切る人だけが、残像とか。ほら、なんか、ちょっと「セブン」風。そうそう、サッカー競技場の上空から、ずっと降りてきて、観衆の中の主人公のアップまで、ワンテイク。あれ、CG使うんだ、とアルゼンチンを少し馬鹿にしていた自分を反省。役者の老けた顔もCG? どうなのかな。いろいろと仕掛けがあって、嬉しくなる。「終身刑」って言葉がその筆頭。きたね、これ。それに、みんな気がついたかな、上司の婚約パーティーの写真に写った主人公の顔。好きな人をじっと見ているの、犯人の写真の中の視線と同じで。もう、映画のタイトル通り。「好きだったら、何も言えないさ」みたいな台詞もあった。ミステリー的には、どうだってトリックはないけど、これ恋愛映画、それも、大きなテーマを投げかける映画。「過去」をどう捌くのか。最後の5分前まで、過去は過去だ、忘れなさい、って話で終わるとみせて、あああら、大変。過去は忘れられるものではないさ、ならば、それを直視して、未来に向かおう、って、どんでん返し。メモ用紙に一字足してさ。そして、さぁ、生きようって、最後にドアが閉まるんだ。僕は「セブン」より好きだな。 [映画館(字幕)] 9点(2010-10-04 20:34:43) |
24. 去年マリエンバートで
《ネタバレ》 映像が物の客観を伝えるもの。しかし、事柄は、各人格の主観のからみでしか、浮き上がらせることはできない。男の主観が語る、女の主観が語る、現在を描写する客観が挟まる。その客観をカメラが補足する、もう一人の男の話が客観として割り込む。そういう構成で、作者は考えた。後は、どう組み合わせるか、この組み合わせのはめ込みに、工夫を懲らそうか、む、それが芸術だねって感じでおしゃれに行こうか。ばらばらにはめ込んでね。時間という客観を破壊しなきゃ。舞台が同じだから、過去と現実をちょっといじくってみようか、ほら、過去の回想場面に現在の会話をいれるとか、その逆だとかおもしろいんじゃない? マイナーな役の人は、ちょっとじっと静止してくれない。そうすると、ほら、なんかマネキンを配したみたいに、映像に立体的な感じが出るし、全く本件に関係ない外野って感じもでるし、思考が回る瞬間の一瞬を表していそうで、頭の中がくるくる回るって感じが出るでしょう。それに、フランス語の語感も、なんか、アンニュイな感じ、これを繰り返すと、不思議だが、心の苦しみの感じでたりしてね。バラック風なBGMも苦悩を表現するのにいいよね。画面のシンメトリーも映画自体が細かく作られていることを表すのにいいよね。または、人間心理の構造を示しているし、心理主義かって…… なんて、考えて作った映画なのじゃないかしら。話は、三角関係でどっちを選択するのかって、単純なんですけど。でも、最初は、男性の妄想と、女性の恋に対する、恐ろしいばかりの、忘却、って、平行線で最後までいくのかな、とか思ったら、(そこら辺を「羅生門」を参考にしたんでしょうけどね)、それなりに、女性の葛藤があって、普通のエンディングになりました。平行線のままのほうがよかったりしてね。 [DVD(字幕)] 9点(2010-05-05 22:30:17)(良:1票) |
25. スラムドッグ$ミリオネア
《ネタバレ》 スラムの話を語るのに、クイズ番組を通してっ、というアイデアが良くて、それでOKじゃないですか。暴力に偏ると、やーい、あのブラジル映画の二番煎じだ、って言われますからね。二点ほどコメントを。トイレの「あの」中に落ちるというシーンに笑いましたが、後で映画のデータを見ると、「トレインスポッティング」の監督さんなのね、まぁ、やれやれ、また、って思いました。もう一点、ラストの方の、作る側と見る側の駆け引き、が面白かったという点。お兄さんが携帯を渡した所で、見る方はもう「これはライフライン、来るな」と予感させて、ま、その通りになって、でも彼女が「私も知らない」と来て、見る方はヒックリ返ってしまう。作る側の思惑通り。で、問題が「三銃士」に関して、実は、これ、多くの人が誤解している問題ではないのですかね。だいたい、ダルタニャンという名前が有名で、もう三銃士の一人は彼だっと思っている人が多いはず。で、彼が選んだ、選択がA、でした。そうじゃないだろう、と多くが突っ込んだ。でも、「正解でした!」と来る。また、ヒックリ返って、ね。作る側の思惑通り。そして、映画が終わって、踊る、という、えっ、という映画でした。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2009-05-11 20:29:30) |
26. ダンサー・イン・ザ・ダーク
《ネタバレ》 意味がわからない、とのコメントが多いですが……そうでもないんじゃないかな、そういうコメントを書きましょう。これ、見ていたら、アンデルセンの「マッチ売りの少女」と同じだなぁ、と思いました。不幸の中での一瞬の幸福、その瞬間の喜びと対比される生きる辛さ、同じテーマですよね。方やマッチ、これはリズムを刻む音。主人公の理不尽なまでに不幸な様子に、救いようがない、とのご意見が多いですが、救いようがない不幸を用意しているのです。この映画に救いようがないからどうかしろ、と言うのは、マッチ売りの少女を助けないからつまらない作品だ、と言っているのと同じようなこと。私たちは不幸の中にこそ人生の真実の断面を感じます。結末は見えたようなもの、ただ興味は最後のマッチはどういうマッチかということ、自分の心臓の音とは!参りました。調べてみると、この監督、デンマーク出身とか。アンデルセンの国です。 [DVD(字幕)] 8点(2009-05-05 17:32:36) |
27. 野いちご
《ネタバレ》 ひとつ、対比の構造を確認してみましょうか。現実と夢(うまく繋がっています)、老と若(明るい若者と苦渋に満ちた老人)、自己評価と世間の評価(自分に対する評価は夢を通して表現されているけど、自分は駄目だと思っている模様)、自分と母親の関係と自分と息子の関係(同じような冷たい関係がなんとも遺伝だなぁと思う)、禁欲と放蕩(映画を見るとだんだん「いい人」すぎるんだ!と分かってきます)自分と妻の関係と息子とその嫁の関係(これまた、同じ)、宗教と無神論(どっちに傾きすぎてもいけないのでしょうか、笑いを取るシーンに使われているから)、そして、生と死(全編に死のイメージを貼り付けて、生の意味を提出してます)等…… 言葉で書くと「生きる意味」なんて、ちょっと薄っぺらになりそうなんですが、それを映像だけで示してくれています。そこに、この映画の良さがあると感じました。凄い映画です。 [ビデオ(字幕)] 10点(2009-04-11 18:20:30) |
28. 桜桃の味
《ネタバレ》 おじさんが道を教える。荒れ地の道と人生の道と。見ている方はその二つの意味にああそうだなとか単純に思う。そう世の中には美しいものがあるから生きるんだよね、とそんな映画だと思わせる。最後の月とか雷とか、そんなこと言ってるんだろうとか感じさせる。ところがどっこい、最後には、「なーんちゃって、たかだか映画、ちょっとシリアスに考えた、はははは」という、すっごい肩すかしが待っている。あれっと、思いつつも、でも、やっぱりおじさんの桜桃の味の話をみんなに聞かせたいんだと思う。そう、真面目すぎたこと言ったもんで、照れてるんですよ、監督は。 [ビデオ(字幕)] 8点(2009-04-07 22:29:06) |
29. HANA-BI
《ネタバレ》 子供を失った悲しみ、これが映画の底流にあって、その胸を裂くような辛さを感じなければ、この映画の味わいは分からない。あとの不幸は、追加。花火を見上げる親子の絵、絵自体がいかにも子供のお絵かき、マンションにとめてあった三輪車、それを片付ける元刑事、しかし、小さな子供の靴はちらっと見るだけ。お寺の鐘に来た子供、元刑事は妻が思い出して辛い思いをするのだろうなとわざとオチャラケて鐘を鳴らす。最後の凧揚げの女の子は、二人が本当に見たかった光景。元刑事も傷ついてはいるが、妻の方は絶望している。その絶望を埋めるべく、静かに(妻がいないところで)荒れ狂い、妻に優しくする夫。夫の心を知っている妻。だから、「ありがとう、ごめんね」と言う。私達は二人の愛の形を静かに味わうしかない [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2009-04-05 12:03:56)(良:2票) |
30. 初恋のきた道
《ネタバレ》 「もうお父さんと会えないんだよ」と老婆が泣きながら言う。この単純な言葉に心を動かされなければ、退屈な映画かもしれない。老いた後、そんな言葉言ってみたい、言われてみたい……だから、この映画はお伽噺、恋のお伽噺、きれいな絵がついたお伽噺。話を盛り上げるドラマはほとんどなし。ただ、人を思う恋心があるだけ。そんな単純じゃないよと言う現実的な方もおられましょうが、だから、お伽噺と言うのです。一方、途中から主人公が涙したら、涙し、嬉しかったら嬉しく思うくらい感情移入した方も多いはず。私もそう。「初恋のきた道」っていい題だなぁ、あの村への道のことかもしれないけど、でも、道の終わりに「もうお父さんと会えないんだよ」と悲しむ、悲しむことができる人生を指しているんだろうなぁとか思っている。 [DVD(字幕)] 8点(2009-04-04 18:19:19) |
31. 8 1/2
《ネタバレ》 作家の苦悩が映像に映し取られているという表現の凄さ。映画とは外面を切り取るだけのものです。人物の内面を表現するなら、演技表現はもとより、夢や妄想という頭の世界かメタファーを配置するしかないのでしょう。これはその映像表現の頂点と言える作品。おそらく、幾万の映像作家が挑んだテーマなのでしょうが、タルコフスキーやベルイマンあたりを除いて自爆したのではないでしょうか。難解な映画?、いえいえ、そんなことはないですよ。心の中の苦しみ、を丁寧に拾って見てもらえれば、だんだんと周りの人物もが疎ましく思えるようになってきますよ。そうなると、どうにも救えない映画なのですが、ラストでちょっと光を与えてくれます。喜劇なトーンを見せてくれました。私たちはこの映画は「人生は祭りだ」そういう事が分からない男の喜劇なんだと少し安心したりする訳です。 [DVD(字幕)] 10点(2009-03-31 11:46:01)(良:1票) |
32. 暴力脱獄
《ネタバレ》 いろいろと映像的なメタファーがあって、いろいろと想像するとおもしろい。並んだパーキングメーターの頭を落とすのは、どこかのグループの仲間を一掃したのではないか。車掃除のおねぇさんのシーン、ホースはもう男性器の象徴、ルークがぶら下げた栓抜きは、十字架を茶化したもの、最後の教会への「神の救いの無さ」へと繋がり、サングラスは非人間、卵50個喰いは囚人50人の数とかけて、彼がその場のトップに立つことの象徴……などと見るとニューマンのニヒルな演技とあわせれば、この映画が名作といわれるのも分かるのではないでしょうか。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2009-01-25 12:12:02) |
33. ヒート
《ネタバレ》 この映画の良さはみなさんが書いてある通り、主人公を始め、登場人物の公私それぞれの苦闘苦悶を、渋く描いたところでしょう。それよりも、気になったのがゴッドファーザー2でも主役を張った二人はこの英語で共演とはいえ、同じ撮影の場に立ち会わなかったのではないか、というのが気になって気になって。コーヒーショップのシーンもどうにもパッチワーク、ラストもどうにも後ろ姿が代役……なんだか、大物二人の関係の緊迫感を感じて、こっちのつばぜり合いの方が、ヒート!だと思いました。、 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2009-01-25 11:58:15) |
34. 地球が静止する日
《ネタバレ》 ある勝手な想像。これはアメリカの民主党が大統領選挙の資金稼ぎに使うために作ったと見た。We can change. とあのキャッチフレーズが強調される。そう、変われるのだ、と選挙民に刷り込もうとした。だが、あまりに出来の悪い映画のために、その効果が逆になると判断した。ヤバイ、これは地球が静止した日ではなく資金が静止した日になる。だから、公開を選挙後の今にした……私の1800円は民主党員の選挙勝利新年パーティーの料理代にでも回されるのだろう。人生初の政党への資金援助。落涙。 [映画館(字幕)] 3点(2008-12-27 09:50:35)(笑:2票) |
35. バタフライ・エフェクト/劇場公開版
《ネタバレ》 「マトリックス」以降、「メメント」「ドニーダーコ」「エナーナルサンシャイン」などと流行りの多重世界もの。バタフライ効果、昔、ブラッドベリーだかアシモフだかのSF短編でタイムマシンで行った過去の恐竜世界に足跡一つを残したために現代に戻ったら世界が変わっていたという話があったが、その発想と同じ。確か藤子不二雄も同じような短編があったと思うが、それは近所の花の色が変わっただけだった。その発想が元になって、black out と絡めてアイデアを捻り出した時点で勝利。脚本はあれこれといろいろな設定ができるので楽しかっただろうなと想像。演じる方もいろいろな人生を演じられるので楽しかっただろうなとこれまた想像。そして、見ている側もどう終わるか、また、どう終わるべきか、といろいろと想像ができて、楽しい。人生がころころ変えることができる映画が出るなんて、「失敗したらリセット」という、RPG世代ならではの映画なんでしょうね。 [DVD(字幕)] 7点(2008-11-30 12:19:58)(良:1票) |
36. ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
《ネタバレ》 赤茶けた荒涼とした土地に「石油」が眠っている。ブラッド…見えない所に熱く堪り、事があれば吹き出す石油への比喩。日焼けで赤茶けてざらざらしたオイルマンの顔、その下にも「血」が流れている。石油と血、というどろどろした液体のメタファーで、潤いの無い大地と人間性の欠片もない人間を繋げ、二重映しでドラマは進む。結末は悲劇になるより他はない。ただし、インチキ宗教家をやり込めるラストは予想外。人間の少しはあるはずの良心/宗教心(インチキ宗教家をいいように捉えての提示)を完膚無きまでに蹂躙して終わる。だからといって救いがないのではない。救いの無い人間を描くのは、ヒューマニズムを信じたい事の裏返し。「血があるのだ」と最後にタイトルが出る。制作者の裏返った願いがこもる。人によってはボギー主演の「黄金」の人間の強欲の虚しさを思うだろう。結末に「ジャイアンツ」のJ・ディーンの末路と重ねるだろう。心の闇とその転落のドラマに「市民ケーン」を見る人もいるだろう。市民ケーンの幼少の傷は、このオイルマンでは無神論/物欲主義として、摺り合わせてみるのも面白いかもしれない。 [映画館(字幕)] 8点(2008-05-19 19:51:17) |
37. 突然炎のごとく(1961)
《ネタバレ》 愛の形を教えよう、とこのフランス人監督。唯愛主義というのかな。カトリーヌの自分の心に忠実な、心がころころ変われば愛のベクトルも変わる、その心のままに愛を貫く。ジュールはただ愛すために愛する人を自由のままにさせる。複雑な愛が存在する。ジムは考えて考えて常識的な愛を求める。妊娠だの、友情だのを気にしている。私達が知っている愛は、否定されているようだ。人間の形を借りて、愛というものが、縺れ合うのを見せる映画なのか。人間よりも抽象的な「愛」である。映像にどこか夢のような、実態の無い、浮いたような感じがある。ニュースの映像を入れたり、空撮を入れたり、一瞬のストップを入れたり、早い展開……人間という物質の重さを排除し、実態の無い愛を表現するための工夫かもしれない。音楽はただただ明るい。安物の紙芝居に会いそうな、なんの象徴にもなっていない音楽。これも妙に人間の無化に役立っている。映像はお洒落だ。紙に火をつけて服が燃えたシーン、突然河に飛び込んだシーン、戦場が墓地に変わってそこを歩くシーン、この三つがラストシーンにつながっている。この監督、映像の詩人でもある。 [DVD(字幕)] 9点(2008-03-17 22:52:43) |
38. ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ
《ネタバレ》 笑った、笑った。それに、何だかいろんな映画を連想しちゃった。冒頭は「フーテンの寅さん」? いかさまの映画かと「スティング」? 音楽と映像とブリティッシュが「トレインスポッティング」? 軽口叩くギャングといろんな人間がでてくるのが「パルプフィクション」? このタランティーノ繋がりで双方全滅は「トルゥー・ロマンス」? そのオルゴールの音楽は「続夕陽のガンマン」の決闘シーン、んんん、三角決闘へのオマージュ? その親子二人は「子連れ狼」? 四人組は「ロード・オブ・ザ・リング」やビートルズ以来イギリスの伝統?それに、新喜劇のポコポコヘッドのおじさん、顔も声も似てるんだ!とまぁ、あれやこれやを考えてしまいました。 [DVD(字幕)] 8点(2008-03-16 22:49:00) |
39. 善き人のためのソナタ
《ネタバレ》 彼の心変わりが分からない? そんなコメントを散見しますが、それならば、の私なりの一言。盗聴の後、街灯の明かりも暗い、静かな街をこつこつと歩くシーンがあります。こつこつと、です。皆さんも夜歩かれたら感じると思います。そんな時頭の中のいろいろな思いが奥へ奥へと沈んでいくのを。まさに、その象徴。自分の足音を聞きながら、彼は考えが深まっていきます。最初は女優が好きだったのでしょう、次に芸術家が自分の理想に近い社会主義者であるのも知ります。それだけではありません、芸術家の人生を見て自分の心の中にも芸術の心があるのが分かってきます。(映画の中の芸術家分析のタイプ4とは彼のことでもあるのでしょう、また、ソナタはそのことの象徴でもあります)。自分の孤独と愛し合う二人の幸福も比べます。最後に、体制側の腐敗も(見て見ぬ振りをしてきたのでしょうが)我慢ができなくなってきます。夜の道をこつこつと一歩ずつ進む姿は、その音一つ一つにあわせ、彼の頭の中でそんな思いがこつこつと重なるのです。それは、限界点に来ます。ある時、そう歩いて、エレベーターに乗り、子供と居合わせます。「ボールの名前は?」この瞬間こそ、彼が全てを覚悟した瞬間だと分かるのです。迷いが消えます……人間の(優しい)思惑のため(たとえば、彼女を巻き込みたくない、たとえば、今回は見逃してやろう)少しずつ少しずつズレができて、ドラマが進み。クライマックスへと向かいます。「私のための本です」の二重の意味で、ラスト、画面は止まります。彼の人生に、見ている私達もプレゼントを(本のプレゼントもモチーフです)してあげた気持ちになりました。涙が止まりませんでした。 [DVD(字幕)] 9点(2008-03-11 23:26:17)(良:2票) |
40. ラブ・アクチュアリー
《ネタバレ》 ロックスターの本当の恋に嬉しく思い、少年の走りに声援を送り、その父の悲しみの立ち直りに安心し、夫婦の危機で妻の心が痛く分かり、首相の恋は王子様物語のように夢を見させ、アメリカへの妄想兄ちゃんの成功に苦笑いし、言葉を越えて愛が成り立つ事を再認し、仮の愛が本物になる裸の二人にくすりと笑い、身内を優先させて恋を駄目にした彼女に自分を重ね合わせ、紙芝居で語る男に一番かっこいい失恋を見る。Love acutally is all round. 「愛は実に周りにあふれてるではないか」そう映画は言う。たくさんの愛の形を揃えて、そう映画は言う。愛の素晴らしさを心の宝物のように大事にしている人は、幸福感で胸が一杯になったことでしょう。個人的には紙芝居の兄ちゃんの台詞 Enough. は一番心にしみたなぁ。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2008-03-05 23:36:48)(良:1票) |