21. 蒼き狼 地果て海尽きるまで
《ネタバレ》 一言で表すと・・・「和定食」ですかね。食に見た目も栄養も細やかに気遣う日本人好みになるよう、あれもこれも少しずつ盛り付けてみました、と言う感じ。 ハリウッド映画なら、これだけのスケールとお金を掛ける場合「うな丼」一本勝負で来るはずだ。良くも悪くもこれが魅せたい所だよ!という部分に欠けたのが残念。 目を奪われる壮大な風景、小道具も服装もとってもいい。脇を固めている俳優も実に好い。弟役ハサル(袴田吉彦)なんて、テムジン(反町)よりカッコイイ。脇を従えて草原を馬で走るシーンなどは、出演者皆の身のこなしが優雅で惚れ惚れする。とくとご覧あれ。ただ、女性の描かれ方が「まあ、可愛い子を出しておけばいいか」感が抜けない。それもやっぱり詰め込みすぎが原因だと思う。 その沢山のエピソードの中で、心に残るのは息子ジュチとの感情のもつれ。出生の解らない息子とは言え、かわいそ過ぎる!だって、自分と同じ立場でしょ~。父が持ち帰るきらびやかな戦利品の中から、一番つましいものを選んで出兵先まで持っていくジュチ。父との確執の中、おじのハサルには甘えるように話し、父と同じ部屋では膝小僧抱いてちんまり座っている、英雄の長男。産まれた瞬間から同情しちゃいました。だからラスト唐突に「父」になってしまうのには疑問。例えば、この関係に焦点を当てて掘り下げても良かったのでは。 見た後、「なんか、もったいないな~」と言うのが感想ですが、大河ドラマにして、1年掛けて放送すればなんとか・・・・。 [DVD(字幕なし「原語」)] 5点(2008-03-21 11:03:05) |
22. イン・ザ・カット
良くも悪くも、カンピオン作品。 私は実は・・・好きだ。なぜかって、主人公がヘナチョコになっていくのが理解できてしまったから!私だってきっとそうなる。ヘナチョコになるんだろうなあ、彼女と同じ立場に立つと。。。 ただ、これは日本人との感覚の差か、主人公はお堅い高校教師・・・となっているけど、メグ、エロエロ過ぎ(笑)。同じ女性が見てもきっと評は分かれると思うが、妙に埃っぽい画面に際立つ彩色、アメリカとは思えない風景、人間くさすぎる登場人物、私はとっくりと魅せてもらいました。 [DVD(字幕)] 7点(2008-03-18 19:02:44) |
23. ゆりかごを揺らす手
《ネタバレ》 これはまず「題名が怖い!!」んです。 (揺りかごを揺らす手は、世界を支配する手である)という聖書だか何だかの一部ですよね。その揺りかごを揺らす手が、ある日自然に、しかも用意周到に計算されて家庭に入ってくる。そこんとこの怖さがひしひしと・・・。 しかも、単に頭のおかしい人間がしているのではなく、その人間もそうしてしまう過程にとても悲惨な現実があるんですね。 特に子供のいる方が見ると、その辺の怖さが更に倍増するのではないでしょうか。 [DVD(字幕)] 7点(2008-03-13 17:49:13) |
24. ユメ十夜
うーん・・・。まあね。お腹一杯(笑)。これは原作が好きで好きでたまらないので、映画にするならとっても忠実にやって欲しかったかな。ただ、一つ一つ監督が違うと言う贅沢な映画なんですよね。ほんの10分くらいの間に、どれだけ描けるか。これは本当はとっても難しく、かつ見る方は面白いのかも知れません。俳優さんも何もかも、一本一本個性的で、考えて撮ってあるのは事実。お気に入り松山君が着流しの色男で出てたから、プラス1点。 [DVD(字幕)] 4点(2008-02-25 14:07:43) |
25. ホワイト・オランダー
《ネタバレ》 ミッシェル・ファイファーの演技力にプラス1点。夾竹桃は美しい反面、強力な毒を持つ・・・と言うのも頷ける。刑務所の中からも娘を虜にする母親。振り払いたいのに、母親ゆえに振り切れない娘の葛藤。「私を自由にして」という重い言葉の裏に、様々な母の人生、自分の人生が絡む。アリソンの演技力とファイファーの魅力で成り立っている映画で、演技力が無い俳優だったらコケていたと思うなあ・・。周りの俳優がどんな人だったか思い出せないほど、二人が際立っていたので。母と娘を考え直して見たい方、一度ご覧あれ。良きにせよ、悪きにせよ、美しく強い母を堪能できます。 といっても、車に娘を残していく母親は私は嫌だけど。 [DVD(字幕)] 7点(2008-02-18 13:11:30) |
26. トランスポーター
面白い映画って言うのは、こういうのを言うのねと言うお手本のような。ノリが良く、難しくなく、軽妙なやり取りもあって楽しめる。まさしくベッソンで、個人的にど~も弱いなぁ。無条件に好きなタイプの映画なんだよなあ・・・。ジェイソン・ステイサムのはまり役です。いかつくて、無口で、べらぼうに強い!意味も無く強い!ついでに綺麗好き。ついでにちょっとエロ親父。つまり、愛すべき人間像を上手く表現してあると思います。ベッソン監督は人間の使い方が上手いと毎回思う。ステイサムって脇役体質かと思っていたけど、いえいえ、なかなかの存在感でした。 [DVD(字幕)] 7点(2008-02-15 13:51:21) |
27. DEATH NOTE デスノート the Last name
原作未読。更に、前編も見ていない!本当に、TVで見るまでほとんど何も知らないという白紙状態で見ました。「デスノート」という発想はとても面白い。でも世界を巻き込む割にデスノートが日本語で書かれているあたりがちゃちい。「月(ライト)」の考え方も一部共感できる。絶対に、絶対に、面白い題材なんだよなあ。でも折角の映画と言う域を使いこなせてない感が・・・。それでもちゃんと最後まで見たのは何故か。それは、、、友人に指摘されるまで「L(エル)」が主人公だと思っていた!だって、この映画の面白さは彼だと思っていたから。前編見ればライトが主人公だって分かるらしい・・・。スマン。しかし、松山ケンイチってカメレオンアクターですね~。正直、何も知らない私でも彼の良さは伝わりました。よって、松山君にプラス1点。 [地上波(邦画)] 6点(2008-02-14 14:12:11) |
28. トレマーズ
《ネタバレ》 もう大好き好き好き!!これは某タイムトラベル映画と一緒に上映されたような記憶が・・。その時に「アメリカの田舎ってこんなのか~」と妙に感心した覚えがある。バレンタイン役のケヴィン・ベーコンが田舎の兄ちゃんをいい味で演じており、アール役のフレッド・ウォードとの掛け合いが最高。限られた空間、限られた人数、限られた手段、LOVE有りという、話の作りが絶妙だ。もちろん、B級作品に間違いないけれど子供から大人まで十分楽しめるし、これだからハリウッドって侮れん、とつくづく思う。あまり書くと、本当に楽しみたい人には迷惑だろうから控えます。まあ、一回見てください。バカらしいけれどチョット怖く、チョットノリが良く、チョット愛があって見終わったらすっきりします。 [DVD(字幕)] 9点(2008-02-05 18:09:43)(良:1票) |
29. ドリームガールズ(2006)
《ネタバレ》 黒人音楽のミュージカルです。 一言でいうなら、パワフル。ストーリーもありふれてはいるけれど、人間関係を上手くまとめてあり、好感が持てます。エディマーフィが歌ってるんだけど、あれ吹き替えなしかな。だったらすごい。 黒人専門のお店で、スターのサミーのバックコーラスにありついた、女の子3人組。3人をバックアップするやり手のマネージャーカーティスの時には汚いやり方も手伝って、めきめきと頭角を現し、やがて白人もターゲットにしたTVにも出演する。その3人の女の子の恋模様と、歌に掛ける情熱の物語。 平凡な歌い手で、後に大スターになるディーナ役にビヨンセ。迫力です。そして美しいことこの上なし。カーティスと結婚し、大スターにのし上がったものの、かごの鳥。お前の声は平凡だと言われて、切れ切れになって歌う時のド迫力。 サミー役のエディマーフィがすごくいいんですよ。。歌上手いし、落ち目になっていく大スターを上手く演じてます。 でも私的に一番良かったのが、新人?らしい、エフィー役のジェニファー。エフィが一番歌も上手く、3人の中でもリードをしているんですが、TVに出るようになると容姿に問題があって、ディーナにリードをゆずるんですね。当時カーティスと付き合っていたのはエフィですが、リードを譲ると同時にディーナにカーティスも取られて、自暴自棄になり3人から外されます。それには他にもある問題が絡んでいたんですが、それを最後まで誰にも言わない。私を愛してと見事なキレっぷりで歌うあたりは最高です。正直、ビヨンセの正当派な顔の美しさ、歌声と反対の容姿に、ソウルでパンチの効きすぎた声。でも秘密は胸にしまったままの強さに胸を打たれました。 ミュージカルに抵抗の無い人にはお勧め。 アメリカ人は好きですねー、ミュージカル。私は歌もダンスも大好きなのですが、見れるのと見れないのとがあります。この映画はバッチリ。歌を聴いて聞いて聞きまくりたい時にいいです。 グッジョブ! [DVD(字幕)] 7点(2008-02-05 17:49:23) |
30. ブロークバック・マウンテン
《ネタバレ》 純粋に質の良いラブストーリーだと思った。男同士と言う所に問題があり、それ故に引き起こされる悲劇もあるが、特別に悲惨という感じはない。世の中、男女でももっと酷い恋愛だってある事だし。別にホモだどうだと言う偏見を抜きにして見れば、自然の美しさと二人の感情が心に沁みる。恋愛感情が唐突だとか言う批評もあった様だが、そーかなー、そもそも恋愛感情なんて「落ちてしまう」もの。理由無く惹かれるから二人は何年にも渡り苦しんだのではないか。まあ、万人受けする映画で無いのは認める。男同士愛し合っている事から自分自身が逃げる為、世間体を取り繕う為に二人は女性を妻とするが、その妻達の葛藤も見逃せない。愛していないならいい。愛するが故の苦しみもあるんだなあと。「愛」とは何かを問う映画として上質。二人が別れるシーンが何度かあるが、その度に切なく胸が痛い。今の普通のラブストーリーでもなかなか無いと思う。イニスを見つめるジェイク・ギレンホールの子犬のような表情や、ヒース・レジャーが最後にジャックの部屋から自分の服を見つけるシーンなんか、最高だ。あんな目で見られたら、人間として「落ちる」なあ・・・。ジャックは死んでしまうけれど、もうイニスだけのもの。ここで初めて、二人だけの世界として完結する。現実は別として・・・。俳優の配役も良かったと言う事だろう。二人がこれ以上ワイルドでもなよなよしてても、映画にはマイナスだったし。それにしてもヒース・レジャーは勿体無いない。ご冥福を祈ります。 [DVD(字幕)] 8点(2008-01-23 11:18:21) |
31. ミスティック・リバー
《ネタバレ》 あの日、あの時・・・・と言うのは誰でも考える。この映画はハッピーエンドには程遠いし、全体的にトーンが暗くカメラワークも地味。ところが、内容は反比例するように良い。「あの時・・・」をキーワードに、人に人生が大きく変わっていく。なんだか久々に社会派のいい映画を観たと言う感じ。固めている俳優陣が最高の演技を魅せている。一つの事件を境に離れた幼馴染の三人が、ある殺人事件をきっかけにまた顔を合わせる。一人は被害者の父として、一人は容疑者として、一人は刑事として。三人の間にある、何もかも飲み込んでしまう深くて暗い河。やがてこの事件はさらに深い闇に三人を引きずって行く。ティム・ロビンスってカメレオンみたいな役者だと感じた。あんなにごっつい大男なのに、なんてしょぼく見えるんだろうと。対して、ショーン・ペンの瞳に宿る狂気というか、すごくきれいな目をしているのに、あの怖さ。対照的。この二人の賞は納得済み。しかし、私が今回イチオシと思うのがケヴィン・ベーコン。ロビンスとペンの対照的な印象に対して更にぐっと抑えた演技が光る。妻に逃げられた男。あとの二人が夫婦として深く絡んでくるが、刑事の彼は1人暗い部屋でタバコを加え、写真に見入る。ラスト、ほんの少しの行き違いで凄惨な事件は流れる河に沈む。その時にとった、それぞれ男の妻達の行動の対比も見て欲しい。個人的には、ラストにベーコンがペンに対して見せる仕草、あれに打たれて死にたい・・(爆)。 [映画館(字幕)] 8点(2008-01-22 11:05:31) |
32. ブレードランナー/ディレクターズカット<最終版>
《ネタバレ》 映画館に一人で見に行った。誰にも邪魔して欲しくなかったから。私はこのデレクタズーカットが一番好き。前に見たときは、前口上がひどく余計に聞こえた。カット版を見て思ったのは、封切された当時はこの世界に付いていける人間が少なかったんだろうと。SFが好きで良く見ている人には違和感ないけど。やっとカットしても解る人が増えたんでそうしたんだろうと勝手に解釈。超未来都市と、その下にくもの巣のように広がる人類のごった煮。上空から降り注ぐ雨、ピアノの音。人間くさいレプリカント、感情抜きにレプリカントを殺す人間。全てに明暗と陰陽があり、ストーリーに深さを与えている。レイチェルに愛情をもつデッガードの妙に不器用な所とか、オリガミ、小さなエピソードが最後に意味を持つ。ジャンルを超えていつも好きな映画のトップに名前を挙げている、一本。この世界観を作り上げた監督に敬意を表し、プラス1点。 [映画館(字幕)] 9点(2008-01-22 10:31:11) |
33. リトル・ミス・サンシャイン
《ネタバレ》 ロードムービーといわれる作品は、好き嫌いが多い。 よく分からないのも多いし、私は映画に娯楽を求めるので。 この映画もそう考えて映画館にいかなかった・・・・失敗!行けばよかった。 幼い娘が美少女コンテストに出る為に、家族で会場へ向かう明快なストーリー。 明快なのは目的だけで、登場人物が揃いもそろって個性的なダメダメ。 品性下劣だし、悪いのは全部自分だろ!っていう人間ばっかり。家族としても疑問。 ところが・・・・、妹のこととなると皆が少しずつ譲り合う。 そこの微妙な所が掴みどころ。 この映画の主人公でもある女の子は、この家族にとってはイノセンスなのねー。 唯一、まだ無垢で素直。 私が一番気に入った場面は、パパから「アイスクリームは太る」という主旨の事を言われた時。彼女は気にして食べない、と言う。 その時にパパ以外の家族が皆でとった行動が、さりげないけれど愛にあふれている。 ポンコツ車に乗っかり会場へ向かうが、更に揉め事は増え、時間は迫り、ハプニングは起きる。 美少女コンテストに出場すると言うよりも、夜逃げでもしてると言った方がピンと来る様な有様なのに・・・。 見た後に良かった・・・・としみじみ思ったんです。 最後の醜悪なダンスは引っ張りすぎたと思うけど、指導したじーちゃんサイコーだぜ! あと、家族以外で賛同していた会場の人。それはまさしく、私でもあるような気がした。 個人的には「沈黙の誓い」を立てていたお兄ちゃんにノックアウトされました。 哲学的な部分と、まだ未熟さが同居している演技が最高。いい映画です。 [DVD(吹替)] 8点(2008-01-16 14:34:23)(良:2票) |