21. ミスト
《ネタバレ》 ちょっと油断した。放心状態。あのラストはハリウッドのタブーと思っていたので。しかし、言いたいことがほとんどこのサイトに書かれていたのでスッキリしました。映画とこのサイトをセットにして見ないとだめですね。自分の一番の不満点をあげるなら、ラストにかけて主人公達が絶望的な局面に陥る過程への描き方が弱いところです。非力で無垢な子供として描いてきたのに、その子供に手をかけるほど絶望的な状況に見えないのです。敵に囲まれ四面楚歌の状態だというのならまだ理解できるのですが…。ビリーが終始ぐったりとしていて、魅力が抑えられていたのは、ラストの非難を想定した制作者の配慮だと思われます。 [DVD(字幕)] 4点(2010-01-16 02:01:05)(良:1票) |
22. あの子を探して
《ネタバレ》 子供ならではの「もどかしさ」をこれでもかと見せ付けられる映画ですね。そこが上手いのですが、辛い人にはストレスのたまる映画なのかもしれない。なんせ主人公は途中まで魅力薄ですし。自分はホエクーのクシャクシャの泣き顔にやられました。カメラが背後から回って正面を撮ったときの泣き顔がいいんだよな。主人公の少女には、心揺さぶられるというほどではなかったので少々物足りなかったです。後半まで丁寧に自然さを意識して描かれていたのに、TV関係者が絡んできてからハリボテ感が出てきたので、素直な再会シーンを見たかった気もします。受付の憎たらしいオバチャンは大好きなのですが(笑) 好きなシーンは、女の子が黒板に数字を書く際に背伸びしてまで上のほうに書こうとする所と、ホエクーが駅で逃げ出したときに言った言葉が「トイレに行ってくる」(2度目)だった所です。子供らしくて頬がゆるんでしまいます。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-16 01:24:08) |
23. ラースと、その彼女
《ネタバレ》 人と人との距離感って人それぞれで、その距離の取り方を、周囲の人々が徐々に見つけていく所が良い。勿論、ラースがそれを徐々に気付いていくのも。好意を寄せる相手ってのは自然と寄り添いたくなるもの。でも、その相手のことも考えないで近づいていってしまうと、ラースにとって心地よい距離感を侵してしまう。不慣れなうちは、兄嫁もマーゴもその領域に土足で踏み込んでいく。ラースも混乱し、恐怖が勝ってしまう。ただじっと待ってあげるってのが、どんなに困難であたたかいことなのか。世知辛いこのご時世では、現実的な話じゃないんだけどね。普通は意地の悪い連中をそこかしこに配置したくなる。この映画はあえてそれを省くことで、ぐっと包容力がましている。余計なものは描かないという、すごく省略の上手い映画だと思う。そのお陰でテンポも良いし。あと教会のオバサンもいいね。ビアンカの女としての扱いに怒るととか。他の人はどちらかというとラースの為に演技しているようにも見えたけど、あの人はビアンカを生身の人間として扱っているように感じた。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-13 03:49:36)(良:1票) |
24. さびしんぼう
《ネタバレ》 この映画の秀逸な所は、普通の恋愛映画では隠してしまうような嫌悪的なもの、例えば肉親の恋愛などを挟んで、堂々とファンタジーとして表現していることだと思う。普通は恋愛に肉親が絡んできただけでも気恥ずかしい気持ちになる。もしそれを表現しても生々しくて野暮ったく、この映画のような純粋性や叙情性は保たれないように思う。母親の初恋や、母親とエロ本を見ながら会話するなんてのもそうだけど、父親との五右衛門風呂(?)のシーンは特に印象に残った。17歳という性に悩む多感な時期に、父親が母親に対してどれだけ愛情があるのかを、狭い風呂の中で聞かされる。肉親の性についての会話を、肌を触れ合わせるという身体的会話を交えて体験するのである。これは自分の親に置き換えると恥ずかしくて身悶えそうになるような描写だが、この映画では、負の感情ではなく、無意識に見ないようにしていたものが突然目の前に落ちてくる様な不思議な感情になった。それは、嫌悪や恥というよりも、すごくあったかい。主人公の彼もきっとそういう気持ちになったと思う。なぜなら自分がなぜ存在するのかを無意識に知らされているわけだから。母親の夢見がちな描写に対して、父親のこういう受け皿的描写があるのが物語をどっしりと支えている。この映画は初恋の心情の切なさなんてのもいいのだけど、家族の心のふれあいみたいなものも純粋に表現してるとこもいい。ところで、先生のスカートが事あるごとに翻るのは失笑を通り越して笑える。前半(3点)との落差があるから後半の巻き返しが凄いことには違いないのだが(笑) [DVD(字幕)] 8点(2010-01-13 02:53:32) |
25. ピーターパンの公式
《ネタバレ》 何かもう、不幸てんこ盛りな内容。これだけ背負うものが大きくなると少年の母体回帰願望が強くなるのも仕方ないのかもしれない。しかし、それだけでは収まらず、別の捌け口として女性に「入りたい、入らなければならない」と言って強姦未遂までしてしまう。境遇に同情はするけれども、ここまでいってしまうと拒否感がもたげてきてしまって感情移入しづらい。生と死に悩むとこや青春期に常に纏わりついてくるリビドーてのは表現できてたと思うけど。ラストは恐らく母親の死?そして、羊水の海を灯台に向かって泳ぎ続ける主人公。すごく抽象的な最後で余韻はありましたが、じわじわとくるような感動まではいかず。こういう青春ものは良作が沢山あるからなあ。青臭いとこがあってそこが思春期特有の映画としてイイ味を出していたとは思う。 [DVD(字幕)] 6点(2010-01-12 03:04:21) |
26. ぼくたちと駐在さんの700日戦争
《ネタバレ》 これTVドラマとか2時間枠なら許せたのですが、映画として評価すると辛いことになります。それなりに楽しめましたけど。許せなかったのは一番盛り上がるシーンでFunkey Monkey Babysを流したこと。70年代の歌謡曲とか使いましょうよ。世界観ぶち壊しでした。あと、相変わらず市原は喋らせると演技下手くそですね。彼は人を引き込む眼を持った希少価値な若手俳優だと思うので、寡黙な役の方が向いてる気がします。 [DVD(字幕)] 4点(2010-01-10 23:00:12) |
27. 太陽はひとりぼっち
《ネタバレ》 物質的、経済的に恵まれた人が陥りやすい悩み。上流階級の女性の抱える空虚感や生存目標の喪失。人間はなぜ生きるのか。など、意図したいことはなんとなく分かるのですが、映画においてまでこんな答えの出ない哲学的難題を考えたくないというのが本音です。そもそも自分はこんなことに悩むんだったら好きなことをやってた方が時間的に有意義だと考える性質でして。それならば映画をみよう→この映画→無限ループ・・・。これじゃ鬱病になってしまいます。ヴィットリアも愛の不毛さに悩んでるくらいなら、汗掻いて運動して、身体を使って働くことをお勧めしたい。またこの映画は、物語として語ってくれるのなら許せるのですが、それさえも殆ど放棄してるのでちょっと辛かった。ただし、映像は本当に素晴らしいので最後まで見ることはできます。ソフィスティケイトされていて、人工的に完成された美を見ているよう。ドロンとヴィッティの二人も完璧。同じ人間とは思えません。これだけでも観る価値はあると思います。その一方で、完成された美そのものが内包する特有の怖さも感じました。こういうものは映画でたまに眺めてるくらいが丁度良いですね。映像的満足は得られたのでこの点で。 [DVD(字幕)] 5点(2010-01-06 20:02:42) |
28. ロックンローラ
《ネタバレ》 オープニングクレジットがめちゃカッコイイです。再起を感じさせてくれましたが…。初期の傑作2作からすると、中身は手を抜きましたというのが伝わってくるような出来。途中で群像劇を放棄したのか、わざとそうやったのか、何がしたかったのか分からない映画でした。軽く気になった点を。ロシア人ユーリのオチは台詞で説明して終わり?映像でみせて欲しいのに。そして、ステラのその後は?トビーもロックのカリスマなら思いっきり歌ってるとこが見たかったし、中途半端な歌はいらない…。狂言回しであるアーチーもラストでカタルシスを得るには物足りない描き方。ちょっと分からなかった点もあったのでもう一回見てみようと思うのですが、しばらくは見返すことはないでしょう。小ネタと映像、音楽は良いので、最後まで飽きずには見れました。 [DVD(字幕)] 5点(2010-01-06 17:46:06)(良:1票) |
29. 母たちの村
《ネタバレ》 アフリカの異文化を体験できる映画。ドキュメンタリーや世界遺産じゃこういう経験はできないので、これこそが映画の醍醐味ですね。片手で数えるほどしか純アフリカ作品を見たことがなかったので、現地に迷い込んだような濃密な時間を過ごせました。自国の価値観から他国の風習を断罪することは簡単だけど、そういうことはおいそれと口出しすべきことじゃないと思うので以下楽しめた点を。(勿論、FGMは私の価値観からすれば悪習)まず、物語がスタンダードな作りで好印象。第一夫人や一夫多妻制とかそういう人物関係が物語を面白くしていました。他文化を学んだ人間の存在も○。焚書ならぬ焚ラジオってのも面白い。小指を噛んで痛みに耐えるってのはとても痛々しい描写。古い習慣を守ろうとする人々と、それを改善させようと立ち向かう主人公という構図は古今東西描かれていますが、アフリカのある村をモチーフに持ってきただけで、文化や風習、宗教といったシガラミが絡まってきて面白かった。傭兵は俗物の象徴として描かれていますが、その一方で主人公を救う人間でもあるというのも良かったです。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-04 22:51:55) |
30. シュート!
中居って最近の方が、演技が断然上手いんですね(汗) 色々なアイドルの若かりし頃を見るという点では興味深く見れました。そういう点から見れば、ジャニーズならではの抱き合わせ商法が功を奏しているのかもしれません。が、そういうものに価値を見出せない人にとっては辛いと思います。水野美紀は拾い物でしたが。 [地上波(邦画)] 2点(2010-01-04 22:26:55) |
31. あこがれ (1958)
なぜ悪戯が悪いことなのか、それが分かっていないうちは、子供は平気で他人の感情が踏み躙れるんだよなあ。だいぶ時が経ち、自分の身に降りかかってきた時に、悪いことなんだと気付く。良いことと悪いことの線引きを一進一退させながら、子供は大人になっていくんですね。郷愁に浸れました。が、ナレーションで説明しすぎで、情緒に浸るタイミングがほとんどなかったのは勿体無い気がします。 [DVD(字幕)] 5点(2009-12-31 16:34:18) |
32. 大人は判ってくれない
《ネタバレ》 子供が自然体で映っている映画はたまにあるけれど、ここまで子供の行動を分かっている映画もなかなかない。本当に子供をよく観察しているなというのが最初の印象。子供が子供らしくて見ていてとても微笑ましい。特に人形劇を眺める子供達の夢中な表情が印象的。だけど、その無邪気な子供達の後方で、盗みの話をしている少年がいる。主人公の少年である。この少年は親に対する信頼が無い。どんなことがあっても最後は親が自分の見方をしてくれるという、子供にとって必要不可欠な感情を失っている。12歳の少年が、幼くしてすでに親をあきらめている。簡単に家出をしてしまったり、つい「母親が死んだ」と嘘をついたり(身内はあるかもしれないが母親というのは中々言えない)。彼はどこでその得られなかった感情の埋め合わせをしていくのだろうか。同い年くらいの普通の子には与えられる愛情をどこで体験するのだろうか。なぜ彼が、あたたかい寝袋を好むのか分かった気がする。本当に見ていて辛い映画だ。そして、何よりも切ないのは少年の数々の悪事の中にも律儀さや人の良さが、ふっと見え隠れしているところ。寝床で夫婦喧嘩の声を聞く彼の憂いを帯びた瞳、そしてラストの海辺での鋭い眼差しは忘れられない。 [DVD(字幕)] 8点(2009-12-31 15:27:25) |
33. Kids Return キッズ・リターン
《ネタバレ》 北野武映画に出てくる登場人物の発する澱みが自分とは妙に相性が良い。そして彼は、男の孤独というものを描くのがうまい。しかも孤独の色を、黒じゃなくてブルーに染める。それが心地よい。この映画の主人公二人の少年は、多くの時間を供に行動し、心から打ち解けているようにも見えるが、どこかしら緊張がみなぎりお互いに踏み越えない一線がある。それは陳腐な言葉でいえば「男は黙して語らず」というものなんだけど、決して心を許さない訳ではなく、ただ寡黙なだけだ。青春映画でありがちな、家庭環境や生い立ちは全く描かれないし、昨今のTVドラマで語られる「俺達仲間じゃねーのかよ。仲間だろ」的な、過度のベタツキも全くない。全編にかけてこんなにも胸がヒリヒリするのは、青春時代に誰もが経験する成長と堕落、そして慢心と羞恥心を、これでもかというくらいに丹念に見せ付けられるからだ。しかしそれだけじゃなく、孤独を癒す手段を、悩みを打ち明けたり語ったりしないからだと思う。それどころか、いつも強がって誤魔化してみせる。それがたまらなく切ない。この映画は、少年の中にも潜む、男は心のすみっこでいつも孤独であるということを突きつけてくる。そういう意味で、まさに男の映画なんだと思う。というよりも、北野武自身の映画なのかもしれない。ところで、印象に残ったシーンは、冒頭に出てくる校庭での自転車の二人乗り。二人は互いに向き合っていて、ふらふらとハンドルが揺れる。青春を謳歌する二人の少年に相応しく、危うく、そして心許ない円の軌道を描く。一転してラストシーンでは、校庭に帰ってきて、しっかりと前を見据え自転車に跨っている。しっかりとした円を描く。青春映画のシャレードとして素晴らしい表現だと思う。 [DVD(邦画)] 8点(2009-12-30 06:33:18)(良:2票) |
34. さよなら子供たち
《ネタバレ》 社会の縮図としての学校を子供の視点で描いた作品。無垢なものの中に、段々と社会情勢の黒い影が広がっていき、ある時それがその小さな社会を崩壊させる。その過程は淡々していながらも、しっかりと描けていたと思います。大人でさえ膝が震えるほど恐ろしいことなのに、子供から見たらどんなに恐ろしいことなのか。それを考えると愕然とさせられます。しかし、二次大戦下のフランスの政況や、宗教的な前提知識に欠ける自分にとっては序盤はきつかった。背景知識の情報を紹介することもなく次々に描写されるだけなので…。森林に二人が迷い込む辺りから物語に入っていくことができましたが、もう少し二人の出来事に焦点を絞って、ラストにかけて描いて欲しかったな。特に印象に残ったのは、ラストは勿論ですが、夜二人の少年が小さな灯りを頼りに千一夜物語を読むシーン。何気ない瞬間だけれど、ああいう、ささいな記憶っていつまでも心の中に残りますよね。素晴らしいシーンだと思います。その後のことを思うと居た堪れない。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-12-27 07:39:28)(良:1票) |
35. 松ヶ根乱射事件
おそらく、津山30人殺し事件を意識したであろうタイトル。そしてファーゴのようなパッケージ。八墓村みたいなことになるのかとドキドキしながら観賞したが…。見事に期待を裏切ってくれました(笑)ファーゴの仮面を被ったブラックなビッグリボウスキといった感じか。シニカルでオフビートな感じも嫌いではないですが、心に残る作品とまでは行かず。正直、この手の閉塞した田舎で血の繋がりが濃いい関係を泥臭く描いた大傑作と思っている小説があるので、それが足枷となって感動には届かなかったのかもしれない。シナリオの外し加減は絶妙で、なかなか書けるものではないと思う。欲を言えば、ラストにかけて登りつめるパワーが欲しかったな。 [DVD(邦画)] 7点(2009-12-27 07:34:19) |
36. 愛のむきだし
《ネタバレ》 今年色々な所で絶賛だった映画。しかし4時間という長尺なので中々手を出せずにいた。年末のこの時期になってようやく観賞。ひとことで言えばカオスな映画。この映画はアジアの都市、東京でないと作れないだろうな、きっと。それくらい色々なものが混沌としている。正直、演出もシナリオも質が良いとは言いがたいが、役者陣の熱演と情熱で最後まで見せきってしまう力はある。編集のテンポ、小ネタが良い。そしてゆらゆら帝国、ボレロなど、音楽の使い方が上手い。余計なエピソードも多いが、まさに見せ場のごった煮であり、すっきり絞って描くと、このわけの分からないエモーショナルなパワーもなくなってしまうのだろう。駄作と傑作をたゆたうこの感じは何とも言えない不思議な感覚だった。印象に残ったのは満島ひかりの素晴らしい演技、そしてカオリがテツに復縁を迫るシーン。まさに愛のむきだし、発情期のチンパンジーの雌を見ているような衝撃である。車ごと体当たりしてくるんだから笑える。奥田と安藤の娘、コイケの存在感も凄い。ところで、板尾に少女虐待させるなんて、「役とはいえギリギリじゃないだろうか・・・」とも思ったが、あろうことかペ○スを切り取られるという贖罪を受けるので、園子温監督のブラックジョークにはすっかり感心させられてしまった。 [DVD(邦画)] 7点(2009-12-27 07:19:32)(良:1票) |
37. 卒業(1967)
《ネタバレ》 「卒業」というタイトルから爽やかな青春映画を想像していましたが…。序盤でまさかのサブリミナルおっぱい。その辺りからあらぬ方向へ(笑) 以降、熟女による筆おろし映画、すなはち「卒業」なのかと理解し、愕然とした… のも束の間、親子丼、略奪愛へと。ストーリーは、まぁ、評価不能です。しかし、心情の映像への落とし込みが非常に上手い。例えば、考え事をして煙草の灰が長くなってる箇所や、動揺してハンドルをぐらつかせる箇所、不倫妻と喧嘩の後の暴走運転etc…。感情を動作とカメラワークで何とか表現しようとしている所は好感が持てます。最後までそういった表現満載です。それに物語が乗っかっていけば良作と思ったんでしょうが。印象に残ったのは、冒頭で人に囲まれた時の不安や動悸を伝えるのが上手かったのと、ラストシーンでの自由を手に入れた二人へ対する突き放し方。バスの中で幸せそうな二人の若者は、大人達の冷めた視線に囲まれるんですねぇ。そこでsoud of silence~が流れてくるからたまらんです。 [DVD(字幕)] 6点(2009-10-27 01:37:18) |
38. あなただけ今晩は
《ネタバレ》 サービス精神の塊のような作品。どのシーンをとっても人を楽しませようという気迫が伝わってくる。こういう作品は見てて嬉しい限りですね。"アパートの鍵貸します"の二人をカラーで見れるだけでも幸せです。しかし、減点せざるおえないは、やはり後半のトンデモ展開か。鉄格子を外して監獄から降りてくるところなんて、思わず「オイオイ」とつっこんでしまいました。ロマンチック・コメディを超えて、ファンタジーぎりぎりまで到達しちゃいましたという感じ。X卿が河川から浮かんでくるところに至っては、まさに超自然現象です。まぁこの監督とこのコンビが好きな自分にとっては、笑えるからいいのですが。本当は7点くらいですが、お世辞にもおすすめできるとは言い難いのでこの点で… [DVD(字幕)] 6点(2009-10-25 00:21:48) |
39. ブラッド・シンプル ザ・スリラー
《ネタバレ》 多少、説明不足かと思われる箇所もあるので、ワンショットも見落とせない映画ですな。コーエン兄弟お得意の観客の心理をもてあそぶ、ストーリーテラーとしての上手さは、処女作から一級品でした。非常に面白かった。サブタイにスリラーと銘打つ本作ですが、サスペンスやホラーの要素もあり、それらが渾然一体となって醸し出している雰囲気が堪りません。ただ、サブタイにスリラーという語を入れたことで、「二人は果たして生き存えることができるか」というベクトルが与えられているので、見やすくはなってます。内容については、脚本の上手さも勿論ですが、立体的空間をカメラで二次元に切り取って見せる、カメラの枠の使い方が上手い。TV画面を越えて、どこに狂気が潜んでいるか分からない怖さがある。カメラの枠の外もそうだが、その他、"見えないもの"というのが非常にこの作品の鍵になっていると思う。核となる誤解は勿論、人間の内心や思い込み、壁やドア越しに存在する見えない相手、無言電話の相手、魚の下のライター、ベッドで横になった瞬間に外に怪しい車が見える箇所など…etc 上げ出したらきりないほどです。見えないものは勝手に想像してしまう。だからこそ、そういうものが坦々と恐怖心を煽るんですなあ。ところで、フォトショがないこの時代に、どうやって探偵のおっさんは写真の加工処理をしたのだろう。加工技術、高すぎ(笑)それに、初見時におっさんが現場に戻る動機付けが弱すぎないかと、ちょっと納得できかねていたのですが、なるほど、名前の?刻印が施されていたのですね。しかし、流麗な筆記体。"読めねえよ!"と見直したときにツッコンでおきました。特に印象に残ったのは、最後探偵のおっさんが闇雲に拳銃で打ち抜いた穴から、直線的な光が漏れている箇所。多重人格というワードで観客心理を揺さぶってくる箇所。それに、所々にひっそりと描写されるシーリングファンのプロペラが、まるでリボルバーのシリンダーのように回って見える箇所も秀逸。まさにロシアンルーレット。コーエン兄弟の作品はキャラ立ちや脚本の良さもありますが、こういった所も隠れた良さだと思う。ちょっと咀嚼できてないところがあるので、今のところ10点に近い9点献上です。 [DVD(吹替)] 9点(2009-10-24 23:11:12) |
40. ドライビング Miss デイジー
《ネタバレ》 「僕らのミライへ逆回転」で本作が出てきて以来気になっていたが、ようやく観賞。まったく退屈することなく見れました。起伏の無いストーリーながらも、淡々とした語り口で最後まで見せきってしまう。脚本と編集が優れているんでしょう。確かに掘り下げて欲しいエピソードは沢山あるし、省略も沢山あり、勿体ない気がしないでもない。しかし、変にドラマを詰め込んじゃうと、こういった後味の良さは生まれなかったかもしれない。主役二人の演技も抜群。モーガン・フリーマンの笑い声が特に印象に残る。彼の発する笑いは、頑なになった人の心をゆっくりと解きほぐしてゆく、そんなパワーが秘められています。それが、この作品を全編に渡って支配する「温かみ」につながっているんでしょう。根底に悲哀が流れていながらも、人を懐柔させる笑いの演技を見せてくれたモーガンフリーマンの演技には感服致します。そして、人の笑っている姿っていいですね。ささやかながらも、心をあったかくしてくれる作品でした。 [DVD(字幕)] 7点(2009-10-24 22:35:00) |