21. リボルバー 青い春<OV>
《ネタバレ》 日本にもいろんな高校がある。オサムの学校は底辺校で、家は母子家庭だ。母は毎朝同じことを言って仕事に出る。その靴下が伝染しているのは、息子のことと同様に、そんなことに構ってはいられないからだろう。「子供じゃないんだから、少しは将来のこと、考えてね。」と言われる息子は、「おまえ、卒業したらどうすんだ?」と問われて「わかんね。何も考えてない。」と答える。しかし、ここで志望大学名が言えたって、それが何だというのか。「今のうちにスゲエーこと、しないとなー。」という焦り、いらだちは青春そのものなのだろう。ざらざらした画面は主人公の心情を表すのか? しっとりともくっきりともせず過ぎていく時間。実弾が三発入った拳銃が突破口になるのか? 男の子じゃないので、本当のところは分からない。ただ、こういう映画を見ると切なくなる。「女と交尾する」ことばかり考えている中で、突然「おとうさん」に過剰反応して、「チクショー。負けないからな。」と叫ぶオサムにはどんな辛さがあるのだろう?と。でも、そんなこと聞いても、自分を説明する言葉を持たない男の子達は「はあー?」と言うだけだけど。 [DVD(邦画)] 10点(2009-12-20 00:27:45) |
22. SABU さぶ
《ネタバレ》 玉木宏が「金太」と言う役で出ていると知って見てみた。せりふが三つしかない。 その最初のせりふが「おいら、金太って言うんだ。けちなばくちでしょっぴかれて石川島送りだ。ざまーねやー。」という、まあ若造が粋がって言うせりふだが、「けちなばくちで」の部分は勢いがあったが、「石川島送りだ」では息がすぼんでしまった。玉木が良くやるせりふ回しだが、「久保聡史」には良いが、この場面には合わない。三つめの、嵐の夜藤原竜也演じる「栄二」に続いて言う「そうだあー。こいつの言うとおりだあー。寄せ場を守るんだ。」も、藤原竜也の後では、学芸会だ。どこかで本人が、自分はせりふが言えてないと知った、と述べていたが、追認したよ。 アップで写ることもほとんどないが、その貴重な「おいら、金太っていうんだ」で見た玉木の町人髷姿はいかしてた。信長や康豊などの武将姿よりステキじゃないかな。いつか、いなせなせりふ回しをものにして、遠山の金さんみたいな役を演じてくれないかな? 本筋の方は、子供の頃TVで染五郎・萬之助(現幸四郎・吉右衛門)兄弟が栄二・さぶを演じた劇場中継を見て感動した記憶が大きくて、入り込めなかった。比べるものが違うと分かっているけど。ごめんなさい。 [DVD(邦画)] 3点(2009-12-20 00:26:38) |
23. 雨鱒の川
《ネタバレ》 中谷美紀は若くてキレイな母親だし、小花柄の白い夏のワンピースがよく似合う。星由里子もとてもきれいな「ばあちゃん」で、こういう女性たちの愛情に包まれながら、澄んだ空と大樹、水量豊かな川に囲まれて、心を通じ合える女の子と魚取りと絵を描くことに夢中だった。 そんな少年期を過ごした玉木宏演ずる心平にどんな人生が待っていたの?と期待するから物足りなくなるのだろう。描きたかったのはうらやましいほど豊かな少年時代だと思えばいい。 玉木宏はダメだ。笑顔や決意の時はいいが、それ以外のシーンの眼の表情が出来てない。ばあちゃんに別れを告げる時、感極まったんだろうけど、それが無表情にしか見えない。眼の表情の学習はこの後からだったんだな。 それでも、目をつぶって樹の幹に頬を寄せてそれから目を開けるシーンは、とてもキレイだ。ほかのどんな男優がこのシーンを演じられるだろうか? ちょっと思いつかない。 [DVD(邦画)] 5点(2009-12-20 00:25:20) |
24. ロッカーズ ROCKERS(2003)
《ネタバレ》 玉木宏のあどけない顔に驚いた。サインの練習をしている時のアップ。頬がこけてないせいか?MWを見た後だったので、なんか、すごく懐かしい気がした。玉木宏はもうこの時代を通過したのだと思って。 演奏シーンは色々誉められているので、他の所を。付けニキビまでして見事なブスに造った上原美佐との絡みが良い。ここで玉木が出している声は、他のどの作品よりステキだ。 [DVD(邦画)] 10点(2009-12-20 00:24:13) |
25. 恋愛小説(2004)
《ネタバレ》 聡史が瑞樹を追いかけて、息を切らして坂道を駆け下って行くシーンが良い。どんどん近づいてくる瑞樹に、たかがノートを貸したくらいでそんなに近づかれるいわれはないと答えると、相手はあっさり引き下がって帰って行く。それを追いかける(口元は玉木がよくやる横一文字)バックに流れるナレーション。「頭はダメだって言っていた。~一人で生きていけるって言っていた。」叔母をあんな風に失ってからの聡史がこう自分に言い聞かせて生きてきたのだと思うと、子役のかわいらしさもあって、聡史がかわいそうでたまらなくなる。シーンが現在に切り替わって、池内博之演じる「武井宏行」が「運命に逆らったんだ」というせりふも効果的だった。 過酷な運命を背負った主人公の横で勝手にしゃべりまくる女の子は「変身」にも出てくるが、「澤井瑞樹」は、聡史に叫び声を上げさせた乱暴な運転を「私の運転が、聡史の運命に勝った。」と言い、「こうやって一つ一つ勝っていこうね。二人で力を合わせて。」と言うので、その強引さが愛情に変わる。 病に倒れた瑞樹を見舞った聡史が「僕が毎日来るから、退屈はさせない。」という。“会い続ければその人は死ぬ”が、以前瑞樹は「会わなくなった人は死んじゃった人と同じなの。」と言った。会わないことはすでに彼女を死人にしていることになる。会い続けることを選択した聡史は、二人で力を合わせて運命に挑戦するのだ。 しかし、勝てない。「また閉じこもったりしないで。私が弱かっただけだから。私よりも強い人間なんていくらでも居るから。必ず居るから。」という瑞樹の最後の言葉も、聡史の「僕が彼女を巻き込んだ」という思い込みを消せない。このときの聡史は自分の喪失感で一杯で、彼女の愛には気づかない。相手の何かを知った上で力を貸す、それは愛だ。彼女の方が彼の運命を変えることに本気だった、と言えるかもしれない。 一人の人に心から愛されていたこと。それを最後に主人公は知るが、そのことで彼の運命は変わるのか? ここではその結論は示されない。聡史の前に現れる次の人もまた死ぬ、というほど世界は悪意に満ちている、か? 違うと言いたいのが人間だ。 [DVD(邦画)] 9点(2009-12-20 00:22:45) |
26. 変身(2005)
《ネタバレ》 DVDケースには「彼を献身的に愛する究極の愛の形を追求した」と書いてあるけど、ほとんど感じられなかった。蒼井優の演じる女の子がつまらなくて、病み上がりにこんなにだらだらしゃべられたら、人格変容者でなくてもイライラするよな、と思ってしまった。メイキングを見て、この女の子はそういう劣等感を持つ子だと知って、なら蒼井優の演技は正解か、と思ったが、メイキングを見せなければ伝わらないのでは、演出の失敗だ。「恵」はある段階で強くなるんだそうで、「死ぬなら私の目の前で死んで!」というせりふは確かに感動ものだったが、その後は、無意味なおしゃべりこそ減ったが、やっぱりまとわりつく女の子だった。 思うに、「日本人離れした美形」(監督の玉木評)の玉木をラブストーリーに使う限り、役柄が平凡な設定でもその美貌は画面に出るわけで、その相手役には芯がなければ釣り合いが取れないのかもしれない。宮崎あおいや小西真美奈が輝いたのに比べて、蒼井は損をしたかな。 再手術をしたら移植された脳を取り除けるか?クライマックスで主人公が教授にたずねる。もちろん教授は反対する。「廃人同様になってしまうぞ。」主人公は答える。「この世界で生きることができなくても、無意識の世界でなら成瀬純一は生きられると思うのです。」イイせりふだ。しかし玉木宏の言い回しは、ダメだとは言わないが感動的でもなかった。北村和夫のせりふはさすがに明瞭で聞き取りやすい。唇が良く動いている。学問的なことしか考えていない教授の人柄が浮かんでくる。出演作に応じて様々な学習する玉木だから、舞台人の発声とせりふ回しを勉強したら良いと思う。役者が上がると思う。ライヴ活動も良いけれど。 [DVD(邦画)] 2点(2009-12-20 00:21:06) |
27. ただ、君を愛してる
《ネタバレ》 宮崎あおいの好演は言うまでもないが、黒木メイサも「誰からも好かれる、嫌みのない美女」をとてもうまく演じている。二人の好演に挟まれて玉木宏は‥。 厳冬のニューヨークシーンの玉木がキレイだ。突然行方知れずになった静流から手紙を受取り、喜び勇んできた誠人らしく、目がきらきらしている。そして、静流の個展を見ながら涙を流す姿は、結城美智雄でも千秋真一でもなくて、でも美しかった。あのキスの後、「私、私に生まれてきてよかった。」と言っていた静流を思い出しながら、口をゆがめて泣く顔が美しくて、かつ暖かかった。 大学生の役を演じるために声を高めに出したそうだが、年齢のギャップは感じなかった。が、誠人が間抜けっぽくなって、それが不自然だと言えば不自然だった。もし「瀬川誠人」という役が「人付き合いに不慣れな男子」というだけだったら、例えば妻夫木聡が演じた方がうまく自然さが出たかもしれない。でも、自然にはなっても、「里中静流」のキュートさがこんなにも表出されただろうか、と思った。時には妖しささえ漂わす事も出来る美形の玉木が、そんな気配など感じさせず、間抜けのように、演じる。つまり「瀬川誠人」には、「美形でありながらそれに無自覚(=間抜け)」という要素が欠かせないのではないか。それで、横断歩道で静流に一目惚れされ、「完璧な美女、みゆき」からも好意を寄せられることの説得力が生まれる。二人の好演の間に立つ瀬川誠人役は玉木宏でなければならなかった、と納得した。 30歳を迎えてビジュアルに「毅然としたもの」が加わってきた玉木は、今後このような“ゆるい(?)”役は演じないような気がする。その意味でこれはひとつの記念碑だと思った。後で振り返ったとき、これが玉木の20歳代の記念碑的な作品になるような気がする。(もちろん、「のだめ」は別格。) [DVD(邦画)] 9点(2009-12-20 00:19:00)(良:1票) |
28. MW-ムウ-
《ネタバレ》 TVで見る玉木の激痩せを痛々しく思ってきたが、MWを吸ってしまった結城美智雄ならこれぐらい痩せていて当然だと思った。人を殺す時の大きく見開かれた眼も、MWで人格を狂わせた感じが出ていたと思う。「のだめ」で培った大げさな演技がギャグでないシーンで生きた。悪役への挑戦は、一応成功したのではないだろうか。寄ってくる孤児を抱き上げたときの笑顔が優しくて、これも“実は殺人鬼”というギャップの形成に寄与したと思う。 しかし映画全体から「俺たちが背負わされた地獄」が全く感じられない。「どんなに人を殺しても、異様に喉が渇く」と結城が述べる場面にもっと切実感が出たらよかったかもしれない。そうしたら、「結城の地獄」は感じられたかもしれない。が、それでもそれは「俺たち」の地獄ではない。「賀来の地獄」と、そういう個々のではない、「彼ら二人の地獄」の表現にはほど遠かった。三十代に向かう玉木宏には、いつかホンモノの「真の地獄を背負わされた時、人はそれでも心を失わずにいられるのか」を問いかけるような役を演じてもらいたいと思う。 PS.玉木宏がクロールをきれいに泳ぐことは知っていたが、平泳ぎも、水のキャッチも足首の返しもきれいだった。これを見ることができて、なんか得した気分だ。 [DVD(邦画)] 2点(2009-12-20 00:16:32) |