21. 童年往事/時の流れ
《ネタバレ》 ごく普通の一家の、どこにでもある日々を140分間見せ切る映像の力。50年代の台湾は家屋や舗装されてない道路や木の電信柱など、一昔前の日本を見ているようで懐かしさで胸がいっぱい。シャツと短パンで駆ける男の子(というかガキ笑)の生命力のまぶしさ。 時代的に政治が激動している最中だから、大人たちは穏やかではなかったでしょう。でも少年アハの目に映る日々は少年期から思春期にかけての、自身の生活圏のあれやこれや。教師に反抗したり恋心を抱いたり、小さいグループ間のけんかといった普遍的な青春なのでした。 父と母を順に亡くしてしまう悲劇も感情過多にならない描写で淡々としています。十代のアハには推し量ることが難しかったのであろう長女の胸の内も、どうにかして映画の中にもっと落とし込めていればお話に深みを持たせられたのでは。 お祖母ちゃんの存在が良いですよね。孫を可愛がり、大陸に帰りたがっていたお祖母ちゃん。道に迷ったら近所の人が送り届けてくれるあたり、当時の人付き合いの距離感の近さを感じます。 寝てんのか死んじゃってんのかわかんないって、まるでコントのようだけどいやあ昔ってこういうことあったんですよ。 お祖母ちゃん、せっせと作っていた神銭向こうに行って使ったかな。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-01-07 23:04:09) |
22. スティルウォーター
《ネタバレ》 タイトルから内容が皆目見当がつかない類の映画。なので全くの丸腰での鑑賞となりました。なんだスティルウォーターって地名かあ、と序盤で分かるのですが、その単語が話のなかで大きな仕掛けとなっていたとは。気づいた終盤には唸ってしまった。 ちょっと長めの尺を使って人間関係を丁寧に描いてます。なんせ主演はM・デイモンですし他の役者も上手いのでダレずに観られました。マットと女の子のやり取りがとても良かった。べたべたし過ぎない距離感。気の合う二人が単語をレクチャーし合いながら一緒に作業する様子が微笑ましい。 サッカースタジアムでのシーンや警察がアパルトマンに踏み込むシーンは半端なくどきどきしました。物語の緩急のつけ方が実に上手い。 事件そのものを我々は父親の目線で追ってきたけれど、明らかになる事実は彼が信じていたものとだいぶ違っていたし、フランス人母娘との絆もまた思い描いていた方向とは違う形で着地してしまった。 娘は冤罪が晴れて帰ってきたのだからハッピーエンドには違いないけれど、こうも苦い味が残るとは。人生てこんなものだよなあ。「思ってたんと違う」これに尽きるよなあ。ねえビル。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-01-05 12:34:21) |
23. バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー
《ネタバレ》 己を笑うフランス人の諧謔理解度の深いこと。自国の大統領から大ヒット感動映画作品からあげく修復の済んだ至宝ノートルダム大聖堂までバカな小ネタにしてしまうシマツ。 こりゃオリンピックの開会式に首を抱えたマリー・アントワネットだって登場もしますわな。 しょーもない下ネタもぼちぼちあるけど、バカのセンスすら洗練されている(?)感じがあって、バカだけど下品を逃れている。ふふっ、と笑える連続で楽しかったです。でもトム・クルーズには一応謝っといたら? [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-12-23 00:21:52) |
24. ウィッチ
《ネタバレ》 人の心ほど怖いものはない。洗練されたホラーに感じました。17世紀の非科学的な考え方から、極端な信仰心から、鬱蒼とした森と曇天の空模様といった舞台装置に至るまで全部恐い。 信仰心ってなんだろ。そもそも心の安らぎを求めての神様なはずなのに、信仰優先で家族がつらい目にあっては本末転倒もいいとこ。こんなこと言っちゃ怒られるかもだけど、信仰てのはほどほどにテキトーなのが良いんじゃないですかね。 この家族、笑顔もほぼ無いもんね。いかにも厳格なピューリタンといった感じで。厳しい生活のなかにあっては最低限のユーモアが絶対に必要だと思うんだけど。 この映画、上手いなと思うのは妄想か現実か、いかようにも取れる描き方をしているところ。おそらく17世紀の人たちがリアルに経験した、感じたままが映像として展開している。実態はおそらく神隠しにあった赤子は大型の動物に捕らわれたのだろうし、(長女の証言を鵜呑みにはできない)弟は森で毒物に接触してしまったのだろうし、そう思い込んでいるから黒ヤギもしゃべるのだろう。 科学のインフラが無い時代は現代よりずっと夜が暗い。「何か」が魔女の集会に見えても仕方ない。 でも何より怖いのは悪魔だの魔女だの「そう思い込んで」自滅してしまう人間の心そのもの。神にすがるだけの父親、ミソジニー気味の母親、意地の悪い双子、全部がやっかいで手に負えない。 当時の証言や日記からインスパイアされた本作はアメリカ版遠野物語。「神」の位置づけが我が国と違うのが興味深かった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-12-20 22:50:51) |
25. サン・スーシの女
《ネタバレ》 突然の大使射殺事件から紐解かれてゆく男の過去。導入部こそわくわくしましたが、お話はわりとよく聞くナチス絡みの復讐譚でした。平凡と言ってもいいくらい。 義母への思慕が今ひとつ伝わってこない。成長してのち義母そっくりの嫁をもらうほどの思い入れがあったようにはあまり見えない。少年の心に深く残るトラウマ級の事件だったはずですよねエルザの殺害は。マックスの目から見る世界に触れなさすぎに感じる。 一方、エルザの夫への思いは綿々と描きつけるのですよね。いや、主役はロミー・シュナイダーなんだからそうなるよと言われればそれまでだけど。 大女優の遺作という色が付いてしまったため、ロミーの私生活と合わせて鑑賞されてしまう運命となった作品です。ロミー本人のコンディションも良くなかったのでは。わたしには三人もの男が夢中になるほどの魅力をエルザには感じなかった。ロミー・シュナイダーの代表作は少なくとも本作ではないはず。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-12-14 11:49:51) |
26. X エックス(2022)
《ネタバレ》 「パール」を観てからこちらに来ました。パールのその後の人生がどうなったのかな、と。 本作で見る彼女の人生の終末はやっぱり満たされてなくて、しかも色ボケまで発症していては救いのない感じ。でも、夫が復員後の例の惨状を目にしてもパールと暮らし続けてたことが驚異。パールにとって、そこ人生で一番のラッキーだったのではないかな。 ホラー作品としては70'sへのオマージュと謳っている通り、馬鹿な若者らの殺されっぷりが定番のスプラッターでした。それよりも監督はむしろ老人の肉体の衰えとか枯れること無き性欲の醜悪さを描くことで嫌悪感を掻き立てる方に熱心なようで。老夫婦の行為なんて目を背けたくなるよね普通。 パールの老いさらばえ方も悪意を感じるほど。あんな全身にシミが出るもんかな。 こちらを先に観ていたら次作のPearlは観なかったかも。三作目は後日譚とのこと、マキシーンのその後はちょっと楽しみです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-12-08 23:19:07) |
27. FALL/フォール
《ネタバレ》 映像技術の凄みを身体で感じる一本。肝っ玉が縮み上がりっぱなしの画が続き、高所恐怖症の人はラストまで腰を落ち着けて観ていられるのかどうか。 舞台が600m超えの高所かつ二人分が座れる広さしかないので、物語をどう広げるのかなと期待しました。 衝撃の暴露話は定番として、SOSの発信の試みが何度も失敗したり野鳥の攻撃があったり、頼みのスマホの充電にトライしたりと難易度高めのイベントが次々起こります。なかなか上出来の脚本と思います。なかでも友人が実は・・だったというヒネリ技には上手いこと仕掛けられました。おお、と思った。なんでケガをした方がてっぺんまでよじ登るのかしらと思ったんだ・・そういうことかあ。 ところでちょっと本筋から逸れるのだけど、ヒロインの亡くなった夫ね。彼女冒頭から悲嘆に暮れていたじゃないですか。でも実は嫁の親友に手を出すけっこうなカス野郎だった、ということが分かり悲しみを克服するっていうプロットがなんというか大陸的でドライだなあと苦笑いな気持ちになったんですが。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-12-07 23:29:06) |
28. アタック・オブ・ザ・キラートマト
《ネタバレ》 いやーつまんない。高名な本作の鑑賞機会を得るのに時間がかかったから、色々想像してハードルを上げ(下げ?)すぎちゃった。 「トマトが人を襲う」とだけの情報から想像したシュール味が全く無いのにはたまげた。ハリボテトマトが転がってきて人が逃げる画ばっかり。 塩梅の良い不条理さがあれば可愛気も発生するけど、これでは製作上のただの怠慢。物語作品を作る上での重大な手抜きだし誠実さも感じられない。 めったにつけない0点を献上するにあたってマイリストを見たら「プラン9 フロムアウタースペース」に0点をつけてた。愛すべきエド・ウッド作品とこんな本作を同列に置くことになるなんて。つくづく腹立たしい。 [CS・衛星(字幕)] 0点(2024-12-05 23:40:42) |
29. ラストナイト・イン・ソーホー
《ネタバレ》 夢が叶わないことは悲しい。特に60年代を生きたサンディは残酷に夢を踏みにじられ、暴力と搾取の犠牲者。 女子同士の痛みを60年の時を超えてもひしひしと感じ取るエリーを演じるトーマシン・マッケンジーがハマり役。サンディを気遣い、暴力に対して怒りをあらわにするエリーは優しい。対をなすサンディは売れっ子アニャ・テイラー・ジョイ。目力の強い勝気な彼女は夢を叶えたいその一心でエリーとシンクロしたのかも。 アニャ、素敵でした。トップを盛った60年代のヘアスタイルが良く似合って、身体の動きも優美。主演女優二人の存在感と、血の色すら艶めかしく撮り上げた色彩の強さでこの作品は脚本の諸々の粗(殺人犯と思い込むミスリードがやや雑なことやエリーの母親の存在意義が思いのほか薄いことなど)を凌駕しました。 暴力と亡霊とでグロテスク味の強い本作だけども、エリーの彼氏のジョンが献身的な優しさを見せていて息抜きができます。エリーの不安定なメンタルパニックにけっこうな回数巻き込まれているけど彼女を見捨てないでくれている。ジョン優しいな。世の男子はこうであってほしい。「僕のおばさんもそっち系の人なんだ」がたとえ嘘でもかまわないのです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-11-23 17:31:01) |
30. キャノンフィルムズ爆走風雲録
《ネタバレ》 映画馬鹿すぎて、その人生が映画になっちゃう・・って“DUNE”のホドロフスキー氏とか伝説のエド・ウッド氏は存じ上げてましたがイスラエル発の豪快型B級映画監督のことは初めて知りましたよ。ほんとその振り切れ具合が作り物より面白い。 (困った)情熱監督の共通点が分かりやすいです。まずもってお金でトラブる。予算があるとないとに関わらず作品に関して「金に糸目をつけない」。ギャラの額を、経理担当をすっ飛ばして勝手に口約束したりね。その点オタクのタランティーノは低予算映画でデビューを飾って偉かった。 自分の芸術沼にハマったホドロフスキーも、映画センスが欠乏しつつも自作をこよなく愛したエド・ウッドも、次々とB級作品を量産したメナハムも、なんというか人類極端史の最前線にいる人たちでつくづく尊いなあと思うのでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-11-22 23:18:54) |
31. 岸辺露伴 ルーヴルへ行く
《ネタバレ》 中盤までの雰囲気はすごく良いんですけどね。露伴のアトリエ、年代を経た旅館、山の緑と謎の女。画のレベルがミステリー映画のクオリティとして文句なし。わくわくしました。 でもパリに舞台を移してからは、撮影に制約があったんでしょうか、今ひとつせせこましい演出になってしまってせっかくルーヴルと謳っていても看板倒れな感じです。黒い絵が怨念パワーを炸裂させるシーンも陳腐。露伴さん自前の能力ここでこそ発揮しないと。あれ、使えないの? 時代劇もちょっと長い。あんなに丁寧に謎明かししたら怖くなくなる。昔黒に取り憑かれた絵師がいました、禁忌を犯して処罰されました、とざっくり数カットで収めた方が見る側の想像がふくらんで怖かったような気がする。 オカルトもどきの食い足りない出来になっちゃいましたが、高橋の仕事がさすがです。評判通り。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2024-11-21 22:27:34) |
32. ミッション:インポッシブル/フォールアウト
相変わらずサービス精神てんこ盛りのM.Iシリーズ第6作め。落ちたりぶら下がったりよじ登ったり、イーサン・ハントの身体の張りっぷりは今作も超人レベル。生身のトムもよく走り、またフォームがキレイなの。鍛えてるなあ。 裏切りあり引っ掛けもあり、脚本もマンネリ気味ながらやっぱり観ちゃいます。“○○するには××しなければならない”式のミッションが今回も適用されていて、IMFのみなさんの苦労がカサ増しされる黄金のパターン。 でもちょっと長かった。それとトムの容貌がさすがに老けてきてしまっているのが寂しい。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-11-20 23:07:32) |
33. 誰かに見られてる
《ネタバレ》 御大R・スコットといえど慣れないことをするもんじゃないですなあ。リドリー・スコット味を感じるのはクレア邸の豪勢な内装くらいなもので、全体像は「三流ラブサスペンス」といったところ。 展開も演出も凡庸でこれといって見どころ無し。 犯人の立ち回りが話に都合よすぎる。刑事の家族を人質に取ってどうなるというのだ。 途方もなくヘタレな男を演ってるトム・べレンジャーが全然かっこ良くない。ミミ・ロジャースのスタイルだけ良かった。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2024-11-15 23:29:29) |
34. コントラクト・キラー
《ネタバレ》 人生どこで転機が訪れるかわからないものだなあ。 死のうとしてたのに。仕事もお金も、何よりこの主人公には生きる希望が無くて。 なのに、特に何もしていないのに、ふっと心に気力の灯がともる。モノクロだった彼の生活に色を伴った彼女が現れたから。 かくして依頼したはずの自身への殺し屋からは逃げ続け、病を患っているというその殺し屋へ見舞いの言葉すら口をつくまでに彼の心は回復を見せるのだった。 けれんみとかドラマチックとかいう言葉をどこかに置き忘れているカウリスマキ作品群の中でもとりわけ淡々としている本作。イギリスに住むフランス男の情操が、暗いんだけどユーモアを帯びているのがいかにも同監督ぽい。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-11-10 23:48:56) |
35. パーフェクト・プラン
《ネタバレ》 ギャング二組、警察、巻き込まれた民間人の四つ巴と欲張りすぎて、上手く脚本が機能していない。 横取りされたフランス人ギャングは実行犯の兄弟に怨嗟を向けるべきなのでは。なんで仲間内も知らないベンの大家を早々と脅迫してくるのかしら。 ライト夫妻も公園にフランス人ギャングを呼び出してどうするつもりだったの。このくだり、どうしても分からない。 警部補の娘の話も中途半端でぶつ切り。バイオレンス描写にはやけに熱心。話の広げ方が乱暴で粗が目立ちます。大味すぎてつまんないな。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2024-11-09 23:28:40) |
36. スワンソング
《ネタバレ》 ウド・キアーが数十年ぶりに主演!なんという円熟、いぶし銀な演技でしょうか。いぶし銀というよりはラメ入りパープルといった趣だけども。 人生の終盤に、かつて愛した街を歩くパット。失われた面影の多いことが、世の常なれど寂しい。施設から抜け出て、街の人と触れ合うことで往年の調子を取り戻してゆくパット。彼と歩を合わせるようにして、過去がちょっとづつ見えてくる。恋人も家も失ったし、子どもがいない自分のことなど誰からも忘れられてしまうだろうと思っていたパット。 でも違った。過去の自分が蒔いた種がたくさんの人の心に芽吹いていたことに気づいたし、抱いていた親友へのわだかまりも綺麗に解くことができた。心の整理は自分自身でつけるもの。実に見事な人生の畳み方でした。 旧友と海辺で語る場面、派手めのスーツを見事に着こなす場面、弁護士から必要経費としてむしり取ったお金でワイン飲んでる(しかもチップまではずんじゃってる)場面、電動車いすで渋滞引き起こす場面・・、たくさん好きなシーンがあるけど施設の車椅子の婦人の髪を美しくまとめてあげる場面が一番好き。 サントラもひとつひとつがシーンにぴったりだし、サンダスキーの街並みも素朴でどこか懐かしい。 実在のヘアドレッサーに監督がインスパイアされたという愛すべき一品。大好き。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2024-11-06 23:59:54) |
37. Pearl パール
《ネタバレ》 エグいホラー仕立てだけど、現在に通じる問題をたくさん内包していて唸ってしまった。娘を窒息させる毒母、ヤングケアラーの問題、夢を追いきれない構造的な不自由さ。 ラストのパールの長広舌に圧倒されるという感想を多く見るけれど、わたしは母ルースのキレた場面に身がすくんだ。これでもかと娘にぶつける酷い言葉。自分の人生の怨念を吐き散らかすその姿。パールはモンスターになってしまったけれど、そうなったのは母親のせいではないのか。綿々と呪いの言葉を浴びせられてパールは壊れた。一部の母親はなぜ自分の重荷を娘も背負うべきと思うのか。 一昔前のテクニカラーを意識した鮮やかすぎる色彩も毒々しい。ロートルファンなら卒倒しそうな「オズの魔法使い」の悪趣味なパクリ。 ミア・ゴスの怪演は一度見たら忘れられない。内気で素朴なパールの外皮を破るようにして、内側から鬱屈した狂気がほとばしる。その憑かれたような表情。そもそもミアの薄眉顔が怖い顔立ちというのもある。 締めのロングショットもつらすぎる。ああいう引きつった笑みは被虐児童にもよく見る痛々しさ。「どうしてわたしを嫌うの?」と母に問うたパールのその台詞が悲しくて胸に刺さった。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2024-10-30 16:15:35)(良:1票) |
38. ヘンゼル&グレーテル
《ネタバレ》 本国の批評家からは散々な評価だったらしいけど、わたしはこれ結構面白かったです。グリム童話を下敷きにしたファンタジーホラーの中に、当時の捨て子等の社会問題を織り込むとかしてもう少し格調高いテイストに寄れば識者の方々も納得なのかな。 いや、そんな小難しいことは抜きにして悪い魔女をぶっ殺すB級姿勢が良いんですよ本作は。 アクションも観易いし、時代考証も(途中まで)よく再現できているみごとな美術。中世の画ヅラにガトリング砲登場でびっくりさせられますけども、これが妙にマッチしてる。無骨な銃器に魔法の液体をかけてパワーアップ、ってデタラメがまた心地よい。森の中を杖に乗って飛ぶ魔女の画が素敵で、CGを観てわくわくしたのは久しぶりです。 中学生の妄想を余すことなく映像化した快作と言っていいんじゃないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-10-28 23:47:33) |
39. 夕陽に立つ保安官
いやー笑いました。げらげら笑いでなく、にやにや笑い。 全員がすっとぼけたお芝居で、台詞が面白い。西部劇をセルフパロディしっ放しの1時間半。元ネタが隅々まで分かるともっと面白いんだろうなあ。 過剰なドタバタもないし、下ネタに走ることもない。とぼけたセンスで笑わせてくれる一本です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-10-25 22:48:27) |
40. 17歳の瞳に映る世界
《ネタバレ》 なんとも胸が痛かった。オータムをこんな目に遭わせたのは一体誰なの。妊娠させた男どこ行った出てこい。 彼女の周囲はほんと暖かくない。高圧的な継父。妊娠を相談できない母親。お母さんさあ娘まだ17なのにもっと気遣ってやれないもんだろうか。バイト先の店長も何なん。具合悪いって言ってんのに。たった2時間じゃねえよ。学校の男子どもったら。女の子に意地悪するその性格がもうダサい。 窮地のオータムに寄り添ってくれるのは従妹のスカイラーだけ。身を張って当座の資金を得てくれる彼女。この娘の友情の深さはこの話のオアシス。泣いた。 アメリカってこんなんなんだね。地域の色が違い過ぎる。女子はないがしろにされ権利を取り上げられる所もあれば、場所を移せば相互扶助の社会システムが機能している。 オータムとスカイラーがつないだ手。どうかその手をずっと放さずにいてほしい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-10-23 19:23:51) |