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 > アラジン2014 さん
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プロフィール
コメント数 731
性別 男性
自己紹介 ソフト化されたタイミングでのレビューが中心です。2008年、子供の頃から夢だった自宅シアタールームがついに実現しました。(100~110インチ程度、音響2.1ch)できるだけネタバレせずに書いていますので文章がおかしい場合もあると思いますが、暖かい目で見守ってやってください。(2014初登録)

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21.  インソムニア 《ネタバレ》 
ノーラン監督がバットマンで一世を風靡する直前の作品。業界では既に有名監督でしたので、本作ではアル・パチーノとロビン・ウィリアムズの超一流役者がまとめてスクリーンに大写しになるという、非常に贅沢な一コマが堪能できます。しかし作品自体は割と凡唐で、田舎で起きた殺人事件をLAの花形ヒーロー刑事が追うというシンプルなもの。白夜=夜が無いという特殊な仕組みはあるものの、一部主要人物たちが寝不足に陥るだけでその他目立ったカラクリはありません。まあこれは他レビュアーさんの書き込みにも見られるように、実際に白夜を経験していない人にはピンとこないのかもしれません。  物語自体もシンプルで、内部監査でヒーロー刑事の過去の汚点に火が付いて僻地捜査に飛ばされたものの、慣れない捜査で誤射がおきるというシンプルな構造です。ただこのプロットにはきちんとリアル志向の骨格があり、この悪徳刑事は自己の利益のみでは動いておらず、世の為を思って証拠を捏造したり、自分のミスが発覚すると過去の判例までも反故にされる可能性を恐れて秘匿してみたりと、一応は正義の側面もあります。実際、新人研修の手本となるようなヒーロー刑事としてのエピソードもきちんと描かれています。  凝った脚本に難しいセリフが合わさってイマイチ判り難い部分もありますが、アル・パチーノがモーラ・ティアニー扮する宿屋の女性(ERのアビーさん)に自身の心境を吐露するシーンや、犬の死体を利用して証拠を捏造するシーンなど興味深い演出も結構多いです。できれば被害者タニヤ(キャサリン・イザベル)と犯人が親しくなった経緯や彼らのバックボーンまで掘り下げてくれていたほうがより深みがあったと思いますが、時間が足らなかったのかそれらは一切描かれていませんでした。 結局のところ、ヒーロー刑事といえど彼もただの人であるという側面が見え隠れしていて興味深いのと、彼の最期はアレしかないという納得の流れで、きちんと若手を正義の道に導く彼の最期は何とか許容できました。あと皆さんがご指摘のようにロビン・ウィリアムズが、、まあ考えようによってはある種かなり不気味ではあるものの、恐怖心をあおる描写がほとんどなくてまるでイイ人にしかみえないのが残念でした。その割にラストでのあの暴れっぷりには少々違和感を感じました。「セブン」ほどの悪の描写は必要ないにしても、、せめて「サイコ」くらいのネジが飛んだ演出は欲しかったところです。  映画としての出来はかなり良いものの、極めて地味な作品でした。何年か経ったら忘れてしまうでしょうし、そうかといってまた見返したいかと聞かれると微妙な映画です。ノーランと大物演者らに免じてかなり甘めの点数。
[インターネット(字幕)] 7点(2024-10-21 12:22:33)
22.  プロミシング・ヤング・ウーマン
かなりの衝撃作。全体的な流れは最初からある程度予想はできるものの、まさかここまでやり切るとは思いませんでした。一見するとリアル志向なのにライトでポップな要素もふんだんに使われていて退屈させません。学長との一件などもセリフだけで十分に怖さを演出しており、脚本と演出の上手さが光っています。この監督さん、全体的に直接的な描写をせず音・セリフ・印象だけで状況を理解させる術をよく知っていて、映画作品としては極めて洗練されています。(若手新人監督のエメラルド・フェネルという女性はまだ39歳というのだから驚き)  賛否あるようですが主人公は用意周到でことに臨んでいますので、刺し違える覚悟だったのは明らか。台詞でも「説明不能なほど考え抜いた結果」と言っていますので、自分が殺人犯になるか殺されるかの二択しか想定していなかったハズです。 動機として弱いという側面も確かにありますが、医大生というIQの高さゆえリスペクトしまくっていた大親友があのような悲惨な事件に巻き込まれ、親友の為に大学を中退までしたのに自殺されてしまったという衝撃的な経緯を知れば、動機としては十分あり得たと考えられます。 これが適度におバカさんであれば頭脳で消化しきれず、”理解不能案件”として徐々に風化するか心が壊れるかのどちらかだったのですが、彼女は頭が良すぎてそれを忘れることなく論理的に処理、徐々に考えが膨らんでいきます。その妄想に支配され、7年の時を経て妄想が実行可能なリアル案件へと変貌を遂げます。序盤のヤサ男風クズ男を懲らしめる描写はほとんどが前振り&予行練習だったということが理解できます。  きちんと前向きに生きる努力も描かれていますし、弁護士男性の心理を理解し歯止めをかける描写も描かれていますので、本人としてはできれば忘れたかったのでしょう。しかし前述のように高IQがそれを邪魔してしまい、哀れとしかいいようがない結末を迎えてしまいます。  この映画の凄い所は徹底的にセリフや情景だけで見せるイメージ戦略を貫いておいて、最後の最後、ラストの殺人描写は一部始終をハッキリ見せ切る潔さです。”4”が記させる佳境のシーンは「これリアルなんじゃないの?」というくらい生々しくて恐ろしく、そして”5”が記されるエピローグで彼女の想いは遂げられます。悲しくも素晴らしい映画でした。
[インターネット(字幕)] 9点(2024-10-21 11:52:19)
23.  武士の一分
単体で見れば本作も十分に面白い作品なのですが、残念ながら藤沢周平三部作「たそがれ清兵衛」→「隠し剣鬼の爪」→「武士の一分」の順に面白くなくなっています。これはおそらく慣れた監督が緊張感を失ってしまったが故でしょう。特に本作が致命的なのはメインのキャスティングで、木村拓哉×檀れい×笹野高史のセットでは、、まるで釣りバカや寅さんレベルのお気軽さを醸し出してしまっています。これはイタイ。  各キャスト自体はそれぞれに良い演技をしていますが、キムタクを筆頭に全体的にやたらと軽いのが悪目立ちしています。「たそがれ」の時に強調していた”幕末のリアリズム”はいったいどこへいってしまったのか。そもそも論、主役にキムタクを抜擢した時点で絶望的に詰んでいた訳ですが、しかしながら日本での興行成績を見ると藤沢周平三部作の中では本作「武士の一分」が最も売れたようです。この事実から見てもやはり日本の観客(および批評家)の質の低さが露呈してしまっているようにも感じます。  唯一特筆すべきは檀れいの猛烈な可愛さで、公開当時35歳ですがロリじみた少女のような雰囲気と、端正に整ったルックスは誰が見ても他人様から奪いたくなること必至。檀れいを見るためだけに本作を手に取っても良いレベルでした。というかこれくらいしか特筆すべき点が無かったような気がしますw あと気になった点としては本作では「たそがれ清兵衛」と異なり、決着より前の段階でご丁寧にも練習シーンが差し込まれています(「隠し剣鬼の爪」も同様)。これは致命的で、、倒叙方式のような効果は得られず単に技ネタがバレてしまっただけのように思います。結果的に大いに緊張感を削ぐ結果につながってしまったように思います。  まあ結局のところ本作も「たそがれ清兵衛」には遠く及ばない並程度の映画作品だったなという印象です。富田勲の音楽に関しても非常に素晴らしかった「たそがれ」と比較して、本作では特筆すべき点がない極めて汎唐な音楽に成り下がっていたと感じます。かなりおまけしてこの点数としておきます。
[インターネット(邦画)] 5点(2024-10-20 17:33:54)
24.  隠し剣 鬼の爪
本作も十分に面白い映画ではありますが、同じ監督作品とは思えないくらいに「たそがれ清兵衛」の完成度が高すぎました。本作は脚本の練り方も「たそがれ」ほど時間をかけていないようで、かなり無理な設定や話運びが目立ちます。また比較するのは酷ですが「たそがれ」の眞田広之×宮沢りえ×田中泯の完璧布陣と比較してしまうと、どうしても役者の格の違いを感じずにはいられません。例えるならば「たそがれ」=世界基準、「鬼の爪」=邦画基準、「武士の一分」=昼ドラ基準といったところでしょうか。  ただし、鬼の爪を使うラストのワンカットはやたらとカッコいい。このワンカットを見る為だけにこの映画を手に取っても間違いではないでしょう。でも実のところ友を斬るために教わった「実用的な立ち回り」と、「秘伝 鬼の爪」はどちらも結構ショボい技で、姑息は言い過ぎにしても極めて侍の精神に反する戦い方であったといわざるを得ません。また小澤征悦扮する(狭間弥市郎)の妻、高島礼子のエピソードが無駄に主張していて浮いているように感じました。そもそもこのシーケンスは本筋上は無理に入れなくても問題無いエピソードで、ちょっと盛り込み過ぎてしまった感じさえ受けます。(結局のところ高島礼子自体がミスキャストではなかったか?)  あと、この作品を邦画レベルに落としてしまった最大の汚点は、松たか子扮する(きえ)とのぬるい恋愛模様でしょう。(本作においては)悪い意味で山田洋次監督らしい癖がここで出てしまいました。藤沢周平原作の映画化なのでここはグッと辛抱して、表情だけで心情が判る物悲しい描写もしくは清々しい描写を期待したかったところですが、ベタな少女趣味の流れになってしまいました。しかしこの部分を否定してしまうと本作を全否定したことにも繋がりかねず、なかなか難しいバランス感覚ではあります。まあ結局のところ「たそがれ清兵衛」が良すぎただけなのかもしれません。松たか子の愛らしさに免じて少し甘い評価で。
[インターネット(邦画)] 7点(2024-10-20 16:40:09)
25.  スノーピアサー 《ネタバレ》 
マッドマックスのジョージ・ミラーがいかに天才かよくわかります。本作もマッドマックスのようなリアル志向のデストピア系作品ですが、設定をリアルにしてしまったが故にそれを具現化する術を持ち合わせていない監督の力量不足が目立ってしまったように感じます。まあ、原作・脚本・監督がご本人さんなのでお好きにどうぞって感じではあるのですが。  いえ、プロットは素敵なのですよ。しかし一年かけて列車で世界を周回しているのはあまりにも無理がありすぎるしそもそもその行動原理がイミフ(止まっているほうが絶対安全だし暖も取りやすい)。後ろの住人は労働させられるわけでもなくタダ飯だけ食わされていて、これもいったい何がしたいのか全く理解不能。そもそも論、このカースト(ピラミッド)の理論がよく理解できないのでどう考えていいものか。その他、無数にある無理やり設定が頭の中を支配してしまってベースにある素敵なプロットを楽しむところまでいけません。 水族館や娯楽施設の車両も無理が多すぎるし、ステーキってあんたら牛もどこかで飼育してたんかい?ラストも子供に歯車の代わりをさせていたとかもう失笑もんだし、脱線して普通に外にでちゃってるしw 7分で凍る設定は一体何だったのか。本作を楽しむためには無数の違和感や矛盾を封印するしかありません。ゲーム「フォール・アウト3」のシステムのほうがよほど説得力があって無理が無かったように感じます。  超豪華出演陣には驚きますが、個人的にはポン・ジュノ監督はあまり好きではありません。前述の通りリアルな設定をおざなりにしておいて、シレっとリアルそうな流れを作ろうとする無理感というか、、説明が難しいのですがなんか違うのですよ彼の作品の作り方は。 この世界観を楽しむにはあまりにも大人になり過ぎた私は話半分くらいしか楽しめませんでした。大人も子供も有無を言わさず楽しませる勢いを持ったジョージ・ミラーはやはり偉大でした。個人的にはティルダ・スウィントンじゃないほうのふくよかな秘書さんにはもう少し活躍していただきたかった。。
[地上波(吹替)] 5点(2024-10-10 17:25:50)
26.  バトルシップ(2012) 《ネタバレ》 
べた褒めの方がいるのにちょっと驚いちゃいましたが、好意的に見れば確かに割とレベルの高い映像が多かったです。話の根幹である「深宇宙へ信号を送る」は割とリアルで、本作のようなことが起こり得る可能性がありそうなのがガチで怖いす。でも肝心の脚本がねぇ・・ オープニングの入りは良いものの、ブリトー逮捕後にいきなり海軍エリート&リアルバービーとチュッチュウフフなのはイミフ。まあ言いたいことはわかるものの、この流れなら別にブリトーまでの落ちぶれたオープニングは要らなかったですよね。エンディングのネタがやりたかっただけでしょうけど、これもさして面白く無いジョークでしたので微妙です。(アメリカ人ってこういうブルーカラーがホワイトカラーの頂点に上り詰める的な話が好きですよねぇw)  古いネタですが、、国防長官役のピーター・マクニコルが「アリー・マイ・ラブ」にしか思えなくてキツかったです。いつバリーホワイトの音楽に乗って踊り出すのかとヒヤヒヤ・・ あと、浅野忠信は準主役というかなり美味しい役どころで演技も素晴らしかったです。アメリカお得意のステレオタイプの日本人にならず、日本人が見て違和感のない日本人になっていました。ただ、序盤のサッカー付近の日本描写は何となく違和感が目立ちます。 反面、悪目立ちしちゃったのがリーアム・ニーソン。あの役柄で彼を使うのですからもう少し重要な決断でもあるのかと思いきや、まさかのコメディリリーフ。前述の国防長官のほうが彼の雰囲気には合っていたように感じました。予算的にも役的にもかなり勿体無い使われ方でした。  Wikiを見てご存知の方もいらっしゃると思いますが、戦艦ミズーリの始動シーンは本物だそうです。退役軍人さんが過去の遺物で戦う展開は胸アツですが、ちゃんと動くのは少しオカシイですよね。流れ的にも割とスムーズなのですが、、なんなんでしょうねこの稚拙な雰囲気は。。 日本の防衛省も非公式という体で一応出ています。エンタメですがネタとしてパールハーバーで日米が映画を撮影できて素敵です。個人的には本作に似た映画としては「世界侵略:ロサンゼルス決戦」のほうがもう少し真面目に作られていて、本作よりは大分マシだったなといった印象です。本作に関してはまあ・・ 夏休みの子供向けの派手な映像を見て楽しむ系の作品。
[地上波(吹替)] 4点(2024-09-07 13:19:45)
27.  ジャージー・ボーイズ 《ネタバレ》 
特に日本ではフォー・シーズンズがあまり有名ではなかった点が致命的でしょうか。日本で1960年代といえばやはりビートルズ、ビーチボーイズ、サイモン&ガーファンクルあたりでしょうか。私自身ギター経験が長く、オールディーズやロカビリーが好きでしたが、やはりプレスリーやバディ・ホリーの次はビートルズで、フォーシーズンズは”名前は知ってるけど・・”という程度でした。  イーストウッドが作った映画と相性が悪い私ですが、本作は割とすんなり入り込めました。序盤が少々速足&わかり難い感じもありますが、メンバーが出所してからは割と落ち着いて見られます。デカルト(クリストファー・ウォーケン)が最初から良い味が出ていて流石でした。要所要所にしか出てきませんがその全てが素晴らしかったです。 ストーリーの骨格はよくある”ミュージシャンの伝記もの”の定番で、むしろかなり表面だけなぞったお手軽な感じに仕上がっています。いや、あえてそう仕上げたのか、普段のイーストウッドのように馬鹿正直に重たい流れにしていたら見るのがしんどかったかも。ある意味全く深みが感じられないおかげで割と見やすい映画に仕上がっています。(怪我の功名?それとも意図的?)  フランキー・ヴァリ(ジョン・ロイド・ヤング)が魅力的で映画を引っ張ります。背が低く序盤からかなり子供っぽくてなんだか頼りない感じですが、キリッと整った眉毛と歌声は魅力的でどんどん引き込まれます。「君の瞳に恋してる」のオリジナルが彼らのものだったのにはチョット感動。ディスコバージョンも有名ですが割とスタンダードの名曲で、文句のつけようがないパーフェクトなラブソングです。  心に残るほどの映画ではなかったですが、及第点以上は十分与えられる無難な作品だと思います。
[地上波(字幕)] 7点(2024-08-31 15:37:31)
28.  モーガン プロトタイプ L-9 《ネタバレ》 
リドリー・スコットの息子ルーク・スコット長編デビュー作ということで手厳しい評論家が多い本作ですが、ご祝儀キャスト、コンパクト脚本、落ち着いた演出、高い演技力、洗練された映像表現等、基本的にどれをとっても文句の出ない美しい作品だったと思います。個人的にはかなり良かった。 結局のところ皆さんが気に入らないのは、父親の代表作である「ブレードランナー」の影響を強く受けている(あえて同じ流れに挑んだ?)点でしょうか。個人的には大いに結構で、むしろ赤の他人ではリドリー・スコットの影響下に深く切り込んだ本作のような絶妙路線はなかなか取れない訳で、七光り息子の利点を最大限に生かした本作作風はルークスコットならでは、非常に素晴らしいとすら感じました。  とにかくキャストが豪華。リー・ウェザーズ(ケイト・マーラ)も最初からどっちがアレなの?という絶妙な演出&演技力だし、モーガン(アニャ・テイラー=ジョイ)に至ってはもう本当にリアルでウマイの一言。ジェニファー・ジェイソン・リーなんか最初はどこに出ているのか判らないくらい贅沢な使い方だし(笑)、ミシェル・ヨーも「サンシャイン2057」や本作など、興行成績より趣味優先で割とハードなSFが好きなんだなと驚きすらありました。ポール・ジアマッティ、トビー・ジョーンズら大御所もかなりリッチに使われていますし、ゲーム・オブ・スローンズで美味しい役を演じたローズ・レスリーも難しい表現を上手に演じていました。 美的センスも洗練されていて、天国のような湖がどうなるのか不安でしたが大人が見て納得できるリアル志向の美しさでした。ぶっちゃけ、、「ブレードランナー2049」「プロメテウス」「エイリアン・コヴェナント」なんかよりもずっと上手くまとまっていたと感じました。  エクス・マキナと比較されている方も多いですが、DNA的(クローン的)な流れの本作と、AIモノ(アンドロイド)とは全く別の流れだと思っています。そういった意味では本作は疑問符が多く、むしろエクス・マキナのほうが流れに無理が無かったように感じます。そもそも論、遺伝子操作で作った生命体は本来弱く短命なハズで、むしろ兵器として利用するなら感情に関わるDNAをどうやって排除すべきか苦労したはずです。彼女らはあくまで”モノ”として生まれ”モノ”として消費されていく運命です。そういった意味では本作は根本的に無理な設定が目立つし、更にはそれら”モノ”に派手なアクションをやらせて収束させた脚本も少々安易でした。本来ならもっとインナーSF特有の深みを与えることができるテーマだっただけに惜しい作品と言わざるを得ません。ただ、否定的に見ても映画としては案外楽しめましたので、やはり作品の出来映えとしては結構良かったものと思われます。  ちなみに日本の配給会社は本当にセンスがなくて、売れなくても本作は劇場公開しておくべきカルト映画だったと思いますがビデオスルーという憂き目をみています。ハイウェイの彼方に/プレミアム・ラッシュ/ナイン・デイズ(2020)等、割といい作品をビデオスルーしていて本当に日本の配給基準のセンスの無さが辛いところです。。
[インターネット(字幕)] 8点(2024-08-29 10:52:38)
29.  しあわせの隠れ場所
ベタでアレかなぁ~・・ と思いましたが意外と良かったです。特にマイケル・オアー役のクィントン・アーロン君の優しそうな雰囲気が良かったですが、他に目立った出演作はないようです。また、皆さんおっしゃるようにサンドラ・ブロックがはまり役でした。彼女にはこういう役がピッタリですね。  ジョン・リー・ハンコック監督は「パーフェクトワールド」「オールドルーキー」「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」などの脚本や監督を務めるベテラン監督&脚本家ですが、本作においては嫌な部分は全て封印してあり、基本的には表面をなぞっただけのかなりお手軽&シンプルな作品に仕上げています。 アメフトを知らない人にはマイケル・オアーの凄さが判らないと判断したのか、ご丁寧にもオープニングでアメフトのルール説明が入ります。しかし興味がない私にとってはそれでもイミフ。素直に「メンフィスの最も貧しい地域で生まれ育ったマイケル・オアー選手がいかにしてアメフトのスーパースターの仲間入りを果たしたのか、皆さんはご存知だろうか?」で十分伝わったと思います(某番組のナレーションみたいですけど)。  前述の通り、良い部分だけなぞった生ぬるい作品ではありますが、裏を返せば雨の夜道でビッグマイケルを拾ったのもタイミングだし入学前に監督が彼の能力に気付いたのもタイミングでした。優しい先生に巡り合えたのもタイミング、全てが絶妙なタイミングの元で成るべくしてスーパースターになった人物の物語ともいえます。そういった意味では無駄に雑音を挟まなかった監督・脚本家の判断は正しかったのかもしれません。とにかく、リー・アン・テューイ家の家族が全員素晴らしい。更にその素晴らしさがマイケル・オアーの人柄から引き出されたものなのも素敵でした。 金銭・友人・地域的な問題など面倒なことは全て棚上げしていて深みには欠けますが、限りなくおとぎ話に近い実話として後味も良い作品に仕上がっています。興味があれば見て損の無い映画だと思います。
[地上波(字幕)] 7点(2024-08-23 11:09:26)
30.  ローズマリーの赤ちゃん 《ネタバレ》 
昔見たハズですが覚えていませんでした。個人的にはロマン・ポランスキーもミア・ファローもあまり好きではないのですが、本作に関しては苦手感覚をあまり意識せず楽しめました。(髪をカットする前のミア・ファローがかなり可愛いです)  1968年公開という古臭い映画ですが普通に楽しめたのは扱っている題材が普遍的で、表現方法も奇をてらわず王道に徹した点が良かったと思います。見せすぎない演出も素晴らしく、おかげで観客もローズマリーと一緒に薄ら気味悪い雰囲気、どうにもやり場のない不安感を共有できるようになっています。悪夢をうまく表現できている悪魔との例のシーンもリアルで、これが悪夢なのか現実なのかよくわからない感じが本当に素晴らしかったです。スマホやSNSが無ければ今でも普通に通用しそうな普遍的な怖さがありました。 題名も素晴らしく「原題:Rosemary's Baby」をそのまま「ローズマリーの赤ちゃん」とした点は素晴らしい。そしてのその赤ちゃんを一度も見せなかったセンスも素晴らしいです。最初から最後まで割と正しいチョイスがきちんと行われている奇跡の映画です。  ラスト、ローズマリーが恐怖におののく顔から反転、静かにゆりかごをゆすり始める流れが最高でした。今も色あせない名作だと思います。難点としては、引っ越し前のシーンから非常に丁寧に描かれていて序盤40分は少々退屈します。その点を考慮して少し点数を下げておきますが、限りなく8点に近い7点です。
[地上波(字幕)] 7点(2024-08-22 15:42:20)(良:1票)
31.  ココ・アヴァン・シャネル
時間を気にすることなく映画に引き込まれました。そういった意味では意外と良い映画だったなという印象です。パッケージのオドレイ・トトゥが割と奇跡の一枚になっていて、本編では年齢(当時33歳)を隠しきれていませんでした。むしろもう少し年を取っている印象も・・ しかしながら、年齢不詳気味のシャネル本人とリンクするくらいにソックリで素晴らしい雰囲気を醸し出していましたので、そういった意味ではあっぱれでした。  物語としてはシャネルになる前の青春時代がメインで、全体的に情緒的でゆったり流れます。しかし実際のところは単純に「若い」+「女」を武器とした、割とありがちな娼婦ネタ(恋愛とは言い難い)でした。男性社会を意識しているのか、くわえタバコなど要所要所下品な描写もあって彼女の育ちが垣間見えなくもないです。 戦争はほとんど描かれませんが、アールデコ時代のヨーロッパの空気感は感じ取れる作りで周りの人達は優雅でオシャレ。貴族階級やそれに準じた人たちの世界ってこんな感じなんだろうなあ、という雰囲気はありました。反対に幼少期や少女期の極貧部分は基本的に描かれていません。  とにかくオドレイ・トトゥの目力が凄くて、私があの目で見つめられたら0.5秒で目をそらしてしまうと思います。台詞は少ないのにやたらと情熱的に見える彼女の演技は本当に素晴らしく、また、この雰囲気も相まって明らかに変人にしか見えませんが、変人度数の高さも大成する人物の必須条件なんだなあと、妙に納得してしまいます。  シャネルが生涯独身だったことは有名な話ですので情事の結末は判っています。彼女は女を最大限に利用しただけなのか、それともあくまで純愛だったのか・・ これは本人の考え方一つなので他人が決めることではありません。そういった意味ではもしかすると物凄く深い映画だったのかもしれません。彼女の表情から色んな感情が見て取れるラストカットは意外と嫌いじゃなかった。
[地上波(字幕)] 7点(2024-08-20 11:02:41)
32.  麗しのサブリナ 《ネタバレ》 
地上波4K字幕、100インチスクリーンにて鑑賞。「アパートの鍵貸します」「お熱いのがお好き」のビリーワイルダー監督・脚本の本作。主演にオードリー・ヘプバーン、ハンフリー・ボガート、ウィリアム・ホールデンという完璧な布陣で非常に良くできた面白い作品でした。ただ皆さんご指摘のように、ボガートとホールデンがオッサン過ぎて違和感ありまくりです。この点は本当に残念でしたが、当時他にボガートのレベルで演技ができる若手が居たかどうか。。   ポールニューマン、ロジャームーア、チャールトン・ヘストン、マーロン・ブランド、クリストファー・リー、チャールズ・ブロンソン、ビック・モロー、マックス・フォン・シドー等、挙げてもキリがありませんが、みんな微妙に合わないような気はします(兄ロジャームーア、弟チャールズ・ブロンソンとかウケるし)。。とにかく、、ボガートのように哀愁漂いつつ仕事と家族と好きになっちゃった女性の三者に挟まれた複雑な演技ができる人はなかなかいないでしょう。言葉少なに、それぞれの状況をよく理解し最後まで自分を犠牲にして落としどころを探る演技は見事でした。 ヘプバーンがフラフラし過ぎという意見も見られますが、22歳設定おフランス帰りの美人さんならこれくらいは当たり前だと思います。そもそも論、問題なのは10代のサブリナ(ダイヤの原石)を見抜けなかった兄弟二人の目は完全に節穴だったということ。とにかく、年齢問題を抜きにすれば脚本や設定は非常に面白い作品でした。  昔の映画らしく随所にちりばめられたセリフも素晴らしかったです。帽子ネタも美しいしバナナの歌も最高、バラ色の人生の歌も素敵、フランス語の美しさから言葉を伝授する流れも今見ても洗練されており、もう何から何まで画面に酔いしれたい美しさです。今時の映画と違ってよく考えられていましたが、惜しいのは料理修行に行ったのにそれが反映されていなかった点、サブリナがレディに成長するきっかけとなった男爵ネタも手紙だけで終わりなんてもったいなさすぎました。  総じて年齢問題以外は素敵な作品、不動の名作認定で間違いないでしょう。
[地上波(字幕)] 8点(2024-08-15 12:31:13)
33.  ロスト・エモーション 《ネタバレ》 
情緒的で儚い物語が好きなので興味がありましたが、評判があまりよくなかったので今までタイミングを逃していました。ある程度覚悟して鑑賞しましたが、やはり皆さんの評判通り残念な感じでした。主演女優トワイライトのベラ(クリステン・スチュワート)、男はウォーボーイズのニュークス(ニコラス・ホルト)なので楽観視していましたが・・ 好意的に考えてもちょっと厳しかったです。  事前にレビューを見てしまったのもいけませんでしたが、、「ロミオとジュリエットの要素もあって・・」という一文から比較的早めに流れが想像できてしまいました。やはり鑑賞前にレビューなんて見るもんじゃないですねぇ。しかし最もいけないのは映画の行間で考える時間がたっぷりあったことです。情緒的で美しい映像=良くいえば雰囲気が良い、悪くいえばダラダラのせいで映像の合間合間に別のことを考えてしまう余裕があります。おかげで今現在目前で進行している映画本編になかなか集中させてくれません。(集中してると眠たくなる始末で・・)  そもそも論、本作のような悲壮感漂う恋愛を表現するなら、やはり彼ら二人がいかに感情を抑圧された子供時代を送ってきたのかしっかり説明すべきでした。そのあたりの説明がないせいで、喜びや愛の感情を爆発させるシーンもイマイチ他人事で響いてきません。ラストは割と綺麗にまとまっていますが、彼らの置かれた状況が特殊すぎて共感できないのはやはり致命的です。本来映画というものはエンドロールで余韻に浸るものですが、本作ではそれすらも許されず部外者的というか、、何となくシラケムードです。情緒的な作品なのにその世界観に浸らせてくれないというのは、やはり映画としては致命的といわざるを得ません。  原題は「Equals(イコールズ)」で、本作デストピア世界のシステムを指す言葉が題名としてチョイスされていますが、物語の内容からは同等とか平等とかのメッセージは感じ取れませんでした。映画の中では「感情」は排除されても「理性」や「理念」は維持されているようでしたから、そういった意味でも「ロスト・エモーション」のほうがずっと合っていたように感じました。 多くの撮影を安藤忠雄が設計した新潟の大学等で行ったことも宣伝されていますが、確かに雰囲気は安藤忠雄的で美しいものでした。しかしこれも指摘されないと日本で撮影したとは理解されないくらいに判り難い感じでした。いろんな意味で惜しい作品。
[インターネット(字幕)] 5点(2024-08-14 01:27:49)
34.  ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎狂騒曲
笑っちゃうくらいレベルの低い作品ですが、当時私もビーバップの対象年齢でしたので普通に見ていました。しかし当時でも失笑もんの演出が多く小バカにし過ぎた作品だよなあという印象しか残っていません。皆さんご指摘の通り、終盤の馬の演出は酷すぎますよね。ビー・バップ・ハイスクール シリーズでマンガ本をリスペクトしたものは一作目と二作目くらいでしょうか。。  マンガ本でも人気だった城東の柴田と西も良い味が出ていますが、個人的には1作目のヘビ次(小沢仁志)とネコ次(木下秀樹)、2作目の山田敏光(土岐光明)とテル(白井光浩)が最高でした。菊リンと順子はいつも素敵です。あと、本作の(五中の鬼姫、如月翔子)こと五十嵐いづみさんの演技は良かったです。真面目デートに凸して説教するシーンは間違いなく本作の名シーンの一つです。半面、美大の女子大生(柏原芳恵)は結構大根で笑っちゃう演技です。(でも80年代ってあんな感じでした、当時の空気感はうまく表現されています)  このシリーズは昭和40年代後半から50年代前半生まれの人が自分の青春時代を懐かしむための映画ですので、真面目にレビューしたり評論しないのが正解ですよ皆さん。
[インターネット(邦画)] 4点(2024-08-13 12:42:39)
35.  インサイド・ヘッド
インサイド・ヘッド2公開&夏休みということもあってか、トイストーリーなどと併せて本作が録画されていました。そもそも全く興味もなく本作の存在すら知りませんでしたが、見てハマりました、かなり泣けました。他のディズニーアニメとは一線を画する面白さ、やはりディズニーの横暴を許さずピクサー精神を死守しているだけのことはあります、さすがピクサー。  まず頭の中をシンプルな感情のみで描いたことは賞賛に値します。人間とは実際もっともっと複雑なものですが、それをこれほどまで分かりやすく描いたのは本当に素晴らしい。凄いのはシンプルで分かりやすいだけでなく、きちんと各キャラクター・セリフ・行動に意味があることです。 イカリとムカムカとビビりは三位一体で本能的に本人を守っている点も素晴らしいですが、ヨコロビとカナシミはペアでないと帰り道が判らなかったり、喜びの記憶を悲しみで満たすことで人として成長できたりと、とにかく非常に奥深く考えられていていちいち納得。その人の核となる素敵な思い出の蓄積で形成される”性格の島”も非常に分かり易く、しかしその島はとてももろく本人の心無い言動でどんどん崩壊していく姿も素晴らしかったです。その他、考えの列車、夢の仕組み、過去の記憶の処理の方法、CMソングのネタ、ピエロ、ビンボン(涙がキャンディーだなんて愛らしすぎて・・)、良い点を挙げるときりがありません。  余談ですがライリーの嫌いな物として”ピーマン”が出てきましたが、実はアメリカ本国版ではブロッコリーなのはご存知でしょうか。日本の子供に合わせてピーマンに書き換えてあるそうで、看板や新聞なども字幕でなく丁寧に各国文字で作られていますし、そういった様々な配慮もピクサーならではといったところです。ラストも文句なしで、悲しみ色に包まれて家族の元で泣くシーンは名シーン。成長=コンソールが新しく大きくなっている点も笑えましたし、もう本当に何から何まで大人が納得の本当に素敵な作品でした。  ちなみに原題「Inside Out(裏返し、表裏が反対)」は、おそらく感情は裏腹で表裏一体(コインの表と裏のように)という意味合いを持つ題名だと思いますが、それをややもじったインサイド・ヘッド(頭の中)とした日本語版の題名も素敵です。絵もかわいらしくトイストーリーより大人向けで良かったです!
[地上波(吹替)] 9点(2024-08-08 15:16:48)
36.  ファミリービジネス 《ネタバレ》 
序盤のワクワクはどこへやら、後半ビックリするような失速を見せます。そもそも論、この映画は一体何を伝えたかったのかよく理解できません。二回もやったということは「ダニーボーイ」を聞かせたかったのか? ただし、ショーン・コネリー&ダスティン・ホフマンは素晴らしく、何だか本当の親子のように感じました。特にダスティン・ホフマンはイタリア系という設定ですが、アメリカ人の彼がイタリア系に見えるから素晴らしかったです。  ストーリー的にはヴィト―(ダスティン)とアダム(マシュー・ブロデリック)が割とクズで困りました。結局頭が良くて真っすぐに生きたジェシー(コネリー)だけが正義と思える映画でした。とにかく全体的な脚本が悪すぎていったい何を見せたかったのか?いったい何を伝えたかったのか?その辺の意図が全く汲み取れないストーリーには心底困り果てました。前述の通り名優二人の演技は印象に残りましたので一応の点数はつけておきます。
[地上波(字幕)] 4点(2024-08-08 15:00:14)
37.  レ・ミゼラブル(2012)
ミュージカル系の映画は大嫌いなので評判を聞いても見ることはありませんでした(舞台とかミュージカル、オペラは見ますよ)。今回ついに録画されていたので仕方なしに見てみましたが、やはり自分の勘を大切にしていて正解でした。私には見る必要のない作品でした。(見て損した映画を挙げるのはラ・ラ・ランドに続いて二度目です)  物語自体は面白いので「人気ミュージカルの完全映画化!」ではなく「原作小説の完全映画化!」で観たかった作品です。シリアスなシーンで歌い出した時には爆笑してしまいました。あとラッセル・クロウは歌が微妙でした。とにかく死ぬほどつまらなかった、心底そう感じた作品。
[地上波(字幕)] 0点(2024-08-08 14:58:19)
38.  アンブレイカブル 《ネタバレ》 
個人的にマーベル系は嫌いなので、、ヒーロー物でどちらか選べといわれたら迷わず本作を選びます。結構面白いのにこの低評価はおそらくマーケティングミスのせいでしょうか。例えるなら映画館だと思って入ってみたら大学の図書館だったような感じで、、今日は本じゃない、チャラい映画が見たかったんだよ。シンプルにそういうズレが低評価の理由ではないかと思われます。  前述の通り、個人的にはマーベルのような派手で現実離れしたヒーロー物は嫌いなので重厚な流れは評価できます。しかしM・ナイト・シャマランの作品にしてはドラマチックな演出が少なく、おまけに話は暗く停滞気味、そもそもストーリー自体大して面白くないのが致命的です。音楽やセリフを排し映像や表情など情緒的な雰囲気で見せる作風は嫌いではないのですが、本作ではシックスセンスのようなわかりやすく心に訴えかけるような演出が少なかったように思います。サービス精神が足りないというか真面目過ぎるというか、とにかくそのような印象を受けました。本作と同じ路線である「ダークナイト」ノーラン監督がいかにバランス感覚とエンタメ感覚に長けた監督であるのかがよく判ります。  ただ、ラストの握手ネタは素晴らしかった。わたしゃ監督の意図する通りに騙されましたよ。息子に新聞を見せる流れも最高でした。これら一連の結末が良かっただけに、全体的にもう少しドラマチックな見せ場を用意してくれていたらもう少しは高評価を獲得できた作品かもしれません。個人的にはM・ナイト・シャマラン監督のファンですのでスプリット、ミスターガラスも見る予定です。ただ、本作はまあまあかな。。
[地上波(字幕)] 6点(2024-08-05 15:47:59)
39.  トイ・ストーリー3 《ネタバレ》 
「子供は必ずおもちゃから卒業する」という完全大人目線のガチ問題に取り組んだパート3。1と2でおもちゃ目線からの子供向け物語を綺麗にやり切って、アンディと観客たちが大人になるまで10年間温めてから本作を制作したという念の入れようです。本作に関しては前二作とは監督が変わりましたが、前二作同様に本当に脚本が良く練られていて、そして物語に沿うよう演出やネタの見せ方も相変わらず高度で最高に面白い作品に仕上がっています。  人間は心も身体も成長する生き物なので、大人の階段を前にして子供の頃に遊んだおもちゃとは決別します。これは仕方のないこと、世の中の全ての人が経験する通過儀礼ともいえる問題です。この問題はおもちゃの目線から見るとすごく大きな問題であることが本作では語られますが、おさがりとして次の世代の子供に託すという選択肢もしっかり提示されています。  AIネタに通じるものがありますが、人間は全ての無機質な物に対して非道なふるまいをします。電子レンジが壊れたらそれを捨てて新しい物を買うのが普通です、おもちゃだって同じです。それが当たり前のことだし正常な感覚ですが、対象物を擬人化した途端に親近感が湧きます。ロッツォ・ハグベアが吐露する心情はあくまで、ロッツォ・ハグベアで遊んでいた人間の心の中を映しているだけにすぎません。これに関しては青年になったアンディが代弁してくれていますが、子供たちがこの映画を見てこの気持ちを汲み取るのは少し難しいかもしれません。そういった意味でも成長した元子供たちが見るべき作品なのは間違いありません。  少し大人向けのエンディングをきちんと見せることで、ただの子供映画に成り下がっていない本シリーズの凄さ。キレイにまとまった三部作のラストは伝えるべきことを全て伝えきった感じがあって感動的です。前二作品に続いて本作も文句なしでしょう!(純粋な気持ちでは10点ですが、オッサンなのであえて8点に)
[地上波(吹替)] 8点(2024-08-05 15:08:23)
40.  トイ・ストーリー2 《ネタバレ》 
録画されていたので25年ぶりに見ました。おそらく絵を修正してあるようで、新作(3や4)と比べても遜色ありませんでした。  本作はトイストーリー1の物語の上に成り立っている点が素晴らしいです。持ち主(アンディ)や新しい仲間との絆ネタは前作でもう十分にやりつくしていますので、本作ではもう少しマニアックな方向にシフトしています。 実はウッディは貴重なキャラクターグッズでアンティークだった!このまさかの展開は完全に大人に向けたもので、この新設定のおかげで新キャラの愛馬ブルズアイとカウガールのジェシーも違和感なく受け入れることができました。少し浮いた存在のプロスペクターは案の定の展開を迎えますし、レアなウッディとビジュアル的に対比される大量のバズも大人が見て笑えるポイントです。おもちゃの修理職人の仕事も興味深く、大人受け必至な流れはなかなか上手い演出でした。  本作でも脚本の素晴らしさは健在で、バズたち仲間がおもちゃ屋にウッディを探しに来るだけでも面白いのに、新しいバズと悪の帝王ザーグとの因縁の対決が物語を大いに盛り上げます。厳密には純粋に盛り上がるのは子供だけで、大人はスターウォーズ丸パクリのネタに大爆笑必至なのが素敵です。エレベーターの使い方も非常にうまく、この何重にも張り巡らされたネタの数々が製作者サイドの知能指数の高さをも表していて面白いです。  新バズの退場もスムーズだし、その後の空港ネタは制作陣のテクニックが冴えわたっています。ベルトコンベアーでの対決や飛行機脱出など文句なしの最高の流れを経て、かなり強引なエンディングを迎えます。強引とはいえ綺麗に終わっているので違和感がないのも素晴らしいです。続編はコケる、という定説を覆してより面白くなったパート2でした。やはり本作も文句なし!(純粋な気持ちでは10点ですが、オッサンなのであえて8点に)
[地上波(吹替)] 8点(2024-08-05 14:29:18)
040.55%
181.09%
2223.01%
3496.70%
48211.22%
512316.83%
616322.30%
713618.60%
87910.81%
9435.88%
10223.01%

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