381. 血煙高田の馬場(1937)
《ネタバレ》 バンツマの映画は初めて見ました。表情豊かで人情があり、ユーモアのある演技ができる。大スターだったことは当然でしょうね。 この映画で特筆すべきことは、クライマックスの躍動感。叔父からの手紙を読み、集落から韋駄天走りで高田馬場へ向かうシークエンスも躍動感たっぷりで素晴らしかったです。韋駄天走りを重ねに重ねる演出には途中で笑ってしまいましたが、とても印象に残りますね。安兵衛と隣人たちとでカメラの追い方が異なることが安兵衛の全力疾走ぶりを上手く表現していると思います。安兵衛と隣人が戦場高田馬場に到着してからは、安兵衛の戦いっぷりよりも隣人たちを含めた観客の沸き立つ様子に心を奪われました。なんと躍動感のある演出でしょう。ローアングルで騒ぐ民衆を撮影した映像は何度も見ていますが、この映画ほどの躍動感はありませんでした。短い映画ですから、何度も見て研究したいです。 [ビデオ(邦画)] 7点(2014-06-19 01:22:18) |
382. ヒズ・ガール・フライデー
《ネタバレ》 なぜこの映画が名作として支持されるのか、理解に苦しみます。セリフ量の多さ、展開の早さのおかげで飽きることはありません。当然、面白い部分はある。ただ、話があまりにもつまらなくて、くだらない。要するにこの映画は欲望VS理性の戦いを描いたコメディなわけですが、結局欲望が勝ちます。これはいい。しかし、その理由がひどい!記者復帰と復縁がセットで語られた結果、こいつらはガチガチに溶接されたまま映画が終わるんですよ。これ酷いよ!分けないとドラマにならないじゃん!ヒルディが新聞記者に戻った時点でこの勝負はまだ5分5分なんです。ここで終わらせておくべきだった。なのにヒルディは、夫となる人間に犯罪行為を繰り返し、そのことを理由に散々罵倒していた相手とよりを戻しちゃった!バカバカしさの極致です。制作側は大事なことを忘れてる。女性は行きたいように生きろというテーマ。これは良い。なにが問題って、職場でオンナが生きる道は、オトコに従うことという着地です。序盤からこの思想がバンバン出てきて不快でした。この映画は間違いなく楽しいですよ。でも面白くはない。他のレビューにもありますが、ウォルターほど嫌悪感を覚えるキャラクターはいないですね。 [DVD(字幕)] 2点(2014-06-17 09:17:52)(良:1票) |
383. 駅馬車(1939)
楽しい西部劇です。様式美の塊のような、見ていて安心する映画ですね。終盤のアパッチとの戦闘シーンはかなり見応えがありました。戦前であそこまでクオリティの高いアクションを見せられると、びっくりしますね。駅馬車に乗る人々のキャラクターとリンゴのハンサムさは完璧です。計算しつくされています。好きです。 [DVD(字幕)] 7点(2014-06-14 02:57:24) |
384. 一人オーケストラ
「愉快で楽しい映画です。」この一言で済んでしまうのだけど、短いから何度も見ちゃうんですよね~。メリエスの映画は駄作も名作も楽しいですよ。 [DVD(字幕)] 5点(2014-06-14 02:42:33) |
385. ゴム頭の男
くだらねえー!でも、このような映像は当時ではメリエスにしか作ることができなかったそうで、フォロワーが出てこなかったこともこれを物語っています。まあ、映画が始まって6年後の、奇術ショーの幕間で流された映画ですからねぇ。映画史的にもタッチする必要はないのでは。 [DVD(字幕)] 3点(2014-06-12 00:03:18) |
386. オーソン・ウェルズのフェイク
《ネタバレ》 スパッとダマされてしまって、気分爽快です。「最初の1時間」があまりにも退屈で、イグジット・スルー・ザ・ギフトショップを先に見ちゃったからなあ…と後悔していたのですが、途中で見るのを止めないでよかった!眠気との戦いに勝った後の、なんとすばらしい騙し! 1時間経ってから驚くほど面白くなっていきます。ゴダールさんをブラインド越しに見つめるピカソには爆笑させられました。天丼のやり過ぎだとは思いましたが、次々に展開していく面白すぎる大嘘には惚れ惚れしてしまいますね。さすが全米を火星人の恐怖に陥れた男です。不勉強なので「市民ケーン」をまだ見ておらず、今作がオーソン・ウェルズ初体験だったのですが、とんでもない監督でございました。俳優としても素晴らしいですね。映画に出てくる嘘つきの中で最も胡散臭い! [ビデオ(字幕)] 8点(2014-06-10 19:34:43) |
387. ゴジラ(1954)
《ネタバレ》 私は特撮というジャンルに興味がなく、ゴジラ映画は保育園児の時に見た「ゴジラVSモスラ」だけ。仮面ライダーにも戦隊モノにも興味がございませんでした。そんな中、2014年版ゴジラのためにゴジラ作品をある程度観ておこうと思い、その取っ掛かりに初代ゴジラを選んだのです。 私の想像以上にホラー映画でした。夜の東京を暴れまわるゴジラの質感は、白黒映画でこそ出せる素晴らしい物でしたし、なにより目が怖い。ちびっ子のヒーローとして愛嬌をふりまくゴジラにはない、怪物の目でした。 最近、某ネットメディアにて「初代ゴジラは反戦・反核映画か?」という記事が公開されました。ゴジラが反戦・反核映画と評価されたのは1980年代のリバイバル時で、公開当時はゲテモノ映画として庶民に親しまれたから、一概に反戦・反核映画とは言えません!というレベルの低い記事でしたが、どっからどう見ても反戦・反核の映画だろうこれは!ゴジラが東京を荒らしまわった後、被害者の子どもにガイガーカウンターを向け、反応を示したことに愕然とした表情を浮かべる医者。ラストシーンで水爆実験を繰り返せば別のゴジラが現れると予言した志村喬。序盤の電車内での、長崎の原発から生き延びた女性と疎開の可能性にげんなりする男性の会話。大量破壊兵器である水爆を象徴するゴジラを倒すために使われた「オキシジェン・デストロイヤー」という名の大量破壊兵器。露骨に反戦・反核じゃないすか。勘弁してほしいさね。 集団的自衛権がどうのこうのと騒がしい昨今ですが、そんな時期だからこそ、評判の良いハリウッド版ゴジラがやってくる今だからこそ見て価値のある映画ですよ。本当に素晴らしい。 [DVD(邦画)] 9点(2014-06-05 01:03:09)(良:1票) |
388. 雨に唄えば
《ネタバレ》 「ウディ・アレンが元気を出したい時に見る映画」という前情報アリで観ました。こりゃウディも元気でますよ。ミュージカルに親しみのない日本人にとっても、「雨に唄えば」のミュージカルシーンは楽しい気分にさせられます。有名なジーン・ケリーの雨に唄えばももちろんですが、ドナルド・オコナーの「メイク・エム・ラフ」にジーンとさせられてしまいました。長年のパートナーだったジーン・ケリーがスタントマンから大スターへ成長する中、自分は富も名誉もないピアノ弾き。評価されない、おどけたミュージカルしか演じられない彼の狂気を感じさせる演技に圧倒されてしまいました。脚が片足に絡まってドタバタするシーンなんて、ホラーですよ。最高です。映画のベストシーンに決定です。 終盤の妄想ミュージカルが長すぎたこと、物語は平凡なこと。この2点がマイナスでした。 [DVD(字幕)] 8点(2014-06-03 23:39:22) |
389. キートンのセブン・チャンス
《ネタバレ》 素晴らしいですね。これまでのサイレント映画ベストワンは「キートンのマイホーム」でしたが、こちらのほうが面白かったです。警察騒動を彷彿とさせる過剰な人数ギャグが凄い、過剰なアクションシーンも凄い。 キートンが教会にたどりつく前と後でこの映画を分けることができますが、助走にあたる第一部もまた面白く、初期キートン映画にありそうなギャグが詰まっていました。ただ、ツカミのギャグがなかったのが残念かな。 第二部は花嫁候補たちから必死に逃げる姿に爆笑し、ジャッキー・チェンのようなアクションに興奮したり、ラストシーンの展開にハラハラさせられたり……。お見事としか言いようがない!走行中の車のスペアタイヤに飛びつくシーンなんて、香港国際警察の有名なシーンと全く同じじゃありませんか。あのアクションもキートンのオマージュだったんですね。 皆さんが文句を言っているBGMについては、あまり気になりませんでした。過去作のシーンとの繋がりが不明なBGMに比べればマシです。 [DVD(字幕)] 10点(2014-05-28 19:30:16) |
390. キートンの化物屋敷
銀行のギャグ、好きだけどなあ…。前編に渡って笑えるシーンはあるものの、ちょっと退屈でした。途中で登場人物が何をしたいのかわからなくなってしまったのがノイズになってしまったのかもしれません。 [DVD(字幕)] 5点(2014-05-24 13:37:06)(良:1票) |
391. キートンの隣同志
《ネタバレ》 キートンのマイホームに通じる凄みがありますね。圧倒されてしまいました。細かいギャグもいい感じです。登場人物が多いキートン映画はあまり好きではないのですが、今作は面白いです。キートン映画の定番である警察から逃げるシーンはあまり面白くなかったのが残念です。 [DVD(字幕)] 7点(2014-05-24 13:34:51) |
392. キートンのスケアクロウ(案山子)
《ネタバレ》 相変わらずツカミが上手い。いつも悪役として登場する巨漢と同居しているというだけで笑えますが、食事シーンの仕掛けが最高です。物語の伏線にもなっていますから、流石としか言えません。追いかけっこから逃亡まで走りまくる今作ですが、飽きることなく見ることが出来ました。タイトルになっている案山子のシーンが最高。 [DVD(字幕)] 8点(2014-05-24 13:31:41) |
393. キートンのゴルフ狂の夢(囚人13号)
《ネタバレ》 キートン映画の素晴らしいところは、ツカミが非常に上手いところです。今作では池ぽちゃしたゴルフボールをなんとかして打ちなおそうとするキートンに爆笑させてもらいました。ただし、死刑囚に服装を交換させられるシーンに違和感が。キートン映画の世界ならその程度で失神しないだろ!悪い意味での都合の良さが出てますね。以降のシーンはキートンにはよくありがちな流れで、お約束的に楽しめました。 [DVD(字幕)] 6点(2014-05-24 13:27:01) |
394. A2
《ネタバレ》 オウムを通してマスコミ・警察を批判した前作とは視点が異なりますね。オウムとその周辺がメインになっており、信者の住む施設に過剰な反応を示す住民たちがいる一方で、信者に情が湧いて仲良くなる住民たちがいると。オウム事件当時はまだ子どもで、オウムについて殆ど知らない私にとって、後者の反応はとても驚きました。日本中がヒステリックに追放を叫んでいたわけではなかったのですね。 オウム追放を叫ぶ住民たちは、ちょっと稚拙ではないかと思いました。終盤に出てくる1000人規模の集会に対する信者の感想と同じことを思いましたね。どう反応したらいいのかわからず、思いのままに行動しているから上手くいかないんでしょう。鬼畜扱いしているだけで理解を示そうとすらしませんから、対立するばかりです。敵を倒すにはまず敵を知ることが大事だと勉強させていただきました。 [DVD(邦画)] 7点(2014-05-24 13:23:24) |
395. ローマの休日
《ネタバレ》 ラブロマンス・サスペンス・冒険物語。この3つを存分に味わえますね。次期イギリス女王という身分が故に自由性を奪われ、民衆のように楽しく生活することを夢見るワガママな女の子の冒険物語として十分に楽しめます。今ならディズニーにありそうなお話ですね。さらにグレゴリー・ペックとのラブロマンス。こいつが悪い男でウブな女の子を金儲けに利用しようとデートするわけですが、これぞ吊り橋理論の典型と言わんばかりの大ピンチを逃れて完全に恋に落ちる。なんてきれいなお話なんでしょうか。クライマックスの切なさったらありません。ヘップバーンは世界中に顔がしれている有名人ですから、どこで身分がバレてしまってもおかしくない。街を歩くシーンを見ているだけでもハラハラします。いいですね。一般人が支配する「街」を全く知らない女の子が歩いているからこそのハラハラ感ですよ。生まれたてのポニーを見ているような心境になります。公務中とデート中のギャップが…とか言っていると長くなるのでここまでにします。名作ですよ。 [DVD(吹替)] 8点(2014-05-23 01:39:43) |
396. ゆきゆきて、神軍
《ネタバレ》 無知は恐ろしいですね。私はニューギニアでの戦闘が終戦直前まで続いていたことを知りませんでしたし、兵士が人肉を食っていたことも、人肉を豚肉扱いしていたことも知りませんでした。戦場はまさに地獄絵図です。 そこから行きて生還した奥崎謙三という怪物が、戦争犯罪を明らかにするという名目のもと大暴れする姿を見て、ちょっと興奮してしまいました。これは怪獣映画です。人間のエゴを目の前にした怪物が、怒りのあまり暴力に走る姿は恐怖すると共に燃えますよ。普通に生活していれば、ジジイがジジイをマウントポジションで殴りまくったり、病人のジジイを蹴っ飛ばすような光景は目にしませんから。なんだかゴジラを見ているようでしたよ。 [DVD(邦画)] 8点(2014-05-14 23:37:14) |
397. A
《ネタバレ》 傍若無人なマスコミの態度、何でもありのクソ警察官。彼らと荒木氏の誠実な態度を比較して見てしまうと、オウム真理教事件を知らない世代の私は「オウムってそんなに悪くないのでは…暴走していたのはトップ連中なんだから、一信者はかわいそうじゃないか」と思ってしまいました。私がこのような感想を持つことに衝撃をうける方もいらっしゃるでしょうね。ちょっと前までは、尊師マーチくらいしかオウムについて知りませんでした。 ある意味、私のような立場の人間こそこの映画を楽しめるのではないかと思います。単純に映像だけを見れば「マスコミ・警察」は悪として、「オウム広報」は善として描かれていますよね。荒木氏の虫も殺さないような表情(実際殺せない)と小競り合いを繰り返すマスコミ、自作自演で信者を逮捕する警察。これはどう見ても悪です。しかし、一般市民にとってはオウム真理教こそが悪ですし、当時であれば何よりもオウムを憎んでいる人だらけだったことでしょう。街頭でオウムに講義するおばちゃんは行動しただけで、みんなあのようなことを思っていたのではないでしょうか?ただでさえ前代未聞の凶悪犯罪を、デタラメな取材と態度を見せるマスコミが作った番組で知るのですから。このような構図を客観的に見ることが出来るのは、オウムを知らない世代のみです。 鑑賞後は脱力してしまいました。松本サリン事件の時もこんな感じだったんだろうなあと思うと、ゲンナリします。この映画の中で、まともな人物として登場するのは被害者の会代表のおじさんだけなのではないか?と思うとさらにゲンナリですね。久々にガツーンと来る映画でした。素晴らしいです。 [DVD(邦画)] 8点(2014-05-14 23:30:05) |
398. キートンの即席百人芸(一人百役)
途中まではとても好きだったのですが、夢だったとは…。「面白い」というよりも「好き」ですね。一人エクスペンダブルズを見ているようでした。 夢が覚めないままで20分の映画になっていればかなり好きな映画になっていたかもしれません。猿と兵隊ギャグは面白いのですが、姉妹?ネタがさっぱり意味がわからなくてノイズでした。 [DVD(字幕)] 6点(2014-05-14 23:16:31) |
399. キートンの強盗騒動(悪太郎)
これぞキートン映画!後半のマンションでの逃走劇は本当に面白いです。エレベーターを使ったギャグは今では再現することができないとてもアナログなネタですが、キートン映画のリアリティラインを通して見ると「全くおかしなことではない」と思えてしまうから不思議です。 [DVD(字幕)] 7点(2014-05-14 23:08:29) |
400. キートンのハイ・サイン(ザ・ハイ・サイン)
《ネタバレ》 無限に広がる新聞が笑いのピークでした。めちゃくちゃ面白いですね。キートン映画の体を張ったギャグ以外では一番好きかもしれません。ただし、ものすごく残念な点が一点あります。人物に黒い靄がかかっているシーンが多く、何をしてるのかさっぱりわからないのです。フィルムの保存状態が悪いのは仕方がないのでこれはこれとして諦めるしか無いのが残念です。 後半の隠し扉を使ったアクションは「キートンのマイホーム」とどうしても比べてしまうので、見劣りするなぁ…ってかんじです。 [DVD(字幕)] 6点(2014-05-14 23:03:51) |