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自己紹介 ハリウッドのブロックバスター映画からヨーロッパのアート映画まで何でも見ています。
「完璧な映画は存在しない」と考えているので、10点はまずないと思いますが、思い入れの強い映画ほど10点付けるかも。
映画の完成度より自分の嗜好で高得点を付けるタイプです。
目指せ1000本!

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381.  鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 《ネタバレ》 
救いはない。 いや、この村には"死こそ救い"というべきだろうか。 弱者を搾取して支配し続ける社会はいつの時代も変わりはない。 それでも歪んだシステムに蹴りを入れて、新たな世代に希望を見せないといけない。  "ブロマンス"という男同士の特別な繋がり(≠同性愛)という概念があり、 2022年が『RRR』なら、2023年は『ゲゲゲの謎』がその象徴とも言えよう。 太平洋戦争の徴兵で上層部からの理不尽を目の当たりにした水木は、 誰も信用せず、強者に這い上がろうとする野心に満ち溢れた男。 だが、ミステリアスなゲゲ郎(=鬼太郎の父)の言動、哭倉村での数々の怪奇現象、 龍賀家の常軌を逸した因習によって自身の価値観を変容していく。 そこから熱いバディものに変化していくが、二人がそれほど暴れなくて物足りなさが残る。 胸糞悪い、ビターな展開がダメではなくて、そこからのカタルシスが弱い。  水木は哭倉村での記憶を消され、ゲゲ郎は呪いの依り代になって醜くなれ果て、 被害者でもあり加害者でもある沙代は無残に死に、何の落ち度もない時弥は時貞に肉体を奪われる。 幽霊族も外から拉致された一般庶民も製薬の材料として利用され、誰一人として救われない。 だが、弱者を顧みず、欲望の赴くままに食い物にしてきた外道にはいつかツケを支払わないといけない。 そうやって世の中は少しずつ変化してきた。 舞台から70年後の現代、ちょっとはマシな世の中になっただろうか?  完全オリジナルストーリーでありながら原点である『墓場鬼太郎』に繋がる構成といい、 スタッフの鬼太郎へのリスペクトが大いに感じられた。 原作そのままだと水木は散々な扱いを受けるようだがそこは一切描かず、 その後を視聴者に委ねるあたり優しさはある。 歪んだシステムに抵抗した登場人物たちが少しは報われて欲しいと願ってやまない。
[インターネット(邦画)] 6点(2024-04-30 23:49:20)
382.  オッペンハイマー 《ネタバレ》 
専門用語が次々に現れ、時系列を交錯させ、培ってきた技法を総動員させたクリストファー・ノーランの力作だが彼のベストではない。 恐らく半分以上は話を理解できなかっただろうし、あれほどの会話劇で本国アメリカで記録的な大ヒットしたことは、ノーランのブランドがなせる業なのか、核兵器を巡る世界情勢の重大な危機に関心が大きいのか、その両方だろう。  唯一の被爆国である日本にとって胸糞悪いのは事実で、戦争という熱狂によって人道・倫理観のブレーキが壊れ、戦場が兵器の実験場に変わり、新たな秩序と発明が生み出されていく。 戦場とは遠い世界でチェスの駒を操れそうな位置にあり、やがて自分自身も利用されて棄てられていく様が同じ天才学者を描いた『イミテーション・ゲーム』に通じるものがある。 国のエゴと利害の一致によって身動きできなくなっていく理不尽と葛藤と矛盾がオッペンハイマーに強烈なストレスとして画面に発露される。  広島と長崎の投下シーンが一切ないのは予め知っていた。 これは日本への配慮とも言えるし、挿入したとしても"オッペンハイマーとは何か"をぼかしてしまうので妥当とも言える。 英雄でもなく、悲劇の人物でもなく、功績と名誉を回復しても、これらは彼以外の大多数の所有物でしかなく、本人がどう思っているのかは知る由もない。 彼がいなくても、誰かが原爆を作り、どこかで投下されていただろう。  全人類を破滅させることができる発明が世に出てしまった以上、もう止めることはできない。 昨今に論議を巻き起こしているAIが世に出てしまったように。 現実、国の最高権力者という名の狂人が核兵器というキャスティングボードを握っている。 話し合いで解決できない相手に我々だったらどう向き合うか? もはや「核兵器について議論しない」という日和見な選択肢は残されていない。
[映画館(字幕)] 6点(2024-03-30 22:40:46)
383.  アメリカン・フィクション 《ネタバレ》 
"黒人"に対して何をイメージするか? エディ・マーフィーやウーピー・ゴールドバーグを代表するひと昔前のコメディ俳優か、 はたまた『それでも夜は明ける』『ムーンライト』みたいな理不尽な差別に耐える健気な主人公か、 それとも貧困と銃とドラッグにまみれた屈強で粗暴なラッパーか。 ハリウッドから提供されたイメージはその一側面に過ぎない。 これらが白人だったら我々はどう見ていたのだろう?  それなりの知識層で中流階級の売れない作家兼教師である主人公も黒人だ。 大学の職を追われた彼は、長年疎遠だった実家の家族に向き合うことに。 父は不倫して自殺、母はアルツハイマー病で、母を介護していた姉は急死し、兄は同性愛者と問題だらけ。 生活苦からヤケになってステレオタイプな黒人を題材にした三文小説を偽名で書き始めるも、 あれよあれよの大ヒットで映画化決定、文学賞最有力と自分でもコントロール不能になって…… というコーエン兄弟的な筋書き。  黒人への配慮がむしろ白人の免罪符になり、エンタメとして消費されていく皮肉。 それに気付かず、白人は素晴らしいと崇め、黒人ですら面白いと問題の小説に疑問に感じない。 ただただ酔えるなら三種類のジョニーウォーカーの中から安物でも構わない。 今日のエンタメ及びポリコレ産業に横槍を入れており、真実を明かす場面を敢えてカットすることで、 観客が何を求めているかを問いかけているように感じた。  でも悲しいかな、自分の創りたいものは商業でほとんど通らないし、それがウケるとは限らない。 何も見ていなかった世間知らずな坊ちゃんである主人公が現実を突きつけられ、 悲劇のステレオタイプな黒人イメージと折り合いを付けていく。 そんなクリエイターの悲哀、日本の漫画の実写化でもよく聞く話だ。  あのラストを見ると、今までの展開はどこまでが本当なんだろうか。 白人と黒人の関係が密なアメリカだからこその笑いでそのニュアンスをどこまで理解しているかは怪しいが、 マイノリティのジレンマを案外スルスルと見れる話術と仕掛けですんなり見れた。 ダークホースで脚色賞を取れるかもしれない。
[インターネット(吹替)] 6点(2024-03-08 23:02:39)
384.  落下の解剖学 《ネタバレ》 
有罪か、無罪か? 自殺か、他殺か? そんなものはどうでも良くて、裁判によって暴かれる夫婦の拗れを中心に据えている。 親密な夫婦仲でも所詮は赤の他人。 交通事故による息子の視覚障害から始まる生活苦、作家志望の夫の嫉妬と余裕のなさ、他方では妻の成功、やがて…  ある家族の一年間を断片的に見て、分かった気になって、 エンタメとして消費しているだけでしょ?と問われている気がした。 そう考えると筋書きは至ってシンプルで下手したら何も起こらない。 勝手に期待して盛り上がっている傍聴席の我々に対するフランスらしい皮肉が効いている。
[映画館(字幕)] 6点(2024-02-23 23:59:35)(良:1票)
385.  スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム 《ネタバレ》 
前作鑑賞は必須としても、他のMCU作品とも連動しているため、 アイアンマン=トニー・スタークが故人なのは劇中で分かるものの、 エンドゲームを見ていないと少々置いてけぼりを喰らうのは確か。  MCUでマルチバースの概念は既に知られていたが、それを利用した中盤のどんでん返しは上手かった。 ヴィランとしてミステリオが中心でありながら、かつて職を追われた者たちによるチームプレイで、 現実と非現実を揺さぶりスパイダーマンを追い詰める見せ方が良い。 ファクトチェックが当たり前になり、目の前の情報が真実とは限らない現代において、 これからディープフェイクが濫造されていく世界への抗い。 殺人犯として汚名を着せられてしまったピーターはどうなるのか期待を寄せる。  でも、エンドロール後のもうひと展開にスパイダーマン以外の映画を見ないといけないのは如何なものかと。 作品によってはTVシリーズにまで裾野を広げてしまい、近年のMCUの勢いが衰えた話も聞く。 フェーズ1の『アベンジャーズ』くらいの展開が限度で、純粋にスパイダーマン単体で完結させてほしいのが本音。
[インターネット(字幕)] 6点(2024-01-17 20:38:14)
386.  劇場版 SPY×FAMILY CODE: White 《ネタバレ》 
描かれている内容はいつものSPY✕FAMILYです。 劇場版のため、相応のスケールになっているものの脚本が大味すぎる気がする。  第一印象としては映画クレヨンしんちゃんを少々シリアスにスタイリッシュにしながらも適度にギャグ多めと。 『暗黒タマタマ大追跡』『電撃!ブタのヒヅメ大作戦』ぽさが随所に見られる。 タイプFはともかく、スナイデルとドミニクとルカがボコられてそのまま退場は消化不良。 末路等もう少し掘り下げて欲しかったなと。 ロイドもヨルも立ち回りが凄すぎて、アーニャに隠す素振りも見せず、 三者三様、互いに正体がバレてもおかしくないのに。  ロイドの異動危機や浮気疑惑や伝統菓子がクーデターに絡むには弱めで、 早い段階で解決かあちらから自滅という形で収束。 フォージャー家以外の準レギュラーは顔見せ程度のちょっと台詞があるくらいで(フィオナはやや優遇)、 興行成績次第ではシリーズ化を見込めることも視野に、彼らの活躍は次回に持ち越しかもしれない。 そういう意味であえて腹八分目でこれからを手探りしているとも言える。  世界観とキャラクターの最低限の説明があるため、原作及びTVアニメ未見の人でも楽しめるだろうし、 一種のお祭り映画やファンムービーとして見ても作画もアクションもクオリティが高い。 とは言え、一本の映画として見るなら期待値を下げて見ることを勧める。
[映画館(邦画)] 6点(2023-12-22 20:26:58)
387.  デリシュ! 《ネタバレ》 
今でこそよく見られるレストランという形式が如何に誕生したか。  18世紀末のフランス革命前夜まで、美食は貴族のものであり、 庶民は飢餓と隣り合わせで食べることに必死だった。 旅籠には簡単な食事が提供されることはあれど、 それまで貴族も庶民も一緒に、個別のテーブルで、メニューから料理を選択することが今までなかった。 この視点でレストラン誕生の経緯を知ることがなかったので目から鱗である。 天に近い食材ほど至高で、土に根差したジャガイモやトリュフというポピュラーな食材が かつて貴族から豚の餌扱いされていたということも。  主人公と女性の織り成すロマンスは控えめで、 抑制された色遣いによる絵画のような映像美が美味しい料理を引き立てる。 そして傲慢な伯爵への強烈なカウンターパンチ。 封建社会の理不尽を受けてきた先人たちの努力によって新たな活路が見出され、 食文化が成熟・変遷していったかを興味深く見られた。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-12-09 22:24:42)
388.  西部戦線異状なし(2022) 《ネタバレ》 
1930年製作のハリウッド版は視聴済みであるものの、本作はリメイクではなく古典の反戦小説の再映画化であり、 現代の観点で脚色されたのもあるからか、似通ったシーンがほとんどないに等しい。 せいぜい冒頭の生徒たちの出兵を煽る教師と、中盤の妻子持ちの敵兵を直接殺してしまった狼狽ぐらいだろうか。  死んだ兵の服をはぎ取り、洗濯・お直しして新兵の服として提供するところからして、 ただの部品としか見ていない戦争の非情さを良く表している。 憔悴していく主人公の青年と並行する形で軍部上層部のやり取りで見られる豪華な食事もそう。 あと少しで停戦なはずがお偉いさんの大義のために無理矢理突入させられ、 理不尽な形で消費されていく主人公を含むその他大勢の兵士たちの死…  非常にオーソドックスながらハリウッド版とは違ったドライさが突き刺さる。 確かに今の時代だからこそ見るべき映画なのかもしれないが、現代ならではの新しい切り口が欲しかった。 もし本作みたいなことが日本で起こったら、我々にできることは国外脱出するか、 国会議事堂を包囲して大規模な反戦デモを敢行することくらいだろう。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-12-09 01:41:41)
389.  バード・ボックス 《ネタバレ》 
演出と演技が上質なため、低予算ならではのチープさがあまりない。 "何か"を見たら自殺するという序盤の大混乱を見せることによって、外への行動と視界が制限され、 映画のほとんどを占める室内シーンと山林シーンを受け入れることができるからだ。 2年後のコロナ禍で"鳥かご"の中に閉じ込められてしまったことを予言しているみたいに。  過去と現在を交互に見せるため、退屈さはあまり感じられず、伏線回収が上手い。 主人公を気に掛ける男性がいつか本性を表して襲い掛からなかったのは意外。  この手の不条理パニックもので言えることだが、最後に謎が明らかにされるわけではない。 既に精神を病んでいる人ほど自殺に陥らず、目隠しなしで健常者に襲い掛かる新たな設定すら、ただの脅威で終わっている。 盲学校に辿り着いて、今後もここで生きていくにしても食料や衣類はどうするの?という疑問が湧く。 そういう意味でオチは弱いが、見て損はないと思われる。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-12-05 23:24:00)
390.  陽なたのアオシグレ 《ネタバレ》 
男子小学生版『アメリ』に近いように見えて、男から見た夢想にある種の気持ち悪さを感じる意見は分からなくはない。 ラッキースケベ演出が直球でパステルカラーの可愛い絵柄に惹かれるほど人を選ぶだろう。 監督のフィルモグラフィには少年少女のアレを何かと入れてくるので完全に趣味だよね。 スピッツの壮大なプロモーションビデオとして見るなら優れている、救われている部分はあるが。  ここまで来ると、この話の全てすら主人公の妄想じゃないの?と勘ぐってしまう。 雰囲気は好きなのに万人受けしない、だからと言って万人受けしまくっても物足りない。 その匙加減が難しいがこの突き抜け感は大事にして欲しい。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-11-10 23:59:48)
391.  ザ・キラー 《ネタバレ》 
狙撃に失敗した殺し屋が婚約者を襲われ、報復で刺客と依頼者を淡々とじわじわと追い詰めていく。 まるで商品をただ消費するかのように、ルーティンワークの如く。 『セブン』の監督&脚本家の28年ぶりのタッグにしては非常にシンプルなストーリー。 その分、ストイックな空気感とソリッドな映像センスが際立っており、 立体的なサウンドデザインも合わさり、テレビの画面では堪能できないと思われる。  自己暗示をかけるが如く独り言が連なり、完璧な殺し屋になり切れない男のあがき。 最後の晩餐になってしまったティルダ・スウィントンによる熊と狩人の噺が象徴するように、 プロの矜持として後始末を全うしようとすることを建前に、 復讐という本音が僅かながらに彼を人間たらしめている。 婚約者とビーチで戯れる平穏なひと時も、殺し屋の宿命から逃れられないジレンマ。 アラン・ドロンの『サムライ』の系譜に近い、矛盾だらけの人間の美学を覗き込む。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-11-10 23:52:26)
392.  ウーマン・トーキング 私たちの選択 《ネタバレ》 
2000年代後半、南米ボリビアのメノナイト(キリスト教一派)のコミュニティで日常的に起きていた昏睡中の性暴行事件。 その実話をモチーフに2010年の南十字星の見える英語圏某所に移し替え、 文字の読み書きも許されなかった被害者女性たちの決断。 テーマがテーマだけあり、娯楽要素を捨て去ってまで訴えたストイックな社会派会話劇。  去るか、闘うか、赦すか── 18世紀同然の生活を営む彼女たちと次世代の子供たちの未来を大きく左右する重い選択。 力では負けてしまう女性の立場なら、女性全員で村を去るでお終いだが、本当にそれで良いのか? その三つの選択をさらに深掘りして、民主主義が如何に築かれ、秩序が作られていくか、社会の問題が浮き彫りにされていく。  閉鎖的な世界で赦しの名のもとに弱き者への暴力の正当化。 宗教は救いにもなれば、都合の良い思考停止の暴力装置にもなりえるのだ。 次の世代へ負の連鎖を繰り返されないために価値観のアップデートと教育の大切さが可視化され、 それを担うのが外の世界を知っている書記担当の男性なのが皮肉に思える。  彼女たちは新たな"国家"の建設を目指し、モーセの出エジプトの如く大移動する。 希望の船出のように見えて、その一本の道が海のように閉ざされることはない。 家畜もいないと分かれば、時代遅れの屈強な男たちが連れ戻すために逆襲するだろう。 新たな秩序を築くだろう彼女たちがどう動くか、我々が生きているこれからの時代とリンクしている。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-09-29 23:39:03)
393.  わたしは最悪。 《ネタバレ》 
何者にもなれない30歳女性の惑い。 自分がどうしたいのか分からず、やりたいことも付き合っている男もとっかえひっかえで長続きしない。 確かに原題通り、リアルに付き合ったら面倒臭い"最悪な人"なのだろう。 とは言え、昔と違って女性の自由も選択肢も広がり、 元カノの風刺漫画家に「女を侮蔑している」と意識高い系のフェミニストが発言できるくらい、 ヒロインの悩みがあまりにも贅沢になってしまったように感じる。 清潔感たっぷりなオスロの街ではなく、発展途上国が舞台だったらこうも行かないだろう。  元カノの漫画家が別れる際に「君はいつか後悔する」と発言し、事実、彼はガンに侵され死ぬことになった。 自分はこのまま何者になれず母親に落ち着いてしまって良いのだろうかと悩んでいるうちに、 足に地をつけなかった不安定な心を救ってくれる人がいることに気付いていれば、 きっとガンの早期発見はあったかもしれない。 その一方で新しい恋人との妊娠にすぐ向き合っていれば、たとえ流産でも破局はなかったかもしれない。  人生とは後悔の連続で、選択の積み重ねでもある。 主役にもなれない取り留めのない人生だとしても、何かを掴んだ彼女の人生は今日も続いていく。 レナーテ・レインスヴェが多彩な表情で痛々しくも呆れながらも好演していたのが性的シーンの下品さを和らげていた。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-06-04 01:51:27)
394.  ファウスト(1994) 《ネタバレ》 
人間の顔をした"悪魔"に気を付けろ。 そこには奇跡も魔法もないんだよ。  怪しげなビラに記された地図に導かれ、満たされない日々を送る男が体験する悪夢。 欲しいものと引き換えに悪魔に魂を売り渡す契約をしたが最後、 台本通り動く操り人形の如く、地獄へと一直線。  現実と虚構が曖昧になっていく中、道化師の呪文に右往左往される悪魔が笑いのツボに入った。 どこか既視感があると思ったら、過去作の『ドン・ファン』の要素も多少入っているのだろう。  もう一度言うが、人間の顔をした"悪魔"に気を付けろ。 心の隙間に入り込み、魂を食い物にする。 序盤に主人公とすれ違って逃げた男、新聞紙に包めた身体の欠片を見るに、 奈落への入り口に我々は立っている。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-05-24 21:39:57)
395.  スパイダーマン(2002)
子供の頃、リアルタイムで映画館で観たことがあったが、3億ドルかけた割にどこが良いのかさっぱりだった。 ただ、久しぶりに三度目を視聴した結果、 「大いなる力には大いなる責任を伴う」が社会人になって身近に感じるようになった。  後天的に授けられた能力が羨ましくある半面、それが誰にも言えない秘密だったらという苦悩が 等身大のヒーローとして胸に響くものがある。 一方で内なる願望が歪んだ形で表面化し、ある意味で精神の自由を得たグリーンゴブリンとの対比が、 力を持つことの意味を際立たせていた。  その後、様々なスパイダーマン映画が役者を変えて監督を変えて繰り返されてきたが、 ハリウッド初の長編映画化という意味で原点にして頂点。 下手に改変しまくるよりは正攻法で安心して楽しみたいという時点で歳を食ってしまったと感じる。
[地上波(字幕)] 6点(2023-04-30 23:45:59)
396.  スイス・アーミー・マン 《ネタバレ》 
物語の8割は二人芝居で占め、それも死体に下ネタという奇妙な作りなのに心に残る。 何もできない死体から徐々に生を取り戻していく難役を演じたダニエル・ラドクリフと、 過去のトラウマから逃げ続けていたポール・ダノの二人の曲者俳優が作品の強度を支えている。  メニーという死体が何者なのかは最後まで分からない。 虚実を入れつつも、ハンクの抑圧された自己を投影したイマジナリーフレンドかもしれないし、 森の中の一連のオブジェが現実に向き合おうとする通過儀礼にも思えた。 現実ではただの頭のイカれた変態にしか見えないハンクには厳しい現実が待ち構えている。 それでもメニーに別れを告げた彼はこのどうしようもない世界と折り合いをつけていく意思を感じた。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-03-31 23:43:39)
397.  エクストリーム・ジョブ 《ネタバレ》 
期待しすぎたかな。 前半までがピークでちょっと長く感じてしまった。  かつての香港映画でお馴染みのおバカな警察コメディを彷彿とさせながらも、 リアルで痛そうな暴力描写は韓国らしい。 チキン屋が予想以上に繁盛しちゃって、本筋から脱線しかける展開はなんとも可笑しいが、 後半はチキンに絡む要素が少なくなって寂しい限り。 まあチキン屋で不祥事が発覚して、チェーン化でさらなる問題が発生しちゃったから、 ラストで警察辞めてチキン屋やると少しは期待していた自分が悪い。 (高い失業率の韓国では敷居の低い飲食店で食い扶持を稼ぐしかない笑えない事情がある)。  序盤で犯罪者に盗られそうになった車を奪還するオバさんの件が一番笑えた。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-03-21 21:57:40)
398.  アナザーラウンド 《ネタバレ》 
中年の危機に直面した男性教諭4人がかつての輝きを取り戻そうと、 ほろ酔い状態を保てば最良のパフォーマンスが発揮できるという実験に生真面目に挑む可笑しさが滲み出る。  当然ながら酒の量が増え、結果的に家庭や職場に不和を及ぼす事態に陥る。 監督もそれは分かっていたはずで、論理的な実験と言いながら逃げているだけだった男4人の陰影を生々しく映す。 未来溢れる若者と対比して、多くのものを失った経験を持つ男たちはその喪失感と己の弱さに向き合う。 もう失点を取り返せないかもしれない、それも引っ括めて、己の人生も他者も肯定していく。  マッツ・ミケルセンのキレのあるダンスが、人生の眩しさと翳り、喜びと悲苦を全身で表現する。 本作を避けては通れない、象徴すると言っても良いエンディング。 ディカプリオがハリウッドリメイク権を獲得したが、彼のダンスを再現できるのだろうか?
[インターネット(字幕)] 6点(2023-02-23 22:31:25)
399.  ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 《ネタバレ》 
監督がアルフォンソ・キュアロンに変わったため、少し大人でダークな雰囲気になり、 新たな風を吹かせたことには成功した…かもしれない。 原作は読んでいたため、タイムパラドックスを取り入れた展開が一番面白く見られた。  本作を最後にリアルタイムでハリポタシリーズを見ることを断念しており、 原作が複雑長大化して読む体力が続かなくなったことが以降のシリーズ鑑賞のハードルを上げている気がする。 肩肘張らずにいつか4作目以降も見てみたい。
[映画館(字幕)] 6点(2023-02-11 01:07:50)
400.  漁港の肉子ちゃん 《ネタバレ》 
公開時、キャッチコピーで炎上していたが気持ちは分かる。 吉本興業と明石家さんまが関わっているだけあり、どこか偽善的でキャスティングにきな臭さは感じなくはない。 とはいえ意外にも違和感がなく、STUDIO 4℃制作なので世界観のクオリティの高さは折り紙付き。 フレンチトーストやミスジステーキ丼といった料理のディテールに本気が感じられる。  かなり重くなりそうなエピソードもコッテコテの三枚目の肉子のお陰で緩和されていた。 娘の出生の秘密についてはかなり早い段階で分かってしまうし、もう少し意外性は欲しかった。 お互いの想いを打ち明けた血の繋がらない母娘は、これからもこの漁村で終の棲家として、 前を向いて生きていくだろうと思わせる温かな人間模様。 笑いも悲しみも一緒くたに包み込んだ、ザ・人情喜劇と言ったところ。
[地上波(邦画)] 6点(2023-01-06 23:54:58)
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