381. 地獄の私刑・黒い欲望の報酬
《ネタバレ》 かなり安手な70年代英国産サスペンスで、サイズからしてもごくコンパクトなヤツ…ですかね。率直に、八割がたのグダグダと、残り二割がサスペンス的アイデアを一発カマしちゃれ!てな感じの成分構成になってまして、そのアイデアが炸裂するオーラスには(ゆーて)そこそこの面白みは在るかな…とも(否、炸裂するってホド鮮やかでもねーかな…とも)。ただ、とにかくその他のグダグダが余りにもグダグダ、加えてまた少しバカっぽ過ぎるのもありまして、中盤は正直ちょっと(いやかなり)ダレてしまいましたよね。。マジで、多少なりとも「段取り」てェのを整えるコトの出来る人間 or 感情に流されずに理性的に判断の出来る人間、つーのが一人として出て来ないのですよ。正直、好くコレでサスペンスに仕上がったな…とも(否、コレも本来はブラック・英国・コメディとして捉えるべき作品なのではねーかな…とも)。殆どロハで観れたから好い様なモノの、カネ払ってまで観る価値が有るかとゆーと…うーん…… ただし一点、本作の数少ない「ウリ」の一つであるジョーン・コリンズさんは、シンプルに相当にエロっぽい美形ですし、終盤手前には(またごく無駄に)ホットなランジェリー姿を披露して呉れても居るのですね。しかし、脱いでやったんだからモ~私の仕事は終わりよ!とバカリにその後は(不自然なマデに)急激にフェードアウトしてまうのですよね。。重ねてそんなトコロも含めて、本当にアイデア一発!なサスペンスで人間ドラマとゆーのには皆目成り得て居ない…てレベルの作品なのもまた間違いはねーですね。はい。 [DVD(字幕)] 4点(2023-03-05 23:22:31) |
382. クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代
《ネタバレ》 必ずしもクリムトとエゴン・シーレのみに集中した内容でもなくて、当時のウィーンの芸術・学術全体をカバーして且つその関係者たちのエピソードを羅列してゆく、という点ではワリと俯瞰的な内容だとも思えます(⇒最も重要なテーマは寧ろ、タイトルで言うなら「ウィーン黄金時代」の方ですかね)。個人的には特に前半、芸術分野における「ウィーン分離派」の業績と、当時の社会情勢+他芸術・学術分野(フロイトとかベートーヴェンとか)との関連を非常に分り易く解説してくれていた点が一番面白かったですね。ただ、それ以降の後半はやや散漫とゆーか、少なくともクリムトとエゴン・シーレの話として更に深まってゆく訳でも結論が出される訳でもないので、その意味では少し「名が体を表して居ない」という感覚も無くはねーですかね(個人的には、その部分はちょっとボリューム的にも物足りなかったです=エゴン・シーレ展のイントロダクションとして観たので)。まあ、美術論なんてマニアック過ぎても取っ付き難いダケだし、体系的にチャンとやろうと思ったらソレこそ何時間語っても足りやしない…というコトかとも思うのですケドね(ドキュメンタリだとしても映画の題材としてはごく扱いにくいジャンル…かと)。 一点、やっぱ美術・芸術論だから「語る」内容がシンプルに少なくなくて、かつ高度なので、出来れば字幕の方が観易いな…とも思いましたすね。ナレーションが柄本佑だからなのかアマプラで字幕版が無かったのですが、個人的にはソレもちょっと残念に思いました。 [インターネット(吹替)] 6点(2023-03-05 20:45:25) |
383. 黙秘
《ネタバレ》 重要なモチーフとして「日蝕」が物語に取り込まれているのですが、純粋にサスペンスとしては(実はコレは)不可欠な要素ではないのですね(⇒単に「街で祭りが行われていた」というコトでも事足りる)。しかし、作中で「その日」が孕む「意味合い」の観点からは、コレもまた実に適確な演出だったと思うのです。天地の運行・法則が乱れる、往古来今に於ける「特異点」。それはドロレスの人生の上にも間違い無く同じモノとして最後まで影を落とし続けたのですし、また物語の佳境となる実際のそのシーンも、映像表現としてもごくスペシャルで印象の強い優れたモノに仕上がっていました。本作、高度に良質なサスペンスであると同時に、登場人物が背負う「業」の深さからしてもまたごく重厚なドラマでもあり、且つは前述どおりそーいった諸要素を見事に束ねるひとつのアイデアが映画の映像表現の方面にも大きな効果を齎している…という極めて完成度の高いジャンル作品だと感じられました(⇒映像化された際の効果を事前に織り込んでいたとしか思えない点では、流石はキング…と言うべきなのでしょーかね)。個人的には、種々の側面で同類たる『シャイニング』の完成度にすら比肩する…とも思います。傑作かと。 J・J・リーって、若い頃はフツーに可愛かったんすね(意外)。しかし、キャシー・ベイツが多少手控えていたとは言え、この年齢で彼女と堂々と渡り合える…とゆーのはモ~流石!と言うしかないトコロであります。この2人に加えて、クリストファー・プラマーの(コレも意外なマデに)実にイヤらしい感じも地味に絶品でしたですね。演技面からも、個人的にはお腹一杯…という位に十二分に楽しむコトが出来ました。 [DVD(字幕)] 9点(2023-03-04 23:27:27) |
384. エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
《ネタバレ》 ※多分、二度三度と観た方が確実に好いという類のヤツだと思いますので、再見・再々見が前提のレビューとなります。情報量が多すぎて、私も到底初見で十分に把握できたという感覚は無いです。 勿論、ミシェル・ヨー演じる作中キャラとしてのエヴリンの(とゆーかその多元宇宙を貫く一つの「存在」としての彼女の)物語=ドラマもチャンと用意されては居ますし、ソレとて十二分に共感可能なクオリティでも在るのです。しかし私にとっては、も~ソコはどーでも好かったとゆーか、今作は個人的にはドラマでもアクションでもコメディでも(無論、カンフー映画でも)ナンでもありませんでした。今作とは、私にとっては唯々「マルチバースとは何か」という、端的に言うなら「世界観を語る」映画であり、より適切にはとある一つの「哲学」であったのですね。思い返せば確かに、昔から世界中に(何時でも何処でも)ソレっぽいコトを言ってる人って結構大勢居たよな…とも思いますし、劇中でも言及される様に近代の素粒子物理学なんてのも結局そーいうハナシでしょ?とも聞きますよね(実は、好くは知らんのですケド)。実際にこの世界って、宇宙って、本作で描かれる正にその感じに(意外に&ワリと&かなり)近いんじゃねーかな…と思いがけずも強烈に実感してしまった、とでも言いましょーか(=我々は単に、彼らの様に「バース・ジャンプ」がまだ出来ない…というダケのハナシであって)。 実のトコロ、昨今流行りの「所謂」マルチバースって正直ナメてたとゆーか、個人的にはアメコミ映画のご都合主義…位にしか思ってなかったのですよ(その意味では、モノの見事に足元を掬われてしまいましたよね)。取りも直さず、その「マルチバースとは何か」を2時間強の映像で語り尽す為にはナニを、ドレだけ放り込めばソレが「エブリシング・エブリウェア」を体現してくれるのか?という点での監督の「取捨選択」とゆーのは(ドコからドコまでも)実に「冴えてた」と思うのですし(大半の箇所でごく緻密で、でも且つは所ドコロは適切に「適当=カオス」であるコトも含めて)出来上がった作品だっても~アルティメットに創造的・独創的な優れた代物だったと思います。傑作かと。 また実のトコロ、どー見ても娯楽作…なテイで居るワリには全く全然そーいう映画じゃなかった(=相当に「人を選ぶ」作品だ)という点で、評価自体は比較的難しい方のヤツかもな…と思ったりもするのですが、一旦は(自分を信じて)この評価とさせて頂きます。シンプルに映画館で是非。 ※重ねて、再見・再レビュー前提で [映画館(字幕)] 9点(2023-03-04 00:17:38) |
385. カリガリ博士
《ネタバレ》 話の内容や演出の意図が隅々まで分かり易い・伝わり易いというサイレントではない…とも思いますが、ソレでも一点、サイレントならではの「演技の質」とゆーのには、また大いなる見ドコロが在るという作品かと思いました。やはり、音・台詞に頼らないという意味ではある面で非常に「高度な」とゆーか、少なくとも現代のソレとはかなり「異質な」という意味での面白さ・興味深さとゆーのが(サイレント映画の演技には)存在していると思うのですが、今作は、まず状況設定からして異常なコトもあり、かなり独特・独創的なソレを観るコトが出来たという実感はごく強力でした。やっぱり、兎に角はチェザーレ、でカリガリ博士、そしてラストにかけてはフランシスとジェーン…この彼らの「狂気」の表現は、間違い無く実に高度で普遍的な演技の仕事だったと思います(+そしてまた高度に異質で「ココでしか観れない」という感じも在り)。コレまでも、またコレからもずっと、永く観て損は無い作品として在り続けるのではないか…と思いますね。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-03-03 20:44:24)(良:1票) |
386. 妖女ゴーゴン
《ネタバレ》 クリストファー・リー&ピーター・カッシング出演のハマーの怪奇映画で、またコテコテな内容だと言って好いでしょう(山のお城に化物が棲んでて、麓の村で怪異が…というヤツ)。んで、その殺しの手口があまりにオンリーワンすぎるが故に、別に隠そうともしてませんが犯人も最初からバレバレです(実は、その数千年前のギリシャの化物がそのまま城に居る…って話ではねーのですが、だとしても何が起こってて誰が犯人なのかも少なくとも中盤以降はバレバレでして)。とは言え、前半はまあまあテンポ好いですし、肝心のメゲーラ?ちゃんを最後の最後まで大写しにせずにチャンと観客を焦らし捲るのとか、あと最低限「どーやって倒すのか」にはワクワクしてゆけるハナシだとも思うのですよね。そこら辺、個人的にはオチまで+オチ自体も含め、フツーにそこそこは楽しめた…という感じです。後半が(逆に)テンポ悪くて盛上りにも欠ける…というきらいは在るものの、悪い作品ではねーかな、と。 ※とは言え一点だけ、前述どおり折角監督が我々を焦らし捲ってくれてるのに、DVDのジャケットには表裏どっちにも思いっ切りそのままの絵+写真を乗っけてるのは、率直にどーなのでしょーか?(ソニー・ピクチャーズさんには猛省を促したいですね。。) [DVD(字幕)] 5点(2023-03-03 20:34:08) |
387. ちひろさん
《ネタバレ》 ゆったりした間合いはまた監督の空気感ですが、印象は全体的にだいぶポップにも感じられました。で、とにかく非常に心地好いとゆーか、多少は在るホロ苦いシーンですらモ~心地好いとゆーか、でも「こんなにひたすら心地好い…のにタダ浸ってるダケで好いのかな?」と不安にすらなって来るとゆーか、ごく終盤までは描かれるのはストーリーと言うよりはちひろさんのキャラクターそのモノ(+ソレがもたらす単なる暖かさ)の方なのですよね⇒他にも色んな人の様子もふんだんに描かれてゆく…とは言え。結局、その終盤に少しダケちひろさんのお話の方が動き出す…あたりが個人的にはより面白く観れた、というコトを含めても、やはり私は2時間を一つのストーリーが一貫する映画の方が好みだというコトなのでしょーね。確かに、ある面で(どちらかと言うと)配信向きな作品なのかも知れません⇒重ねて、ごくゆったりと長尺なコトも含めて(内容のワリには)。 完全に楽しめた!とは言え、点数自体はかなり迷ったのですが、ココは逃げずに高めに寄せました。理由はやはり、そのちひろさんのキャラクターにごく共感できたコトです(結末部分も含めて)。生きていれば辛いコトもあるし、時にはソレを受け止め切れずに壊れてしまうコトもあるのが人間だと思うのです。そーして失った諸々のモノは、やはり完全に取り戻すコトは出来ない、とも(心身の健康とか、流れ去った時間など尚更に)。でも、ソレでも人は立ち直れるし、前向きに生きていけば(そーいう辛い出来事も)いつかは笑い話に、糧に、本当に本当の意味でごくポジティブなモノに変わる日だってきっと来るのだ、と最近は(個人的にも結構)実感していたりするのですよね。中々、好い時にこの作品に出会うコトが出来た、と心から思いました。 [映画館(邦画)] 8点(2023-03-02 23:47:37) |
388. ニトラム/NITRAM
《ネタバレ》 今作の主人公は典型的な「自己中心的」無差別大量殺人犯であり(少なくとも、その根本的な動機が彼以外には理解できない・できなかった、という意味では)、実際の作中での描かれ方としても彼に対して冒頭から容易に感情移入してゆける…という作品には全く為って居ないのですね。ただ、また決してその大元の原因が彼の人間性のみに在った…という描かれ方に為って居ないのも事実であって、その部分の描写の質感はむしろ非常に淡々としたモノ、かつまま高度に不明瞭でもある点では、分かり易い「想像」の結論を用意しているとゆーよりは鑑賞者個々の捉え方に任せていると言いますか、ある意味では(不親切なよーで)逆に誠実な映画かな、とも思いました(クライム・サスペンスながらヴァイオレンス・シーンにほぼ頼っていないコトも含め)。尤も、鑑賞後に事件の情報を少し漁ったトコロでも、本作で描かれたコトが全て事実に基づくのかはやや判断付きかねる部分がありましたし、オーラスのインタータイトルには(若干唐突に)銃規制に対するメッセージを含ませていたり、と製作者側の「意図」が完全に抜かれていた(=完全に客観的な映画だった)という作品には必ずしも思えない部分もありましたかね。 しかし、そーはあっても全編を貫く一種の「やるせなさ」に関しては、好きか嫌いかは別として(+ソレが必ずしも「共感」には為り切らなかったコトもまた確かだとして)映画が励起し得る人間の感覚・感情としてはかなり高度だったかな、とも思います。その意味では決して観て損は無かった…と思えましたし、またソレは確実に俳優陣の演技の質の高さに依るモノだとも思われました。個人的にまず印象が強かったのが母親役のジュディ・デイヴィスでしょーか。息子に対して実にアンビヴァレントな感情を抱いて(そしてソレを押し殺して)居る様子からは、率直に実に非常な見応えを感じられました。そして主役のケイレブ・ランドリー・ジョーンズについては、こちらも全編において実に相反する人間性(=無邪気さと、そして底知れぬ悪意とゆーか)を併せ持つ犯人を見事に演じ抜いている、と思ったのですが、コッチはオーラスのシーンがまた非常に印象的でしたね(何故彼は凶行に及ぶ直前に、あんな哀しい目をして店員に「ありがとう」と言ったのか)。演技面の出来としても(意外なマデに)観て損は無かったと思えましたですね。 [DVD(字幕)] 7点(2023-03-02 19:02:26) |
389. リング・ワンダリング
《ネタバレ》 うーん……最後まで観ると結局、お話のコアの部分はSF・ファンタジーに類する代物なのですよね。その面での中核となる中盤のシーンを挟む様に、漫画家志望の主人公のパーソナルな困難 or 悩みが提起⇒解決される様子が描かれるという構成でソッチの部分は大いにドラマ的だったりもするのですが、また結局そのファンタジックにせよ(片や)ドラマにせよ、ちょっと内容的に在り来りすぎて(この尺の映画の題材としては)残念ながら「弱い」かな~と。個人的には正直、かなり退屈してしまったと言って過言ではねーです。 ただ、映画自体としては全体的に個々のシーンはどれもかなり丁寧に撮られていた、とも感じるのですよね(監督が「撮りたい」シーンを撮ってるのだろーなーという感じもしましたし、キャストも率直に地味ながら中々に豪華だとも思いましたし)。おそらく雰囲気映画の方…としてウマ~くその空気の中に溶け込んでゆけた人なら、もっと全然面白く観てゆけたのではないか…とも思うのですね。とは言え個人的には、私が何故今作を「雰囲気映画」として観てゆくコトにも失敗したのか…という点もワリと(私の中では)明確なのです。よくあるこの方面のメソッドとしては、やはり「音楽」や「画づくり」といった部分でちょっと普通・日常とは異なる質感をつくり込んでゆく…というコトではないかと思ったりしますが、今作はその点では部分的(=中盤のファンタジックな「過去」のシーン)にはそこそこそーいうモノを感じ取れるトコロもあるのですケド、その他のシーンは(序盤とラス前の「漫画の中の世界」にせよ)ごく現実感の強い方の質感で撮られていたと思うのですね(⇒音楽はそもそもあんまし使ってないですし、画面の感じとか台詞とかもごくかなり日常的だし、で)。あともう一つ、先にも述べましたが(内容の薄さも踏まえた上で)雰囲気映画に仕上げるにしては少~し尺自体が長い気もしましたかね(⇒決してソコまで長尺な映画でもねーのですケド)。そこら辺の意味でも少なくとも、件の「漫画の中の世界」を二回もあんなに長々と描く意味は(少なくとも私には)あまりピンと来なかった…とゆーのがまた正直なトコロですかね(長谷川初範はまたカッコ好かったですケドね)。 [DVD(邦画)] 4点(2023-03-02 19:02:01) |
390. 楊貴妃
《ネタバレ》 『雨月物語』に文句など(ほぼ何一つ)無いのではありますが、一点だけ、コレをカラーで撮ってたらどーだったろうな…とは思ったのでして、で今作はワリと同時期のカラー作品、かつまた主演二人が京マチ子&森雅之+歴史もの+話の中身も(ある部分では)ごく似てる…と思って観始めました。全体の尺とかも同じ位なのですが、お話の内容自体のボリューム・密度という点では率直に今作の方がだいぶ軽めで、まあその二人の(恋だ愛だの)お話に限って観てゆくならナンとかならんコトもねーかな…という感じではありましたかね。 ただ、ゆーてココまでボンヤリした感じになってしまうなら寧ろ、皇帝と貴妃以外の人物(⇒安禄山はまだしも、ソレこそ楊国忠とか高力士・李林甫あたり)をもっと実態に即したエゲツない人物としてチャンと描写すれば好かったのではねーか…とも思いましたかね。あと、今作は全編セット撮影かと思うのですが、ソコで別に屋内のシーンは全然問題なかったとも思うのですが(美術面のクオリティやゴージャス感とかも)やっぱ歴史ものでもあるコトからしても多少スペクタクルな、とゆーか壮大・壮麗なシーン(デカい宮殿とか)が殆ど無かったのは、特に中国のお話としては少し痛かったかもな~と思いますね(正直あんまし中国の話に見えなくて)。 [インターネット(邦画)] 6点(2023-02-26 16:52:07) |
391. 雨月物語
《ネタバレ》 久し振りに再見しましたが、やはり面白いですね。特にラスト、源十郎が村に帰って来て宮木と一夜を過ごすシーンは、改めて観ると(技巧的にも演技的にも)最初から最後まで凄まじい完成度だと思いました。もちろんそこまでも(全体としてもコンパクトサイズなワリには)お話の内容も含蓄もミチッと詰まっていて(=人の物語としても、或いは人でないモノの物語としても)その点でも完成度が高いなあ、と。 中でもやはり、京マチ子さん演じる亡霊とゆーのは、このごく生々しい物語の中でも一際「超常のモノ」たる存在としての好い意味での「浮いた」感じが見事でした。それは彼女が備える類稀なルックスの効果も確かに大きいとは思うのですが、もう一つ、所作の巧みさも非常に効果的だったと(今回改めて)感じたのですよね。劇中でも実際に能を舞うシーンがありましたが、その他のシーンでも多分に日本舞踊的とゆーか、着物を着たうえでの滑らかで・しとやかで・かつ艶やかな種々の動作とゆーのが、実に美しくも妖しく(スペシャルなモノに)感じられたのですね。コレは類似の映画として『怪談』の雪女役・岸惠子さんを観た時にも感じたコトなのですケド、だからコレって現代で年頃の役者に演らせよーとしたってモ~ちょっと中々に無理だろーな…とは思ってしまいましたよね。。 [インターネット(邦画)] 9点(2023-02-26 16:40:05) |
392. ブラックホーク・ダウン
《ネタバレ》 『プライベート・ライアン』と同時期・同系統の映画で、そのジャンルでは今なお(両作ともに)最高峰とされているのではないかと思います。若干の違いがあるとしたら、中でもコッチはごく高度に実話ベースとゆーか、リアリティの描き出しの方により全体の質感を寄せているとゆーか、部分的にはドキュメンタリチックにも感じられる…てのがまた確か、かとは思いますかね。 で、私も全然優れた方の映画だ、と思うのはまたまた確かなのですケド、何回観てもあまりしっくり来ない…てのがまた×3正直なトコロでもありまして、ナニかやっぱり「中途半端」な作品だ…という気がしてしまうのですよね。大作映画だからどーしたって興行面を無視するワケにもいかなくて、だからリアリティ重視とゆーても映画的展開運びを全くしないってコトにはならないし、でもでも(方針的に実話ベースで進むしかないから)実際の事件の展開同様に終盤はグダグダになって盛り下がってゆくしかないし…(+それは事態急変当初、ごくアクション映画的にメッチャ盛り上がった部分とだって確実に整合していないと思うのですし…)逆に、リアルにドキュメンタリ的に描いて戦争の悲惨さ・不毛さを際立たせるのが目的の大きな一つだとして、だとしたら(結局)米軍よりもケタ違いに犠牲者が多かった(+作中ではまた確実に「敵」としてしか描かれていない)ソマリア人の描き方ってのは、率直にコレは「正しい」のか、と。 それでも、評点としてはもう一点加える方が(個人的な感覚としてはまた)正しそうにも思われるのですが、な~んとはナシに今回はいったん低めに寄せたこの評価としておきます。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2023-02-26 09:46:38) |
393. ルート・アイリッシュ
《ネタバレ》 ケン・ローチ監督作だから(確かに当然に)社会派作品ではあるのですが、本作は全体的にはごくシンプルなサスペンスであり(=状況設定自体は前述どおり高度に社会派ではありますが)かつそのサスペンス展開における主従(追及者と犯人)とゆーのも基本すべてがイギリス人なのですよね。その意味では、ゆーてそのテーマ的な部分てのは別にそんなに社会派的ではないかな…と思います(言っちゃあ全員が大きな意味での「加害者」側で、その方面の「葛藤」てのもごく添え物としてしか描かれないので)。いや、純粋にサスペンスとしては(その状況設定のユニークさも相まって)十二分に面白い作品だと思うのですケドね。 ただもう一つ、主人公の民間警備兵・ファーガスのキャラクターとゆーのが、個人的にはけっこう大雑把な描き方だな…とも思いましたね。前半ではこのイラクの惨状に対する軍人としての「諦観」も見せ付けつつも、ネルソンその他の非道に対してはごく強い怒りを示してゆく…がソレだってフランキーの死に対するソレと綯交ぜ・ごっちゃに為っている様にも見えて彼の本心・信念とゆーのはどーにも捉え辛い。その上に中盤以降、モ~錯乱状態に陥ったかの如くに無謀な行動を連発してゆき、最後には無駄な犠牲も出してゆく…個人的にはちょっと共感は出来そうにないキャラクターでしたですね。シンプルに、もう少し尺を取って状況説明やその心情の描写を足しても好かったのではねーかな…とも(特にラスト付近)。 蛇足ですがもう一点、ファーガスとレイチェルがそーいうコトになるのも、流石にそーなるの早すぎでしょ⁉と(数日でそーなってない?と)。 [DVD(字幕)] 5点(2023-02-24 11:11:53) |
394. バビロン(2022)
《ネタバレ》 映画黄金時代における悪徳の都・ハリウッドを「バビロン」と称して、ド初っ端からソレこそ『ソドムの市』みたいな勢いで下劣・頽廃・猥雑極まる酒池肉林の宴をオッ始めるのですが、観終わって描かれていたのは結局その時代+その時代の映画そのものに対するシンプルで強烈なノスタルジィだった…という作品なのですよね(でもまァある種「予想どおり」とも言いましょーか)。 ただ、私個人としては、この監督は彼の『セッション』を観た時にも感じたコトですが、現代の価値観・倫理観(ソレこそ昨今のポリコレとか)に嵌り切るコトを必ずしも善しとしない様な「きらい」のある人なのかな…と思います。所謂「表現者」の方々にとってはある点で実に「窮屈な」時代になったのだろう…とゆーのは確かなコトだと思うのですね。特に序盤1時間位に渡って描かれる古の凄まじい映画撮影現場の様子(⇒現代に至っては完全にブラック・コメディのコントとして捉えるしかない様な)を結局は前述の強力な憧憬の対象として描いているコトだって、流石にコレって現状では(特にポリコレ全盛のアメリカでは)少なからず「危うい」描き方だな…てのが正直な感覚なのでして。でも重ねて、個人的にはソコにはやっぱ共感さえ出来る状況でもあるのですよね。表現者の方にとっては(⇒特に古い時代の映画を確かに愛して、だからその時代の偉大なる先達に対する「敬意」を抱いている人達こそは)正にその自分の「好きな映画」が(場合に依っては)創れない…とかいうコトにもなり兼ねないってハナシだとは思うのです。日本でも例えばお笑い芸人の方とかがいま結構に困ってる…みたいな話はよー聞きますよね。 ※それでも、私自身は、昨今の映画に於けるそのポリコレだとかの影響とゆーのはごくポジティブに捉えている方だと思ってます。嘗てソレに依って映画は確かに社会を少しダケ善い方向に変えてきたと信じているのですし、またこれからも変えてゆくべきだ、と強く思っても居るのですよね。 結局、その最大のテーマ面においては(個人的には)共感するしかない映画であったのですし、ソレこそ監督のその感情(=価値観)とゆーのには全く「嘘が無い」映画だったとも思うのですね。実際に、まずは其処彼処に散りばめられた愛溢れる「オマージュ」の数々もごく好ましく見えましたし、また特大のサイズでありながら諸々と細部まで実にこだわり抜いてつくられた非常に優れた映画だったとも思います。そして個々のキャストの演技とかにしてもごく素晴らしい方だったかと(特に、またマーゴット・ロビーは出色で)。でも同時に少なからず、まず一つ(最初に述べたとおり)ごく「予想どおり」な範疇に留まる結末だったとも思いますし、もう一つはソコに至る理由にやや説得力を欠く⇒つまり、その「バビロン」が何故、その悪徳の存在にも関わらず監督のノスタルジィの対象となるのかが「倫理的に解決」して居ない&ならば…と「開き直って」も居ない、と思うのですよね(ある種、その点に関しては「逃げている」とさえ)。私は正直(⇒前述したその倫理的な云々についてアレコレと思い悩みながら観ていってしまった末に)終盤~ラストにかけてはハッキリと息切れ・トーンダウンしちゃったな…と感じました。なので、心情としては是非もう一点足したい…と重々悩みつつ、いったんココまでの評価としておきます。 [映画館(字幕)] 8点(2023-02-18 22:11:36) |
395. ジェントルメン(2019)
《ネタバレ》 実は『ロック、ストック…』を観れてなくて、最近の監督の他作品の印象でフツーにアクションだと思い込んで鑑賞に至ったのです。が、どちらかとゆーと今作ってシナリオに仕掛けの在るタイプのクライム・サスペンスだったのでして、かつタイトリング通り(英国風に)ブラックでアイロニーなコメディ風味もまま感じられる…というヤツでした(有り体に言うとやっぱタランティーノぽい…てなモンで)。確かにちょっとまた「思てたんと違う」というコトではありました(特に、ほぼ全編がヒュー・グラントの語る「回想」て構成になってるので、時間の流れがスムーズじゃなくって普通のスリラーみたいに中々テンポがハイになってかない≒とゆーかテンポ速くなると程無くブレーキが都度掛かる…という感じ)が、ごくノンビリ観るのなら(逆に)全然アリかとも思いましたかね⇒私も酒でも飲みながら観た方が好かったかも…と。役者もまあまあゴージャスだし、また役柄にも結構みんな高度にハマってた…とも思うのですよね(個人的にはコリン・ファレルがかなり好きでした、し、ジェレミー・ストロングに凄むマシュー・マコノヒーのシーンはフツーに思いっ切り観入ってしまいましたし)。 ただ、その肝心なシナリオについても二点ほど。多少複雑でもそのモヤモヤも最後まで楽しめる(⇒で最後にはチャンとスカッと出来る)ってヤツだとは思うのですが、ソレでも少しややこし過ぎ&出来過ぎだと思う箇所が一つずつ、と。ややこし過ぎるのはサブキャラで中国人と貴族がそれぞれ二人ずつ出て来るコト、出来過ぎなのは窓から落ちておっ死んだガキがロシアン・マフィアのボンボンだった…て高度な偶然。こーいうのがも~少しシンプル・自然でも他のナニかで魅せられる…てクオリティが在るのが(ソレこそ)初期タランティーノなのかな、な~んて。別に私そんなにタランティーノ好きでもねーのですケド、そんな私でもやっぱ「比較」はしたくなっちゃいますかね(なのでこの点数で)。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-02-18 01:00:53) |
396. アントマン&ワスプ:クアントマニア
《ネタバレ》 量子世界だぜ!とゆーコトで、ソコに吸い込まれた直後あたりはまあまあ異次元な感じも見られるのですケド、話が進むに連れて寧ろ高度文明な感じや有象無象の人型のクリーチャー(CG全開)がウジャウジャ…みたいな部分が完全に『スター・ウォーズ(新三部作)』にしか見えなくなってゆくのですよね。でもゆーて、どーみてもフツーの人間ぽいヤツもしこたま居らっしゃるし、翻訳トロトロドリンク!なるモノを飲むダケでまたフツーに英語でソイツらと喋れる様になっちゃうし、その辺の理屈もほぼ説明されないし、で世界観のつくり込み・据え付けってのはまず率直にかなり雑な方だと思いましたよね(『スター・ウォーズ』とは比較になんない)。 で、そもそも量子世界に(皆揃って)吸い込まれたのだって娘のテヘペロ!が原因だし、なんかトンデモないコトを(嘗て)やらかした風を散々に醸していたミシェル・ファイファー姐さんだって結局大したコトもしてなかったワケで、んでラスボスが脳筋かつコレまた大して強くもない…てなトコも含めてストーリーも実にいい加減な方だったと思いますね。加えて『アントマン』シリーズの(ある種の)コンセプトとゆーか決してシリアスなアクションになり切らないコメディ含みの弛んだ雰囲気といい……それら要素とゆーのは完全に、私の好みのアクション作品とは全く違うモノだったと言っても過言ではねーですね。 ただ、アクションそれ自体はそんなに悪くはなかったかな…とも。最初の魅せ場はカメラワークが結構凝ってたし(アンだけみんな走り回りながらカメラは接写で長回し+ほぼフルCGてのは、正直どーやって撮ってるのでしょーね?)中盤のアントマン&ワスプのはまま風変わりだったし、でオーラスはかなりボリューミーで爽快な方ではありましたかね。でも、そのオーラスも結局今回のアントマンはデッカくなって大暴れして終わり!みたいな感じでま~たついこないだ『ブラックアダム』でそーいうヤツ観たばっかだったし、ワスプの方もよく見りゃ殆どペッパー・ポッツ…だよねコレ?てなモンで(女優のルックスや年回り的にも)前述どおり世界観もストーリーもアクションもよく考えりゃあ「観たコトあるヤツ」ばっかだな…と。やっぱね、昨今のヒーローものにおいて「既視感」とゆーのは(ソレこそ)サノスをも凌駕する「最大最強の敵」だと思うのですよね。結論、個人的には決して楽しめなくもなかったのですが、点数は低めに倒しておきます。はい。 [映画館(字幕)] 6点(2023-02-17 23:24:51) |
397. ある用務員
《ネタバレ》 これまでの監督の他作品と比べると全体的に少し雰囲気が違うとゆーか、終い方なんて特に「ワリとマジメに」つくってる感じが強いのですよね(音楽とかも)。前半だって結構チャンとドラマしてる感じですし、だから結局要所で(他作品では出て来ない様な)フツーに名前を聞いたコトある役者さんが出て来たりもして、その辺も雰囲気の差には確実に繋がっては居ますよね。ただ一方、ごく「いつもの」感じの面子の方もままゴツ盛りではあるのでして、だから部分的には(当然)監督らしさとゆーのもそこそこタップリ感じられる…とも言えるのです。 で個人的には正直、ソコまで悪い作品だとは思わなかったのですが、ソレでもやっぱり「違和感」を強く感じた部分が何箇所か在って、結局ソレは(監督の個性たる)「チープさ」が(今作では何故か)好くないモノの方に見えてしまった…というコトではねーかな、と。おそらくソレは前述したある種の「ツギハギ」が原因ではねーかと思うのです。つまり、山路和弘の思いがけない熱演にアレッ?と引き込まれた直後に、その手下の組長のポンコツな長台詞を聞かされたり…だとか、平時だったらとても可愛らしく&面白く観てゆける髙石あかりちゃん&伊澤彩織ちゃんとて、一方でごくシリアス&シビアな芋生悠ちゃんの演技と並べちゃうとバランス悪く見えちゃったり…とか。映画ってやっぱり「全体の統一感」って結構大事なのかな~と思ったりしましたですね。 結論、ソレでもやっぱ別に『黄龍の村』とそんなに面白さに差が在った…とは思っていないのですケドも、迷いに迷ってこの点数としておきます。 [インターネット(邦画)] 4点(2023-02-16 20:25:56) |
398. サンダカン八番娼館 望郷
《ネタバレ》 原作がノンフィクションとゆーコトなので、内容それ自体は(劇映画=創作とゆーよりは)確実にドキュメンタリの方に近い作品だ、とまずは思うのだし、ソコに対しては正直面白かった…とか私がどう感じた…とか、或いは(娯楽として)楽しめたかどーか…などという個人的な部分の評価もナニも無い、とも思う。私の評点はひたすらに「観る価値が有ったか」という一点のみを意味しています(⇒モチロン、ここに描かれているものは概ね真実である…という前提の下ではありますが)。否、出来るだけ多くの人に観て貰いたい映画だ、とゆーのが正直なトコロの感想でありますね(出来れば全国民とかに観て貰いたい)。 ただ一点だけ、ココだけは「映画として」大いに評価したいのが、何と言っても田中絹代さんですよね。今作の絹代さんもある種モ~「演技の域を超えている」とゆーか、正に本物・本人にしか見えない…というレベルの超絶技巧だったかと思います。実にお恥ずかしいコトですが正直『山椒大夫』『雨月物語』『西鶴一代女』位でしか観たコトが無かったのでして(でも、それら作品を観た時にはやっぱ心底「凄い女優さんだな…」ともチャンと思っては居たのですよ⇒特に『西鶴一代女』は)今後はもっと意識的に古い映画も観るようにします(反省)。 [インターネット(邦画)] 8点(2023-02-15 18:18:03) |
399. HOKUSAI
《ネタバレ》 日本が世界に誇る人類史上最高峰の画家・葛飾北斎の生涯を描いた映画。だが、北斎の実際の経歴&人物像とゆーのは細部までが詳らかになっている訳ではないのだろうし(⇒殊にその絵画製作の動機とかいった部分に関しては)その意味では本作はその「ストーリーの軸」として、江戸幕府の芸術・出版に対する弾圧(=北斎が関わった人々が実際にその被害にあったコト)を用いて個々のエピソードを繋ぎ合わせてゆく、という手法を採っている様に見える。調べると確かに、本作に登場する蔦屋重三郎・喜多川歌麿・柳亭種彦らがその犠牲となったのは事実である様だ、がそもそも肝心の北斎自身が公儀の咎めを受けたという事実は無い様なのであるし、何よりも彼がその方面において何らか「成果・業績」を成し遂げたとゆーのも(当然)真実とは異なるのだ。 なので、コレばかりはどー描かれたトコロで(どーしたって)我々の知る歴史そのものと本作のストーリーがリンクしてゆくコトは無いのであり、だから個人的には正直ナニがしたかったのか=ナニが描きたかったのか分からない…という類の映画にも感じられてしまう。特に、北斎の実際の作品(富嶽三十六景とか)とそのストーリーが全く繋がってゆかないのはモ~致命的だ…とも思いましたよね(⇒生首の図の話はまだしも…と思うものの)。根本的に、もし「事実」を並べて「真実」を(説得力を持って)描くことが出来ない=「事実」と「架空」を綯交ぜにして描くしかない、のであるなら、全体の質感は「架空」の方に寄せるしかない、のではないか…な~んて思ったりもしましたよね(⇒そーじゃないと正直「観方」が分からなくなって、で結果としてメッチャ心地悪いのですよね)。映画自体としては(物理的には)諸々と結構好くつくり込まれた方の時代劇だとも思ったので、この脚本のイマイチさは実に残念です。 もう一点、実質60年近くの長い年月を描いてゆく映画として、登場人物の実年齢と役者の感じが所ドコロかな~りミスマッチなのも興を削ぎましたよね。冒頭、師匠に破門された(柳楽優弥演じる)北斎とゆーのは実際には34歳の様なのですケド、柳楽くんの若々しい感じ+ごく傍若無人な振舞い(⇒からの自暴自棄になって却って一皮剥ける青臭い様子とか)を見るに正直20代前半にしか見えてこず、第二章ではまたごくそのままの若い感じで(今度は)実際には50手前の北斎を演じていたり、他にも(当時30代後半の永山瑛太演じる)柳亭種彦だって死んだのは60間近のハズ…なのですからね。もう一つ言うなら、第三章から柳楽優弥がいきなり田中泯に変わるのだって流石にコレには無理とゆーのを感じてしまいますですよ。そんな意味でも、具体的には例えば第二章とかゆーのは率直に(ナンなら)丸々要らなかったのではねーか…とすら思いますよね(で、大した内容が在った様にも全く思われないので…)。 [DVD(邦画)] 4点(2023-02-15 00:00:04)(良:1票) |
400. ひらいて
《ネタバレ》 いや~シビれましたね~コレぞ文芸映画ですね!(原作の方も間髪入れずにAmazonでポチってしまいました) 否、所々では(痺れたのではなくて)むしろゾッとした…と言った方が好いと思います。まずはモ~主演の山田杏奈ちゃんからしてとにかく最初っからナンだかミョ~に怖い…のですよ。ある面では確実にサイコパスとゆーか、分かり易く言うとひたすらに自己中心的とゆーか、でも最後まで観ると私にとってより一層の恐怖の対象だったのは残り二人の方だったのですね(=今作で恐れ戦かされるのは実は杏奈ちゃんの方…だという)。 芋生悠ちゃんはコレも冒頭から病気という「業」を背負っていて、ソレがある種の「納得いく理由」となっている…とも思うのです、が一方の作間龍斗にはソレが当初は見当たらない…が故に、彼の方は一体どんな「闇」を抱えているのか(=ナニがどーなったらこんな人間に為り得るのか)という点がごく終盤まで非常に心地悪い不安として在り続けたコト。そして何より、そんな彼と彼女二人があまりにも人として「かけ離れた場所に居る」為に、杏奈ちゃんの方が(=杏奈ちゃんですらも)彼と彼女の世界には決して入り込めないのだ…という絶望的で絶対的な実感を共有してしまったコト、そのものの恐怖とでも言いますでしょーかね。 いや、杏奈ちゃんが(例えば端的に)ガキだから…とかいう単純なコトではないとだって確実にそー思われるのです。彼女は彼女で比較的ごく完成された人格を備えた方の、子どもとは決して言えない・見做せない様な女性だとも感じるのですね。だからその「差」とゆーのは(まず年月やそこらでは)埋まり得ないのではないか、ソレは恋愛においては正に死刑宣告の様なモンだとも思うのですよね(ソレこそ白鳥に恋する豚の様なコトであって)。コレもむしろ杏奈ちゃんの方こそが人間らしい(=人間臭い)人間だと見えていた私にとっては、彼と彼女二人とゆーのはむしろモ~「人間」に見えなかった…恐らくはソレこそが私の感じた「恐怖」の真なる源泉だったのではないか、と思います(思えば悠ちゃんの方だって、杏奈ちゃんと同じ様にやっぱ終始ナ~ンか怖いのですよね…少なくとも私にとっては)。 最初にも述べましたが、肝心な場面のキメ台詞の(決して気取らずも)実に文学的な趣きが超絶に心地好かったコトも含めて、少なくとも中盤以降はマジでシビれっ放し!でしたですね。大いにオススメしたい良作です。 [DVD(邦画)] 8点(2023-02-14 23:59:40) |