4081. 初恋(ファースト・ラブ)(1970)
ツルゲーネフの名作文学の映画化作品です。細切れな各シーンを淡々と積み重ねていく展開には、もう少しいろんな部分を強調できたのではないかという不満も残るが、終わってみればすべてが切ない青春の想い出として結実している。ジナイーダのやってることは、一歩誤ったら淫乱とも評価されかねない行動なのであるが、そんな雰囲気は排除した上で、あくまでも少年の視点から憧れの女性として追い続けているのがよい。こういう話に小細工はいらないのです。なので、点数も甘め。 [DVD(字幕)] 7点(2007-12-08 00:14:19) |
4082. 靴をなくした天使
《ネタバレ》 この種の「本当は違うんだよ」系の話は、見ていてイライラが溜まって印象が良くないことが多いのですが、本作で新鮮だったのは、偽ヒーローのガルシアを、よくあるペテン師とかではなく、実際にヒーローにふさわしい善行を行う人間として設定していること。これならば中盤までのストレスも低くてすみますし、あのラストでも納得します。それと、最後に「どういたしまして」でこの作品で唯一心底嬉しそうに笑うホフマンと、それを受けるジーナの微笑、あれで反則的なほど上手くまとまりましたね。こういう、人間の善意の価値を正面から(しかも嫌味なく)讃美する作品は、いつの世でも貴重だと思います。本題に入るまでが少し長すぎるのが難点。 [DVD(字幕)] 7点(2007-12-07 23:36:20) |
4083. 月の輝く夜に
ラブロマンスというよりもファミリー・ドラマですね。アメリカ作品らしからぬ、手作り感あふれるほのぼのとした作りが新鮮です。シェールとニコラスが終始ぼそぼそ喋りだったのが残念。こういう話だからこそ、演技も明るく楽しく行ってほしかった。 [DVD(字幕)] 6点(2007-11-29 03:41:42) |
4084. 或る夜の出来事
《ネタバレ》 70年前の作品とは思えないほどのスピーディーな台詞の応酬が印象的。私にとってのポイントは2つ。第1は、キスしそうになって止めたときの何ともいえない両者の表情、そして一瞬の切ない雰囲気。第2は、ヒッチハイクの後、朝食をおごる申し出をゲーブルが断ったときの両者の表情。男のつまらぬ意地と、女の「それに気づいてしまった」戸惑い(と、ちょっとした嬉しさ)がにじみ出ています。最後の方で、主役が父親になってしまったのが残念。 [DVD(字幕)] 6点(2007-11-22 03:20:08) |
4085. 大脱走
《ネタバレ》 この内容で3時間は長すぎ。あと、登場人物たちがそれぞれ一つずつ特技を持っているというのも、何かわざとらしくてかえって醒めました。管理者側にまったく緊迫感がないのも、脱走のスリルを削いでいます。むしろ、脱走後のそれぞれ工夫したルートと、それでもそれぞれに運が尽きて捕まっていく展開の方が、物語としては印象的でした。 [DVD(字幕)] 5点(2007-11-21 03:15:48) |
4086. アメリカン・ヒストリーX
台詞のインパクトと飾り気なしの演出で、かなり得をしている感じ。ドラマとしては、展開先にありきという感じで、少し弱いと思う。 [DVD(字幕)] 6点(2007-11-18 20:05:33) |
4087. 愛と哀しみの果て
重量感ずっしりのド級のメロドラマ。作品のほとんどは、主人公二人+道化的邪魔者の夫の3人がああだこうだとやりとりしているだけです。これで中途半端な内容だったら目も当てられないのですが、それをアフリカの大自然を徹底的に押し出してもっともらしく仰々しく創り上げてしまったのが凄い。一つの究極の作品でしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2007-11-15 01:16:40) |
4088. ブラックホーク・ダウン
背景の説明とか、兵士個々人のストーリーなどをばっさり切った潔さは、映画としては正解だと思う。そういうのをやり出すと、それだけで作品が終わってしまい、戦闘描写などおざなりの、かつフィクショナルなものにしかならないから(幾多の先例のように)。ソマリア人は確かにほとんど人間扱いされていませんが、現実にも彼らの目にはそのようにしか見えていないということです。多分、作戦の失敗も、根本的なところでソマリア人をなめていたところに原因があったのでしょう。 [DVD(字幕)] 5点(2007-11-12 04:04:25)(良:1票) |
4089. 薄れゆく記憶のなかで
《ネタバレ》 最初の説明的なナレーションとわざとらしい高校生活描写に、これはハズレ作品決定かなと思っていたのです。途中では、字幕翻訳が必要じゃないかと思うくらい聞き取りづらい台詞回し(ほとんど全員)に苛々していたのです。しかーし、それまでの伏線をふんだんに使った上に容赦なく切なさの底に叩き込んでくれるラスト20分で、一気に印象が変わりました。加えて、相当下調べをしたであろう気合の入ったロケーション撮影と効果十分な音楽をあれだけ全編にかぶせられたら、低い点はつけられません。ううっ。 [DVD(邦画)] 7点(2007-11-11 00:57:22) |
4090. ラスト・オブ・モヒカン
《ネタバレ》 走り方一つだけを見ても真剣に役作りを行ったことが分かるダニエル・デイ=ルイス先生のおかげで最後まで面白く見ることはできる。しかし、2人が恋に落ちる過程が不明(バックグラウンドがまるで違うのだから、もっと強烈な何かが必要なはず)、状況が変わりすぎで話のポイントがぶれすぎ(捕らえられて絞首刑目前という重大な危機の持っていき方が、あんな中途半端でいいの?)、マグアの過去が口でしか説明されていない(彼の英軍への敵愾心は、話の基盤をなす重要なファクターであるはず)など、作品としての詰めの甘さが目立ちまくっている。もっと壮大に発展できた内容だと思うのに、妙にこぢんまりとまとまってしまいました。 [DVD(字幕)] 6点(2007-11-11 00:53:09) |
4091. ブロードウェイと銃弾
他のアレン作品に比べて、特段出来がいいとは思わない。どんなシーンでも、構成上明らかに不要な人物までがやがやと画面に映り込んでくるのが最初から最後まで気になった(したがって、当然、目障りで無駄な動きも増えてくる)。美術関係に+1点。 [DVD(字幕)] 4点(2007-11-09 04:13:15) |
4092. 危険な関係(1988)
最初から最後までひたすらドロドロの世界ですが、こういうのはそれでいいのです。華麗な衣装、まわりくどい会話、何考えてんのか分かんない登場人物の行動、これぞ虚飾と欲得に満ちた頽廃貴族の世界。お見事です。登場シーンはむしろマルコヴィッチの方が多いような気もするが、画面にいなくても常に支配力を醸し出しているかのようなグレン・クローズの存在感が強烈。 [DVD(字幕)] 7点(2007-11-09 01:32:23) |
4093. 息子(1991)
三國連太郎の演技は指先の動き一つまで充実。原田美枝子様はいつどこで見ても魅力的。ケーシー高峰、浅利香津代、奈良岡朋子など、ごく僅かな部分にも最適な役者を配したキャスティングもなかなか。問題は、各登場人物が吐く台詞がどれもこれも説明的で興醒めすること。これだけの俳優陣と演出力だったら、何も言わなくてもいろんなことが表現できたと思うけどな・・・。せっかくの作品世界の価値を削いだ脚本家の責任は大きい。あと、サブタイトルの画面登場も余計。 [映画館(邦画)] 6点(2007-11-08 15:53:36) |
4094. ディック・トレイシー
ビーティが自分で主演しちゃったのがすべての間違い。本来は、楽しく単純でノリノリな話だと思うのに、彼が登場するたびに妙に真剣で重たい雰囲気が漂ってしまっています。もっと若くて間が抜けてそうな人にやらせるべきでした。過剰メイクも余計。 [DVD(字幕)] 5点(2007-11-04 04:12:06) |
4095. フル・モンティ
《ネタバレ》 いかにもイギリスなダメ人間奮起一番ドラマなのですが、他の同種ものに比べると、生活描写力も弱く、キャラクターも弱く、テンポも悪く、登場人物の「突き抜け度」も弱い。全体的に中途半端です。それに、ストリップって1回脱いじゃったら終わりなんだから、再生の手段としても弱いんじゃないのかな・・・。ラストの後、主人公たちがどうなっていくのかが、あまりイメージできません。 [DVD(字幕)] 5点(2007-11-03 14:55:04) |
4096. リービング・ラスベガス
ドロドロなほどの倦怠感・退廃感と、その中でどこかに感じられるほのかな安らぎ。こういう関係を正面から、かつ自然な形で描き出しているのが素晴らしい。ダメ人間に対する愛着のある作品はやっぱりいいです。ただし、アル中の度が進んでもニコラスが割とこざっぱりしているのが難点。本当のアル中はもっと身の回りのことや見た目についても無関心になっているはずだし、その辺はメイクや衣装で工夫してほしかった。 [DVD(字幕)] 7点(2007-11-02 02:33:14) |
4097. 椿三十郎(1962)
《ネタバレ》 これって、格好良い主人公が、悪者の悪だくみを無事に阻止しました、というごく普通の時代劇のパターンでしかないように思うのですが。敵方の中でもきちんと「分かっている」仲代とは、もう少し認め合った者同士の特別なやりとりがあると期待してましたし、脇役が全然活躍も変化もせず、ほとんど最後まで烏合の衆みたいな感じでしかなかったのも、映画としては不満です。 [DVD(邦画)] 5点(2007-10-28 21:40:11) |
4098. 深夜の告白(1944)
サスペンスとしては、骨子が呈示されているだけという感じで、特段目新しいものがあるとは感じませんでした。冒頭で録音による告白などということをやっちゃったせいで、全編にしつこくナレーションがかぶさることにもなり、その点もマイナス。 [DVD(字幕)] 4点(2007-10-21 01:02:13) |
4099. 花様年華
《ネタバレ》 ちっとも話が前に進まないのに苛々したり、肝心の男の妻と女の夫が全然画面に出てこないのに苛々したり、最後の急すぎる展開に唖然としたりなど、見ているときは文句が多かったのですが、終わった後に醸し出される切ない雰囲気はやはり捨てがたいので甘めの点数。心の中で振り返ったロマンスの回想などというのはああいうブツ切りのものなのかもしれません。ただし、マギー・チャンのチャイナドレス七変化は、不倫ドラマの大前提である「生活感」を削いでいるような気がして、やっぱり疑問。 [DVD(字幕)] 6点(2007-10-09 04:19:47) |
4100. パンズ・ラビリンス
《ネタバレ》 冒険系ファンタジーの割には話の規模としてはごく狭い範囲内に収まっているのだが、この作品が優れているのは、無意味に展開を拡げすぎずに、あくまでも現実の迫り来る危機と表裏一体のものとしてファンタジーの部分を位置づけていること、そして、中途半端にお約束的なハッピーエンドの方向に持っていかなかったこと。そのことが、全体に少女の生々しい息づかいを与え、地に足のついたファンタジーという難易度の高い世界を創り上げることに成功しています。それにしても、主演のイバナ・バケロの、気品と可愛らしさが完全に両立した存在感にはびっくり。演技も安定していて、今から次作が楽しみ。 [映画館(字幕)] 7点(2007-10-08 22:31:25) |