4101. 鬼龍院花子の生涯
《ネタバレ》 俳優陣の巧演、美術関係の職人芸、明暗を駆使する映像の美しさといった点はいうまでもなく。後からじわじわ湧き上がってくる味わいは、なぜタイトルがこれなのかということ。花子の登場自体はほとんどないにもかかわらず、あくまでもこれは「花子の生涯」なのである。隆盛を極めた鬼龍院にたった一つ欠けていたもの、それは鬼政を継承すべき実子だった。花子の誕生は、誰も否定できない、全員から崇め奉られるものとして迎えられる。しかし、その画竜点睛が埋まった瞬間から、鬼龍院は着実に傾いていく。その象徴であり、もしかしたら裏からの原動力でさえあったかもしれないのが、花子の存在なのだ。だから、鬼政や松恵がいくら主役であっても、すべての登場人物は、花子の存在を前提とし、またそこに帰着するものとして位置づけられている。そんなあっと驚く構成を一言で象徴し、また拉致以降は一切描かれない花子のその後を存分に想像させるものとして、あまりにも見事な、これ以上はないタイトル。 [映画館(邦画)] 8点(2005-05-03 01:28:09)(良:1票) |
4102. リメンバー・ミー(2000)
すごく素朴で単純な作りなんですが、心に残る好作品です。時間軸を超えた無線通信という初期設定以外に話を拡げすぎず、かつ、二人のやりとりも話を成立させるために必要最小限度であるのが良い。そうした中で、過去と現在のそれぞれの環境において、現実との関わりの中で相手の存在が意味を持ってきています。また、ラストの、あえて変に盛り上げようとしないあっさりとした切なさも印象的です。 [DVD(字幕)] 8点(2005-05-02 01:46:29) |
4103. フラッド
洪水という装飾を除けば、骨となる部分はB級アクション以外の何物でもないが、とにかく最初から最後まで水!水!水!にこだわりまくり、出演者に乾いた快適な衣装など1秒たりとも着せなかった制作者の偏執狂的な姿勢だけは評価したい。 [地上波(吹替)] 4点(2005-05-01 23:09:06)(良:1票) |
4104. フィラデルフィア
よくまとまってはいるが、それ以上に心に訴えてくるものはない。つまり、その素材によって何を表現したいのかが不明確ということ。トム・ハンクスは、序盤はなかなか見せたものの、途中からはデンゼルばかりに大活躍を許しており、明らかに存在感が薄れている(バンデラスとの関係も、バンデラスの真摯で一途な演技に比べ、まったく同性愛の表現を行っていない)。そもそも、ラストがあのようになるのならしかるべき医学的描写を行っておくべきだと思うが、それもなされていない。法廷シーンも緊迫感なし。 [DVD(字幕)] 5点(2005-05-01 03:14:25) |
4105. 告発
濃い内容の話が約2時間の枠内でうまくまとめられているし、ケビン・ベーコンの名演は必見ものだとも思う。ただし、法廷シーンがかなりひょいひょいと進んでいて拍子抜けなのと(検察官はどうみてもイモだし、よく見ると裁判官にかなり助けられている)、クリスチャン・スレーターについては「なんか、1人で騒いでいた」という印象しかなく、内面の表現ができていないのがマイナス。 [DVD(字幕)] 6点(2005-05-01 00:02:50) |
4106. アナザー・カントリー
映像の雰囲気は良い感じで、学院全体の何となくじめっとした空気がよく表されていると思うが、冒頭でスパイ云々と言った割には中身はほとんど関連性がなく、そもそも話自体が平坦で単調だったりする。 [DVD(字幕)] 5点(2005-04-30 00:38:09) |
4107. ソードフィッシュ
《ネタバレ》 さんざんハッキングがどうのこうのとかやっといて、いざやることが爆弾持って銀行強盗って・・・。しかもあの宙吊り作戦、そのまんま自分たち全員が全滅しそうになってるんですけど。ちゃんとしたヘリパイロット雇えよ。●ハル・ベリーは、例の読書シーンよりも、むしろジャックマンにアレが見つかりシーンの方がセクシーでした。 [ブルーレイ(字幕)] 4点(2005-04-29 23:28:57) |
4108. ユージュアル・サスペクツ
《ネタバレ》 この作品は、筋だけ追っていけば、ごく普通の作品です。しかし、オチを知った上で見返すと、そのたびごとに、ここにこういう工夫があったのかという発見がありますし、その細部のこだわり職人芸を堪能する作品なのです。その上で、ネタそのものというよりも、その「ネタの割り方」の美しさが、作品を後世に残るものにしています。また、G・バーン、S・ボールドウィン、デルトロ、ポスルスウェイト、そしてスペイシーといった、一癖も二癖もありそうな連中をこれでもかと揃えてみせたキャスティングの妙も称賛されるべきです。 [映画館(字幕)] 8点(2005-04-28 03:05:25) |
4109. フレンチ・カンカン
常時ごちゃごちゃと騒がしく進行する上に、内容的に意味のないやりとりばかりなので、見ていて疲労感だけが残る。肝心の最後のカンカンも、狭苦しい場所で多人数のダンサーがちょこまかと踊っているだけという印象で、肉体の躍動感が感じられなかった。 [DVD(字幕)] 4点(2005-04-27 04:58:04) |
4110. あなたにも書ける恋愛小説
うわ、こりゃつまらん、と声に出しそうになるくらい退屈だった。肝心の現実世界の方が、ひたすら2人で書いていってます、というだけで、ひねりも何にもない。ルーク・ウィルソンの大根演技(+主人公のそもそものアホさ)が、つまらなさに拍車をかけている。ソフィー・マルソーの不細工メイクにもがっかり。 [DVD(字幕)] 3点(2005-04-24 23:51:13) |
4111. 地下室のメロディー
こういう作品はテンポとスリルが命だと思うのだが、とにかくダラダラ長いのには閉口した。本題に入るまでが長過ぎだし、その後も特に盛り上がるべき部分がありません。音楽がしつこいのも気になりました。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2005-04-24 02:23:40) |
4112. レインマン
トム・クルーズはよく頑張っているが、やはり、単調さの枠を脱していないと思う。前半は力が入りすぎているし、後半は、変化を表すべきここぞという場面で、妙にあっさりと流れてしまっている。全体的に、演出の方向性が定まらずに綺麗にまとまっているだけという感じで、作品自体の完成度としてはよくできているとは思うが、後にはあまり残らない。 [DVD(字幕)] 6点(2005-04-24 02:11:55) |
4113. クレイジー・イン・アラバマ
主題があれこれと拡散して、どれも中途半端なままに終わってしまった。三人称と一人称がどっちつかずのまま並行しているのも、さらに半端な印象を与えている。法廷シーンの無茶ぶりにもびっくり。 [DVD(字幕)] 4点(2005-04-21 04:53:12) |
4114. それから(1985)
みんながひたすらボソボソ喋っているだけで、何とも退屈だった。藤谷美和子も、こんなに演技下手だったっけ?と思わず驚いてしまった。ほかの人もみんな演技がぎこちない。唯一、役にはまっていて存在感を発していたのは、草笛光子。 [DVD(邦画)] 4点(2005-04-20 03:33:25) |
4115. マーシェンカ
哀愁系・悲恋系ラブロマンスの最高レベルの作品。本題に入るまではややテンポが緩いが、回想シーンのしっとりとした美しさ、クライマックスへ向けて高まる心理、ラストシーンがもたらすとめどない切なさなどは、強烈なインパクトを残してくれる。骨組みはどうということはない話なのだが、じっくりと登場人物の心境を醸成することによって忘れがたいドラマを作ることができるという好例。1日も早いDVD化を望む。 [ビデオ(字幕)] 9点(2005-04-19 21:43:31) |
4116. ショコラ(2000)
とにかく、ジュリエット・ビノシュの一貫した凛とした気品が素晴らしい。それを最大限に生かすべく、カメラは遠近を自在に使い分け、表情・仕草・動きを存分に切り取っています。また、ジュディ・デンチ、レナ・オリン、キャリー=アン・モス、そしてもちろん子役の彼女も、立ち位置を的確に把握した見事なサポートを見せつけています。かえって、ジョニー・デップが霞んでしまうほど。 [映画館(字幕)] 8点(2005-04-19 01:37:54)(良:1票) |
4117. ロレンツォのオイル/命の詩
《ネタバレ》 制作者の真摯な姿勢と、出演者たちの名演が、ずしりとした感動を残すドラマ。とりわけ、主演の2人は、過剰な演技をすべて排して、どこまでも「その辺にいそうなパパとママ」であるのが素晴らしい(だからこそ、2人がかけた執念が現実味を帯びて伝わってくる)。元の話自体が重い話だが、その重圧に負けずに、1つの世界を伝えてくれた制作者に拍手。ただし、似たような演出をしている似たようなシーン(親の会の集会のシーンとか、看護婦をクビにするシーンとか)が意外に多いのは、映画としてはマイナス。なお、細かいことだが、ローラ・リニーの映画デビュー作としても重要。 [DVD(字幕)] 8点(2005-04-18 02:54:33) |
4118. マスク(1994)
《ネタバレ》 そこそこ一貫した真面目なコメディだと思うが、あそこまでアニメチックにする必要はなかったのではないか。かえって、面白みが削がれている。むしろ、なぜか踊り出す警官隊とか、あの辺をもっとこだわってほしかった。余計な知恵がつく前のキャメロン・ディアスは純粋に可愛いと思う。そうか、これがデビュー作だったのか! [DVD(字幕)] 5点(2005-04-18 02:05:47) |
4119. 幸福の黄色いハンカチ
《ネタバレ》 一番素晴らしいのは、現在の倍賞千恵子を最後まで見せないという演出。それと、最初は新品のファミリアが、段々と汚れていくところ(登場人物の成長を象徴している)。武田鉄矢は、演技は素人同然だが、必死さと懸命さは伝わってくる(この映画の時点で、彼は、「『母に捧げるバラード』で一発当てて即座に消えただけの一発屋兄ちゃん」にすぎず、生活はアマバン時代よりも悲惨だったのです)。桃井かおりは、前半は変に力が入っていて鬱陶しいだけ、後半は良い。あと、全体的に、方言の統一がまるでなされていないのが難点。 [DVD(邦画)] 6点(2005-04-15 23:44:08)(良:1票) |
4120. ライフ・イズ・ビューティフル
《ネタバレ》 最初と最後のモノローグの意味をよく考えると、この作品はグイドではなく、ジョズエの視点から見なければならないことが分かる。前半ではドーラを落とすために全精力を振り絞り(この部分は後日に母親から聞いたのだろう)、後半では我が子を守るために命をかける(この部分は自分自身の回想)。幸福な時期でも、不幸な時期でも、道を信じて全力を傾ければ、奇跡が起きることもある。その点でこの作品は一貫している。だから、人生は美しい。最後の連行の場面でおどけて行進調で歩く主人公の「意志」の強さが衝撃的。 [映画館(字幕)] 8点(2005-04-12 03:49:46) |