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 > ザ・チャンバラ さん
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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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401.  ザ・マミー/呪われた砂漠の王女
多くの方が指摘されている通り、お話は『スペース・バンパイア』にそっくりです。女性モンスターが精気を吸い取るという描写のみならず、主人公の男性がその女性モンスターの眠りを覚ましてしまったという点や、その男性が女性モンスターに選ばれた者であるという点もまったく同じ。超常現象でロンドンが大損害を受けるという点も共通しており、小学生時分より『スペース・バンパイア』を傑作だと信じている私としては、ついに時代が追い付いたかと感慨深いものがありました。 ただし、『スペース・バンパイア』には確かにあった恐怖という感情が、本作ではほぼ失われているという点は致命的でした。大変な金をかけて作られたミイラ達が全然怖くないんですよ。ダークユニバースは一応ホラー要素のある作品群であるはずなのに、ホラー映画としてまるでダメなのでは話になりません。このままでは『リーグ・オブ・レジェンド』や『ヴァン・ヘルシング』といった失敗作と同じ轍を踏むのではないでしょうか。 また、話が異常に分かりづらかったという点も、大きなマイナスです。蘇った砂漠の女王は何をしようとしているのか、そして主人公たちはどうやってそれを防ごうとしているのかという基本的な情報すらうまく伝わってこないため、特にクライマックスの追っかけは一体何やってんだかよく分かりませんでした。アレックス・カーツマンを筆頭にデヴィッド・コープ、クリストファー・マッカリーとハリウッドトップクラスの脚本家が名を連ねながら(なお、3名全員が『ミッション・インポッシブル』シリーズに関わった経験を持っています)、これだけ雑な仕事をするものかと驚きました。ま、話がまとめられなかったからこそ、大勢の脚本家が雇われたとも言えますが。
[映画館(字幕)] 4点(2017-08-12 23:34:23)
402.  ナイスガイズ! 《ネタバレ》 
バディもの、壊れかけた家庭、目の前の事件を追っているうちに巨大な陰謀に行き着くという展開、シェーン・ブラックの脚本は『リーサル・ウェポン』以来、ほぼこのパターンに当てはめて作られているのですが、本作もその例外ではなく「いつものブラックだなぁ」という感じでした。さらに、全体の軽さや不謹慎ギャグのレベルは『キスキス・バンバン』と非常に近く、本作において特に突出した部分はないように感じました(なお、本作にチョイ役で出てくる映写技師の青年はヴァル・キルマーの息子、ポルノ映画のプロデューサーの死体はロバート・ダウニーJrが演じてるらしいです)。 また、ブラックの初期作品には強烈な毒があり、『リーサル・ウェポン』『ラスト・ボーイスカウト』『ロングキス・グッドナイト』などは人生の最底辺で苦しみ、他人から避けられたり軽蔑されたりしている主人公の痛みであったり、捨て身の戦いの中で尊厳を取り戻すという熱いドラマが込められていたため、私はそれらの作品が大好きでした。しかし、本作ではその要素のみがスッパリと落とされています。おっぱいは出てくるし、死体で笑いをとるし、見てくれは過去最高にアダルトなのですが、ドラマの本質部分における毒がほとんどなくなっていた点はかなり残念でした。 さらに、本作は導入部がめちゃくちゃに分かりづらいという大きなマイナスを抱えています。ライアン・ゴズリング演じるマーチは、事故死したポルノ女優の叔母さんから「死んだはずの姪を見かけたから探して欲しい」という依頼を受けたが、そのポルノ女優の死亡は確実であることから、叔母さんは別の女性と見間違えたと考え、現場の記録から割り出したもう一人のポルノ女優・アメリアを追っています。他方、ラッセル・クロウ演じるヒーリーは、「自分を追っているマーチを脅して、もう来ないようにして欲しい」とアメリア本人からの依頼を受け、マーチ宅を訪れます。これが主人公二人の出会いなのですが、ここから二人揃ってアメリアを探し始めるという状況が物凄く分かりづらいのです。数日前に会ったばかりのアメリアを探すヒーリーってバカなのかと。 また、マーチと娘・ホリーの関係性も最初は良く分かりませんでした。酔いが醒めたマーチにホリーが電話をかけてくる場面が二人の関係性を示す最初のカットなのですが、通常の映画であれば、母親に引き取られたが父親を慕い続ける別居中の娘を連想させられる構図をとりながら、実はマーチと同居中であり、その日は友達の家に泊まっていたという、「誰がそんなこと連想するんだよ」という実に分かりづらいことになっています。演じるアンガーリー・ライスの魅力も含めてホリーのキャラクター自体は物凄くよかっただけに、冒頭の数十分間、彼女の個性や立ち位置を理解し損ねた点が残念でした。 後半でようやく明かされる陰謀の正体もよく分かりませんでした。行政と企業が癒着して公害問題が揉み消されているという事実を知ったアメリアが、その癒着を告発する内容のポルノ映画を作ったら、関係者及び映画そのものが抹殺されたという話なのですが、癒着を示すズバリの証拠の争奪戦ならともかく、誰からも見向きもされないようなポルノ映画を人殺しまでして葬り去ろうとしたことの意味が分かりません。人殺しをしたせいで、逆に騒ぎが大きくなってないかと。特に黒幕のジュディスはアメリアの母親であり、娘の命を奪ってまで映画を隠滅する必要があったのだろうかと、本当に不思議で仕方ありませんでした。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2017-08-11 15:27:59)(良:2票)
403.  ドント・ブリーズ 《ネタバレ》 
恐怖シーンにおける豊富なギミックや意表を突く展開など、実によく考えて作られていることは分かるのですが、主人公・ロッキーにビタ一文感情移入できないという点が致命的でした。事故で娘を失った盲目の老人宅に侵入し、事故の示談金を盗んでやろうという発想の時点でクズ。また、自分に惚れていて何でも言いなりになるアレックスを無理に強盗に引き込むという女としてのズルさや、「クズ親から幼い妹を引き離す」という大義名分によって自己の悪事を正当化している点など、とにかくロッキーのすべてが気に入らんかったです。 また、彼氏のマネーがぶっ殺されたり、監禁されている加害者を発見したり、自分自身が孕まされそうになったりと、もはや金なんて言ってられる状況じゃなくなっても金への執着を捨てないという点も受け付けませんでした。最後には、マネーとアレックスに罪を擦り付けて、まんまと金をせしめるという驚愕のクライマックス。空港で妹にオレンジジュースを飲ませてましたけど、ああいうとこのジュースはそこそこ高いんですよ。何人もの命を犠牲にして得た金でオレンジジュース飲ますんかいと、そんな些細な点まで気に入らなかったです。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2017-08-06 13:04:06)(良:2票)
404.  ジャック・リーチャー NEVER GO BACK 《ネタバレ》 
クリストファー・マッカリー製作、エドワード・ズウィック監督、トム・クルーズ主演の中規模作品と来れば、一流料亭のまかない飯みたいなものを期待するわけです。ブロックバスター作品ほどの気合は入っていないが、めちゃくちゃ上手な人達が少ない制約条件下で肩肘張らずに作った、これはこれでいけるひとつの名物。しかしフタを空けてみると、これが全然面白くなくてビックリしました。 謎解きの過程にも陰謀の正体にも魅力がなく、2時間弱の上映時間がかなり長く感じられました。職業柄気になったのですが、大企業の経営を立て直すほどの売上高を違法取引で上げて、どうやって会計処理していたんだろうかと、その辺りがものすごく引っかかりました。特に政府からの受注で食べてる会社なんて、帳簿は綺麗じゃないといけないだろうし。 また、方や風来坊、方やキャリアウーマンで家庭というものを考えてもこなかったリーチャーとターナーが、急遽中学生の保護者にならざるをえなくなるというドラマにも面白味がなく、作品が志向している方向性がことごとく空振りに終わっています。 さらには、邦題も気に入らなかったです。第一作の邦題を原題準拠にせず敢えて『アウトロー』にしたのだから、第二作もアウトローの看板を引き継ぐのがスジだと思うのですが、ここに来て原題準拠にするというおかしな変更がなされているのは、本当にどうかと思いました。数年後の観客に混乱が生じるということすら考慮されていないのでしょうか。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2017-08-05 13:39:26)
405.  トランスフォーマー/最後の騎士王 《ネタバレ》 
IMAX-3Dにて鑑賞。 日本公開前から前評判の異常な悪さが聞こえてきていたこの最新作ですが、確かにつまらんかったです。ギャグのつまらなさや設定の意味不明さは『1』以来の本シリーズの伝統なのですが、本作についてはそうしたシリーズの問題点が余計に悪化しており、もう本当にえらいことになっています。 しかも本作が重傷なのは、その意味不明な設定を観客にちゃんと理解させようと時間をたっぷり使ってしまっていること。前作までは正義のロボットと悪のロボットが戦っているという構図さえ理解できれば後のことはどうでもよかったわけですが、本作では「人類史にトランスフォーマーが深く関わっていた」という、本当にどうでもいいことがしつこいくらいに説明されるし、そうしてしつこく説明される割りには、タリスマンや杖といったアイテムに一体どんな力があるのか分からなかったり、途中まで杖の争奪戦をやっていたにも関わらず、ラスボスを倒す時にはその杖が大して重要な役割を果たさなかったりと、この監督と脚本家は一体何がやりたかったんだろうかと、本当に不思議で仕方ありませんでした。 もう一点、本作の関係者が罪深いと感じたのは、冒頭の合戦(おそらくベイドン山の戦い)にて円卓の騎士の中に一人黒人がいるということ。北欧神話をモチーフにした『マイティ・ソー』の世界にもなぜかイドリス・エルバや浅野忠信が居て「ハリウッドの人種平等主義はやりすぎではないか」と感じていましたが、本作はその比ではありません。円卓の騎士の名前と個性は広く知られているにも関わらず、そこに人種が違う人間を無理にねじ込んでいるのですから。特に本作では設定を観客に楽しませようとしていたのだから、その前提としては広く知られた歴史を尊重するという姿勢が必要だったはず。前作では中国の地理を無視して中国人を怒らせていましたが、本作ではイギリス人を怒らせるのではないでしょうか。外国に対するアメリカ人の無神経さには、毎度恐れ入ります。 また、肝心のロボットバトルにも前作から特に進化している点はなく、毎回毎回同じようなことばっかやってますなぁと、こちらでも熱くはなりませんでした。予告の時点でさんざん押されてきたオプティマスの寝返りについても、オートボッツと一回ド突き合いをしただけで我に返るというアッサリ加減で終わってしまうし、本作独自の色を出そうとしながらも、結局いつもの形に戻ってしまうという点がもどかしかったです。一時的にでもオプティマスとメガトロンが肩を並べて人類を攻撃するという画でもあれば、盛り上がったのですが。そういえば、あのメガトロンは『ロストエイジ』のガルバトロンと同一人物なのか、それともまったく別ルートで生き返ったものなのか、はたまた『ダークサイドムーン』で殺されたはずのやつがひっそりと生きていたものなのか、その説明すら端折られてましたよね。どんだけ適当な映画なんでしょうか。
[3D(字幕)] 4点(2017-08-05 01:20:45)(良:1票)
406.  ターザン:REBORN 《ネタバレ》 
ターザンという映画の魅力って、ムキムキの俳優と本物の動物が絡むという見世物的な面白さだったという点を実感させられました。CGで作られたゴリラやライオンが、実写ではおおよそ不可能なアクションを見せてくれたところで、そこに感動はないのです。CGという技術そのものを否定するつもりは毛頭ないのですが、ターザンというコンテンツはCGで描かれるべきではなかったと思います。 お話も、ことごとく盛り上げ所を逃しています。例えばクライマックスの大決戦。ターザンとジャイモン・フンスー族長が和解し、いよいよオールアフリカでベルギーの傭兵部隊を襲うという熱い展開を迎えるのかと思いきや、こいつらが全然闘いに参加しません。役に立ったのはヌーの大群とワニぐらいで、ターザンの親友であるゴリラやライオンすら実戦での貢献が少ないので拍子抜けさせられました。本作は万事がこの調子。常に何かが足りていないために盛り上がりを逃しています。
[ブルーレイ(字幕)] 4点(2017-01-29 20:06:51)
407.  闇金ウシジマくん Part2 《ネタバレ》 
原作未読、テレビドラマは鑑賞済です。 本作は丑嶋から金を奪おうとするヤンキーとの戦いがメインであり、金絡みのドロドロとしたドラマはほとんどなし。これはウシジマくんに求められている内容じゃないなぁという感じでした。また、キャラクター間の力関係も歪なものでした。加賀は本物の迫力を持つ丑嶋に勝負を挑もうとする一方で、小物に過ぎない愛沢に対しては恐怖心を抱き続けているし、愛沢は愛沢で犀原にビビりまくっている一方で丑嶋には勝てると思っていたりと、なんだかよく分からないことになっています。 また、同時進行で描かれる新人ホストとその彼女のエピソードについても、17歳の彼女に用立てさせようとする金額が70万円とか200万円とか浮世離れしており、今時AVに出たってそんな金稼げないという点でリアリティを失っていました。 本作で描くべきものは、ホストに狂って自殺にまで追い込まれた麗の母親や、社会の底辺で正気を失ってストーカー化した蝦沼のエピソードだったと思うのですが、そうしたものに限ってアッサリと流されている点も残念でした。 唯一褒められる点はキャスティングの先見性でしょうか。菅田将暉、門脇麦、窪田正孝と、その後数年でブレイクした若手俳優を複数出演させており、彼らのフレッシュな姿を見るだけでも楽しめました。
[インターネット(字幕)] 4点(2017-01-29 19:54:29)
408.  メカニック:ワールドミッション 《ネタバレ》 
殺しの世界に生きる者の虚無感や、愛憎入り混じる師弟関係を描いてなかなかムードあるアクションドラマだった前作からは一転し、本作はドンパチアクションとなっています。 もちろんドンパチは大歓迎なのですが、脚本が支離滅裂で完全なバカ映画になっている点はいただけませんでした。ターゲットに接近するため、あえてタイの刑務所に投獄されるビショップ。まともな取り調べも裁判もなしに即日収監されるわ、手回り品持ち込みOKだわ、東洋人の受刑者がほとんどいないわと、もうめちゃくちゃなのです。しかも、暗殺だと分からないよう事故に見せかけて殺せという指示だったのに、おもいっきり首絞めて殺してるし。検死ですぐにバレでしょうが。おまけに暗殺直後に派手に脱獄するから、ビショップが殺したのモロバレというね。こんなめちゃくちゃをやりながら「さすがビショップ、腕がいい」とか言われてるんだから、本作の登場人物は全員バカにしか見えません。 ターゲットであるトミー・リーと組んでクレインへの反撃を開始するという後半の展開もまったく意味をなしていません。トミー・リーの軍隊を使うわけではなく、結局はビショップ一人で戦ってますからね。そもそも、ビショップを放牧→拠点を襲撃されるということを何度も繰り返すクレインもバカにしか見えず、なぜビショップに見張りをつけておかないんだと終始不思議で仕方ありませんでした。あと、クルーザーにどんだけ部下乗せてんの。
[ブルーレイ(字幕)] 4点(2017-01-21 22:18:51)
409.  疑惑のチャンピオン 《ネタバレ》 
ダイアナ元皇太子妃死亡事故の裏側を描いた『クィーン』ではかなり突っ込んだ描写をして稀に見る傑作に仕上げたスティーブン・フリアーズ監督ですが、他方、不正発覚からほとんど期間を空けずに映画が製作されたことや、少々行き過ぎた描写があっても文句を言って来ない英国王室とは違い、事件関係者から名誉棄損等の訴訟を起こされるリスクがあったことから、本作は公になっている事実の積み重ねのみに終始し、面白みに欠ける内容となっています。当事者達が何を思っていたのかを描写することが実録もの映画の意義であるはずなのですが、本作は第三者の推測を極力排除する仕組みとしているために、ドラマ性がかなり薄まっているのです。その再現度の高さから自転車競技のファンからは好評を得ているようなのですが、本作で初めてランス・アームストロングという選手を知った私のような門外漢からすると、起伏に欠ける退屈な映画でしかありませんでした。 また、本作はドーピングをしたアームストロングに対して批判的な視点で製作されていますが、果たしてこれはアスリート個人に責任を押し付けるべき問題なのかということが気になりました。アームストロングは7年も競技のトップに君臨していましたが、その間、ドーピングは発覚していません。すなわち運営のチェック機能が正常に働いていなかったということであり、問題が顕在化していないだけで、他の選手もドーピングをしていた可能性が非常に高い状態にあったと言えます。そのような荒れた場においてトップを獲りたければ、他の選手を圧倒するほどの実力を持っているか、他の選手がやっているのと同じレベルの不正をやるかのどちらかしかありません。勝利への執念が強い選手ほど、自身が好むと好まざるとに関わらず、ドーピングをせざるを得ない状況に追いやられていたのです。これについては問題に気付かなかった、もしくは気付いていたが放置してきた運営者こそがA級戦犯であり、アームストロングは一番メジャーな選手だったためにスケープゴートにされているように感じました。
[DVD(吹替)] 4点(2017-01-11 16:56:19)
410.  その女諜報員 アレックス 《ネタバレ》 
イギリスにおける公開初日の興行成績がまさかの8,600円という通常ではありえないコケ具合で話題になったアクション映画ですが、確かにこれは酷い出来でした。 まず、敵も味方も優秀なのか優秀じゃないのか、強いのか弱いのかがさっぱり分かりません。完璧な武装と下準備、洗練された行動で登場しながらも、仲間割れで自滅するマヌケな強盗団。殺し屋集団が迫ってきているという逼迫した状況で固定電話を使ってしまい、リダイヤルで電話をかけた先を特定されて先回りされるという主人公のバカさ加減。序盤ではただ逃げるだけでさほどの強さを見せなかった主人公が、中盤になると自信満々に殺し屋集団への反撃を開始するという展開の唐突さ。このご時世に空港をブツの受け渡し場所に指定し、案の定厳重なセキュリティに捕まってしまう敵の愚かさ。そして、敵味方ともに、相手にとどめを刺さなかったり、ベラベラといらんことを喋ったりしている内に形勢逆転されることが多く、どちらも優秀な工作員に見えないという脱力感。監督はジェイソン・ボーンや007を意識して本作を撮っている様子でしたが、それらの作品の登場人物とは比較にならないほどのお粗末ぶりでした。 また、尺詰めすぎで人間関係が生煮え状態となっています。主人公・アレックス、強盗仲間のケヴィン、そしてケヴィンの妻・ペニーは過去に三角関係にあったという設定が置かれており、この緊急事態において恋敵だったアレックスとペニーが共闘するという展開を迎えるものの、そもそも旦那が犯罪者ということすら知らなかったペニーがいかにしてこの緊急事態を認識し、憎悪の対象でしかなかったアレックスとの共闘関係を結んだのかという感情の推移がまるで整理されていないため、感情移入が難しくなっています。これならば三角関係という設定はないほうが話の通りがよかったと思います。 さらには、そもそもの物語にリアリティを感じません。ダイヤ強盗に入ったら偶然に米国諜報機関の機密情報が記録されたマイクロチップまで盗んでしまったことが事の発端なのですが、なぜダイヤとマイクロチップが一緒に保管されていたのか、米国諜報機関がなぜケープタウンの銀行に機密情報を隠していたのか、そもそもこのご時世に諜報機関がマイクロチップの争奪戦なんてやるのだろうかなど、おかしな点があまりに多すぎます。さらには、マイクロチップに記録されていた陰謀の正体も「何の利益があってそんな悪だくみをするのか」と首をかしげるような内容であり、総じて説得力がありません。 とまぁ、とにかく悪いところだらけの作品なのですが、唯一の救いはオルガ・キュリレンコが美しく魅力的に撮られていることです。監督は本作をシリーズ化する気マンマンだっただけに、作品の要となるキュリレンコを観客から受け入れさせることに全力を注いでおり、この点だけは成功しています。ヌードや濡れ場はないものの、バスローブ姿で戦ったり、下着姿で拷問されたり、足やお尻のショットがやたら多かったりと、何気ないところでエロさを出してきます。また、戦う女だけに終始しかめっ面なのですが、洗車中の車を盗むシーンでニコっと笑った一瞬の表情が悶絶級にかわいかったり、子供を庇いながらの格闘では優しい表情を見せたりと、キュリレンコの良いところがちゃんと押さえられています。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2017-01-09 18:24:55)
411.  リリーのすべて 《ネタバレ》 
トム・フーパー監督との相性は悪く、どの作品も盛り上げ方がうまくなくて退屈してしまいます。本作も同じくで、例えば前例のない性転換手術を決意するくだりなんて多くの葛藤があり、そこに重大なドラマが宿ったはずなのに、実にサラっと流されるわけです。性転換手術後のリリーが百貨店に就職したことにしても、当時の社会がリリーを受け入れるかどうかという重要局面であったはずなのに、こちらもアッサリと流されてしまいます。また、リリーがヘンリクと浮気しているかもしれない場面をゲルダが目撃してしまったことは夫婦関係における深刻な問題だったはずなのに、こちらは結論が有耶無耶にされてしまう。本作のテーマを扱うのであれば当然盛り上がるべき部分が、ほぼ切り捨てられていることが気になりました。 また、本作は夫婦愛の物語として宣伝されていましたが、果たしてこれが美しい愛の形だったのかは疑問です。ゲルダからはアイナーでいることを求められていたにも関わらず、アイナーは「私はリリーよ」と言ってゲルダの心情や都合をまるで無視してどんどん突き進んでいくわけです。アイナーはアイナーなりに葛藤を抱えていたのならまだしも、自分の都合しか主張しないのだから身勝手にしか見えませんでした。せめて社会的な体裁くらいは取り繕おうという努力すら放棄しているのでは話になりません。それを受けるゲルダにしても、自分の軽はずみな行動で夫を開花させてしまったことへの責任感と、リリーによって画家としてのキャリアが開けたことへの感謝から、運命共同体の如くリリーに協力している様子であり、そこに夫婦愛という要素は薄く感じました。彼女はアイナーの幼馴染ハンスと浮気してるし。 エディ・レッドメイソンは男性役でも女性役でも美しくて驚いてしまいました。そんなレッドメイソンを際立たせるためか、アリシア・ヴィキャンデルは化粧も髪型も地味で、5年前ならケイト・ウィンスレットがやっていたような強い女性役を演じているのですが、今までの彼女が演じてきたものとはかなり違う役どころながら、見事これをものにしています。ヌードも披露して熱演アピールもバッチリ。果たしてオスカーに値するほどのパフォーマンスだったかどうかに疑問符が付かないわけでもありませんが、彼女の演技は本作の重要な見せ場となっています。
[インターネット(字幕)] 4点(2017-01-08 03:28:41)(良:1票)
412.  スペクトル
精鋭部隊が正体不明の敵に襲われ、壊滅寸前にまで追い込まれて籠城戦に突入。そこで生き残っていた少女と出会って脱出の糸口を得るという、前半部分は『エイリアン2』とまったく同じお話です。敵はプレデターみたいだし、監督は80年代のSFアクションが大好きだということがはっきりと伝わってきました。 プロデューサーは『パシフィック・リム』のトーマス・タル、音楽は『マッドマックス/怒りのデスロード』のジャンキーXL、VFXはWETAデジタルとめちゃくちゃメンツが揃った映画なのでひとつひとつの見せ場の出来は良く、WEB配信専用作品とは思えないほどのルックスを誇っているものの、各登場人物の個性が薄くて感情移入の依り代がなかったことから、映画はいまひとつ熱くなりません。さらには、CIAの女工作員とか四足歩行ロボとか、意味ありげに登場しながらもほとんど本編に影響しない要素も多く、監督が好きなもののコラージュに終わってしまったことも残念でした。
[インターネット(字幕)] 4点(2016-12-26 19:07:27)
413.  レッド・ヒル 《ネタバレ》 
現代のオーストラリアを舞台とした西部劇というかなりの変わり種なのですが、これをさほどの違和感なく仕上げた辺りにこの新人監督の手腕が現れています。この人はすぐにスタローンの目に留まって『エクスペンダブルズ3』の監督に抜擢されましたが、確かに光るものはあったと思います。 ただし良かったのは雰囲気作りのみであって、映画として面白かったかと言われれば微妙と言わざるをえません。見せ場に連続性がないためアクション映画としての盛り上がりに欠けるし、冒頭から怪しい人物の目星がついてしまうために中盤以降の方向転換にも意外性がありません。また、主人公と奥さんのエピソードが作品の中核部分にあったはずなのに、この部分にまるで感動がなかったためにドラマ性という点でも外しています。崖から落ちてボロボロ状態で帰宅した旦那を見てもまったく動じず、「あら、顔をちょっと切ったのね」と言って寝てしまう奥さんの鈍さには笑ってしまいそうになりました。
[インターネット(字幕)] 4点(2016-12-05 15:29:59)
414.  ミッシング・ポイント 《ネタバレ》 
有望なイスラム青年が突如としてアメリカ式の利益至上主義から離脱したので「イスラム原理主義へ傾倒したか」と思ってCIAが工作員を送り込んでみたら、実はイスラム原理主義にも染まっていませんでしたというお話。一見すると意味不明な原題(直訳すると「気の進まない原理主義者」)の由来が明かされるラスト5分のみ面白かったものの、そこに至るまでのドラマが長い割に面白くなくて何度も寝落ちしかけました。 物語の背景にアメリカ人教授の誘拐事件を置いているにも関わらずタイムリミットサスペンスとしての方向性は完全に切り捨てられており、回想と会話のみでダラダラと進んでいきます。さらには、主人公のイスラム青年に共感できるような要素が少なかったこともあって、ドラマへの没入感はかなり低かったです。 その国籍と風貌を理由に911直後のアメリカ社会でえらい目に遭わされたとはいうものの、あれだけの大事件の後で敏感になった捜査当局が過剰な行動をとったり、心無いバカが嫌がらせをしてくるなんていうことは容易に予期できるものであり、主人公は母国を離れて暮らしている人間に必要なメンタルを備えていないように感じました。さらには、そんな厳しい環境下でも最大限の支援とチャンスを与えてくれて、国籍ではなく能力を重視して異例の出世までさせてくれた上司に対する不義理もビジネスマナーとしてよろしくなく、この主人公には感情移入できませんでした。 また、主人公がアメリカ社会に見切りをつける決定的な原因のひとつとなった彼女の言動についても、いまいちピンときませんでした。「こんな世の中でもムスリムの彼氏と付き合ってる私」自慢を芸術にして個展で発表するという、一般人には到底理解できない行動で主人公と観客をドン引きさせますが、さすがにこれはアメリカ社会云々の話ではなく、主人公の女選びが致命的に悪かったという結論にしか至りませんでした。『あの頃ペニー・レインと』と比較して顔の大きさが倍くらいになったかのようなケイト・ハドソンの劣化ぶりもあって、この彼女と主人公とのロマンスは不要だったように感じます。
[インターネット(字幕)] 4点(2016-11-18 15:49:03)
415.  フローズン・グラウンド 《ネタバレ》 
映画界における”based on a true story”の範囲はかなり広く、もはや史実とはまるで別の話になっていてもお構いなし。本作もそんな一本であり、80年代のアラスカで発生した連続猟奇殺人事件をモデルとしながらも、事件経過は作品オリジナルです。史実では17歳の娼婦シンディが派出所に駆け込んで証言したことからロバート・ハンセンが捜査線上に浮かび、ハンセンは友人たちにアリバイ工作を依頼するも断られて逮捕に至ったのですが、作品ではシンディの証言が無視されたことから物語がスタートします。また、劇中のハンセンは友人にも恵まれ、警察にマークされて身動きのとれないハンセン本人に代わってシンディの口封じを実行してくれます。ここまでくると実話とは言えませんね。 作品は猟奇殺人の詳細を描くわけでも、捜査の過程を丁寧に描くわけでもなく、クライムサスペンスとしてはボヤっとした出来なので眠たくなってしまいます。一時はシンディと捜査官・ジャックの疑似的な親子関係に焦点が当たるものの、感動的な盛り上がりも明確なゴールもないまま両者のドラマは萎んでいくためこちらも不発。また、ジャックと奥さんとの間には旦那の職業を巡ってのわだかまりがある様子なのですが、こちらも気付けば終わっているためネタ振りのみとなっています。ラダ・ミッチェルという魅力的な女優さんを奥さん役に配置しながら有効活用できていないのだから、もったいない限りです。 さらに作品のテンションを下げているのは馬鹿な登場人物が何人かいることであり、馬鹿が馬鹿なことをしたせいで引き起こされた馬鹿馬鹿しい危機には手に汗握ることができません。シンディはハンセンに命を狙われており、しかも警察からは身を隠すための隠れ家を与えられているにも関わらず、ちょっと気に食わないことがあったからという理由でフラフラと売春街へ戻っていって案の定ハンセンに発見されてしまうのだから困ったものです。そんなハンセンを手伝う友人は、とっくにハンセンが逮捕され、おまけにシンディには捜査官がべったりくっついている状態であるにも関わらず、口封じ目的でシンディの命を狙い続けます。そこまでのリスクを冒してまでハンセンを守ってやる義理とは何なんだと思いますが、とにかく普通ではやらないような行動をとるため見ている側のテンションはダダ下がりです。 ニコラス・ケイジはいつも通りの困った表情で特に代わり映えしないのですが、これが結果的に捜査官役に必要な安定感に繋がっているのだから悪くありません。生理的嫌悪感を抱かせる猟奇殺人鬼になりきったジョン・キューザック、新境地開拓と言わんばかりに体を張ったヴァネッサ・ハジェンズ、ポン引き役50セントのハマり具合もよく、出演陣はなかなか見せてくれます。それだけに、内容の薄さが余計に際立つのですが。かつて『コン・エアー』で全米1位を獲ったコンビが、15年後には落ちぶれてこんな緩いB級映画に出るものかと寂しくなりました。
[インターネット(字幕)] 4点(2016-10-20 21:32:00)
416.  ロスト・ボディ(2012) 《ネタバレ》 
確かに結末には驚かされましたよ。ただしサプライズのためのサプライズであり、心情的にはまったく理解不能で感心するよりも呆れてしまいました。 母親の仇に抱かれ続ける娘と、そのことを止めもしない父親。この時点でもうありえないでしょ。しかも彼女が動かさねばならないのはターゲットの心という不確実なものであり、彼女がどれだけ美人で、どれだけ色仕掛けを使っても、ターゲットが妻との別れを決意し、しかも殺害にまで思い至るという保証はどこにもないわけです。確信部分がほぼ運任せという粗い計画。こんなものに長い時間と娘の貞操を費した親父がバカにしか見えませんでした。事故にでも見せかけてさっさと殺せばいいだろと。 また、冒頭で悲劇とはまったく無関係な警備員に瀕死の重傷を負わせるので、仕掛け人の側にも正義はありません。この点でも冷めてしまいました。
[インターネット(字幕)] 4点(2016-10-20 21:29:19)
417.  THE ICEMAN 氷の処刑人 《ネタバレ》 
映画よりも面白い実話を映画化した作品なのですが、作品は事件のうわべをなぞるだけで面白みのある部分を逃しているように感じました。 この事件を知った人が真っ先に関心を抱く点は、裏で殺し屋稼業をしていた旦那を家族は怪しいと思わなかったのか、そして彼はどんな家庭人だったのかという点であり、そこにドラマやサスペンスが発生したはずなのですが、作品はその点をあっさりとスルー。本来は家庭生活をメインにして殺し屋稼業をサブに回すべき題材でありながら、その逆をやってしまったがために題材の特殊性を作品の面白さに繋げられていません。 また、ヤクザ映画としての一山も作れていません。丁寧な仕事によって20年近くも捜査線上に上がってこなかった主人公が、仕えていた親分に切られたことからフリーで雑な仕事をするようになっていよいよ追い込まれた。捜査当局の手が迫ってくる描写があれば盛り上がったはずなのですが、ここもあっさりと流されるためラストが唐突に感じられました。
[インターネット(字幕)] 4点(2016-10-13 20:06:57)(良:1票)
418.  [リミット]
舞台は棺桶、映る役者は一人のみと極限にまで切り詰められたシチュエーションにありながら、よくぞ90分やりきったものだと感心しました。この手の映画では外部の様子を写したり、回想場面を挿入したりといったインチキをされることも少なくないのですが、本作は本当に棺桶の中だけで全編を完結させているのです。この監督のストイックさには恐れ入りました。 ただし映画としての面白さはまた別の話で、素材の新規性への関心が薄れる30分過ぎ辺りから猛烈に退屈しました。やはり、視覚的な動きのない状況で映画を90分もたせるという試み自体に無理があったように感じます。また、登場人物と観客の両方に頭を使わせることがソリッドシチュエーションスリラーの醍醐味だと思うのですが、本作はそもそもそういった方向性で話が作られていないこともマイナスでした。誘拐犯の目的と正体はすぐに判明することから謎解きの楽しみはないし、主人公に脱出のための打ち手が残されておらずただ救援を待つのみであることから犯人との知恵比べもなく、さらにはほぼ交渉の余地のない犯人であることから加害者と被害者との間の駆け引きもありません。さらには、主人公の手元にあるアイテムが邦題に反してノーリミットであり、携帯のバッテリーやジッポのオイルが異常に長持ちで、棺桶内の酸素が底を尽くこともなく、タイムリミットサスペンスとしての山も作れていません。
[インターネット(字幕)] 4点(2016-10-07 15:43:31)
419.  LOOPER/ルーパー 《ネタバレ》 
【1周目のタイムライン】何らかの理由で邪悪に育ったシドがレインメーカーを名乗って闇社会を掌握。過去にエイヴを送り込んでルーパー制度をスタートさせる→2周目へ 【2周目のタイムライン】エイヴが幼少期のジョーと出会い、ジョーがルーパーとなる。ヤングジョーは2044年にオールドジョーを処刑してループを閉じ、奥さんとの余生を楽しむが、2074年にレインメーカーの手下に奥さんを殺されたことで激怒。幼少期のレインメーカー殺害を目的として2044年へタイムスリップする→3周目へ 【3周目のタイムライン】処刑を生き延びたオールドジョーは2044年の世界で後のレインメーカーであるシド少年を探し始める。他方、ヤングジョーはオールドジョーに先駆けてシド少年と接触し、シドの人格形成に良い影響を与える。このタイムラインでは、恐らくシドはレインメーカーにならない。 ******************************************************************************** こうして書き出してみると、タイムパラドックスの処理はかなりいい加減です。平行世界の概念を採用するのであれば、未来からきたジョーが2044年で何をしたところで彼の生きるタイムラインは変わらず、レインメーカーのいない別のタイムラインが発生するだけなのですが、他方で過去の自分を傷つけられると同一タイムライン上にいる未来の自分も影響を受けるという描写があって、もうメチャクチャ。SFとしてはかなりの事故物件です。 ドラマ面においては、1周目のシドがいかなる理由でレインメーカーとなったのかが有耶無耶にされている点が問題であり(製作者のホンネとしては、オールドジョーに母親を殺害されたことがシドの人格形成に決定的な悪影響を与えたとしたかったのでしょうが、それでは理屈が通らなくなる)、因果の発端部分が曖昧であるためドラマの説得力が失われています。ルーパー制度の説明も強引であり、2074年の世界ではナノマシンが発達して殺人がほぼ不可能だから、殺したい人間を過去に送り込んで殺害させているということにはなっているものの、だったらオールドジョーの奥さん殺害は一体何だったんだとツッコミを入れたくなってしまいました。そんな感じで基本設定はかなりボロボロなのですが、その一方で妙に凝った設定も同時に存在しており(30年分のインフレを考慮してかルーパーへの報酬は貨幣ではなく金や銀で支払われている、時間軸への干渉を抑える目的でエイヴは地下の拠点で引きこもり生活を送っているetc…)、なんとも歪な作りの作品だという印象を受けました。 お話しはズバリ『ターミネーター』。ただし、カイル・リースに相当する役割を現在の主人公が、ターミネーターに相当する役割を未来から来た主人公が担うという点が本作の新機軸であり、この監督は突拍子もない話を思いついたものだと感心しました。ただし、若い自分と年老いた自分が対立するという一番面白くなりそうな点がさほど掘り下げられておらず、不完全燃焼に終わっています。例えば、ヤングジョーがシドを守ろうとしても、記憶を共有しているオールドジョーにことごとく先回りされてしまう等の展開を入れてもよかったと思うのですが、後半はただのジョゼフ・ゴードン=レヴィットvsブルース・ウィリスになってしまうので面白くありません。クライマックスにしても、暴力の連鎖を断ち切ることの難しさを描くのであれば、ヤングジョーも連鎖の一部にしなければならなかったと思います。ただの傍観者だったヤングジョーが死ぬことで問題解決では、ちょいとお手軽すぎるような気がします。
[インターネット(字幕)] 4点(2016-09-12 21:36:53)(良:1票)
420.  ブラック・スキャンダル 《ネタバレ》 
元はバリー・レヴィンソンの企画だったものの降板し、代わりにメガホンをとったのがスコット・クーパー。この人はクリスチャン・ベール主演のクライムサスペンス『ファーナス/訣別の朝』を撮った監督さんなのですが、『ファーナス』は雰囲気こそ良かったものの、作品の要となるようなインパクトの強い見せ場や、2時間に渡って観客の関心を引き続ける強力なストーリーテリングを生み出せておらず、致命的な欠点はないものの、さして面白くもないという凡作に終わらせた実績を持ちます。この監督が、同じくクライムサスペンスである本作をどのように仕上げるのかについては不安が大きかったのですが、案の定、『ファーナス』と同じ傾向の作品となっています。各構成要素は悪くないのだが、2時間を引っ張るだけの強力なものがありません。 最大の問題は、監督が一体何を作品の主軸に置いているのかがよく分からないこと。ジョニデ演じるヤクザの成り上がり物語なのか、武闘派ヤクザの狂犬ぶりなのか、ヤクザとの癒着を暴かれそうになって背中に火が点いたFBI捜査官の転落劇なのか。元となった事件が10年以上に及んだだけに構成要素はパンパンであり、どのエピソードを落とすかという取捨選択が必要だったのですが、監督は乱雑にエピソードを詰め込んだ結果、個々のエピソードがぶつ切り状態で2時間を貫く大きな流れを生み出せていません。 そもそも、誰の視点で語られる物語なのかが不明確。FBIの事情聴取に応じる下っ端ヤクザが冒頭に登場するため、『グッドフェローズ』のレイ・リオッタのように彼がストーリーテラーになるのかと思いきや、冒頭を除くとこのヤクザは空気同然の存在感。その後、ジョニデの元右腕だった殺し屋が語り手として登場したり、ジョニデ自身の家族エピソードになったりと視点がめまぐるしく変動し、結局、感情移入の寄り代がないため物語に集中できないのです。せっかく豪華な出演者を揃えたのにこの出来は残念でした。スコット・クーパー、私の中の要注意監督の仲間入りをしました。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2016-08-10 00:42:35)(良:2票)
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