401. サボテン・ブラザース
ああー。ばかだー。もう恰好から馬鹿だもん。決めポーズで殺しにかかってくるもん。 屈託度は限りなく低く、純度の高いバカ。 無駄に良い身体のキレとか意外と練られている脚本とか、馬鹿をやるために投入されている労力がなんかもう尊く感じる。 観終わって脱力しつつ清々しくなっている自分がいました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-10-17 17:04:08) |
402. ホテル・ムンバイ
《ネタバレ》 ホテル・ムンバイの中に連れて行かれたような凄まじい臨場感でした。回廊の中を逃げ惑い、非常階段を駆け下り、背後からあるいは頭上から雨あられと銃弾を浴びせられるような。実話だということで恐ろしさは五割増し、ダイ・ハードを観ていた時の‶ハラハラを楽しむ”心の余裕はゼロです。 そう、マクレーンのような絶対的ヒーローが実話にはいないのです。アーミー・ハマーが手縄をこっそりほどくことに成功しても活躍には至らない。「元」プロ軍人のロシア人ですら丸腰では戦えない。地元警官二人も犯人狙撃に成功しない。この ‶上手くいかなさ”が痛いほどに現実的なのです。 それなりの存在感を与えられていた人物が容赦なく死んでゆく。誰が生き残るか全く読めない。テロのリアルな恐ろしさがここにあります。 犯人らの余りに非道な行いには震えるほどの怒りを感じるけど、こんな凶行に及んだ彼らの目線も織り込んであって考えさせられます。絶望的な格差社会の底辺で貧困にあえぐ彼らの家族。希望したレストランが満席なくらいで機嫌を損ねる金持ちがいる一方で、水洗トイレすら知らずに育つ若者がいる。そしてそんな貧者の心に宗教をもって入り込んで人殺しの駒に使う指導者。悪いのは誰なのか。単純に答の出せない今世紀の大問題をも提起した作品でした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-10-16 23:17:26)(良:2票) |
403. 死霊館
《ネタバレ》 王道を行く正統派ホラー。や、これは怖いです。すっかりホラー免疫がついて多少のことではビビらない齢になりましたけど、夜中に観たことを後悔しましたもん。 監督、上手いですねえ。「静」と「動」の切り替え、そのタイミング。人間が生理的に怖く感じる瞬間を正しく突いてくる。出るぞ出るぞ、と身構えていたら斜め上の演出で出てくる。手「だけ」なのにあんなに怖い。 引き画も多い。遠くを見通せるってことは視界に捉える情報量が多いせいか、妙に緊張します。 ホラー作品には珍しく人物をきちんと描いているのにも好感します。5人の娘さんらは可愛くて素敵な家族だなと思いますし霊感夫婦もキャラ立ちがしっかりしている。 ‶生活している市井の人たち”の姿は隣人としての共感を呼びます。この作品がただのお化け屋敷映画にならず、ちょっとした「格」すら感じさせる所以かと思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-10-14 22:36:44)(良:1票) |
404. 私は告白する
《ネタバレ》 殺人だなんてえらいことを告白された神父、さてどうしましょうと思っていたら何やら女絡みのワケありそうな過去。ほうほうそれで?とすっかり野次馬気分で鑑賞、結局女とは潔白の仲ということが判明し(そりゃM・クリフトだからね)なーんだつまんねえと全く本筋から逸れた観方をしたのはわたしだけでしょうか。 痛くもない腹を探られたローガン神父、ずっと片頭痛を抱えた顔してましたけど表情が乏しいんで苦悩してはる、とはあまり伝わんなかったです。すいません。 ドイツ人の親父はなんでわざわざ告白したんだろ。迷惑千万、悪魔みたいなやつだな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-10-12 23:17:11) |
405. 30年後の同窓会
かつて戦場で青春を共にした三人。時が流れてすっかりオヤジになったそれぞれの佇まいが渋いです。居るだけで画が持つ、ベテラン俳優の風格を感じます。 思わぬ成り行きで数日間を共に過ごすうち、それぞれの心にわだかまっていた過去を清算しようと思い立つというのは中年期のドラマとして良くある流れではありますが、各人のキャラクターが良いので一緒に付き合おうという気になります。 声高に力を込めて何らかのメッセージを伝えようとする映画ではない。かといって、ノスタルジーに浸るだけの切なさダダ洩れ作でもないです。 まだまだセピア色に染まるには早い彼ら。でも重ねた歳月の重さと深みが感じられる演技にじーんときました。彼らと同世代なら尚しみじみと良い映画だなあと感じられると思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-10-12 00:08:24) |
406. ふたりの女王 メアリーとエリザベス
《ネタバレ》 いやー、史劇とはいえ思い切った脚色で。メアリーの名誉を挽回すべく忖度てんこ盛りでちょっと苦笑しました。リッチオが男色家でダーンリーとデキていたとは、こりゃあまりにも。無いでしょ(汗) 歴史上では無かったはずのエリザベスとの対面、後世の作家はこれやりたがりますね。権謀術には百戦錬磨のエリザベスが出向くわけない、と個人的には思うけども。会ったとしてもメアリーに自分のコンプレックスをさらけるとは全く思わんし、この脚本とはあまり気が合わなかったです。 お話はともかくも、キャスティングと美術は良かったです。シアーシャの透けるような肌感はメアリ・スチュワートの肖像画が伝える印象に近いですし、何より鼻筋を盛って容貌を変え、鬼気迫る白塗りメイクまでもこなしたM・ロビーのエリザベスは見事。 有名なお二人ゆえこのあたりの歴史出来事はある程度周知のことであろう、との前提で作られているようです。人物紹介も親切でないし時間のはしょりかたも大胆。なので「16世紀・メアリーとエリザベス・確執」についての入門編ではありません。中級者(?)向けですね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-10-07 22:33:51) |
407. ワルキューレ
《ネタバレ》 これは、トム・クルーズものという先入観を良い方向に裏切る秀作でした。歴史の出来事ゆえ、誰もが結末を知っている出来事だけどちゃんとハラハラできましたもん。 B・シンガーの潔いのは‶ワルキューレ作戦”を歴史ドキュメントでも反乱者らの人間ドラマでもなく、サスペンスの素材として扱ったこと。ナチに対する批判も処刑された将校らの思想背景も、この映画からはうかがえません。 ヒトラー暗殺作戦は44年時のミッション・インポッシブル。人物をシンプルに駒としたことで、トム・クルーズもボロを出さずに乗り切った感があります。 トム・クルーズはいつものトムでしたけど、周りを固めるベテラン英国俳優の面子が激渋なことこの上ない。当時のナチ高官にもかなり面差しが似ているとは、これいかに。怒涛の名演技ラッシュは見ごたえありますし、衣装の精密さで当時のナチス軍服の美麗なことも際立ちます。ただ、やっぱり言語は丸みのある英語でなくガッガッ、というドイツ語で聞きたかったです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-10-04 23:37:57) |
408. IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。
《ネタバレ》 怖がらせ方が一作目と同じ。怖い顔のピエロは子どもならビビるだろうけど、今回は大のオトナが相手だからねえ。奴の凶悪さにはともかく、見た目を怖がる40才はいないんじゃないかな。27年前に経験済みなわけだし。 というか、ITの一作目だって別に怖くはなかった。でもキングお得意のジュヴナイル作品として良くできていた。十代の喜びも心の痛みも、友情や困難への挑戦というイベントの中で瑞々しく表出されていて、個人的にはそこが高評価のポイントでした。 ティーン抜きのITは見どころが無いよ。おじさんの苦悩は少年のソレと違って客はときめかないもの。 もっとも、ピエロのやっつけ方には意表を突かれました。「自分を何者と思うか」、自我の揺らぎを弱点と見切るとは。ビルの変貌ぶりに次いで、びっくりしたトコです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-10-03 23:21:38) |
409. EXIT
《ネタバレ》 ハラハラドキドキ、涙と笑いをまぶした定番通りの娯楽作です。 「ガスから逃げる」に加えて「高い所に限る」の条件が一層サスペンスフルにさせてるわけで、状況設定のアイデア勝ち。 主人公が特段超人ではなく‶ふつうの”一般人にしているのも、観ている者の「あるある」感を誘います。今どきは男の人も窮地で泣く。ついでに姉という存在にも劇弱。惚れてる彼女相手に小さい見栄を張ったりと、等身大の若者像が好ましいです。 人物らの生活感にリアリティがあって今の韓国の家庭ってこんな感じなんだなー。お父さんにTVのチャンネル権は無く、還暦のお祝いに親戚が集合するんだ、と興味深く観ました。義兄に気を遣い、親戚にはまたもや見栄を張らざるを得ず、どの国も付き合いは大変だ。 危機をどう脱するかが本作の見どころですが、むしろドラマを構成する人間の描き方の巧さが印象に残りました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-10-01 00:04:07) |
410. グリース
ミュージカル映画の中でも屈指の明るさと屈託の無さ。何も考えてなさそうな高校生。特にドラマの起伏は無いのね。脚本作家はある意味ラクですね。 古くはあるけどカラフルで。 野暮ったいけどダンスのキレは一流で。 ポップな画の演出センスは今でも通用する場面が多々あります。 それにしても当時はこの老けたキャスティングに異論は沸かなかったのでしょうか。ちょっと記憶にない。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-09-28 23:09:04) |
411. M:i:III
スパイ映画に期待する派手さと華やかさが揃っていて、奇想天外な‶スパイ御用達小道具”にも説得力を持たせる力技もきちんと備わっています。 ストーリーを切らずに常に話が動いている、それでいて置き去りも無く混乱もしない。エイブラムスの監督手腕の高さを感じます。 いつでもどこでもトム・クルーズ、演技力でははるかに格上のP・S・ホフマンを向こうに回してマイペースに安定のトムっぷりです。いつにもましてよく走り、その走り姿もキレがあって日頃の節制が伺え、スターたる所以を明らかにしたトムでありました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-09-27 23:33:54) |
412. 木と市長と文化会館/または七つの偶然
《ネタバレ》 ロメールが恋バナから離れた珍しい一本。好いた惚れたでなく、政治信条が今作人物らをして熱く語らせるテーマ。 ネタは違えど「人間というのはこういうもの」と遠巻きに眺めるようなロメール視線は相変わらずです。批判もせず絶望もせず。正直で雄弁なのはいつも通り。まあ今作も皆よくしゃべります。それ受け答えになってるの?と思うような自己意識中心なディベートっぷり。フランス人てめんどくさいな。 田舎の街での箱もの建設を廻って賛成派と反対派の主張が繰り広げられるけれど、この手につきもののリベート・汚職とかの生臭さは皆無。長々と論争してもケンカにはならない。そこはフランスの大人の流儀でしょうか。市長、記事に不満だったのに当事者の美人記者と仲良くなってるし笑。 いかんせん政治の話なのでいつものロメール恋愛譚の軽快さが無いのはやっぱりちょっと物足りなく感じます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-09-23 11:48:19) |
413. フリー・ガイ
《ネタバレ》 ゲームといえば2Dのマリオまで、のおばさんでもついていけたのがまず嬉しい。細かい業界ネタは拾えなかったかもですけど。 AIが自我を持つというとこれまでは人類の脅威になるシナリオばかりでしたけど、日頃から撃たれたり投げられたりばかりのモブの人たちに焦点を当ててちょっとハートフルな‶人間”ドラマに仕上げています。なかなか斬新な発想ですし、初期の人格を演じるR・レイノルズがまたうまいこと「他意の無い」素朴な顔つきでAIモブにぴったりでした。それにしてもあの青いシャツの無個性発露ぶりは凄まじいですね。アレを着ればキアヌ・リーヴスですらモブになりそう。 オリジナル開発者と会社側とAIの三つ巴になるのは想定内で定番の流れと言えるんですが、所々予想の斜め上を展開してみせるのが面白かった。ビデオを盗みに入った先の警備役チャニング・テイタムには笑わしてもらいました。プレイヤーである22歳のニートの彼共々。 かなりの数のキャラクターが登場してそれぞれにちゃんと仕事をさせた脚本は見事ですし、なにより画に携わったCGスタッフの労苦は察するに余りありますね。 [映画館(字幕)] 7点(2021-09-17 23:07:13)(良:1票) |
414. 暗殺のオペラ
《ネタバレ》 1ショットがどれもこれも名画のごとし。遠近画法のお手本にしたいような、見事な構図。木々の緑と石畳の白、女が生ける花束の強烈なオレンジ色。監督の美的センスが今作も炸裂していますが、ストーリーの方ははらんだ謎の緊迫度とか終幕の際の衝撃など「暗殺の森」の方が卓越していると思います。本作はやや抽象的ですもん。殴りに来た奴、小屋に閉じ込めた奴、どれもはっきりしないしラストシーンに至っては全部が幻だったかのような曖昧な幕切れです。 なにより「ええー?」と思ったのはアトス(父)が裏切り者だった、というネタバレ。そんな、そこは脚本的にもあくまで彼はヒーローであるべきでは? 仲間のおっさん(不思議と時代設定を無視して皆現在の姿で登場するのですね)にボコボコに殴られるアトス(父)はものすごくカッコ悪く、それまで構築してきたベルトルッチ美意識ワールドの世界観すら破壊したように感じたのですが。どっちらけ、ってやつです。アトス(父)が罪滅ぼしに提案したのが暗殺に見せかけた狂言、てのもちょっと理解に苦しむな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-09-16 23:24:53) |
415. ドレッサー
《ネタバレ》 いやあ劇団の内部てのもなかなか人間関係がエグイですな。そりゃあそうか人生の殆どを芸事を極めることにつぎ込んできた人間が円満な社会性を身につけてるわけないか。 人生の晩年を迎えて扱いづらいこと究極の名優と、その付き人。この二人のやりとりが出色。猛獣使いの如き付き人ノーマンの、そのムチさばきが巧みです。メンタル不安定の老俳優をなだめたり叱ったり、オネエ仕草も勇ましくばしばしと畳みかけます。 トム・コートネイが、芸術に殉じる一員として涙ぐましいほどの忠実さを体現しています。一方で、名優の唯一の理解者であるというプライドや独占欲も時折顔を覗かせます。若い女優が近づいてくると見て取るや、「(抱き上げたのは)軽い女優を欲しているからよ」と言い放つ。その勝ち誇った表情には参りました。 そんな健気なノーマンの献身が、彼の望んだように返って来ないラストシーン。ああー、人の世にありがちな苦い顛末ですけど・・、残酷ですよねえ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-09-14 23:46:45) |
416. ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ
人間社会に起こる複雑な案件~感情、宗教、病気、経済諸々をまとめてドラマとして成立させているのですが、これが「あるある」に感じられて共感度の高い出来になっています。コメディアンである作り手のセンスが生き、現実のキツさを緩和させるようなタッチで描かれているのも心地よいです。 エミリーの両親がね、良いんですよ。ほどほどに正直で人間味があって。キリキリとんがる御母堂をなだめる一方のお父さん。よくある画で、微笑ましい。お母様は久々に見るホリー・ハンターでした。やっぱり上手いなあ。 ガールフレンドのエミリーはキュートで、友人や両家の家族らが皆悪意の無い普通の人たちで物語に入っていきやすかった。エンドロールが流れてすぐに小さいサプライズが仕掛けられています。全く情報として耳にしていなかったので、驚いてそしてとても嬉しくなりました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-09-13 23:40:00) |
417. ミッドサマー
《ネタバレ》 これまでのホラーの文法がことごとくハマらない演出が目を引きます。暗さは必須。なので夜に何かが起きることが定番でしたが、本作はほとんど昼間に事が起き、というか白夜の北欧が舞台なのでそもそも「夜の暗さ」をハナから排除しています。 廃墟とか不潔感が一切なくて、明るく清潔。色とりどりの花も木々の緑も人の笑顔も(一見)美しい。この白さ、光源の多さが暗がりよりもいっそう鮮血を禍々しく見せてしまうアンビバレンツ。 ヒロインも絶叫しません。恐怖で声が出るのは、‶それが怖いものだ”と「瞬時に」悟るからなのですね。今作ではF・ピュー演じるダニーは冒頭からじわじわと精神を追い詰められてゆきます。彼氏が信頼に足る人間ではないのではないか、参加者が減っている、変だな変だなと思いながら叫ぶ機会を逸しているのです。 そう、叫ぶというより慟哭する場面が終盤にあります。彼女の嘆きに共鳴する女たち。この芝居がかった正常とは思えない共感反応。親切そうな彼女らが実はガチでヤバイ、と気づいたときはすでに我々もダニーも時遅し。ラスト、完全に精神がぷっつりと逝ってしまったダニーの表情をなすすべなく見つめるしかありません。 監督はかの「ヘレディタリー」で趣味の悪さを明らかにしていますが、今作ではさらに見せ方が洗練されました。美術も一級です。 F・ピューは素朴な顔立ちで下半身がしっかり体型の、ぱっと見骨太健康女子です。それが北欧の白く華奢な腺病質ぽい連中に取り巻かれて、さしもの健康な肉体がじわじわと殺されるように見えました。フローレンスの起用は残酷さを際立たせるのに上手く機能したように思います。 アリ・アスターはもちろん「観なきゃ良かった」系の映画監督ではあるけど、テーマは抽象的ではなく分かり易いホラーです。観る者にやな思いをさせたあげく、自己満足のみの哲学系作品よりはよほど親切と言えるでしょう。現代ホラーの最高点に置くことのできる監督と思います。嫌だけど。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-09-10 23:58:50)(良:1票) |
418. ファイナル・スコア
《ネタバレ》 満員のスタジアムの裏方で、テロ・グループに対して孤軍奮闘する男。展開はもたつかずアクション場面も見せ方が巧い。画の使い方が良く、これぞスペクタクルと言いたくなるシーンは手に汗握ります。でっかいスタジアムを遠景で捉え、その狭い屋根の上を走るバイクの画ヅラには肝が冷えました。 しかし困ってしまうのは、この設定ではどうしても「ダイ・ハード」が想起されること。何十回と観た、かの名作とは主人公のキャラ立ち具合、状況の必然度、展開をどう二、三転させるかそのセンス、まあどれもちょっとづつ劣ります。友人の娘も可愛げが無いし。比較しながらというのはあまりホメられた鑑賞態度ではないけれど、だって状況そっくりなんだもん。 ただ、「ダイ・ハード」に匹敵するくらい良かったのは主人公をサポートする脇キャラ。ひと目で移民と分かるイスラム顔の彼、「巻き込まれ型の相方」の定番通りぼやきっぱなしでいい味出してます。クライマックス、「イスラム」を武器に(やけ気味に)スタジアムの客を避難させた場面は笑ってしまいました。いや、笑っていいんだかなんだか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-09-07 22:51:42) |
419. マトリックス リローデッド
《ネタバレ》 映像の斬新さ、設定の奇想天外なこと、ビジュアル完璧の主人公、と‶マトリックス”は1作目で全ての美質を顕し尽くしているので、その続編となるとハードルの果てしなく高いこと。どんなシリーズものでも2作目は苦心しがち。人物、ロケーションを増設し風呂敷を広げ、視点も増やした結果とっちらかった出来になってしまうものです。 本シリーズもその類に漏れず、制作の苦心惨憺ぶりが伝わってきます。「増やしがち」なのが続編の宿命とはいってもスミスの大量発生の画など見たかった客はあまりいないと思われます。 モーフィアスが己の信念の論拠としていた預言者までがAIの手によるものだとは思い切った改変をしたものと思いますが、それとて三部作通しての計算尽くしの脚本というよりは苦し紛れの‶びっくりアイデア”にすぎないのではないでしょうか。 三作目に対しては期待よりも不安が募るばかりです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-09-06 23:35:14) |
420. go(1999)
《ネタバレ》 多視点モノの秀作。傑作とまではいかないのは、一つ一つの話が他愛なさ過ぎるから。サイモンパートなんか馬鹿なうえ品も無い。お前らなんかどうにでもなれ、と突き放したくなる連中だもん。 薬の売買絡みでヤバイことになりそうな女の子がするっと無事に切り抜けたり、車に撥ねられたけどケガで済んだりとか、演出は怖いのだけどオチがユルイというセンスはなかなか絶妙に感じます。 ゲイの役者カップルのパートがユルさMAXで楽しかった。警官夫婦の妙な態度がまさかのマルチ勧誘(笑)。ひょっとしたらコレが銃や麻薬なんかよりコワいかも。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-09-03 22:56:46) |