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 > すかあふえいす さん
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プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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401.  千と千尋の神隠し 《ネタバレ》 
車の後部座席で花束を抱えて仰向けになる少女。窓の外にアカンベー。  見知らぬ森の鳥居、大木、ほこら?薄暗い道。 両親の好奇心に振り回される娘。まるで童心に還った子供のように。遺跡を探索するようなピクニック気分。それを笑って“迎える”ように立つ像。謎の建物の黒い、異様に暗い穴に吸い込まれていく人々。  地面をガリガリ削るように走る車の躍動感。そっから竜が飛ぶわ化物が駆け回るわ、相変わらずそのスピードへのこだわりにビックリだ。そういうシーンの数々を見るだけでも、方向性とかテーマとかそんなものどうでも良くなりそう。  演技はそんなに悪くないと思う。これ以降のジブリ作品が特に酷いというだけ。  菅原文太の兄貴の演技、夏木マリの素晴らしい演技を聞くだけでもそんな事はどうでもよくなる。  無人の市街地の不気味な静寂。相変わらず食欲をそそられる食い物の数々。 サンプルのような山盛り料理と、二人が食べるぷりぷりした質感の違い。その違和感が、この映画そのものの違和感を物語る。度々聞こえる列車の音。  食いだしたら止まらない止められない恐怖、謎の少年の警告、かけられる“呪い”、人質を助けるために奪われる名前、個性。溶けて“ゼロ”になりかける肉体と心。  それを取り戻すために少女は“千尋”として様々な事件を乗り越えていく。  劇中の人々は、外見も中身もメチャクチャ変わっていく。取り戻す名前と自分、家族。 劇中の人々は、外見も中身もメチャクチャ変わっていく。あの「カオナシ」すら自分を見つめ直そうとするのだから。 そんな人々の中で、魔女はあまり変わらない。それは正反対の性格を持った“もう一人の自分”が既にいたからなのだろうか。必要悪、絶対悪としての存在。それが揺らいでしまう事への恐れ。夏木マリの演技力に恐れ言った。  そういう存在がいなかった「ハウルの動く城」をめぐる魔女は、おどろくほど様変わりしてしまう。   車を覆う草木だけが経った時間を語る。遠のいていく穴、何とも言えない寂しさ。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-14 21:31:52)
402.  悪い奴ほどよく眠る 《ネタバレ》 
本当に「悪い奴」は、電話の向こうで高いびき  冒頭の結婚式の場面。 華やかな場面の裏で、マスコミの陰口が交錯するシーン。表と裏、光と影。 花婿を脅しにかかる兄貴も面白い。照れ隠しだね。 謎のウエディングケーキ。ここから「復讐者」と「悪い奴ら」の戦いが始まる。 それで結婚式が終わった直後に次々と起こる汚職事件の顛末。 新聞紙の山、警察に引っ張られる役人たち、ある者はおとなしく捕まり、ある者は車にと・・・凄いな。 だがこの中に「復讐者」はいない。 意外な人物がソイツだったとはビックリ(まああの貫禄じゃあ「ああコイツだな」と思うけど。予告編なんか余裕でネタバレだよw) この映画は「復讐者」が誰か解らない所から始まるから面白いのに。 家庭では温厚な父親も、裏では悪事を引き受ける実行人だ。 互いの思い遣りが仇になっていく・・・残酷なもんだ。 ラストシーンは最高にバットエンドだが、何故だか納得してしまう。 やりきってるからな。
[DVD(邦画)] 8点(2014-12-14 21:30:09)
403.  A.I. 《ネタバレ》 
キューブリックが本当に描きたかったもの・・・それは人間と機械が水と油で終わるという話だったのか、それとも立場を超えた絆を描きたかったのか・・・。  それをスピルバーグが受け継ぎ、見事に「ブッ壊してくれた」。  いや壊してくれてよかったよ。 海の中で独りぼっちは悲しすぎる・・・くどいよ。最高にくどいし説教くさい最後だったよ。  でもあんな終わり方は卑怯すぎんだろうがよおおおおおおっ!!!  クソがー涙が止まんねえんだよバカヤロウー!!
[DVD(字幕)] 8点(2014-12-14 21:15:00)
404.  忠魂義烈 実録忠臣蔵 《ネタバレ》 
「実録物」の元祖?とも言えるマキノ省三生誕50周年記念の作品。 生涯で実に400本以上映画を撮ったと言われるマキノ省三だが、残念な事に現存するフィルムは数本のみで、しかも1時間以上残るフィルムは「雄呂血(製作総指揮)」「忠魂義烈 実録忠臣蔵」と「百萬両秘聞」ぐらい。 息子の正博(雅弘)との共同作「浪人街」も総集編として1時間足らずのフィルムが残るのみだ。 幸いにも「百萬両秘聞」は前後半合わせて100分以上も現存する貴重なフィルム。コチラも是非とも見たい作品だ。 前・後編それぞれ1000円もしないので、とてもリーズナブルな値段で入手できる。 本作「忠魂義烈 実録忠臣蔵」は2時間以上にもなる当時としては大作だったらしいが、マキノ省三は作品の出来に不満を洩らしてらしく、フィルムも編集中の火災でネガの半分を失ってしまう。 残ったフィルムを何とか繋ぎ合わせ、終盤の討ち入りシーンも焼失したので急遽正博が撮影し直した。 そのため「忠臣蔵」の1時間ダイジェストという出来だが、終盤の迫力ある戦闘は凄まじいものだ。 出演に嵐長三郎、端役に月形龍之介や山本礼三郎など後の実力者たちも名を連ねている。 本作は古典的な「忠臣蔵」のストーリーを映画化。 大胆なカメラワークで迫力あるドラマを魅せる。 中盤の忠臣たちが一斉に抜刀して誓を立てる場面。 カメラでぐるりと収めるようなショットが面白い。 吉良を欺こうと女遊びにふける内蔵助。 女人衆が「うきまさ」または「うきはし」の文字を作る。 つまらなくもないし、特にこれといった突き抜けるほど面白いというワケではない。 ただ終盤の戦闘。 正博が撮り直した場面だが、吉良邸に押し入る浪士たちの群れ、一斉に白刃を抜き討ち入る迫力は凄い。サイレント特有の超高速戦闘。 目にも止まらぬ速さで刃を交わせ敵を斬り倒していく。 修羅場と化す吉良邸、偽装工作と動かざる「額の傷」。 ラストシーンはフィルムの都合もあると思うが、あえて橋の上を渡る浪士たちの後ろ姿で締めくくる場面が良い。 逃れられぬ死の運命・・・最後まで戦う事を選んだ男たちの“死の匂い”を感じた。 今でこそ「忠臣蔵」は史実より脚色された「虚構」であり「神話」状態だが、主君の無念に体を張って応えた義侠心は捨てがたい。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-14 21:11:40)
405.  メトロポリス(1984) 《ネタバレ》 
熱狂的なファンだったジョルジオ・モロダー。 コイツが見事にやらかしてくれた。 オープニングの強烈なシンセサイザー、補完部分の斬新なカットは素晴らしかった。  ただ本編の曲とシーンが噛み合っていない部分が多い。 「悪い」のではなくて「合わない」のだ。 「古典」に「現代調のロック」を付け足したような感じ。 労働者が交代していく場面なんか、まるで労働者が心の中でブルースでも歌っているようなシーンになってしまっている。 歌えばいいというものじゃない。 他のシーンも似たようなもんだ。  着色にしても中途半端というか、色のチョイスがおかしい。 競技場でフレーダー?たちが走る場面のカラー化は実に良かった。 ただ、マリアが踊るシーンなんか薄紫+ピンクな感じのライトで「何処のストリップ劇場だよ」とツッコまざる負えない。 おいこらモロダー。  つうかラストが尻切れトンボ・・・当時この部分はまだ発見されていなかったのだろうか?  まあモロダー版よりも酷いカットの仕方をされたバージョンも多いのだが、本作を再び注目させたという点では大いに評価しなければならない。  でもどうせ着色するなら全部塗れよ・・・フルカラーのメトロポリスも見たくなってしまう欲求不満の出来だった。
[DVD(字幕)] 8点(2014-12-14 20:42:03)
406.  羅生門(1950) 《ネタバレ》 
角川の「デジタル完全版」が素晴らしかったのもありこの点数。画質と音の聞き取りやすさが素晴らしい。黒澤の映画はクライテリオンとかこういう類に限るね。 さて、この映画は芥川の原作小説を読んでいないと恐らくチンプンカンプンで作品の醍醐味を楽しみにくいかもしれない。 検非違使の役人は画面には出てこない。何故なら聞き手は検非違使ではなく、視聴者その者だからだ。多種多様に別れる証言。どれが真実なのか?はたまた全部嘘なのか。 己の蛮勇を誇る多襄丸の証言、辱められた悲しみを訴える女(真砂)の証言、妻の本性を知り、何もかも失った悲しみを訴える女の夫(金沢武弘)の証言。それぞれの「真実」と「虚実」。みんな言うこと成すことが食い違っている。 唯一共通する事・・・それは多襄丸がけし掛けた事、女が犯された事、女の夫が殺害された事。それぞれの怒りと悲しみ。ただ、それぞれの証言が全て「自分が殺した」で結ばれる。しかも自分を庇う証言ばかりだ。 そこに挿入される4つ目の「証言」。それぞれの証言に近いようであり、やはり全く違う。杣売りの言う通り「さっぱり解んねえ」。もうわけ解んねえ。 それに、それぞれの証言も何処か違和感が拭えない。 世の中嘘だらけだ。 映画も嘘にまみれている。 ラストシーンだって、何処か嘘くさくもあるし、偽善的なのかもしれない。 ただ、全部が全部嘘で出来ているというのも疑問だ。 一つくらい真実があるからこそ、世の中何とか動いているのではなかろうか。 だからこそ、最後の行動くらいは信じてやりたい。 一つくらい泥の中に咲く「蓮の花」が一輪あっても良いと俺は思いたい。  独特の殺陣も面白い。 素早く剣を抜き激しく太刀を打ち合う殺陣。「七人の侍」のようにリアルでも、「用心棒」のようなぶっ飛び具合もまだ成りを潜めた形だ。 太刀同士を鍔迫り合わすのは古典的な剣戟であろう。 往年の剣戟映画「雄呂血」などの「リアルっぽい」殺陣。 ここで本当にリアルなのは、互いに剣で間合いを図り、右手には太刀、左手には盾兼牽制用の鞘。まるで西洋のレイピアで突き合うかのような攻防。そして生きるために必死に逃げ惑い、砂や土を投げて這いずる場面。「酔いどれ天使」を彷彿とさせる演出。多少荒削りで長いシーンだが、見応えはある。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-14 20:38:51)
407.  CUBE 《ネタバレ》 
冒頭から胃を締め付けられるような作品だ。  彼らは何故ここにいるのか。 ここは何処なのか。 そしてこの「キューブ」は何なのか。  解らない事だらけの恐怖、飢えと焦り、疑心暗鬼、「間がさす」瞬間の恐怖・・・密室でこだまする人間の狂気をたっぷり味わえる。   キューブ内の様々な仕掛けで凄惨な最期を迎える人々。とにかく息苦しく油断ならない映画だ。疲労感がハンパ無い。 その謎のまま終わる恐怖を「キューブ ゼロ」で総て種明かししてしまうのは最悪と言っていい。こういうのは何も解らないからこそ面白いのに。 まして「ソウ」みたいに犯人がベラベラネタ晴らししてしまうのも台無しだ。その点では、ワケの解らないまま死の恐怖にさらされるこの映画の方が遥かに面白いのです。  DVDに収録された短編「Elevated」も怖かったっす。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-14 20:29:20)(良:1票)
408.  拳銃無宿(1947) 《ネタバレ》 
フレッド・ジンネマン「真昼の決闘」の原型になった作品。ジンネマンはジョン・ウェイン×ジョン・フォードの「駅馬車」も好きだったし、本作もかなり手本にしたらしい。  黒い装束は後の「赤い河」や「捜索者」を思い出すけど、後作品のような憎しみや独善的なものは感じない。 一介の流れ者として、淡い恋にも興じる優しき伊達男だ。癒し系ウェインと言ってもいいかも知れない(なんじゃそりゃ)。  いきなり発砲から逃走に及ぶまでのシークエンスは中々凝ってる。 ドラマがメインで一目ぼれした娘やその家族、彼を追う保安官など交流を軸に描く。  追っ手を交わすための“ハッタリ”や酒場での乱闘、「赤い河」に繋がる中盤の牛追い、終盤のクライマックス等見所も結構多い。 主人公に極力人を殺させないって展開が良い。真のヒロインは保安官のオッチャンだったりする。
[DVD(字幕)] 8点(2014-12-14 20:20:01)
409.  告発 《ネタバレ》 
俺個人は同じ刑務所&法廷劇なら「父の祈りを」の方が惹かれるが、この作品も一度は見ておきたい作品だ。 膨大なセリフと悲惨な場面で観客を殴りつけるこの映画は、「ザ・デッド/「ダブリン市民」より」の撮影を手掛けたフレッド・マーフィのキャメラによって観客に一切の退屈を与えず、画面に釘付けにする。釘付けにするが、落ち着きのない感じがイラつかせる。それだけマーフィもカメラを通して怒りに震えているのだろうか。 漆黒の画面から響く悲鳴、ニュースフィルムは看守を英雄として祭り上げ、人を襲った害獣のようにさらされる。 5分が10分以上に感じられるこの重苦しさ、刑務所の閉鎖的圧迫感が囚人を、看守たちをどんどん狂わせる。まして独房のすぐ外には家族がいる。家族には愛想を振りまき、そのストレスを囚人たちにブチまけざる負えないほど自分たちを追い込む。 髭剃りをミスッただけで鏡を割ってしまうほどキテいる連中ばかり。だが、独房に押し込められた囚人にはそれ以上の孤独と恐怖が圧し掛かる。裸で震えながら祈り、話し相手はクモとネズミとゴキブリくらい。 あれだけ痛められて必死に耐えて耐えまくり、裏切り者への復讐。だが本当に殺してやりたかったのは自分を痛めつけた看守たちだった筈だ。 脱走兵が自分達の家族に手を出したらどうなるのだろう。そんな危険はないとタカをくくる。護送中の看守が不意に子供に襲い掛からない保障など何処にもないというのに。その時点でアルカトラズそのものの傲慢を感じられる。 主人公を助けようとする弁護士もまた、助けたいという善意と大罪を暴いて勝利に酔いしれたいという欲望がせめぎ合っているようにも見える。 最後に主人公が見せる笑顔は、喜びと同時に「もういつ死んでもいいや」という諦めでもある。 あれほど高揚感を得られない勝利の瞬間があるだろうか。陪審員の描写の少なさも気になった。 弁護士と主人公がトランプをやる一時ももっと描いて欲しかった。
[DVD(字幕)] 8点(2014-12-14 20:15:19)
410.  未来世紀ブラジル 《ネタバレ》 
俺は「12モンキーズ」の方が好きだが、この作品は見れば見るほど病み付きになるガムみたいな映画だ。面白いけど(味わい深い)、イマイチ納得がいかない(飲み込めない)。ガムを飲み込む奴は馬鹿だ。 ジョージ・オーウェルの「1984」やフランツ・カフカのパロディのようだが、本人が無自覚か確信犯かはこの際どうでもいい。 特に「モンティ・パイソン」の頃から異彩を放っていたテリー・ギリアムだ。パンチが効きすぎて毒気がハンパないぜ。  政府にマークされたタトルを“偶然”呼んでしまった、夢の中で出会った美女と瓜二つな女性を“偶然”見つけ追いかけてしまった。“追いかけた”時点でサムにとっての“必然”へと変わる。 彼女に無理矢理せまろうとする狂気。 頼んでもいないのに勝手に介入して妄想を膨らませ、自己の正義を押し通そうとするエゴイズムは「タクシー・ドライバー」に通じるものを感じた。 あの話のトラヴィスのように、サムは首を突っ込まずに済んだ話に首を突っ込みまくる。 「タクシー・ドライバー」と違うのは、殺人者が“英雄”とならずに頭の中の“お姫様”を救えずに終わるところだ。 この映画は二つのエンディングが存在するが、それはこの作品を見た人ならすぐに解る事だろう…というワケらしいが、よく解らん。 ただハッキリしているのは、圧倒的な映画世界である。“夢”の中の映像の美しいこと。 「2001年宇宙の旅」も「時計じかけのオレンジ」もその美術で“黙らせ”ようとする感じが気にいらねえ。 中毒性が凄まじいから余計にハラが立つよ。ギリアム、アンタは天才だ。 それと、往年の名作に対するオマージュが面白い。 「戦艦ポチョムキン」のオマージュには吹いた。例のばあさんの場面まで忠実だし。 主人公が夢の中で出会う女性と現実世界でも巡り会う話はノーマン・Z・マクロードの「虹を掴む男」を思いだす。 トム・ストッパードは優しい。世の中、友人とはいえ警告すらせずに殺しにくる奴もいるからな。むしろちょっと優しすぎるくらいだ。
[DVD(字幕)] 8点(2014-12-13 19:29:08)
411.  姿三四郎(1943) 《ネタバレ》 
冒頭から闇討を返り討ちにする柔の技、力に溺れた三四郎が池に飛び込み悟りを開く、かつて入門した道場主を倒し、その娘に恨まれて複雑な関係を築く、仲良くなった恋人が実は倒すべき敵の娘、何度投げられても立ち上がり、娘のために降伏という名の生存を選んだ不屈の闘士、その娘を執拗に狙う強敵「檜垣源之助」との最後の決闘などなどデビュー作にしては度肝を抜かれる場面が多い。 しかしそこはやはりデビュー作。ムラ気と作り込みの甘い部分もあることあること。 肝心の柔道場での試合は取材と指導が足りなかったのか、ワルツを踊るような取っ組み合いからのブン投げ合い。 倒れた敵の上に壊れた障子がゆっくり落ちる・・・この素晴らしい演出が無ければただの柔道ごっこである。 志村喬もこの頃は舌足らずだったのか(「鴛鴦歌合戦」で素晴らしい歌声を披露したのを知っていると余計に)、「強い」と言うはずの場面を「つおい」に。 「つおい」 「つおい 」 「お(^ω^)」 「お(^ω^)」と言ってはいるが、年と共に重ねた強者の風格。 そのオーラを体で表しているのだ。 後の「七人の侍」で久蔵に対して「強い・・・強い!」と力強くポツリポツリと言うセリフからも解る通り、志村喬も常に進化を遂げているのだ。 あの志村喬にも、藤田進にも初々しい頃の若い時代があった。 そんな俳優陣の素晴らしい演技とシナリオ、演出などが合わさって、数々の手不足を補ってくれているのだ。 張り詰めた空気がピンッと弾け、動き出す。 互いに相手の襟を掴み、出方を伺う。 正に男の戦い。 柔術の掛け合いも、最後の三四郎と源之助の対決の時には充分すぎる仕上がりになっていた。 自然の猛威そのままに荒れ狂う空、すすき野を切り裂くように吹き荒む風、そんな風を難なく受け止める頑強な男たち。 ラストの恋人たちの切なくも暖かい別れ場面も清々しい。 幾度も生死をくぐり抜けた男が出せる優しさ。 藤田進はそれを見事演じきったと思う。 そう、この映画は正に「人間ドラマ」に重きを置いた作り込みなのである。 冒頭の戦いの前ですら、三四郎が門馬三郎に弟子入りし、その門馬が目の敵にしていた矢野小五郎に門馬が投げられる。 これで三四郎は360度見る世界が一変。 柔道と柔術のせめぎ合いの中に揉まれながら道を歩み始めるのだ。
[DVD(邦画)] 8点(2014-12-13 19:22:42)
412.  ゴースト/ニューヨークの幻 《ネタバレ》 
んん?この良作までこのサイトのオールドタイプ共は点を低くするのかね?だからこのサイトはダメなんだよ。若い人がどんどん離れていくワケだ。  ニューヨークで起こった男女の数奇な運命を描くロマンス・ファンタジー映画。 愛する男を襲った突然の「悲劇」。 その悲劇が信じられない「奇跡」を生む・・・! ストーリーは恋愛、ファンタジー、ホラーが充実しているが、面白いのは主人公が思いもよらない立場となって真相を知っていくという所。 冒頭のアホみたいなイチャイチャ振りからは想像が付かないほど話がガラリと変わるのだ。点が低い人はその時点で全面撤退しちゃった人もいるだろうね。 あらすじだけ追えば陳腐に見えるストーリーも、本編は奇想天外でありながら実に丁寧な作りをしている。 主人公が何も出来ないもどかしさと戦い、それを努力を重ねて自分の「利点」に成長させる。 主人公の予想以上の「反撃」は胸がスッーとなる事だろう。 これぞ映画だ。 影のヒロインとも言えるウーピー・ゴールドバーグも凄い良かった。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-13 19:17:53)
413.  椿三十郎(2007) 《ネタバレ》 
どうして現場に血が流れるんだぁー!ねえ室戸さん?室戸さーん!! 前作を忠実に再現したコミカルかつテンポの良い活劇。 若侍たちの金魚のフン振り(加山雄三と田中邦衛と土屋嘉男以外マジで見分けが付かない)も見事に再現。 ただ、さとう珠緒は軽すぎた。 アレじゃあ、今作三十郎の優男の側面が強調されてしまう。 かといって鈴木あんが乗っても微妙であろう。 「早く行けデブ」と言うようなもんだ。 それじゃあ品が無い。 入江たか子さんには悪いが、やっぱり三十郎に「うっ」と言わせられるのは、あの人くらいのウエイトと年季が無いと。 「お歳をめした貴婦人なら仕方無いね」感が。 あと最後の決闘。 スローモーションにする意味は無かったな。 一瞬の「バッー!」って出来事だからこそ、あの場面は映えるしカッコイイ。 脚本が忠実なだけに、無駄なアップと同様にマイナス演出になってしまった。 実に惜しい。 そして特筆すべきは織田裕二。 その邪魔な前髪をむしれ(憤慨)  原作では凄まじい実力と凶悪な人相に対して、義侠心に厚く知能派浪人というギャップが魅力であったが、今作では織田裕二特有のコミカルで爽やか、心優しきチンピラ風味な三十郎像を楽しめる。 どうせならその個性をもっと押し出すべきだった。 せっかく脚本に忠実なんだから、その上で新たな三十郎像を見出すのがリメイクの目的のはず。
[DVD(邦画)] 8点(2014-12-13 19:14:03)(笑:1票)
414.  伝説巨神イデオン 接触篇 《ネタバレ》 
この作品は「イデオンて何ソレ?美味しいの」という人のための総集編。 肝心のアニメが13・14話になるまであまり面白く無いため、イデオンに挑戦しようという人はコチラから見ることをオススメする。  また、新規作画による強烈な映像(イデオンがジグマックを蹴りで粉砕する場面とか!)、キャスト陣による演技の違いも見所。  正しあくまで「総集編」であるので、原作の飛ばしてはいけないシーンも多くがカットされている。 この作品を気に、是非とも本作も楽しんでもらえるとありがたい。
[DVD(邦画)] 8点(2014-12-13 19:10:47)
415.  マッドマックス 《ネタバレ》 
世の中の犯罪の生々しさと狂気を描いたこのバイオレンス・バイク映画の傑作。 「ワイルド7」大好きな俺がこの映画の中毒にならないワケがない(何のこっちゃ)。  あの改造バイクの群れ、群れ、群れを見るだけでもゾクゾクワクワクしてしまう。 凄まじいカーチェイス、 血で血を争う凄惨な殺し合い。 追うものと追われる者。 そして戦いに巻き込まれる民衆。 残虐である。 変わり果てた姿になる同僚、 「あの時」のメル・ギブソンの絶望に打ちのめされた顔。 赤ん坊も愛する我妻も・・・復讐の“道”は出来上がる。  ラストの執念に満ちた復讐! 執念が奴らを一人も生かしちゃおかない!! 脚を引き連りながらも復讐への執念を燃やすメル・ギブソンの姿がカッコイイ。後の「ブレイブ・ハート」でのギブソンも好きだが、ギラついた感じはこの映画がベスト。  不条理極まりないこの現代。 そんな人々の断片がこの物語である。   「マッドマックス2」はギャグ映画です(賛辞)
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-13 19:08:32)
416.  マッドマックス2 《ネタバレ》 
「MAD MAX2」もとい「The Road Warrior」。 前作がまず「アレ」だったじゃんか。んでいきなり戦争でドカーンだろ? 「警戒」すんなって方が無理だろ・・・orz 荒廃した世界で?ボーガンで?モヒカンで?ヒャッハーだろ? 「気が違えたかジョージ・ミラー」と思わない方がおかしいだろ。  だのに何で普通に面白いわけ!? 普通この手の部類はありとあらゆる部分が脱線するはずなんだが・・・前作が「既にそういう状況だった」という過程なら違和感はまったくない。 戦争の結果で完全に無秩序な無法地帯になったわけだし。 これが元になった「北斗の拳」だって、ブルース・リーがいきなり核戦争後の世界に来たわけじゃない。 最初から戦争が起こり、そこからケンシロウたちがどう生き残っていくかを描くわけだ(読み切りは別ということで)。 前作の死闘の果てに心に傷を負ったマックス。 あての無い荒野、暴力の連鎖、脚となるガソリンと食料を手に入れるだけの単調な日々・・・マックスの心は渇ききっていた。 そんな中で出会う様々な人間たち。 マックス同様に生き残り、あらゆる暴力から解放されるために戦い続けている。 こんな無法な時代でも「等価交換」という定義は残っていた。 マックス自身も単調な毎日からの脱出を求めていた。 何もかもが無くなった時代、車を乗る者にとって「石油」は「水」と同等以上に貴重な物だ。 それを無駄な争いによって消費していく人間たち。 自らの命とともに投げ捨てていくわけだ。 マックス、石油を守る村人、ヒューマンガス一味・・・3つ共えの死闘。 カーチェイスは前作以上にパワーアップしているが、前作における「犯罪者への怒り」のパワーはあまり感じない。 法が無くなった事で「犯罪者」と「被害者」の境界線はあいまいになり、単純な「暴力」への抗いだけが残った。 生き残った者に残るもの・・・マックス、村人、ヒューマンガス一味・・・彼らは何を失い、何を得たのか。 善悪の線引きが消えた世界で人々は何を見出すのか。 そんなまじめな事をまだ考えられる力作。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-13 19:06:55)(良:1票)
417.  サーカスの世界 《ネタバレ》 
監督はベテランで実力確かなヘンリー・ハサウェイ、 シナリオにベン・ヘクト、 原作ニコラス・レイ!?  というワケで超絶期待しすぎた感もあるが、それでも中々の見応え。  豪華客船の転覆、テント炎上のパニックも凄いが、一番驚いたのはロープ登りの緊迫感。  ただグルグル回ってるだえなのに、どうしてこう惹きつけられるのだろう。 芸人の演技もロングショットだが、凄い。 やはりサーカスは魅力的だ。  またドラマも良い。 父親として厳しくも優しさを滲ませるウェインも良いし、絶世の美女だったヘイワースを知る者にとって、同じく絶世の美女となっていくカルディナーレを思うと配役は完璧といってもいい。  クラウディア・カルディナーレとリタ・ヘイワースの新旧二大美女の競演。  デビュー仕立てのカルディナーレは毒気の無い可愛らしさ、オールドミスとなったヘイワースもまたスラリとした体系で健在振りを示す。これが彼女の最後の花かと思うと少し切ない。  事情があって深い溝のあった親子が和解していくストーリーも説得味があるし美しい。  ジョン・ウェインの父親振りはいつも以上に優しい。いざという時の頼もしさ!  クライマックスの親子競演の場面は必見。
[DVD(字幕)] 8点(2014-12-13 19:04:59)
418.  朗かに歩め 《ネタバレ》 
小津の暗黒街物の初めとされる作品。 ジョセフ・フォン・スタンバーグとかの「暗黒街」系列の影響が強く、「その夜の妻」ほど洗練された感じはしない。 それでも冒頭の「スリ」のやり取りや車の移動場面など晩年の小津には無い凝った演出が見られる。 この頃はまだ実験的な演出の域だろうか。 ストーリーそのものは与太者が犯罪を犯して徐々に改心に向かうというストーリー。 モダニズムの逸品として評価されているが、個人的には「その夜の妻」の方に強く惹かれる。 それでもよくまとまった小品。 「大学は出たけれど」にも出演した高田稔は中々様になっていたと思うんだけど(みんな学生のコスプレにしか見えんけど)。
[DVD(邦画)] 8点(2014-12-13 19:03:25)
419.  ONE PIECE 《ネタバレ》 
「ONE PIECE 倒せ!海賊ギャンザック」以来となる最後のセル画版。  海の描写がキレイなんだよなぁ・・・  ストーリーは二の次。  セル画の肌触り、 そして地面に打ち捨てられた「おでん」を食べるルフィの男気を思い出すための映画。  サンジがいない頃だったなぁ・・・。
[DVD(邦画)] 8点(2014-12-13 19:01:59)
420.  第七の封印 《ネタバレ》 
ヨハネの黙示録の一節「七つ目の封印」に題材を得たとされる本作。 十字軍の遠征から命からがら故郷に戻ったつもりのアントニウスたちだが、あの死神は既にアントニウスたちがペストに侵されている事を暗示していたのでは無かろうか。 命を賭して戦った遠征で何も得られず、戻った故郷にも疫病が蔓延る。 最早アントニウスは死の運命から逃れられない。 死神と己の運命を賭けたチェス。 勝てば生き永らえ、負ければ死。 この映画は光と影の対比に事欠かない。 白き光の「生」と黒き闇の「死」。 死神が欲しいのは、死を受け入れた魂。 アントニウスが欲しいのは、「この世に神はいるのか」という答え。 神を信じて人を殺めてきたアントニウスは、己が正しかったのか、間違っていたのか、それを神の存在を通して答えを探し続ける・・・。 この映画の淡々とした流れも、死神がゆっくり近づく足音を表しているのでは無かろうか。 アントニスと出会う人々も、常に死と隣り合わせの者がひしめく。 「魔女」として処刑台に運ばれる女性は、まるでジャンヌ=ダルクをイメージさせる。 神を一身に信じた者が人の手によって殺されていく。 この映画に神はいないが、死神は常に問いかけてくる。 死を擬人化した死神。 黒いローブを被ったてるてる坊主のような風貌のこの死神は、死を晴らすのではなく、死を呼び込む雲の闇を呼び込むのだ。 その存在が眼に見える者は、その者の死期が迫る事を意味するのか。 死神に奪われていく命は、ペストが感染したか、自ら死を選んだか、そのいずれかであろう。 この映画の死神は鎌を振るうでも、直接手を下す事もしない(ノコギリはいそいそ使うが)。 静かに死を受け入れた者を、あの世へといざなうのみだ。 死神が運ぶ「七つの命」。 アントニウスは結局答えを得られなかったが、最後の最後で「生の光」の中を歩く3人の命を救うことが出来た。 母親と父親、そして赤子。 まるで全てを無に還す「黙示録」の後に残される第2の「アダム」と「イブ」のように、生き残った3人は再び生のあくなき道を歩み始めるのだ。
[DVD(字幕)] 8点(2014-12-13 19:00:13)
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