401. ロード・オブ・ザ・リング
《ネタバレ》 “THE LORD OF THE RINGS”『指輪の所有者』です。邦題では抜かされてる“THE LORD”は主を表し“RINGS”はエルフ、ドワーフ、人間の19個の指輪と、サウロンの一つの指輪を表しているんでしょう。“THE FELLOWSHIP OF THE RING”『指輪の仲間』とは、選ばれた9人のことです。 さて、私この映画苦手です。ドラクエとかメッチャ好きで、できればリアル路線の剣と魔法の映画が観たいなぁって、ずっと思っていました。ウィローがイイ線いっていたけど、まだまだ特撮に難ありだったなぁ。CGでいろんなものが表現できる時代になり、そこに来てこのロード・オブ・ザ・リングの登場です。『指輪物語』私でも聞いたことがある歴史的ファンタジーの実写化。コレは期待しない訳がありません。 ワクワクしながら劇場で鑑賞…凄く、壮大な物語です。裂け谷の館に到着して、そこそこ満足感を感じましたが、まだ序章です。モリアでバルログと対峙したときこそクライマックスだと思いました。…。なんか、まだ続きますね。…。ここどこ?…。あっ!。あぁ~…。終わった?終わった。 3時間の長丁場とは言え、モリアのオークの大群辺りでウトウト。お金を払って劇場に行って、眠くなったのって、後にも先にも本作だけです。期待外れの退屈な映画だったかというと、世間では普通に人気はあるし…あの時のウトウトは、私の何がいけなかったのか良く解らず。 続編は(また眠くなったら)怖くて観られず。この時からでしょうか、ど派手なCG映画に期待する気持ちにブレーキが掛かるようになったのは。 それでも『時間を開ければ楽しめるかもしれない』と考えて、数年後、本作のDVDを買って家で観ました。苦手とは言え、今回入れて4回観てます。 この映画の何が合わないのかを、私なりに考えてみました。屁理屈に思われるかもしれませんが。 ①新たな街。何でしょう、CGの風景は凄いんだけど、旅にリアリティが感じられなかったです。RPG風に言えば、ずっとフィールドを歩いて、ダンジョン入って戦って、またフィールド歩いて。って感じです。しかも徒歩。更に軽装。ホビットたちは大食らいみたいだけど、あんな僅かな荷物に何人分の食料が入ってるんだろう?9人分の食べ物をスーパーで買ったらもう、両手に買い物袋です。 私にとってRPGの楽しみは『次の街に行くこと』だった気がします。街の個性を観察し、その街を拠点にして、ダンジョンに挑んで、武器を買ったりイベントをクリアしたり。そんなのが楽しかった気がします。街が拠点だから、そこで何かを食べたり、傷を治したりしてるんだろうって、勝手に想像できます。フィールドの移動は“次の街に行ってホッとするための作業”って感じ。なので、9人の男たちが黙々とフィールドを歩くのを延々と観せられても、私にはRPG世界の楽しい思い出の追体験を感じられず、あまり共感出来なかったみたいです。 ②敵のインフレ。トロルは頑張れば倒せそうな感じだけど、バルログはちょっと無理でしょう。あんなラスボスみたいのを事前説明もなく、ポンと出されるともうお腹いっぱいになります。その後のオークの大群との戦いにスケールダウン感を感じさせます。ナズグルは格好良かったと思うけど、洪水に中途半端にやられて、出てこなくなっちゃうんだよな。消化不良。 ③突飛なガンダルフ。なんかビルボやフロドをビビらせて動かしてる気がしてならない。塔のてっぺんに幽閉されるのは良いとして、大鷲に助けられるって、なんでもアリ感。ガンダルフ涼しい顔して裂け谷の館に居るし。 最後の方、戦いの情勢はまだ観えてこない。仲間がバラバラになって、物語は続いていく。ボロミアの人間臭さ、サムの健気さは素晴らしい。けど3時間映画の締めくくりに持ってくるシーンではないような…公開時から3部作って言われていたし、それこそ9時間の超大作の3時間分を観た感じで、気持ち的に『こんな3時間の超大作が、この先まだ2本も楽しめる!』って感じにはなれなかったなぁ。 [映画館(字幕)] 5点(2023-02-06 22:41:32) |
402. 未知との遭遇/ファイナル・カット版
《ネタバレ》 今回DVDで視聴。えぇと、再生時間137分なのでFC版だね。宇宙船内部があるか無いかくらいで、他の違いが良く解らない。 UFOを光るメカにしたのは、当時の特撮技術を考えると正しい選択だったと思う。単なる光る物体だとリアリティがなくて、政府の用意した基地とのマッチングが悪くなるし、変に観え過ぎるとアラが目立って興ざめする。光と影で絶妙に観えにくい小型の宇宙人たちも、良く見ると被りもの人形っぽさが…まぁそこを上手く隠して、リアルに観せられる技術で組み立てた結果の映画だと思う。 小さい頃は友好的な宇宙人と思っていたけど、考えたらパイロットや船乗りたちを何十年も誘拐してるんだよな。なんかジリアンの子がすぐに還されたから、悪い印象がもみ消されてたけど、何十年も年取ってないし、普通に怖いぞ。 面白いのは、宇宙人はアメリカ政府への技術的な接触アプローチだけでなく、ロイやジリアンといった個々人へのアプローチも同時にしているところに、したたかさを感じさせるところ。 お揃いの赤いツナギにサングラスのクルーは、人類と宇宙人側が、宇宙船に搭乗させる共通認識で手配したメンバーだろうに、それ以外の市井の人間にも接触し、デビルズタワーに導いている。いいのか? 宇宙人からの“電波”を強く受信してしまったロイ。家族よりも接触を優先してしまい、粘土細工に没頭。ポテトのシーンで子供が涙を流すシーンが痛々しい。 それでも接触を棄てられず、家を住めなくし、遂にはジリアンと変な関係になってしまった。あのキスシーンは驚いた。なんかマザーシップのスケールのデカさから、悪い印象がもみ消されてたけど、あれは電波を受けた者同士の不思議な絆が、そうさせたんだろうか。ロイが残ってたら、あの後どうなったんだろうか?あと、赤いツナギの人達って、ちゃんと宇宙船に乗れたのかな? グレイみたいな小型宇宙人ばかりが印象にあったから、最初に出てくる蜘蛛みたいな手足の細い宇宙人が怖い。アレは何だったのか?ワラワラと出てくるリトルグレイ(被りもの風)と最後に残るグレイ(笑顔も出来て、なんかシュッとしてる)は、同じ種族? 多くの謎を残すこの作風も、嫌いじゃないです。 [DVD(字幕)] 7点(2023-02-04 20:17:41) |
403. 未知との遭遇
《ネタバレ》 “Close Encounters of the Third Kind”『第三種接近遭遇』。J.A.ハイネック博士が定義した空飛ぶ円盤と遭遇した際の分類。 第一種は“円盤を至近距離で見る”で、第二種は“円盤が周囲に影響を与える”で、第三種が“円盤の乗組員と接触する”ことなんだって。へぇぇ~、ロボット三原則みたい。だけどコレだと意味がわからないから、『未知との遭遇』で正解なんだろう。 子供の頃テレビで観たのは“特別編”だったっけ。UFOというと、ふよん・ふよんと空に浮かぶ円盤状の物体だったのが、この映画で細かくてきらびやかな物体へとイメージが進化したんだよな。大都市の夜景のようなキラキラした宇宙船“マザーシップ”の美しさに目を奪われたわ。そして宇宙人と言えば銀色のピチピチしたスーツを着ているイメージだったのが、頭の大きい子供体型の宇宙人のイメージに。 何よりもウルトラマンに慣れ親しんだ私達には、宇宙人=“地球に侵略に来る者”、もしくは“侵略から守る目的の者”だったのに、“単に友好接触してくるだけの者”は斬新だった。 矢追純一のUFO特番とかで、グレイという宇宙人を知ったのは、この映画の後。当時のSF映画とマッチする、リアリティある宇宙人だなって思えたわ。 そして何より、デビルズタワーが実在しているのが一番驚いた。アメリカ人や地理に詳しい人がどう思ったか知らないけど、あんな奇妙な山が実在するなら、UFOや宇宙人が地球に来ていてもおかしくないよな。って思えたわ。 このような映画を観ていると、アメリカは本当に宇宙人と秘密裏に遭遇していて、そのうち一般に公開された時に、ビックリしないように、この手の映画が創られている。って説も頷けるところ。 そしてこの『未知との遭遇』は、友好的な宇宙人とのファースト・コンタクトものの元祖として、リアルとファンタジーの混ぜ方がとても上手い作品だったと思う。怪現象の一つバミューダ・トライアングルは取り入れ、ビッグフットには失笑を。ミステリーすべてを包括するのではなく、宇宙人をリアルに見せる味付けに使う。さじ加減が上手い。 インドで録音した歌が手話と合わさり(当時としては)未来的な楽器シンセサイザーを介して、宇宙人と最初のコミュニケーションを取る。人類が発展・進化していく中で、宇宙人とのコミュニケーション方法に気がついていく過程としているのが面白い。 子供の頃は、人間に媚を売った可愛い宇宙人の出て来ない、大人な味付けのこの映画が、かなりお気に入りだったわ。 [地上波(吹替)] 7点(2023-02-04 20:17:27)(良:1票) |
404. アメリカン・サイコ
《ネタバレ》 “American Psycho”『アメリカの精神』転じて『アメリカの内面』。でしょうか?『アメリカン・スピリット』がカッコいい表面だとすると、『アメリカン・サイコ』は人に見せられない裏面のような意味に思えます。 この映画、パトリック・ベイトマン個人を追いかけると、妄想か?現実か?って議論に迷い込むところだけど、映画の最後の方、レーガンのスピーチを聞く4人の反応から再視聴すると、伝えたいことが観えてきます。社会の教科書なんかに載ってた、国家を擬人化した風刺画をイメージしてください。パトリック達はザックリ言うと当時のアメリカなんでしょう。 イラン・コントラ事件。'80年代中盤のレーガン政権下、表向きイケイケの経済大国アメリカは、秘密裏にイランに武器を売却。その収益をニカラグアのゲリラ組織に横流ししていた事件。実際に動いてたのはブッシュ副大統領(Vice President)だったようで、当時も今も真相は有耶無耶になっているそうです。 ウォール街の証券会社で働くベイトマン副社長(Vice President)。有名なカードバトルをじっくり見ると、同僚もみんな副社長。有能なポールもアホのルイスも副社長。しかもみんな、名前以外電話もFAXも同じ番号・・・んなアホな。 ポール「電話してくれ、金曜はドーシアに…」ってティモシーに名刺渡してるけど、みんな同じ番号やん、どこに電話するねん。こんな所からこの映画は妄想側、と言うか現実じゃない方の物語として観るのが正しいようです。 パトリックのビジネスマンの表の顔と、連続殺人鬼の裏の顔はあくまで映画のオモテの面。裏テーマとしてパトリック、4人の同僚、殺されたポール、アホのルイスを出して、Vice Presidentなる人物の、悪い意味での多面性を表しているんでしょう。 浮浪者や娼婦たち“格下の人間の殺害”は、当時のアメリカが裏で行ってきた世界の戦争誘発行為。ベトナム戦争以降、直接参戦していないアメリカが、裏で戦争に加担していた事実。ポール殺害は同格のライバル国やライバル政治家への社会的抹殺を意味するのかと。予約の取れないドーシア、完璧な名刺は、世間の名声や支持、信頼の象徴なのかな。 パトリックがどんな殺人を起こしても、フルチン・スニーカー・チェーンソーでマンション中駆け回っても、世間は沈黙。勝手に有耶無耶にしてくれます。「レンタルビデオを返しに行く」なんて苦しい言い訳でも世間は納得。 「タイムズの広告を?」「いや…あぁ、見た」「広告は出ていません。」「本当のことを知りたいんだ」「面倒は困ります。お帰りください。」政府にもみ消された事実は、たとえ本人が真実を知りたくても、知ることはできません。新聞に出た事実さえも消えてしまいます。アメリカの闇。アメリカの内面。ジーンが見付けたあのノートこそ、アメリカが人知れず行ってきた真実の歴史。恥ずべき犯罪の数々。 ロクに仕事しないで、政治のニュースより高級なランチの心配。華々しい街の裏には失業した浮浪者も、暴行で病院に行ってもやっぱり客を待つしかない娼婦もいる。現実に目を向けず、行き着いた先がブラックマンデー('87.10)、当時世界で2番めの株価大暴落でした。 '89年ブッシュは大統領になり、'90年アメリカは湾岸戦争に直接参戦。イランはアメリカから手に入れた莫大な武器を輸出し、アルカイダを支援し、'01.9.11同時多発テロが起きたのは、ブッシュJrの時代、この映画公開の1年後でした。 [DVD(字幕)] 8点(2023-02-04 16:37:40) |
405. ヘル・レイザー
《ネタバレ》 “Clive Barker's HELLRAISER”『クライブ・バーガーの放蕩者』…読めん。【ホウトウモノ】とは、思うまま自堕落に好き放題に振る舞う人。の事だそうな。劇中のフランクの事を指しているんだろうけど、監督名をタイトルに付けることで「俺が自分で監督して、好き放題創ってやったぜ!」みたいな意味もあるのかも? ヘルレイザーと言えば衝撃的なビジュアルのセノバイト(魔道士)。ピチッとしたまっ黒ツヤツヤのレザー(エナメル?)ボンデージファッションに身を包む、頭に釘が刺さった男。ピンヘッドというのか。ただそこに居るだけで怖い。当時のホラー映画はデザインセンスの優れた悪役が多かった気がするなぁ。 セノバイトは、ただ黙ってるのが一番怖い。何考えてるのか分かんなくて。喋るとちょっと人間臭くて、異世界感が薄まってしまうのはご愛嬌。 そんなセノバイトたちが大活躍するんだろう。悪なのか?善なのか?なんて思ってたらフランクに振り回されるコットン家のお話でした。善人の被害者役としてアンドリュー・ロビンソンを起用するセンスが素敵。ダーティハリーの“殴り屋”が思い出される。黒い革手袋はめる『ぎゅぎゅ~』って音。黒革と痛みと快楽とアンドリュー・ロビンソンが、私の中で見事に結びついた。映画には全っ然活かされてないけど。 セノバイトのビジュアルは個性的なのに、登場回数の少なさと、活躍しなさにびっくりした。そしてやられ方も没個性的。強いんだか弱いんだか解らない。ジュリアも適当にキューブこねてるだけだから、倒したときのカタルシスが無いんだよな… ただ私がこの映画(というかキャラクター達)に期待するものが、2以降にあるかもしれないので、一応観てみるかな… [インターネット(字幕)] 5点(2023-02-02 22:34:17) |
406. 恋愛小説家
《ネタバレ》 As Good as It Gets”『こういうので良いんだよ』って感じでどうでしょう? 直訳は『これ以上無いくらい素晴らしい』って、言葉通りのポジティブな意味と、『現状ではコレが精一杯』みたいなネガティブな意味もあるようです。 メルヴィンは作家のようだけど、何でこんなタイトルにしたのか意味がわからん。 最初メルヴィンがメッチャ嫌な奴に映るんです。ヴァーデル下手したらダストシュートで死んでたかもしれない。自己中で無節操で配慮がなくて、失礼なことをバンバン言う。なんて嫌なオッサンだろう。と。 ヴァーデルを預かるところから、メルヴィンは嫌なオッサンではなく、変なオッサンなんだと気がつく。そもそも彼の周りに友人らしい人は出て来ないし、キャロルとサイモン時々フランクみたいな、ごく最近の人間関係しか観えない。 果たしてこんなメルヴィンが、どんな恋愛小説を書くというんだろうか?? 子持ちとは言え、ふた周りも年の離れた美人との恋愛模様。ここにサイモンが混ざっての奇妙なロードムービーが面白い。 失言からの翌朝、“非常用CD”でちょっとスローになるところで大爆笑。でもその後の「この曲イヤ」で、スッゴイどよんとした空気になるの苦しい。変なオッサンは頑張ったけどダメだったパターンが辛い。 でも最後はあれで良かった。徐々に、徐々にで良いんだよ。犬を飼うことがキッカケで、こんなにも大きく人生が変わるなんて。…って観たけど、最初からメルヴィンが変なオッサンだって解って観ていれば、また感想も変わってくるような気がする。日を空けて2回目観てみよう。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-02-01 20:51:12) |
407. エイリアン2/完全版
《ネタバレ》 ~『エイリアン2 』の続き~ 10代の頃アホほど観たエイリアン2ですが、この完全版をきちんと観たのは、最近DVDを買ってからです。まだ視聴3回目。もしかしたらエイリアン2自体さえ、20年以上観てなかったかも? 2000年頃は私の中の第二次映画鑑賞ブームが来ていて、そこそこ新しい作品を色々観てたけど、この完全版は観てなかったなぁ。当時はCGメインの時代。スター・ウォーズもお色直ししている時代なのに、エイリアン2は特撮が古いまま。大好きな作品が古臭く観えてガッカリするのが怖かったのかもしれない。 今になって観たDVDの映像は、思いのほか綺麗だった。解像度調整したりしているんだろうか?あと今ではアナログな近未来メカニックについては、私は全然OKだった。未来世界なのにブラウン管モニターなんて古臭く感じるかもしれないけど、ラピュタの飛行船の技術や進撃の巨人の立体機動装置みたく、過去のどこかで枝分かれした架空の未来だと思って楽しめた。 さて完全版。単に長いだけでなく、テーマが変わっているのが凄い。エイリアン2がリプレー(女)自身の過去との戦いなのに対し、完全版は子を思う母同士の戦いになっている。 数ヶ月の航海のハズが57年もの月日が経過し、小さかった娘が自分より年上になって、しかも既に死んでいた事実を押し付けられる悲しみ。ニュートを娘とダブらせ、死物狂いで救い出すことだけに全てを掛ける母の姿。劇場公開版で娘について一切触れなかったのも、思い切った切り捨てだったと思う。 もう一人の母親がエイリアン・クイーン。前作の考察から、エイリアンは宿主の思考を学べるんだろう。だから人間が攻撃できないハズの、安全な熱交換機の下に巣を作って子供を産んでいたんだろう。 リプレーに「ドウェインだ」とファーストネームを名乗るヒックス。ヒックスとリプレーが、身寄りのないニュートと3人で、家族として暮らすことを暗示していたのかな。そう言えばニュートの両親って、外観が少しヒックスとリプレーに似ていたっけ。 ファーストネームといえば『フェッロC、ドレイクM、アポーンA…ヒックスD以外の海兵隊員は、生体モニターにリアリティを持たせるため、ファーストネームのイニシャルを付けるんだけど、俳優さんの本名そのまま』ってのを偶然発見した時は、誰かに言いたくて仕方なかったわ。けど今じゃwikiにも書いている常識になってしまった、残念。ハドソンがWなのは、ビル・パクストンの本名がウィリアムなのね。 フロストをフロスティって呼んでたり、ウィズバスキーをスキーって呼んでたり、キャラクターの作り込みがハンパない。そうそう、今回の見直しでウィズバスキーとスパンクマイヤーの顔を見分けることが出来るようになりました。 マメついでに、脱出艇ナルキッソスのD-7ドアの下に、リプレーがエイリアンを宇宙に放り出したワイヤー銃が転がってるの。こんなのを再現するところが、キャメロン監督のこだわり、マニアックな性格の現れに思う。だけど恐らく、この銃にエイリアンが引っ掛かったから、僅かに軌道が変わって、57年も漂流したんだろうって思うと、重要なアイテムかも。 このマニアックな監督だから創れた続編。前作エイリアンを愛し、自分の作品を愛する監督の渾身の一作。 今後何回この映画を観るか解らないけど、これほどハマった映画は、今後出てこないかもしれない。 [DVD(字幕)] 10点(2023-01-31 00:11:17) |
408. エイリアン2
《ネタバレ》 “Aliens”『異星人たち』洋画の原題に興味を持ったキッカケがこの映画なんです。 まだパソコンやプリンタの普及していない平成初期、ダビングしたビデオテープに、インレタって方法で綺麗に背表紙ラベルを作るの、たぶんここのレビュワーの多くの人も、やってたと思います。「えぇと、ALI…EN……ん?2じゃなくてS??」気がついた時に本当にショックを受けました。前作で1匹だったエイリアンが、今回はたくさん出てくるから、シンプルに複数形の“S”一個を持ってくるこのセンス。しかも“S”を裏返したら“2”なんですね。当時の続編作品といえば、大味、マンネリ、悪ノリが当たり前だった時代、ハリウッドのSFアクション映画に、こんなにも繊細なタイトルを付けるなんて! さて、初見は中2の頃かな、友達で集まってのビデオ鑑賞会でした。エイリアンと言えば有名なSFホラー映画(当時は未見)、この2も当然怖いんだろう、でも、ビビリの自覚はあるけど、友達にビビリの烙印は押されたくないぞ!と、平気なふりをして耐えることにしましたが…怖さより興奮のほうが遥かに勝ったわ。 ドロップシップ墜落に落胆し、いっしょに籠城準備している気になり、天井裏から迫るエイリアンに驚愕し、最後のドロップシップの脱出に手に汗握り、ホッとしたのもつかの間、クイーンの再登場に驚き…エンドロールから最後のカサカサまで、完全に映画の中に入ってたわ。 数日後改めてレンタルしました。観たばっかりの映画をレンタルするなんて…パッケージをマジマジ見て『今度は戦争だ!』の文字に妙に納得。そうだ、これはSFホラーというより、上質のSF戦争アクション映画だ。 '80年代は現実世界の延長線上のリアルな近未来、サイバーパンク映画真っ盛りだった時代。バークの渡す電話カードに未来を感じ、リプレーがよじ登るドロップシップのタラップの、画面左にあるクルクルコードにリアリティを感じた時代だったわな。 アームが伸びて腰に固定するスマートガン、バスケスとドレイクの阿吽の呼吸に痺れた人は多いだろう。 APCにズラッと並んだ生体監視モニター。エイリアンと初接触した際の、ザラザラのモニター越しに、リアルタイムに仲間が殺されていく絶望感。ショットガンを撃つヒックスを客観的に観せる画は、まるでドキュメンタリー映像のよう。 APCに踏み潰されるエイリアン。クシャッと潰れる頭部。バスケスとゴーマンの最後。あの役立たずの中尉が最後に見せた勇気。キャメロン監督のテーマとも言える戦う女と自己犠牲。 登場人物全員が兵隊ならともかく、映画の主役リプレー(記憶違いかもだけど、最初期の字幕ではこうだった記憶が…)は民間人。こういう場合、映画の中の兵隊って、ワラワラと数だけ多い、いわゆる雑魚キャラなのが通例だったと思う。きちんと個性と見せ場を創るのは珍しかった。 「みんなが守ってくれるわ、兵隊さんなのよ」彼ら宇宙海兵隊はきちんと仕事を果たし、守るべき民間人と生き残った生存者を宇宙戦艦まで連れ帰った。そして最後はリプレー自身の戦い。戦争映画のゴタゴタで有耶無耶にするのではなく、毎晩悩まされる悪夢を振り払う戦いで決着を付ける。ヒューマノイドとの確執も払拭しているのも地味に素晴らしい、続編ものとしてこれ以上無いくらい完璧な終わり方。 兄「またエイリアン2観てるのか?お前、どれだけ好きなんだ…」10代の頃、それこそ月に2回は観てたと思う。ダビングしてたのを日曜の昼間、茶の間で観て、洋画劇場でやればリアルタイムに観て、その後LDを買って自分の部屋のテレビでも観てたわ。たぶん私の人生で一番観た映画が、このエイリアン2です。 ~『エイリアン2/完全版 』に続く~ [ビデオ(字幕)] 10点(2023-01-31 00:09:36)(良:1票) |
409. 釣りバカ日誌
《ネタバレ》 有名な長寿シリーズで、釣りとは無縁の私には守備範囲外だったので観ていなかった。けど、面白かった。 釣りバカと言うから釣りばっかかと思ったら、釣りのシーンは3回。“初めて釣りをするスーさんがハマる”って事が伝わればそれで良し。ってくらいで、特に釣りマニアが喜ぶような構成にはなっていないと思う。 師匠と弟子の関係が、実は社員と社長の関係だったことが、いつ、どのようにバレるのか、もしくはバラすのかが本作のメイン。だから、ハマちゃんがスーさん=社長だったって知った瞬間、どんな顔するんだろう?って事に興味が湧いたけど、その瞬間を描かないのは意外。 そして夜になってもまだ怒ってるみち子さんとは対象的に、事実を受け入れてるハマちゃんの表情がね、なんか良かった。 高松から間違って本社に来て、最後再び高松へ帰るハマちゃんの構図。この一作で見事に完結していて、更にその後の物語も気になり、『面白かったなぁ、この続きが見てみたいな』って気にさせる。ただやはりスーさんの正体はこの物語のクライマックスに相応しいし、それ以降の『続き』は蛇足でしか無いんじゃないか?って気持ちもある。…1話がクライマックスで、残り22作が蛇足ってのも、すごい話だわ。(いやあくまで勝手な想像ね。まだ観てないですから。) そして石田えりが理想の奥さん過ぎる。男にとっての理想かな。ハマちゃんにペッタリくっついてくるみち子さんが可愛く、パジャマ姿でイチャイチャするシーンは、エピソードの区切りの“オタノシミ”として機能していたように思う。というかみち子さんの存在がこのシリーズの牽引力になっていたのかも。 世のお父さん方は国民的映画の石田えりの“服を着てても溢れ出る日常的なエロス”を観て、ひとときの“幸せ”に浸れたんじゃないだろうか? この勝手な思い込みの是非を検証するため、2も観てみようと思う。 [インターネット(邦画)] 7点(2023-01-28 22:34:35) |
410. ニューヨークの恋人(2001)
《ネタバレ》 “Kate & Leopold”『ケイトとレオポルド』単に名前で来ましたか。コレだとどんな映画か、いまいちピンとこない気がしますが、日本にも『愛と誠』があります。奇遇にもどちらも女性名が先に来てますね。 ヒュー・ジャックマン。私にはウルヴァリンの印象が強いので、こんなカッコいい紳士役が出来るなんて以外だったというか…でも当たり役のX-MENの次がメグ・ライアンとの共演って、大抜擢だよね。 一方でメグは、いつもの調子のロマンチック・ラブコメ路線にブレーキが掛かる。色々あったんだろうか? レオポルドが、現代社会にカルチャーショックを受けまくる作品かと思いきや、意外とその辺はあっさり流して、逆にレオポルドの生き方にケイトたちがショックを受けるという、タイムスリップものとしては逆張りな展開が面白い。 鳥の羽根で書いた手紙の字の美しいこと。女性に贈る花それぞれに意味(花言葉)があること。仕事でも不味いものは宣伝できないと突っぱねるところ。 細かいところは目をつぶって、現代人のケイトを通して、私達が求めているものってなんだろう?という問いに対する答えの一つを提示してくれている。 ただ逆張りタイムスリップものだけに、最後ケイトの今まで培ってきたものすべてを捨てる決断。今まで関心を持ったこともない時代に飛び込む決断って、それで良かったの?って不安というか疑問が残る。数々のツッコミどころに目をつぶって、『ケイトとレオポルド』の事だけに焦点を当てましたって映画で、それはそれで潔いロマンチックコメディに仕上がっているかな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-01-22 15:50:36) |
411. モンスターズ・インク
《ネタバレ》 “Monsters, Inc.”Inc.=インコーポレイテッドは“法人組織”なんだって。ふぅ~ん。お化けには学校も試験も何にもないのに大変だモンスター。ディズニーのCGアニメなんて、どうせ子供向けだろう。って観ないでいたけど、当時ついつい出来心で観に行って、そしてとっても驚いて、DVDまで買ってたんだな。 CGのオモチャ、CGの虫と来て、ついにCGの人間をメインキャラにしたのって、本作が初めてだったと思う。ファイナルファンタジー(未見)はいろいろ酷かったらしいけど、さぁコッチはどうだ?って思ったら、普通に可愛く動いてる。目がクリクリ動いて、アニメのキャラと変わらない、体温を感じさせるキャラになってた。凄いなディズニー。ってかピクサー。 ストーリーはドタバタと追いかけっこなんだけど、子供に振り回される大人が主役だから、完全に子供向けではなく、大人の視聴に耐えられるかの実験要素も入っていたのかな?日本のアニメで子供だけでなく大人も楽しめるとなると、どうしてもノスタルジックな演出になってしまうところ、会社や出世やデートを入れてくる辺り、新鮮に思えたわ。さすがハリウッド。 トイ・ストーリーがやや怖めだったので、モンスターが主役だけど怖さは控えめ。ブーが潰されたんじゃないか?ってシーンも、最初に“ブーは無事だよ”って観せておいて、子供が怖がらないようショッキングな要素は減らしてる。 エンディングについては、最後ドアの木片に微笑んで仕事を頑張るサリーで、大人は大満足だったろう。そこから先の再会は大人にしてみれば蛇足なんだけど、子供はそっちのほうが喜ぶものね。正しい選択です。 エンディングのNG集は驚いた。自分たちで構築した世界観壊すんだ。でもドラマや映画の悪役が、実生活でも苦労してるって話もある業界だから、ランドールみたいな悪役も“そういう役なんだよ”って認識させるエンディングは、アリと言えばアリか。 子供向けアニメも真面目に創れば、大人の鑑賞にも耐えうる物になるお手本のような作品かな。 [映画館(字幕)] 7点(2023-01-22 15:30:51) |
412. 少林サッカー
《ネタバレ》 “少林足球”邦題まま。わかりやすくて面白い!この単純だけど難しいことがしっかり出来ている映画です。観る度に元気が出るというか。WCアジア初開催で盛り上がってたサッカー。CGたっぷり、ワイヤーアクション少々の味付け。隠し味はジャパニーズアニメ。当時下火になっていたカンフー映画を、国際的に売り出すのに申し分ない盛り込みようでした。私のなかの『第二次映画鑑賞ブーム』の中で、かなり衝撃を受けた作品。そうそう、香港映画を劇場できちんと観たのはコレが初めてだったと思う。 欠点が無い訳ではなくて、歌とダンスを思いついて、チンピラに絡まれるところまでが長く感じる。そして『下品だなぁ、香港ではこんなコテコテの昭和ギャグが、未だにウケてるのかな?フフン♪』って。でもそんなクドさすら無くなったら、国際的な娯楽映画として無敵じゃないか香港映画!って、驚異に感じてしまった。ファンの立ち小便から名刺入りの空き缶を見付けるまでなんて、まるでサイレントコメディのお手本のよう。 ただのコメディとしてじゃなく、素晴らしいカメラワークにも注目したい。シンがチンピラ相手に本気出したときの、ファンの驚きは、ぐわんぐわん回るカメラで表現。シンの壁リフティングがどんどん上達する様子や、最初の本試合でキックオフシュートを決めるトコなど、ボールが如何に非常識なスピードで動くかは、固定カメラで客観的に観せる。少林チームの連戦連勝は本当の試合のように遠景で。圧巻は決勝の魔鬼隊戦を前に、主要メンバーの顔アップ。みんな右側に目線を送り、カメラも右にゆっくりスクロール。その先には優勝トロフィー…こんなの観せられたら心震えてしまうではないか。 最後のボロボロのシューズ、ムイの予想外の活躍に涙が出てしまう(私だけか?)のは、この映画が真面目にしっかりと創られてるからだと思った。 今後どれだけ面白い映画を創ってくるんだ?恐るべし香港映画界!…って思ってたけど、あの年代辺りがピークだったようで、正直残念に思う。 またこんな楽しい映画を創ってくれないかな。 [映画館(字幕)] 9点(2023-01-22 14:52:35)(良:1票) |
413. 網走番外地 北海篇
《ネタバレ》 このシリーズ初めて観たけど、4月に第1作が公開されて、7月、10月、そして4作目の本作が12月と、とんでもないハイペースで作られています。当時はまだカラーテレビが普及しきってなくて、本作のような娯楽アクションは映画館の大画面で観るのが当然な時代だったんだろう。どう考えても楽しそうな時代でした。 トラックで荷物を運ぶ代わりに高額の報酬が入るなんて、“恐怖の報酬”っぽいし、行きずりの人たちが同じトラックに乗り合うのは“駅馬車”っぽいな。 この作品のお約束が解らないんだけど、刑務所の中が案外短いのが意外だった。ペンケセップ?鹿走内町?オポチョッカ?ワッカ?北海道っぽいけど聞いたことない地名。「道北イチの難所」を“東北”と聞き違えてたところで私は小混乱のここどこだ?状態。 フルヤのガムの包みに入れた『誘拐されています』のメモ。あれ?誘拐されてたんだっけ?逃げようと思ったらいつでも逃げられる緩~い状態な気が…。 しかし、なんであんなトコに葉山の女房と敵の親分がいるんだ?東北と勘違いしてたのはあるけど、荷物の運び先ペンケセップに向かう途中に居るのは、たまたま?あんな事件になっちゃって、葉山のお母さんの仕送りはどうなるの?? 謎の男の正体はナルホドだったけど、骨折した子と母親、自殺未遂の美女の結末がアッサリし過ぎ。もう少し回収してほしかったかな。 ポスターのキャッチコピーが『・・・オホーツクの飛沫をあびて 追跡200時間の追撃戦』…またテキトーなこと書いて。 でもこの映画、巧くイジり直したら歴史に残る名作になるぞ? …なんて思いながら、このいい加減な感じ、劇場で一発上映のために作られた“撮り棄て”な感じが、まるで私達が子供の時代の週刊連載マンガのようだわ。鬼寅があんなところで出てくるトコなんてまさに!だわ。同シリーズで年に4作。マンネリにならないようにアイデアを捻り出しながら映画を創っていく感じが、熱々のライブ感を感じさせる。ホント楽しそうな時代だわ。 本年が映画デビューイヤーの大原麗子。ショートカットがまた似合ってて可愛い。やせ我慢で真冬の大雪原で上着を脱ぐ健さんがカッコいい。本作のように、最後何となく事件が解決した感じで終わって、その時それで満足して劇場を後にできれば、それで良い気がしてくる。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2023-01-21 10:44:15) |
414. 愛情物語(1984)
《ネタバレ》 '83年、原田知世は舞台『あしながおじさん』で主演デビューをしていたと言うから、この映画は今で言うメディアミックス的な相乗効果があったのかもしれない。ただ如何せん角川監督が何を観せたいのかが解らない。いや原田知世を!俺が!可愛く!撮り!たいんだ!!ってのは伝わるんだけど、その熱意が見事に空回りしている感じ。 ダンサーを目指す少女のサクセス・ストーリー。あしながおじさんを探す日本情緒なロードムービー。なんかホラー調な部分もあって、何がしたいんだか解らない映画に仕上がってます。楽しい幕の内弁当と言いたいところだけど、宴会オードブルの残り物詰め合わせのように思えてしまう。 当時の風景くらいしか見所がない映画かというと、原田のダンスは中々のもの。ボディウェーブとか出来てんじゃん。振り付けに時代は感じるけど、結構長い時間ワンカットでダンスシーンが観られる。だけど電車の中(特撮)で踊ってたり、渡瀬が岩をカンカンやってる横で踊ってたりと、なんともシュールな画が挟み込まれる。角川春樹ら大人達の期待に答えようと、一生懸命踊ってる原田が健気に思えてしまう。彼女が今でも年齢相応の女優として活躍している理由が解った気がする。真面目なんだ。 無国籍感満載のオーディション。というかアメリカ人(風)ダンサーだらけのなか、1人子供みたいな体型の原田がちんちくりんに見えてしまう。 そんな不利なオーディションで主演女優に抜擢という謎のアメリカンドリーム。星条旗も掛かってるし、当時の日本はアメリカの真似をすることがカッコイイと思ってたんだろうな。 そんなアメリカンなダサ格好良さとは裏腹に、久しぶりに聞いた主題歌『愛情物語』には、こんな曲あったなぁって、世代直撃の懐かしさに唸らされたわ。 [インターネット(邦画)] 4点(2023-01-17 22:22:48) |
415. 戦争と平和(1956)
《ネタバレ》 “War And Peace”邦題まま。 208分の長編のため、DVDに焼く(話すと長くなる)とき、2つに分割したんだけど、インターミッションが無い。適当なところで割ることにしたけど、暗転場面も無く、場面代わりの音楽が続いて掛かってるので、1:53くらい(ナポレオンがツァーリの信書を読んでモスクワ侵攻を決めたトコ)でブツ切りしたわ。 ロシア貴族の国内話とナポレオンのロシア遠征の戦争話が展開される。なので原作未読でタイトルの『戦争と平和』の意味がわからない私は、戦争(ナポレオン)編と平和(ナターシャ)編とし、両方の主人公をピエールと考えて観てみた。 ナポレオンの歴史ものって観たこと無いから、すごい数の軍隊がぶつかり合う戦争が多く、勉強になるなぁと思いながら、そちらはそれなりに楽しめた。 一方で平和編は、どうしても華のあるオードリー(ナターシャ)の活躍を期待してしまうけど、彼女が会う男会う男に色目使ってるビッチのように思えて、どうも素直に応援できない。どこか影のあるアンドレイに求婚された直後、グイグイ来るアナトーリにあっさり鞍替えするところ。ピエールに阻まれて以降アンドレイ(というかボルコンスキィ家)に再接近を試みるとか、このあたりの流れって、迷作パールハーバーを思い出してしまった。あっちはダメでコッチは良いんかい?なんか…どーなんだろーねぇそういうの。 最後は終始安パイで、今後も裏切りそうにないピエールに落ち着くって、あんたそりゃあまりにリアルでしょ。 長編小説に流れる体感時間と、いくら超大作とはいえほんの208分で終わる映画の体感時間とでは、受け取る側の印象も変わるのかもしれない。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-01-15 22:40:29) |
416. 大怪獣ガメラ
《ネタバレ》 昭和ガメラをしっかり観たこと無くて、ガメラが敵の怪獣の背中を木琴代わりに叩いて『強いぞガメラ』を演奏していた記憶が薄っすらあるだけ(どの作品か不明)…記念すべき第一作ということで観たけど、最初はガメラも人類の敵だったんだねぇ。 オープニングからもったいぶらずにガメラがしっかり映ってて、どんな顔してるか良く観えるわ。バストアップはなかなか迫力あるんだけど、引きの画で観ると、思いのほか甲羅が薄いのね。なんか胴体がペタンとしててアタマがデッカイ印象。目の電球と火炎放射器が入ってるからなのかな? 登場する航空機は拘りを感じさせる。アメリカ軍のF-102(またマニアックな…)は木型から造ったっぽいし、アラスカ基地(?)のF-104は基地から離陸するだけでなく、隅っこに滑走路に向かってタキシングする機体を再現するなんて芸が細かい。ガメラが飛行しながら空港を破壊するシーンは、想像以上の大爆発。飛び散る火の粉が飛行機に引火する表現はなかなか…飛行機愛溢れる作品です。 銀座に現れるガメラ。天井が壊れたビルの中を逃げ惑う人々に容赦なく火炎吹きかけるガメラが怖い。一番感心したのはTowaビルを襲うシーンで、窓の中に逃げる人が見える。影絵の応用だって解ったけど、こんなアイデアよく思いついたものだわ。 Zプランの巨大なカプセルの本来の使い道が気になって仕方ない。“人類の手に負えないから火星に放り出してしまえ”って結末もエゴ丸出しでブッ飛んでる。 アトランティス大陸とガメラの伝説とか、後の平成ガメラって、昭和ガメラの適当な初期設定を上手にフォローした名作だったんだなって、改めて思った。 人間なんてお構いなしにちどり丸や銀座を破壊する中で、なぜか俊夫くんを助けたガメラの謎。平成ガメラ3の助けられた子供のシーンは、ここに掛かってたんだろうな。子供の思い込みをあっさり捨て流したガメラ3に対し、“ガメラはチビの生まれ変わり”“ガメラはいいヤツ”って思い込みで突っ走るクソガキ俊ちゃんに焦点を当てたのが本作で、この子がすんげぇウザったい。 怪獣が出てきたのに灯台に登る。時間稼ぎのガソリン電車に勝手に乗る。伊豆の大島行きの船に密航する。周りの大人の寛容さも含めて、どうして誰もこのガキをビンタしないんだろう?と疑問ばかりが膨らんだ。 俊夫の切れ長の目、特徴があるなぁって思ったら、この前観た“高校生ブルース”の昇じゃないか! このクソガキがわずか5年であんなクソガキになるなんて。子供の教育って大事だわ… [インターネット(邦画)] 4点(2023-01-14 18:39:29) |
417. 高校生ブルース
《ネタバレ》 オープニングの4バカ(あ、ウルトラマンタロウの人だ!)、女子の生理日チェックに、もっとヌードや性行為が売りの、ロマンポルノ的な映画かと思っていたけど、大人に成りかけの子供が妊娠してしまうという、当事者の悩みと苦しみが丁寧に描かれていて、エロスよりそっちに関心が向かってしまい、観終わって心がズシンと重くなる内容でした。 スラッとしてスタイルと姿勢が良く、顔立ちが整っていて、今の目で観ても美しい関根恵子。当時15歳にしては大人びて観える。 彼女の表情が演技演技していなくて、例えば昇に妊娠を告げる不安げな表情。佐伯のオジサマに嫌悪感を示す表情。とてもデビュー作は思えない。 興味本位で美子と関係を持って、妊娠を告げられて動揺する昇の台詞。責任を背負いたくない感じがよく出ている。 それでもスラックスにネクタイで、妊娠の本を読んだり産婦人科に行ったりと、子供なりに何とかしようともがき苦しむ姿が生々しい。堕胎費用を工面しようと、美子にも家族にも内緒でバイトするところなんか、自分が撒いた種、美子の妊娠を無かった事にする努力がリアル。内田喜郎がこれまた見事に演じていた。賢そうで内気っぽく、イザって時に頼りなさげなところが、イケメン五十嵐とまるで違う。でも目に力があるなぁ。窓際から美子を見る姿に、昇が何を思っているのか手に取る様に解る。 クライマックスの体育倉庫の衝撃。本当に、痛いんじゃないか?これ、演技なのか?関根恵子、演技でこんな表情出来るのか?デビュー作で。若干15歳で。 昇の苦しそうな表情から、徐々に遠慮が無くなる負の感情も伝わってくる。自分が撒いた種なのに、まるで逆恨みのように。延々と続く苦しみの表現に思わず目を伏せたくなってしまうが、目が離せない。映像の力が凄い。 硫酸。いつも笑っている少女。微笑ましいカップル。そして今の自分。「~これから始まるのよ…」オープニング同様、堂々と胸を張って歩く美子が美しい。 [インターネット(邦画)] 8点(2023-01-12 23:00:31) |
418. 最強のふたり
《ネタバレ》 “Intouchables”『触れ合わない人たち』かもしれない。“Untouchable”のフランス語です。 翼くんと岬くんなんかを連想しそうな邦題は、『2人の間の不可侵な友情』を表しているんだと思います。ただもしかしたら、『接点が無く会う筈のない2人が出会った結果、こんな事になるんだよ』って意味のタイトルかもしれません。 疾走する高級車とパトカーのチェイス。命の危機って感じの深刻なOPから、もうすっかり騙されてしまった。 全身麻痺の大金持ち相手に、どう付き合うかを考えたら、やっぱり私も辞めていく側の介護士みたくなるだろうな。フィリップはもともと障害を持っている人じゃないから、その部分に対する必要以上な気遣いとか、もう沢山って感じだったんだろう。かといって何かが出来る身体でもないので、不満を持ちつつその生き方を受け入れていた。障害者になってから、自分の行動を自分で決められないイラつきを介護士にぶつけていたところ、ドリスが現れて、立場お構いなしにメチャクチャいじられて、ズケズケと物を言われる。 健常者の頃は当たり前だった他人との距離が、ドリスの登場で取り戻せたんだろう。足に熱湯掛けたり、マリファナ薦めたり、オペラで爆笑したり、髭剃る時ヒットラーにしたり、笑っちゃいけないことに笑ってしまう。 エレノアに障害を隠した写真を送ったフィリップに感じる人間臭さ。あれだけの大金持ちならフラれる可能性こそ少なく思うけど。『彼女は車いすの自分を見て同情するんじゃないか?』という不安が湧いたんだろう、もともと障害を持っている人じゃないフィリップらしい不安。この恋の行方がハッピーな方に進んだのも良かった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-01-10 23:20:49) |
419. フル・モンティ
《ネタバレ》 “The Full Monty”『フルチン』…キャー(笑) 世間でよく言われる『スッポンポン』訳でも良いんだけど、アタマにTheが付いてるし、せっかくだからコッチ選びます。 フラッシュダンスを観てたら、どうしてもこの映画をまた観たくなりました。メインのダンスが吹き替えなことでなく、溶接の火花にツッコミ入れるなんてWhat a feeling!! そんなわけで大好きな映画の一つです。失業して追い詰められた男たちが、なりふり構わず大金を手に入れるためにストリップショーを開く。素人の中年男たちのストリップだし、公開当時はキワモノ作品の一つって思ってたけど、やたらと周りの評判いいのね。で、薦められるがまま観たらハマってしまいました。 ウォーターボーイズや少林サッカーなど、こういう、素人が集まって努力して、挫折ありトラブルあり、笑いあり涙ありで、最後に本番でドカンと爆発する映画の、もしかしたら元祖にして、完成形にも思います。…イギリスと日本って同じ島国だし、感性似てるのかな? 映画同様、失業率の高かった斜陽国家イギリスが、クール・ブリタニアと称して音楽やファッションを新しい産業として世界に発信する中で、イギリスの現状を自虐的に観せる、ある意味開き直りとも言えるこの映画もまた、世界に“COOL!”と受け入れられたのかもしれない。 この映画の一番の魅力は、ある意味失業以上に悩みを抱える、愛すべき登場人物たち。 子供に会えなくなる。ストリップに通う妻。浪費癖の妻。高齢の母の介護。名前がホースなのに小さい。ジェラルドがすぐ勃ってしまう悩みを、勃たなくなったデイブに相談するシーンは、相談する方も聞く方も、どっちも辛かったろう。 腹にラップを巻いてチョコバーを食べるデイブ。この時の音楽がロッキーのトレーニングの曲っぽいのもたまらない。同性愛に目覚めたロンパーとガイを横目に「あいつらゲイを極めちまった」には毎回笑わされる。悩んでても辛くても、前向きな彼らに何度笑わされ、何度勇気づけられたことか。 ハリウッドの大作ばかり好んで観ていた当時の私に、貴重な一石を投じてくれた作品です。 [ビデオ(字幕)] 10点(2023-01-10 21:17:09) |
420. フラッシュダンス
《ネタバレ》 “Flashdance”『(見た目が派手な)カッコいいダンス』…とかだろうか?“What a feeling”『サイコー!』だし“” 今回始めて観たんだけど、これだけ有名な映画だと、後発作品に美味しいところをパクられまくって、せっかくのオリジナル見所がスカスカになってる恐れがあるんだけど、この映画は充分に楽しめたな。 あの有名なイスに掛けて水ザバー!のシーン、近くに座ってるおっさんが、水掛かったことに驚いてるのが面白かった。モービーズ、自由度の高いわ。 モービーズでアレックスはプロダンサーを、親友ジェニーはプロスケーターを、友人リッチーはコメディアンを目指してる。すぐ近所にヌードを売りにするザンジバーがあって、栄光と挫折の構図がとてもわかり易く描かれているのも良い。何にでも忖度する今の時代だと、ジェニーはあの後主旨転換して前向きにザンジバーで働くって話になってそう。そうなるとアレックスも何にも言えないんだよな。方向性は違うけど、それぞれが目指すべき目標があるから、そこを目指してガムシャラに頑張っている若者が輝いてるんだよ。 社長のニックと付き合って、ポルシェに乗って高級レストランに行っても、養成学校のオーディションは実力で行きたいアレックスの気持ち、歳を取るとゴチャ混ぜになるけど、その線引の大切さって、あるよねきっと。 ジェニファー・ビールスって凄く華のある女優さんだなぁって思った。写真で見ても素敵だけど、動くとここまで可愛いんだ。肩からずり落ちるシャツの着こなし。…『色の風』って書いてあるのかな?シャツ下でモゾモゾやってブラだけ取るのなんて、タマラナイでしょう。“Maniac”掛けて黙々と踊るシーンがもう格好良いのなんの(…吹き替え?知らないそんなの)。 95分という尺もちょうどいい。モービーズ仕込みの“新しいものを取り入れる姿勢”で、オーディションで派手なブレイクダンスするのもイイ。ダンスのフィニッシュ観せないのも、審査結果を観せないのも、なんかイイ。コレがイイ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-01-10 00:13:57) |