401. 赤い闇 スターリンの冷たい大地で
《ネタバレ》 丁寧につくられた重厚で落ち着いた映像は、品格があり一気に引き込まれました。主人公は、モスクワに入ったのち、現地の大手紙の記者たちに会いますが、ソビエト側の監視が強く、自由な取材どころではないことを悟ります。経過は省きますが、自力でウクライナに潜入し、収穫のすべてを取り上げられ、飢餓に苦しむ人々と、手押し車の上に積まれた死体の山を目の当たりにします。主人公がウクライナに潜入してからのホロモドールの描写については、死者はともかく、生存者はとてもこの程度ではすまない惨状だっただろうと想像しますが、餓死寸前の生存者を再現するのは高度なCG処理でもしない限り難しいでしょうから、致し方ないかなといったところでしょうか。飢餓のリアルな再現よりは、飢餓の子供たちが歌う讃美歌が響くという幻想的な印象付けを狙ったようで、それも一つの選択肢かなとは思います。「五カ年計画」、「ソフホーズ」、「コルホーズ」は、学校の教科書で習いましたが、「ホロモドール」は習いませんでした。「ホロモドール」について学べただけでも貴重です。しかし、当時のソ連の情報統制、鉄のカーテンっぷり。そして、その表側と裏側のあまりの違いっぷりには、ホントにばれないと思ったんかねと呆れることしきりです。大量の奴隷が甲板の下でオールを漕いで進む船を作ってやろうとか、箱の中に人間を入れてハイテク機械ってことにしようとか、そういうレベルの発想ですよね。そういう人間だからこそ、国家元首になってしまうというのが何ともやりきれないというか。飢餓ジェノサイドとも言われており、呆れて済むことではないのですけどね・・・ [インターネット(字幕)] 8点(2023-02-07 18:15:53) |
402. アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場
1939年にソ連がフィンランドに侵攻した「冬戦争」で失った領土の回復を狙った「継続戦争(第二次ソ芬戦争)」を扱った作品。領土の変遷を示す地図が挿入されるのと、日時と場所を示すキャプションが入る以外は、背景等がわかるような説明的描写はほとんどなく、戦場の兵士の視点で、過酷な戦況を臨場感を持って描写しています。我々がよく見る戦争映画というと、ベトナム戦争や太平洋戦争などが多く、亜熱帯のジャングルのイメージが強いですが、寒冷地の戦場は、また違った趣があります。雪が降ると兵士も白装束となり、ガラッとイメージが変わります。戦争映画を見る一つのメリットとして、その土地の地形や気候条件を、否が応でも感じることができるというのがあると思います。道なき自然の中を広域的に移動する描写って他にあまりないですから。殊勲を上げると休暇がもらえて、家族が待つ実家に戻って、麦の収穫を手伝ったりするなど、つかの間ながら牧歌的な一面もあって、これもまた趣があるなと感じました。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-02-07 18:00:13)(良:1票) |
403. Fukushima 50
序盤、地震が起こってから、想定外のことが重なり被災レベルが深刻になっていくまでは、当時の状況が臨場感、緊迫感をもって再現できていて、なかなかの良作なのではないかと思いました。そういうふうに思えたのは、薄っぺらいウェットな演出が入り込む隙がなかったから・・・ということにだんだん気付かされていきます。監督がテレビの演出家出身であることが関係しているのかはわかりませんが、お茶の間向け日本のテレビドラマにありがちな演出で、台詞に頼り過ぎで、演劇空間になっちゃてるんですよね。原発相手に悪戦苦闘しているときは目立たないのですが、落ち着いた場面で、どうにもわざとらしい演劇が垣間見えてしまう。お茶の間向けドラマならそれでもいいのですが(よくはないが)題材が題材だけに悪目立ちしてしまうのですよね。被災状況の再現はよくできていて、見る価値は高いと思いますので、なおさら残念感があります。評判が低いからと言って、それを理由に見ることをやめないで欲しい作品ですね。このような感想を持つ作品は珍しいです。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-02-07 17:53:19) |
404. 真夏の方程式
映画前作「容疑者Xの献身」がそれなりに悪くなかっただけに、「かばう」の種類は違うとはいえ、こうも「かばう」を連発されるとちょっと辟易としてきます。福山のキャラづくりも、前作の堤真一との対比だとアリだったと思うのですが、真っ向から対峙する相手がいないと、雑魚相手に意味ありげなことを匂わしがちな不快なキャラだよなと。あと「容疑者X」における容疑者の非情な決断は、天才と狂人は紙一重というところで、それなりに納得感があったのですが、本作の容疑者の非情な決断(殺しじゃない方)は、そんな雑なことある?と思ってしまいました。 [インターネット(字幕)] 2点(2023-02-07 17:42:42) |
405. スノーデン
この程度のスパイ活動は、アメリカならやってるだろうな思う話なので、衝撃度としてはそれほどではなかったです。諜報員が自分の担当プロジェクトを有利に進めるために、特定の個人を狙い撃ちにして個人情報を取得し、有利な関係を築くなど、極めて非生産的で、みみっちい活動を行っていることの方が大きな驚きだったかも知れません。実話なので致し方ないのですが、エンターテインメントとしては、手に汗を握るような緊張感はなく、あまり面白くはなかったかな。ルービックキューブは出来過ぎだなと思いましたが、調べたところ事実ではなく演出だったようです。悪い演出ではなかったですけど。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-02-07 17:03:16) |