421. カーサ・エスペランサ ~赤ちゃんたちの家~
社会が破綻寸前の国に、精神の破綻している女達が養子を貰いにくる話。てか、「話」はほとんど無いに等しく、【野はら】さんのお書きの通り、登場するアメリカ女達も含めた「世界」の病巣を淡々とスケッチしていくだけ。汚職とコネが蔓延る拝金主義の傍らで、途上国では生みっぱなしにされた子供達が里子に出され、孤児院に入れられ、ストリート・チルドレンになる。先進国からやって来た女達は女達で、何不自由なく暮らしながらも、子供が持てない負い目からか神経症。一見、傷ついた女達の癒し系ドラマといった装丁ながら、実は病んだ世界を冷徹に追った非常にブラックな作品だと思います。ただ如何せん、はっきり言って全く面白くありません。何ゆえ、これだけのハリウッド女優を取り揃えたんでしょうか? 4点献上。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2006-03-03 00:02:39) |
422. メイド・イン・マンハッタン
恐ろしくオーソドックスな現代のシンデレラ・ストーリー。ロマンティック・コメディというジャンルの中(また、特にハリウッド映画の中)でシンデレラ・ストーリーは全く珍しくありませんけど、ここまで忠実に「シンデレラ」を再現してある映画は初めて観ました。主人公は文字通りのメイド。継母や義姉はわがままな客達。魔法使いはお節介な同僚とチーフ・バトラー。そして現代の王子様は上院議員ってか…。もちろんハリウッド映画らしく、脚本・美術共きちんと作り込んであり、それなりに最後まで観せては貰えますが、ここまでアレだと「夢がある」と感じる前に「馬っ鹿馬鹿しい」と思ってしまう。やっぱ無理ありすぎ。ロマコメに「あり得ない」という言葉は禁句ですけど、流石の私も本作には口をついてしまいます。ありえねー! 5点献上。 [地上波(字幕)] 5点(2006-03-03 00:02:18) |
423. ハートブレイカー(2001)
男を手玉に取ってきた結婚詐欺母娘が、真実の愛に巡り合うというラヴ(?)・コメディ。そこそこ観せては貰えますが、予想通りの話が予定調和で進んでいくだけなので、そんなに面白がれません。シガニー・ウィーバーに比べて、ジェニファー・ラヴ・ヒューイットの露出も少なすぎると思う。唯一、盗難車を改造して売りさばいてる裏家業のレイ・リオッタが「良い人」という設定は楽しめた。その代わり、ジーン・ハックマンの使い方には悲しくなった(こんなのハックマンじゃなくてもいいじゃん)。あと本作の字幕は邦題同様、あんまり気が利いてるとは言えません。ということで、5点献上。 [地上波(字幕)] 5点(2006-03-03 00:01:51) |
424. グロリア(1999)
そんなに悪くはないと思いますけど、どうしてもオリジナルと比較してしまう。以下、二本の比較考察。①オリジナルのグロリアはもっと強くてカッコ良かった印象がある。本作ではか弱い女性の面を強調してる様に感じた。②ジーナ・ローランズは貫禄たっぷりの「情婦」、しかしシャロン・ストーンは唯の「愛人」。③そして、ここが最も大きな変更点だと思いますが、それはグロリアと少年の関係。オリジナルには「恋愛」関係に近かった印象が残ってますが(それでこそ「レオン」の元ネタになり得る)、今回は明らかな「母子」関係になっている。この辺は現在のアメリカのタブーみたいなものが垣間見えて興味深い。ま、「レオン」もアメリカではチャイルド・ポルノ呼ばわりですから、この変更は致し方なかったのかもしれません、5点献上。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2006-03-03 00:01:24) |
425. のら猫の日記
《ネタバレ》 まず、この邦題が素晴らしい。「マニーとロー」では何が何だか判りませんが、「のら猫の日記」は本作の内容をズバリと表してます。里親の元を抜け出して放浪を続ける孤児姉妹、16歳のローと11歳のマニーは正にのら猫。猫が台所から魚を盗み出す様に万引きで食料を手に入れ、猫が空き家に居つく様に、季節外れで家主のいない別荘に住み着く。おまけにローは、臨月近くになっても自分の妊娠にすら気づかない。挙句の果てには河原で出産って、こりゃ本物ののら猫だよ…。これも基本は、孤児が幸せに巡り会うという古典的児童文学の物語。しかし二人はオリバー・ツイストみたいに流されるだけではなく、無理矢理にでも幸せを連れてくる。♪幸せは歩いて来ない、だから歩いて行くんだね~、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2006-03-03 00:00:55) |
426. 美しい夜、残酷な朝
デヴィッド・フィンチャーのパクリ(リスペクト?)っぽいものの、自分の世界を明確に映像化してあるパク・チャヌク作品や、クリストファー・ドイルと組んで持ち味のインディ臭さを廃した陳果作品はそれなりに見応えがあった。面白さで言えば、私もやっぱり「餃子」。現にプラセンタをガブ飲みしてる女性が多いのも事実だし(今はBSE関係で手に入らないのかな?)、人間の女は鬼子母神より恐ろしいということでしょうか。それにしても、こういう風に並べられると三池崇史作品(と言うより「邦画」特有)の貧乏臭さが際立って、辛いものがあった。こんな企画なら、もう少し他国に負けない「品質」で勝負して欲しい。また、私は長谷川京子も初見でしたけど、何で売れてるのか良く解りませんでした。という訳で、全体をひっくるめて5点献上。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2006-02-25 00:13:10) |
427. PTU
組織犯罪課の刑事が紛失した一丁の拳銃を巡って、当の刑事、機動隊(PTU)、特捜、対立する二つの犯罪組織等が複雑に交錯する一夜を描いたノワール群像劇(タイトルに反して主役は「PTU」じゃない)。エピソードもキャラクターもほとんどコメディなのに、仕上がりは至って大真面目。特に、戦闘服に身を包んで無表情に夜の街を徘徊するPTUの一団が、全体にハードボイルドな緊張感を漂わせ、作品を馬鹿映画の一歩手前で踏み止まらせてる(実際の夜間パトロールもこんな物騒な感じなのか?)。アクション色は薄いものの、「ザ・ミッション/非情の掟」で見せたジョニー・トーの様式美は健在で(【ロンメル元帥】さんのご指摘通り、照明効果が素晴らしい)、何とも言えない独特の雰囲気を楽しめる映画になってます、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2006-02-25 00:12:44) |
428. 恋の風景
香港の女流監督・黎妙雪が、「金魚のしずく」のドキュメンタリー・タッチとは打って変わったファンタジックなスタイルと、香港・中国のスター俳優を使って撮り上げたラヴ・ストーリー。亡くなった恋人の幻影を追い求めているヒロインが、新たな恋に踏み出して行くまでを描いてます。私的な見所は、回想シーンに登場する今は亡き恋人を演じたアクション・スター鄭伊健。私が観たことのある作品とは全く違う、透明感のある演技が新鮮でした。そして、人気絵本作家・幾米によるアニメーション。映画自体は非常に低体温な感じで進むので、余り好みではありませんでした、5点献上。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2006-02-25 00:12:23) |
429. アフガン零年
地味な映画を想像してたら、モブ・シーンで始まったことに驚いた。このオープニングのお陰で一気に物語に引き込まれる。そして映像を見ながら思ったのが、「これってセットじゃないんだろうなぁ」ってこと。この風景を撮影するのに多分ロケハンも必要なかった筈で、タリバン政権崩壊後と言っても、国の荒廃は本作の映像通りだと思う。もう一点、本作から感じたのは「劇映画の力」。知識としては知っているタリバンの女性虐待も、こういう形で見せられるとストレートに胸に突き刺さってくる。何故こんな政権が生まれてしまったのか、今一度考えてみる必要がありそうです、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2006-02-25 00:12:01) |
430. 純愛中毒
《ネタバレ》 普通の三角関係恋愛映画風に始まり、オカルト映画風に展開し、ある種のサイコ映画風に落ち着くという、良く解らないラヴ・ストーリー。演出のポイントが定まってない所為で、非常に中途半端な印象を受けました。これはもっともっと大仰にサスペンスを盛り上げた方が良かった。そうすればこそ、この順当などんでん返し(?)にも驚きがあった筈。それにしても考えてみれば、これも相当なストーカー映画。一体「ストーキング」と「純愛」の違いは何処にあるのか? 私は、ストーカーがその辺にいる唯の男か、イ・ビョンホンであるかの違いしかないと思うゾ、4点献上。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2006-02-25 00:11:18) |
431. ションヤンの酒家(みせ)
初めは押し付けられた甥と主人公との触れ合いが物語の中心になるのかと思ったら、父、兄、兄嫁、酒家の店員、常連の男、そして麻薬中毒の弟と同じく、この男の子も彼女を取り巻く人間の一人でしかなかった。映画は彼女の暮らしを断片的にスケッチするだけで、いつまで経っても彼女の全体像を描かないので、掃き溜めに鶴を地で行く美人の上、芯が強そうということ以外の彼女の姿が見えてこない。開放政策の成功者と犠牲者、合理的な生き方と情に縛られる生き方等の対比が感じられるものの、そんな話でもなさそう。もしかしたら女性には、本作の中に自分にも通じる普遍性みたいなものを見出せるのかもしれませんけど(なんせ原題が「生活ショー」)、男である私には無理。そんな訳で、ションヤンの美貌に3点献上。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2006-02-25 00:10:46) |
432. MUSA-武士-
始まってからは移動、戦闘、移動、戦闘の繰り返し。砦に着いてからも戦闘、休憩、戦闘、休憩の繰り返し。その全てが同じテンション(うるさい位のカット割)、同じ戦法(ほとんど戦術なんか無い)、同じBGM(♪テレレレレ~ってヤツね)で進むので、派手好きな私も時間の経過と共に飽きてきます。功を焦るサラブレッドの将軍、百戦錬磨で常に沈着冷静な副官という図式も陳腐(てか、アン・ソンギに存在感あり過ぎ)。本作の大きなテーマは「望郷」の筈なのに、それが余り伝わってこないのも映画に入り込めない原因だと思う。そういうことで、エンディング・テーマ曲に-1点、4点献上。 [DVD(字幕)] 4点(2006-02-25 00:10:18) |
433. RAIN/レイン
香港映画風脚本(つまり荒唐無稽なマンガ的ストーリー展開)を韓国映画風演出(つまり大袈裟に情感を煽り過ぎて観客を引かせてしまう)で仕上げたタイ製映画(「RAIN」って邦題は、主人公が殺し屋で、単に「レオン」と語呂が似てるって以上の意味は無いと思う)。香港・韓国共、アジア映画の中では勢いがありますけど、それぞれの味わいには相当な開きがある。例えば、それらをタイの風土なり感覚なりで上手に包み込んであれば「融合」も可能でしょうけど、無理矢理合わせただけではチグハグな物しか生まれない。本作は、正にそんな食べ合わせの悪い作品です、4点献上。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2006-02-25 00:09:51) |
434. ヴァーチャル・シャドー 幻影特攻
「マトリックス」の影響を隠すことなくメインの設定に据えた、香港映画らしい香港映画(↑ジャッキー・チェンが製作に噛んでたなんて知らなかった)。格闘スキル等を脳に直接ダウンロードして、簡単に超人を作り出せるという馬鹿馬鹿しい話なのに、ストーリーは至ってシリアスな上、悲劇的。この湿っぽさも香港映画らしい。また、例によって「アメリカの機関」も登場(主人公達は思い切り中国人なのに、何かと言うとFBIとかCIAで働いてたりする様な気が…)。あと、ヒロインの扱いも通例通り。何か観る映画観る映画、ヒロインが死んでってる様な気がする。そういうことで、3点献上。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2006-02-25 00:09:25) |
435. kitchen/キッチン(1997)
1989年に森田芳光が映画化したよしもとばななの出世作「キッチン」を、8年後の香港で、しかも富田靖子主演でリメイク(当時のアミューズのアジア戦略の一環?)。透明感があり無機的だった森田版に対し、こちらは香港映画特有の色使いと生活臭で彩られてます。また、主演女優の演技だけなら川原亜矢子に勝ち目はありませんが(富田は「南京の基督」の時よりも自然で良い)、私は元々面白い物語だとは思っていないので、退屈な印象に変わりはありませんでした。とにかく、男の耳を嘗め回した挙句、男が興奮して迫ると「スケベ!」と罵るこの女が良く解りません、3点献上。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2006-02-25 00:08:53) |
436. オリバー・ツイスト(2005)
ロマン・ポランスキーがこの物語をどういう風に料理したのかに興味があったし、「これまでより強いオリバー・ツイスト像」とやらにも期待をしましたが、やっぱり楽しめませんでした。どこが「これまでより強いオリバー・ツイスト」なんだ? 例によってオリバーは流されるまま、最後まで自らの意思で行動を起こさない。全てが良いんだか悪いんだか判らない運任せ。小説ではディティールや心情を克明に描けても、映画の彼は常にオドオドし、今にも泣きそうな表情を崩さない卑屈な少年にしか見えない。入魂のオープン・セットも、余り活かされてる様には感じませんでした、4点献上。 [映画館(字幕)] 4点(2006-02-21 00:05:19) |
437. dot the i ドット・ジ・アイ
《ネタバレ》 本作も一応どんでん返し型サスペンスに当てはまるんでしょうけど、私はこのストーリーを余り楽しめなかった上、もっと悪いことに全く意外性を感じませんでした。仕組まれた三角関係というのも古典の時代から嫌と言うほど繰り返されてきた設定だし、ラストのトリック(?)にも感心しません。一番意外だったのは、監視カメラの映像を繋いだだけの映画が、どっかの映画祭で賞を獲ってしまう設定(この辺は「サル」を思い出した)。ま、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」も似た様な映像を繋いだだけだったし、こーゆーのもアリなのかな? そういうことで、残念ながら4点献上。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2006-02-21 00:04:56) |
438. 家族のかたち
うらぶれた町にならず者が帰ってくる。しかしその男の妻と子は、既に別の男と幸せな家庭を築いている。昔の男の登場で日常に広がる僅かな波紋。やがて、二人の男の対決の時が迫る…という、例によって下層階級を舞台にしたイギリス製ホームドラマ。ストーリーも演出も原題通り西部劇のパロディになってますが、そこはイギリス。話はマッチョにはならず、シニカルに、そしてペーソス一杯に展開していきます。生みの親より育ての親。単に子供を作ったからって、そう簡単に親になれるもんじゃありません。人は子供を育てることによって、親へと育てられるのです、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2006-02-21 00:04:32) |
439. 恋の骨折り損
こりゃ酷い…。色々なことに挑戦する現代随一のシェークスピア役者も限界を露呈したって感じ。大体、50年代ミュージカルの再現ってのが無謀すぎる。編集構成やセット、比較的長回しのカメラワーク等を真似てみても、肝心要の役者のパフォーマンスがどーしょーもないじゃん。こんな一夜漬けの「かくし芸大会」レベルの歌と踊りを、「長回し」で見せられても困る。こんなのは「ムーラン・ルージュ」風に出来るだけカットを割って誤魔化すか、本物のミュージカル役者を連れてこなければ土台無理。私好みのジャンルではありましたが、正に鑑賞自体が骨折り損でした、3点献上。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2006-02-21 00:04:05) |
440. オネーギンの恋文
暮らしに不自由が無く、幸せな家庭というものを信じず、自分の感情を押し殺して生きるオネーギン。そんな生き方の所為で、珍しく得た友人と呼べる人間とも彼は決闘してしまう。若い頃はこういう生き方でも問題なく前に進んで行ける。しかしやがて、自分がこれまで失ってきた多くのものを思い知る時が来るのです。最後までニヒルを通すのも良いですけど、思いの丈をぶちまけて、更に自分の過ちを思い知るのも悪くない。とりあえず彼は、満足感は得られたんじゃないでしょうか。あと、ヘンテコなロシア訛りを聞かされなかったのは、アメリカ映画と違って良かったです、5点献上。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2006-02-21 00:03:36) |