441. ザ・バンク -堕ちた巨像-
冒頭の雨のベルリンがいい。何かによって成された何がしかが実にシリアス且つ分りやすく描かれる。何かが巨悪であることもこの冒頭シーンだけでじゅうぶん伝わる。全てを監視していたはずの主人公には見えていなかったという所がスリリングでまたその後の展開に活きてくる。もうけして何も見落とさぬとでも言いたげなクライヴ・オーウェンのぎらついた瞳はターゲットをひたすら凝視する。ニューヨークでの尾行シーンに特に顕著なのだが最後のイスタンブールの尾行もまたいい。中身は大真面目に社会派なのだが映し出されるのはアクション。ここは好みの分かれるところだろうけど、個人的にはアクションの部分がきっちりと撮られていたことに大満足。美術館シーンはサービスアクションとでもいいましょうか。お祭りっす。でも単に派手なだけでなく、やっぱりきっちり撮っている。この銃撃戦の目玉である建物構造をきちんとおさえながらアップショットとの繋ぎをアクションを停滞させずに見せきっている。良かったです。面白かったです。 [映画館(字幕)] 7点(2009-11-10 16:10:58) |
442. フィクサー(2007)
《ネタバレ》 冒頭の数十分は何が起きているのかよく分からず、分からないままに明るくなりつつある夜明けの空をバックに美しい馬が登場し男前の主人公が車から降りて馬に近づくと車が爆発という実に謎めいたシーンが映し出され、ここで唐突に過去シーンへと変わる。この冒頭シーンが再登場するのは映画が終わりに近づこうとしている頃であって、結果から言っちゃうとここから主人公はようやく戦うことを決心するというか、せざるを得なくなるわけで、かと言ってここから映画が始まるわけではもちろんなく、この後あっという間に終わってしまうわけである。要するに映画の大半で主人公はどっちつかずの曖昧な立場にいる。曖昧な立場でいる様々な理由がこの映画のほとんどを飾る。金とモラル、組織の中の一人であることと一人の人間であること、そして父親であることの間で揺れる主人公。たしかにそれらの葛藤はじゅうぶんにドラマとなる。だけど退屈なのだ。冒頭の爆発シーンのせいでいらぬ期待を抱いてしまっているせいだ。あれが無ければこの主人公の決断にいたる過程を楽しめたのではないだろうか。殺し屋登場の乾いた恐怖感はもっと増していただろうし、何よりも謎を共有する主人公にもっと共感できたであろう。脚本家ギルロイ、脚本に溺れる。そんな感想を持った。ティルダ・スウィントンが光っていた。 [映画館(字幕)] 6点(2009-11-09 17:08:16)(良:1票) |
443. MISTY(1997)
事件が起きるまでのあれこれがかったるいんだけど、このかったるいあれこれが後の展開に作用する伏線だったりするのだろうと少しドキドキして見た。日本の武士にとうてい見えない顔立ちの金城武とまだ宝塚の非日常オーラを纏う天海祐希の、背景から魅力的に浮いた二人がこのドキドキ感をいっそう高めてくれる。振り返ればこのかったるい時間帯が一番映画を楽しめた。最も楽しめるところだと勝手に予想していた、いわゆる三者の言い分が食い違う事件のミステリアスな様相となるはずの部分がまずもってミステリアスじゃない。さらにそこに描かれる人間の業といったものなんかにはほとんど触れてこない。どうやら、真実には悲しい過去が秘められていた!などというテレビのサスペンスドラマのようなノリを楽しむもののようだ。原作とか黒澤の『羅生門』とか頭から払いのけて見たほうが良いが、実際それは不可能に近く、だからこそ作り手たちはこんな陳腐なドラマに改変したものを高尚なフリして見せるしかなかったのだろうか。痛々しい。 [ビデオ(邦画)] 4点(2009-11-06 15:49:52) |
444. 荒野の七人
スマートで淡白で薄っぺらくて予定調和。つまらん。つまらんなりに楽しめてしまうのは音楽の力か。この頃の映画音楽は音楽単体で勝負せず、しっかりと映画と繋がっていることが必須。だから音楽を聴くとちゃんと映像が蘇る。あと、薄っぺらいなりに7人が7人共に魅力的なのは役者の実力か、はたまたジョン・スタージェスの演出の力か。役者それぞれのその後の活躍からすれば役者自身が魅力的だったというのもあるだろうが、個性派をまとめあげた監督の手腕も捨てがたい。なにしろこの監督はこの後『大脱走』でも見事に個性派連中を魅力的に描くことに成功しているのだから。 [DVD(字幕)] 5点(2009-11-05 16:09:32) |
445. 隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS
あくまでオリジナルはベースであって全く別の作品なのだからどんな改変もありだと思う。面白ければ。でも面白いか?これ。現代風アレンジは否定しない。長澤まさみもかわいいしさ。でもやっぱり面白くない。映画というのは皆一様に面白いものを作ろうとしている。仮に芸術作品といわれる類のものであっても。で、この作品も面白くしようと頑張っているのはわかる。でも、何が面白いのかってのはそれぞれなんだけど、どうもこの監督が考える面白さってのは少なくとも作品の質を上げることには貢献していない。美男美女を出演させて、ちょっと恋愛感情なんか芽生えさせちゃったりして、ドラマに適度な抑揚を用意して、派手な爆発を入れといて、これだけしたらとりあえずは楽しめたでしょみたいな。たしかに映画を滅多に見ない多数派にはそれなりの満足を提供しているのかもしれない。よって商品としては価値向上に貢献しているのだろう。いや、商品志向だからダメってことじゃなく、うまく書けないんだけど、与えようとしている娯楽があまりに幼稚というか浅はかというかバカにしてるというか。 [DVD(字幕)] 2点(2009-11-04 15:47:17)(良:1票) |
446. 椿三十郎(2007)
オリジナル版の話だが、『用心棒』の大成功によって東宝から「三十郎」を主人公にしたものをもう一本作って欲しいと依頼され、すでに出来上がっていたシナリオの主人公を「三十郎」に書き換えたものが『椿三十郎』。つまり三船を念頭に置いて書かれたシナリオである。いや、もちろん、役者というのは他人を演じるわけだから、仮に豪傑な三船を念頭に作られたキャラであってもそのキャラを演じるのが役者の仕事。なのだがその役者が個人的に受け付けない織田裕二ときた。まあ好みは置いといて、はたして織田がそのシナリオにあるキャラを演じることが出来たのかというと甚だ疑わしい。というと戦犯は織田と言い切りたいがそうとも言い切れない。そもそも織田を選んだのは森田。それに捕えられた若侍たちを助けるための無駄な殺生シーンの悪鬼のごとき非道ぶりを全くもって消し去ってしまい、そのうえ格好だけはいいというあり得ないオブラートの包み方はなんなのだ。あそこにこそ武士道を変に勘違いした若侍たちの強烈な戒めが描かれると同時に「抜き身」と評された主人公の怖さが描かれたシーンなのに。そっくりそのままリメイクするならちゃんと細部までそっくりそのままでいかんかい。 [DVD(邦画)] 3点(2009-11-02 15:58:09)(良:1票) |
447. 60セカンズ
オリジナルの『バニシングIN60”』のレビューでも触れてるんだけど、今の映画はどうでも「ストーリー」にしなきゃ収まらんようだ。どうでも車を盗まなきゃならない理由が必要で、そのために出来の悪い弟が必要で、息子思いの母親が必要で、血も涙もない依頼人が必要となる。こういう堅苦しい辻褄併せに翻弄しなきゃならない映画環境を嘆く。『60セカンズ』は精一杯につまらないセッティングをしながらもなんとか楽しませようと頑張ってる。凄腕の車泥棒だった過去のシーンを映さないだけまだ良心的だとも言えよう。実際、車を盗むシーンも派手なカーアクションもそれなりに洗練されていて楽しい。ただしオリジナルとコレを見比べるまでもなく、見た目の派手さと観てるこちらの感情の起伏は比例しない。相変わらずクールでセクシーなちょいワルがすこぶる似合うアンジェリーナ・ジョリーが映画に華を添えているのは悪くない。 [DVD(字幕)] 5点(2009-10-30 13:03:15) |
448. ソラリス
緩やかな水の流れに対する窓ガラスの雨の雫。感情を押し殺したかのような静寂。地球からソラリスへの移動の省略。ソダーバーグは明らかにタルコフスキー『惑星ソラリス』を意識している。意識したうえで、タルコフスキーがソラリスが起こす現象を映し出したのに対し、ソダーバーグはその現象が主人公に及ぼす影響と心の葛藤に焦点を合わせる。亡き妻への固執の原因を事細かに見せる。何度も行ったり来たりする過去のシーンと現在のステーション内のシーンを『トラフィック』でも有効に使われたコントラストの違う画面によって時空を自在に飛び超えてゆく。「ソラリス」を利用した男女の悲しいドラマを実にうまく見せていると思う。タルコフスキー版とは違ったオチもなかなかにショッキングだし、何よりもこの男女のドラマに相応しいオチだと思う。総じて満足できました。しかしタルコフスキー版はこの長々と語られる男と女のドラマを映すことなく男と女のドラマを想像させたし、男の心の風穴がちゃんと描かれていたのだということを忘れてはいけない。 [DVD(字幕)] 6点(2009-10-29 14:05:44) |
449. アサシン(1993)
元々『ニキータ』自体がハリウッド映画を模したような作品なのでこれをハリウッドでリメイクするとなると相当派手なものが出来上がるんじゃないかと思ったが、派手なようで意外に地味で堅実な演出をするジョン・バダムのおかげで無難な佳作に仕上がった。ブリジット・フォンダが個人的に好きなのでけっこうポイント高いです。ニキータはめそめそしているのが良かったのだが、アメリカ女は強さを前面に出す。終盤の対決がいかにもハリウッド的展開なんだけどけして悪くない。舞台がアメリカ(しかも旅先の殺しのシーンもオリジナルのベニスに対しニューオーリンズ)というだけでどこかサバサバとした爽快感が漂う。『ニキータ』のほうが印象的なシーンが多いが、全体のバランスでは『アサシン』に軍配をあげたい。 [DVD(字幕)] 6点(2009-10-28 15:26:35)(良:2票) |
450. サブウェイ123 激突
《ネタバレ》 デンゼル・ワシントンが犯人でジョン・トラボルタが地下鉄職員なのかと勝手に思ってて勝手に期待に胸膨らませていたのだが、蓋を開けてみるとまるっきり逆であったことにガッカリしてしまったのだが、犯人がどうやらウォール街でビシバシいわせてた金融マンだったという設定ならば致し方ない。地下鉄職員というよりも名探偵のような落ち着きぶりを見せたオリジナルのウォルター・マッソーに比べると脛に傷持つしがないサラリーマンのデンゼル・ワシントンのほうがはるかにリアルで、だからこそ犯人とのやり取りも必然的に緊張が高まってゆく。しかしオリジナルは単調になりがちな展開ゆえにカーアクションが冴えたのに対し、リメイク版のド派手なカーアクションはあまりにもアホっぽい。劇中で市長が何故ヘリを使わないのかと呆れるぐらいだからこのアホっぽさは狙っているのだと思いたいのだが、ただでさえガチャガチャしたトニー・スコットの映像が余計に慌しくなってしまっているような気がする。早々にある男が殺されてしまったことでラストシーンが当然全く違ったものになるのは分かっていたが、これだけは超えることはないだろうオリジナルのストップモーションを軽々と超えたエンディングにはやられた。しかもストップモーション。 [映画館(字幕)] 6点(2009-10-27 15:01:02) |
451. 3時10分、決断のとき
オリジナルほどの男同士のせめぎあいに見られる緊張感を持ってはいなくとも観客が喜びそうな派手なガンアクションは見せてくれる。この安易な展開になぜか心躍るのである。「西部劇」を新作で見る。ただそれだけで嬉しいと思わせてくれる。主人公が信念を貫こうとする源泉に「家族」がいる。オリジナルはその中でも「妻」こそにこの男気を見せようとする。リメイク版ではそれが「息子」に変わる。ただ変わるだけでなく息子が帯同することから生まれるドラマが加わる。このあたりはいかにも現代の映画だなと。正直くどい。主人公の無謀な行動を観客に納得させるためのあれこれを匂わせているのだが、元来「西部劇」の衰退は、何故殺すのか、何故奪うのか、何故決闘するのかをいちいち説明しなくちゃならない現代の映画環境のせいというのもあるんじゃないかと思ってるんだけど、いくらその説明をさりげなくやったとしてもそれは「父と息子」のストーリーを面白くさせるだけで映画が面白くなるわけじゃない。一方ラッセル・クロウの描き方がいい。何をするにも説明がほとんどされない。されなくてもなんの問題もない。また悪党として魅力的な顔をしている。何はともあれこれを切欠に絶滅したはずの「西部劇」が復活してくれたら嬉しい。 [映画館(字幕)] 6点(2009-10-26 17:35:54)(良:1票) |
452. ティム・バートンのコープスブライド
パペットアニメーションを模したCGアニメーションだとばかり思ってました。それほどに完成されてるってことなんだけど、それってなんか損してるような。最近7歳の娘にどうぞと頂いたDVDで久しぶりに見てみると、この世界観ってもろに『スウィーニー・トッド』と同じだなと。時代もおそらくそう違わないだろうしイギリスっぽいし色が無いしミュージカルだし。でもどう見てもリアルじゃない極端な顔立ちをした登場人物たちのほうが本物の人間よりもはるかにこの世界に馴染んでいる。娘もけっこうこの作品を気に入っているようなのだが、女二人と男一人の三角関係というドロドロにしかなり得ない設定なのに三人の誰もが悪者にならないどころかむしろ三人ともを応援したくなるという話にしているところが功を奏しているのだろう。キャラクターデザインもいいし動きもいいのだが、最もいいのは照明。モノトーンの中で死んだ花嫁に当てられる逆光が素晴らしく、そのグロテスクな容姿にもかかわらず美しさを発散させている。ピアノの連奏シーンがお気に入りのうちのヨメさんはそこばかりを見て、さらに楽譜をネットで探し出し、今、娘と練習中である。 [DVD(字幕)] 7点(2009-10-23 16:55:16) |
453. アザーズ
例の映画よりも『シャイニング』や『ポルターガイスト』を彷彿させる。私が最もイメージとして近いと思ったのはフィンチャーの『パニック・ルーム』。ほぼ舞台を家の中に限定し暗がりであることが重要で尚且つ「母の物語」であるという点で。生憎『パニック・ルーム』は『アザーズ』とほぼ同時期の公開なので、どちらの作品も互いに影響を受ける境遇にはないのだが、アメナーバルが好きな監督の一人にフィンチャーの名を上げているのは興味深い。『次に私が殺される』における「映画と現実」、『オープン・ユア・アイズ』の「夢と現実」、と二つの世界を同居させて見せ続けるというクローネンバーグ的モチーフがこの作品においても有効的に使われる。しかしクローネンバーグというよりはやはりフィンチャーか。主人公がもう一つの世界に視点を変える、そのショックと刹那は『ファイト・クラブ』のそれに近い。そして視点を変えさせる役目が「光」というのがメタ映画的などと思ってしまうのはもちろん言いすぎなのだが、子供を殺す恐怖の対象が真実を照らすものであったという重要なアイテムに「光」を持って来るというのが憎いくらいに巧い。 [DVD(字幕)] 7点(2009-10-22 14:49:29) |
454. 恐怖の足跡
《ネタバレ》 私も例の映画の元ネタであることを知ったうえで観たので、もし知らなかったらはたしてオチに驚いたのか、そのあたりは今さら知るよしもないのですが、この作品の公開当時ならばじゅうぶんに驚けたように思います。でもけしてオチだけの映画ではなく、オチを知ったうえで観てこそ、主人公のこの世界に存在することの違和感、孤独感がいっそう引き立ってみえたような気がします。廃墟となった遊園地の遠景が実に怪しく実に寂しく、よくまあこんなにもドンピシャなロケーションを探せたものだと感心。あまりくわしくは書けませんが例の映画にはまだいろいろな意味での「救い」があったのですが、これはただそのことを知らされるだけなので、悲しい後味を残します。 [映画館(字幕)] 6点(2009-10-21 13:29:47) |
455. 怪談(1964)
小泉八雲の怪談四篇。 ■「黒髪」内容もさることながら屋敷の風貌が溝口健二『雨月物語』を彷彿させるが、『雨月物語』と比べられちゃうとちときつい。しかしクライマックスのダイナミズムは迫力満点。後悔と謝意、そしてそれらを上回る恐怖が男を襲う。 ■「雪女」雪女メイクの岸恵子が怖い。空に浮かぶ目のような渦模様が幻想的。この一編に凝縮された世界観がとにかく素晴らしい。 ■「耳なし芳一」冒頭の源平合戦のくだりが長く感じたが、赤子を抱えて入水する悲劇の直接的描写が、その後に見せられる平家の霊の強さに結びつく。芳一を演じた中村賀津雄がいい。 ■「茶碗の中」怪談話とは言い難い一編。作風的にもこれだけが妙に軽い。 ■<総評>総じて話がきっちりとまとまっていて丁寧。丁寧に紡いでいるからこそ少々アバンギャルドなセットにしても古典的なるものが現れているのだろう。豪華な演者と型にはまらない演技も素晴らしく、なによりも短編それぞれを1本の映画のように妥協無く作っただろうことがひしひしと伝わってくるのがいい。 [映画館(邦画)] 7点(2009-10-20 18:47:32) |
456. 怪談(2007)
《ネタバレ》 古典と現代のジャパニーズ・ホラーがどのような融合を見せてくれるのだろう。あるいは融合などせず、豪華な女優陣でもって純和風な愛憎劇でも見せてくれるのだろうか。などと想像を膨らませながらの鑑賞はDVD.映画館で見るべき映画だったのかもしれない。なぜなら美しいと評判の江戸の街のセットが全く美しいと思えなかったから。たしかにキレイではある。とくに室内シーンは言うこと無し。でも屋外シーンがどことなく薄っぺらい。雪もCGを使っているせいか季節感が全く無い。このあたりで既にうんざりぎみの鑑賞だったうえに腕がバーンと出る「融合」とは程遠いショックシーンに鑑賞姿勢が一気に崩れたのだが、その後、強烈なインパクトを持つ「とり殺す」という言葉のストレートさにひかれたり、井上真央と故郷へと進む小さな船の画が妙に美しかったりと、時々姿勢を正させる画が飛び込んでくる。怖くないこのお話の中で最も怖さが出ていたのが井上真央が雨の中「付いて来ている」とつぶやいたあたりで、その後、頭上の橋の隙間からはっきりと黒木瞳の瞳(シャレじゃなく)を見せてしまうのはどうかと思ったが、このシーンが後々の屋根裏から見下ろす幽霊目線を効果的にしているところなんかは巧い。でもこの怖さ自体がどうも軽い。少なくとも妖艶とか情念とかといったものが全然足りないように思う。思うのだが、そもそも妖艶とか情念とかといった純日本的なものの濃さを求めていた私と相性が合わなかったというだけのことなのだろう。 [DVD(邦画)] 5点(2009-10-19 17:13:20)(良:1票) |
457. ロッキー・ザ・ファイナル
回を追うごとに落ちてゆく「ロッキー」を侮っていました。見くびっていました。元々このシリーズを1作目以外は映画館で見続けてはいても特に思い入れがあるわけでもなく、今回も全く期待していなかったんだけど。シリーズ最高傑作です。まずもってスタローンがアクション俳優であると同時に立派な映画監督であることに気付かされました。まだ明るくなりきらない朝と、街灯のオレンジをこれ以上ないほどにうまく使った夜のシーンがとにかく素晴らしい。地味に素晴らしい。過去のフィルムの挿入というおなじみのシーンも大袈裟に感動を煽る試合のシーンよりもエイドリアンとのささやかな日常に重点を置くことで「これで本当にお終い」なのだという感慨を煽っている。ただしんみりするだけに終わらず、しっかりと燃える闘志をトレーニングと試合のシーンで表現するエンターテイメントぶりも健在。減点対象はスタローンの老いた顔くらい。肉体は驚くほどの筋肉を身につけてはいるが顔の老いは隠せない。もちろんスタローンはあえて隠さなかったのだと思う。堂々とアップで顔を晒している。そこにリアルな年齢を見せつけ、無謀ととられるほどの挑戦を表現したかったのかもしれない。不可能は無いということをより感じてほしかったのかもしれない。でも、垂れ下がった瞼がよりいっそう垂れ下がった状態は美しくない。ごまかす必要はなくてもアップで見せる必要もなかったと思う。 [映画館(字幕)] 6点(2009-10-16 17:18:37) |
458. ランボー/最後の戦場
ミャンマー政府を非難したものでもなければ軍事政権を非難したものでもない。勧善懲悪の悪として登場できれば敵は誰だっていいのだ。これはランボーが戦場で敵を殺しまくる映画なのだから。しかしシリーズを締めくくるにあたって「戦争とは」という問いに対するある一つの答えを用意している。戦争とは・・・人殺しである。戦争では自国が善であり敵は悪なのだ。この作品は敵を悪と強調したうえで敵を殺しまくるのだが、その死に様が凄まじい。生きていた者が肉片と化す。動いていた者が止まる。その瞬間、悪である敵もまた人間なのだと思わされるのだ。さらに今回ランボーは誰の命令でもなく自らの判断でこの殺戮を行う。しかも実に個人的な理由で、と言っていいだろう。戦争において兵士は上官の命令で人を殺す。もっと言うとその人殺しには国のため、あるいは正義のためという大儀を得ている。そのことで霞んでしまうもの、それが人を殺しているという事実なのだ。この映画はイヤというほど戦争が人殺しであることを見せ付けている。こんなにも惨いことを国家が国民に強いるのが戦争なのだ。反戦ベースの1作目とシリーズの流れを加味すれば順当な帰結と言えるかもしれない。 [映画館(字幕)] 6点(2009-10-15 16:26:58) |
459. インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国
《ネタバレ》 1作目が最も好きな者としてはマリオン登場というだけで期待値がかなりあがりました。ハリソンの六十半ば?の年齢にしたってそれほど障害になるとは思っていなかった。なぜならインディは軍人ではなく大学教授であり、いかなる危機も体力ではなく知力と行動力で解決してきたのだし、むしろちょっと重い動きこそが作品のユーモアに貢献してきたのだ。だから体力的にきつい年齢に達した今こそ楽しさはパワーアップされてしかるべきなのだ。しかし今作はインディシリーズのアクションを重点的に継承している。たしかにハリソンは年齢を感じさせない見事なアクションを見せてはくれる。でもやはりそこで勝負というのは違うんじゃないかと。そしてテレビシリーズのほうによく見られた「インディと世界史」というテーマもひきずられたために「核実験」という時代背景がむりやりに挿入される。映画版ではナチスが出てきたとしてもそれは時代を映したものではなくあくまで「敵」として登場したにすぎない。今回のKGBだって単なる「敵」でしかないのだから時代を映すエピソードなんかいらない。極めつけはラスト。べつに宇宙人はいいです。ロズウェル事件とかエリア51とかじゅうぶんに伏線があったのでそれはそれでいいです。でも画として最後のでかい円盤はないでしょと思った。期待を大きく裏切られたぶん悪口ばかりになってしまったけど、けしてつまらなくはない。 [映画館(字幕)] 5点(2009-10-14 16:27:44)(良:1票) |
460. 20世紀少年 -最終章- ぼくらの旗
《ネタバレ》 一身上の都合で見に行ってしまいました。これだけはイヤだって言ったのに。ちなみに前の2作はDVDでちらっと見ました。ヨメがこの日のために借りてきたんだけどあまりのくだらなさに途中で見るのやめました。これはそっくりさん大会か。金のかかったかくし芸大会か。いや、そういう意味では楽しめたのかもしれない。神父なんてめちゃそっくり。なんでわざわざそっくりメイクをする必要があるのかわからんが、とにかく笑えたからまあいいか。原作マンガを知る者限定のお楽しみではあるが。マンガのほうでは終盤、まだ続くかと呆れながら読んでたので「ともだち」の正体とかもうどうでもいいよと思ってたんだけど、映画のほうはこれ1作(といっても155分)で同じように思わせてしまう。マンガ版の途中までの「ともだち」でもあった○○○○が実はみんなが□□□□君のことを勝手に○○○○だと思ってたという映画版のみの、そりゃ傷つくよ、な展開はさすがは浦沢直樹(脚本)と思いました。まあ、どうでもいいけど。地球防衛軍を武装解除させたときにヘルメットのフェイスカバーをあけたら高嶋政伸と田村淳だったシーンで、ナイナイの岡村やったら面白かったのにとかヨメと笑いながらトークがはずんだことに感謝の意を込めて大サービスの4点だ! [映画館(邦画)] 4点(2009-10-13 16:37:05)(笑:2票) |