461. 命をつなぐバイオリン
《ネタバレ》 そもそもウクライナがこの時点でソ連支配下になっていること自体が不法な占領の結果なのだが、さらにそこにナチス・ドイツが不可侵条約を破って進軍するという状態であり、主人公はユダヤ人とドイツ人という何とも複雑な構成。ただ、この映画の描写は、そんな重層構造にはそれほど踏み込んでおらず(庇う側と庇われる側の逆転とか、気のいいウクライナ人おっちゃんとかはあるが)、むしろ仲良し3人組の日常生活作品といった赴きすらある。ただそれはいいとしても、各場面が妙にぶつ切りで、ここはもうちょっと引っ張ってほしいというようなところでも、あっさり先に行ってしまうのが気になった。 [DVD(字幕)] 6点(2022-08-24 23:58:58) |
462. 赤毛
三船敏郎が重々しすぎて、この主人公の役にまったく合っていないというのが最大の難点なのだが、脚本もかなり今ひとつだと思う。ラストのくだりなどは、それまであれこれ持ってきていたのを処理しきれておらず、グシャグシャになってるし。高橋悦史先生と寺田農先生の出番が割と多めだったのは、ちょっと嬉しい。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2022-08-24 00:23:20) |
463. 陸軍
《ネタバレ》 タイトルと製作年から、てっきり当時の軍隊が対象だと思っていたら、いきなり慶応年号の時代劇から始まる。そこから日露戦争あたりに話が飛んで、さらにその次に・・・と順々に飛んでいく。その中で話もあっちこっちに飛んでいるので、何というか、凄く目まぐるしいのです。タイトルに反して、陸軍そのものの描写も一部だけです。本来は、連ドラ向きの素材だったのかもしれません。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2022-08-22 01:11:35) |
464. クリントンの真実
クリントン大統領がいかに反対派からの攻撃を受け続けてきたか、という趣旨のドキュメンタリーです。その主題はなかなか興味深いのですが、肝心の構成が、ほとんどはいろんな人へのインタビューをただそのまま流しているだけで・・・。何がそこでの論点であってそれはどういう結果になったのかとか、出てくる人が言ってることに裏付けはあるのかとか、その辺まで目配りはしてほしいところでした。まあ、当時見ていた人からすれば、誰がどういう人でどういう立場なのかというようなことは、当然の前提として知っていたのかもしれませんが。 [DVD(字幕)] 4点(2022-08-20 00:11:01) |
465. 希望の街
《ネタバレ》 約30人くらいの登場人物の、三昼夜にわたる出来事を描いた作品。とだけ聞くと、どんだけごちゃごちゃするんだ、と警戒してしまいます。事実、導入部は話が飛びまくっています。ところが、それぞれの登場人物の顔が見えてくるにつれて、まるでジグソーパズルが完成していくかのように、大きな一つのつながった世界ができあがっていきます。この構築力は見事でした。あっちとこっちがここで関係している、みたいなくだりも多々登場しますが、それも設定に溺れることなく、物語の一部をなしています。その丁寧さの中に、制作者がタイトルにこめたメッセージも見えてくる仕掛けになっています。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-08-19 02:52:46) |
466. セキュリティ
《ネタバレ》 歴戦の元海兵隊隊員が、警備員に雇われてショッピングモール(というかちょっと大きめのスーパー程度)にいたら、証人保護プログラム下の少女が逃げ込んできて、包囲するマフィアとの闘いが始まる。この何と魅力的な設定!舞台はそのモールのみ!で、その開始点から浮気せずにモール内の闘いのみで走り切る潔さには好感が持てます。ただし、それなら、モール内の商品や部品を活用するとか、知恵で相手の裏をかくとか、いくつか見せ場はあるものの、もっとネタが欲しいところでした。最後の方は、ジャングルとかでやってるのと変わらない銃撃戦になっています。なお、アントニオ・バンデラスは、なかなか渋い年のとり方をしていていい感じです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-08-19 02:43:33) |
467. 燃える平原児
あれこれ複雑な人間関係を置いている割には、脚本上も演出上も何も整理されておらず、もちろんプレスリーに演技力など望むべくもなく。つまり、映像としての再現シーンを羅列しただけで終わってしまいました。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2022-08-17 23:49:18) |
468. 千年女優
《ネタバレ》 往年の名女優のインタビューに来たはずが、その女優の作品世界の中に取り込まれてしまう。実は物語としては冒頭のその部分で終わっている(あとは、そのレールの上を走っているだけだから)。しかし、思考先行の制作スタンスとはいえ、その思考をぶれずに最後まで突っ走らせて完結させた態度は、やはり潔いと思う。一つの想いだけで行動し続ける主人公もなかなかだが、狂言回しの社長とカメラマンに余計なことをさせず、ただ女優についていかせているだけというのが良い。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2022-08-16 23:52:29) |
469. CLASH クラッシュ(2009)
《ネタバレ》 何か訳ありっぽいお姉ちゃんが、訳ありっぽい仲間を集めてミッションに挑む。のですが、あまり説明もないうちにそのうちの一部は退場しますし、チームは早々に空中分解みたいになるので、最初の設定は何だったんだという感じです。その後もああだこうだがつながってラストに至るのですが、ストーリーとしてさほど面白いわけではありません。ただし、アクションの切れはどの一つをとっても実に鋭く、その辺のハリウッド作品や香港作品よりはずっと上ですので、そこを見るだけでもそれなりに楽しめはします。 [DVD(字幕)] 4点(2022-08-15 20:20:26) |
470. タンゴ・リブレ 君を想う
《ネタバレ》 刑務所の看守がタンゴを習いに行ったら、自分が監視している囚人の妻がいた。しかもその妻の愛人も刑務所にいて、妻は両方に平然と面会していた。という実に魅力的な設定。はたしてここから織りなす心理の綾はいかに、と思っていたら、あまりそこから深まらない。囚人の側は中でみんながタンゴをやり始めるなど、それなりに無茶で面白い展開はありますが、肝心の看守の側がそこから取り残されて、完全に傍観者的になっています。教室を途中で止めるというのももったいないなあ、あそこでこそさらに別の物語が発展するはずなのに。よって、あの強引なラストも、ラストのためのラストになってしまっています。キーパーソンの妻の生活感ある色気はなかなかだったので、それによって作品が支えられてはいますが。 [DVD(字幕)] 5点(2022-08-15 19:03:32) |
471. ビューティー・インサイド
《ネタバレ》 この設定で本当に映画を作ってしまおうと考え、そして実際に作っただけでも称賛に値する。まさに発想の勝利。しかしあくまでも中身は純愛一直線、途中で「ヒロインの男取っかえ引っかえ疑われ問題」なんかもちらりと顔を見せるが、そっちの方には反れていかない。なんだけど、着地部分はちょっとぐらつきましたね。別にチェコなんかに場所を移さなくてもよかったと思うし、時制が飛んでからが妙に長い。また、冒頭は男性側ナレーションだったはずなのに、最後は視点が逆になっているのも気になりました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-08-12 00:15:52) |
472. カリフォルニア・ガール ~禁じられた10代~
入口の主人公設定が実に観念的でありきたりで、かつ人物としても魅力がなく、その時点でダメ作品決定かと思っていました。本題のロードに出てからの面白さはそこそこでしたが、前置きが妙に長かった気も。しかし、ミラジョヴォがこんな年齢の娘がいる母親役というのもちょっとびっくりしたし、メイシーとかスティーンバージェンといった(そして終着点での「あの人」も)豪華キャストがしれっと投入されているのも不思議。 [DVD(字幕)] 4点(2022-08-09 00:48:58) |
473. バッテリー
基本的に、ほとんどすべての登場人物の台詞が、頭が悪そうであるか、内心をそのまま言葉にしているだけかのどちらかなので、ドラマの広がりようがありません。主人公にとっての野球が結局何だったのかも不明。ただし、競技としての野球をできるだけ忠実に美しく撮ろうという最低限の意思は見受けられるので、点数はそこに対して。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2022-08-08 01:39:06) |
474. ドグラ・マグラ(1988)
この異形の怪作を映画化しようと真面目に考えて、そして本当に作ってしまったというだけでも価値のある作品。そのチャレンジャーぶりは、「不連続殺人事件」と双璧をなすともいえるのではないか。変にまともっぽいことをせず、淡々と粛々と進んでいく作り方に好感。もっとも、原作が原作なだけに、親切な分かりやすい作品には間違ってもならないのだが。 [DVD(邦画)] 5点(2022-08-06 01:51:01) |
475. アルフィー(1966)
主人公がいろんな女性を渡り歩く、という一言でまとめられる作品。ただその場合、相応に各女性に個性があったり、それに基づいて関係性の違いなども際立たせたりしてくれないと面白みがないのですが、およそその辺は考えられていません。マイケル・ケインの最後まで突っ走るテンションはなかなかですが、結局は役者頼みでした。そういえば、若い頃のマイケル・ケインは誰かに似ていると思ったのですが、若い頃の渡瀬恒彦ですね。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-08-05 02:24:28) |
476. 他人の顔
変なことをやろうやろうとして、かえって閉塞して凡庸になってしまっている。せっかくの設定を無にしている主人公のしつこい喋りが、すべてを象徴している。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2022-08-04 21:13:42) |
477. クリープショー
《ネタバレ》 ホラー作品というのは、ただ怖い生き物や不気味な現象だけをそのまんま出しても面白くなくて、ある程度理性に訴えたり、現実との関連性を示してくれたりしないと、怖くないのです。その意味から考えると、これは不合格です。作中に煽りが入れば入るほど、逆に怖くなくなっています。これはパルプ・フィクションですよという冒頭の設定も、別に機能していません。ただ、もしかするとタランティーノはこれを見ていて、「自分ならもっとセンス良くできるぜ」とか思ったのかも。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-07-29 21:31:25) |
478. フォードvsフェラーリ
クリスチャン・ベールにこういう不良中年をやらせたら、もうその時点で品質は保証されてるんだけど、結局、制作側がそれに寄りかかってしまってるかな・・・。筋立ては初期設定から予想される一直線そのものだし、マット・デイモンの役も、何か立ち位置がふらふらしていてはっきりしない(というか、演技的にはベールに置いていかれている。デイモンがこうなるのは珍しいと思う)。洪水のようなレース画面の連続はそれはそれで迫力はありますけど、やっぱり「それはそれ」なのです。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2022-07-27 01:12:46) |
479. Be With You 〜いま、会いにゆきます
《ネタバレ》 オリジナルとほとんど同じなのですが、もともと確固とした枠組みがあり、しかもそれ自体が物語のキーポイントをなしているので、むしろいじりようがなく、結局こういうのはそれでいいのです。しかも、このようなしっとりとしたストレートな(そして身近で家庭的な)ラブロマンスは、むしろ韓国映画の得意とするところでもあるので、違和感はありません。加えて、ソン・イェジンの、2000年代とまったく変わることのない落ち着いた美しさにも驚きです。そして、オリジナルより明らかに優れているのは、あちらで雰囲気ぶち壊しだった最低なエンディングテーマが、こちらにはないということです。余韻までがきちんと作品を成しています。よって、総合的には、こちらのリメイクの方がむしろ上です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-07-26 01:25:43) |
480. マンハッタン・ラプソディ(1996)
《ネタバレ》 バーブラが自分で主演しちゃったのは、やっぱり失敗だったのでは・・・。この主人公はもともと自己肯定感が非常に低く、そこが話のスタートになっているはずなのに、バーブラが主演だと、最初から何をやっていても自信満々に見えてしまいます。また、制作当時で54歳という年齢も合ってませんねえ、あれこれモラトリアムな悩みをする年ではないでしょ。また、ジェフ・ブリッジスも、何が起こってもどうとでも解決しそうに見えますし、ここももうちょっと学問以外何も興味なさそうな人をあてるべきでした。それと、セックスをするとかしないとかいうのも、テーマとしてダメとはもちろんいわないけど、あんなに明け透けにそのまんま展開するのではなくて、もっとアプローチのしかたはいろいろあったのではないかな。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-07-25 00:46:23) |