461. あぜ道のダンディ
邦画界が誇る名バイプレーヤー光石研さんを主演に抜擢した石井監督の男気に5点。光石さんの愛すべき親父の痩せ我慢に1点。そして、、あわよくば主役を食ってやろうという危険な存在感の田口トモロヲさんに1点。計7点。 [映画館(邦画)] 7点(2014-07-20 00:17:36) |
462. 恋人たちの食卓
《ネタバレ》 完成した料理よりは料理される直前の鯉や鶏の生きた姿を映したショット、またそれらを料理する場面に拘っているようで、"食は命の恵み"といったアン・リー監督の教えが伝わる映画です。食卓の場面は、家族たちが食を共にする場所というよりは重大な告白をする場所として描かれていたのがとても印象的でした。食べるということはすなわち、心が解放されることなのか。中華のようでどこか和食のテイストを持ち合わせた台湾料理の数々、学校や交通網に人間が所狭しとひしめく雑踏から、"台湾"という国の情景が画面を通して十分に伝わってきました。最後蛇足ながら、驚愕のラスト(笑)はどんでん返し系映画の隠れた名作としても一つおススメしたい。 [DVD(字幕)] 7点(2014-07-13 15:36:52) |
463. 渇き。(2014)
《ネタバレ》 グロさと暴力描写が尋常じゃない。時折インサートされるアニメーションやポップな場面がなければ、これは園子温監督の映画?と錯覚してしまうほどです。作品を根本から否定する意見になりますが、加奈子が明らかな人格異常者であることを、親たちがこの年齢になるまで全く気が付かない、という事実に違和感を感じました。幼少の頃から何年も共に暮らしていれば、奇行の数々はあるだろうし、その兆候は少なからず感じるはず。特に母親です。その辺にいる不良とはワケが違う、このような犯罪者と一つ屋根の下で暮らしていて、何も知らなかったではあまりにも不自然です。藤島の行動に全く賛同できないことも大きなマイナス。娘をこれだけ愛しているならば、娘のためなら何をしても許される、では日本中が犯罪者で溢れてしまいます。過度な暴力描写は他の監督に任せて、「下妻」「嫌われ松子」路線をもう一度。渇きではなく、これは私の渇望です。 [映画館(邦画)] 2点(2014-07-03 23:43:48)(笑:1票) (良:2票) |
464. キツツキと雨
《ネタバレ》 沖田監督の映画は、テンポがよい。会話の「間」と、ゆったりとしたテンポにはかなりこだわっているようで、それは必ずしも万人受けするわけではないけど、2時間通してバランスがよくて、僕は観ていてとても心が落ち着くんだ。 山の天気は変わりやすい。仕事中に、突然土砂降りになり、干してある洗濯物がずぶ濡れになっていたり、こういうどうでもよさそうな光景を通して、彼らの日常や生活感にスポットを当てていることもよい。 役所さん演じる木こりの岸さん、その仕事ぶりは完璧。映画はこの立派な大人たちに対して、自立できない半人前の大人たち二人、そしてその成長という構図。しかし最終的に、若い映画監督さんは「なぜ映画監督に?」状態から一人前になったし、息子さんは木こりになったし、きっと「とりあえず、始めてみろ、結果は後からついてくる」が、迷える若者たちへのメッセージなんだ。 主要な三人以外では、神戸浩さんの走り出すゾンビがツボだった。 もう一つ、岸さんと助監督 (古舘寛治) に不思議な友情関係が芽生えていくのがよかった。 →2021/2/3追記。 DVDにて再鑑賞。この展開だと、冒頭に彼が撮ったゾンビ映画の完成品を (全編ではなくても) 上映していたら、ちょっと「カ〇ラを止めるな!」に似てるかも。 [映画館(邦画)] 7点(2014-07-02 21:50:03) |
465. キサラギ
《ネタバレ》 練られた脚本もさることながら、状況とともに微妙に変化していく役者たちの表情や話し方など演技もとても見応えがあり、彼らの芸達者ぶりを堪能できます。その中でも序盤におけるいちご娘の挙動不審な存在感は際立っており、同じいちご娘とは思えない終盤近くのお父さんキャラと比較すれば、この変貌ぶりはやはり5人の中でも香川さんは別格の上手さ。そして、満を持して登場した映像の中のキサラギ嬢の、想像していた通りのB級アイドル全開の姿には思わずニンマリ。最終的には後味のよい終わり方であることもよい。確かにキサラギ嬢は鳴かず飛ばずのB級アイドル、しかも短命でファンもわずかでしたが、そのわずかの愛すべきファンたちに支えられて、幸せなアイドル人生を送った、と言えるかもしれません。 [DVD(邦画)] 7点(2014-06-19 20:35:21) |
466. インスタント沼
《ネタバレ》 三木監督印の脱力系コメディ映画。期待を裏切ることなく「亀は意外と速く泳ぐ」の路線を継承、ゆる~い笑いと小ネタを織り交ぜながら、平凡な日常をちょっとだけ楽しくする"コツ"を教えてくれる映画です。河童や龍が実在する実在しないは別として、いないと決めつけてかかるよりは、本当にいると考えるくらいの想像力をもった方が人生は楽しいですよ、ということでしょう。麻生久美子さんはもちろん、キャスト全員ノリノリ演技がとても印象的でしたが、やっぱり三木監督作品では岩松さんとふせえりさん、このお二方のヘンテコ感が一番面白い。 [DVD(邦画)] 6点(2014-06-18 20:49:27) |
467. 暗殺の詩/知りすぎた男どもは、抹殺せよ
全体的に謎の多い映画。と言うかわからんことばかりです。追跡者たちは何者なのか? デビッドはなぜ監禁されていたのか? そして彼らが何を知りすぎたのか? それらについて、僕らが知りすぎることのないまま映画は終わります。ロベール・アンリコ監督と言えば、確か「冒険者たち」でも謎めいた追跡者たちがいましたねえ・・。好きなんだろうか、こういうの。なんにせよ、監督は何かしら映画の見過ぎな気がします。しかし、エンニオ・モリコーネの物悲しいテーマ曲、終末的な雰囲気 (近未来のような) など、全体的には悪くないので、なぜか酷評する気になれない不思議な映画。 [DVD(字幕)] 6点(2014-06-11 19:14:11) |
468. とらわれて夏
《ネタバレ》 次々と映し出される片田舎の風景。風にざわめく木々。そして不安感をあおる音楽。この片田舎で何かが起こりそうなことを充分に感じさせ、あっという間に視聴者を物語の中に引き込む、先ずこの冒頭から素晴らしい。 母子家庭の親子と脱走犯の交流。この奇妙な共存関係が成立し得たのは、親子には足りなかった父親の愛情、フランクには足りなかった家庭の温もり、このぽっかりとあいた心の隙間を、お互いが与え合い満たされていくことによって得る安堵感が、脱走犯と人質という関係からくる緊迫感に勝ったからと思います。 野球、車といった素材や会話によって伏線を張り、要所要所でそれを回収していく展開の中、特に "ピーチパイ" はただの小道具ではない何かを感じさせたが、まさかヘンリーの人生を変えて、フランクの未来をも救ってしまう代物であったとは驚きました。 映画の内容には満足でしたが、唯一残念なのはこの邦題です。原題も内容のよさも全く伝わってこない、この安っぽいメロドラマのようなネーミングは毎回いかがなものか。 [映画館(字幕)] 8点(2014-06-08 20:22:15)(良:4票) |
469. ファンハウス/惨劇の館
《ネタバレ》 奇形の人間をお化け屋敷の見世物にしてはいかんだろ・・。映画として完全にアウト。デヴィッドリンチ監督の某作品のように、慈悲が感じられる描き方をしているなら話は別ですが、本作はまさに"ただの見世物"です。その描き方に救いは全く感じられません。エリザベス・ベリッジさんに1点。 [DVD(字幕)] 1点(2014-05-26 20:47:59) |
470. 仮面の男(1998/ランドール・ウォレス監督)
《ネタバレ》 公開当時はタイタニックで大ブレイクしたレオナルド・ディカプリオが主演ということで話題性十分であったと記憶しています。しかし、、気の毒にもそのディカプリオさんは三銃士とダルタニアンに完全に食われてしまい、悲惨なくらい存在感がなかった・・。最後の決戦、颯爽と剣を振りかざす四人の横でおたおたと走り回るディカプリオさんの姿はもはや完全に映画の脇役でした。もちろん、ディカプリオさんには何の罪もありません。6点献上。 [DVD(字幕)] 6点(2014-05-26 20:34:42) |
471. 舟を編む
《ネタバレ》 原作は未読です。松田龍平さんの演技が作りすぎ、といった意見もあるが、私は彼が役者として新境地に挑戦したとしてここは好意的に受け取りたい。95年頃と言えば、パソコンが飛躍的に普及する直前の時代。まだ多くの人が辞書を手に取って言葉を探したあの時代です。今となっては、言葉を検索するならパソコンの方が圧倒的に早くて便利なのだが、辞書には確かに存在した手作りの温かみはそこには一つも感じられません。利便性を最優先して何から何まで機械化、自動化も結構ですが、手作業で辞書を作るような、それこそ大海原に舟を編むような気の遠くなる作業に誠心誠意励む、こういった日本人が誇れる文化を後世に残していくことも大切なことではないか、と思います。今回、"大渡海"作成に携わった人たちを見ているうちに、なぜだか自分が日本人であることが心から嬉しくなりました。鑑賞後に、本棚にある辞書を改めて手に取ってみました。ずしり、と重たい。一冊の辞書が完成に至るまでの時間や労力を知った今では、それが歴史の重みのようにも感じられてひときわ感慨深いものがありました。 [ブルーレイ(邦画)] 8点(2014-05-24 19:45:40)(良:5票) |
472. 百万円と苦虫女
《ネタバレ》 鈴子 (蒼井優) による、自分探しの旅、というよりは、傷心癒しの現実逃避旅。 視聴者によって、映画のテーマ自体の受取り方が分かれそうな内容なので、あえて本作をジャンル分けするとなると難しい。なんせ、このサイトですら "ドラマ" としか書いていないので、やはりジャンル分けすることを放棄しているようだ (笑) しかし、(心が) パンク・ロックな感じの鈴子がいて、彼女の旅と出会いがある、、だから全く退屈はしません。 もともと、マイナス思考やネガティブな考え方を (個性として) 肯定すること、そこがテーマにありそうですが、好きな娘を引っ越しさせないためにその娘から金を借りまくる、、って、これは斬新でさすがに思いつかない考え方だなあ~、卑屈すぎるが (笑) 海で山で地方の街で、それぞれ恋の始まりを予感はさせる、でも始まることなく、サヨウナラ、、。先に進まない (=プラスにならない) 、このもどかしさも、この映画らしくていい。 彼女が最後にたどり着いたのは、海も山も、おそらく観光名所もない地方の街。この平凡な街の、どこか行き詰まったような閉塞感がまたよかった。 [DVD(邦画)] 7点(2014-05-13 22:00:30) |
473. ブルージャスミン
《ネタバレ》 あくまでC・ブランシェット演じるジャスミンが主役ですが、映画としてはアレン監督お得意の群像劇。ジャスミンを含めて、自分だけは真面、と思い込んでいるちょっと変わった人たちが数多く登場します。そして今回は、冒頭の機内で居合わせた老婦人から始まり、妹のジンジャー、そして妹の恋人チリなど、ジャスミンという人間を第三者の口から多く語らせていたのが特に印象的でした。ジャスミンの自己評価と第三者の評価のギャップが面白く、これこそが人が人と良好な関係を築こうとする時の弊害になっているものだと感じます。彼女は、美しく虚栄心に満ちた、鼻持ちならない女ではありましたが、頭が悪く空気が読めない、恋には一途、といった愛すべき一面も持ち合わせていたので、私はこのジャスミンという女を心底から嫌いにはなれませんでした。しかしラストは、残念ながらあまり後味のよい終わり方とは言えません。人間、その強欲が知らず知らずのうちに他人を傷つけていて、そのツケはいつか必ず返ってくる、といったアレン監督の訓示のようにも感じました。本作も監督の鋭い人物描写はさすがで、どこか滑稽な人間たちを、愛ある目線で描くアレン印は健在、、というよりはむしろ年齢を重ねるにつれてその切れ味は増すばかり。面白おかしい人間ネタをいったいあと何人分温めているのでしょうか・・。これからの作品も期待しています。 [映画館(字幕)] 7点(2014-05-11 02:41:59)(良:2票) |
474. セント・オブ・ウーマン/夢の香り
長い映画史でも、絶対に吹替えで観てはいけない映画がいくつかある。その一つが本作だ。なぜなら、あのアルパチーノの大演説は、その言葉の意味以上に、声そのものの響きが心を打たずにおかないからである。もし吹替えで観たなら、その感動は半減する、と断言しておく。 以下は余談ながら。 盲目という設定、チャーリー、名曲「ラ・ヴィオレテラ」。そう、本作は名作「街の灯」に対する恋文でもある。 もう一つ、チャーリーを演じたC・オドネルについてコメントしておく。彼の抑えた名演技がアルパチーノの良さを余すところなく引き出した、と言っても過言ではない。アルパチーノのアカデミー主演男優賞に対して、C・オドネルは私の心の中ではアカデミー助演男優賞。いつまでも、記憶にとどめておきたい。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-06 11:46:42)(良:1票) |
475. レンタネコ
荻上監督、かもめ食堂から毎回期待しているのだが。本作はイマイチ、猫を存分に撮りたかったのか、とにかく迷走しているような印象。ストーリー、もうちょっとニャンとかならなかったものか・・ [DVD(邦画)] 4点(2014-04-30 18:43:34) |
476. 運命じゃない人
《ネタバレ》 よくこんな面白い話を考えつくもんだ。本当に感心します。とにかく脚本が秀逸。話の大筋と役者のキャラ設定だけで既に成功したようなものだが、抜群のセンスで時間軸をいじくり回してさらに面白くしてる。同じ場面をもう一度映せば、実はあんなトコにもこんなトコにも・・。うまいな、と唸らされる展開の連続でした。台詞も楽しい。「お前、携帯電話をナメるなよ」(笑)「30過ぎたらクラス替えも文化祭もないの」(笑)。探偵役の山中聡さん、主演級で映画出演しているのは初めて観たが、この人すごく楽しいね!それにしても、この二人っていいコンビだと思う。続編やったらかなりうけると思うのだが・・。お金をかけなくても優れた脚本があれば面白い映画は作れる。そのお手本のような映画でした。 [DVD(邦画)] 8点(2014-04-21 21:46:37) |
477. スワロウテイル
《ネタバレ》 "円都"という、岩井俊二監督が創り出した幻想世界。そのアジア各国を混ぜ合わせたような独創的な世界を楽しめました。当時勢いのあったこの監督が、お金と時間をかけて本当に撮りたい映画を撮った、そんな印象です。キャスティングで最も興味深いのはCharaです。このキャスティングは鑑賞前には違和感を感じたものですが、観てみればライブで歌う場面が多いことで納得しました。加えて、Charaの蓮っ葉な雰囲気と、あの少し気だるい感じの声が、本作の世界観にとてもよく合っていて、他のキャストはともかくグリコだけは彼女以外に考えられないと思います。札束に目がくらんだ多くの人が身を滅ぼす話でしたが、これに関しては残念ながら今我々が住んでいるこの世界もあまり変わらない。この幻想世界の中で私が確信したのは、人間や国や時代が変わろうとも、結局世界はお金で回ってるということです。人間が存在するかぎり、この事実だけはきっと永遠に変わらないでしょう。 [DVD(邦画)] 6点(2014-04-16 22:59:43) |
478. 世界にひとつのプレイブック
《ネタバレ》 5点という、ダンスコンテストの点数に全てが尽きると思います。コンテストの採点以外にもあきらかに多くの意味が含まれているこの点数、私は彼らの恋や人生に対する期待込みの採点、とお見受けしました。ダンスも恋も人生も、最初から10点じゃあ面白くないですから。むしろ一度は人生を挫折しかけた彼らにとっては5点は上々の出来、これ以上ない最高のスタートです。そして、この先人生まだまだ長いが、10点という目標があればこの先もきっと前向きに生きていけるはずです。それにしてもデニーロ御大、存在感がありすぎて、普通のパパを演じても普通のパパにはあまり見えない(笑)。やっぱりいつもの普通でない役がいいかなぁ。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2014-03-30 20:40:25) |
479. 下妻物語
《ネタバレ》 中島監督の作品は「嫌われ松子の一生」を先に観たのですが、アニメーションを挿入したり、空想部分を実写とCGで映像化したり、本作から早くも監督ならではの個性あふれる演出が色濃く出ています。とにかく本作は、桃子とイチゴという二人のキャラクターが強烈でした。全くタイプの違うこの女の子二人が打ち解け合い、そして親友になったことは決して不思議なことではありません。彼女たちが違うのは、着ている服や趣味だけであって、"我が道を往く"という意味では本質的に二人はよく似た者同士であるからです。自分を貫いて、そしてたった一人でも自分のよき理解者がいれば、それだけで人生は生きていく価値があると思います。彼女たちは人生の勝者です。 [DVD(邦画)] 7点(2014-03-30 20:17:46)(良:1票) |
480. ベルヴィル・ランデブー
当時、某映画館の日本最大級巨大スクリーンでこの映画を観た時のインパクトはいまだに忘れられません。強烈なデフォルメ、ジャズ、シュール、ブラックユーモア、ノスタルジー。シルヴァン・ショメの個性とイマジネーションが炸裂したこの素晴らしき世界!特に人物のデフォルメは一切手加減なし。謙虚なおばあちゃんの体がこじんまりと小さいことなどは当たり前、態度がでかいおばさんの丸々太った体は車の何倍も大きく、肩を怒らせて歩くギャングたちの肩は怒りすぎて触れれば刺さりそうなほどに鋭角、、といったように、その人物の性格も加味してデフォルメしているのが何とも面白い。観る人選ぶ映画なのでしょうが、私はハマる人でした。けれど、小さい子に観せるには注意が必要です。意外とグロい描写もあるので、アニメだからと安易に小さい子に観せたらトラウマになるかも・・。 [映画館(字幕)] 8点(2014-03-26 21:43:31)(良:1票) |