521. 母の旅路(1965)
《ネタバレ》 導入部では割とのんびりしたメロドラマという趣なのだが、愛人?とどうのこうのなってからは徐々に水位が上がり、決壊して(家を追い出されて)からは別世界に飛翔していく。その中でも、一気に何かが押し寄せるのではなく、じわじわと主人公が絡め取られていく持って行き方が良い感じ。それは脅迫者との対決で臨界点に達するのだが、そこからなだれ込む法廷シーンの心理の綾の応酬ぶりは、ただごとではない。しかも、世によくある法廷メインの作品よりも、尋問や弁論の台詞もきちんと作られていて、ここが付け足しではないどころか、むしろ各登場人物の終着点として明確に機能していることがよく分かる。よく考えると、作中では20年くらい経過しているはずなので、その表現はきちんとしてほしかったとか、あるいは主人公が堕ちる過程はもう少しあった方が終盤も説得的になっただろうとかいう点は気にならなくはないのだが、あの法廷シーンからラストに至る充実ぶりには、あまり文句は言えない。 [DVD(字幕)] 7点(2022-07-01 00:46:57) |
522. 下衆の愛
とりあえず品性もなければ希望もない(そして才能もなさそうな)映画監督が、作品撮影を夢見て何とか前へ進もうとする・・・という構想であるのは分かるのですが、やっぱりそこで終わってます。まず、こういう内容なら、格好悪いなりに主人公に何らかの魅力を感じさせてくれないといけないのですが、それがありません。それと、この展開なら、キーパーソンの女優が主人公にそれなりの光を当てていくのでないと、後々の着地が生かされないと思うけどな・・・。何回か出てくる演技指導のシーンは一定の緊張感はありましたが、そこも、結局はただ怒っているようにしか見えませんでした。 [DVD(邦画)] 4点(2022-06-29 00:35:12) |
523. アラベスク
真面目に作っていることは分かりますし、ペックもローレンも頑張ってはいるのですが、なぜかそれが面白さにつながらないのですね。なぜかというと、やっぱり脚本がつまらないのです。逃げているときでも追っているときでも心理戦の場面でも、説明がやたら多いです。そうすると、役者の芝居の余地は削がれてしまいますし、そんなに説明する余裕があるということは、その場面にはスリルがない、ということにもなってしまいます。原作を映像的に再現するだけで手一杯だったのかな、と思ってしまいます。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-06-28 01:59:13) |
524. スマート・チェイス
かつてLOTRで世界的スターとなり、そしてPOCシリーズをはじめとして2000年代を華麗に駆け抜けたオーランド・ブルームが、こんなC級作品に堂々と出ているのを目にするだけで軽くショックです。もっとも、コスプレのないときの彼は実は演技力が低いということも、作品によっては当時から判明していたりしましたが・・・。さてこの作品ですが、危険な(あるいは訳ありの)ブツを運搬しますという「トランスポーター」的設定からスタートしているようなのですが、肝心の運搬があまりにもノーガードで、いやそれなら大した敵ではなくても、その辺のギャングでも襲撃できるでしょ、になってしまいます。また、一応仲間設定の何人かが団結して危機を乗り切る的な展開にしたいようなのですが、主人公を含めて全員に、そもそも実力が感じられません。よって、いろんな盛り上げ工作も空回りしまくっています。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2022-06-28 01:49:36) |
525. シェラマドレの決斗
《ネタバレ》 世にウエスタン映画は数あれど、この作品ほど対象がごく僅かな範囲に限定されているものも珍しいのではないでしょうか。つまり、主人公が悪役に馬一頭を盗まれて、それを取り返すというだけです。本当にたったそれだけです。ただ、それ自体は発想として悪くはないのですが、そのように軸を限定するのであれば、枝葉をもっとつけてもらわないといけないのですけどね。特に、主人公が特に強くもなければ技術や知能があるわけでもなく、ただ思いつくままにうろうろしているだけなのは致命的です。またそれ以前に、やっぱりマーロン・ブランドとウエスタンは合わんだろ、という自然な結論が確認できる作品でもあります。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-06-28 01:37:08) |
526. トンネル 闇に鎖(とざ)された男
《ネタバレ》 導入部の手際のよい状況設定の腕はなかなか。またその後も、閉塞した空間という限定の中で、的確な展開と課題を見せつけてくれる。しかし着地部分が、さらにもう一段盛り上げようとして失敗したかな・・・。第2トンネルの工事の遅れが数週間スパンくらいで、再開要望が60%以上だとかあるわけないし、現場作業員の死亡事故は、工事会社の安全確認怠慢以外の何物でもないでしょうに。むしろ、救出側がいかに技術を駆使してこの難関の現場を突破したとか、その中で電話越しにどういう関係が形成されていったかとか、そういう部分を見たかったところでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-26 00:35:36)(良:1票) |
527. マッキー
《ネタバレ》 主人公が何と蝿に変身して宿敵に復讐!という物凄い設定なのですが、それを大真面目にやっているところが良い。序盤はシリアスなラブロマンス風味なのが、蝿になってからはそれを全部忘れたかのようなアクションコメディのノリなのですが、そのブレのなさも良い。虫視点のアクションなんかは、あの「アントマン」を彷彿とさせますが、こっちが3年も先なんですね。●その上で、いくら相手が悪い奴とはいえ、途中からは割と陰湿になっていきます(笑)。何というか、徐々になぶり殺しにしているような雰囲気もありますし、しかもそれを「今日はここまでやったぜ」みたいにヒロインとやりとりするくだりなどは、まあ引かないわけではありません。が、悪役はどこまでも悪役なので何をしてもよい、というのはインド映画のお約束なので、ここはそれでいいのです。●ところであのラストは、強引にハッピーエンドでまとめただけのように見えて、意外に奥が深いです。ヒロインは、蝿が甦ったことは知っているのでしょうか。しかし、その前の羽ペンダントをさわるところや、事故にも単に不思議そうにしているだけのリアクションから見ても、知らないように見えます。もしかすると今度は、ヒロインからも誰からも認識されない存在として甦ったのかもしれません(とすると、まるで地縛霊のような存在であり、それはそれで怖いですが)。しかし、インド映画なだけに、その辺のことは何も考えていないのかもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-25 18:41:26)(良:1票) |
528. TOPLESS(2007)
《ネタバレ》 レズビアンの女の子たちのあれこれというふれ込みなのですが、照準は中心の1人に合っている感じです。ただ、周辺人物も含めて、何かを深く掘り下げるわけではなく、さらっと表面を撫でて終わってしまいました。ところどころ変に安っぽい映像(セット感がまる出しになってしまう)も気になりました。ただし、ラストの時制が飛んでからの2人を描いたシーンの切なさは秀逸で、こういう角度を駆使してもっと立体的に作ってほしかったと思いました。 [DVD(邦画)] 3点(2022-06-23 01:18:27) |
529. ガチャポン
ちょっと暗めの青春群像劇を作ってみようと思ってスタートしたら、本当にそれだけで終わってしまいました、という作品。登場人物に個性も変化も感じられなければ、そもそもみんな同じような芝居をしているので、中身の発展のしようがない。それっぽい雰囲気映像が流れているだけです。 [DVD(邦画)] 2点(2022-06-21 00:58:02) |
530. ベティ・サイズモア
《ネタバレ》 俳優と役の区別がつかなくなってそこにのめり込む(どころか会いに行く)だけだったらライト・コメディなんだけど、そこに導入部の夫をめぐるシークエンスが入ることによって、妙に重くなっている。さらには殺し屋2人から追跡されるロード・ムービーへ。と、普通だったら収拾がつかなくなるところなんだけど、コメディ演技をシリアスにできるレネー・ゼルウィガーという奇跡のキャスティングによって、そこで全部引き締められました。ただ、フリーマンがレネーにのめり込むというのが、写真だけの理由ではどうにも弱いんですよね(フリーマンの重々しさというキャスティングも含めて)。一応、ドリス・デイとか40年代とかいう台詞で説明をつけようとしたっぽいんですが、やはり無理がありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-20 01:19:23) |
531. ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
《ネタバレ》 いくらでもエンターテインメント的に盛り上げられる素材であるのに、あえてそこを外して地味にやろうとしているように見えるのは、「リンカーン」のときもそうだったな。しかしそうなると、ストリープもハンクスも手持ち無沙汰というか、どう演技していいのかよく分かっていないように見える。「リンカーン」のときはデイ=ルイスのもともと浮き世離れした人外的な存在感にすべてが吸収されたわけだけど、ストリープやハンクスはあくまでも対象素材を分かりやすく噛み砕くのが持ち味であるため、こういう演出には合わないのです。またそれ以前に、このストーリーって、それまであまり経営を分かってなさそうだった代表が、ここぞというときに決死の判断をするところに意味があると思うんだけど、ストリープがそれをやると、最初からどうとでもやってしまいそうな万能感が醸し出されてしまうので、物語が成り立たないのだな・・・。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-06-18 21:19:06) |
532. タレンタイム~優しい歌
何かね・・・最初のコンクール(これがやたら長いのも難点)で、「いろんな国籍の生徒が出てきます」「それがそれぞれ芸を披露します」「その生徒たちがそれぞれストーリーを発展させます」という構成になっている時点で、すでにものすごく人工的であり、設定ありきなのです。だから、いくら感動系やホノボノ系のエピソードを放り込まれても、ぐらつきや揺さぶりが発生しません。そして、登場人物も、与えられたシーンの中でそのとおりに存在しているだけであって、生きていません。マレーシアの映画を見る機会はあまりないので、期待したんですけどね。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-06-18 01:27:25) |
533. リオ・ロボ
《ネタバレ》 列車の護衛者と襲撃者がその後タッグを組む話というから、どんな複雑な心理劇が、と思っていたら、まったくその真逆でした。つまり、単に分かり合って結束するだけです(笑)。体育会系学園青春ドラマばりの単純さです。そのご都合主義はその後も一貫しており、お約束のように美女が絡んできて、しかも目的地に潜入後はキャラかぶりも恐れずにその美女は3人になって、途中から加わるオッサンも、老化に伴うミスなどまったく起こしません。というわけで突っ込みどころは満載なのですが、力を抜いて楽しく見る分にはよいと思います。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-06-16 23:41:16) |
534. ビリーブ 未来への大逆転
《ネタバレ》 対象素材の知名度や存在感に対して、制作側が入口でびびってしまったのかな・・・と思うくらい、平坦で奥行きのない作品。一番まずいのは肝心のクライマックスの弁論で、最初にあえて失敗させて後から覆すというのは演出なんだろうけど、あれでは、たまたま4分の再反論が認められたから運が良かった、という印象にしかならない。というか、それだけ喋ることがあるんだったら、最初から喋っとけよ、とも思います。あとそもそも、作戦としても、結局法律全体を問題にしたかったのか、依頼者の状況に特化した問題提起をしたかったのかがぶれてますね。むしろ、わざわざ3人もゲストを呼んで行う模擬弁論の方がシーンとしてはずっと面白いと思いました。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-06-16 01:10:14) |
535. ドリフト(2012)
《ネタバレ》 サーフィン映画だと聞いていて、だとするととにかくサーフィンシーンがたくさん見られると思っていたのですが、かなり違っていました。どちらかといえば、サーフィンを対象にショップを発展させようとする、つまりはビジネス映画なのです。もっとも、ビジネスを成功させたいというのは誰でも考えているところなので、それで作品を成立させようとすれば、相当にネタを仕込む必要があるのですが、ここではそれほど見当たりませんでした。ドラッグがどうのこうので危ない雰囲気になるのも、ストーリー上の壁になるべきはずなのですが、それも機能していませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-06-14 01:44:39) |
536. 存在のない子供たち
《ネタバレ》 無戸籍や無登録の問題を対象としているのかな、と漠然と予想していたが、全然違っていた。「子が親を訴える」という衝撃の導入部すら、それはつかみにすぎず、そこに依拠した作品ではまったくなかった。提示されているのはずばり、「歓迎されない生誕」であり、「存在を全否定された子供たち」である(その本質を捉えた邦題はまさに秀逸)。日常生活の中で当たり前に「出て行けクソガキ」と罵られ、お前なんかいらない扱いをされる。それはもちろんレバノンだけの問題ではないし、だからこそテーマとしての普遍性を有している。視点はあくまで少年視点であり、むしろ淡々と醒めているが、そこで言われている中身は実に重い。●それと、ヨナス役の赤ちゃん、一つ一つの仕草まできちんとその場に必要な「演技」をしていてびっくりしたんだけど、どうやったらああできるんだろう? [DVD(字幕)] 7点(2022-06-12 00:13:00) |
537. インドの仕置人
《ネタバレ》 かつて独立の闘士として戦った主人公が、理不尽な体験を経て復讐者として牙をむく。いや、たったそれだけなんですけど、それで3時間保たせてしまうのがインド映画です。ただ、復讐のターゲットがやっていることが、手続のたびにチマチマした賄賂を要求するという木っ端役人レベルなので、何というか、それで3時間は難しいのですね。せめて、1人あたりの復讐にいろいろプロセスがあるとかならまだしも、それ自体はあっさりしてますし。あと、息子との対立軸というのを大きなテーマに置きたかったのでしょうが、この息子が人物としても小物である上に、制作者もどう描きたかったのかがはっきりしません。よってメインになるはずの親子対決も盛り上がりません。というか、そもそも、数々挿入されるダンスシーンで、悪役(のはずの人)が楽しそうにダンスしていたらいかんだろ。 [DVD(字幕)] 5点(2022-06-11 01:16:43) |
538. ふくろう
《ネタバレ》 シチュエーションの発想は悪くないし、舞台劇っぽいとはいえ映画としての緊張感も維持されている。ただ、いきなり同じような展開で5人が立て続けに処理されるのは、さすがにどうかと思った。警官のところで援護係職員がバッティングして初めて世界が揺らぎ始めるが、本来それをあと2~3人くらい早い場面で起こすところでしょう。また、コメディっぽくしたいんだったら、もっと各訪問人物に個性を出すなり、やりとりを変えていくなりしてほしいところでした。警官と職員が別室に放り込まれてクライマックスを迎えますが、あんな美味しい設定が最後のところだけなんて、実にもったいない。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2022-06-07 01:59:44) |
539. 旅立ちの島唄 ~十五の春~
《ネタバレ》 冒頭の部分でラストまでの展開が予想できてしまうわけですが、そのとおりの内容でした。いや、展開がオーソドックスで定石通りなのはよいのですが、登場人物には特に個性がありませんし、人物の間にドラマがあるわけでもありません。よって、主人公の単なる独白映像を見させられているような感じでした。点数は、南大東島というエリアにスポットを当てた功績に対して。クレーンで乗船する光景にはびっくり。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2022-06-06 02:21:27) |
540. 燃えよデブゴン
サモハンのアクションを見ているだけで楽しめるし、あの丸さでこれだけ動けるというのは人類の驚異でもあるし、この邦題で許される(というかむしろ格好良く見えてしまう)のもこの人だけなんだろうけど、アクション以外の部分が、絶望的なほど面白くないのですよね・・・。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-06-02 01:17:23) |