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ホームページ http://coco.to/author/aniyan_otakoji
自己紹介 レビューを相当サボってしまってるの、単に面倒になっちゃってるからなんですよね。トシのせいか、色々とメンド臭くなっちゃって。
映画自体、コロナ禍以降そんなに見に行かなくなったのだけど、それでも年に70~80本は見てるワケで(でも今年は50本行かないかな?)、レビュー書けよ自分、って思ってる、でもなんか書かない、みたいな。
これからは今までよりも短文でレビューを上げてゆきたいな、と思う次第であります・・・微妙だけど。.

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521.  大地震(1974)
1974年12月31日の午前、日比谷の有楽座でこの映画を見た時から私の映画ファンとしての歴史がスタートしました。お腹の底にずんずん響くセンサラウンドのインパクトや70ミリの大きな画面に、私は「映画って凄い!」とすっかり魅了され、その後、クラスメイトと何度もツアーを組んで出かけたものです(有楽座に2回、東急レックスに5回行きました)。今見ると、画面歪めたり揺らしたりしてるだけのお手軽特撮が多い事に気付きますが、オープンミニチュアセットやマットペインティングは見事。当時はホンモノ壊してる!とか思ったりしましたからねぇ。高速道路から落ちる牛満載のトラックの映像に、「あー、あの牛達はやっぱり死んじゃったんだろうなぁ。勿体ない事するなぁ」なんて。よーく見ると、その脇でワーゲンがころりん、と飛ぶんでミニチュアだって判るんですけどね。チャールトン・ヘストンやエヴァ・ガードナーというスターの事を知り、マーク・ロブソンという監督を知り、ジョン・ウィリアムズという作曲家を知り、映画の魅力は本当にいろんなところにある事に目覚めた映画、私に、映画の楽しみ方の第一歩を踏み出させた記念碑的作品なのでした。センサラウンド方式上映作品が登場したら、今でもすっ飛んで行っちゃうんだけどな(原体験のせいで以降「なんとか方式」に騙される事、数知れず・・・)。
[映画館(字幕)] 8点(2003-11-21 13:15:44)(良:1票)
522.  関心領域 《ネタバレ》 
 知識を求められる映画で、映像を見て音声を聴いて、そこで何が起きているのか、何故そうなっているのかが知識無しでは何も伝わってこない、それ単体では意味不明な映画ではあるの。ドキュメンタリーのようにただ事象を淡々と描いているばかりで、一部タッチの全く異なった不思議な映像が挿入される部分以外はそれが何を言っているのか説明するように描いてはいないのね。  でも私たちはそれが何か知ってる。その塀の向こうで何が行われていたのか、その会話の中の発明がなんのためか、その会議で語られる数字がなんの事を語っているのか、その毛皮のコートが、歯が、沢山の靴が・・・そして恐怖するの。   その一家の日常は凄まじい異常の中に成立していて、だけどそれを異常だと感じていない、正常だと信じてるのね。それは自分たちとはほぼ無関係なことだから。その日常にちらりちらりと入り込んでくる影をヒステリックに否定し自分の理想から決して外れない妻のかたくなな姿勢は恐ろしく見えながら、でも今の人々の写し鏡でもあって。   現在進行形のイスラエルのパレスチナに対するジェノサイドはナチスの再現のようだしイスラエルに与するアメリカはバイデンを選ぶも地獄、トランプを選ぶも地獄、その二択のみの地獄。裏金をため込む自民党の犯罪者集団を罰せず知らんぷりをし、日本政府も東京都知事も弱者を切り捨て、ネトウヨは差別を是とし、それでもとりあえず日常は続く、のかな?って。   あの一家のほんの数年後は果たしてどうなったのかしら?   この映画とか『デデデデ』とか、朝日新聞に寄せられた相談に対する野沢直子氏のクソみたいな回答とかそれを持ち上げるクソみたいな朝日新聞の記者とか(ここら辺いちいち説明する余裕はないので調べてね)、次期都知事候補の小池都知事を持ち上げ蓮舫氏をサゲて偏向しまくるマスコミとか近々に符号する事象がぐるぐるしちゃってもうクラクラしちゃってるわ。  じゃあアタシは何ができるの?ってとりあえずこうしてネット上に文章を残すこと、それはできるのよね。   この映画はスクリーンの向こう側だけで完結してはいないの。
[映画館(字幕)] 7点(2024-05-29 16:58:11)
523.  ゴジラ-1.0 《ネタバレ》 
 『ユア・ストーリー』で山崎貴監督許さん!状態なのだけど、それはそれとして『シン・ゴジラ』よりずっと楽しませて頂いたわ。モブ以外は政治家と役人と自衛隊員だけな『シン・ゴジラ』よりも民間人視点で怪獣を描いたこちらの方が好み、それはもう子供の頃から一貫した嗜好だしね。まあ主役は特攻隊の生き残りの復員兵だけれども。   今回のゴジラは基本『もののけ姫』よね。ゴジラは巨大生物と言うよりも化け物、妖怪、もののけ、タタリ神のような感じ。背びれを立てながら海をやってくるその顔、その目は微妙に生物感に欠けていて、大入道とかダイダラボッチみたいなイメージ。戦争を起こす人間に怒る破壊神ね。  一方で怪獣映画にしては妙にたっぷり描かれる生活描写。戦後の焼け跡のミニマムな地点から再スタートする人の営み。  それぞれに戦争を引きずるゴジラと一人の男の、戦争を終わらせるための戦い。怪獣よりも人間に寄った分、エンタメ感は不足気味かもしれないけれどレビューに毎度書いてる「怪獣と人間ドラマは水と油」って難点をそれでも両立させた怪獣映画としてこれまでで最高レベルだったと思うわ。  ドラマ部分の演技や映像の昭和感も時代を映してる感じで良かったと思うのだけどX見てると今風じゃないのが不満らしい人が多くてなかなか難しいわね。アタシには『シン・ゴジラ』のあの大量早口セリフの方がよっぽどヘンに思うのだけど。   で、ここからは難点を。山崎貴監督って節操の無さゆえの問題ってのがいつも付きまとう気がするのね。その最悪の結果が『ユア・ストーリー』ではあるのだけど。  連想される作品はいっぱい。『ジョーズ』『ターミネーター2』『ジュラシック・パーク』『インデペンデンス・デイ』『この世界の片隅に』『ファイナル・デスティネーション』『ダンケルク』。そして『すずめの戸締まり』。これは製作時期的に影響された訳ではなくて今の日本に生きる者が持つ共通の感覚から来てるのかしらね。  今回のゴジラはそれまでの自作の要素がたっぷりで(『三丁目の夕日』や『永遠の0』『アルキメデスの大戦』等々)、そこは上手くいってる面もあるけれど、でも『ヤマト』とはラストで決定的に矛盾するわよね? そういうのが彼の信用ならない部分なのよ。今回、自己犠牲を引っ張りながら最後に否定する、けれどそこまでに滅びの美学的なモノを漂わせちゃいませんか?って。日本大好き!っていうのは従来作から一貫してて、帝国主義や旧日本軍を否定するのは正しいとして、でもみんなで立ち上がってこの日本を守りましょう!みたいなナショナリズムの喚起みたいな面はアタシ的にはイヤなのね。もっと外向いていて欲しいわ。  あと多くの怪獣って歩いて移動するのだから「線」なのだけれども多くの怪獣映画が製作費やら脚本やらの問題で「点」になっていて、この映画はその怪獣映画の歴史の中でもかなりな「点」な映画で、そこが残念ね。   浜辺美波さん、以前からちょっと古風な佇まいのある、それゆえ普遍性を持った稀有な役者さんだと思っていたけれど、今回は時代設定にハマっていて彼女の魅力を生かしていたと思うわ。   でもあれこれと言いたいコトはありつつも大画面に映える骨太な、がっしりした映画を見たって感じがして満足したわ。
[映画館(邦画)] 7点(2023-11-05 10:41:20)
524.  M3GAN ミーガン 《ネタバレ》 
 「きっとミーガンに感情移入しちゃうのよね。ミーガン可愛いよミーガンってなって、でラストは顔がぐわーってカンジになってバキバキってなっちゃってニンゲンメ!って感想で終わりになるの」って見る前に思ったそのまんまの映画。もはや様式美、予め約束された映画というところね。   テーマとして語られてるモノもあるわ。人工知能のあり様とか親が子に成すべき事とか。でもそこら辺もまた新鮮な切り口とかいうモノではなくてこのテの映画を作ったらこうしておきましょうね、というお約束みたいなもの。そういう意味では何か新しいモノを得られる映画ではなくて。   ホラーとしてはごく大人しめ。犠牲者の数は予想より少なかったし、残酷な映像になりそう、と思うとその前にシーンが変わっちゃったりするし。ミーガン、悪いニンゲンをもっとバキバキにしちゃってよ!とも思うけど、そこまで彼女に背負わせるべきでもないかもしれないわね。あくまで彼女の純粋さゆえの行動なのだから。  開発データを盗むあたりに何か陰謀がありそうに思えながら特に大きなハナシじゃなかったり、ミーガンにぞっこんだった女の子が簡単に「改心」してしまう展開とか、なんだか雑な状態ではあるのだけど、そこを問題視しなくちゃいけないレベルの映画でもなくて。   リメイク版の『チャイルドプレイ』なんかととても近い感じで、意外性のカケラもない当たり前の一編なのだけれど、でもミーガンという存在そのものがこの映画の魅力で、ミーガンこそがこの映画の総てと言えてしまうのかも。   コレはオロカナニンゲンドモの犠牲になっちゃうミーガンの悲劇の映画よね・・・
[映画館(字幕)] 7点(2023-06-13 14:09:19)
525.  BLUE GIANT 《ネタバレ》 
 絵作りや構成に疑問点がないワケじゃないのだけど、音の説得力で圧しきりねじ伏せられちゃった感じね。   主人公はいかにもマンガなの。天才の物語。努力して苦労して這い上がって昇ってゆく、そういうカンジじゃなくて努力はしてるけどそもそも最初の次元が違う、天性の才能を持った人ですよ、って状態で、だからそこはつまんないかな。マンガやアニメって受け手が自分では到達できないヒーロー的存在だからこそキモチ良くてウケるんでしょうけど。メンバーの他の2人に常人の努力家としての役割が与えられていて、だから引き立て役ではなくてもっとそちらを見せて貰いたい感じもあったのね。ピアニストの彼なんか後半フラグ立てまくっちゃってて可哀想だったわ。もっと大切に扱ってあげて、みたいな。   マンガ原作ゆえにエピソードがお団子状態、キレイに流れてなかったように思えるし(そのため?に回想形式にして予め結果、到達点を示してるのだけれど、小出しにしていてハンパだし、物語に対する興味をスポイルしてしまっていたように感じるわ)、演奏シーンでのCG状態は最近のアニメのロボットや宇宙戦艦、戦車かいなって思っちゃった。アレ、演奏をそのまま手書きで作画するのは作業的にほぼ不可能レベルだからプロの人のモーションをキャプってCGで再現してるのよね。でもなんだか動きがとても硬いわ。も少し細かくキャプらないとダメだったんじゃないかしら?  演奏中に音をサイケデリックなカンジで表現するのもなんだか湯浅監督のアニメみたいねぇ、って。ドラマ部分との食い合わせはイマイチじゃない?   それでも音でドーン!って。でも最初に彼が独奏してみせる音の凄さっていうのは正直なところ判らなかったのね。肺活量を誇ってます、ってだけの音に思えて(肺活量だけならアタシ6500ccあるので負けないわよ、って25年前の数字だけど)。それがピアノとドラムが加わっての具体的な音になってゆくと、ああ、凄いわ、って。3人の音がドラマを作って感動に繋がる、そんな映画だったわ。  音響を信頼してる新宿バルト9のドルビーシネマの箱でドルビーATMOSで見た(聴いた)ので本当にしっかり鳴ってて、なので説得力のある音で聴いたがゆえの感動、というのもあるかもしれないわ。  家のショボいスピーカーで聴いてたらここまでの感覚にはならないと思うので、これって音響の良い映画館で見るのが正しい映画なのかもね。
[映画館(邦画)] 7点(2023-03-14 16:03:05)
526.  フェイブルマンズ 《ネタバレ》 
 正直なところ、ちょっと肩すかし感があったのね。もっと「スピルバーグ!」ってカンジのモノを見たかったのだけれど、奥ゆかしいというか節度を弁えてますというか。絶えず映画との距離を測りながら語っているような感覚で、あくまでひとつの映画としてのカタチを第一にしているようで。   最近見た、同じように映画についての映画を送り出した『エンドロールのつづき』のパン・ナリン監督や『バビロン』のデイミアン・チャゼル監督は迸る映画愛をどうだ!とばかりにグイグイご披露してくれちゃってたけれど、スピルバーグ監督はそんなコトはせず、自分の世界から独立させた物語としてカタチを整えて酸いも甘いも織り込んで映画というものの虚実を垣間見せてくれるわ。それは老成した彼ならではの語り口なのかもしれないし、ならばラストに登場するあの人は今のスピルバーグを映してるとも思えるのね(それだけの存在にまで到達しているという自惚れは無いかもしれないけれど)。   冒頭の『史上最大のショウ』の件はよく判る、とっても共感できたところね。彼が再現したがったあの感覚、アタシの場合、最初に大きく影響を受けた映画は『大地震』だったのでよくコタツの上で大災害・大崩壊を起こさせていたわ。  そこから続く物語はだけどスピルバーグ監督の、ではなくて主人公サミーの世界。監督の分身ではあっても本人ではない、映画を映画として成立させるために創造された存在。物語であるがゆえに決してこちら側にハミ出してくることのない、スクリーンの向こう側の存在として完結しているの。  前記の2作品は最後である意味第四の壁を越えちゃってるような状態だったのだけれど、それは映画からハミ出して送り手個人のナマな感覚を押し付けてくるようなモノで映画をあくまで映画としてきっちり線引きしてるスピルバーグは違うわねって思ったわ。そこが物足りなくもあり、でもそれこそが正しいカタチのようでもあって。それは送り手と観客との間で保たれるべき距離でもあるわけだしね。   ともすれば難点にもなりかねないジョン・ウィリアムズ、マイケル・カーン、そしてヤヌス・カミンスキーといったスピルバーグ組常連のスタッフのお仕事っぷりが今回はそれなりに繊細で綺麗にまとまっていて、それがまた物足りなさを生んでたりもするのかもしれないけれど、サミーのようにこれから始まる人たちに向けての映画であるならば、そこに過剰な色は要らないのかしらね。何しろこの映画の頃はまだ『激突!』も『ジョーズ』も生まれてないのだから。
[映画館(字幕)] 7点(2023-03-08 14:39:39)
527.  かがみの孤城
 公開前なのでネタバレなし方向で。   最初に注意しておきたいのは学校でのいじめや無視の表現が結構バリエーション豊かにあって、その経験がある人はフラッシュバックを起こす可能性があるので気をつけて。もう何十年も前の経験だったアタシでもキツかったもの。あれって時間と共に薄らいだり癒されたりするモノじゃないのよね・・・   映画の中身についてだけれど、良い物語だと思ったわ。居場所を失っている子供たちに対して、ちょっと生きるヒントを与えてあげるような、決して甘くない世界だけれど、それでも道は見つけられる、そんな物語。誠実で丁寧な作りの映画。  物語には幾つかの秘密があって、進行と共に明かされてゆくのね。7人の最初の距離感ならともかく時間を経た上での関係性を考えたらそこまで延々気付かないのって不自然じゃない?って思うような秘密も複数あるのだけれど、それは作劇上、仕方ないと割り切っているのかしらねぇ。描かれる期間が割と長いゆえに7人が結びついてゆく時間も多いと思うのよね。意識し過ぎてしまうがゆえに逆に人との距離感を測るのが苦手なコたちゆえのぎこちなさゆえと解釈すべきかしら。   真面目に作られた映画なのだけれどちょっと物足らなさというか贅沢な注文を言ってしまうとアニメーションとしてのダイナミズムとか躍動感とか、そういうワクワクした感じに乏しいと思ったのね。原恵一監督は『クレしん』映画の時代にはそういう映像がいっぱい溢れていたのだけれど、それより後は誠実、丁寧、真面目の方は目立つものの絵が動いて楽しいって方面にはあんまり、みたいな印象。キャラクターデザインもアニメートも背景美術も決して悪くはないのだけれど、テレビアニメでも今はクオリティの高い作品が多いので、そこから映画として原恵一監督作品としての特別さというのは感じられなかったのね。   映画の中に存在する最も大切な要素、その場所やトリックや構造がいかにテーマを語っているのか、見終わってじっくり考察してみるのもいいかもしれないわ。
[試写会(邦画)] 7点(2022-12-20 15:00:06)
528.  MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 《ネタバレ》 
 『カラダ探し』に続くタイムループもの。アチラがタイムループの繰り返し表現が少ないためにタイムループものとしての面白味が欠けていたのに対して、コチラは繰り返し表現がちょっとクド過ぎてゲンナリしちゃう感じがあって。ちょうどいいバランスって難しいわね。劇中で『ハッピー・デス・デイ』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』、そして『恋はデジャ・ブ』に触れているくらいなので十分に研究してはいるんでしょうけれど。   でもコチラは「仕事」をテーマに楽しい映画に仕上がっているわ。   職場で繰り返されている一週間。映画の最初の時点で月曜日から同じ一週間を繰り返していることに気づいている社員が2人いて、いかにみんなに気付かせるか、そして原因と思われる部長に気付かせてタイムループから抜け出すかが明確になっていて。  全員がタイムループしてるって解釈は新しいかも。タイムループものって大体1人~3人くらいだけが時間の流れから取り残されてる、って設定のものが殆どだから。でも逆に2人(正確にはごにょごにょ・・・だけど)はみんなループしてるってどうして判断できたのかしら? ヘタしたら世界全体がループしてたのかしら? そこら辺は気にすんな、ってコト?   ヒロインが気付いてから映画が具体的に動き出すのだけれど、職場の序列に従って段階的に上に気付かせてゆく流れが面白く、部長に判らせるためにプレゼンしてみせるあたりは面白さの最高潮ね。ここはループの描写をキレイに省略、簡潔化して笑いに転化させていてお見事。そこで解決に至らず新たな展開になってからは少しシリアスになって映画の温度がちょっと下がっちゃった気がしないでもなく。  でもみんながループに気付いて同じ週を繰り返すうちにどんどん仕事が円滑に進むようになり「絵」も巧くなってゆく、協力して仕事を成し遂げてゆく感じが良いわ。   個人とチームとプライベートと仕事。この身近にして多くの人を悩ませる素材に対してこの映画が描いた姿は必ずしも正解とは言えないけれど(その理想はブラック企業的な面もあるわ)、仕事を生きる人たちには何かしら感じるモノがある映画ね。
[映画館(邦画)] 7点(2022-11-08 14:07:43)(良:1票)
529.  夏へのトンネル、さよならの出口 《ネタバレ》 
 『バズ・ライトイヤー』に続いてウラシマ効果モノ(こちらは特に物体が高速で運動している描写はないので相対性理論との関係は不明だけれども)。高校生の男女二人が時の流れから独立する、その二人の目指す道に違いが生じてゆくって点ではタイムループもののパターン的な面もあるわ。   ちょっと新海誠監督作品風味を醸していたりするけれど(雨がキーになってるし)、ありがちなベタベタした甘い描写はほとんど無し、モノローグでペラペラと世界や自分を語ってしまうこともなく、クールにタイトにまとまった83分ね。  二人にはそれぞれにシンドい過去があって、でもそれをドラマチックに盛り上げるのではなくて協力して不可思議な事象に立ち向かい冷静に探求・分析してゆく部分がメインになっているのが面白いわ。その上で二人の決定的な違いが明確になってゆくのだけれど。今を棄てられる主人公と棄てきれないヒロイン。  いつまでも過去に囚われず未来を生きる、ってとてもありがちな着地点に到達するものの、二人の間に生じたズレが新しいドラマを生んでゆくラストは単純なハッピーエンドではない、ちょっと苦い余韻を残すカンジね。   疑問点がないわけではなくて、転校早々のヒロインのやらかしは問題にならなかったの?とか(あれくらいだと停学とか退学とかってレベルよね)、主人公が到達して得たモノがそれまでと違ってああいうカタチだったのは何故?とか、主人公の携帯の契約は一体どうなってたの?とか。でも映画全体の印象に影響してしまうような大きな問題点というワケでもないし。  ただ、幼い子が命を失っちゃうって設定はたとえアニメでもシンドいわね。   語り過ぎない、盛り過ぎない、安直な結論に至らない、そんな抑制の効いたアニメだったわ。
[映画館(邦画)] 7点(2022-10-03 16:33:33)
530.  ミニオンズ フィーバー 《ネタバレ》 
 グルーって1963年か64年生まれ、今(2022年夏時点で)58歳ね。映画内で具体的に11歳って年齢が出てきて『ジョーズ』公開中なのでこの物語が1975年の夏のことだっていうのが判るから。   さて『ミニオンズ』、前作に比べるとグルーが物語の核になることでぐっと『怪盗グルー』シリーズに寄ったカンジになったわ。前作はミニオンたちが仕えるボスを探してゆく物語なのに対して(大半がスカーレット・オーバーキルとのゴタゴタだけど)、今回はミニオンズは最初からグルーを頼り、更にグルーは悪党集団に加わることを望んでいて。  もちろんミニオンズが巻き起こすドタバタがメインではあるけど、グルーとネファリオ博士との邂逅、後のシリーズに登場する悪党銀行(ベクター!)や反悪党同盟(ラムズボトム!)が描かれ、これまでシリーズを見てきていればお楽しみどころいっぱい、70年代をリアルに生きてたら70年代ネタで更にお楽しみ!って感じ。そしてその分、ちょっと散漫というかネタを散りばめた状態で物語の芯が弱かった気がするの。  悪党の内部分裂で物語は多面化、複雑化していて、個々のキャラやエピソードは薄めな印象になってるのね。悪党の人数が多いのでひとりひとりの個性はそんなには立ってなくて。ヴァンダム、ラングレン、トレホとせっかくの豪華声優陣だけれどその起用がもったいないわね。デザインを当人に寄せたりもしてないし。グルーを誘拐しつつ最終的にはグルーにいいトコ見せるワイルド・ナックルズ(アラン・アーキン!)も元が悪党なのでカタルシスは弱いわ。そもそも『怪盗グルー』も『ミニオンズ』も元々悪党のハナシではあるのだけど。   だけどまあこの映画のキモはミニオン楽し~かわいい~ってところでしょうから、これでいいのでしょうね。前作に続いてケビン、スチュアート、ボブはドタバタと活躍してくれるし、見た目イマイチねぇ、って感じがした新ミニオンなオットーも健気に頑張ってるし。  あとは新型コロナのせいで公開がかなり延びてミニオンズのコンテンツとしてのチカラが弱まってしまってない?っていうのが心配ね。グルーとミニオンズのシリーズ、ただでさえ元から新作リリースのペースが遅めだし。現時点では次回作も見えてないのが不安だわ。
[映画館(字幕)] 7点(2022-09-16 18:56:04)(良:2票)
531.  サバカン SABAKAN 《ネタバレ》 
  男の子2人、ブーメラン島まで当たり前のように泳いでいくのよね。えっ!?って。アタシ的にはめちゃくちゃ恐い映像。アタシ絶対すぐ溺れるわ。これだから都会モンはぁ、って感じ?  でも都会生まれから見ても地方の海辺の町を舞台にしたその世界にノスタルジーを喚起させられたわ。たっぷりと描かれる風景の美しさ、日本の良さが描かれた映画。   作家の男性が回想する少年の日のひと夏の冒険と別れを描いた映画、『スタンド・バイ・ミー』っぽいわ。冒険部分がメインのように期待しちゃうとちょっと違うのだけれど(冒険は映画の前半ね)、少年たちと世界との関わりが描かれてゆく流れが良いのよね。  2人の男の子はもちろん巧いのだけど、それ以上に彼らの生を彩る周囲の人たちが魅力的でいいの。パワフルで強い母ちゃんと母ちゃんに圧され気味だけど物分りのいい父ちゃん。多分あんまり演技してない、素が出てるカンジなのがとってもかわいい弟。莫迦っぽいけど恐い不良たちとかっこいい兄貴分。異様な雰囲気の駄菓子屋の夫婦。ちょっとセクシーな年上のおねえさん。執拗に追っかけてくるミカン畑のおやじ。大人の社会、若者の社会の中に触れて成長してゆく姿がユーモラスで楽しく見られたわ。   その分、友達の家庭に訪れる不幸が取って付けたような、いかにもこれこそ不幸な展開って状態で創作であっても嫌な感じがしちゃうのよね。お母さん一人で沢山の子供を育てていて、だけど事故でこの世を去って子供たちはそれぞれ親戚の元に引き取られてゆく、って邦画で昔から何度も何度も繰り返されてきた定番中の定番な悲劇ってカンジで。映画としてあのコたちにもっと愛を注いであげて欲しかったわ。エピローグ部分で一応救いが描かれてはいるのだけど。   同時期に『凪の島』という、やっぱり個性的な大人たちに囲まれた海辺の町に住む子供2人が冒険の旅に出ますって映画を見たのでのちのち印象ごっちゃになりそうな感が無きにしもあらずなのだけど、日本の風景、日本の人の暮らしを描いた映画をしみじみ味わうのって心が落ち着いていいわね。
[映画館(邦画)] 7点(2022-09-15 15:50:01)(良:1票)
532.  DC がんばれ!スーパーペット 《ネタバレ》 
 これタイトルやポスターじゃ全然判らないのだけれど中身は『ジャスティス・リーグ』準拠なのね。メインになるのは動物たちなのだけどジャスティス・リーグの面々が全員登場するわ。   主人公スーパードッグはスーパーマンの飼い犬でクリプトン星が爆発する際に赤ん坊のカル=エルと共に脱出して、って。映像や音楽がリチャード・ドナー版『スーパーマン』リスペクトでうるうるしちゃった。ちなみにバットマンもティム・バートン版『バットマン』リスペクトでうるうるよ。ただしバットマンの性格というかキャラは『レゴバットマン ザ・ムービー』に近いわね。陽気なスーパーマンに対してバットマンは陰気っぷりがトレードマークみたいねぇ・・・(スナイダーが描くとスーパーマンも陰気になるけど)   スーパードッグとスーパーパワーを手にいれた保護施設の動物たちが悪に立ち向かってゆく、までのシチュエーションがちょっと長いかしら。基本はドタバタなカートゥーンの世界、でもスーパードッグがクラークとロイスの仲に嫉妬したりレックス・ルーサーのペットだったモルモットが陰謀を巡らせたりスーパーマンが誘拐されたりスーパードッグもスーパーパワーを失ってしまったりスーパーパワーを手に入れた側の動物たちとの確執があったり動物たちがその力を使いこなせるようになるまでに時間がかかったりとドラマも多いのでテンポが悪くなる箇所があるのよね。もう少しタイトな作りでも良かったかな。   一方でジャスティス・リーグはそんなには活躍シーンが多くないのでそこを期待されちゃうと困るからこそのジャスティス・リーグ隠しかしら。スーパーマンとバットマン、極端な性格付けの2人に比べたら他はみんなマトモね。ワンダーウーマンはひたすらカッコよく描かれてるし。みんな捕まっちゃうのだけど。  あとグリーンランタンが登場するけど以前ライアン・レイノルズが演じたグリーンランタンとは違うグリーンランタンね(この映画では女の子だし)。調べたらジェシカ・クルーズ、8代目グリーンランタンですって。彼女の物語が見たいわ。   海外アニメーション映画では動物がメインになってる作品がいっぱいあるけど(人間よりも多いかしら?)DCコミックという既存の有名キャラがいっぱいな世界を題材にしてる分、親しみやすい、とっつきやすいカンジだったわね。  続編があるのならば動物たちがジャスティス・リーグと一緒に活躍する物語がいいわ。それぞれに収まり処を得たワケだし。
[映画館(吹替)] 7点(2022-09-15 15:17:05)
533.  アキラとあきら 《ネタバレ》 
 三木孝浩監督の「記録と記憶の三部作」3本目。   大手銀行で東大卒エリート銀行員としてのし上がってゆく二人のあきら。町工場の息子、山崎瑛と大手海運企業の御曹司、階堂彬。情に厚い瑛とクールな彬、正反対な性格の二人が銀行のシステムに翻弄されながら成長してゆく物語ね。銀行の融資を決めるのは業績の数字、記録が全て、そこに情を持ち込むことで苦境に立ってしまう瑛なのだけれど、その情こそが困難を打開することになるのね。  彬の親が死に、弟が後継者となるものの、系列会社を経営する叔父たちの策略によって赤字経営のリゾートホテルの連帯保証をして窮地に陥る、そこから二人のあきらが活路を見出してゆく展開がスリリングに描かれるわ。  父が窮地に陥った時に見放した銀行員、手を差し伸べた銀行員、子供の頃の記憶から銀行員を目指した瑛は数字の記録だけでは突き破れない、人の過去の記憶を拠り所に突破口を開いてゆくの。   池井戸潤さんの作品らしい社会派サスペンスとカタルシスの世界で、三木孝浩監督作品らしさは抑え気味な感じはするのだけど、光と影を駆使した演出は変わらないし、それになんと言っても爽やかだわ。もう竹内涼真さんの爽やかっぷりが全編を貫いていて、ドロドロした物語のハズなのに妙に清々しいっていう。  そしてこれは爽やかキレイな三木孝浩監督作品に共通する意外な特徴なのだけれど、悪役が本当にイヤ~な空気を漂わせてるのよね。ヤクザとか出てくるとハンパなくて時に映画のカラーをおかしくしちゃうくらいで。この映画のユースケ・サンタマリアさんと大島さん(児嶋だよ!)が本当にイヤ~なヤツでタレントとしてのイメージに影響出ちゃわない?って心配になっちゃうわ。だからこそのクライマックスではあるのだけど。この映画では木島さん(児嶋だよ!)と塚地さんがお笑い畑の人なワケだけど『TANG』のかまいたちの二人とは全く次元が違う恐ろしい存在感で同じ監督であっちはなんでああなっちゃったかなぁ?って思ったわ。   無駄なく2時間ちょっとにまとまった映画はちょっと甘い印象もあるけれどそこに描かれた希望を肯定的に捉えたいわ。   平日昼間の渋谷のシネコンはアタシみたいな年寄りと10~20代前半の若いコ達に二分されていて、でもその若いコ達がみんなとっても静かに真剣に映画を見ていて、ああ、このコ達がこの映画を真面目に受け止めているってもしかしたら未来も少しは明るいのかもしれないわ、とか思っちゃった。
[映画館(邦画)] 7点(2022-09-08 20:51:43)(良:1票)
534.  キングダム2 遥かなる大地へ 《ネタバレ》 
 あら? 前作のレビュー書いてなかったわ。一応映画館で見たのだけど。個人的には「まさみ姐さん!たかお~w」って印象ね。それなりに面白かったのよね。でも今回はまさみ姐さん出てなさそうだったので、あーんまり食指動かなかったの。   だけどこれがまー面白いの!   前作のようなドラマは殆どなくて、ひたすら合戦なのよね。それなりにドラマがあるのは清野菜名さんの羌瘣くらいで。でも、そのドラマのなさっぷりが良かった、アクションに次ぐアクションで状況がどんどん変化してゆくのが面白いのね。  ハリウッドならば200億円くらいかかってそうな大スケールの中で大作感に圧倒されずにそれぞれの登場人物がしっかりキャラ立ちしてるの。もう戦ってばかりなのだけど戦闘の混乱と混沌の中に信、羌瘣、尾平・尾到兄弟、(カメ止め)澤圭の伍メンバーの命があって生き様があって。刀や槍を振り回して突き進む姿からこそ見えてくるモノが描かれているわ。  戦闘シーンの地理的な方向性が怪しいカンジはあったのだけれど(イマジナリーラインほぼ無視)、状況そのものは判り易く描かれていてひたすら合戦ながら単調にならずにダレ場ほぼなし。まあ信が傍観者になる総大将戦あたりはちょっと間延びしたかしら?   激しい戦闘の中で異彩を放って美しく舞う羌瘣がとても魅力的なのだけど、せっかくの清野菜名さんをもっとちゃんとキレイに撮ってあげられなかったのかしら? 随分老け顔に映っちゃってるカットが多くて、ああメイクさん、照明さん、カメラさん、どうした?みたいに思っちゃったり。そこは残念ね。  あとラストで山﨑賢人さん、吉沢亮さん、橋本環奈さんの3人がババーン!ってカッコつけてるカットがあるのだけど、嬴政と河了貂、今回殆どな~んにもしてないわよねぇ?  たかおは相変わらずヘンなたかおで大変良かったわ。   エンドロール始まっても最後の最後まで席を立っちゃダメな映画で、見終って続編はよ!ってなったわ。邦画でこれだけのスケール感出せるのって稀有ね。やっぱりCGを上手に使いこなせる佐藤信介監督ならではなのでしょうね。大作見た!って満足して足取り軽やかに劇場を後にできたのであったわ。
[映画館(邦画)] 7点(2022-07-28 20:19:07)
535.  神々の山嶺 《ネタバレ》 
 ミステリーかと思っていたけれどあのカメラとその中のフィルムはマクガフィンってコトね。別にアレはなんでもよくて。山を目指す動機というか理由というか言い訳的な。   映画は姿を消した登山家を追うカメラマンの物語、時代が飛びまくるのでぼーっとしてると混乱しちゃうのだけれど(過去と現代、ではあるけれどその現代すらも今ここから見たらかなりの過去だわ)、エピソードの積み重ねによって深町と羽生の人となりが浮かび上がってくるのね。幾つもの流れを経て最後は2人のエベレスト登山(正確には単独無酸素登頂を目指す男とその姿を追うカメラマンという切り離された関係)に集約されて。その登山シーンは苦しさ辛さが伝わってきて見ていてシンドくて。そしてその先にある世界、2人を分かつ道がそれぞれの生き様を見せて。  日本の描写がたっぷりで登場人物も多くが日本人なので国産アニメーションのようにも見えつつ、シンンプルな人物のタッチと精緻な山の描写がアチラな感じ(その人物と背景の関係、過酷な描写は『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』を思い出させたわ)でハイブリッド状態。昭和~平成の日本の描写が見事、だったのだけれどただ一点、カタカナのーは縦書きにした時にはーでなく|になるのよ、ってのは誰かアドバイスできなかったのかしら? 縦文字看板が軒並み横棒状態だったわね・・・   映画を見ながら25年前に冬の日本アルプスで滑落死した元上司の事をずっと思い出していたわ。奥さんとまだ小学生だった息子さんと娘さんをのこして逝ってしまった常務。何故山に登るのか、アタシには理解できない世界だったし、今、この映画を見ても理解はできないけれど、そういう生があるんだ、っていうのは苦しさを伴って伝わってきたわ。   日本の骨太な、男臭い題材をフランスが映像化するって、今の日本の萌えまくりアニメ業界じゃ映像化するのは無理?ってなハナシではなくて今はもう世界中の才能が国境の分け隔てなく創造してゆける時代になってきてるのねって思うわ。今は人も映像も音も簡単に繋がれる世界なのだから協力しあってより良いものができたらいいわね。傍観者が偉そうに何語ってるのよ、ってカンジだけど。ごめんなさい。
[映画館(吹替)] 7点(2022-07-24 18:14:54)
536.  犬王 《ネタバレ》 
 山田尚子監督の『平家物語』を見ていたお陰ですんなりと世界に入ってゆくことができたわ。『平家物語』のヒロインびわが見て触れて琵琶法師として語ってきた世界がここに語り継がれていて、ってまるで地続きのように見ることができて。   山田尚子監督の繊細な、静のアニメーションに対して湯浅監督は一貫して動のアニメーション。アニメーションの快楽は今回も爆発しているわ。  盲の琵琶法師ともののけの如き男がバンドを結成する物語、歌曲と舞踊が生み出す快感が画面いっぱいの絵巻として繰り広げられて。今に通じる青春映画のようでもあるわ。ただし、その背景には源氏に滅ぼされた平家の無常な世界があって、権力の介入による不条理な弾圧があって。  平家の亡霊を成仏させるたびに犬王が獲得してゆく人間らしさはまるで社会に摂りこまれてゆくようで、体制に反発し、あくまで信念を貫く友魚こそがロックな生き様を見せてくれるようで、二人の対比が最後には切なく迫ってくるわ。   ただ、ロックよりは琵琶や太鼓や鐘の音色のみで魅せて欲しかった感はあるのね。本来はそこに聴こえないハズのギターやベースの音がジャカジャカと入っていると、その音にこそレイヴ感が存在しているような印象を受けてしまうのよね。今の音に重ねる事で過去と今とを繋いでいるのは判るのだけれども、舞台装置も含めて今になり過ぎちゃってる、今の野外ライブを見てるのと感覚一緒、って感じになっちゃって。そこはもうちょっと工夫、音にも絵にも見せ方にも時代を意識させるデザインが欲しかったかな。  それから重要な歌唱シーンで肝心の歌詞が聴き取りづらかったのが残念。でもそれはハコの音響設備の問題かしらねぇ? 出力的には問題なかったのだけれども。  あと、中盤のかなり長いライブシーンはちょっとテンション維持できてなかったかも。そのアニメーションの暴走的な歪さは湯浅監督らしい、湯浅監督の魅力でもあるのでしょうけれども。   この無常なる青春映画、今に通じる表現についての物語、難点はありつつも楽しみ、そして考えさせてくれる映画だったわ。
[映画館(邦画)] 7点(2022-06-08 16:09:17)
537.  ベルファスト 《ネタバレ》 
 少年が生きるごくごく狭い範囲の視点から描かれる複雑な世界の物語。   小さな街のコミュニティの中に宗教の対立があって破壊と暴力があって、家族の葛藤があって、でももちろん少年の等身大の、恋や楽しみや勉強や悪さ等々、様々な事柄があって。少年なりに捉えた社会と個人との関わり、成り立ちが楽しかったり切なかったり悲しかったりするわ。少年の、周囲の状況に流されやすいカンジがコミカルで愛らしいの。   画作りはちょっと作為的に過ぎる気もするの。モノクロとカラーの使い分け、余白をたっぷり取った、被写体を偏らせた構図、フレームの中に更にフレームを作った画、ぐーっと仰瞰でひとびとを捉えた画。それらは少年の視点とはちょっと違う、多分にゲージュツを意識した感があって、もう少し抑えた方が良かったかも、と思ったわ。  でも『宇宙大作戦』や『真昼の決闘』『恐竜100万年』『チキチキバンバン』といった作品が散りばめられていて、少年が生きた時代を示すと共に少年の生きる現実と対比された夢のカタチとしてノスタルジックに機能してたわね。   ベルファストという土地に縛られた一家が状況に追われるカタチで呪縛から解き放たれてゆく、でもそこに希望が垣間見えるのが救いね。
[映画館(字幕)] 7点(2022-04-10 19:37:42)(良:1票)
538.  シャドウ・イン・クラウド 《ネタバレ》 
 予告編を見た時には「大戦時に活躍した女性パイロットの話?・・・ってそっちかーい!」って心の中でツッコミを入れたのだけど(いきなりグレムリン襲撃だものね)、本編を見たらもっとずっとツッコミの量は沢山だったし、そしてもっとずっと色々な意味で複雑な映画だったわ。   予想していた映画と違って始まってわりとすぐにワンシチュエーション映画のようになるのね。狭い空間に閉じ込められたクロエの一人芝居がずっと続くの。そこは無線から流れてくる男達のホモソーシャルとセクハラと男尊女卑の世界。クロエが大量に浴びるハラスメントのストレスはハッキリ言ってとてもシンドいのね。その上、グレムリンと日本軍の戦闘機が登場して、だけど誰も信じない。頭のおかしなバカな女の戯言など誰が信じるか、って。見ているこちらはクロエがひた隠しにしている秘密まで加わってストレスたっぷりになってゆくわ。  そして「秘密の任務」で運んでいるモノの中身が判明した瞬間から映画はガラリとカラーを変えるの。ここから別のジャンルに突入しました、くらいに。『未来少年コナン』の巨大機ギガントみたいな世界よ。逆さだからもっと大変かしら。もうツッコミの嵐みたいな世界に突入するのだけれど、ここからクロエの逆襲大暴走とばかりにこれまでクロエを抑圧してきたモノたちへの反撃が繰り広げられるのね。役立たずな男たちを越え、脅威や災難を越えてゆくの。  ラストは人間パワーローダーね。『エイリアン2』のリプリーとパワーローダーが生身のクロエひとりに集約されて、周囲は畏怖の念におののくという。映画はエンドクレジットの写真と共に高らかにフェミニズムを謳いあげ、見終ってなんだか凄いモノを見ちゃったわ、って。   危機的状況下で男と女は共闘しなければならない、とかじゃないのね。とりあえず男なんてどうでもいいの、女は女で生きる意志と力を持ってる、って感じでホモソーシャルを仕方なしに許容したりとかしない。それがいっそ痛快で清々しいわ。  83分と短いけれど(エンドロールを除いたら75分ちょっとくらいかしら?)ほぼ出ずっぱり、繊細な演技から大々的なアクションまでこなすクロエの奮闘っぷりをたっぷり堪能できる映画。あくまでB級感覚のバケモノが出てくるツッコミだらけのヘンな映画、だけどね。
[映画館(字幕)] 7点(2022-04-10 12:56:01)
539.  クライ・マッチョ 《ネタバレ》 
 誘拐した子供と旅をするロードムービー『パーフェクト ワールド』、若者との出会い、ふれあいを描く『グラン・トリノ』。今回の映画の設定に、イーストウッドの過去作から予感させるほろ苦い結末。ところが。   イーストウッドもさすがに老いは隠せようもなくて、ヨレヨレした姿をスクリーンに晒してるわ。お世辞にも「矍鑠とした」なんて言えないわね。  で、そのヨレヨレが人妻から誘惑されたり未亡人に惚れられたりする映画なのよね、コレ。無いわー、それ絶対無いわーって。しかも前かがみにヨタヨタと歩くような爺さんが暴れ馬に乗っちゃうのよ。途端にカッコ良く溌剌とした姿に・・・ああ、当然スタントマンよね、って。  これってホラ吹き男爵の物語みたいなモノね。数々の武勇伝を抱えた、女性や子供にモテモテの爺さま。でもそれってイーストウッド自身の事なんじゃないかしら。映画というホラを吹き続けた男の物語。   イーストウッド監督作品には自分が主演のものと自分は出てないものとがあって、自分が出てないものは実話ベースのドラマティックな映画が多い一方、自分が出ている作品はカッコいい自分のハナシよ。ちょっと影があったり妙に屈折したところがあったりもするけれど、基本カッコつけたオトコの物語。冒険野郎で孤高の存在でワイルドでちょっとユーモラスさもあって。  『運び屋』でもすっとぼけた爺さんとして周囲を振り回してみせたけれど、それもこれも映画界の老練ホラ吹き男爵イーストウッドの遊び心なのかもしれないわ。  少年とニワトリを相棒にしたロードムービー、ここ一番で活躍するのはニワトリだったりして、高齢なのにまだ現役で頑張ってるイーストウッドの作品だからって真面目にスクリーンに向き合ってるこちらをケムに巻いてみせるのよ。   あーホラ吹き男爵にひと泡吹かされたわ、ってカンジなのだけど、それをまた体験できたのは幸せなコトなのよね。
[映画館(字幕)] 7点(2022-02-15 22:07:06)
540.  フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
 タランティーノの『グラインドハウス』の雑誌版みたいな構成、ならばもっと細かく色々盛っても良かったんじゃない?って。冒頭の自転車エピソードはともかく続く3つのエピソードはどれもちょっと長い感じがして、そしてどれもそんなには面白い話とも思えなくて。豪華キャストも人によってはなんか勿体ないカンジ。シャラメくん、そんなオチ? ビル・マーレーって狂言回し? パンフレット見て「え?どこに出てた?」って有名人もいっぱい。  だけど映像の見せ方、凝り方はとても楽しくて、それを見ているだけで特に他の事を気にする必要もない感じ。   基本はビスタサイズの土台にスタンダードサイズでの展開。たまに横にズレて黒味に文字が入ったり、上下黒帯でシネスコサイズになったり。モノクロだったりカラーだったり突然アニメーションになったり。  ウェス・アンダーソン監督お馴染みのシンメトリー、平行移動、前後移動、断面図みたいな世界、追いかけっこ、「映像で遊んでます」って感覚。フレームにキチッと納められた要素はまるで重箱に入ったお節料理や幕の内弁当、はたまた工具箱や食器棚、収納ケースの中身のようで、陳列された世界をただ眺める、それだけの映画だとも言えるかも。   ウェス・アンダーソン監督の全編作り物これ見よがし(もはや露出狂的かもしれないわね)な世界には賛否あるけれど、アタシはワリと好き。
[映画館(字幕)] 7点(2022-02-15 16:54:53)
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