541. 百円の恋
《ネタバレ》 試合後、鏡でボコボコになった自分の顔をしばし見てから部屋を出るシーン、あそこで終わってくれ、頼むから外で男や家族が待ってたりしないでくれ、って思ったんですけどねぇ・・・ ほら、泣いて弱さを見せるのは「世界一まずそうなステーキを食べるシーン」で一度やってるわけじゃないですか。あそこだけでいいんじゃないんですか?と。 1つのドラマとして結論付けて〆ておきたかったのかなぁ。そこが個人的には残念。 でもね、やっぱり安藤サクラが凄いんですよ。 『ペタル ダンス』やNHK『野田ともうします』での普通なカンジから『その夜の侍』や『愛と誠』でのかなりヘンなカンジまで自在にこなして、今、最もカッコいい女優だと思ってるんですけど、これはその集大成みたいな作品で。もう冒頭のダルダルな状態からクライマックスの闘いまでめちゃくちゃカッコいい。 妹と喧嘩して寝巻のまま家を飛び出した、そのパンツ透けてる大きなお尻のみっともなさから、闘争心剥き出しにしてリング上の相手に向ってゆくまで、クズな男ども(ホント、この映画、登場する男は全員クズっていう)をぐいっとねじ伏せてゆきます。 クズの中でのたうちまわって這い上がる美しき女神、こんな役、他に誰がこなせるでしょう? 映画の、70年代の安っぽい邦画風だったり、安直な『ロッキー』や『ランボー』のパロディみたいになっちゃってたりする部分までも救済してしまう存在感。 昔から「脱いでぎゃーって叫んでれば評価されちゃう日本の女優」みたいな風潮はありましたが、彼女こそは脱いでぎゃーって叫んで圧倒させる本当に凄い女優。凄まじいプロ根性ではありました。 [映画館(邦画)] 8点(2015-02-11 23:23:08) |
542. エクソダス:神と王
《ネタバレ》 ドラマ的には微妙な感じで。兄弟のように育ってきた二人の対比、その愛憎があーんまり見えてきません。二人ともただ状況に流されてゆくだけのように見えて、ある意味、哀れな存在のようにも思えます。 まあ、それもあんまり感情移入できないレベルなんで、むしろ「馬が~仔山羊が~」ってとこに感情移入しちゃってましたが。 それにエピソードもブツ切れの飛び飛びで、ヘブライ人の子だ!~追放~放浪~結婚~9年後、って怒涛の展開に「早っ!」みたいな。後半になるともう神の力を免罪符に更に展開が強引になっちゃいますしね。 でも、ヘンな意味で面白かったです。中盤に訪れる天罰シーンで70年代のB級パニック映画群を思い出しちゃって。『スウォーム』とか『世界崩壊の序曲』とか『世界が燃えつきる日』だの『吸血の群れ』だの『巨大生物の島』(SFが付かない方)だののノリを思い出して、リドリー・スコットは現代に甦ったアーウィン・アレンか?みたいな。 でもやっぱりどうせなら「海が割れるのよ~道ができるのよ~」って映像が見たかったかな。ヘタに「津波です」って事にしちゃってるので物理的にそれってどうよ?って画になっちゃって。 映画が進むにつれ、チャンベルがどんどんヘストン似になっていったのは御愛嬌? でも、どんなに真面目に生きてようが信仰心が厚かろうが、所属する国のトップがダメだと思いっきりとばっちり喰らいますってのはしっかり現代に繋がりますね。恐い恐い。 [映画館(字幕)] 6点(2015-02-11 22:16:02)(良:1票) |
543. マエストロ!
《ネタバレ》 脚本にはアラが目立ちます。特にクライマックスの2日目の公演については脚本上、上手に処理しきれていない部分だらけ。ポスターに2回公演と明記されながら2日目のチケットが販売されなかった事の不自然さは、携帯からネットでの口コミが見られる世界として描いてしまった以上、一発で判ると思うのですが。 その2日目の公演にしても天道のエゴばかりが先走った上での到達点のように思え、結局彼は自分のためだけの音に執着し続けただけのキャラのように感じました。 ですが、音楽に真摯に向き合う姿勢はきっちりと伝わってきました。人が奏でる「音の見せ方」がとても上手いと思います。その音がどういう背景から紡ぎ出されてゆくのか、楽器が人と音との間に存在していかに芸術に昇華されてゆくのか。 音をただサウンドトラックに記録されスピーカーから再生されるものとしてだけでなく(音響設備がそれなりに良いハコで見たので、そのプロの音のみでも十分に圧倒されるのですが)、ビジュアルとしてスクリーンに描く事について、この映画は真面目に取り組んでいました。 「音楽って素晴らしいものなんだよ」という単純な話、でもそれが人の心から生み出されてくるものであるという当たり前でありながらそこに思い至る事がなかなか無い事を改めて認識させてくれる映画でした。そして、その音を生み出す「人の心」に説得力が感じられたのは、やっぱり役者さん達の好演によるものだったと思います。もちろんその音は彼らが実際に演奏した音ではありませんが、心地良く騙してくれました。 [映画館(邦画)] 7点(2015-02-04 22:55:09)(良:1票) |
544. 劇場版 PSYCHO-PASS/サイコパス
《ネタバレ》 今の国産アニメで私が嫌いな部分ばかりで作られたようなシロモノ。 世界設定も状況も人物関係も感情も声優の大量のセリフによって説明され、それが作品の大半を占めている状態。絵はちっとも世界を語っていません。キャラクターの表情は硬直し、記号化されていて、物語はポツリポツリとしか転がらず、最後まで見て何の新鮮味もない空疎な物語の姿が現れるばかり。 テレビシリーズで既に出来上がった世界を元にして、そこから更なる発展的なものにしようという意識が薄いのか、機械によって管理された状況から最終的にさしたる抵抗も変化ももたらされず、そのテーマは完全に膠着しているように思えます。 そんな世界から見えてくるのは作り手と受け手の間で閉塞された世界。ただその世界が好きな人達がいつまでも世界を弄んで楽しんでいられれば満足、みたいな。そこからの脱出とか破壊とか、そういう意識に向う事が無いのは、やっぱり商売にならないから、なのでしょうか? おたく向けアニメ映画というと特典商法がつきまといますが、これもその例に漏れません。意識の低いものがグルグルと流通するサイクルが出来上がった世界。 人体が破裂して死ぬグロテスクな描写が頻出しますが、これをメインキャラクターでやってしまうくらいの容赦ない世界なんてモノは(それやっちゃうのは富野御大ですな)、誰も望んじゃいないんでしょうね。ハードなようで実は馴れ合いまくりでヌルいのが今の日本のアニメ。 [映画館(邦画)] 3点(2015-02-01 22:51:29) |
545. ジョーカー・ゲーム(2015)
《ネタバレ》 予告編を見た限りでは、もっとシリアスな映画だと思っていたのですが、タイトルバックがバカ臭さ丸出しだったので(カッコつけまくった映像もバカっぽかったのですが、そもそも日本映画なのに英語で役者名やスタッフ名を出す映画は大抵バカ臭い映画ですね)、これは「そういう映画」なんだと早々に頭を切り替える必要がありました。 でも結局最後までそのバカ臭さを受け入れる事ができず。 スパイものとして致命的なのは主人公がヘボいんです。情に弱いスパイだと語られておりますが、それ以前に公私の区別が付けられず、任務をマトモに遂行する能力が無いお馬鹿さん。で、脚本がそのお馬鹿っぷりに合わせるようにヌルく作られているので、大変に腑抜けた映画で。 クライマックスなんて「偶然」や「運」に助けられまくる状態で、そんなモノに一体なんのサスペンスが生まれるっていうんでしょ? 馬鹿がテキトーにやっても補正かかって生き延びられる世界ではサスペンスなんてものは無効ですからねぇ。 で、そんな弛緩した世界で音楽だけが大仰にサスペンスを盛り上げようと必死なものだから可笑しくて。画面と音楽とがまるで調和してないの。 基本的には大変にヌルい娯楽映画でした。後々カルトな人気が出そうなニオイを漂わせつつも、そこにちっとも手が届かなかったのはバカ臭いなりの尖った個性を持たせる事ができなかったからでしょうか。アクションにしろ衣装にしろガジェットにしろ「この時代設定にこの題材ならばこの程度」という枠の中でしか物を作れなかったような感じが漂っています。どこかしら突き抜けていれば、まだ面白くなったと思うのですが。 それにしても政治的に危ない題材がポロポロと出てくるあたりは誰かを刺激したいのか、それとも無自覚にやっているのか。大戦当時を舞台にしたフィクションだけれども、今に直結している事柄が色々あって「娯楽映画だから」って逃げられるレベルのモノかなぁ?って。「完全に日本国内のみで完結させる映画」として作ってるのかしら? [映画館(邦画)] 4点(2015-02-01 22:18:39) |
546. 映画 ST赤と白の捜査ファイル
《ネタバレ》 ドラマ版は第一話をなんとなく見て終了状態だったのですが、映画版、面白かったです。ひたすらキャラものとして。 【以降、映画の仕掛けそのもののネタバレになりますのでご注意を。】 脚本的には結構無理があって。そもそも赤城が逮捕され脱獄し追われるという展開にかなり無理があるので追う方の警察がひたすら無能&お遊び状態に思えてしまい。そこにもちろん裏がある訳ですが、それを事前に100%把握していた人間はごく一部なわけですから、やっぱり無能&お遊びは否定できないんですよね。 それに犯人が犯行の妨げになるSTの解散を目論んだ、っていう設定も疑問。STさえ存在しなければ捜査能力が低下するなんて考えるものなのでしょうか? 大体、ウィルスソフトをばら撒いてワクチンソフトを売りつけるって、そもそも商売として無効化するのが明白なので誰も入札しないんじゃ? で、だけどキャラが面白くて。赤城・百合根コンビのバカみたいなテンションはアリだと思いましたし(ドラマはあまり見ない私ですが、日頃映画でお馴染みなお二方なわけで、この二人のハイテンション演技が楽しく)、STメンバーや脇キャラも個性的で楽しく。途中、道中を共にする事になる女の子の毒舌っぷりがまたいい感じ。 ユースケ・サンタマリアは毎度のつまんない演技してて、この人ってこんなのしかできないの?とか思っちゃいましたが。 サスペンス映画としてはともかく、キャラものとしてかなり笑わせてもらったので見終わってスッキリ爽やか。なので甘い評価になりました。テレビシリーズをちゃんと見たい感じ。 それにしても、この監督さん、『ガッチャマン』ではなんでこの感覚が全く出せなかったんですかねぇ? 『ガッチャマン』こそはキャラものの基本中の基本ワールドでしょうに。 [映画館(邦画)] 7点(2015-01-25 23:03:44)(良:1票) |
547. アップルシード アルファ
《ネタバレ》 『ベイマックス』を見て「日本のアニメ終わった」って書いた人が話題になりましたが、私は「だったらそれ以前にとっくに終わってるんじゃ?」みたいに思いました。『ベイマックス』は日々進化する洋アニメーションの単なる1つの到達点で通過点ですもんね。日本のアニメは日本のアニメなりの市場を作ってて。でも、じゃあ日本のアニメそのままでいいのか?っていうと。 最近の日本のアニメは「設定や状況をひたすらキャラが喋りまくって説明するだけ」で物語は古臭い、変わり映えしないものがおざなりにくっついてるようなモノばかり。作る側と見る側が閉塞された世界でオナニーしてる状態。そんな中ではこの映画は物語がまだ、少しはあるだけマシ。 日本のアニメって原案の作者や脚本家と声優が作ってるんですね。アニメーターはアニメーション作ってない。日本のアニメの表現形式はこうですよ、っていう定型フォーマット状態で記号化されたキャラを描いているだけ。大して表情が変わらない、固定された顔で表現され、感情は全て声優が表現してます。音声消すとキャラの感情見えないっていう。能や文楽は動きで感情表現してますから別ですね。 この映画はフルCGで描かれていますが、シリアスな物語だとこういうCGです、っていうそこからはあまり魅力を感じられません。なんでこういうモデリング方向にしか行かないのかなぁ? 不思議で仕方ないです。やっぱり表情は固まっていて結局ドラマ作りは声優頼りになっているんですよね。 物語の鍵を握る少女の存在が切ないドラマを作っていて、そこは良かったのですが、でも、絵で見せてくる感じは薄くて。 声優の力に頼らず動画の力を見せるという点において宮崎駿や高畑勲は正しいのだろうな、と思うのですが(個々の作品の出来やその手法はともかくとして)、アニメファンがそれを求めず、現状がいいというのでは、まあ、やっぱり傍から見たら死んだと思われても仕方ないのかな。 [映画館(邦画)] 5点(2015-01-25 22:13:14) |
548. ANNIE/アニー(2014)
《ネタバレ》 『アニー』の基本フォーマット部分は楽しめますが、現代版としてアレンジされた部分に魅力が薄く。 まずはミュージカル映画としての基本がつまらなくなっちゃってるのがキツいです。歌をちゃんと聴かせてくれない、踊りをちゃんと見せてくれない、って。 プロモーションビデオの如く映像は編集で細かくコラージュされ、カメラは動きまわり、踊りはなんだかずいぶんとお手軽。歌っている表情がちゃんと捉えられていない部分だらけで、ミュージカルのキモが抜かれているような感じ。ロケで大ロングなんかで歌ってると、ミュージカルである事の不自然さまで醸し出されてしまって、あー撮影大変ねえ、なんて妙に褪めて見ちゃったりして。 お馴染みナンバーの微妙なアレンジ(いや、ハッキリ改悪と言うべきですか)まで含めて、なんとも安っぽい現代語訳されちゃったねぇ、という印象。 ニューヨーク市長選に立候補する携帯会社の社長という設定も映画を安っぽくする要因で。選挙の支持率アップのためにアニーを利用していたけれど、っていう部分はドラマを作るには悪くないと思うのですが、ハイテクに囲まれてハイテク駆使して、みたいなのが必要だったんでしょうかねぇ。映画を構成する要素そのものにハイテクを組み込んでますが、クライマックスでのSNSの脳天気な描写なんか、それでいいの?と疑問に思ったり。製作会社がソニーじゃ仕方ないのかな。 それでも役者は魅力的で、特にジェイミー・フォックスのコミカルな感じが良くて。アニーよりも彼がこの映画の主役になっちゃってましたが。 あと、個人的にはサンディの扱い軽すぎ!って。もっと大切に扱ってよ、サンディ。 広告では『レ・ミゼラブル』『アナと雪の女王』に並べる形で売り込んでいましたが、ミュージカルとしてはかなりキビシい出来。エンドロールの平井堅が更に映画をキビシいものにしちゃってて。 あの~、日本版主題歌って吹替版だけに入れておいてくれませんかね? 字幕版はなるべくオリジナル通りにして欲しいのですが。よくやるソニーやディズニーも含めて各配給会社さん、再考お願いします。正直なところ、あれ、すっげーウザいっす。 [映画館(字幕)] 5点(2015-01-25 21:35:27) |
549. 96時間 レクイエム
《ネタバレ》 『96時間』の新作が見たかったのであって『逃亡者』モドキを見たかったわけじゃないのよ?みたいな。 「元妻が殺され、その殺害容疑をかけられた男が警察から逃げながら真犯人に迫ってゆく」って、ほぼ『逃亡者』な話なわけで、これまでに比べるとブライアンが受けから攻めに転じる転換点がとっても後の方になってるんですね。おいおい、いつになったら悪いヤツをボコりまくるんだよ!ってストレス溜まります。 その構成のために敵の描写がとても浅く、これまでで最も小物な敵になっていて。その上、更なる真相が、みたいなのも、ねえ。 とりあえず、ここ一番ってとこで白ブリーフはないよねぇ。もう全部白ブリーフに持っていかれちゃうもん。後の印象が「白ブリーフの映画」になっちゃう。 リーアム兄さん安定のアクション映画ではあるんですが、コレ!って個性は薄いところが残念。いや、そのバカっパパぶりは健在だったので、その点ではステキ。 マギー・グレイスをいつまでも「可愛い娘」として引っ張るには少々無理がありますが・・・ [映画館(字幕)] 6点(2015-01-25 21:00:17) |
550. アゲイン 28年目の甲子園
《ネタバレ》 いい話なんですけれど、でもあちこちひっかかってしまうところがあって。減点法で評価しちゃうとキツいわ、みたいな映画。 出場辞退になった時のメンバーの28年後の話だと思ったら、その時のメンバーはたった3人(少なくともハッキリそう判る人は)。あとは他の時代の人々。肩透かし。いや、マスター甲子園ってもののルール上、そうなってしまうんでしょうけれど。 で、出場辞退になった原因のエピソードに深い秘密があるのかと思えば今から40年前の青春ドラマみたいな話で。結局殴ったんじゃん、みたいな。全体を支配する昭和臭。 地区決勝をクライマックス化しちゃってるので、そこから先が蛇足状態で、なのにその時点で未消化エピソード大量で描く事は沢山。ダラダラと続いてバランス悪い悪い。 中井貴一の娘のエピソード、切符を投げ捨ててからラストのキャッチボールまで飛ぶわけですが、観客にその行間を補完させ過ぎ。あそこまで突き放して、なお甲子園まで出てくるまでの流れに説得力を与える事を放棄しちゃってます。 人生の曲がり角を過ぎた人間に、止まった時間を動かす、まだやれる事、諦めない事を示す内容は良かったと思います。 せっかくのフィルム撮りもちゃんとフィルム上映できれば良かったんでしょうけれど、世の中さっさとデジタル上映に移行して、デジタル化されてしまうとフィルムの優位性が死んで粒子感キツいばかりの映像になってしまいますね。 そんな要素も含めて、なんだか前向きなテーマのハズなのに、随分と後ろばかりを向いてるような感じがしてしまう映画ではありました。 [映画館(邦画)] 6点(2015-01-25 20:29:05) |
551. シン・シティ 復讐の女神
《ネタバレ》 タッチは前作と同じノリですが、お話しは前作よりもシンプルになったかな? あちこちエピソードが飛びまくる前作と違って、今回は1つの話を幾つかの視点から描いてる感じで。 でも、ノワールな素材なワリにコミック原作のせいかなんか、物語は単細胞的であまり面白くないんですよね。薄っぺらいの。 ジョセフ・ゴードン=レヴィットのエピソードなんか、ただのバカのように見えて、と思ったらマジでただのバカで、その上、彼の最期はその後のエピソードに何のフォローもないので、ただの自己完結状態になってしまっていて。彼女を殺されるところまで全くの無能で、ただ不快なだけで終わってしまった感じがします。 ミッキー・ロークは前作と違って殆どドラマを抱えてなくて、もはやキャラものとしての顔になっている状態ですし、ブルース・ウィリスはただのネタみたいな存在ですし。 ミホは前作のデヴォン姐さんの方がヴィジュアルが圧倒的に良かったなぁ。 それでも最近すっかりおっぱい要員と化してるエヴァ・グリーン姐さんの悪女っぷりは楽しませて頂きました。 だけど、私はこの陰鬱な世界を楽しめたりしないので、ここから更に続編が作られたとして、それを積極的に見たいとは思えない感じで。このコントラストきついモノクロに部分的に色付けたタッチも飽きましたしねぇ。デヴォン姐さんのミホの外伝でも作られれば、また話は別ですが・・・ [映画館(字幕)] 5点(2015-01-25 19:59:42) |
552. ビッグ・アイズ
《ネタバレ》 カラフルな映像の中からやがて浮かび上がってくるのは2つの色。青と赤。 青は冷たく赤は熱い、というイメージですが、ここでは青は孤独の象徴であり、だけど一方でヒロインの創作の源となるヒロインの世界の色。赤は陽性ではあるけれど、その青の世界に浸食してくる、ヒロインの世界を様々な形で乱す色。 画面の中の青と赤の置かれ方がとても気になる映画です。 サラリサラリとした軽い語り口の中に織り込まれたヒロインの芸術に対する思い、繊細さ、弱さ。芸術の価値を辱めてゆく無遠慮な俗物。ティム・バートンがシンパシーを抱くのも当然という感じで、心が色彩という形に表現されて映画に昇華されているのがとても沁みてきます。 白塗りジョニー・デップもヘンなテンションのヘレナ・ボナム=カーターも出てこない、久々にその世界を堪能できるティム・バートン作品でした。 [映画館(字幕)] 8点(2015-01-25 19:21:07) |
553. バンクーバーの朝日
《ネタバレ》 なんだかボンヤリした印象の映画。何が問題かって、明るい画でアップの多い高畑充希の表情は印象に残るけれど、肝心の主人公を始めとしてチームメンバーの表情がちっとも印象に残らないという。見終わってみて多くがカオナシ状態なんですよ。 引きの画が大半を占めていて(カフェの中で高畑がみんなに語るシーンでチームメンバー全員をシネスコフレームいっぱいに収めているショットなんか、よく撮れてるというよりは作為に過ぎる感じ)、その上暗い画面が多く、ここ一番の表情が存在していない状態。妻夫木聡はリアクションの薄いキャラとして描かれていますから、更に存在が薄く感じられます。 自分を殺して一歩退いたところで生きる事こそが日本人の美徳である、とばかりに受け身な人々の生を一歩退いた視点で描いているような感覚を受けて、あーコレもまた被害者意識の強い過去の日本人映画なんだねぇ、と。それ、昔からなんか少しでも進歩してる? この監督、『舟を編む』以降、随分とつまんない監督になっちゃった感じがして仕方ないんですけど。優等生的な映画を撮っていたいのかな? 対象から腰が引け過ぎてるんじゃないかなぁ。 [映画館(邦画)] 5点(2015-01-04 00:26:07)(良:2票) |
554. アオハライド
《ネタバレ》 男が女々しくて優柔不断で決断力がまるで無いためにヒロインが振り回される、っていうのは最近の少女マンガ原作の映画のパターンで。もうダメ男ばっかり。世の女性達はそんなんがいいの? で、これもそんな話なのですが、でも、ちゃんとその女々しい男の話に向き合って作られてる感じで。 目が印象的な映画です。まるで目力のある役者ばかりを選んだかのように、目が映画を語る重要なアクセントになっていて印象的。 見つめる、逸らす、泳がす、伏せる、見つける、目撃する、読む。 目が多くを語り、視線が絡む事で動き出す物語。 それからこの監督の良さ、生きた日本の風景を捉えるところ。『ソラニン』や『陽だまりの彼女』と同様に今回も風景が生きていて映画の空気を作り出しています。後半の舞台となる長崎の美しさ、そして小川にかかる橋とその先の坂という地形を、洸の抱えた心の傷に反映させる巧さ。 三木監督はこの国に生きている人の姿をキレイに捉える人だと思います。 青臭い話ではあるのですが、それこそがタイトルにかかっている「青い春に乗る」世界なわけで、その青い時に、それぞれが抱える悩みや痛み、想いを上手くすくい取った作品でした。 [映画館(邦画)] 7点(2015-01-01 22:43:47)(良:2票) |
555. 海月姫
《ネタバレ》 マンガが原作ならばこういう描き方でいいでしょ?っていうのがハッキリ見て取れてツラいです。 リアリズムを廃したギャグ映像が生身の人間によって演じられる事で上滑りし続け、それはドラマを織り成してゆく事を阻害して。最終的にはとっ散らかったエピソードの羅列で終わる映画。 まず、デフォルメされたオタクの生態を笑うばかりで、その才能をあまりプラスとして描いてない、みんなで協力して、なんてところも各人の個性を活かしておらず、単なるオタクからの脱却こそを是としているばかりな点で、それでいいのかな?と。 ファッションショーの成功をクライマックスに据えた事で、結局「キレイに着飾った渋谷系のお嬢さんこそが正義」になってるんですよね。メガネ取ったら美人っていうアレをここでも繰り返していてセンスがとても古いです。 で、オタク状態では地味で、ドレスアップするとキレイって落差を話で見せていても実際のビジュアルで見せきれてない、その差を劇的に感じさせる事がちっともできていないのがまたダサくて。能年ちゃんをキレイに見せてるつもりのビジュアルは、本当にそれでいいのか?というカット多数。どう見てもホラーっぽいライティングまであるし。 説得力なんてモノは皆無で(ファッションショーのせいで政治家のパーティに誰も集まらないという理屈が一体どうしたら成立するのか、論理的に説明して貰いたいもので)、ならばせめてエピソードやキャラクターで楽しませて貰いたいものなのですが、類型的で(相手を酩酊させてベッドの写真を撮るって、つい最近他のマンガ原作映画で見ましたが)空虚な世界が広がるばかり。せめてせめて『三国志』や鉄道や和物やじじいの魅力を少しでも見せようよ・・・ それでもクラゲの魅力だけは幾分醸し出されていた感じで、クラゲがモチーフになった部分はなんとか楽しめたような、そして、キャラの多さでなんとか退屈さだけは免れたような。女装男子の蔵之介に救われてたかな。どう見ても男でしたが。 クレジット見るまで気付かんかったわ!って池脇千鶴や篠原ともえはおろか、能年玲奈の個性までも殺し気味なコスプレ映画ではありました。 [映画館(邦画)] 4点(2014-12-28 22:43:20)(良:1票) |
556. 薔薇色のブー子
《ネタバレ》 ただのネタ集映画なので、もう少しちゃんとまとめて欲しいなぁ、と。 一応、物語的なものはありますが、発展的なものというわけではなくて、動機と結論だけがあるのみ、みたいな。もちろん、その間に挟まっているのはただのネタ。 さっしーのキャラが統一されてません。どういうコなのかが見えてこないの。天然系なのか、受動的なのか、巻き込まれやすいタイプなのか、行動力あるのかないのか、とにかくネタの内容によって性格が変わります。最終的にどことなく魅力的に見えてくる、とかいう事がなくて、結局さっしーの演じたネタキャラです、で終わってます。なのでスタイル的には一応成長物語のように見えなくもないのですが、一人の人間としての個性が存在していないために成長もへったくれもなく、ただの動機と結論でしかないのです。 ネタもデパートの来店記念ネタの繰り返しなどはクドいばかり。繰り返しならば最終的なオチがあって然るべきだと思うのですが、ちゃんとオチてました? ただただネタをタレ流せばそれで成立する、って程度の考え方なんですよねぇ。 その上、ネタとしてすら成立してない、そこはキチンとしておこうよ、ってものもあったり。さっしーが無理心中に巻き込まれてボートから池に転落するエピソード、先に金づちだと言わせておきながら普通に自力で池から上がってます。金づちである設定の意味は一切ありませんし無理心中のオチも存在していません。 投げっぱなし、散らかしっぱなしでちゃんとオチ、サゲを付けないのは福田監督作品の悪いクセ。 物語的に父ユースケの存在がアレなので、ごくごく狭いところで閉じてしまうわけですが、それもなんか浅い映画という感じです。そんな取って付けたようなメッセージが必要なんでしょうかねぇ? ネタをいかに笑えるか、というのがポイントの映画で、でも笑えないネタが多数を占める状態ではさっしーファン以外にはちょっとキツいなぁ、って感じ。いや、さっしーファンもこんなんで楽しめるのでしょうかねぇ? もう少しさっしーの魅力を引き出してあげた方が良かったんじゃない?とも思うのですが、元々コレこそがさっしーの魅力なんだ!って事だったら、すいません。 [映画館(邦画)] 4点(2014-12-16 23:24:56) |
557. 怪盗グルーのミニオン危機一発
《ネタバレ》 前作に比べてヌルいです。前作もヌルかったかもしれませんが、今作はそれに輪をかけてヌルいです。何しろ前作で「幸せになりました」ってところから、今回は「もっと幸せになります」ってだけの映画ですから。 グルーはすっかり丸く優しいパパに、3人の女の子達はそれぞれに暮らしを謳歌し、ミニオン達は相変わらず楽しそうで、この幸せそうな世界に、あと足らないものは、と言ったら? という事で、この映画は新登場の一人の女性、エージェントのルーシーの視点で描かれてゆく感じです。この世界に仲間入りをしてゆく、この世界に受け入れて貰える女性の話というのが本体のように思えるのですよね。 そのために陰謀だの戦いだのはほんのエッセンス程度。前作では一応核として存在した敵役との攻防も今回は隅に追いやられ、物語は主にグルーとルーシーがその関係を築いてゆく事に費やされます。 グルーを一方的に倒し誘拐するという冷徹な登場の仕方をするルーシーは、仕事仲間となり、協力して信頼関係を築き、私生活に触れ、恋をして、と。そのルーシーの変化は単なるアニメキャラを越えて、一人の人間の移ろいゆく心を見る感じで魅力的です。 特にグルーのお見合いデートに遭遇したルーシーの、彼の名誉を守るための可笑しくも健気でカッコいい一連の行動には「なんていいオンナなんでしょ」って。 血の繋がりの無い者同士が集まって家族を形成してゆく『グルー』の世界が、今回、嫁として、母として迎えられる存在のための映画となったのは必然的な流れだったのかもしれません。見事な愛すべき世界への補完でした。 [映画館(吹替)] 8点(2014-12-16 23:05:45)(良:1票) |
558. ベイマックス
《ネタバレ》 東京国際映画祭で鑑賞。 「宣伝では感動を前面に押し出してアメコミ原作、戦隊ものである事を隠してる」と批判されておりますが、アメコミものを売りにしたって30億が限界の今の日本じゃ、そりゃ260億『アナと雪の女王』層にアピールした方が賢いですよね。 さて、でも中身はちゃんとアメコミもので、戦隊もので、そしてちゃんとディズニーです。さすがに『アナと雪の女王』みたいなキラキラプリンセスの世界ではないですが、好みにうるさい御仁もディズニー大好きなちびっこも同時に満足させちゃう驚異の世界。印象としてはデキが良い時の『ドラえもん』映画。 物語は戦隊ものの雛形に沿っている感じで、悪に対抗すべく仲間が集い、協力し、挫折やすれ違いもあり、って。その中心になるのが主人公ヒロの兄タダシが遺したロボット、ベイマックスの存在。ヒロとベイマックスに焦点が当たり過ぎていて、他メンバーの存在感が薄めなのはちょっと残念なのですが(ゴーゴーをもっともっと見ていたいわ)、そのドラマは情感に溢れていて感動的です。 そして圧巻なのはそんな世界を描出するための膨大な量のありとあらゆるデザイン。画面の隅々まで詰まったハンパない情報量に目が回ります。そして、そのデザインの世界こそがこの映画のキモ。あらゆる人を釘付けにしてしまう魅力ある意匠の数々。 サンフランシスコと東京がブレンドされたサンフランソーキョーの街並は無論の事、未来志向のガジェットの数々、キャラクターに与えられた個性、エフェクトやモーション、カメラワークの1つ1つに至るまで血が通っています。 視覚情報に流れ込む『ベイマックス』の世界は、まるでその中に入り込んでキャラ達と触れ合うような感覚。それはディズニーランドにも通じる感覚。ディズニーの精神。 ディズニーの驚異的なデザイン力の前にひれ伏すしかない、そんな圧倒的な映画でした。 【追記】4DX版は世界とのシンクロ感が更に大幅に向上します。これまでに見た4DXは人称に対するエフェクトが曖昧だったりして必ずしも映像とエフェクトとの親和性が良いとは言えなかったのですが、これは見事。特にカーチェイスシーンと飛行シーンでの「そこに一緒にいる」感の強さ。機会があれば是非4DX版をご覧ください。 [試写会(字幕)] 9点(2014-12-15 22:15:14)(良:2票) |
559. ゴーン・ガール
《ネタバレ》 フィンチャーらしく、少々ダラけたところがある感じで、もう少しタイトにできたんじゃないかと思います。 エピローグ部分なんて「まだ続くの?」って感じがして。その続いてゆく中に何か新たな展開があるのかと思いましたが、エピローグはあくまでエピローグの役割を果たすばかりで。1~2シーンでスパッと切ってしまった方がもっと色々な余韻を残せたんじゃないかなぁ。あの効果的なラストカットはあれこれと事後の説明をせずにさっと出した方がより効果的だった気がします(それだとただでさえツッコミが必要な細部のアラに加えて更にツッコミ箇所を増やす事になりますが)。 さて、エイミーは結局、母の描いた『完璧なエイミー』を嫌悪しつつ、一方ではそうあらねばならないという強迫観念に囚われていたのだろうな、と思います。常に理想像があって、その理想像に自分をピッタリとハメ込なければならない、そのためには手段をいとわない。理想像からかけ離れる事の恐怖に比べれば、他は大した問題ではないと。そんなエイミーを作り出したのは本と現実という二面性を創造した母親。 そしてもう1つ、大衆が求める理想像。理想的な夫婦の形、理想的な人間の生活。そこからはみ出すものを徹底的に叩く事で自尊心(と思い込んでいるもの)を維持している人々、それを煽るマスコミ。テレビやネットに触れている人々もまた、常識的、良識的な理想像に縛られて強迫観念から攻撃性を持つという点ではエイミーと同じな訳ですね。口では良識を説きつつ現実はその口とは必ずしも一致していない、でしょ? つまりこれは、ごくごく当たり前な今の人間、理想的な人間を必死に演じている人々に対するシニカルなお話し。 エイミーみたいな存在が身近にいる可能性の話ではなくて、誰の心の中にも少なからず存在するエイミーの話。 他人の問題じゃなくて自分の問題なんですよ?って、まー、そこに思い至らないといつまで経ったって円満な夫婦関係なんて築けやしないんじゃないんスか? 一生独身であろう私が言うのもナンなんですが。 [映画館(字幕)] 7点(2014-12-14 15:07:25)(良:5票) |
560. 楽園追放 -Expelled from Paradise-
《ネタバレ》 手描きとCGとの境目が判らないくらいのアニメアニメしたCGが良かったです。露出度高いコス着たヒロインがメインの萌えアニメだけどね。 でも、映画としては微妙。物語が転がらなさ過ぎなんですよね。映画全体の7割が「物語」ではなくて「説明」。世界の設定とかキャラ設定とか状況をひたすらキャラに説明させるための会話で埋め尽くされた映画。会話シーンタップリ、物語自体は敵?の正体含めてとても単純。登場人物少な目、水増し感ハンパないです。 クライマックスの戦闘シーンでやっとこさ話が転がってゆく感じがしますが、そこまでの体感時間の長いこと。アニメなら当然絵で世界を語って頂きたいところですが、映像は殆どヒロインのおっぱいやお尻やメカにしか興味がないような感じで。 もっと登場人物を増やして広がりを見せないと、その人類全体レベルの大規模な設定に対して実感できる世界が狭過ぎな感じがしてしまいます。何しろ2人と1台以外はその他大勢でしかありませんでしたからねぇ。 あとヒロイン、幼いのは外観だけのハズですが、実際の行動やメンタリティもかなり幼く思えて、とても優秀なエージェントには思えませんでした。結局はリアリズムよりも萌え優先なんだなぁ、って。 『インターステラー』と結構ネタカブリしてますが、それはつまりどちらの映画もSF設定に新鮮さは無いですよ、って事で。 国産アニメの絵柄を見事に表現したCGと共に、原作無しのオリジナルアニメ映画として出てきた、ってところは評価できる部分なので、あとは設定や脚本に目指すべき高みを見据えて頑張って頂きたいところです。 [映画館(邦画)] 5点(2014-12-14 00:54:20) |