41. 朗かに歩め
《ネタバレ》 BSにて再見。これは、昔フィルム・センターで観たことが有るのだけれど、ギャング仲間がステップを踏みながら交わす滑稽な挨拶しか覚えていなかったです。この頃の小津作品は、アメリカ映画への憧憬が高じて清水宏(原案を担当)ら気の合う映画仲間達と和気あいあいと作ってる感じが良く画面に出ていて、それだけで、観ていて嬉しくなってしまいます。まさに"日本のヌーベル・バーグここに極まれり"って感じかな。いわゆるフィルム・ノワールのように「運命の残酷」が描かれることなく、心温まる人情話へと転換するあたりも、彼ららしいと思います。ただ、『トイ・ストーリー』を観て以来、子どものおもちゃを棄てられなくなった私としては、劇中二度も無残に打ち捨てられるキューピー人形のことが、どうも気にかかるんだよね。 9点(2003-12-08 20:38:24) |
42. 雄呂血
すてぃんぐ様ってば、"共和党が民主党を叩きのめす"って、違うでしょうがあ。全然そんな話じゃ有りませんよ。当然、イーストウッドの映画だって。「もう、あんたってひとはいい加減なんだからっ!」(オイラもよく言われるんだ、うちのカミサンに...) じゃあ、どういう映画かって、一言で言うと、もちろん、「運命は残酷」。これに尽きるっしょ!(しつこい?) 10点(2003-12-04 21:08:25)(良:2票) |
43. 5つの銅貨
《ネタバレ》 ああ、もう、これは思い出すだに泣けてくるよね。当時人気絶頂だったコルネット奏者レッド・ニコルズが、娘の病気の治療のために大好きな音楽(JAZZ)を棄てるんだ。でも、昔の仲間(サッチモ、シェリー・マンなど)や奥さんらの協力で見事復帰を果たすのだけれど、そのシーンでの娘とのやり取り(絶対言えないよ、これだけはね!)がさあ、いいんだよー。とにかく、独身の頃に観てもわんわん泣けたのに、今観たらもうほんとにだめだろうな。だめだわ、既にこれ書いてるだけで、もう泣けてきたよ。しかも、娘が出来たらきっと真似をしようと心に誓って、本当に娘を授かって、それが初めて実現した時は、嬉しかったなあ(『グレン・ミラー物語』の夢は実現しなかったけれど)。もちろん、主題歌は我が心の応援歌ですじゃあヽ(;▽;)ノ 10点(2003-12-04 20:41:50)(良:3票) |
44. 天国から来たチャンピオン
《ネタバレ》 これも公開当時に観たきりなのですが、あばれて万歳(abare)さんのコメントにあるように↓のセリフが使われたシーンなど不思議と良く覚えています。それどころか、上の瞼と下の瞼を静かに閉じると、あのテーマ曲と共に、様々なシーンがまざまざと蘇ってきて、目頭がジーンと熱くなってまいります。主人公がひとりクラリネットでテーマ曲を吹くところとか、天使といっしょに雲の上をずんずん歩いていくところとか、思い出していくうちに観た時と同じように心がほんわかと暖かくなってきます。主人公の魂が新しい身体に入って、スクッと立ち上がって駆け出すところとか、もちろんラストの出逢いと小粋なセリフを言う時のふたりの表情とか。いんもんだよね、忘れられない映画って。 9点(2003-12-01 21:37:07)(良:1票) |
45. 暗黒街の弾痕(1937)
山中貞雄の『人情紙風船』と並んで土砂降りの雨が、美しくも切ない、”泣ける”犯罪メロドラマの一大傑作。【STING大好き様へ】STING大好き様ともあろうお方が、こんなところで何ふざけてんですかあ! かりにもこれはフリッツ・ラングのアメリカ時代を代表する傑作ですよ。映画ファンとして恥ずかしくないんですか。やるなら、『Mr.レディMr.マダム』(もちろんこれも良い映画ですけど)に行っておやりなさい!全くけしからん。プンプン(*`ε´*)ノ彡☆ 【皆様へ】というわけで、このつづきはどうぞ、あちら(『Mr.レディMr.マダム』)にてお願いします。【やましん様へ】 「運命は残酷」こそは正にラングのモチーフ。おお、そうです、そうです。いやあ、貴方様の映画に対する深い愛情と慧眼にはいつも感嘆・感動しております。よい機会なので、いつぞや貴方様より頂戴した"映画ファンの鑑"を今日この場にて謹んで返上させていただきます。どうも私には荷が重いので...m(_ _)m 10点(2003-11-26 21:22:35) |
46. 野菊の墓(1981)
《ネタバレ》 日本が世界に誇るカツドウ屋マキノ雅裕の助監督を長らく勤めていた澤井信一郎が満を持してメガホンを取った、輝かしき処女作にして最高傑作。80年代以降に撮られた日本映画としても屈指の名作。でも、公開当時から不当な扱いを受け、あまり観られていないのもまた事実。それでも、松田聖子の白無垢姿は号泣するほどの絶品! 追記:私は別に聖子ファンでも何でもないんですが... ところで、昔、私は死んだばあちゃんに「絶対泣けるから」と言って無理矢理これを観せたことがありました。最初は「なにぃ、たりぃがね」と馬鹿にしながら観ておりましたが、民子がお越し入れするシーンと政夫が学校の運動会を終えてすぐさまそこへ駆けつけるシーンのカットバックあたりから泣き始め、もうほとんどそのまま最後まで泣き通していました。観終わってから着物の裾で涙をぬぐうばあちゃんに「ほらみろ、やっぱり泣いたじゃん」と冷やかすと、「年寄りに恥かかしたら、いかんよ」としかられてしまいました。でも、ちょっとうれしかったな。 10点(2003-11-26 20:11:25)(良:5票) |
47. 家路(2001)
「映画は、解釈するものでも理解するものでもなく、感じ取るものだ」と私は信じている。現実を、ある距離を置きつつ、只じっと見据える。だが、決して非情なわけではない。むしろ、慈しみと少しばかりのユーモアも交えながら対象を見つめること。「主人公の孤独や悲しみとは、これこれこう言うものですよ」なんて、いちいち説明しなければいけないというのなら、映画なんてものは、何の存在価値もありゃしない。「映し画かれたものから観客に何を感じ取ってもらえるか?(あるいは、観客の側から言えば、何を感じ取れるのか?)」、この問い掛けを、90歳を超えても尚精力的に投げかけてくれるマノエル・ド・オリベイラ監督の存在に、私は大いなる憧憬を抱いている。ブラボー! 10点(2003-11-21 12:20:37)(良:3票) |
48. ドッキリ・ボーイ/窓拭き大騒動
『大丈夫日記』に続いて、懐かしさのあまりつい投稿してしまいました。話は、ちょっと気弱なチェリーボーイが、掃除夫をしながら、さまざまなおバカでHな体験をするというもので、今となっては目新しいものではありません。はっきり言って、しょーもない映画ですが、まだ中学生になったばかりの頃の私にとっては、成人映画はおろか『エマニエル夫人』などさえ観ることはかなわず、こうした映画は有る意味貴重な存在でした。なにせ、恥ずかしながら3回も観に行ってしまったくらいですから。しかも、世界的にもヒットしたのでしょう。その後シリーズ化され、第3作目(教習所どッキリ・レッスン)も公開されました。もちろん、これも観ましたよ! というわけで、「もう一度観てみたい、あの懐かしのおバカ映画の部屋」に堂々殿堂入りとさせていただきます。 追記:やあ、ビデオが出てたなんて、しかもぐるぐるさんが観られたなんて、驚きです。しかも、呆れてます。借りるときは、ある意味18禁なやつより恥ずかしかったんでないの?ところで、私が一番好きなシーンは「泡......」お-っと、言えネエ言えネエ。 1点(2003-11-15 11:27:37) |
49. Mr.レディMr.マダム
すてぃんぐ様↓ってば、このサイト一番の人気者だというのに。やっぱりあのお噂は、本当でしたのね。「俺と一緒にチーク・トゥ・チークしようぜ」って、私におっしゃってくださったのは、あれは、カモフラージュだったのね。ヒ・ヒドすぎるわ! ほんとうに、運命は残酷(←皆さんもつなげてみよう!)。 冗談はさておき、これは今観ても新鮮な上質のコメディーだと思います。アメリカではリメイクされ、日本では舞台化されたほど評判を取った作品です。ウチのカミサンもおススメです。 7点(2003-11-10 21:17:32) |
50. マルメロの陽光
実在する画家が、マルメロという果実(日本で言うところのカリンですな、蜂蜜に漬けて、咳止めの薬になるという)を描こうとする様子を単にカメラで追っているだけなのだが、これを単純にドキュメンタリー映画だとは呼びたくないほど、マルメロと画家と監督の関係は、とても真摯で親密な関係を築いているようにみえる。画家は「写真に写して描けば」と言われても聞かずにマルメロの実のなっている木の傍を離れようとはせず、マドリッドの陽光を浴びて多彩な表情を見せるマルメロを一心にキャンバスへと写し取っている。そんな画家とマルメロを、カメラは静かにひたすらに捉え続けると言った風に。なんだか、そんな姿を呑気に眺めていると、こちらも次第に幸せな気持ちになっていくのだから不思議だ。例えて言えば、前作が小津のようにごくわずかなカットから「見えないもののありかを指し示す」ように描いていたのに対して、本作では、清水宏(この人も昨年生誕100周年だったんだと。特集もやってました。ホントに観たかったよ~)のように、写す対象全てを愛し、これらを丸ごと写しとろうと言う試みのようだと言ったら、こじつけだろうか? 9点(2003-11-10 18:09:31)(良:2票) |
51. エル・スール
これは、私の理想とする映画の一本かもしれない。「いかにはげしくとも こわいほどしずかで そしてかなしい」映画。でも、観終われば、なぜだか やたらと うれしいのだ。 10点(2003-11-10 13:11:18)(良:1票) |
52. 情婦
ビリー・ワイルダーは優れたドラマ作家だとつくづく思う。本作も初見の際は、2転3転する展開に度肝を抜かれたものだ。しかし、2度3度観返していくと、なぜだか少しずつ飽きてくる。例えば、デートリッヒの「ストッキングが破けるのだけは我慢できない」というような台詞が出てくるが、それが台詞だけに終わっている。もし、本作の監督が、彼女主演で『天使』を撮ったルビッチや多くの主演作を残したスタンバーグならば、こんなおいしいシーンをいかに面白く観せるかに心を砕かずにはいられなかっただろう。隙のないストーリは却って見応えのある大胆な演出を阻害する。チャールズ・ロートン演ずる弁護士の台詞じゃないが、「あまりにも出来すぎている」のだ。たぶん。 7点(2003-10-25 17:37:24)(良:1票) |
53. グリーン・デスティニー
『英雄』を観に行けないとグチをこぼしていたら、映画狂の友達に「それよりこっちを先に観ろ」と勧められてビデオで観た。で、観ているそばから「ああこういう作品に出逢えるから映画って止められないよねえ」という悦びと「こういう作品こそ映画館で観たかった」という悔しさとが同時にこみ上げてきてしまった。自分の感情をひたすら押し隠す古風な大人の恋と、一目出逢ったその時から己の感情の赴くままに愛し合う若者の恋を軸に、今まで観たこともない官能的なアクションがファンタジックに展開される。そう、これぞ正に活劇!。特に竹林のシーンは白眉ですな。”あーもうどうにでもして”って感じで、おじさんはTVの前で身悶えておりましたよ、ホンマに。 追記:地上波で観ても面白かったから満点献上ってことで。 10点(2003-10-18 15:15:54)(笑:1票) (良:1票) |
54. 座頭市物語
《ネタバレ》 《まことに申し訳ないが、以下、クライマックスシーン完全ネタバレにつき、未見の方はご遠慮ください。》 勝新太郎が演じただけでも座頭市シリーズはTVも含めて数多くあるが、その頂点に君臨するのがこの第1作である。座頭市の凄腕はろうそくや天井に投げつけられた一文銭のエピソードなどによって既に存分に観ることが出来るが、やはり、素晴らしいとしか言い様がないのは、平手造酒を演ずる天知茂である。池で釣りをしながらの市との会話のとぼけた味わいや、胸を患い寺で臥せっているところに、市が出入りに助っ人に行ったと聞かされるやいなやガバッと跳ね起き、小僧が必死に止めるのも聞かず、押っ取り刀で駆けつけるその姿は、それだけでも涙なくしては、観れない! そして、小さな橋の上で市との対決。市は造酒を斬りたくないのに、造酒はそれを許さない(この時の彼の台詞がまた泣けるんよ!)。勝負はもちろん一瞬にして決する。市の背中に覆われて、斬られた造酒の姿は画面からは見えないが、ここで、「勝新、日本一!」と観客席から思わず掛け声が飛ぶ位の一世一代の名演によって、死に行く平手神酒の(決して見えない!)満足げな表情と心の友をこの手で斬った座頭市の深い深い悲しみが、描かれる。嗚呼 10点(2003-10-17 20:52:46)(良:1票) |
55. インディア・ソング
《ネタバレ》 私もこれ、学生時代に日仏学院で観ました。たしか、英語字幕だったような。「何もない空間」で有名な劇演出家のピーター・ブルックが監督した『雨のしのび逢い』をデュラスは気に入らなくて(私は大好きですが)、自らメガホンを取り、その出来栄えは、あのゴダールもたじろいだという逸話を持つ作品だけあって、多少覚悟してはいたんですが、これほどまでに過激とは! とにかく画面に映っている女(椅子に座っている)と男(女の斜めすぐ後ろに立っている)は全くしゃべることも動くこともなく、そこにただ会話らしきものがかぶさるだけ。まさか、このまま終わりまで行く気か?と思っていると、とんでもない! 突然仕掛けられるデュラスならではの”情念の発露”に驚愕し、魂を打ち砕かれる。もうあとは、彼女の思うつぼ、なすがまま。まるで呪縛されたかのように手に汗握って画面にじっと見入る私がそこにいたのであった。お尻痛かったけど。 10点(2003-10-17 20:04:40) |
56. フレッシュ・ゴードン/SPACE WARS
これ、公開当時に私も観ました。もちろん、Hなところを期待して。もう、ほとんど覚えちゃいないけど、正直そっちはちょっと期待外れ。でも、「くだらねー」とかなんとか言いながら、翌日学校でロボットの真似(あそこがドリルになってる奴)とかして、女子生徒にあきれられちゃいましたよ。あとやっぱ、ロケットですかな。あの形が妙にリアルだったような。この歳で今観返したらどうなんでしょう。まあ、女房には・・・・・・(゚o゚C=(_ _;バキッ かもしれないですけど、「もう一度観てみたい懐かしのおバカ映画の部屋」に堂々殿堂入りとさせていただきます。 1点(2003-10-17 19:41:43)(笑:2票) |
57. まあだだよ
《ネタバレ》 題名の元となる同窓会での師弟の掛け合いのシーンは、黒澤ならではのダイナミックさと純粋さが、大いに胸を打つ。空襲で周囲が焼け野原となり、バラックのような小さな家で年老いた夫婦の暮らしぶりを、季節の移り変わりと共にロングショットで端的かつ抒情豊かに表現してみせる演出は、処女作『姿三四郎』を思わせ、やはり、ただただ感涙。 8点(2003-09-27 16:56:27) |
58. 橋(1959年/ベルンハルト・ヴィッキ監督)
おお、たぶんこれは、私が初めて涙した映画。小学校に上がるか上がらないかの頃にTVで只一度だけ観ました。その後題名も何も分からず再見もできずで、ずっと心残りだったのですが、たった今なんと、八尾の朝吉さんのコメントによって、全てが明かになりましたよ! 本当にどうも有り難う。 でも、題名はそのまんまなのね。 10点(2003-09-27 16:27:21) |
59. トゥルー・クライム(1999)
《ネタバレ》 イーストウッドもまた、天使のようにウインクができる人である。そんな人は、アメリカじゃあきっと絶滅種なんだろうけれど。観処はいっぱいあるが、特にラストの、ひとり去っていく彼の後ろ姿には、ホント痺れました(『捜索者』へのオマージュ?)。ところで、死刑囚と娘の最後の会話には、わんわん泣けるのに、妻との会話には一向に泣けないのは、一体どうしてなんざんしょ? 9点(2003-09-27 15:51:34)(良:1票) |
60. そして人生はつづく
《ネタバレ》 公開当時、『友だちのうちはどこ?』と続けてみたから特に面白かったのだけれども、例の↓「ワールドカップの準決勝をみることの方が、死んだ者を悲しむより大事だ」と言い切るおじさんの逞しい笑顔が眩しかった。題名もいい。 8点(2003-09-27 15:28:46) |