41. 時計じかけのオレンジ
「天才」と「狂人」は紙一重だとはよく言われる。キューブリックという監督は、まさしく「狂人」まであと数センチのところに、片足一本で立っている「天才」だ。好悪や嗜好の別を超えて、ただただ「スゴイ!」と感嘆できる位置にいる唯一の人。その感慨をまざまざと、そして不動のものとしてくれるのが本作だ。 10点(2003-11-18 00:52:37)(良:1票) |
42. ファーゴ
話の本筋ではない、脇を固めたキャラクターたちの存在が面白い。はじめに「事実に忠実に再現した」とキャプションが付いているが、このキャラクターたちまではどうだったのか?頭が少しイカてしまった東洋系の学友、2人と夜を共にした、いかにもな田舎娘、必要なカットだとは思えないレジを打つ娘の存在など、演出と構成の妙が光る。そしてフランシス・マクドーマンド。上手いね、実に上手い。これほど自然体で演じながら、しかし確かに存在感を見る者に残せるというのは、ただものじゃない。事件の残酷さ、悲惨さへの感想は横においておくとして、いち映画として見た場合のこのリズム感、淡々としていても飽きさせないで最後まで見させてしまう手法は、単純に言ってスゴイ。誰にも出来そうな錯覚を抱くが、なかなかどうして難しいものだと思う。 8点(2003-10-31 00:24:03) |
43. カメレオンマン
「ウディアレンの代表作を挙げろ」と言われると、たいがいの人は「アニーホール」、「マンハッタン」、「ハンナとその姉妹」の“アレン三種の神器”の名を出す。確かにどれも素晴らしい、代表的な作品だが、映画人としてのアイデアがいかんなく発揮されてるのはむしろ本作だ。事実、映画通の人ほど「カメレオンマン」を代表作だ、名作だと推す声は多い。なるほどそれも納得で「映画でとことん遊んでみました!」というアレンの嬉々とした声が聞こえてきそうだ。得意の人間生来の矛盾を笑いで包んだ作品はもちろん名画だ。だが、こんなに遊び心が満載の映画にも、ウディアレンの魅力は確かに詰ってる。そしてなによりその遊び心の中に、人として大事な、大事なメッセージも内包させている。クソマジメに描いたり、お涙頂戴路線で描く作品はいくらでもある。しかし、それを笑いで表現してみせるこのセンス・・・素晴らしい!ウディアレンと出会うこと。それは人生を豊かにしてくれることと限りなく同義だ。 [ビデオ(吹替)] 10点(2003-10-30 23:54:43) |
44. 地球は女で回ってる
《ネタバレ》 「総決算」という言葉がピッタリの作品だ。いわゆる「アレンらしさ」がてんこ盛り。おそらく今作でアレンはひとつのピリオドを打ったのではないかと思う。それを証明するかのように、本作以降の作品には特有の「アク」の強さが消えており、同じコメディでも、より正統派な笑いを求める作風へと傾向が変化した。話を元に戻そう。彼がこれまでテーマとしてきた主題がすべて本作には詰め込まれており、またアレンが敬愛するベルイマンとフェリーニがモチーフにもなっている。母校の表彰式に向かうという設定は「野いちご」であるし、ラストで創作上の登場人物が総出演するのは「81/2」そのままだ。だが、さすがはアレン、ただの猿真似で終わらせなかったのは、フェリーニのようにラストを感動の一幕で締めるのではなく、虚構の世界で独白した自分をもう一度現実社会へと引き戻し、それをも笑いのネタにしている点だ。あたかもそれは「まだオレは終わっちゃいないぜ!」と高らかに宣言してるかのよう。この映画人は実にシブトイ。そしてそのシブトさこそ、アレン最大の魅力なのである。 9点(2003-10-30 23:33:25) |
45. 十二人の怒れる男(1957)
脚本の勝利!作家としてこれだけのモノを書けたら、とサスペンス系の物書きたちは思うことでしょう。一貫して論理性という基軸をを保ちつつも、そこに個々の陪審員たちのキャラを重ね合わせることで、単なるいち事件にしか過ぎなかった平坦な一本道に彩りを加えたり、または閑散としたものへと変化させていってる。映画としても十分過ぎるくらい面白いと思うし、将来法律家、法廷弁護士を目指す人は見て損はないと思う。「法廷モノ(厳密には違いますが)」で今作以上の作品はいまだお目にかかったことがない。 10点(2003-10-29 01:18:55)(良:1票) |
46. エド・ウッド
現代を代表する「変人」監督ティム・バートン。先人へのオマージュとばかりに、かつての「変人」監督へ捧げた愛すべき小品。「マニアック」、「オタク」もティム・バートンのレベルまで来れば、それは「敬意」、「尊敬」へと変化する。エド・ウッドも、ティム・バートンに伝記映画を作ってもらえたら本望というものだろう。時空を超えた映画愛がここにある。情熱ほとばしる、見事なB級映画だ。 8点(2003-05-24 00:38:20) |
47. アパートの鍵貸します
コメディ映画にとって、「完璧」という言葉が許されるのなら、本作こそふさわしい。「粋」を貫いたワイルダー、レモンに乾杯!そしてシャリー・マクレーンの愛くるしさにもう一杯! 10点(2003-05-20 23:33:23) |
48. ドライビング Miss デイジー
出だしから中盤にかけての展開は、「ベタ」であるけれど、中ごろから最後にかけての展開はうまい。痴呆、人種差別といったテーマを題材にすると、とかくありがちな「行き過ぎた演出」をしがちだが、本作は必要以上に多くを見せず、淡々と描いたのが良かった。淡白すぎるくらいだが、であるからこそ、むしろ胸に来るものがある。あとは何といってもキャストの演技力の素晴らしさだろう。M・フリーマンは朴訥としながら芯の強さを表現し、カクシャクとしたオールド・レディを演じたJ・タンディの気品溢れる雰囲気は「英国淑女」の面目躍如だと思わせた。2人の演技が本作の魅力を大半を担ったと言っても過言ではない。 7点(2003-05-15 23:55:58) |
49. ギター弾きの恋
障害を持った役柄というのは、役者なら一度はチャレンジしたい役どころであり、また監督も、「純粋」だとか「優しさ」といったメッセージ性を示すために登場人物として盛り込みたがるものだ。ウディアレンが真に凄いところは、チープな人生訓を単純な演出で描く凡百の監督たちとは違い、障害というものを一切ウェットに描かずして観客にメッセージを感じ取らせたことだ。その期待に応えたサマンサモートンの演技力も見事で、これ見よがしに陥っておらず好感が持てる。(ショーンペンの巧さは今に始まったことではないので割愛)細部に至るまで映像全体に決め細やかな配慮が見られ、もはや職人の域に達した感のあるウディアレン。それでいて架空の人物であるエメットを、さも実在したかのように描く「遊び心」までも兼ね備えられては、脱帽と言わずして何と言おう。おそらくハッティとエメットの関係をもっと見せて欲しかったと思う観客もいただろうが、必要以上のことは一切描かず、観客に「抑制」の大切さを示した点も素晴らしい。「僕は何も言わないよ。君たち一人ひとりが感じ取ってね」。ウディアレン、実に大人の監督である。 9点(2003-05-13 23:19:58)(良:1票) |
50. マンハッタン殺人ミステリー
小ぶりながら、いち作品としても十分に楽しめる佳作。14年ぶりに復活したダイアンとのコンビが痛快で面白い。恋愛関係は終わっても、今も「一番大事な人だ」と言ってはばからないアレン。そのダイアンとの「友人関係」がよく伝わってきて微笑ましい。本作はちょうどあのスキャンダルの只中で、本来はミアファローのために書いたそうだが、この窮地にダイアンが手を差し伸べたのかな?と思うと、感慨はさらに深い。2人の私的な部分と重ね合わせて際どく言えば、息子も大学に入り、子育てを終えた熟年夫婦の「セックスレス」な関係すら画面から想像できる。愛情よりも友情で結ばれた夫婦、というより、もはや「同士」に近い感じだ。また、2人の代表作である「アニーホール」との比較で眺めてみると、味わいは更に深くなる。たとえば、犯人を車で追跡するシーンで「まったくあなたって方向オンチなんだから」と怒られるが、これも「アニーホール」のラストでアレンがダイアンとのヨリを戻そうと、カリフォルニアで慣れない運転までして追いかけたシーンと重ねて見てみると面白い。「ああ、本当に2人は仲がいいんだな」ってことが分かって、アレンファンならずとも嬉しくなる作品だ。 8点(2003-03-30 22:03:38)(良:1票) |
51. マンハッタン
稀代の才人ウディアレンの作品は、初期のドタバタコメディ、男女の関係や人生を問いかける哲学的要素の強い中期、ミアファローとの離別後から始まる楽天思考の後期、と3つに分かれるが、本作はその中期の最高傑作だろう。代表作と言われている「アニーホール」をも凌ぐ。抜群のユーモアのセンス、オシャレなカット割りと凝ったカメラワーク、あまりに美しいマンハッタンの景色、機知に富んだ会話の数々。そして何より、安っぽい美談や誇張を一切排して人間の不条理さ、非合理さ、弱さを真正面から告白していく勇気と誠実さに、やむことのない拍手を送りたい。ちずぺさんが下で「将来何かを生み出そうとする人は見ておくべき」と書かれてましたが、まさしく。“本物”のアーティストやクリエーターを志す人は、見ておくべきでしょう。さらに私なりに言わせてもらうなら、「何度でも」見なくてはならない作品であると付け加えさせてもらいたい。 10点(2003-01-19 01:43:51)(良:1票) |
52. 初恋のきた道
アジア映画、特に中国映画にありがちなことなんだけど、「純粋」とか「素朴」といったことをテーマにする場合、そこにプラスするαがなきゃ見ている方は、ひたすらに辛い。それはユーモアだったり、人間の業だったり、リアリティだったり、要素はなんでもいいのだけれど、その意味においてもうひと工夫が足りなかった。というのが正直な感想。監督がこの作品をノンフィクション色で責めたのだとしても、それならそれで「甘っちょろい」としか言いようがないほど登場人物が善人だらけだし、「苦味」が圧倒的に足りてない。「チャン・ツィイー はかわいいです」ということしか印象に残らなかった。 3点(2003-01-10 02:14:28)(良:1票) |
53. 誘惑のアフロディーテ
この映画は英語に詳しくない人には面白さがよく伝わらないと思う。英語ならではの慣用句や複数の同音異義語を織り込むことで「会話の妙」を作り出すのがウディ・アレンの特徴だけれど、これはその典型的作品。日本語字幕をした人が精一杯、原語に近づけようとしたのはわかるが、文字数の関係と、日本語では表現しきれない部分も多々あって面白さが半減してた。私も英語は詳しくないけれど、たとえばリンダ・アッシュという娼婦役の別名。ここにも同音異義語の面白さと言外の意味というのが隠れてる。しかし、日本語訳となると単にカタカナ表記するだけで、その真意がどうしても伝わらない。ストーリーとしては「渾身の一作」ではないけれど、それなりに楽しめるのではないだろうか。アレン作品の中ではそれでもやや劣るけれど。 6点(2002-09-06 23:50:04) |
54. 北京原人 Who are you?
この映画は、映像技術がどうの、演出がこうのと、大マジメな観点で見るものではありません。「世の中には一歩間違えば、こんな不条理もまかり通ってしまうことがあるのだ」という哲学的テーマを読み取る作品です(笑)大の大人たちが何の疑問も感じず、反省もせず、「やっぱりおかしいだろう?おかしいよ!」と振り返ることも拒否してしまうと、こんな結実が待っているという、社会への警鐘を促した反面教師の映画なのです。この世にある玉石混交のアイデアは、必ずしも様々な意見の集約や、長い思考の果てに誕生したものではなく、ある種の「勢い」と「打算」によって生まれるものが時としてある。そうしたアイデア、企画に対して誰かがストップや疑問を投げかけないと、とんでもないことになる。社会に抑止力など期待しちゃいけない。止めるのは自分なのです。それをこの映画は強く訴えているのです(笑) 1点(2002-08-21 02:13:20)(笑:1票) (良:4票) |
55. オープン・ユア・アイズ
結構みなさんの評価は高いようだけど、私は今一歩、いや三歩くらいかなあ。なんか、徒に複雑にしてるだけって印象しか残らなかった。もう夢だろうが現実だろうがどっちでもいいヨ!って思っちゃった、クドすぎる。虚実を混沌とさせる手法が。それと・・・ペネロペ・クルスの胸、なんか嘘っぽくない?いわゆるメディカルな感じがすごくしたんだけれど。シリ○○・・・ 3点(2002-07-08 22:21:37) |
56. ブロードウェイと銃弾
よくあるバックステージもので、セットや演出方法など、ややもすれば駄作に陥る危険性をあえて犯してるようで、よくよく見れば、細部にまで凝りに凝った作りをしているという天才肌のアレンらしい作品。機知に富んだユーモア、絶妙のセリフ回し、実力派のキャストと、文句のつけようのない出来栄え。CGや特撮など派手な技術的進歩が目覚しい昨今にあって、脚本や役者の力で勝負する「これこそ映画だ!」と、原点を教えてもらった感じだ。パーな愛人役をこなしたジェニファーティリーと用心棒とのセリフの練習のシーンは何度見ても笑える。トウの経った落ち目の大女優へレンは言うに及ばず。未見の方々へ。こんな面白い映画を知らないなんて、人生の何十分のいちを確実に損してることになりますよ! 10点(2002-07-08 01:17:43)(良:1票) |
57. 世界中がアイ・ラヴ・ユー
「ありがとう、ウディ!」と、言いたくなったよ。ゴキゲン度120%!ストーリーのディテイルとか、「ご都合主義過ぎる」とか、細かな「アラ」を捜そうと思えばいくらでもあるだろうけど、この映画はそんな見方で寸評する作品じゃない。私なんか途中から自然とリズム刻んでしまったほど軽妙で、愉快だった。本当に、幸せになれる映画で、文句なく満点! 10点(2002-06-20 23:53:47)(良:1票) |
58. 恋愛小説家
ヘレン・ハントが母親の前で、女としての自分と、母としての自分とのバランスが取れなくなって取り乱すシーンを見たとき「アメリカ人だなあ」って思った。ヨーロッパの人じゃまず考えられない。「7点以下を付けてるようじゃ素人」だそうだが、私はせいぜい5点がいいとこ。キャラクターの設定といい、ストーリー展開といい、見え見えのベタだもの。ジェックニコルソンの演技力に助けられて、どうにか見られるようになった程度の作品。 5点(2002-05-06 03:36:50) |
59. パール・ハーバー
「新しい歴史教科書を作る会」もびっくりの史実認識の欠如。というより、歴史への「冒涜」だ。単なるアメリカ人のオナニー映画だ。 0点(2002-04-30 02:41:39) |
60. ライフ・イズ・ビューティフル
ラストで親父さんが死んだってのが良かったよ。もし両親ともに生き残って万々歳なら、出来すぎで嘘臭くなるもの。父親が死ぬってところが苦味というか、リアリティのある一本の強いスジをこの作品に通してる。だって、すべてが丸く収まっちゃうったら、ハリウッド映画になっちゃうでしょ? 7点(2002-04-30 02:26:12) |