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41.  キングコング対ゴジラ 《ネタバレ》 
テンポが良く無駄のない脚本で、登場人物とストーリーが濃密に絡み合う。テレビ局員桜井はスポンサーの製薬会社宣伝部長に頭が上がらない。部長は関係者である植物学教授から南洋の島の魔神の話を聞く。部長の命令で桜井らは魔神探しにでかけ、キングコング捕獲に成功。桜井の妹はキングコングに捕まる。妹の婚約者は鉄鋼会社社員で、その会社で開発された特殊繊維はキングコングを運ぶのに使われる。桜井は婚約者のある仕草で昏睡作戦を思いつく。部長、桜井、婚約者らは関係者ということで自衛隊に自由に出入りし、さまざまなアドバイスをする。ゴジラの話とキングコングの話が同時進行する。ゴジラは北極で米潜水艦を沈め、米軍の攻撃をものともせず、第二の故郷日本をめざす。キングコングは大ダコを退治したあと赤い飲み物を飲んで寝てしまひ、捕獲されて日本へ向かう。自衛隊から上陸を拒否されるが、目覚めて逃げ出す。ゴジラは東北、キングコングは東京に上陸。動物的本能により両者は出会い、そして激突。キングコングは一度はゴジラの熱線におびえ退散するものの、百万ボルトの電流に触れ、蓄電体質となり、ゴジラと再対決する。城を破壊し、両者海中へ雪崩落ちる場面は圧巻。 ◆キングコングは美女捕捉と高い塔へ登るというオリジナルへのオマージュがある。しかし驚くほどユーモラスなキングコングだ。ギャグとしか思えないほど顔がひどい。背中のチャックも丸わかり。米国で酷評されたのもうなずける。ゴジラと較べて手抜きしたといわれても仕方が無い。実に人間くさく、岩陰に隠れるなどの知性を発揮するのが魅力だ。このキングコングを受け付けない人には楽しめない映画だと思う。 ◆ゴジラシリーズとしては3作目で前作から7年。久しぶりということで円谷英二の特撮は特に気合が入っている。潜水艦の天井が炎上する場面、ガソリンを川に撒く場面、コングを吊り下げる準備の場面、大波に襲われる熱海の町の場面など、メインにさほど関係ない場面も丁寧に撮られていて好感が持てる。当時は日米夢の怪獣対決という話題で盛り上がり、観客動員数歴代2位を記録。怪獣対決なのに、どうしてユーモア路線にしたのかは疑問だが、エンターテインメント要素はてんこ盛りで、現代人でも十分に楽しめる内容になっている。特に音楽は秀逸で、その後のゴジラシリーズの良い見本となっている。
[DVD(邦画)] 8点(2011-11-01 09:03:21)(良:1票)
42.  御用金 《ネタバレ》 
武士の世界の不条理を描いた作品。藩の財政難を救うために、佐渡の金を運ぶ幕府の船を沈め、その金を横領するという策謀。そのために目撃者である集落の漁民を全員抹殺し、「神隠し」と呼ばれる。孫兵衛はそんな侍暮らしに嫌気がさして脱藩したが、三年後江戸で藩の刺客に狙われる。問いただせば再び「神隠し」を行うという。孫兵衛はこれを阻止するために帰郷する。途上で神隠しに遭った漁民の娘おりはに遇う。きな臭さを嗅ぎつけた隠密もついてくる。奇縁で結ばれた孫兵衛、おりは、隠密の三人で船の遭難を回避。巨悪の根源である老中も倒す。◆随所で監督の映像美が堪能できる。構図、背景、殺陣が美しい上に、俳優陣に個性があり、重厚感ある時代劇に仕上がっている。また人間が能く描けている。特に村娘から転落して、鉄火肌の賭博師となり、孫兵衛を助け、助けられ、密かに孫兵衛を慕うおりはという役どころは秀逸。特に神隠しに遭った漁村に帰って、それを発見して絶望する場面は実に丁寧で好感が持てる。孫兵衛にしても決して正義感が強く無垢な男ではなく、意図しなかったとはいえ、自分に立ち向かってきた漁民を殺している。この挿話により彼の人間としての苦悩が描けている。そしていつまでも自分を慕ってくれている愛妻との再会。これならクールな彼にも感情移入できようというものだ。◆一方で脚本構成は荒っぽい。財政難を救うためというが、その実態が描けていない。どれほど困っているのか不明なので、「神隠し」は短絡的な強奪・殺戮にしか思えない。又船を遭難させる方策だが、そう簡単にいかないと思う。そもそも都合よく夜に岬を通過するとは限らない。満月だったらどうする?沖で沈没したら金の回収はどうするのか?などと疑問点が湧く。老中の手下に囲まれた孫兵衛をおりはが救う場面もしかり。町のやくざを敵対するやくざがそこにいるとけしかけて、侍とヤクザを闘争させるが、やくざと侍の区別は容易につく筈だ。そして隠密の扱い。最後にあっさり、もう隠密はやめるというオチはしっくりこない。この人の苦悩が伝わってこない。もうひと波乱あってしかるべだ。この人物だけ妙に明るくて、浮いている。。三船敏郎と仲代達也がケンカして三船が降板、急きょ代役として三日間だけ出演という背景がそうさせたのだろう。残念である。ちなみに御用金は出雲崎で荷揚げされ、北国街道で江戸に運ばれた。
[インターネット(字幕)] 7点(2011-10-25 15:40:20)(良:1票)
43.  怪獣総進撃 《ネタバレ》 
怪獣映画に必須の3K(巨大さ、脅威、恐怖)が伝わらない。人間の目線で見上げるようなアングルで撮ればよいものを怪獣目線や俯瞰が多い。これではすぐ飽きてしまう。一歩一歩あゆむときの重量感が無い。怪獣が町を破壊しているとは思えず、ただセットを破壊しているとしか映らない。住民が逃げ惑う場面はあるものの、フィルム合成の演出が冴えず恐怖が伝わらない。円谷英二は特技監督ではなく監修だけ。名前貸しだろうか?◆宇宙人が地球を侵略するのに怪獣達を操るという設定は面白い。怪獣達が暴れる舞台が世界中に広がりを見せているのは評価できる。遺憾なのは怪獣たちが人間に飼われて怪獣ランドにいること。野生のライオンは獰猛で怖いが、サーカスのそれは怖くない。眠っていた怪獣たちを宇宙人が一頭一頭目覚めさせるようにすれば、怪獣の紹介にもなったのに。怪獣ランドは安直すぎる。未来社会の設定だが、町並みは新しくない。◆宇宙人が地球人そっくりの可愛らしい女性であることに萎えたが、後半になり、実はそれは仮の姿であり、本当の姿は鉱山生命体であることが判り、納得できた。一応の説明はできている。宇宙人の言葉使いが妙に親切なのも新鮮だ。◆月基地にある怪獣遠隔操縦装置が破壊され、怪獣たちは本能から富士の裾野にある宇宙人の地球基地を襲うようになる。ぎりぎり了解できる説明だ。ただそこで秘密兵器である宇宙怪獣キングギドラがあっけなく倒されるのは如何なものか。3,4頭は倒すべきだろう。少なくとも最初は怪獣を圧倒しなければ、誰しも納得できないだろう。ギドラが倒れた後に最終兵器、ファイヤードラゴンが登場。とても意外な展開だった。プロットだけたどるとさしたる穴もなく、良い出来の方だといえる。だが肝心なファイヤードラゴンが期待に反して弱く、正体を現せば何ども登場した宇宙船そのものなのだ。所詮は仇花であったのが悲しい。◆バランは保存していた着ぐるみの状態が悪くて使えず、人形のみが作られた。やっつけ仕事です。
[インターネット(字幕)] 4点(2011-09-30 14:10:40)
44.  サイコ(1960) 《ネタバレ》 
女(勤務十年のオールドミス)が会社の金を横領するのが事件の発端。動機は恋人がいるが、お金がなくて結婚できないから。人生で魔が差した瞬間だ。女は恋人の町へ逃走するが、途中で社長に目撃され、警察官に尋問され、車を替えてもパトカーに追尾される。車中で横領が発覚した状況を想像し怯える。上質のクライム・サスペンス。 ◆大雨に遭い、車はモーテルへ。「人は罠にかかったらそれから逃げられない」「人は時々おかしくなるときがある」「一度だけでたくさんね」経営者との示唆に富んだ会話で女は改心し、金を戻す決心をする。使ったお金を紙に書いて計算。しかしシャワーの最中に老婆らしき人物に刺殺される。主人公が死んで驚く仕掛け。犯人が分ってから考えると、犯人との会話で改心し、そして殺されるところが皮肉。無辜の人でなく、横領犯が被害者なのに同情してしまう。大金の行方も気にかかる。経営者が死体を処理し、車ごと沼に捨てるが、途中で止る演出にはらはらする。感情移入が女から経営者に転移する瞬間だ。 ◆ミステリーとして読むと倒叙形式。最初に犯人と殺害方法が提示される。後は探偵役によく謎解きパートだが、犯人がラストで大どんでん返しになるという斬新さ。二重人格が知られていないので、医者に説明させるという丁寧な作り。 ◆謎解きはパートは淡白。探偵が切れすぎるのだ。その場で筆跡鑑定、経営者の様子で女が経営者に会ったと確信。女の妹と恋人に連絡してから家を訪ねる。そして殺される。死体処理は時間の都合で省略。 ◆当時は映画規制が厳しく、陰惨な場面やヌードはご法度。それで観客に想像させる画面作りに徹している。細かいカットをつないだシャワー場面は本当に惨殺されているかのよう。滲んだ血が流れる排水溝の渦、死んだ眼のアップが回転しつつ、カメラはそのまま大金へパンする。音楽は神業。地下室での揺れる電灯、サングラス警察官のアップ顔、覗き見する経営者の横顔、不気味な鳥の剥製、沈むのが一瞬止まる車、闇に浮かぶ高台の家、印象深いショットが多い。 ◆サイコという言葉を世に知らしめた名作で影響は計り知れず。日本では話題にもならなかった。キネマ旬報洋画ベスト(30位)ランク外。最大の瑕疵は母になりきった経営者の声が女性の声である事。次に横領の動機が弱い事。美男美女の理想的カップルで、お金に困っているように見えない。昼休みにHするのはどうかと思う。
[DVD(字幕)] 9点(2011-09-20 19:19:01)
45.  新選組(1969) 《ネタバレ》 
実年齢49歳(もっと老けてみえる)の三船が、33歳で死んだ近藤勇を演じる。違和感ばりばりである。他の役も同様で中年の演じる新撰組になっている。そのため総てが嘘っぽく見える。芹沢鴨の役の人は迫真の演技をしている。【史実と違う点】①浪士隊で京都に残ったのは13人ではなく24人(17人説もあり)②壬生浪士組のとき近藤は芹沢に大阪の商人に用は無いといってるが、実際には大坂商家から資金の提供を受けている。③池田屋事件では9名討ち取り4名捕縛。映画では斬りすぎている。④油小路事件で伊東甲子太郎を暗殺したのは近藤勇ではなく大石鍬次郎。⑤近藤勇はお雪(深雪)太夫を身請けしたが、その後妹お考と出来て妾にしている。お雪とはその際200両の手切れ金を払った。お考が近藤を殺そうとした事実は無い。⑥沖田総司は戊辰戦争には参戦せず、江戸で死んだ。⑦映画で近藤はいさぎよく出頭しているが、実際は名前を変えて出頭している。彼の顔を知っている者がいて素性がばれた。
[ビデオ(邦画)] 5点(2011-09-18 05:54:08)
46.  網走番外地(1965) 《ネタバレ》 
傷害前科2犯で、複数の人を斬って懲役たった3年。寛容な判決ですね。それはともかくも脱獄がメインテーマ。最初の脱獄計画は橘の意に反したもの。チクルわけにもいかず、巻き込まれるのは確実で、そうなれば刑期が延びる。母親が病気に1日も早く会いたい。煩悶する橘。だがそれも老囚人の機転によって脱獄計画は流れ、橘の危惧は杞憂に終った。ほっとしたのも束の間、屋外の伐採作業に向かう途中のトラックから一緒に手錠をつないだ権田が飛び降りた。橘も飛び降りざるをえなかった。途中で橘の弁護士の家を襲い、権田は保護司妻木の妹を傷つけた。それは自首しそうな橘を追い詰めるためだった。トロッコを見つけて漕ぐが、ブレーキがきかず飛び降りる。汽車に手錠を轢かせて切断に成功。その反動で権田は滑落し、怪我を負う。一人で逃げようとする橘に聞こえたのは意識を失った権田の母親を呼ぶ声だった。権田の孤独の心を知った橘は放っておくことができず、背負って病院に運ぼうとする。途中で猟銃を持った妻木に会う。橘の話を聞いた妻木は権田を馬橇で病院にで運ぶことにする。橘の不幸な生い立ちが随時挿入され、感情移入できるようになっている。悪い人ではないのだが、やくざ稼業に身を落し、渡世の仁義で人を斬るはめに。最大のサプライズは老囚人の正体が8人殺しの鬼寅だったこと。牢名主は自分は鬼寅の義兄弟という触れ込みで大きな顔をしていたのでたじたじとなる。うまい演出である。全体に無駄が無くテンポが良い。橘は人間性を取り戻し、妻木も人間を信じる心を取り戻す。良い話です。原作は1597年に出版された小説で1959年には日活で映画化された。本作品は1965年の東映のリメイク版。その際原作の恋愛要素を排除して、母恋と脱獄物語に徹している。映画はヒットしたのでシリーズ化された。だがそのせいで不幸になった人もいる。連続ピストル射殺事件の犯人永山則夫の本籍地は網走市呼人番外地だった。網走刑務所で囚人の子として生まれたのではないかと疑われるのを恐れた(実際からかわれた)彼は戸籍を見られそうになると職場を変えた。仕事が続かず、やむなく窃盗をするようになり、あるとき偶然に米軍宿舎でピストルを盗み、その後の犯罪の悲劇の元となった。ちなみに橘より永山の成育歴の方が遥かに悲惨で痛ましいです。
[地上波(邦画)] 6点(2011-09-18 02:29:25)
47.  大怪獣ガメラ 《ネタバレ》 
ガメラの生態を科学的に推定していく仮定は無理が無く、好感が持てる。第1回遭遇でちどり丸を破壊。第2回遭遇で灯台を破壊するも、少年を助ける。第3回遭遇で自衛隊の秘密兵器冷凍爆弾と発破でひっくり返ってしまうが、手足を引っ込めてジェット噴流を噴射、回転ジェットで空の彼方へ飛び立つ。第4回遭遇で東京タワー倒壊、石油コンビナート破壊。なかなかテンポがよろしい。そして最後に世界中の科学者の頭脳を結集したというZ計画を発動。Z計画実行のための大島へのガメラおびき寄せ作戦も、海上にガソリンで火の回廊をつくる、大島手前で台風の風により鎮火、人工火事を起こす、雨で鎮火、三原山噴火など段階的な盛り上げに成功している。そしてなかなか全貌が語られないZ計画に観客の関心を集中させるように工夫されている。 【少年とガメラ】母親を失い、父の職業が灯台守という関係で転勤が多く、孤独がちな性格になってしまった少年は亀を唯一の心の友としていた。が、あまりに亀を愛慕し、学校にまで持ってくるので先生に注意される始末。父と姉に諭され、少年は亀を捨てるが、実は海岸に匿っていた。そこへガメラ登場。灯台からの転落するところをガメラに助けられた少年は亀がガメラになったのではないかと思う。少年が東京に引っ越すとガメラも東京に出現。少年はガメラは悪い生き物ではないとして大人たちに度々意見をするが聞き入れてはもらえない。何度もガメラに接近を試みる。ガメラを火星に逃がすZ計画には賛同、大人になったら宇宙科学者になってガメラに会いに行くのだという。けなげな少年ですが、ストーリーにあまり絡まないのが難点。ガメラとの心の交流をもっと描き、少年のアドバイスによって計画が成功するような展開にすればよかったのに。少年の活躍にも関わらず、結局ガメラは悪者で終わってしまいました。 【今回判明した事】 ①ガメラはエスキモーの伝承にあった。②北極はかつてアトランティス大陸のあった場所。③ガメラは氷の中で眠っていた。④国籍不明の原爆搭載機の墜落により原発が爆発したために目覚めた。⑤火、原爆、ウラン、高圧電流などのエネルギーを餌とする。 【疑問点】北極圏を東に飛行する国籍不明の原爆搭載機の正体は?電波撹乱塗料は既にあったの?
[地上波(邦画)] 6点(2011-09-17 19:38:04)
48.  にっぽん昆虫記 《ネタバレ》 
不幸な星のもとに生まれた女が、運命に翻弄されながらも時代と共に逞しく生きてゆく物語。とはいえ内容が淫靡かつエグイので、観る人を選びます。苦労の末、最後にようやく愛や成功をつかみとるサクセス・ストーリーでもないので鑑賞後、爽快感はありません。 ◆物語は昭和の歴史的事件をリンクさせながら進行していきますが、それは申し訳程度でさほど意味はありません。これといった後ろ立てのない田舎出の1人の女がいかに世間に揉まれ、運命に翻弄されてゆくかが見どころです。中味は知恵おくれの父親と性関係ができたり、仕事の上司と不倫したり、新興宗教に入れあげたり、騙されて売春させられたり、金持ちの愛人になったり、売春宿を経営したり、暴行を働いて刑務所に入ったりなど、不幸さてんこ盛り。多くの人に騙され、転落人生といってもいいでしょう。褒められるようなことは一つしません。悲しいですね。まともな恋愛はありません。性交場面も美しいものは一つもなく、すべて醜悪に描かれます。性格もどんどんお金に執着していきます。しかし主演女優のキャラが明るいので悲惨さはさほど感じません。考えてみれば不思議な映画です。 ◆題名は、女が自分の娘がパトロンの愛人になったことを知ったときに「私だって人間なんだ」と叫ぶのをモチーフにしています。「女一代記」ではなく「昆虫記」。監督の女に対する態度は同情するでもなく、常に淡々としています。悪くいえば、突き放した印象。昆虫扱いではかわいそうですが、生命力の強靭さを強調したのでしょう。ときおり静止画になり短歌を詠みますが、どことなくユーモラスです。自分を客観的に見る余裕があるんですね。誰も描かなかったクールな視点で描いた「市井の女の一生」と解釈しました。 ◆娘が比較的しっかりしているのが救いですね。学校をやめてしまったのは遺憾ですが、恋人もいて、将来設計を持っています。母親のパトロンに短期間だけ愛人になりますが、すぐに改心してお金を引き出し、仲間と開拓村を始めます。トラクターを運転する逞しい姿には明るい未来が見えます。そしてパトロンに言われて母親が娘を連れ戻しに行くところで終了。娘が戻るわけがありませんが、この女の苦労はまだまだ続きそうです。 
[ビデオ(邦画)] 6点(2011-09-14 19:03:59)
49.  気狂いピエロ 《ネタバレ》 
物語本位で観せる従来の映画を解体し、脚本、映像を独自の感性と即興で再構成させた作品。時系列の操作、ジャンプ編集、観客に話しかける俳優など、映画の約束事を破り、多解釈が可能。詩や映像の豊かなイメージと喚起が、男女が閉塞した現実から逃避行するというストーリーと相まって、爽快さと開放感をもたらす。体験する映画。◆男にとって女はファム・ファタール、魔性の存在。犯罪と事件を運んでくる。その神秘性を崇め共にいたいと願う。ドル札を燃やしたり、奪ったばかりの車を川に沈めるのはそのため。金があると女が逃げるとわかっている。◆女にとって男は夢ばかり見ている存在。一緒にいても退屈。「僕を捨てないでね」「もちろんよ」騙されているとも知らないで詩ばかり書いている男は道化師にしか見えない。◆女は何をしても明るく、生き生きと描かれている。倫理観を超越した神々しさがある。一方で男は、つねに閉塞さを感じている。思想を言葉でまとめようとしているが、うまくいかない。◆多くが記号化されて表現。舞台装置に近い。裸で箱に入ればお湯がなくとも風呂、流れる照明で車中、死体と武器があるので武器商人の家、木の棒だけどダイナマイトと書いてあるなど。女が上機嫌のときはミュージカル風になる。◆事故に見せかけて車を燃やす場面で、高速道路が一部しかない。これは行くことも戻ることもできない絶体絶命の象徴。◆犯罪はコミカルに描かれる。盗むつもりの車の台車が上がったり、ギャングが小人だったり。犯罪も舞台装置でしかないということ。◆音楽が頭の中で鳴り続ける男。鳴っているのは音楽ではなく「あなたは私を愛していますか?」の言葉が鳴っている。本当に愛されているかわからない状態。◆逃避行は町から海へ至る道程。海が近づくにしたがって青色が画面を支配するようになる。車、服、椅子、ボーリング場、ペンキ。青は空と海が溶け合った色で、永遠の象徴。永遠=永遠の安楽=死でもある。◆男はダイナマイトを顔に巻くが死ぬつもりはなかった。「言いたかったのは、何故……」「バカだ、こんな死が」消そうとして爆発。死んだのは観客の心の中の道化師。誰にもこんなバカ(現実からの逃避行)をやってみたい気持ちがある。◆監督のプライベートな作品とも解釈可能。離婚したばかりで、分かり合えない男女の様を描いた。男は監督の分身。ウィリアムウィルソンのように男が死んで監督が生き残った。
[DVD(字幕)] 9点(2011-09-11 19:57:09)
50.  悪名(1961) 《ネタバレ》 
主人公の朝吉は自分の本来の生き方、有り余る力の発散の仕方がわからず、もがいている若者だ。仕事はせず、昼間から賭け事にふけり、女にちょっかいを出す。青白い遊び人とは違い、度胸があり、腕っぷしはめっぽう強い。最大の特徴は頼まれた事は決してあとに引かない男気を持っている事。それで男からも女からもモテる。◆朝吉のやることは矛盾だらけ。ヤクザが嫌いといいながら、やることはヤクザと同じ。軍鶏を盗み、賭け事をし、ヤクザの客分となったり盃を受け取ったり。惚れた芸者を足抜けさせる算段の最中に、堅気の女と婚約する。偽の拳銃でヤクザを騙すが、人妻の嘘の妊娠話には騙されてしまう。色事には強いが酒は弱い。博打でインチキは嫌いといいながらインチキをする。完全無欠のヒーロー像とはほど遠い。その稚気愛すべきといったところ。本質的に「強きをくじき、弱きを助ける」ヒーローでありながら、その容姿、振る舞いはアンチヒーロー。従来のヤクザ映画に当てはまらない新鮮味がある。◆それが最も表れている所はラストシーン。朝吉はバカ正直に芸者を島抜けにさせた因島に戻り、女親分の折檻を受ける。「わいが死んでも、わいのド根性は死なへんわい!」折檻に根を上げない根性を示すことで、借りを返そうとする。女親分もその心意気に惚れ、朝吉を許す。通常のヤクザ映画では、親分の子分らと大立ち回りを演じるところだ。画面から飛び出しそうな朝吉と弟分の貞暴れぶりが魅力。◆だが他の登場人物はステレオタイプで魅力が薄く、脚本もご都合主義。不幸な芸者はいつも小ざっぱりして不幸に見えない。朝吉と妻になる女との恋愛パートはお茶を濁した程度。見せ場である喧嘩も今一つ吹っ切れていない。◆唯一意外に思ったのは駆け落ちする人妻お千代。朝吉には人妻であることを黙っていて近づき、妊娠したと嘘をつき駆け落ちを迫る。駆け落ち先では温泉芸者になりきって客と情事を結ぶ。まさに毒婦だ。その女が中盤で再会すると一変、女を助け出すためと知りながら、協力を申し出て、結果的に資金と拳銃を提供する。朝吉に惚れているための行動だが、男を手玉にとる一種女神のような振る舞いが心憎い。この女性を主人公にして映画ができると思う。ここで得た資金が終盤につながらないのは残念。拳銃は役に立つが、敵より強い武器を持つことになり、ヒーロー度を下げてしまう。◆結局は女に振り回されてばかりいる男の話。
[DVD(邦画)] 6点(2011-09-09 14:06:28)
51.  三匹の侍 《ネタバレ》 
今ではもう観かけることのめったにない泥くさい時代劇の佳作。なんといっても浪人のキャラの個性が際立っているのが魅力。ヒューマニズム溢れる浪人、田舎者丸出しの槍の名人、ニヒリズムの剣客。なかなか揃わない三人が揃ってからの勇躍ぶりは期待を裏切らない。◆随所に映像美が光るのも魅力。百姓が倒れた後の花のアップ。裏切りの浪人が倒れた後の簪のアップ。障子の影で見せる闘争シーン。監督の美学が炸裂。◆プロットは単純だが、三人の侍に女性を絡ませて人間ドラマを深めている。浪人との触れ合いによって成長する代官の娘、夫殺しの浪人と逃避行を試みる百姓の未亡人、剣客と恋に落ちる女郎屋の女将。残念なのは女性の悲劇が映画の主題と必ずしも一致しないということ。代官の娘は百姓より侍の方に向いているし、未亡人は裏切って村を捨てようとするし、女将は百姓の遊女を打擲する。哀れさは出ているが、主題と一致しない。少なくとも剣客が恋仲になるのは女将ではなく、自害する百姓の遊女すればよかった。そうすれば剣客が百姓に味方する理由も明確になる。◆主題は百姓が藩主の籠に強訴を試みるも失敗するというもの。首謀の三人が殺されると誰も強訴しないのだ。誰も命がほしい。虚しさだけが残るラストだが、百姓の難儀ぶりは最低限にしか描かれていないので、心に残るものが少ない。尺を長くして、罪のない代官の娘を拉致した罪に見合うだけのもの、百姓の生活苦や犠牲などをもっと描くべきだったろう。侍に較べて百姓に魅力がない。三人の侍をいかに恰好よく描き、三人の女性をいかに悲劇的に描くかに腐心して、百姓の方にまで神経が行き渡らなかった印象がある。◆クライマックスだが、浪人達の相手は悪代官ではなく、藩の役人になっている。敵役が入れ替わってしまったのでは気が削がれる。藩の役人は悪代官の元締めであることを強調すべきだったろう。ラスボスがあっけなくやられるもの残念な点だ。剣の名人の設定にして、もっと三人を危機に陥らせるべきだろう。◆他に疑問点もある。いくらなんでも編み笠の簪には気づくだろうとか、代官はどうして剣客に刺客を放ったのかとか。◆いろいろと不満を述べたが、百姓が浅くしか描けていないことに目を瞑れば、まったく無駄のない見事な剣術活劇になっていることを強調したい。隠れた名作ともいえるべき、おすすめ作品である。
[DVD(邦画)] 8点(2011-08-31 09:02:11)(良:1票)
52.  霧の旗(1965) 《ネタバレ》 
兄が殺人犯として逮捕された女が、兄の無実を信じて東京の有名弁護士に弁護を依頼する。時間的に余裕もなく、依頼人にお金が無いと知った弁護士は依頼を断る。数年後兄は拘置所で病死。それを知った弁護士は好奇心から事件の資料を取り寄せ、調査する。結果犯人は左利きであることを発見、兄が無罪であったかも知れないと思う。故郷にいられなくなった女は東京でホステスとなる。弁護士と再会するが、気まずい空気が流れる。 偶々事情を知っている新聞記者は女に同情するが、女は冷たい態度を貫く。 弁護士の愛人に関係する男が殺される。事件現場に女と愛人が居合わせる。女は愛人の手袋を置き、犯人の遺留品を持ち去り、現場には居なかったと嘘の証言をする。愛人が容疑者として逮捕される。弁護士は女に真実を話すように頼み、代わりに兄の無実の証明をすると申し出る。女は承知したと言い、部屋に案内し、巧みに酒を飲ませ、強引に関係をせまる。そして強姦されたと検察に手紙を送り、弁護士生命を絶つ。 ◆復讐劇だが、女が事件現場に居合わせたのは偶然。女は偶然を利用したに過ぎない。企図したものではないので、復習劇としてはインパクトが弱い。女が無実の罪で死んだ兄の名誉を晴らすことに心を砕かないのは何故だろう。あれだけの兄思いだったのに、不自然さが残る。 ◆兄を殺した犯人も第二の殺人事件の犯人も誰かはわからず終了。愛人は無実の罪をきせられたまま。すっきりしないオチにいらだちも最高潮だ。女が弁護士にそれほどの復讐心を抱く理由があるだろうか?そもそも完全な逆恨みではないか。弁護士は依頼を受けなかっただけで、悪いことは何もしていない。そんな異常な女を扱っても観客からは同情は得られない。「女って怖い」ぐらいの感想しか得られないだろう。誰がみても復讐を抱くだけの理由があるようにしないと物語が成立しない。そして犯人が元投手であるとはっきりわかるように示せば、すっきりしただろう。 ◆他にも疑問点がある。兄が学校のお金を落としたのに誰にも相談しなかったこと、女が弁護士にあらかじめ電話や手紙なしに訪問すること、女が味方のはずの記者に冷たい態度をとること、愛人が単に怪しいというだけの理由で逮捕されることなど。穴だらけの脚本である。日常に待ち受ける陥穽を描いた原作が泣いている。題名の「霧の旗」の旗の意味も不明。霧だから桐子?
[DVD(邦画)] 5点(2011-08-29 18:32:29)
53.  ゼロの焦点(1961) 《ネタバレ》 
娼婦という忌まわしい過去をもつ女が、不用意な一言により正体がばれ、殺人犯となる。新婚の妻が、夫の過去を調べてゆく中で、連続殺人が起り、犯人の過去が明らかになるプロットは魅力的。回想場面が頻繁に挿入されて見づらい。娼婦時代の哀切さが伝わってこない。 【妻の推理】 妻は、夫が巡査であったことと義兄と旅館で会っていたパンパン風の女の連想から、英語の上手な丸越会社の受付係久子を訪ねる。二人一目会っただけで、会話もしておらず、推理が飛躍している。 【成りすまし】 鵜原はどうして曽根に成りすましたのか?久子との恋の成り染めが、立川での巡査時代に知り合った元娼婦との北陸での再会だとすると、久子も鵜原を知っていた筈。譲って鵜原だけが相手を知っていたとして、どうして偽名を名乗る必要があるのか?相手が元娼婦だからといってそこまで用意周到になるだろうか。のみならず鵜原は、丸越会社社長夫人佐和子の計らいで煉瓦会社の架空社員の身分にまでなっていた。一介の営業マンが重要取引先の社長夫婦にそんなことを頼めるだろうか?頼めたとして、社長の関与なしに佐和子の一存だけでそのよう計らいが可能だろうか?架空社員といっても、死後に退職手当も払われていることから、給与も支払われていた。加えて、鵜原が実際に勤めていた会社は鵜原の住所を1年半に渡って知らなかったという。いくら時代が古いからといってでたらめすぎる。 【宗太郎殺し】 鵜原の兄宗太郎は初対面の久子(実は佐和子)と旅館で会う。宗太郎が鵜原から佐和子のことを聞いていたのなら、もっと早くに佐和子に電話連絡をする筈。宗太郎は久子の事を名前程度しか知らなかった。佐和子は何も知らないで押し通せば良いのに。又佐和子はどうして毒入りウイスキーを用意していたのか?宗太郎が誰にも知られずに内緒で久子と会うことをどうして知ったのか? 【その他疑問点】 ◆鵜原はどうして2葉の写真を所持していたのか?久子の家はともかく、佐和子の家はどうして?佐和子の正体は死ぬ直前まで知らなかった筈なのに。 ◆殺人動機は、佐和子が自分の幸福な暮らしを守ろうとした事だが、あの社長じいさんとの暮らしが幸せとは思えない。うらやましいどころか、かわいそうに思える。 ◆青酸カリの出所は? ◆ラストの謎解きパートが間延びし、佐和子の死ぬ場面が無い。
[DVD(邦画)] 6点(2011-07-29 23:17:43)
54.  刑事コロンボ/殺人処方箋<TVM> 《ネタバレ》 
犯人に高い知性が感じられない。いつもおどおど、いらいら。こんな犯人なら捜査はラクだ。脚本も穴が多い。 ・犯人は奥さんが死んだのを確認しない。初歩の初歩でしょうよ。それに背後から絞殺というのも解せない。 ・遺体は翌日メイドが発見したはず。重要参考人なのに全く登場しない。 ・愛人と打ち合わせをしてあるにも関わらず、前日のパーティの夜に愛人の家に密会するのは合点がいかない。電話の記録を調べられれば愛人関係がばればれ。 ・犯人は奥さんにいきなり翌日の海外旅行を持ち出すが、普通は簡単に承諾するとは思えない。もっと計画的にしなさい。 ・妻が自宅で殺されたとしたら、先ずは夫が疑われる。離婚話が出ていたのならなおさら。通り魔の仕業と思われる犯行場所を選びなさい。 ・想定の犯人の侵入口はどこから?高層マンションだよね。 ・殺人未遂事件なのに、殺人課の刑事が調べてる。 ・コロンボは犯人が旅行から家に帰ったときに無言だったのが不審と主張するが、不審とは思えない。それをいうなら一度も電話してないことを指摘すべきだろう。喧嘩していても、いつ帰るかぐらいは電話する。 ・飛行機の喧嘩によるアリバイ作りだけど、愛人が若すぎてバレバレでしょ。スチュワーデスに何歳くらいでしたかと聞けばすぐわかる。それにパスポートの写真と会わないはず。監視カメラもあると思うけど。それに奥さんは友人に旅行をとても楽しみにしていると話しているので、喧嘩別れは整合がとれない。 ・宝石や銀の燭台を大量に持ち出しているけど、入国検査でひっかかるのでは?宝石は捨てずに燭台は売ればよかった。別のものを盗品申告すればバレないのだから。 ・愛人は大部屋女優なのに高台の豪華な一軒家に住んでる。 ・俺が犯人だと名乗り出た男の取り調べに、真犯人が同席するのはどうしてもおかしい。 ・最後の告白だけど。犯人が「愛人のことを愛していた」と言ったらどうなった?コロンボがそこまで読んでたのかな。それに警察と愛人が死んだ芝居をするなんて、違法捜査でしょ。それに犯人が現地にいかなければどうしたの?ワナとしてはうまくない。警察がそんなことしちゃだめでしょ。推理で勝負すべき。 
[DVD(吹替)] 6点(2011-04-16 13:20:59)
55.  冷血(1967) 《ネタバレ》 
1967年の米映画でモロクロは珍しい。監督にはこだわりがあるのだろう。1954年の「雨の朝巴里に死す」 ではカラーだ。深い陰影の演出が印象的。窓を打つ雨の反射を顔に受けながら、最後の告白をする場面は特に印象的。煽情的にならずに抑えた演出は好ましい。◆刑務所仲間の二人ディックとペリーが合流して被害者の家に押し入るまでを描き、次は犯行後の場面となる。殺害の場面を謎とし、クライマックに持ってくるドラマティックな構成だ。観客は悲惨な結末を知っているので、背筋が氷るような恐怖を感じるという仕掛け。意地悪で切れやすいディックと親切で常識的なペリーならディックが発砲したのだろうと思わせておいて、実際はペリーが実行犯だったという意外さもある。徹底したリアリズムで絞首刑の瞬間までも描く骨太の映画。原作がノンフィクションだ。◆二人は囚人仲間のガセネタにより犯行に至った。本人はほんの冗談で悪気は無かったのだろうが、バタフライエフェクトで、最悪の結果がもたらされた。反省しているのだろうか、それとも懸賞金をもらってほくそ笑んでいるのだろうか。運命のはかさなを感じる。◆平和に暮らしていた被害者四人の様子、二人の殺人犯の生い立ちが丁寧に描かれている。観客は十分に共感できるだろう。二人は共に悲惨な境遇で育っている。特にペリーは酷い。母にも父にも見放され、養護施設で育ち、軍隊に入り、戦争により負傷している。死ぬ直前でも父親を憎んでいるという。愛しながらだ。彼らが犯罪に染まってもおかしくない。環境が犯罪を作るのは真実だろう。だからといって彼らを擁護は出来ない。自分の撒いた種は自分で刈らなければならない。◆テーマの一つに動機無き殺人がある。彼らは最初から殺人をする気だったのか?そうではあるまい。覆面用の黒のストッキングを探していたころからも分る。被害者の父親の言動がペリーの父親がペリーを殺そうとするフラッシュバックを生んだのが悲劇につながった。極度の緊張感と疲労で彼の精神が悲鳴を上げてしまったのだ。ほんのちょっとしたキッカケが悲劇を生む恐ろしさ。ガセネタが本当だったり、黒のストッキングが買えていれば違う展開になっていた。◆救いようのない冷血な犯罪。心根は優しい二人、死刑を下すのにも冷血にならなければならない。二重の意味で悲劇だ。命の大切さを透徹な精神で描ききった稀有な作品と思う。
[DVD(字幕)] 9点(2011-02-12 11:58:41)
56.  絞殺魔 《ネタバレ》 
【事実】1931年ボストンでデサルヴォ誕生。両親堕落、アル中、暴力、娼婦を連れてくるような悲惨な家庭環境。17歳で軍隊入り。5年間ドイツに赴任。結婚して娘(障害者)誕生。毎日5,6回性交する性欲過多。1956年9歳女子への性犯罪で軍隊除隊。1960年モデルのスカウトマンと偽り、部屋に侵入し、サイズ測量する犯罪300件。不法侵入罪で逮捕、強制猥褻としては裁かれず。11ケ月服役。妻から「あなたが真人間になるまで」と性交渉停止宣言。1962年6月から1964年1月までボストン絞殺魔事件発生。被害者11~13人、19歳~85歳。基本的に紐状のもので絞殺し蝶結び、強姦、性器露出。1964年11月別件の連続強姦事件で逮捕。被害者300人。1965年精神病院。その言動によりデサルヴォが犯人ではないかと怪しんだ同室の男が弁護士に通報。弁護士にあっさり自白。犯人しか知らない事実を知っていた。司法取引。1967年絞殺魔としては裁かれず、強姦罪で終身刑。1968年映画製作。1973年刑務所の独房で刺殺される。犯人不明。40年後最後の事件の精子DNA鑑定で無罪が確認。次の理由で犯人の可能性大。①性犯罪を繰り返す。②全事件でアリバイ無し。③犯人しか知らない事実の自白。④逮捕後事件が止む。【感想】不思議な事件だ。被害者の年齢の幅が極端に広く黒人も犠牲者。女性そのものへの憎悪があるようだ。警察のプロファイルも「母親を憎悪している若い白人男性」だった。最初の事件では部屋が物色されている。映画では二重人格説を採用。オランダの「超能力探偵」が事件に挑んだのも事実。◆物証が無いと言うが、いくつかある。先ず歯型を較べれば簡単に判定がつく。犯人の遺留品と思われる定規、箒、瓶、ドアノブなどの指紋、現場のススと靴のススの照合。◆次々起る殺人と性犯罪者を片っ端から逮捕する様子を描く前半部分。実験的なマルチ画面を多様しているが効果は薄い。画面に集中できないのだ。それでも次々起こる連続殺人には誰でも自ずと興味が湧く。犯人が判明してからは少々退屈。彼の過去に触れられていないのが不満。動機が提示されない。「人格が変わると殺人者」では誰も納得しない。その理由を示して欲しい。ジギル博士とハイド氏じゃないのだから。彼が裁かれた強姦にも触れていないのはどうしたことか。迫真の演技は良いが、密室でのカメラアングルが平凡で画面から緊迫感が伝わらない。
[DVD(字幕)] 6点(2011-02-12 00:37:41)
57.  大巨獣ガッパ 《ネタバレ》 
ガッパの子は何を食べて毎日50㎝も成長するのか。何も食べないと言っていたけど。気になるのは、あの檻(研究所の施設)からどうやって出したのかということ。巨大化した子ガッパが通れる出口は無いはずである。壁を壊して出せても運ぶのはもっと大変。子ガッパは暴れず、おとなしく従ったようだね。ヘリ2機で子ガッパを輸送するとは自衛隊も捨てたものじゃない。体が帯電しているのによく作業が出来たと思う。それと鳥に帰巣本能はあっても、自分の所在地を遠隔地の仲間に知らせる能力はないだろうと思うけど。羽はあるけど、ほとんど羽ばたかないで飛行するのは凄い。熱線も吐くし、常識を超えた生物だ。 ◆母ガッパは茹ダコを加えていたが、子供にやるためだとしても、まだ子供が見つかってもいないのに、気が早すぎるではないか。茹でるのには熱線を利用したのだろうが、戦車をも簡単に溶かしてしまうほどの超高温である。まともに当てたら焦げてしまう。タコに直接当てず、周囲の水を沸騰させたのだな。芸が細かいではないか。意外と繊細なところがあるね。目は怖いけど。飛べるのに熱海に上陸したときは海からだった。きっと大ダコを採っていたんだね。 ◆子ガッパのテレパシーを受信して日本にやって来たのに、子ガッパの居場所が分らないのはどうしたことか。羽田に連れて行っても子ガッパの声を拡張機で流させなければ気づかなかった。良くわからないね。音には敏感らしいけど、石油コンビナートを踏みつけて爆発させならが移動しても音や火は全然気にしてないね。 ◆オベリスク島の住民はあの結末で良かったのだろうか。3匹のガッパを島で引き取ることになるのだが。しかも火山活動は大層活発である。地震はガッパのせいではなく、火山性地震だろう。危険すぎる。その割に火山灰などはひとつも見当たらないのは不思議だが。それに米潜水艦が助けた島民は少年だけ?他の人どうなったの。 ◆「ここは一度見たことがある。プレイメイトランドの模型にそっくりだ」という発言があったけど、単なる偶然?何故そっくりなの。 ◆プレイメイト社だけど、将来はないな。国民が真実を知ったら非難の嵐でしょう。税関を無視して未知の生物を持ち込んでいるし。記事を発表したとき問題にならなかったのが不思議。でも社長は改めて親子の愛を知ったので、得るものがあった?
[地上波(邦画)] 3点(2011-02-10 06:44:20)
58.  鳥(1963) 《ネタバレ》 
映像的に随所に見せ場はあるが、人類の終焉を予想させる内容を描いた作品にしては迫力不足。古い作品でオプチカル合成のチープさは言い訳が立つだろうが、脚本のドラマパートのチープさは言い訳が立たないだろう。◆高飛車でいたずら好きな上流階級の女と弁護士の奇妙な出会いは面白い。が、そこから恋愛に発展していくわけでもない。それなのに女が男の家に行きつくまでの描写が長いが、何を言いたいのか?鳥を部屋に置いてくるなんていたずら返しにしては度が過ぎていないか?「鳥」だからペットショップで出会うというのも芸が無いだろう。「ラヴバード」も物語に絡らない。男の母親が不気味で女を嫌っているが何故か?これがあるから、その後母が自分のことを語る場面があるが、共感できない。平凡で幸福そうな家族が動物に襲われてこそ万人が共感する。高飛車なヒロインを応援する人も少ないだろう。女教師と弁護士の過去の恋愛も活かされていない。準主役の女教師が死ぬ場面が省略されている。妹の少女は泣き叫んで逃げるだけの役回り。登場人物がぜんぜん噛み合わないのだ。人間が描けて無いので、苦悩や苦痛が伝わらない。皆が協力して知恵を出し合って危機から脱出するからこそ盛り上がるのだが、逃げ回るだけの登場人物に失望。◆肝心なパニックパートにしても、小さな町を鳥が襲っただけ。小規模な鳥の反乱で終わっている。広がりが無いのだ。警察や軍隊との闘いくらいは見せて欲しかった。大人しい鳥がただ止まっているだけの凡庸なエンディングにはただ、ただ失望。せめて防具つけて松明で鳥を追い払いながら車に移動するくらいの演出がほしい。人類滅亡かと思わせるほどの衝撃的なエンディング希望。「終末だ、世界の終わりだ」とわめく人物が登場するが、滑稽としか見えない。鳥が全人類を敵として攻撃し始めたということを分らせるカットが必要だろう。子供を襲うシーンが多いが、子供は助かるのは分っているので恐怖は感じない。鳥がいる中を避難させるのも不自然。女が二階で鳥に襲われるシーンがあるが、ドアを閉めればいいだけじゃないか。◆確かにサスペンス撮影はうまい。でもアクションが弱い。多カットで見せる細やかな演出も不発ぎみ。人工的すぎるのだ。ただ暖炉から急襲する鳥大群と、飛行している鳥目線で見せる炎上する町の俯瞰カットは素晴らしかった。 
[DVD(字幕)] 6点(2011-01-21 05:04:49)
59.  コレクター(1965) 《ネタバレ》 
男は社会的不適格者でも病的変質者でもない。元銀行員であり、通常の社会生活は営める。両親がおらず、貧乏で育ち、孤独な青年。人見知りが強く、対人関係が苦手で、人から嘲笑される人生をおくってきた。美人画学生Mに片思いしているが、声をかけることもできず、遠くから眺めて、崇拝しているだけだ。趣味は蝶の採集。そんな男にクジが当り、金持ちになる。地下室のある家を購入。蝶の採集をまねてMを捕獲し、自分への愛が育つのを待つことにする。◆男が欲しかったのは性的関係ではなく、愛だ。あるいは性的不能者なのかも知れないが。いずれにせよ、人間を虫のように扱って監禁し、人間らしく愛してくれというのは無茶な要求だ。愛されずに育ったせいで、愛というものを理解できず、人を真に愛することが出来ない。「ライ麦畑でつかまえて」を読んでも人の心の痛みが分らない。ピカソの画集を見ても、その創造性を理解できない。人に愛されたかったら、愛される人間にならなければならない。男はMを愛しているといってもそれは上辺のことだけに過ぎない。◆好きな女を監禁して、自分の思うようにしたいと妄想するのは珍しくない。この作品では、性的関係は強制せず、「自然に愛が芽生えてくるまで待つ」というところが新しい。愛欲よりも愛情に飢えている。妄想の視点が違うのだ。どのような成育歴により、このような歪んだ精神になったのか、また男が昔からどんなにMを崇拝していたかなどが十分に描かれていないので、単なる変質者に観られてしまう恐れがある。男は常に無表情で不気味、その内面でどれほど愛に飢えているのかを描いていないのが最大の欠点だろう。男の苦悩、心の叫びが見えてこない。不条理、理解不能を前提としながらも、いつしか男に同情してしまうほど人間が描けていれば成功しただろう。男を罰する終わり方にすれば少しは共感できた。◆虚弱な男なので、隙を見て鈍器のようなもので後頭部を殴って逃げ出せば良いと思う。お風呂に入ったとき熱湯をぶっかけるとか、暖炉の焚火を利用して放火するのも良い作戦。廊下を突き落すのもグッド。こういう男は懲らしめて矯正しないとタメ。もっと知的に攻略したいのなら、散歩したいとか、ドライブしたいとか、仮病を使うとかして外に出る機会をつくること。相手は気弱で、すでにかなり譲歩しているので強気に出れば可能。自殺未遂という手もある。
[DVD(字幕)] 7点(2011-01-18 23:03:39)
60.  天国と地獄 《ネタバレ》 
犯人は貧民街の三畳間アパートから丘の上の豪邸を見上げる生活を続ける中で、豪邸の主である権藤に対する歪んだ憎しみを熟成させ、遂に憎悪が生き甲斐にもなった。犯人が憎んだのは権藤という個人ではなく、貧困という不幸な境遇と社会の不平等、不条理。◆犯人は不幸な境遇に負けたわけでは無い。それどころかインターンで、成功の一歩手前、もうすぐ貧困から脱却できる状況。それにも拘らず犯行を決行したのは、世間に対する挑戦状。天国にいる者を地獄につき落す快楽もあるが、誰よりも知力に長け能力がある自分に対して冷たい仕打ちしかしてこなかった世間に対する挑発行為であり、途方もない自己実現の方法。◆人の命を救うべき医者が、人を殺すという矛盾。絶対善と絶対悪の逆転。天国から地獄への転落。犯人が望んだものは、上辺だけのきれいごとを並べ立てる世間に対して、人生の不条理をいやという程見せつけること。◆だが所詮犯人は世間知らず。犯人が天国の住人と思っていた権藤の生活も決して甘いものではない。彼は見習い職人から身を起こした苦労人であり、成功した今でも会社の権力闘争に巻き込まれ、安住した生活を送れていない。憎しみの対極として想定した相手は、実は似た者同士だった。◆計画は用意周到でトリッキーだが、甘さも目立つ。ジャンキーは殺すが子供は殺さない。子供に顔と車を見られ、窓からの景色や道も覚えられている。ジャンキーの死亡を確認せず、金も回収しない。車は目立つ場所に放置。電話で声色を使わない。◆犯人は権藤に何を伝えたかったか。死ぬのは怖くないと強弁。震えは恐怖ではなく、拘禁症状。憐みの気持ちで見られたくない。「私が死刑になって嬉しいでしょう」と挑発。みじめな死にざまであったと思われたくない。最後の強がりだが、心の弱さが露呈して絶叫。敗北を認めた瞬間である。彼の主張は一人よがりに過ぎなかった。死の残酷さを強調して終了。余韻が残る。【気になった点】①新聞社が警察に要請されて犯行のお札使用という偽情報を発表のはあり得ない。報道の両親に反する。②犯人に犯行を再現させるために泳がせる事はあり得ない。そのせいで第二の殺人が行われた。警察の大失態だ。警察は犯人の刑期が軽いから死刑にさせる小細工などはしない。③親父(社長)が最後まで登場しない。④会社での様子が描かれてないので、権藤の凋落ぶりが伝わらない。⑤尾行や麻薬街のシーンが無駄に長い。
[DVD(邦画)] 9点(2011-01-10 05:32:03)(良:2票)
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