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【製作年 : 1970年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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41.  シーラ号の謎 《ネタバレ》 
映画プロデューサーのクリントンは妻を轢き殺した犯人を見つけるために容疑者6人を集め、ゲームを始めた。集まったのは全員が落ち目の映画人で、ゲームの賞品の映画への参加に飛びついた。6人は、それぞれ「前科者」「ホモ」「密告者」「万引き」などと書かれたカードを受け取り、毎日停泊する港に隠された証拠を探し、誰がどのカードを持っているか当てるというもの。ゲームが最後まで進めば犯人が自ずと知れると思えた。だが二日目にしてクリントンが殺害される。犯人を推理する中で脚本家トムの妻リーがシーラを轢き逃げし、逆上してクリントンも殺したと告白。その後自殺を遂げる。事件が解決したかに見えたが、真相は別にあった。メインの犯罪だけでなく、6人の秘密もあり、クリントンのゲームの真意の真相もあり、飽きさせない。アクシデンによる犯行の変更、SHIELAの文字遊び、証拠となる煙草や凶器のアイスピック等にも無理が無い。複数の要素に逆転があり、非常に良く練られた脚本と思う。 ◆最後の謎解きがみんなの前で行わないのが惜しい。みんなが真相に驚くところにカタルシスがあるのだ。船室のインターコムで二人の会話が聞こえていたというオチは見事。 ◆結局真犯人であるトムを警察に突き出すのではなく、リーから受け継ぐ予定の遺産500万ドルで映画を製作するという”ハリウッド的解決”は面白い。真相を暴いたフィリップもクリントンを殺そうと潜水中を狙って船のエンジンをかけたのだから、説得力がある。全員が落ち目の映画人という伏線が効いている。トムは元恋人のアリスと結ばれることを願っていたが、アリスは本気ではなく不倫を楽しみたかっただけだった。クリントンがみんなを集めた真意は、妻の真犯人をつかまえることではなく、6人の秘密を暴いていじめるゲームだった。これもハリウッド的な自虐だろう。 ◆腑に落ちない点もある。休暇で地中海クルージングは分るが、大の大人が六日もかけたゲーム遊びに熱中するかということ。しかも大層なお金と手間暇がかかっている。お金持ちのやることは分らないね。それとリーがクリントンを殺した(ように見えた)シーン。逆上したとしても、あの場面である必然はなかった。フィリップが船室を点滅させてトムをおびき寄せるのはやや不自然。
[DVD(字幕)] 8点(2011-02-12 07:44:39)
42.  ジャガーノート 《ネタバレ》 
爆弾処理のサスペンスもの、同時に進む犯人探しの捜査もあざやか。構成は合格だ。だが残念に思えるところが多い。第一に伏線が活かされていない。乗船に脱落した海軍のメンバーに変わって船員が参加するが、その後活躍しない。船員の嘘を見破った町長も、結局何の活躍もしない。浮気したことあるのと奥さんに問われるが、あの奥さんじゃ誰だって浮気したくなると思うよ。捜査員の一人の家族が船に乗っている。彼の苦悩が思いやられるが、さほどの心情も表わさず普通に心配するだけ。これらはもったいないですね。彼らをヒーローに仕立ててこそ映画は面白くなるというもの。第二に演出の問題。子供が勝手に厨房に忍び込み、子供を探しに来た給仕と共に爆発に巻き込まれる。給仕は死亡するが、子供はそれを嘆くどころか、父親にそのことを誇るような電話をする。母親も給仕に対して何とも感じていないようだ。悲劇を盛り上げる気がないのか。船長とその恋人の曖昧な恋は最後まで煮え切らないまま。美人でもない中年の恋人に辟易。爆弾が仕掛けられてあり、生きるか死ぬか、絶体絶命のピンチである。それなのに仮装パーティなど開くか?皆思いっきりつまらない顔をしているが、それなら参加しなければいい。このあたりの不用意な演出で作品に散漫な印象になっている。追い詰められた乗客の演出が必要。爆弾は二回爆発するが、被害かよくわからない。爆発で穴の開いた船を見せていないから。船長も妙に落ち着いている。爆弾のある部屋を閉鎖しておけば、全部爆発しても船は沈まないと思えてくる。爆発があっても乗客の態度に変化はない。これではだめ。徐々に盛り上げなければ。監督はパニック映画の基本がわかっていない。最後はキャラ設定。犯行手口と犯人のキャラが合致しない。刑事に船のパンフを見つけられただけで鼻血を出し、すぐに自白。動機は自分を重用しなかった政府への復讐とお金。金の回収に失敗すると、取り決めは全てキャンセルと丁寧に電話。あの方法では失敗するだろう。平凡過ぎて、複雑なトラップを仕掛けた犯人とは思えない。「スピード」の爆弾犯のような毒が欲しい。一方主人公の破天荒な言動や行動は個性的で好ましい。犯人は上司だったわけだが、両者の関係をもっと踏み込んで欲しかった。作品に重みが出る。七つのドラム缶をどうやって運んだのか?船があれだけ揺れて爆発しないのは何故?
[DVD(字幕)] 7点(2011-02-11 10:42:39)(良:1票)
43.  ナイル殺人事件(1978) 《ネタバレ》 
良かったのは、エジプト観光気分を満喫できた点。気になったのは、エジプト人に対するリスペクトが無い点。エジプトでは上映不可だろう。◆終始一貫のんびりムード。遊覧船の乗客ほぼ全員に犯行動機があるというのに。殺人が起きて誰も警戒しない、鍵もかけないし、部屋に閉じこもらない。その割に死体がゴロゴロ。アンバランスだね。◆捜査は至って楽。なにせ犯人が、わずか数名の乗客の中にいるのだから。とりあえず容疑者の手を観察し、匂いを嗅いで、硝煙反応を確認すれば良いね。◆この手の作品の良し悪しは、犯行計画が見事かどうか。サイモンは妻を殺したいのなら、事故にみせかけてピラミッドから突き落すとか、コブラ使うとか、いくらでも機会はあった。わざわざ元恋人ジャッキーと手の込んだ芝居をする必然性が無い。彼女がサイモンをフェイクで撃ったとき、目撃者一人の他に駆け付けたのが一人だけだったから成功したが、他の人も駆け付ければ計画は破綻。それが医者だったら負傷して無い事がばれるし、妻ルイーズが来ればどうするつもりだったのか。妻は寝ていて射殺されたけど、ついさっきまでカードしてたよね。起きて他へ行っていたらどうする?そもそも撃った弾が足元の床にめり込んでいるんだから、ばればれ。その場はごまかせても現場検証で確実に発見される。空砲を使いなさい!そして妻射殺の際の爆音に誰も気づかないのはどうして?このとき誰かが駆け付ければ計画は破綻。目撃されるだろうし、少なくともサイモンは自傷する機会を失う。◆拳銃だが、ジャッキーが床に捨てたのに、みんなが現場に戻って来たら無くなっていた。その拳銃が殺人に使用されたわけだが、現場に残っていたのはサイモンだけなのだから、彼が知らないはずが無い。第三者が持ち出せた可能性はあるが、誰も拳銃のことに言及しないのが不思議。凶器が床に落ちたのに、拾おうともしない。◆目撃した小間使いは犯人にお金を要求して刺殺。でも紙幣の破片が指に残ることは無い。死後硬直して無いのだから。◆目撃した女流小説家は2メートルくらいの距離で射殺されたんだから、逃げる姿くらいは目撃できたでしょ。◆即死なのにダイイング・メッセージ。肩掛けにハンカチと拳銃を包んで捨てればいいのに、わざわざ灰皿を重しに使用。真珠を盗んでも返したらおとがめ無し。母親を殺された翌日に婚約。睡眠薬を飲まされ、毒蛇を部屋に放たれる愚鈍な名探偵。
[DVD(字幕)] 6点(2011-01-08 17:14:05)(良:3票)
44.  男はつらいよ 純情篇 《ネタバレ》 
【制作メモ】本シリーズを終了させる予定で第5作が制作されたが、評価が高かったので本作が制作された。この時点で観客動員数は75万人以下と低く、200万人以上のヒットを記録するようになるのは第11作目以降。【寅次郎の行動パターン】①おいちゃん、おばちゃんとは少し気まずいく、会話がぎくしゃく。②タコ社長とはケンカ。③印刷会社社員を労働者諸君といって見下す。④弟分の源公を小バカにする。⑤御前様には低姿勢で挨拶。⑥博には兄貴風をふかす。⑦さくらへの兄妹愛が強い。妹のために立派な兄貴なりたいと願っている。⑧美人にすぐ惚れる。惚れると堅気人風に人格が変わる。告白まで進展しない。⑨義理に厚く、人情にもろい。【感想】本作はシリーズの持つ魅力が満載。テキ屋稼業の渡世人である寅次郎の孤独と望郷の念はひしひしと伝わる。これと対比して柴又の人情味あふれる暮らしぶりが描かれる。隣人を気軽に夕食誘うこと近所つきあいが普通に行われる世界。寅次郎が帰りたくなるのも頷ける。◆・寅帰宅で、ドタバタが始まるのだが、博の独立問題の挿話が出色。無責任と勘違いで話は進展し、大騒動になって、最後は大団円。ファミリー向け、コメディとして成功している。◆「わかっちゃいるけど止められない」のが寅次郎。真人間になろうという気がないではないが、気ままな渡世稼業が身にしみている。フラれるのとわかっていても、ついつい美人に惚れる。日本一の「空気が読めない人間」。口がすべってつい余計なことを言う。売られたケンカは買う習い。頼まれごとは引き受ける。悪気がないだけに始末が悪い。そんな人間味あふれる寅さんには誰だって感情移入してしまうだろう。◆一方マドンナはお飾りで、あくまであこがれの存在でしかない。心の内面が深刻に描かれたり、成長したりはしない。チャップリンの映画ほど感動しないのはこのため。◆不幸な家出嫁の漁村での場面は味わい深かったが、展開があっさりしすぎている。働かず、嫁の給料ぼったくりのダメ亭主が、急にまじめに働きだしたりしない。ご都合主義だが、シリーズのファンにとてはお約束。◆お約束といえば、さくらとの別れのシーン。「故郷ってのはなあ」で、ドアが閉まって聞こえない。良い演出です。全て言っちゃあおしまいよ。
[ビデオ(邦画)] 7点(2010-12-05 13:51:18)
45.  メカゴジラの逆襲 《ネタバレ》 
◆真船桂の父は優秀な生物学者だったが、恐竜発見とそれを自由に操る研究で世間から抹殺される。桂は世間から隔絶して父と共に研究を続けていたが、やがて母親が失意の内に死亡、自身も研究中の事故で死亡した。しかし宇宙人の手でサイボーグとして再生。研究は宇宙人の協力のもとに成功。恐竜は命令通り、調査船を撃沈させる。◆そこへ海洋学者の青年が父の研究を知りたいと訪ねてくる。父は死んだと突き放すが、憎からぬ感情を抱く。青年が恐竜の探査に向かうと知った桂は止めるように懇談。宇宙人の命令で調査船を恐竜で襲うが、偶然調査船は助かる。父は世間に対する憎悪と復讐心に執りつかれているが、桂には人間らしい心が宿っていた。恐竜対策本部をスパイする為に青年に近づく桂だったが、心は揺れ動く。◆国際警察との戦闘で二度目の死亡。宇宙人の手により再び甦るが、体内にメカゴジラの作動装置を埋め込まれる。宇宙人の意のままとなり、恐竜とメカゴジラを操り、町を破壊し、ゴジラを叩きのめす。基地に捕縛された青年が連れてこられても心を開かない。◆国際警察が基地を襲撃。父は流れ弾で死亡。彼女自身も被弾して負傷。青年が叫ぶ。「たとえサイボーグでも僕は君が好きだ」その言葉で人間の心を取り戻した桂は、作動装置をもつ自分が破壊されない限りメカゴジラは倒せないと告げ、青年に自分を破壊するように懇願。拒否する青年の腕に抱かれながら、銃で自らを撃つ。悲運の生涯を終えた。 【感想】主人公は桂だろう。ゴジラやメカゴジラより、チラノザウルスと桂の方が目立っていた。桂のサイボーグとしての葛藤と恋愛感情は十分に描かれているとはいえないが、印象深いものがある。マッドサイエンティストの父に育てられ共に研究、幼くして母親を亡くす、2度も死亡してサイボーグとして再生、宇宙人に人類を売り渡す、恐竜を操り青年の乗る調査船を襲う、町を破壊し、ゴジラと対決、まさに波乱万丈の人生だ。そして最後は青年と人類を守るために自害。子供向け怪獣映画にしては不釣り合いな重厚な悲劇性を内包する異色作品。【ツッコミ】チラノ弱そう。たかが超音波に弱い理由は何。尻尾で暴風は起きない、ゴジラはなぜやってくる。蹴飛ばされたゴジラが重力を無視して飛んでゆく。制御装置に火花が散りすぎ。桂の眼が光すぎ。ゴジラの磁力はどうなった。円盤あっさりやられすぎ。
[ビデオ(邦画)] 6点(2010-10-08 23:39:02)
46.  エアポート’80 《ネタバレ》 
◆違法に兵器輸出している兵器残業の機密が漏れる話。兵器会社社長のケビンはジャーナリストのマギーと恋愛関係にある。不正を暴こうとする社員Aは、何故かマギーの元へ暴露書類を持ってゆく。すぐに始末屋が現れ射殺、マギーも殺されそうになる。マギーはケビンに相談。飛行機に乗る直前マギーの元へ殺されたA妻が現れ、書類を渡す。◆どうして警察に渡さないのだろうか?夫の事件捜査で事情を聞かれている筈だが。マギーも警察に事情を話すべきだろう。◆ケビンはマギーをコンコルドごと葬ってしまおうと考える。無人戦闘機と戦闘機ファントムの攻撃を二度もかわしたコンコルド!この奇想天外の展開は、一応褒めておこう。ここしか見せどころが無いのだから。◆マギーは事の真相を糺そうとケビンに会う。ここで拉致するなり、殺すなりすればいいのに、何もしないケビン。先ほどの殺意はどこへやら。ぬるい展開だ。◆攻撃され緊急着陸したコンコルドにまた同じ乗客が乗る。普通は別便が出るが。悪い整備士が荷物室のドアが自動で開くように仕掛ける。何故か体中に報酬の札束を巻いて高飛びしようとする。札束が落ちて怪しまれると、逃げ出し、何故かコンコルドの離陸するところに飛び込む。意味不明だ!報酬は銀行に預けなさい。◆荷物室のドアが開いて、第2のパニック。雪のアルプスに緊急着陸。全員脱出した後「爆発するぞ」で爆発。ケビンは自殺。◆モスクワ五輪、選手の国境を越えた恋愛、機長の復縁、機長らの友情、手術予定者、心臓移植、サックス黒人、トイレおばさんなど、多材料をちりばめていたが、うまく料理できていない。◆特撮技術がお粗末だが、それは重要ではない。それ以前に脚本の基本が分っていないのだ。パニック映画には悲劇性が重要。途中で犠牲者が出るからこそ、緊張感も持続する。本作は暴露社員が殺されただけ。後は社会通念から逸脱したような無茶な展開で、パニックも生ぬるく、乗客に死者は出ない。観客の期待はおいてきぼりだ。◆「同じ飛行機が2度も」という展開は無理で、1回にまとめるべき。死者も次々に出て、最後は機長の英雄的行為や機知で奇跡的に着地成功⇒喜ぶ観客⇒悪会社の不正が暴露。こういう普通の展開でいいのだ。あとは群像劇の心理描写や特撮スペクタクルでいくらでもふくらませる。反面教師として利用できる”失敗した映画”だ。脱がないシルヴィアも期待はずれ。
[ビデオ(吹替)] 5点(2010-09-30 21:26:52)
47.  エデンの海(1976) 《ネタバレ》 
◆女学校に教師南条が赴任。生徒に大いにモテる。清水巴は問題児。「チャタレイ夫人の恋人」を読み、小指の包帯はレズの証とされていた。巴は最初南条に反抗していたが、「失禁」という秘密を共有したことで次第に魅かれてゆく。巴は父不在で、ファザコンだった。◆二人の間に噂が立つ。同級生はどっちが愛しているか、巴に蛙の又裂き勝負を挑む。女先生は出張の南条を東京の自宅に招く。巴は嫉妬して女先生の自宅を訪ねてくる。南条は巴に十字架を買って宥める。巴は学校をずる休み。南条が家庭訪問に立ち寄る途中で乗馬中の巴に遭遇。南条は何故か水着をお土産として買っていた。最初は「いらない」と言っていたが、水着と知ると大喜び。すぐに着替えて二人で乗馬。浜を駈け、町を駆け、学校に突入。大騒ぎする生徒たち。馬はやっと止まる。反省を促す南条に巴は怒り、さらに暴走。トラックに轢かれそうになり、海へ墜落。巴は腕を負傷。南条は輸血してやる。◆学校で大問題になるが、何とか穏便に済みそうになる。が、南条は人間として未熟なところがあったとして辞職を決意。生徒たちは、先生を詰問、辞めないで欲しいと懇願。「辞めるのは敗北です」又二人の間に恋愛感情があったかが問題になる。巴は言う。「私は先生に甘えてました。先生がほしかった。独り占めしたかった。でも生徒だということで甘えていた自分は嫌いです」南条は言う。「男としてお前が好きだったんだ」生徒は言う。「先生も清水さんも今とっても素敵です」◆島を去る南条。見送りに巴は来たが、バイクからは降りなかった。巴の男友達に南条は言う。「この町はいい。風景も人間もだ。」巴は泣いて走る。「嫌い、嫌いよ、想い出なんて大っきらい!」【感想】古めかしい青春映画。この映画には、訴えるものがない。痛々しいほど南条に魅力が無いので感情移入できない。南条は誰に対しても他人行儀で、正論ばかり吐き、人間味が感じられない。人間を描けなければ恋愛は描けない。何故学校を辞めるのか、それが世間に対する敗北ではないのか、巴を愛していたのか、「この町は良い」と言うがどこが良いのか、何故他の生徒は見送りに来ないのか?それらを説明することは難しい。原作を消化しきれていない証拠だ。結果として南条が巴に買い与えたもの。ヨットマークのパンティ、十字架のネックレス、白い水着。何だかなあ!山口百恵が馬で町を疾走するシーンだけが爽快。
[ビデオ(邦画)] 4点(2010-09-25 22:52:21)
48.  ゴジラ対メカゴジラ 《ネタバレ》 
◆アンギラスが叫ぶ。岩の中の何かが光って爆発炎上。沖縄アズミ王族の子孫の女ナミが幻を見る。それは怪獣が町を破壊する幻影。洞窟から発見された奇妙な金属。それは宇宙金属と判明した。洞穴から発見された古代遺跡とシーサーの置物。それには古代アズミ王族の予言が描かれていた。アズミ族を滅ぼそうとヤマトンチューがやってきたとき、二匹の怪獣が現れて人々を救う。本土では地震が頻発。巨大生物が移動しているとの憶測あり。置物を狙う謎の人物が登場してアクションシーン。そしてそれらを遠くから見守る謎の新聞記者(岸田森)。考古学博士二人と宇宙工学の権威がからむ。ヒロインも三人、ナミと考古学博士と宇宙工学博士の娘だ。そしていよいよゴジラ(実はメカゴジラ)登場。ここまで開始から18分。謎をふんだんに含み、テンポのよい展開で、掴みはOK。 ◆だがその後の展開がグダグダ。聞かれもしないのに計画を何もかもしゃべり過ぎる宇宙人には辟易。死んで正体を現す姿がゴリラそっくり!仮にもブラックホール第3惑星人だよね。キンギシーサーを眠りから覚ますナミの歌が民謡風ではなく、もろ昭和ムード歌謡。これはギャグにしか見えない。最大のツッコミどころ。大して活躍しないヒロインに失望。メカゴジラのルックスが合格点で、兵器も多彩、戦闘シーンは迫力あるのに惜しい。全体として脚本の中味は濃く、リメイクして使えそうな出来映えである。 【疑問点】 ①ナミの見た幻の怪獣はキングギドラだったのは何故?②アンギラスとゴジラは何故メカゴジラに闘いを挑むのか?③ゴジラの顔が妙にカワイイ。④キングシーサーが目覚めたときは陽が沈んだ後なのに、その後真昼間になっている。⑤まだ眠っているキングシーサーを倒すためにメカゴジラが飛来するが、何故か遠くで降りて、ゆっくり歩いてゆく。⑤怪獣が大暴れてしているのにマスコミも自衛隊も政府首脳も一切登場しない。⑦博士のパイプ兵器は電極の+と-を破壊する電磁波を作るものだが、それだけで何故基地とメカゴジラが爆発する?⑧沖縄の老人は、最初ゴジラ(実はメカゴジラ)が東京で暴れているときにヤマトンチューをやっつけろと応援していたのに、舞台が沖縄になった途端に手の平返し。⑨予言の空に浮かぶ黒い山、赤い月に何の意味があるのか? 蜃気楼は鏡面でないので、沈む太陽は昇らない。
[ビデオ(邦画)] 6点(2010-09-25 20:17:02)
49.  ラストコンサート 《ネタバレ》 
◆病院で偶然に出会う二人。女は待合室の男を医者に父として紹介。女は無意識に恋に落ちたのでしょう。あとは子犬のようにつきまとう。女は天涯孤独の身。母は死に、家族を捨てた父探しの旅の途中。会ったことのない父の面影を男に見る=恋の魔法。女は自分の病気のことを知っていた。だからあんなに甘える態度が自然にできた。そしてあくまで明るく男を励まし応援する。実にけなげ。生きる尊さ、素晴らしさを実感しているので、ダメ男を放っておけません。◆男は孤独で非社交的、女を迷惑がっていたが、どこか魅かれる。半分世捨人だが、自分を鼓舞し、元の場所に戻してくれる賢人を無意識に探している。別れと再会の繰り返しはその葛藤の表出。このあたりの流れが自然で好印象。年齢差があるの男女が恋に落ちる理由がきちんと描かれている。ただ男の人物像の掘り下げは弱い。◆全力を傾けずに逃げ出そうとする男を女が罵倒、大喧嘩して別れてからプロポーズへの急展開は意表をつきます。愛の奇跡ですね。「最低の男でもいいか?」「イエス」「意気地なしでも?」「イエス」愛は理屈をを超越。◆キーワードは”逆転”。男は女に病気のことを隠していた。しかし女に嘘と信じ込まされ、今度は女が男に病気を隠す。男は最初女を必要としなかった。が、恋人になってからは依存するほどになり、今度は女が母親的な存在になる。男は零落して田舎を放浪していたが、パリで復帰。女は至高の愛を獲得するが、命が尽きる。女は男に人生の全てを捧げた。男は命である音楽を再び手に入れ、それを女に捧げた。まさに「賢者の贈り物」。◆父の家を訪うが、子供がいるのをみて面会を諦める。これが脚本の不手際。物語に膨らみがなくなる。二人を応援し、女を看取るのが宿泊所の女主人だけというのはもったいない。父やその家族、代理人、共演者、友人を巻き込んで悲劇のラストへなだれ込ませるのが絶佳の展開。名作になりそこねた?◆また入院してからの展開が急すぎ。ここはタメの部分で、お互いに看護し、看取られ、愛を回顧する静かなうちに来るべき悲劇を予感させる重要な場面。◆冒頭に出てくる双子岩が愛の象徴。背景の撮り入れ方がうまく、城や海のシーンなど印象に残ります。「泣かせ」の演出も最低限に抑制されていて好印象。病気を隠した女の心理を想えばぐっときます。オススメです。観て損はありません、特に奇跡を信じる人には。
[DVD(字幕)] 8点(2010-07-01 15:41:21)
50.  パピヨン(1973) 《ネタバレ》 
①このような映画はもう作れないかも知れない。監督や演者の映画に対する意気込みが現代と違うのだ。最初に囚人たちが行進するシーンだけでも大変な手間がかかっている。今ではCGで簡単に出来ることが、当時は全て手作りだった。主演二人の演技は迫真を通り越して、神がかりといっていい。役者魂を見せてもらいました。 ②パピヨンは銀行強盗の罪を犯したが、無実である殺人罪で実刑を受けた。社会への反逆心が強く、脱獄に執着するのはこのためだ。特筆すべきは友情に厚いこと。差入れをしたドガを密告せず、命がけでかばった。尋常でない強靭な精神と生命力である。だからこそドガも心を開いたのだ。「誘惑に勝てるかどうかで人間の価値が決まる」 ③驚くべき展開の連続である。海で撃たれる囚人、船内で体内に隠したお金を奪うための殺人、ギロチン、ワニなどに先ず驚かされる。最初の脱獄は、窮地のドガを助けるために監視を殴り、その勢いで脱獄。独房の劣悪な環境。さらに食事半分で、光もない生活。次の脱獄は、用意されたボートが腐っていた。と思ったら、奇妙な刺青をした人物がハンターを殺し、手助けしてくれた。筏で着いた先で、ハンセン病の密輸業が船を用意し、お金もくれた。両者は共にアウトサイダーとして共感するものがあったのだろう。やっと着いたと思ったら、地元警察と鉢合わせ。見知らぬ犯罪者と一緒に逃走。警察と原住民に追われるが、危機一髪で海に飛び降り、なんとか脱出。行きついた先の原住民は穏健でパピを迎えてくれた。かわいい娘と一緒に暮らす平穏な日々。だが彼らはある日いなくなる。商人を殺したことに関係がありそうだ。真珠をもって町へゆき、修道院に紛れこむが、警察に突き出されてしまう。再び5年間の独房生活。その後島流しに遭い、ドガと奇跡の再会。椰子の実の袋で潮流に乗り、脱出成功。 ④「バカ野郎!俺は生きてるぜ」と叫ぶ。自由を勝ち取ることが彼の存在証明なのだ。「自分は既に死んでいる」「人生を無駄にした罪で有罪」という自覚があるため、人間らしく生きる=自由になることに挑戦し続けたのだ。諦めることは死んだも同然なこと。どんな逆境や困難にも決して諦めない彼の生き方には共感できる。 ⑤冒頭の行進シーンで「パピヨンきっと帰れるわ」と声をかけた女性がいた。あの女性の正体は自由の女神だったのだろう。14年もかかったが、蝶は自由になった。
[DVD(吹替)] 9点(2010-06-08 00:30:37)(良:1票)
51.  エアポート’75 《ネタバレ》 
①空港で誰かを待つ女。男が現れ、熱い抱擁と接吻。向こうで話そう、と歩きだす。だがその会話は別れ話だった。スチュワーデスと元パイロットで現航空会社の職員の二人は、すれ違いの毎日を送り、もう6年間も婚約中。これ以上一晩でも待てないという女と仕事の都合で30分しか時間が取れないという男。結局物別れに終わる二人。その後女の乗ったジャンボ機が事故で操縦者がいなくなり、女が操縦するはめに。最後は男がヘリからジャンボ機に乗りこんで無事に着陸させることに成功。男は女に結婚を申し込む。これがメインとなる話の筋。②もう一つは飛行機会社の副社長の活躍。事故機には妻と息子が乗り合わせている。興味半分で取材、報道しようとするTVレポーターに反発。各方面にテキパキと指示を出し、なんとか飛行機を無事着陸させようと悪戦苦闘する。③2つの筋に加えて、いくつかの群像劇が用意されている。引退したハリウッド女優、亡くなった副機長の恋人のスチュワーデス、端役の役者、病気の少女、心やさしいシスター二人組、犬を持ち込んだ女など。だが彼らの人生の掘り下げが浅く、十分に機能していない。生きるか死ぬかの大危機に直面しているのである。もっと感情的になり、パニックになる人も出てくるだろう。皆大人し過ぎるのだ。④操縦士がいなくなれば、先ず乗客に操縦経験者がいるか尋ねるのが普通。経験者がいなくても、男達何人かで協力して操縦するだろう。それに穴が開いたのなら気圧の関係で気流が外に向かい、中のものは外へ出る。現に副操縦者は投げ出された。そんな状況下で女性が操縦するのは難しい。機内も気圧が低くなり、酸素マスクが必要となる筈。この辺りの事故描写が甘く、手に汗握る展開とはいかない。ところで飛ばされた空軍パイロットはどうなったのか。パラシュートは装着してなかったのだから。事故当時飛行機はソルトレイクで着陸態勢に入っていた。それからぐるっと回ってソルトレイクに戻ってきたのだろうか。⑤油漏れもあり、ブレーキが効きにくいという障害もあった。だが、物足らない。タイヤが降りないとか、滑走路が霧で見えないとか、第二の危機があればよかった。そう思うのは現代の「危機を煽るハリウッド映画」を見すぎた弊害だろうか。昔はパニック映画でものんびりしていたんですね。古き良き時代を象徴する映画ともいえそうです。そう思って観れば悪くない出来です。
[ビデオ(吹替)] 7点(2010-06-06 11:12:32)
52.  海のトリトン オリジナル劇場版 《ネタバレ》 
【ストーリーの整理】: かつてアトランティス人が世界を支配していた。ア人はオリハルコン(特殊金属)を元にポセイドン巨像を造り、ポセイドン族を人身御供にした。だが、ポ族の一部は巨像のエネルギーを太陽のように利用して地底世界を作り、生き残った。その数1万人。ポ族は巨像のエネルギーを使って、ア大陸を沈没させ、ア人に復讐を果たした。その時ア人はオリハルコンのマイナスエネルギーで短剣を作った。この短剣で巨像を倒せば、地底世界のポ族を全滅させることができるのだ。ア族はポ族に報復するため、新人種トリトン族を生みだし、短剣を伝えた。だが長い年月が経ち、ト族は短剣の使い方を忘れてしまっていた。それでもポ族は刺客を放ってト族をほぼ滅亡させ、短剣を奪おうとした。ポ族は依然として地底世界に閉じこめられており、地上で暮すためには巨像を動かすことのできる短剣がどうしても必要だったのだ。そこへトリトンが短剣を持って登場。短剣には巨像を引き付ける力があった。そのため巨像が動いてしまい、地底世界のポ族は一瞬にして滅亡してしまった。そして巨像は暴れだした。これを倒さない限り、世界は破壊し尽くされてしまう。トリトンは短剣で巨像を倒した。 【疑問】:①ア人は何のために巨像を造ったのか?②ポセイドン像という名前にした理由は?③どうして人身御供が必要だったか?④地底世界のポ族と、海を支配する司令官ポ族との関係は?地底ポ族が海ポ族を作ったのか?⑤ピピはト族なのに、どうして人魚の姿なのか? 【感想」:原作とは関係なく監督が加えた「オリハルコン短剣」と「善悪逆転」のダークな展開は物語に面白味と重厚さを与えており、成功している。冒険物語を面白くする「ツボ」を心得ているようだ。悪者を次々倒してゆくテンポが心地よい。悪者キャラも個性的で、かつ造形もすぐれている。ただ古いTVアニメの編集ものなので、動きがなめらかでないのが大変残念。またイルカや人魚は、途中ほとんど活躍せず存在感薄い。敵と戦えるだけの能力を持たせるべきだろう。メスイルカはト族の味方でトリトンの乳母的存在だが、真実をどこまで知っていたのだろうか?巨像を倒すのが、あっけなかった。
[DVD(邦画)] 5点(2010-05-20 03:48:57)
53.  砂の器 《ネタバレ》 
◆癩病を発症したら「らい予防法」により療養所に強制収用となる。それがいやなら、妻と子を残し、自分が巡礼の旅に出ればいい。その前に妻はどうして子供を残して出て行ったのか?◆癩病といいながら、その症状がない。◆英良は小学校にも行かず。流れ流れて自転車屋の丁稚奉公。それが大学出て、クラッシックの天才作曲家、ピアニスト、指揮者。絶対無理!◆英良は育ての親なしで、大学まで出たの?◆子供の英良は何故父の元を訪ねなかったのか?療養所はすぐわかる。◆元巡査の三木は英良の子供時代しか知らないのに、成長した英良の写真を見ても何故本人とわかった?◆英良は三木から連絡があったとき、「人違い」と何故言わなかった。◆三木の手紙では、千代吉は子供に会いたい一心で生きてきた。なのに刑事が写真を見せても、知らないふりをするのは何故?殺人事件の容疑者とは知らない筈。◆殺人が無計画すぎ。急に殺意が芽生えたので、石で殺して、礫死にみせかける。殺人は計画的に。◆動機が薄い。父親に電話一本でもかけて事情を説明すればいいものを。◆英良の恋人の理恵子は、刑事が「電車からシャツを捨てた話」を聞きにきただけで、何故逃げたの?「人違い」で済む話。◆理恵子は血染めのシャツを何故電車から捨てた?◆理恵子は英良が人殺しであることを知っていたのか?◆英良のコンサートを聴いて「彼は今父親と会っている」と刑事が言うが、何故そんなことがわかる?◆英良は父が癩病患者であることを世間に知られるのを死ぬほど恐れたため、別人になった。殺人をしてまで秘密を守ろうとした。そこが伝わらない。砂の器のような殺害動機だ。
[DVD(邦画)] 7点(2009-10-23 03:48:40)
54.  ワイルド・ブラック/少年の黒い馬 《ネタバレ》 
これが本当にアメリカ映画かと首をかしげたくなるほど抑えた演出。全体に渡り無言のシーンが多く、美しい影像詩でつづる。これほど美しく馬を映した映画は珍しい。又馬の演技も見事。前半は嵐で船が難破した少年と謎の馬が奇跡的に島に流れ着き、少年と馬が仲良くなるまで。後半は帰国して、少年と老調教師の友情物語。ロッキーのような展開になります。ラストはお約束の競馬レース勝負。クライマックス・シーンは、大げさな音楽とアナウンスの熱狂で無理やり感動を誘うわけではなく、努めて控えめ。好感が持てます。老調教師にトラウマを持たせて、それを克服するというサイドストーリーを持たせれば、もっと盛り上がったでしょう。馬好きの人は是非観てください。良質な映画です。この映画の3年後に「ワイルド・ブラック2/黒い馬の故郷へ」という続編が作られます。そこではアフリカの砂漠に連れ去られたブラックを少年が追う、冒険物語になっています。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-18 19:17:15)
55.  アニー・ホール 《ネタバレ》 
アルビーは神経質で、”死”の強迫観念に捕われ、人生を楽しめない。「人生は寂しく、惨めで、苦しく、しかもアッという間だ」と人生観を語る。「僕を入れてくれるようなクラブには入りたくない」とも言う。理想は高いが、高望みは無駄とわかっており、常に自虐的である。無いと欲しがるが、あると気に入らない。インテリで理性的で合理的精神の持ち主だが、非理性的で非合理的な感情に捕われやすく、セラピーが欠かせない。結婚2度、恋人もいるが、性生活の悩みが常につきまとう。性欲が強いがちょっとしたことで中断してしまう。ロブスターは食べたいが、触るのはいや。都会は好きじゃないが、田舎はもっと住みにくい。昨日言ったことと正反対のことを今日は言う。アニーを尊敬する教授のいる学校に行かせるが、教授と浮気しないかと尾行してしまう。浮気するが、アニーに戻って来てと泣かれると戻る。一緒にいると別れたくなるが、別れると一緒にいたいと願う。アニーの歌は好きだが、有名になるのでレコーディングはして欲しくない。カリフォルニアは「人生を楽しむこと」の象徴だが、そこに行くと気分が悪くなってしまう。暗い天気のニューヨークが気に入っている。ついには「惨めなのは生きている証し、感謝すべき」とうそぶく始末。アニーと別れたが、彼女との生活を脚本にする。脚本で、縒りを戻す設定にして心を慰める。アルビーはコメディアンとして成功しており、経済的にも恵まれているが、性格が複雑で、惨めさや苦しみから決して抜け出せない男。矛盾だらけで、現実を見ず、決して産むことのない卵を欲しがる愚か者。永遠の精神分析患者だ。映画で監督は「アルビーは君や僕らに似てないかい?」と訴えてくる。似ているところがあるので、つい共感してしまう、そんな映画。劇中ロブという友人だけが常にアルビーの味方。精神安定剤のような役割を果たしている。こういう目立たない人に助けられているんですね。それに気づくようになったらアルビーの神経症も治るでしょう。人生は捨てたもんじゃありません。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-10 17:08:24)
56.  時計じかけのオレンジ 《ネタバレ》 
人間の本能は性欲と暴力。本能のままに暴力を撒き散らす不良少年グループ。仲間割れで、暴力が仲間に及んだとき、グループは崩壊、アレックスは刑務所へ。そこで受けた、政府による実験的更正治療は強制的に暴力シーンを延々と見せられるという暴力的なもの。結果、性欲や暴力といった感情が惹起されると吐き気を催す体質に変化。その効果が証明され、アレックスは社会復帰。だが彼を待っていたのは暴力。彼は昔とは正反対に、一方的な被害者となる。耐え切れず、唯一許された暴力、すなわち自分に対する暴力=自殺を行使。奇跡的に助かり入院。世間の非難を逸らすため、政治家が来て、実験的治療が成功したように振舞えば悪いようにはしないと取引を申し込む。押し寄せたマスコミに彼は答える。「ええ、ほとんど治っていますよ」彼の言う「治る」の意味は、性欲や暴力に対する快感を取り戻すという意味。暴力を暴力で制することの愚かさがテーマ。ベートーベンは彼の持つ人間性の象徴。暴力的だが人間らしい部分もあった。治療によりベートーベンは嫌悪対象となり、「治る」と第九を聞きながらセックスする自身の姿を夢想できるようになった。白は本能の象徴。グループの白服、ポルノ像、ペニスオブジェ、ミルク、包帯など。ポップカラーに支配された未来社会で、ここぞというときに白が出てくる。卑猥な絵があちこちにあることからもわかるように、本能が飼いならされた世界。猫女はペニスオブジェを芸術と呼んでいた。アレックスが住むのは本能が抑えられた放任社会で、それの象徴がアレックスの両親で、息子には無関心。その対極にある管理社会の象徴が刑務所。入所時の持ち物検査で如実に描かれる。経験を積んだ彼はもうむき出しの本能のままに行動することはないだろう。本質は変わらないが、表面を繕えるほどの大人に成長したのだ。最も特徴的なのは、暴力シーンを音楽に合わせ美しく、芸術的に描いて見せたこと。それ故に暴力賛美とも受けとられ、英国では上映禁止の憂き目になった。「芸術性」が監督の本質。後半、復讐する作家の顔や食べ物をおねだるアレックスなど、コミカルな面もある。「時計じかけのオレンジ」とは「自由意志のない人間」のこと。そのような人間社会にならないように警告を発している。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-08 11:10:40)
57.  大空港 《ネタバレ》 
見所が随所にあるものの、盛り上がりに欠け、パニックものの名作になりえていない。パニック部分は、飛行機爆破と滑走路の飛行機除去。危険人物が乗車しているのが判明する物語はよく描かれているが、犯人が孤立して爆破に至るまでが短かすぎる。もっと説得なり、争いがあってしかるべき。爆発も被害が小さく中途半端。爆発後、時間を置いて天井や側壁がはがれるなどパニックを持続させるべき。飛行機除去は、マックスパワーで移動できたが、後にはブルドーザーが控えていた。まずブルドーザーが失敗して、その後マックスパワーで成功とすれば盛り上がった。着陸も一工夫欲しい。視界不良で進入に失敗し旋回、何とか着陸するものの障害物などにより、クラッシュ、翼がもげるなどの見所が欲しい。騒音問題は竜頭蛇尾。強引な反対派に説得させる感動場面が欲しい。ドラマの部分は冗長的。タダ乗り老婆はいいが、不自然なほど長い。航空長や機長の不倫の部分はいらない。不倫で妊娠したスチュワーデスが怪我をしても可哀想とは思えない。悲劇の部分は悲劇に徹すべき。機長はあくまで正義感に溢れていてほしいものだ。爆破犯の心理の掘り下げは不十分。どれほど悲惨な人生を歩んできたとか、戦争や仕事で辛酸をなめたとか、妻や子供を愛しているとか、この人物が自殺までしてまで家族にお金を残したかった状況を同情できるように描いてほしかった。単なる異常者扱いではだめ。犯人に同情できれば、心に残る映画になったと思う。更に事件の顛末はテレビで放送されていたのだから、その様子も描くべきだろう。緊迫したアナウンサー様子や、それを見た家族の心配する様子など、盛り上がる要素だ。ツボは、保安主任ジョー(ジョージ・ケネディ)の葉巻。マックスパワーのとき葉巻に火をつけていない。成功したら、ばんざいで後ろに放り投げてしまった。操縦席は禁煙だからだろうか。最後メルからせしめたであろう葉巻の箱をかかえ、葉巻をくわえて登場。飛行機によくやったとねぎらいの言葉をかける。火がついているか知らないが、かっこいいです。絵になる男ですね。ジョーの人間ドラマの部分は少ししか描かれてないが、こういう小物を使うことによって、どういう人物か伝わってくる。他の主要人物のドラマ部分も見習うべきだった。昨今のパニックドラマは、パニック部分がメインで、ドラマが少。そういう意味で、貴重な映画。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-08 04:09:22)
58.  カサンドラ・クロス 《ネタバレ》 
病原菌拡散の恐怖と国家の陰謀を盛り込んだパニック映画。事件に巻き込まれる群像劇が丁寧に描かれていて、見ごたえがありました。国家権力側は一切顔を出さず、不気味を煽ります。マッケンジー大佐も女医も抹殺されるであろうことを予感させるラストも秀逸。最も印象に残ったのは、カプランのキャラ作り。ヤノフの収容所で妻子を亡くしたトラウマを持つ老人。自販機の釣り銭を出したり、時計やライターを売ろうとしたり、スリの手際を見せ付けたり、電車から逃げ出して撃たれたり、やたら目立ってました。さらにカサンドラ鉄橋の危うさを指摘し、列車も爆破させます。脚本上、魅力的な人物です。兵器製造者夫人と愛人ナバロのカップルも面白い。ナバロは登山家で麻薬密輸人。それを追うニセ神父刑事。ちょっと作りすぎでしょうか。愛犬ヤーゴも大活躍。チャンバレン医師は、暴露本を出版しようとする元妻との間に愛情が戻る話に。こういう人生ドラマが描かれているので、見ていて飽きません。医師夫婦が胸のすくような活躍をしますが、他の人にももうちょっとがんばってほしかった気がします。気になること:①テロリストの目的が不明。②テロリストがあの列車に乗っていると分かる根拠が薄い。彼のドラマも描くべき。③感染による死者が少なすぎる。回復も早く、恐怖が伝わらない。④鉄橋が危険であるという確証が薄い。あれだけでは反乱を起こさせる確固たるものがほしい。⑤列車の軍人はどうやって上司と連絡をとっていたのか?無線機ぐらいあるはず。⑥ヘリでの追跡を続行すべき。⑦ナバロは電車の屋根を歩けばいいのに。「上にも兵士がいる」と言い訳していたが、いなかった。ビビっただけなのか?ナバロを感染させないほうがすっきりした。⑧ニセ神父の刑事は間抜けすぎ。⑨チェンバレン医者が不用意に患者に触りすぎ。⑩元妻は、愛情を取り戻したくて追いかけてきたのでしょうか?暴露本は脅し?
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-07 12:22:47)
59.  ジュラシック・ジョーズ 《ネタバレ》 
あー、見ないほうがいいといわれるとつい見てしまう人間の習性が憎い。後悔の念でいっぱいです。本当に見て欲しくなかったらどう言えばいいのだろう?映画の感想より、そんなことを考えてしまうくらいの低レベル。恐怖0、サスペンス0、スペクタクル0、人間ドラマ0です。これに較べるとテレビ用B級映画が大作に思えてくるから不思議。「ジュラシック・ジョーズ」の題名は詐欺罪が適用可能でしょう。恐竜もサメも出てきません。おっと、あんまりけなすと間違って見てしまう人もいるので、ほどほどで留めていかないと。怖いもの見たさということもありますからね。ハリボテの魚がときどき顔を出す海岸物語といったところです。
[DVD(吹替)] 1点(2009-09-23 15:17:55)
60.  ヒッチコックの ファミリー・プロット 《ネタバレ》 
ジョージ(タクシー運転手)とブランチ(ニセ霊媒師)<以下GB>、アーサー(宝石商)とフラン<以下AF>の二組のストーリーが途中から交差する構成。GBはおまぬけで下品、完全にコメディ路線。AFは誘拐犯で殺人も辞さないシリアス路線。最後までかみ合わないままで終わってしまった印象がある。アーサーは成功した宝石商なので、犯罪に手を染めているのが不自然。GBがエディ(アーサー)を探すのは遺産相続のためなので、いい話。それなのに命を狙われたりするので、落ち着かない。ちぐはぐなのだ。そこを狙ったとしたらかなり高度なユーモアだ。一層AFもコメディ路線にすれば楽しさが盛り上がったのに。エディが育ての両親を殺したという設定のせいで、重くなりすぎた。おまけにその理由も不明のまま。誘拐の方法など、どこかとぼけた味わいがあるだけに惜しい。マロニーはがさつな殺人鬼で、事故死してしまう。これも重い。アーサーは実はエディというネタばれはもっと引っ張ってもよかった。ブランチのキャラがとてもチャーミングなので、彼女を中心に構成しなおせばよいリメイクが作れると思う。ブランチがサーサーを探して尋ね歩くところはキレがあった。「あなたは山羊座ね」「しし座よ」「だと思ったわ」の会話がツボでした。GBを隠し部屋に閉じ込める方法も大うけ。ラストでブランチが宝石のありかを見つけますが、その説明がつかないですね。シャンデリアがゆれて偶然落ちてきたほうがまだ納得。GBらしいオチになります。やはり映画は脚本が命ということを再確認。
[DVD(字幕)] 6点(2009-09-23 12:46:39)
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