41. ダイ・ハード/ラスト・デイ
1作目の完成度をこの「ラストデイ」に期待すると、肩すかしであることは間違いありません。 本作はドンパチやってるアクションしかないと言っても過言ではないのです。 一応ドラマもあります。 本作で焦点があたっているのは、主人公の息子である「ジャック」のキャラクターです。 描かれているのは親子の確執・そして絆。 仕事ばかりだった父と、父を嫌っていた息子の描写は普遍的なものなので、多くの方に受け入れられるでしょう。 しかしそんな要素は添え物にすぎず、あとはアクションぶっ続け。 本作の上映時間はシリーズ最短の100分足らず。 しかもアクションシーンがその7割を占めるというバブリーな構成なので、それを期待するなら大いに楽しめると思います。 さらにマクレーン親子は作中で言われているように「不死身」に思える無敵さなため、あんまりハラハラしませんwそこは弱点でしょう。 でもこれでいいんじゃないでしょうか。 小難しいドラマや会話シーンは最小限で、あとは大いにアクションで楽しんでもらうサービス精神は大好きです。 しかもけっこう意外な展開も待ち受けています。これも安っぽいと言えば安っぽいんだけどね。 シリーズおなじみの知略だとか、情報戦略だとか、現地の警察と協力するだとかの展開はありません。 こんな行き当たりばったりなゴリ押し映画を「ダイ・ハード」と呼んでいいのかどうかは激しく疑問ですが、「バトルシップ」などのバカ映画が大好きであればおいしくいただけると思いますよ。 [映画館(字幕)] 5点(2013-02-17 15:05:16)(良:1票) |
42. 人生、ブラボー!
すげえ面白かった。 本作はうだつのあがらないダメ中年男性の成長物語にして人間賛歌の物語、そして笑って泣けるハートフルコメディです。 主人公は金のために幾度もの精子提供を過去に行っており、その結果生まれていた子どもたちに会いに行き、彼らの生活と人生を知ることになります。 そのエピソード全てが面白く仕上がっており、同時にダメ主人公のあたたかい人間性を知れるという内容になっています。 しかし主人公は訴訟を起こされているので、簡単に彼らに正体を打ち明けるわけにはいけません。 しかも借金もちなので、「金」の問題も大きく苦悩としてのしかかってきます。 その苦悩を打ち破る主人公の決断、そして「家族」の行動は、きっと感動を呼ぶはずです。 よくこんな突飛な発想のストーリーができたなあ・・・と感心しきりだったのですが、精子提供を扱った映画には「キッズ・オールライト」「カレには言えない私のケイカク」といったものがありますし、けっこう普遍的な題材なのかもしれません。惜しくらむは上映館が限られていること。 しかし徐々に上映する地域は増えていっていますし、ここまで完成度が高いのであれば、「最強のふたり」のようなロングランも期待できると思います。 G(全年齢)指定ですが、性的な話題も出てくるのでそこだけは要注意(どぎついものではないです)。 カップルでも親子でもひとりでも、間違いのない1本です! [映画館(字幕)] 8点(2013-02-17 15:02:20)(良:2票) |
43. カラスの親指
《ネタバレ》 上映時間が2時間40分と大変長い。 余すことなく原作の要素をつぎ込むことはとても尊いことですが、そのままでは少し息苦しさを覚えます。 でも膨大な伏線を張ったどんでんがえしと、ラストの「風船」が大好き。 風船に向かって、タケは「どっかで子どもが泣いているかもな」と言うのです。 これは「詐欺師」であったタケが、「他人の気持ちを想像できる」ということを示すシーンです。 オープニングで競馬場から出たときも風船が飛んで行きましたが、そのときはタケは風船を見ることがありませんでした。 このときには、まだ騙された者の気持ちが想像できなかったのでしょうね。 [映画館(邦画)] 7点(2012-12-13 00:12:39) |
44. 任侠ヘルパー
つまらない。ドラマを観ていなくても全く問題ないつくりになっているのはいいけど、これはちょっとツライ。 理由のひとつが映画の軸がブレていること。 本作のストーリーの軸は ①ヤクザである主人公の成長物語 ②介護制度の現状と打開 ③ヤクザとの抗争 などがあるのですが、そのすべてが中途半端に終わっており、カタルシスがありません。 もうひとつはリアリティのなさ。 もともとが荒唐無稽な設定なので、それを観客に納得させるだけの説得力が必要だと思います。 しかし、本作は現実的に考えればありえない展開がとても多いです。 もちろんフィクション映画なので、多少のファンタジーらしい要素は目をつぶるべきなのでしょうが、これは許容範囲を超えまくっています。 恐ろしいことに、本作の主人公はヘルパーらしいことをほとんどしません。 覚えている限りそのシーンは1、2カ所。あとはヤーさんらしくボコったり命令したりしているだけです。 終盤の展開のつまらなさもしんどかったです。 良いところもいっぱいあります。 介護の問題点や、年金や生活保護費を不正に受給している施設を糾弾する描写はとても意味のあることです。 本作に登場する、放置されて人の住むような場所ではない状態になっている介護施設も、それを端的に表すことに成功しています・・・が、結局は中途半端に終わってしまっています。介護の実状や仕事についてもちゃんと描けているとはいえないため、介護に携わる人や、福祉の仕事をしている人に勧めたいとも思えません。 ただ草なぎ剛は素直に素晴らしかったです。本物のヤーさんにしか見えません。ぜひ「アウトレイジ」の続編に出演してほしいと思えました。 [映画館(邦画)] 3点(2012-11-24 19:18:17)(良:1票) |
45. 悪の教典
《ネタバレ》 中盤、オーディンにつきそうワタリガラスのフギンとムニンの物語が紹介されます。 フギンとムニンは、神・オーディンへ様々な情報を伝える存在です。 本作のフギンとムニンが示すものとは、以下だと思います。 ①蓮実 蓮実が「裏掲示板」「盗聴器」などにより情報を集める様は、さながらフギンとムニンのようです。 ②序盤に登場するカラス 蓮実が家の外にいるカラスに異様なまでの敵意を燃やし、電流により殺していたのも、自分の行動を「神に告げ口される」のを恐れていたからなのかもしれません。 ③怜花 蓮実は最後に、怜花に向かって「オーディンによろしく」と言っています。 これは「蓮実は本当に狂ったふりをしているか?それとも、神を信じているか?」という観客への疑問の投げかけなのでしょう。 さらに・・・このとき、怜花の片目はカラスのように真っ白になっています。 なぜ怜花の目がカラスのようになったのか・・・これは怜花が新たにフギンとムニンの役目を担うものになったからだと思います。 続編があるとしたら、怜花は蓮実(もしくは蓮実の意思を受け継ぐ者)の凶行を止めるのかもしれません。 その行為こそが「神に告げ口をする」フギンとムニンなのでしょう。 [映画館(邦画)] 7点(2012-11-18 20:25:44) |
46. ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
《ネタバレ》 <大したネタバレはありません>間違いなく「破」よりも賛否分かれる作品だけど、個人的には「破」よりも好きな作品。 特徴を言えば ①とにかく先の読めない展開が待ち受けていること ②ファンにとっても賛否両論なこと ③シンジくん(主人公)マジ可哀想 ④意味不明 特に④が恐ろしいことになっていまして、観ていて本気で意味がわかりません。 もちろん、これも悪いことばかりではなく、「先読みが全くできない」という面白さがあります。 秀逸なのはシンジと同じ目線で新しい展開と孤独感を体感できること。いままでのエヴァは「登場人物が理解しているのに自分はわからない」な印象だったので、今回のほうが感情移入できます。 [映画館(邦画)] 5点(2012-11-18 20:12:14) |
47. 黄金を抱いて翔べ
好き嫌いの分かれそうな作品。 本作の物語の主軸は2つあります。 ①金塊強奪(金塊の強奪)をする男たち ②金塊強奪をするまで、刺客に狙われる男たち。 ②の割合がかなり多くて、(金塊強奪をするだけで大変なのに)主人公たち6人は数多くの辛苦を強いられるようになります。 この②の描写は面白いことは面白いのですが、各エピソードはぶつ切れで、ダイジェスト感が否めないものでした。 金塊強奪の決行までに、これに長い時間をかけるのでフラストレーションがたまる人も多いと思います。 肝心の①なのですが、これはツッコミどころ満載です。 過程にスマートさは皆無、方法は超アナログ、主人公たちはものすごいゴリ押しで金塊強奪をすることになります。 「オーシャンズ11」のような華麗さを期待すると、憤慨すること必死です。 しかし、これらも決して大きな欠点になっていません。 前半の主人公たちの暮らしぶりと、後半の無理矢理な強盗手段では、彼らの退廃的な心情がみてとれます。 このドロッドロの薄暗~い男臭さこそがこの映画の最大の魅力。 「黄金を抱いて翔べ」なんて華麗なタイトルですが、実際は地面にはいつくばって黄金を狙っているイメージなのです。 個人的にはちょっと苦手な作品でしたが、東方神起のチャンミン、妻夫木聡、溝端淳平などのイケメン勢の演技の幅を感じられる作品でした。 [映画館(邦画)] 5点(2012-11-09 23:59:35) |
48. 終の信託
本作がテーマとしているのは「尊厳死」です。 しかし本作は、主人公のやった行為が尊厳死にあたるか否かを模索するようなサスペンスではありません。 キャッチコピーなどでは「医療か、殺人か」という二者択一をしているように思えますが、本作で提示される行為は明らかに「殺人」です。 「それでもボクはやってない」の主人公が冤罪であることと同じように、真実を明らかにした上での物語作りなのです。 しかし・・・自分は「それでも~」が大好きなのですが、本作品では拒否反応を起こしてしまいました。 本作の一番大きな問題点は、主人公の女医に感情移入がしにくい(できない)ことです。 前述のとおり主人公の行為は明らかな殺人なのですから、そうせざるを得なかった、そうなってしまった経緯を細やかに描かなければ、共感することができないと思います。 しかし、本作の主人公にはその説得力があまりにもありません。 殺人を犯した主人公が、どういった経緯でそれを行い、どのように糾弾され、反論するかが見所のはずなのですが、この描写ではそれも上滑りしてしまっています。 最悪なのが、肝心の患者を看取るシーンです。 このときの主人公の描写は本気でひどく、リアリティのある映画を撮ってきた周防監督の仕事ではない、とさえ思いました。 もうひとつの大きな欠点はとにかくだらだらと長いこと。 本作の上映時間は2時間24分ですが、その時間をかけた割には描ききれていないことが多く、同じ訴えを何度も繰り返しているようにも見え、正直前半はかなり退屈です。 役者の「ゆっくりした台詞」が多い演技は見所のひとつですが、あまりにもテンポが悪くてストレスがたまります。 加えて本作にはストーリー上の起伏があまりなく、「それでも~」のような娯楽性はありません。 ラストシーンにも正直がっかりしました。 これだけ長い時間をかけて、最後に提示されることがこれなのか、と。 あまりにバランスの悪い構成に辟易しました。 本作にはいいところもたくさんあります。 役者の演技は素晴らしく、特に大沢たかお演じる検事の「凄み」には圧倒されました。 だからといって、オススメはできません。尊厳死を考える目的では意味はありますが、その本質にはたどり着いていない、残念な作品です。 [映画館(吹替)] 4点(2012-10-30 01:09:47)(良:1票) |
49. エクスペンダブルズ2
この映画に出てくる筋肉ムキムキなおじさまがたのファンの方、今すぐ観なさい。 強いおっさんたちが戦う!悪い奴をぶっ殺す!それ以外は何にもないという期待を裏切らない作品ですよ! 少しウェット感があった前作から比べて、とにかくアクションで押し通す作風に切り替わったように思えます。 その甲斐あってか、本作の面白さは前作よりも上回っています。 前作に消化不良を感じた方も、本作のぶっ続きアクションには満足できるんじゃないでしょうか。 前作では顔見せ程度だったシュワルツネッガーとブルース・ウィリスが、本作ではスタローンたちとともに思い切り戦ってくれます! さらに素晴らしいのは、このシュワちゃんの登場シーンが全てギャグに等しいこと。 あの手この手でシュワちゃんをイジってくるのでもう最高です。 前作を観ていなくても全く問題なく楽しめます。 アクション最高! 筋肉最高! スターたちの共闘が最高! 絶対スクーンで観ろ! 以上だ! [映画館(字幕)] 9点(2012-10-20 23:07:01)(良:2票) |
50. 神秘の法
《ネタバレ》 つまんねえ。この映画のことが心底どうでもいい。 内容は主人公瞑想→宗教的なお話→また瞑想→宗教話→宇宙人との遭遇→主人公処刑される→神々のご加護で復活→最後はマジカルステッキを掲げて演説したら、滅亡までのカウントダウンをしていたはずの大量破壊兵器のことも全解決という頭がお花畑な映画でした。 公式ページで「この映画を観たらリウマチが治った!」という香ばしい意見が述べられていましたが、自分の口内炎は治りませんでした。 [映画館(邦画)] 1点(2012-10-20 08:02:51)(笑:3票) |
51. アシュラ(2012)
原作は残酷描写と人肉食のシーンがあったために、有害図書指定を受けたことでも有名でな作品です。 自分はこの原作は未読でしたが、映画は発禁処分を受けたとは思えないほど、道徳的な作品に仕上がっていると思います。 飢饉に見舞われた世の中で、10歳にも満たない子どものアシュラは生きるために人を殺し、その肉を喰らいます。 それは食べるものがなく、生きていかなければならないためなのです。 そして描かれるのは、アシュラが人喰いから「人間」へと成長していく物語であり、この上のないほどの悲劇でもあります。 アシュラの想いが痛いほどわかるので、涙を流してしまうシーンが多くありました。 声優を務めた野沢雅子さんが、(原作を)発禁にするなんてとんでもない、世界中の人に観て欲しいと宣ったことに完全に同意します。 流血シーンが多いのであまり小さい子には薦めませんが、子どもにも是非観て欲しい作品です(直接的な表現は少ないので、レーティングは全年齢指定です)。 今の飽食の時代では、こうして飢え、苦しむことのない幸せを忘れています。 この映画で描かれる飢饉、そして主人公が人を喰らうシーンは本当に気が滅入るものですが、作品には必要なものです。 そのことを、決して「綺麗事」ですまさずに教えてくれる本作は、確かな説得力を持っているのです。 本作の上映時間は短く、わずか75分です。 しかし下手に長い映画よりも、はるかに価値があると思わせる素晴らしさがあります。 本当に多くの人に観てもらいたい作品です。 アニメが好きな人だけでなく、映画からメッセージを感じたい方、心に残る映画を観たい人に是非おすすめします。 エンドロール後にも1シーンあるので、お見逃しなく。 [映画館(邦画)] 8点(2012-10-07 16:58:09)(良:1票) |
52. ボーン・レガシー
前シリーズとの関わりが薄い。 映画では「アルティメイタム」と関連した情報がいくつか出てくるのですが、これが本編の物語に絡むことがほとんどないのです。 結果、 ①ボーンシリーズを観ている人→シリーズとの関連がほとんどなくてガッカリ ②ボーンシリーズを観ていない人→意味不明な用語や登場人物が多くて内容を理解できない と、どっちもダメな状況に。 企画と脚本段階から間違っている気がしないでもないです。 また、本作で名前が提示される「計画」はなんと4つもあります。 ・トレッドストーン→前作までの主人公であるジェイソン・ボーンを生み出した計画 ・ブラックブライアー→「アルティメイタム」で明かされた新たな計画 ・アウトカム→本作「レガシー」の主人公であるアーロンを生み出した計画 ・ラークス→感情を排した暗殺者を作り上げる計画 下2つが本作で新しく示された計画なのですが、とりあえず多すぎじゃね? この用語の多さは映画の内容をわかりにくくしているだけのように感じます。 ボーンシリーズとのつながりはひとまず置いておいて、ひとつのアクション映画としてはどうか?と問われれば、それほど悪くはありません。 大筋のストーリーはシンプルにまとまっているし、主演のジェレミー・レナーによるアクションも確かなクオリティです。 全てが洗練されていた「アルティメイタム」と比べると物足りなさもありますが、劇場で観る価値はあると思います。 ただし本作はテンポが本気で悪い。 会話シーンが今までに比べて冗長だし、これまた本編にうまく絡んでいないところも多いのです。 これはいままでのシリーズと監督が交代したためでもあるのでしょうが、シリーズのスピーディな展開を求めると確実に裏切られると思います。 さらに言えば、ボーンシリーズの醍醐味であろう「CIAが最善の方法で追跡し、相手はそれを凌駕して逃げおおせる」という要素も薄く、盛り上がりに欠けています。 重ねて言いますが、一本のアクション映画としては十分観られます。 しかし本作はシリーズのファンの期待に応えているとは言いがたいです。 [映画館(字幕)] 4点(2012-09-30 11:37:49)(良:2票) |
53. ハンガー・ゲーム
《ネタバレ》 メインになるはずのゲーム部分がつまらない。 とりあえず言えるのは緊張感がありません。 死が隣り合わせの緊張感が伝わってくるのは、せいぜいゲーム開始後数分。 その後はご都合主義な展開ばかりで興ざめしました。 主人公が受けた傷はどう治すのだろう?と思っていたら、「差し入れ」の薬で治しちゃうし(効果抜群)、 結局食料や水不足を心配するシーンはないし、 「背後」を気にすることも全くない。 優勝経験者率いるチームが見張りも立てずに全員グースカ寝ているのは呆れました。 何よりひどいのはゲームの途中で「ゲームの優勝者は同じ地区の2人でもいいよ」とルールを変更すること。 そのルール変更にいたった理由もひどい。11地区の人間が、希望をかけていたプレイヤーが死んだことをきっかけに暴動を起こすというのは、まあ理解できます。 でも「他の地区の恋する男女を見たから興奮して怒りがおさまる」という意味不明な収束は納得できるもんじゃありません。 だいたい11地区の少女が死んだのは、もともと「同じ地区の人間同士でも殺しあわねければいけない」というルールにより、同じ地区の黒人の少年とはなればなれになったせいでもあると思うんです。 それなのに、少女が死んだあとで「やっぱり2人生き残っていいよ」っていうのは余計に反感を買うのではないでしょうか?オチにも心底がっかりです。 長い長いと噂のあった、ゲーム開始までの展開はなかなか面白かった(やたらとスポンサーを気にしなければならないところなど)のでこの点数ですが、大人の鑑賞に耐えうる作品になっていないのは残念です。 [映画館(字幕)] 4点(2012-09-30 11:32:15)(良:2票) |
54. 鍵泥棒のメソッド
「鍵泥棒のメソッド」というタイトルにあまり意味がないように感じる方がいるかもしれませんが、これは公式ページにも書いてあるとおり、「メソッド演技法」が元ネタでしょう。 売れない芸人の桜井は、銭湯で「鍵」を盗んでいますし、その『演技』を観れば、タイトルの皮肉がわかるのではないかな、と思います。 それにしてもオチが最高だった! [映画館(邦画)] 8点(2012-09-18 13:19:42) |
55. バイオハザードV リトリビューション
相変わらずの大味っぷりである。 作品のストーリー性の薄さがとんでもないことになっています。 ポンポンとテンポ良く次々と場面転換するため、ある意味「アクションが見れればそれでいいんだろ?」という需要に見事に応えた作品ともとれます。 でもそれにしたってこれはひどい。 映画の最初から最後まで、TVゲームの「第1ステージクリア」→「じゃあ次のステージに進もう」のノリ。舞台や展開を無理やり作るために登場人物が行動しているような印象で、考えたら負けとも言えるゴリ押しっぷりを感じることができるでしょう。 また、「ポール・W・S・アンダーソン」監督は「面白ければ何でもあり」な感じの方なので、本作にも映画のパク・・・もといオマージュがあります。 ゾンビの設定だけでもそうなのですが、中でも予告編でも見せているアメリカ郊外での描写は「ドーンオブザデッド」にそっくりなのです。 そんな感じでうっすい内容ではありますが、観ている間はすっげー楽しい映画でもあります。 後半の展開は失笑につぐ失笑。脱力につぐ脱力のトホホ感もこのシリーズで慣れ親しんだものであるので、自分はある意味これで大満足です。 [映画館(字幕)] 5点(2012-09-18 13:17:09)(良:1票) |
56. 白雪姫と鏡の女王
これはものすごく楽しめました! この映画で面白いのは、すさまじいまでの「ひねくれ」具合です。 展開はとことん原作をおちょくってます。 女王の滑稽さは突き抜けているし、 「鏡」のキャラも全く違うし、 王子は全然格好良くないし、 「七人の小人」は可愛くないし、 毒りんごというアイテムは出てくるものの展開はまるで違うし、 脚本家の好き勝手さが出まくっていて素敵です。 変人だらけのキャラは魅力的だし、伏線も効果的に使われているし、テンポもいいので退屈しませんし、白雪姫をはじめとした登場人物の行動にも(一部を除き)説得力があります。 ひねくれはしていても、最後まで本筋から脱線せずに楽しませてくれるのは、本作の長所でしょう。石岡瑛子による衣装も映像も魅力のひとつ(石岡さんは今年の1月に急逝し、この映画が遺作となりました)。 女王の衣装はシーンごとに違うし、多種多様な衣装の美しさはそれだけで楽しめます。 ターセム監督とのタッグがもう見れないのは寂しいのですが、こうして作品の重要な役割を担ったことは、日本人の誇りであると思います。 個人的には今年に公開された「スノーホワイト」よりもはるかに面白かったです。 エンドロールまできっちり楽しませてくれるのもすっごく嬉しい! 多少の好き嫌いはあるでしょうが、ひねくれた&ブラックな笑いに満ちたおとぎ話を期待する人は、是非劇場へ。 [映画館(字幕)] 8点(2012-09-18 13:14:03)(良:3票) |
57. トガニ 幼き瞳の告発
反吐が出るほど腹が立つ内容です(褒めてます)。 そこには一切の妥協はありません。 この映画を観た方は、子どもを苦しめた加害者たちを心の底から嫌悪するでしょう。 これは加害者、子役の演技のたまものであり、性的虐待のシーンを逃げることなく描いていることにもあります。 そのシーンのおぞましさ、恐ろしさはまるでホラー映画のようでした。 さらに『憎い』相手は、性的虐待の加害者にとどまらず、韓国という国そのものへも向けられています。 社会的地位と金がある者は守られ、弱者が食い物にされ、このような事件が起きているのにもかかわらず自分の保身に走る大人たちの描写は脳天かち割りたくなること必死です。 しかしそうして『憎い』と思えることは、本作の最も優れた点でもあると思います。 子どもたちがどのような辛苦を強いられてきたか、それが、登場人物と同じ目線でわかるのです。 自分は子どもたちと、それを守ろうとする主人公にめいいっぱい感情移入してしまい、泣いてしまうシーンが多々ありました。 この映画により『トガニ法』という法律が制定され、性的虐待への厳罰化が図られたのも、そうした描写が欠けておらず、多くの人へこの問題を訴えることができたためであると思います。 日本の方がこの映画を観て連想するのは、今年に起きた大津市のいじめ事件でしょう(もはやいじめではなく、殺人ですが)。 こちらも大人が、自分の保身のために事実を隠蔽していました。 さらに日本でも恩寵園事件というものもあり、この映画で描かれたような虐待は、決してこれが初めてというわけではありません。 目を背けてしまいそうな事実でも、私たちは再発防止のためこの事実を知る必要がある・・・そう思わせる力がこの映画にはありました。 残念なのが、R18+というレーティングです。 性的虐待のシーンを生々しく描いているとはいえ、性犯罪を助長させるようなものではありませんし(むしろ嫌悪するはず)、若い人にも観て欲しい作品だと思います。 せめて、R15+指定どまりにして、高校生でも観れるようにして欲しかったです。 全くインモラルな内容でないのに、「観てはいけない」としてしまう判断には疑問符がつきます。 [映画館(字幕)] 9点(2012-09-11 17:50:21)(良:1票) |
58. 夢売るふたり
《ネタバレ》 夫に結婚詐欺をさせる妻・里子の真意とはなんだったのでしょうか。 夫・貫也が言った『腹いせ』だとは自分には思えません。 自分には、それは純粋に貫也の夢のために思えます。 しかしその気持ちと裏腹に、女性と接触する貫也に嫉妬を感じていた。 それでも彼女は、貫也のため、夫に詐欺をさせた・・・ さらに彼女は、そんな自分の人生を『卑怯』と言うのです。 そして、彼女の本当の願いは、貫也とともに幸せな家庭を作ることなのではないでしょうか。 映画の後半で、里子は『お義父さん(イントネーションから、おそらく貫也側の父)』に「こんど2人で帰るから」と涙ぐみながら言っていました。 詐欺行為の発端になった女性・玲子にはお金を返しましたし、彼女の目的が「他人に不幸にさせる」というのは、疑って掛かるべきことでしょう。 包丁を持った彼女が『子ども』に救われたのも、それをあらわしていると思います。 自分は、この映画で一番悲しい存在なのは、 女性とつきあう貫也に嫉妬し、 その貫也の行動を彼の夢のために肯定し、 他人の人生にのっかり、 さらに自分は卑怯だと思っている、 里子だと思います。 [映画館(邦画)] 7点(2012-09-09 18:56:10)(良:3票) |
59. おおかみこどもの雨と雪
《ネタバレ》 「花」と「おおかみおとこ」の背景が不明瞭なのが気になります。 ・大変な思いをして大学に通っているのに、何故子どもを産むことをよしとするのか? ・おおかみおとこは何故、花に自分がどうやって育ってきたのかを語らなかったのか?(言ったのはせいぜい種族の末裔であることくらい) ・おおかみおとこ自身も、子どもを産めば大変な思いを花にさせてしまうことはわかっているのではないか? 「花」は冒頭で言ったとおり、奨学金を使い、アルバイトをしてまで国立大学に通っています。 そこまでして大学に行っているのに、子どもを産み、アルバイトも辞め、休学どころか中退をしてしまします。 大学を中退をするというのは、本人とってみれば大きな決断だと思うのですが、本作ではそこに至るまでの葛藤は全く描かれていません。 そしておおかみおとこも、花が大学を卒業することも待たず、子どもをつくる。 さらに、年子でもう一人つくる。 しかも、その子どもは、ただの子どもではないのです。 まったくもって勝手だとしか思えませんでした(しかも当の本人は理由が不鮮明なまま事故で死んでしまう・・・)。 この作品は、そうした「子どもを持つことの後ろめたさ」が全く描写されていません。 「惜しみのない子どもへの愛情」を描くためには、それは必要ではないと判断したのかもしれません。 おおかみおとこの背景や、花が大学に通っていた目的を描けば、よけいに子どもを産むことに賛同しにくくなってしまうだろうし、花が試行錯誤をする描写も希薄になってしまうので、あえてそうした理由づけは避けたのかもしれません。 そうだとしても、最低限の納得できる理由が欲しかった、彼らに感情移入がしにくかったのも事実です。 この映画の、一番大きな欠点だと思います。 それでもこの映画には素晴らしいところが多い! ・雨、雪、花が大雪原を駆け抜けるシーンの疾走感と躍動感、 ・2人の学年が変わっていくことを、横からとらえた画で左右に動かしながら表現するシーン、 ・カーテンがゆれるたび、狼になったり、人間にもどったりする雪、 そういったアニメならでは、映画ならではのシーンに、どうしても心を動かされてしまいます。 サントラもオススメですよ。 [映画館(邦画)] 8点(2012-08-24 03:02:31)(良:1票) |
60. るろうに剣心
予想以上に面白くて驚いた! 原作漫画はキャラクターの魅力を前面に出し、少年漫画としての面白を追求しているものでしたが、その精神は本作でもいかんなく発揮されています。 現実的に考えればありえない荒唐無稽なキャラクターたちにはきちんと血が通っています。 原作を読んだことのある自分としては、単なる見た目だけでなく、「まさしくこれは『るろうに剣心』だ」と言える作品に仕上がっていました。 個人的に素晴らしかったのは佐藤健、吉川晃司、香川照之の3名。 佐藤健はNHKの大河ドラマ「龍馬伝」でも人斬りである岡田以蔵を演じていました。 その剣さばきは見事で、ベテランの揃う役者たちの殺陣の中でも全く見劣りしません。 そして役柄も主人公のキャラにものすごくあっています。 普段は可愛らしさも感じられる優男だけど、怒れば声を荒げ、激情の男となる。 その「剣心」のイメージに、彼はぴったりでした。 吉川晃司演じるボスキャラクターの「鵜堂刃衛」は、作中1、2を争うほどの原作の再現っぷりを見せつけてくれます。 香川照之さんはね、あのね、最高。 予告編で「たまんねえな~っ」て言っているところからワクワクさせてくれましたが、実際に本編を観てみるとそのシーンをはるかに超える狂いっぷりです。 原作のエピソードを盛り込みつつ、映画ならではのダイナミズムも追求した脚本もよかったです。 小話を挟みつつも、ひとつの映画として起承転結がしっかりしている構成は万人が楽しめると思います。 原作を知らない方にも、十分受け入れられるでしょう。 もちろん不満がないわけじゃありません。 原作のファンにとっては、原作から端折られてしまったキャラクターがいるは気になるし、中盤の展開が間延びしていて少々退屈だったり、 武井咲演じるヒロインがちっとも「師範代」の剣術の腕前に見えなかったりするのは残念です。 それでもこれは十分オススメできる「時代劇」です。 明治維新を迎えたばかりの時代背景、殺陣やアクションの面白さ、魅力たっぷりのヒーローたち。 それだけで楽しめる作品ですので、原作漫画を知らなくても、昔ながらの時代劇が好きな人にも是非劇場へ! [映画館(邦画)] 8点(2012-08-24 02:44:05)(良:3票) |